説明

プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスの製造方法

【課題】 天然ガスなどの含炭素原料あるいは合成ガスから、炭素数2以下の成分の濃度が低く、プロパンおよび/またはブタンの濃度が高いLPGを、より経済的に製造することができる方法を提供する。
【解決手段】 含炭素原料と、H2O、O2およびCO2からなる群より選択される少なくとも一種と、得られた低級パラフィン含有ガスから分離され、リサイクルされた低沸点成分とから、一酸化炭素と水素とをCO:H2=1:0.5〜1:1.4(モル比)で含む合成ガスを製造し、触媒の存在下、合成ガスから、プロパンの沸点より低い沸点または昇華点を持つ低沸点成分を含み、含まれる炭化水素の主成分がプロパンまたはブタンである低級パラフィン含有ガスを製造し、低級パラフィン含有ガスから低沸点成分を分離してプロパンまたはブタンを主成分とするLPGを得、分離された低沸点成分を合成ガス製造の原料としてリサイクルする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成ガスから、主成分がプロパンまたはブタンである液化石油ガスを製造する方法に関する。また、本発明は、天然ガス等の含炭素原料から、主成分がプロパンまたはブタンである液化石油ガスを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液化石油ガス(LPG)は、常温常圧下ではガス状を呈する石油系もしくは天然ガス系炭化水素を圧縮し、あるいは同時に冷却して液状にしたものをいい、その主成分はプロパンまたはブタンである。液体の状態で貯蔵および輸送が可能なLPGは可搬性に優れ、供給にパイプラインを必要とする天然ガスとは違い、ボンベに充填した状態でどのような場所にでも供給することができるという特徴がある。そのため、プロパンを主成分とするLPG、すなわちプロパンガスが、家庭用・業務用の燃料として広く用いられている。現在、日本国内においても、プロパンガスは約2,500万世帯(全世帯の50%以上)に供給されている。また、LPGは、家庭用・業務用燃料以外にも、カセットコンロ、使い捨てライター等の移動体用の燃料(主に、ブタンガス)、工業用燃料、自動車用燃料としても使用されている。
【0003】
従来、LPGは、1)湿性天然ガスから回収する方法、2)原油のスタビライズ(蒸気圧調整)工程から回収する方法、3)石油精製工程などで生成されるものを分離・抽出する方法などにより生産されている。
【0004】
LPG、特に家庭用・業務用の燃料として用いられるプロパンガスは将来的にも需要が見込め、工業的に実施可能な、新規な製造方法を確立できれば非常に有用である。
【0005】
LPGの製造方法として、非特許文献1には、メタノール合成用触媒である4wt%Pd/SiO2、Cu−Zn−Al混合酸化物[Cu:Zn:Al=40:23:37(原子比)]またはCu系低圧メタノール合成用触媒(商品名:BASF S3−85)と、SiO2/Al23=7.6の高シリカY型ゼオライトとから成るハイブリッド触媒を用い、合成ガスからメタノール、ジメチルエーテルを経由してC2〜C4のパラフィンを選択率69〜85%で製造する方法が開示されている。しかしながら、この方法では、生成物中の炭素数2以下の成分の含有量が低くはなく、プロパン(C3)およびブタン(C4)の選択率は63〜74%程度であって、その生成物はLPG製品として適したものとは言い難い。
【0006】
また、上記非特許文献1に記載の方法により得られる生成物の主成分はブタンである。家庭用・業務用の燃料として用いられるLPGは、前述の通り、プロパンガスである。プロパンガスは、ブタンガスと比べて、低温下でも安定した高出力で燃焼を続けることができる利点がある。家庭用・業務用の燃料として、また工業用燃料、自動車用燃料としても広く用いられる易液化性燃料ガスとしては、冬季あるいは寒冷地においても十分な、より高い蒸気圧を持ち、かつ、燃焼時においてより高カロリーであるプロパンガスの方がブタンガスよりも優れている。
【非特許文献1】“Selective Synthesis of LPG from Synthesis Gas”,Kaoru Fujimoto et al.,Bull.Chem.Soc.Jpn.,58,p.3059−3060(1985)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、合成ガスから、炭素数2以下の成分の濃度が低く、プロパンおよび/またはブタンの濃度が高いLPGを、より経済的に製造することができる方法を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、天然ガスなどの含炭素原料から、炭素数2以下の成分の濃度が低く、プロパンおよび/またはブタンの濃度が高いLPGを、より経済的に製造することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、(i)触媒の存在下、一酸化炭素と水素とをCO:H2=1:0.5〜1:1.4(モル比)で含む合成ガスから、プロパンの沸点より低い沸点または昇華点を持つ物質である低沸点成分を含み、含まれる炭化水素の主成分がプロパンまたはブタンである低級パラフィン含有ガスを製造する低級パラフィン製造工程と、
(ii)低級パラフィン製造工程において得られた低級パラフィン含有ガスから該低沸点成分を分離し、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスを得る分離工程と
を有することを特徴とする、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスの製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、(i)含炭素原料と、分離工程において低級パラフィン含有ガスから分離され、リサイクル工程において合成ガス製造工程の原料としてリサイクルされた低沸点成分とから、一酸化炭素と水素とをCO:H2=1:0.5〜1:1.4(モル比)で含む合成ガスを製造する合成ガス製造工程と、
(ii)触媒の存在下、合成ガス製造工程において得られた合成ガスから、プロパンの沸点より低い沸点または昇華点を持つ物質である低沸点成分を含み、含まれる炭化水素の主成分がプロパンまたはブタンである低級パラフィン含有ガスを製造する低級パラフィン製造工程と、
(iii)低級パラフィン製造工程において得られた低級パラフィン含有ガスから該低沸点成分を分離し、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスを得る分離工程と、
(iv)分離工程において低級パラフィン含有ガスから分離された該低沸点成分を、合成ガス製造工程の原料としてリサイクルするリサイクル工程と
を有することを特徴とする、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスの製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、合成ガス製造工程において、原料中のリサイクルされた低沸点成分の含有量が、40〜75モル%である上記の液化石油ガスの製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、低級パラフィン製造工程において製造される低級パラフィン含有ガス中の低沸点成分の含有量(水素を除く)が、炭素基準で60%以下である上記の液化石油ガスの製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、該低沸点成分が、エタン、エチレンおよびメタンからなる群より選択される少なくとも一種である上記の液化石油ガスの製造方法が提供される。
【0014】
ここで、合成ガスとは、水素と一酸化炭素とを含む混合ガスを指し、水素および一酸化炭素からなる混合ガスに限られない。合成ガスは、例えば、二酸化炭素、水、メタン、エタン、エチレンなどを含む混合ガスであってもよい。天然ガスを改質して得られる合成ガスは、通常、水素と一酸化炭素とに加えて二酸化炭素や水蒸気を含む。また、合成ガスは、石炭コークスから製造される水性ガスであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
一酸化炭素と水素とを反応させてプロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスを製造する場合、まず、下記式(1)に従って一酸化炭素と水素とからメタノールが合成され、次に、下記式(2)に従ってメタノールの脱水によりカルベン(H2C:)が生成し、このカルベンの重合によって低級オレフィンが生成し、さらに生成した低級オレフィンが水素化されて低級パラフィン(LPG)になると考えられる。
【0016】
【化1】

【0017】
【化2】

【0018】
従来、フィッシャー・トロプシュ合成(FT合成)やメタノール合成においては、原料ガスとして、一酸化炭素と水素とをCO:H2=1:1.8〜1:2.5(モル比)で含む合成ガスがよく使用されている。このような組成の合成ガスを原料として液化石油ガスを製造した場合、合成ガスから製造される低級パラフィン含有ガスは、プロパンの沸点より低い沸点または昇華点を持つ低沸点成分、具体的には、未反応の原料である水素および一酸化炭素、副生物である二酸化炭素、エタン、エチレンおよびメタンなどを比較的多く含む。このような低沸点成分は、低級パラフィン含有ガスから分離し、原料としてリサイクルすることが可能である。しかし、製造される低級パラフィン含有ガスに含まれる低沸点成分量が多くなると、リサイクル量が多くなるため、経済性が低下する傾向がある。
【0019】
それに対し、本発明では、一酸化炭素と水素とをCO:H2=1:0.5〜1:1.4(モル比)で含む合成ガスを原料として使用する。これにより、製造される低級パラフィン含有ガスに含まれる低沸点成分量を少なくすることができ、その結果、低沸点成分を原料としてリサイクルする量が少なくなり、より経済的にLPGを製造することができる。
【0020】
原料である合成ガスの組成を上記の範囲にすることによって、より経済的にLPGを製造することができる理由は、以下のように考えられる。
【0021】
下記式(3)のように、プロパン製造のための化学量論から言えば、合成ガスの組成はH2/CO(モル比)=7/3≒2.33が好ましい。また、下記式(4)のように、ブタン製造のための化学量論から言えば、合成ガスの組成はH2/CO(モル比)=9/4=2.25が好ましい。一方、合成ガスからLPGへの転換反応においては、下記式(3)、(4)に示されるように、水が副生する。この副生する水は、下記式(5)のように、一酸化炭素と反応し、水素が生成すると考えられる。
【0022】
【化3】

【0023】
【化4】

【0024】
【化5】

【0025】
原料である合成ガスの組成を上記の範囲にすることにより、上記式(5)に示される反応が進行して一酸化炭素が減少し、水素が増加することで、LPG(プロパンおよび/またはブタン)の合成に最適な原料ガス組成が得られ、その結果、製造される低級パラフィン含有ガス中の低沸点成分の含有量が低くなると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
〔合成ガス製造工程〕
合成ガス製造工程では、含炭素原料と、H2O、O2およびCO2からなる群より選択される少なくとも一種と、後述の分離工程において低級パラフィン含有ガスから分離された低沸点成分とから、一酸化炭素と水素とをCO:H2=1:0.5〜1:1.4(モル比)で含む合成ガスを製造する。低沸点成分は、プロパンの沸点より低い沸点または昇華点を持つ物質である。
【0027】
含炭素原料としては、炭素を含む物質であって、H2O、O2およびCO2からなる群より選択される少なくとも一種と反応してH2およびCOを生成可能なものを用いることができる。含炭素原料としては、合成ガスの原料として公知のものを用いることができ、例えば、メタンやエタン等の低級炭化水素など、また、天然ガス、ナフサ、石炭などを用いることができる。
【0028】
本発明では、通常、合成ガス製造工程および低級パラフィン製造工程において触媒を用いるため、含炭素原料(天然ガス、ナフサ、石炭など)としては、硫黄や硫黄化合物などの触媒被毒物質の含有量が少ないものが好ましい。また、含炭素原料に触媒被毒物質が含まれる場合には、必要に応じて、合成ガス製造工程に先立ち脱硫など、触媒被毒物質を除去する工程を行うことができる。
【0029】
合成ガスは、合成ガス製造用触媒(改質触媒)の存在下で、上記のような含炭素原料と、H2O、O2およびCO2からなる群より選択される少なくとも一種とを反応させることにより製造される。合成ガスは、公知の方法、例えば、天然ガス(メタン)と二酸化炭素とを1:1(モル比)程度で反応させる方法(CO2リフォーミング)などにより製造することができる。中でも、本発明においては、オートサーマルリフォーミングにより合成ガスを製造することが好ましい。
【0030】
本発明においては、経済性などの点から、上記のような含炭素原料と、H2O、O2およびCO2からなる群より選択される少なくとも一種と共に、後述の分離工程において低級パラフィン含有ガスから分離された低沸点成分も合成ガス製造工程の原料として用いることが好ましい。
【0031】
低沸点成分としては、水素、一酸化炭素や、二酸化炭素、エタン、エチレン、メタンなどが挙げられる。このうち、メタン、エタンおよびエチレンは、含炭素原料となる。また、二酸化炭素は、例えば、下記式(6)に示すCO2リフォーミング反応によって合成ガスに戻すことができる。低沸点成分を合成ガス製造工程の原料としてリサイクルすることにより、原料原単位を低減させることができる。
【0032】
【化6】

【0033】
原料中の低沸点成分の含有量、すなわちリサイクル原料の含有量は適宜決めることができ、例えば、40〜75モル%とすることができる。経済性などの点から、原料中の低沸点成分の含有量は、55モル%以下がより好ましい。
【0034】
そして、この合成ガス製造工程では、上記のような原料から、一酸化炭素と水素とをCO:H2=1:0.5〜1:1.4(モル比)で含む合成ガスを製造する。製造される合成ガス中の一酸化炭素に対する水素の含有比率(モル基準)は、0.55[H2/CO]以上が好ましく、0.6[H2/CO]以上がより好ましい。また、製造される合成ガス中の一酸化炭素に対する水素の含有比率(モル基準)は、1.2[H2/CO]以下が好ましく、1.1[H2/CO]以下がより好ましい。
【0035】
合成ガスの組成を上記の範囲にすることによって、前述の通り、次の低級パラフィン製造工程において得られる低級パラフィン含有ガスに含まれる低沸点成分量が少なくなり、その結果、低沸点成分を原料としてリサイクルする量が少なくなり、より経済的にLPGを製造することができる。
【0036】
また、例えば、上記のような原料から合成ガスを製造する反応器である改質器の下流にシフト反応器を設け、シフト反応(CO+H2O→CO2+H2)によって合成ガスの組成を上記の範囲に調整することもできる。
【0037】
組成が上記の範囲である合成ガスを製造するためには、含炭素原料と水、酸素および二酸化炭素からなる群より選択される少なくとも一種との供給量比、原料中の低沸点成分の含有量、用いる合成ガス製造用触媒の種類や、その他の反応条件を適宜選択すればよい。
【0038】
本発明において低級パラフィン含有ガスの原料として用いる、一酸化炭素と水素とをCO:H2=1:0.5〜1:1.4(モル比)で含む合成ガスは、例えば、次のような方法によって製造することができる。
【0039】
下記式(I)で表される組成を有する複合酸化物からなる改質触媒の存在下、含炭素原料(低級パラフィン含有ガスから分離された低沸点成分中の含炭素原料も含む)と酸素と二酸化炭素とスチーム(水蒸気)とを、反応器に導入する原料ガス中の(二酸化炭素+スチーム)/カーボン比を0.5〜3、酸素/カーボン比を0.2〜1とし、かつ、反応器出口での温度を900〜1100℃、圧力を5〜60kg/cm2として反応させることにより、本発明において用いられる合成ガスを製造することができる。
【0040】
aM・bCo・cNi・dMg・eCa・fO (I)
(式中、Mは第6A族元素、第7A族元素、CoおよびNiを除く第8族遷移元素、第1B族元素、第2B族元素、第4B族元素およびランタノイド元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。a,b,c,dおよびeは各元素の原子比率を表し、a+b+c+d+e=1のとき、0≦a≦0.1、0.001≦(b+c)≦0.3、0≦b≦0.3、0≦c≦0.3、0.6≦(d+e)≦0.999、0<d≦0.999、0≦e≦0.999であり、fは各元素が酸素と電荷均衡を保つのに必要な数である。)
反応器に導入する原料ガス中の(二酸化炭素+スチーム)/カーボン比は、0.5〜2程度が好ましい。また、反応器の出口の温度は、950〜1050℃が好ましい。反応器の出口の圧力は、15〜20kg/cm2が好ましい。
【0041】
原料ガスの空間速度は、通常、500〜200000hr-1であり、1000〜100000hr-1が好ましく、1000〜70000hr-1がより好ましい。
【0042】
上記式(I)で表される組成を有する複合酸化物は、MgO、CaOが岩塩型結晶構造をとり、その格子に位置するMgまたはCa原子の一部がCo、NiあるいはMに置換した一種の固溶体であって、単相をなすものである。
【0043】
上記式(I)中、Mは、マンガン、モリブデン、ロジウム、ルテニウム、白金、パラジウム、銅、銀、亜鉛、錫、鉛、ランタンおよびセリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であることが好ましい。
【0044】
Mの含有量(a)は0≦a≦0.1であり、0≦a≦0.05であることが好ましく、0≦a≦0.03であることがより好ましい。Mの含有量(a)が0.1を超えると、リフォーミング反応の活性が低下してくる。
【0045】
コバルト含有量(b)は0≦b≦0.3であり、0≦b≦0.25であることが好ましく、0≦b≦0.2であることがより好ましい。コバルト含有量(b)が0.3を超えると、炭素質析出防止効果が十分には得られにくくなる。
【0046】
ニッケル含有量(c)は0≦c≦0.3であり、0≦c≦0.25であることが好ましく、0≦c≦0.2であることがより好ましい。ニッケル含有量(c)が0.3を超えると、炭素質析出防止効果が十分には得られにくくなる。
【0047】
また、コバルト含有量(b)とニッケル含有量(c)との合計量(b+c)は0.001≦(b+c)≦0.3であり、0.001≦(b+c)≦0.25であることが好ましく、0.001≦(b+c)≦0.2であることがより好ましい。合計含有量(b+c)が0.3を超えると、炭素質析出防止効果が十分には得られにくくなる。一方、合計含有量(b+c)が0.001未満では、反応活性が低下してくる。
【0048】
マグネシウム含有量(d)とカルシウム含有量(e)との合計量(d+e)は0.6≦(d+e)≦0.9998であり、0.7≦(d+e)≦0.9998であることが好ましく、0.77≦(d+e)≦0.9998であることがより好ましい。
【0049】
このうち、マグネシウム含有量(d)は0<d≦0.999であり、0.2≦d≦0.9998であることが好ましく、0.37≦d≦0.9998であることがより好ましい。また、カルシウム含有量(e)は0≦e<0.999であり、0≦e≦0.5であることが好ましく、0≦e≦0.3であることがより好ましい。この触媒は、カルシウムを含有しないものであってもよい。
【0050】
マグネシウム含有量(d)とカルシウム含有量(e)との合計量(d+e)は、M含有量(a)、コバルト含有量(b)およびニッケル含有量(c)とのバランスで決められる。(d+e)は上記範囲内であればいかなる割合でもリフォーミング反応に優れた効果を発揮するが、カルシウム(e)とM(a)の含有量が多いと、炭素質析出の抑制に高い効果があるものの、マグネシウム(d)が多い場合に比べて触媒活性が低くなる傾向がある。活性の点からは、カルシウム含有量(e)が0.5以下であり、M含有量(a)が0.1以下であることが好ましい。
【0051】
用いる改質触媒は、M、CoおよびNiの少なくとも1種が複合酸化物中で高分散化されていることが好ましい。ここで、分散とは、担持された金属の全原子数に対する触媒表面に露出している原子数の比として定められるものである。すなわち、Co、NiあるいはMの金属元素またはその化合物の原子数をAとし、これらの原子のうち粒子表面に露出している原子の数をBとすると、B/Aが分散度となる。M、CoおよびNiの少なくとも1種が複合酸化物中で高分散化されている改質触媒を用いることにより、さらに高活性となって反応が化学量論的に進行し、炭素質(カーボン)の析出がより効果的に防止される。
【0052】
このような改質触媒を製造する方法としては、例えば、含浸担持法、共沈法、ゾル−ゲル法(加水分解法)、均一沈澱法などが挙げられる。
【0053】
上記の改質触媒は、通常、合成ガスの製造に使用する前に、活性化処理を行う。活性化処理は、水素ガスなどの還元性気体の存在下、500〜1000℃、好ましくは600〜1000℃、より好ましくは650〜1000℃の温度範囲で0.5〜30時間程度、触媒を加熱することにより行う。還元性気体は、窒素ガスなどの不活性ガスで希釈されていてもよい。この活性化処理は、リフォーミング反応を行う反応器内で行うこともできる。この活性化処理により、触媒活性が発現する。
【0054】
本発明において用いられる合成ガスを製造する他の方法としては、含炭素原料(低級パラフィン含有ガスから分離された低沸点成分中の含炭素原料も含む)を部分酸化して、未反応の含炭素原料を含む少なくとも600℃の温度を有する混合ガスを生成させ、次いで、この高温の混合ガス中に含まれる未反応の含炭素原料に、金属イオンの電気陰性度が13以下である金属酸化物からなる担体にロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウムおよび白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(触媒金属)を担持させた、比表面積25m2/g以下、触媒金属の担持量が金属換算量で担体金属酸化物に対して0.0005〜0.1モル%の触媒の存在下において、加圧条件下で炭酸ガスおよび/またはスチームを反応させて合成ガスを製造する方法が挙げられる。また、含炭素原料(低級パラフィン含有ガスから分離された低沸点成分中の含炭素原料も含む)と、酸素含有ガス(空気、酸素など)と、炭酸ガスおよび/またはスチームとからなる混合ガスを用い、金属イオンの電気陰性度が13以下である金属酸化物からなる担体にロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウムおよび白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(触媒金属)を担持させた、比表面積25m2/g以下、触媒金属の担持量が金属換算量で担体金属酸化物に対して0.0005〜0.1モル%の触媒の存在下において、該混合ガス中の含炭素原料を部分酸化して、未反応の含炭素原料を含む少なくとも600℃の温度を有する混合ガスを生成させるとともに、この未反応の含炭素原料に加圧条件下で炭酸ガスおよび/またはスチームを反応させて合成ガスを製造する方法が挙げられる。
【0055】
ここで、触媒金属は、金属状態で担持されていてもよいし、酸化物などの金属化合物の状態で担持されていてもよい。また、担体として用いる金属酸化物は、単一金属酸化物であってもよいし、複合金属酸化物であってもよい。
【0056】
担体用金属酸化物中の金属イオンの電気陰性度は13以下であり、12以下が好ましく、10以下がより好ましい。金属酸化物中の金属イオンの電気陰性度が13を超えると、その触媒の使用に際して炭素析出が著しくなってくる。また、担体用金属酸化物中の金属イオンの電気陰性度の下限値は、通常、4程度である。
【0057】
なお、金属酸化物中の金属イオンの電気陰性度は、次式により定義されるものである。
【0058】
Xi=(1+2i)Xo
Xi:金属イオンの電気陰性度、
Xo:金属の電気陰性度、
i:金属イオンの荷電子数。
【0059】
金属酸化物が複合金属酸化物である場合は、平均の金属イオン電気陰性度を用い、その値は、複合金属酸化物中に含まれる各金属イオンの電気陰性度に複合酸化物中の各酸化物のモル分率を掛けた値の合計値とする。
【0060】
金属の電気陰性度(Xo)はPaulingの電気陰性度を用いる。Paulingの電気陰性度は、「藤代亮一訳、ムーア物理化学(下)(第4版)、東京化学同人,p.707(1974)」の表15.4に記載されている。金属酸化物中の金属イオンの電気陰性度(Xi)については、例えば、「触媒学会編、触媒講座、第2巻、p.145(1985)」に詳述されている。
【0061】
このような金属酸化物としては、Mg、Ca、Ba、Zn、Al、Zr、La等の金属を1種以上含む金属酸化物が挙げられる。このような金属酸化物として、具体的には、マグネシア(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミナ(Al23)、ジルコニア(ZrO2)、酸化ランタン(La23)等の単一金属酸化物や、MgO/CaO、MgO/BaO、MgO/ZnO、MgO/Al23、MgO/ZrO2、CaO/BaO、CaO/ZnO、CaO/Al23、CaO/ZrO2、BaO/ZnO、BaO/Al23、BaO/ZrO2、ZnO/Al23、ZnO/ZrO2、Al23/ZrO2、La23/MgO、La23/Al23、La23/CaO等の複合金属酸化物が挙げられる。
【0062】
用いる触媒の比表面積は25m2/g以下であり、20m2/g以下が好ましく、15m2/g以下がより好ましく、10m2/g以下が特に好ましい。また、用いる触媒の比表面積の下限値は、通常、0.01m2/g程度である。触媒の比表面積を上記の範囲にすることにより、触媒の炭素析出活性をより十分に抑制することができる。
【0063】
ここで用いる触媒において、触媒の比表面積と担体である金属酸化物の比表面積とは実質的にほぼ同じである。したがって、担体である金属酸化物の比表面積は25m2/g以下であり、20m2/g以下が好ましく、15m2/g以下がより好ましく、10m2/g以下が特に好ましい。また、担体である金属酸化物の比表面積の下限値は、通常、0.01m2/g程度である。
【0064】
なお、ここで、触媒または担体である金属酸化物の比表面積は、BET法により、温度15℃で測定されたものである。
【0065】
比表面積が25m2/g以下の触媒は、触媒金属の担持前に担体である金属酸化物を300〜1300℃、好ましくは650〜1200℃で焼成し、触媒金属担持後、得られた触媒金属担持物をさらに600〜1300℃、好ましくは650〜1200℃で焼成することによって得ることができる。また、担体である金属酸化物に触媒金属を担持後、得られた触媒金属担持物を600〜1300℃、好ましくは650℃〜1200℃で焼成することによっても得ることができる。焼成温度と焼成時間とを制御することによって、得られる触媒または担体である金属酸化物の比表面積を制御することができる。
【0066】
担体である金属酸化物に対する触媒金属の担持量は、金属換算量で、0.0005〜0.1モル%である。担体である金属酸化物に対する触媒金属の担持量は、金属換算量で、0.001モル%以上が好ましく、0.002モル%以上がより好ましい。また、担体である金属酸化物に対する触媒金属の担持量は、金属換算量で、0.09モル%以下が好ましい。
【0067】
上記のような触媒は、触媒の比表面積が小さく、かつ、触媒金属の担持量が非常に少量であるため、含炭素原料に対する十分な合成ガス化活性を有すると共に、炭素析出活性が著しく抑制されたものである。
【0068】
このような触媒は、公知の方法に従って調製することができる。触媒を製造する方法としては、例えば、担体である金属酸化物を水中に分散させ、触媒金属塩またはその水溶液を添加、混合した後、触媒金属が担持された金属酸化物を水溶液から分離し、乾燥、焼成する方法(含浸法)や、担体である金属酸化物を排気後、細孔容積分の金属塩溶液を少量ずつ加え、担体表面を均一に濡れた状態にした後、乾燥、焼成する方法(incipient−wetness法)などが挙げられる。
【0069】
上記のような触媒の存在下、含炭素原料(低級パラフィン含有ガスから分離された低沸点成分中の含炭素原料も含む)とスチーム(水蒸気)および/または二酸化炭素とを反応させることにより、本発明において用いられる合成ガスを製造することができる。
【0070】
含炭素原料と二酸化炭素とを反応させる方法(CO2リフォーミング)の場合、反応温度は500〜1200℃であり、600〜1000℃が好ましい。反応圧力は5〜40kg/cm2Gであり、5〜30kg/cm2Gが好ましい。また、この反応を固定床方式で行う場合、ガス空間速度(GHSV)は1,000〜10,000hr-1であり、2,000〜8,000hr-1が好ましい。反応器に導入する原料ガス中のCO2の含有量は、含炭素原料中の炭素1モル当たり、CO220〜0.5モルであり、10〜1モルが好ましい。
【0071】
含炭素原料とスチームとを反応させる方法(スチームリフォーミング)の場合、反応温度は600〜1200℃であり、600〜1000℃が好ましい。反応圧力は1〜40kg/cm2Gであり、5〜30kg/cm2Gが好ましい。また、この反応を固定床方式で行う場合、ガス空間速度(GHSV)は1,000〜10,000hr-1であり、2,000〜8,000hr-1が好ましい。反応器に導入する原料ガス中のスチームの含有量は、含炭素原料中の炭素1モル当たり、スチーム(H2O)20〜0.5モルであり、10〜1モルが好ましく、1.5〜1モルがより好ましい。
【0072】
スチームとCO2の混合物を含炭素原料に反応させて合成ガスを製造する場合、スチームとCO2との混合割合は特に限定されないが、通常、H2O/CO2(モル比)は0.1〜10である。
【0073】
この合成ガスの製造方法においては、上記リフォーミング反応に必要とされるエネルギーは、リフォーミングの反応原料である含炭素原料の一部を部分酸化(部分燃焼)させ、その際に生じる燃焼熱により補給される。
【0074】
含炭素原料の部分酸化反応は、600〜1500℃、好ましくは700〜1300℃の温度および5〜50kg/cm2G、好ましくは10〜40kg/cm2Gの圧力の条件下で実施される。含炭素原料を部分酸化させるための酸化剤としては酸素が用いられるが、この酸素源としては、純酸素の他に、空気、富酸素化空気などの酸素含有ガスが用いられる。反応器に導入する原料ガス中の酸素の含有量は、含炭素原料中の炭素に対する酸素の原子比(O/C)で、0.1〜4であり、0.5〜2が好ましい。
【0075】
この含炭素原料の部分酸化により、未反応の含炭素原料を含む、少なくとも600℃、好ましくは700〜1300℃の高温の混合ガスが得られる。この混合ガス中の未反応の含炭素原料に対して、上記の条件で二酸化炭素および/またはスチームを反応させることにより、合成ガスを製造することができる。二酸化炭素および/またはスチームは、含炭素原料の部分酸化により得られた混合ガスに添加して反応させてもよく、また、部分酸化反応に供する含炭素原料にあらかじめ添加・混合しておいてもよい。後者の場合には、含炭素原料の部分酸化とリフォーミング反応とを同時に行うことが可能となる。
【0076】
含炭素原料のリフォーミング反応は、各種の反応器形式で実施することができるが、通常、固定床方式、流動床方式で実施することが好ましい。
【0077】
〔低級パラフィン製造工程〕
低級パラフィン製造工程では、低級パラフィン製造用触媒の存在下、上記の合成ガス製造工程において得られた合成ガスから、プロパンの沸点より低い沸点または昇華点を持つ物質である低沸点成分を含み、含まれる炭化水素の主成分がプロパンまたはブタンである低級パラフィン含有ガスを製造する。
【0078】
低級パラフィン製造用触媒としては、例えば、1種以上のメタノール合成触媒成分と1種以上のゼオライト触媒成分とを含有する触媒が挙げられる。
【0079】
ここで、メタノール合成触媒成分とは、CO+2H2→CH3OHの反応において触媒作用を示すものを指す。また、ゼオライト触媒成分とは、メタノールの炭化水素への縮合反応および/またはジメチルエーテルの炭化水素への縮合反応において触媒作用を示すゼオライトを指す。
【0080】
この低級パラフィン製造用触媒の存在下で一酸化炭素と水素とを反応させると、次のような反応が起こり、主成分がプロパンまたはブタンであるパラフィン類を製造することができる。
【0081】
まず、メタノール合成触媒成分上で一酸化炭素と水素とからメタノールが合成される。次いで、合成されたメタノールはゼオライト触媒成分の細孔内の活性点にて主成分がプロピレンまたはブテンである低級オレフィン炭化水素に転換される。この反応では、メタノールの脱水によってカルベン(H2C:)が生成し、このカルベンの重合によって低級オレフィンが生成すると考えられる。そして、生成した低級オレフィンはゼオライト触媒成分の細孔内から抜け出し、メタノール合成触媒成分上で速やかに水素化されて主成分がプロパンまたはブタンであるパラフィン類となる。
【0082】
ゼオライト触媒成分に対するメタノール合成触媒成分の含有比率(質量基準)は、0.5以上[メタノール合成触媒成分/ゼオライト触媒成分]であることが好ましく、0.8以上[メタノール合成触媒成分/ゼオライト触媒成分]であることがより好ましい。また、ゼオライト触媒成分に対するメタノール合成触媒成分の含有比率(質量基準)は、3以下[メタノール合成触媒成分/ゼオライト触媒成分]であることが好ましく、2以下[メタノール合成触媒成分/ゼオライト触媒成分]であることがより好ましい。ゼオライト触媒成分に対するメタノール合成触媒成分の含有比率を上記の範囲にすることにより、より高選択率、高収率でプロパンおよび/またはブタンを製造することができる。
【0083】
メタノール合成触媒成分は、メタノール合成触媒としての機能を有し、また、ゼオライト触媒成分は、メタノールおよび/またはジメチルエーテルの炭化水素への縮合反応に対して酸性が調整された固体酸ゼオライト触媒としての機能を有する。そのため、ゼオライト触媒成分に対するメタノール合成触媒成分の含有比率は、触媒の持つメタノール合成機能とメタノールからの炭化水素生成機能との相対比に反映される。本発明において一酸化炭素と水素とを反応させて主成分がプロパンまたはブタンであるパラフィン類を製造するにあたり、一酸化炭素と水素とをメタノール合成触媒成分によって十分にメタノールに転化しなければならず、かつ、生成したメタノールをゼオライト触媒成分によって十分に主成分がプロピレンまたはブテンであるオレフィンに転化し、それをメタノール合成触媒成分によって主成分がプロパンまたはブタンであるパラフィン類に転化しなければならない。
【0084】
ゼオライト触媒成分に対するメタノール合成触媒成分の含有比率(質量基準)を0.5以上[メタノール合成触媒成分/ゼオライト触媒成分]にすることにより、一酸化炭素と水素とをより高転化率でメタノールに転化させることができる。また、ゼオライト触媒成分に対するメタノール合成触媒成分の含有比率(質量基準)を0.8以上[メタノール合成触媒成分/ゼオライト触媒成分]にすることにより、生成したメタノールをより選択的にプロパンまたはブタンを主成分とするパラフィン類に転化させることができる。
【0085】
一方、ゼオライト触媒成分に対するメタノール合成触媒成分の含有比率(質量基準)を3以下[メタノール合成触媒成分/ゼオライト触媒成分]、より好ましくは2以下[メタノール合成触媒成分/ゼオライト触媒成分]にすることにより、生成したメタノールをより高転化率で主成分がプロパンまたはブタンであるパラフィン類に転化させることができる。
【0086】
メタノール合成触媒成分としては、公知のメタノール合成触媒、具体的には、Cu−Zn系、Cu−Zn−Cr系、Cu−Zn−Al系、Cu−Zn−Ag系、Cu−Zn−Mn−V系、Cu−Zn−Mn−Cr系、Cu−Zn−Mn−Al−Cr系などのCu−Zn系およびそれに第三成分が加わったもの、あるいは、Ni−Zn系のもの、Mo系のもの、Ni−炭素系のもの、さらにはPdなど貴金属系のものなどが挙げられる。また、メタノール合成触媒として市販されているものを使用することもできる。
【0087】
ゼオライト触媒成分としては、反応分子の拡散が可能な細孔の広がりが3次元である中細孔ゼオライトまたは大細孔ゼオライトが好ましい。このようなものとしては、例えば、ZSM−5、MCM−22や、ベータ、Y型などが挙げられる。本発明においては、一般にメタノールおよび/またはジメチルエーテルから低級オレフィン炭化水素への縮合反応に高い選択性を示すSAPO−34などの小細孔ゼオライトあるいはモルデナイトなどの細孔内での反応分子の拡散が3次元でないゼオライトよりも、一般にメタノールおよび/またはジメチルエーテルからアルキル置換芳香族炭化水素への縮合反応に高い選択性を示すZSM−5、MCM−22などの中細孔ゼオライトあるいはベータ、Y型などの大細孔ゼオライトなどの細孔内での反応分子の拡散が3次元であるゼオライトが好ましい。中細孔ゼオライトあるいは大細孔ゼオライトなどの細孔内での反応分子の拡散が3次元であるゼオライトを用いることにより、生成したメタノールをより選択的にプロピレンまたはブテンを主成分とするオレフィン、さらにはプロパンまたはブタンを主成分とするパラフィン類に転化させることができる。
【0088】
ここで、中細孔ゼオライトは、細孔径が主に10員環によって形成される0.44〜0.65nmのゼオライトをいい、また、大細孔ゼオライトは、細孔径が主に12員環によって形成される0.66〜0.76nmのゼオライトをいう。ゼオライト触媒成分の細孔径は、ガス状生成物内のC3成分およびC4成分選択性の点から、0.5nm以上がより好ましい。また、ゼオライト触媒成分の骨格細孔径は、ベンゼン等の芳香族化合物やC5成分等のガソリン成分などの液状生成物の生成抑制の点から、0.77nm以下がより好ましい。
【0089】
また、ゼオライト触媒成分としては、いわゆる高シリカゼオライト、具体的にはSiO2/Al23モル比が10〜50のゼオライトが好ましい。SiO2/Al23モル比が10〜50の高シリカゼオライトを用いることにより、生成したメタノールをより選択的にプロピレンまたはブテンを主成分とするオレフィン、さらにはプロパンまたはブタンを主成分とするパラフィン類に転化させることができる。
【0090】
ゼオライト触媒成分としては、SiO2/Al23モル比が10〜50で、反応分子の拡散が可能な細孔の広がりが3次元である中細孔ゼオライトまたは大細孔ゼオライトが特に好ましい。そのようなものとしては、例えば、USYや高シリカタイプのベータなどの固体酸ゼオライトが挙げられる。
【0091】
ゼオライト触媒成分としては、イオン交換などによって酸性を調整した上記のような固体酸ゼオライトを用いる。
【0092】
低級パラフィン製造用触媒としては、メタノール合成触媒成分とゼオライト触媒成分とを別途に調製し、これらを混合したものが好ましい。メタノール合成触媒成分とゼオライト触媒成分とを別途に調製することにより、各々の機能に対して、それぞれの組成、構造、物性を最適に設計することが容易にできる。
【0093】
なお、メタノール合成触媒には、使用前に還元処理をして活性化することが必要なものもある。本発明においては、メタノール合成触媒成分を予め還元処理して活性化する必要は必ずしもなく、メタノール合成触媒成分とゼオライト触媒成分とを混合・成形して低級パラフィン製造用触媒を製造した後に、反応を開始するに先立ち還元処理をしてメタノール合成触媒成分を活性化することができる。
【0094】
低級パラフィン製造用触媒は、その所望の効果を損なわない範囲内で必要により他の添加成分を含有していてもよい。
【0095】
低級パラフィン製造工程では、上記のような触媒を用いて一酸化炭素と水素とを反応させ、主成分がプロパンまたはブタンであるパラフィン類、好ましくは主成分がプロパンであるパラフィン類を製造する。
【0096】
反応器に送入されるガスは、上記の合成ガス製造工程において得られた合成ガスである。すなわち、反応器に送入されるガスは、一酸化炭素と水素とをCO:H2=1:0.5〜1:1.4(モル比)で含む合成ガスである。反応器に送入されるガス中の一酸化炭素に対する水素の含有比率(モル基準)は、0.55[H2/CO]以上が好ましく、0.6[H2/CO]以上がより好ましい。また、反応器に送入されるガス中の一酸化炭素に対する水素の含有比率(モル基準)は、1.2[H2/CO]以下が好ましく、1.1[H2/CO]以下がより好ましい。
【0097】
反応器に送入されるガス中の一酸化炭素の濃度は、反応に好適な一酸化炭素の圧力(分圧)の確保と、原料原単位向上との点から、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましい。また、反応器に送入されるガス中の一酸化炭素の濃度は、一酸化炭素の転化率がより十分に高くなる点から、67モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましい。
【0098】
従って、合成ガス製造工程において製造される合成ガス中の一酸化炭素の濃度は、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましく、また、67モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましい。
【0099】
なお、反応器に送入されるガスは、一酸化炭素および水素以外に、例えば、二酸化炭素、水、メタン、エタン、エチレン、不活性ガスなどを含むものであってもよい。
【0100】
反応温度は、メタノール合成触媒成分とゼオライト触媒成分とが、それぞれ、より十分に高い活性を示す点から、270℃以上が好ましく、300℃以上がより好ましい。また、反応温度は、触媒の使用制限温度の点と、平衡規制、反応熱の除去・回収が容易である点とから、400℃以下が好ましく、370℃以下がより好ましい。
【0101】
反応圧力は、メタノール合成触媒成分がより十分に高い活性を示す点から、1MPa以上が好ましく、2MPa以上がより好ましい。また、反応圧力は、経済性の点から、10MPa以下が好ましく、5MPa以下がより好ましい。
【0102】
ガス空間速度は、経済性の点から、500hr-1以上が好ましく、2000hr-1以上がより好ましい。また、ガス空間速度は、メタノール合成触媒成分とゼオライト触媒成分とが、それぞれ、より十分に高い転化率を示す接触時間を与える点から、10000hr-1以下が好ましく、5000hr-1以下がより好ましい。
【0103】
反応器に送入されるガスは、分割して反応器に送入し、それにより反応温度を制御することもできる。
【0104】
反応は固定床、流動床、移動床などで行うことができるが、反応温度の制御と触媒の再生方法との両面から選定することが好ましい。例えば、固定床としては、内部多段クエンチ方式などのクエンチ型反応器、多管型反応器、複数の熱交換器を内包するなどの多段型反応器、多段冷却ラジアルフロー方式や二重管熱交換方式や冷却コイル内蔵式や混合流方式などその他の反応器などを用いることができる。
【0105】
低級パラフィン製造用触媒は、温度制御を目的として、シリカ、アルミナなど、あるいは、不活性で安定な熱伝導体で希釈して用いることもできる。また、低級パラフィン製造用触媒は、温度制御を目的として、熱交換器表面に塗布して用いることもできる。
【0106】
この低級パラフィン製造工程において得られる低級パラフィン含有ガスは、含まれる炭化水素の主成分がプロパンまたはブタンである。液化特性の点から、低級パラフィン含有ガス中のプロパンおよびブタンの合計含有量は多いほど好ましい。本発明では、プロパンおよびブタンの合計含有量が、含まれる炭化水素の50モル%以上、さらには60モル%以上(100モル%も含む)である低級パラフィン含有ガスを得ることができる。
【0107】
さらに、低級パラフィン製造工程において得られる低級パラフィン含有ガスは、燃焼性および蒸気圧特性の点から、ブタンよりプロパンが多いことが好ましい。本発明では、プロパンの含有量が、含まれる炭化水素の50モル%以上、さらには55モル%以上(100モル%も含む)である低級パラフィン含有ガスを得ることができる。
【0108】
低級パラフィン製造工程において得られる低級パラフィン含有ガスには、プロパンの沸点より低い沸点または昇華点を有する低沸点成分が含まれる。低沸点成分としては、例えば、副生物であるエタン、メタン、エチレンが挙げられる。また、低沸点成分として、シフト反応により生成する二酸化炭素、未反応の原料である水素および一酸化炭素も挙げられる。含まれる低沸点成分は、一種であっても、二種以上であってもよい。
【0109】
本発明によれば、低沸点成分の含有量が少ない低級パラフィン含有ガスを得ることができる。具体的には、水素を除く低沸点成分の含有量が、炭素基準で75%以下、さらには70%以下、さらには60%以下(0%を除く)である低級パラフィン含有ガスを得ることができる。また、水素の含有量が、40モル%以下、さらには38モル%以下(0モル%を除く)である低級パラフィン含有ガスを得ることができる。
【0110】
〔分離工程〕
分離工程では、上記の低級パラフィン製造工程において得られた低級パラフィン含有ガスから、必要に応じて水分などを分離した後、低沸点成分を分離し、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガス(LPG)を得る。液化石油ガスを得るために、必要に応じて加圧および/または冷却を行ってもよい。
【0111】
また、低沸点成分を分離する前、あるいは、低沸点成分を分離した後に、低級パラフィン含有ガスから、ブタンの沸点より高い沸点を持つ物質である高沸点成分、例えば高沸点パラフィンガスなどを分離してもよい。高沸点成分の分離は、公知の方法によって行うことができる。
【0112】
低沸点成分の分離は、例えば、気液分離、吸収分離、蒸留など公知の方法によって行うことができる。より具体的には、加圧常温での気液分離や吸収分離、冷却しての気液分離や吸収分離、あるいは、その組み合わせによって行うことができる。また、膜分離や吸着分離によって行うこともでき、これらと気液分離、吸収分離、蒸留との組み合わせによって行うこともできる。低沸点成分の分離には、製油所で通常用いられているガス回収プロセス(「石油精製プロセス」石油学会/編、講談社サイエンティフィク、1998年、p.28〜p.32記載)を適用することができる。
【0113】
低沸点成分の分離方法としては、低級パラフィン含有ガスを、ブタンより沸点の高い高沸点パラフィンガス、あるいは、ガソリンなどの吸収液に吸収させる吸収プロセスが好ましい。
【0114】
民生用としては、使用時の安全性の点から、例えば、分離によってLPG中の低沸点成分の含有量を5モル%以下(0モル%も含む)とすることが好ましい。
【0115】
このようにして製造されるLPG中のプロパンおよびブタンの合計含有量は、90モル%以上、さらには95モル%以上(100モル%も含む)とすることができる。また、製造されるLPG中のプロパンの含有量は、50モル%以上、さらには60モル%以上(100モル%も含む)とすることができる。本発明によれば、家庭用・業務用の燃料として広く用いられているプロパンガスに適した組成を有するLPGを製造することができる。
【0116】
〔リサイクル工程〕
リサイクル工程では、上記の分離工程において低級パラフィン含有ガスから分離された低沸点成分を、合成ガス製造工程(改質工程)の原料としてリサイクルする。
【0117】
低級パラフィン含有ガスから分離された低沸点成分は、前述の通り、合成ガス製造工程の原料として再利用することができる物質、具体的にはメタン、エタン、エチレンなどを含む。また、この低沸点成分中に含まれる二酸化炭素は、CO2リフォーミング反応によって合成ガスに戻すことができる。さらに、低沸点成分は、未反応の原料である水素、一酸化炭素を含む。そのため、この低級パラフィン含有ガスから分離された低沸点成分は、合成ガス製造工程にリサイクルされる。
【0118】
低級パラフィン含有ガスから分離された低沸点成分は、すべて合成ガス製造工程にリサイクルしてもよいし、また、一部を系外に抜き出し、残りを合成ガス製造工程にリサイクルしてもよい。低沸点成分は、所望の成分のみを分離して合成ガス製造工程にリサイクルすることもできる。
【0119】
低沸点成分をリサイクルするためには、適宜リサイクルラインに昇圧手段を設ける等、公知の技術を採用することができる。
【0120】
〔プロセスフロー〕
次に、図面を参照しながら、本発明のLPGの製造方法の一実施形態について説明する。
【0121】
図1に、本発明のLPGの製造方法を実施するのに好適なLPG製造装置の一例を示す。
【0122】
まず、含炭素原料としてメタンが、ライン11および12を経て、改質器1に供給される。また、水蒸気改質を行うため、図示しないが水蒸気がライン12に供給される。さらに、プロパンの沸点より低い沸点または昇華点を持つ低沸点成分が、分離器3からリサイクルライン16を経て、ライン12に供給される。改質器1内には、改質触媒1aが備えられている。また、改質器1は、改質のために必要な熱を供給するための加熱手段(不図示)を備える。この改質器1内において、改質触媒1aの存在下、メタンが改質され、水素、一酸化炭素、二酸化炭素および水蒸気を含む合成ガスが得られる。
【0123】
このようにして得られた合成ガスは、ライン13を経て、反応器2に供給される。反応器2内には、低級パラフィン製造用触媒2aが備えられている。この反応器2内において、低級パラフィン製造用触媒2aの存在下、合成ガスからエタン、プロパン、ブタンを含む低級パラフィン含有ガスが合成される。
【0124】
合成された低級パラフィン含有ガスは、ライン14を経て、蒸留塔である分離器3に供給される。そして、常温加圧蒸留により、塔底からプロパンの沸点以上の沸点を持つ物質、すなわち製品となるLPGが得られ、塔頂からプロパンの沸点より低い沸点または昇華点を持つ物質、すなわち低沸点成分が残ガスとして得られる。こうしてライン15から製品となるLPGが得られる。一方、塔頂から得られる残ガス(低沸点成分)は、リサイクルライン16により、改質器1にリサイクルされる。
【0125】
なお、図示しないが、LPG製造装置には、昇圧機、熱交換器、バルブ、計装制御装置などが必要に応じて設けられる。
【実施例】
【0126】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0127】
〔実施例1〕
図1に示すLPG製造装置を用いてLPGを製造した。改質触媒(合成ガス製造用触媒)および低級パラフィン製造用触媒は、以下のようにして調製したものを用いた。
【0128】
(改質触媒の調製)
空気中、920℃で2時間焼成した酸化マグネシウムを0.27〜0.75mmに整粒した後、含浸法でRuを担持した。このRu含浸体は、ルテニウム(III)クロライド水和物の水溶液(Ru含有量:1.0重量%)を焼成MgOに極めて少量ずつ滴下し、混振することを繰り返して得た。そして、このRu含浸体を空気中、120℃で2.5時間乾燥した後、空気中、920℃で2時間焼成し、改質触媒(Ru担持MgO触媒)を得た。得られたRu担持MgO触媒は、Ruの担持量がMgO1gに対して1.5×10-3g、mol換算で0.06mol%であり、表面積が9.6m2/gであった。
【0129】
(低級パラフィン製造用触媒の調製)
メタノール合成触媒成分としては、市販のCu−Zn系メタノール合成触媒(日本ズードヘミー社製)を機械的に粉末にしたものを用いた。ゼオライト触媒成分としては、別途調製したSiO2/Al23モル比が14.5のプロトン型ZSM−5ゼオライト(細孔径:短径0.53nm、長径0.56nm)粉末を用いた。
【0130】
このメタノール合成触媒成分と同じ重量のゼオライト触媒成分とを均一に混合して加圧成型・整粒した後、水素気流中、300℃で3時間、還元処理して低級パラフィン製造用触媒を得た。
【0131】
(合成ガス製造工程)
前記の改質触媒を外熱式反応管型の装置に充填した後、反応に先立ち、触媒を水素気流中、900℃で1時間、還元処理した。
【0132】
天然ガス7.8モル%、スチーム14.3モル%、二酸化炭素3.9モル%、後述の低級パラフィン含有ガスから分離され、合成ガス製造の原料としてリサイクルされた低沸点成分74モル%からなる原料ガスを、改質触媒層に流通させた。反応条件は、反応温度870℃、反応圧力2.1MPa、GHSV(ガス空間速度)2000hr-1とした。
【0133】
生成物(合成ガス)をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、その組成は、水素44モル%、一酸化炭素43モル%、二酸化炭素6モル%、メタン7モル%であった。得られた合成ガスは、一酸化炭素と水素とをCO:H2=1:1.0(モル比)で含むものである。
【0134】
(低級パラフィン製造工程)
合成ガス製造工程において得られた合成ガスを、低級パラフィン製造用触媒層に流通させた。反応条件は、反応温度325℃、反応圧力2.0MPa、GHSV3000hr-1とした。
【0135】
生成物(低級パラフィン含有ガス)をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、一酸化炭素の転化率は72%であり、一酸化炭素の二酸化炭素へのシフト反応転化率は36%、炭化水素への転化率は36%であった。また、生成した炭化水素は、炭素基準で70%がプロパンおよびブタンであり、そのプロパンおよびブタンの内訳は炭素基準でプロパンが41%、ブタンが59%であった。低級パラフィン含有ガス中の低沸点成分の含有量(水素を除く)は、炭素基準で69%であった。
【0136】
(分離・リサイクル工程)
低級パラフィン製造工程において得られた低級パラフィン含有ガスを気液分離した後、モレキュラーシーブで乾燥し、0℃付近に保持されたオクタン溶液にバブルさせる方法により、低級パラフィン含有ガスから、メタン0.6モル%、エタンおよびエチレン0.8モル%、二酸化炭素39モル%、未反応の一酸化炭素22モル%および水素38モル%からなるガスを低沸点成分として分離し、LPGを製造した。
【0137】
分離された低沸点成分は、圧縮機にて2.5MPaまで昇圧した後、合成ガス製造工程の原料としてリサイクルした。
【0138】
〔比較例1〕
合成ガス製造工程において、原料ガス組成を天然ガス14.7モル%、スチーム14.8モル%、二酸化炭素3.5モル%、低級パラフィン含有ガスから分離され、合成ガス製造の原料としてリサイクルされた低沸点成分67.0モル%とし、反応温度を870℃、反応圧力を2.1MPa、GHSVを2000hr-1として、水素58モル%、一酸化炭素29モル%、二酸化炭素6モル%、メタン7モル%からなる合成ガスを製造し、この合成ガスから低級パラフィン含有ガスを製造した以外は実施例1と同様にしてLPGを製造した。合成ガス製造工程において得られた合成ガスは、一酸化炭素と水素とをCO:H2=1:2(モル比)で含むものである。
【0139】
低級パラフィン製造工程における生成物(低沸点成分を分離する前の低級パラフィン含有ガス)をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、一酸化炭素の転化率は73%であり、一酸化炭素の二酸化炭素へのシフト反応転化率は34%、炭化水素への転化率は37%であった。また、生成した炭化水素は、炭素基準で78%がプロパンおよびブタンであり、そのプロパンおよびブタンの内訳は炭素基準でプロパンが40%、ブタンが60%であった。低級パラフィン含有ガス中の低沸点成分の含有量(水素を除く)は、炭素基準で69%であった。
【0140】
また、分離・リサイクル工程において低級パラフィン含有ガスから分離された低沸点成分の組成は、メタン0.7モル%、エタンおよびエチレン1.2モル%、二酸化炭素15モル%、未反応の一酸化炭素10モル%および水素73モル%であった。
【0141】
比較例1は、実施例1と比べて、合成ガスから製造される低級パラフィン含有ガスに含まれる低沸点成分量が多かった。詳しくは、比較例1は、実施例1と比べて、低級パラフィン含有ガス中の水素を除く低沸点成分(含炭素低沸点成分)の含有量は同じであったが、低級パラフィン含有ガス中の水素の含有量が多かった。比較例1は、低級パラフィン含有ガスから分離された低沸点成分全量を合成ガス製造工程の原料としてリサイクルすることはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0142】
以上のように、本発明によれば、天然ガスなどの含炭素原料あるいは合成ガスから、炭素数2以下の成分の濃度が低く、プロパンおよび/またはブタンの濃度が高いLPGを、より経済的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明を実施するのに好適なLPG製造装置の一例について、主要な構成を示すプロセスフロー図である。
【符号の説明】
【0144】
1 改質器
1a 改質触媒(合成ガス製造用触媒)
2 反応器
2a 低級パラフィン製造用触媒
3 分離器
11、12、13、14、15 ライン
16 リサイクルライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)触媒の存在下、一酸化炭素と水素とをCO:H2=1:0.5〜1:1.4(モル比)で含む合成ガスから、プロパンの沸点より低い沸点または昇華点を持つ物質である低沸点成分を含み、含まれる炭化水素の主成分がプロパンまたはブタンである低級パラフィン含有ガスを製造する低級パラフィン製造工程と、
(ii)低級パラフィン製造工程において得られた低級パラフィン含有ガスから該低沸点成分を分離し、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスを得る分離工程と
を有することを特徴とする、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスの製造方法。
【請求項2】
(i)含炭素原料と、H2O、O2およびCO2からなる群より選択される少なくとも一種と、分離工程において低級パラフィン含有ガスから分離され、リサイクル工程において合成ガス製造工程の原料としてリサイクルされた低沸点成分とから、一酸化炭素と水素とをCO:H2=1:0.5〜1:1.4(モル比)で含む合成ガスを製造する合成ガス製造工程と、
(ii)触媒の存在下、合成ガス製造工程において得られた合成ガスから、プロパンの沸点より低い沸点または昇華点を持つ物質である低沸点成分を含み、含まれる炭化水素の主成分がプロパンまたはブタンである低級パラフィン含有ガスを製造する低級パラフィン製造工程と、
(iii)低級パラフィン製造工程において得られた低級パラフィン含有ガスから該低沸点成分を分離し、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスを得る分離工程と、
(iv)分離工程において低級パラフィン含有ガスから分離された該低沸点成分を、合成ガス製造工程の原料としてリサイクルするリサイクル工程と
を有することを特徴とする、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスの製造方法。
【請求項3】
合成ガス製造工程において、原料中のリサイクルされた低沸点成分の含有量が、40〜75モル%である請求項2に記載の液化石油ガスの製造方法。
【請求項4】
低級パラフィン製造工程において製造される低級パラフィン含有ガス中の低沸点成分の含有量(水素を除く)が、炭素基準で60%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の液化石油ガスの製造方法。
【請求項5】
該低沸点成分が、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、エタン、エチレンおよびメタンからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1〜4のいずれかに記載の液化石油ガスの製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2006−143752(P2006−143752A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−356490(P2003−356490)
【出願日】平成15年10月16日(2003.10.16)
【出願人】(503065494)日本ガス合成株式会社 (18)
【Fターム(参考)】