説明

プロパンジオール系ポリエステル樹脂および収縮フィルム

本発明は、ジカルボン酸と2−メチル−1,3−プロパンジオールを含有するジオールとをモノマーとして製造される共重合ポリエステル樹脂から成る収縮ポリマーフィルムであって、80℃の熱水浴中で10秒間処理した際の主たる収縮方向の収縮率が50%以上であることを特徴とする収縮ポリマーフィルムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−メチル−1,3−プロパンジオール単位を有する共重合ポリエステル樹脂から成る収縮ポリマーフィルム及び当該フィルムを形成する共重合ポリエステル樹脂に関し、詳しくは、2−メチル−1,3−プロパンジオール単位でエチレングリコール単位を置換えた共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂に関する。本発明のポリマーフィルムの収縮率および結晶化率は、2−メチル−1,3−プロパンジオール単位の含有量により変化させることが出来る。
【背景技術】
【0002】
収縮フィルムは公知であり、収縮によりボトルに適合するラベルや、他の大きさを変化できる物品など、多くの用途において使用されている。中でも、ポリエステル系収縮フィルムをポリエステル容器に使用することは、他の非相溶樹脂が混入することなくリサイクルを行うことが出来るために、きわめて有利である。
【0003】
収縮フィルムをラベル等に使用する場合、通常、文字やイメージ等の印刷が施される。そのため、収縮フィルムは、直接または接着促進性塗布もしくはそのような処理を施すことにより印刷可能である様なフィルムであることが好ましい。また、多くの用途の場合、収縮フィルムはクリアフィルム又は透明フィルムであることが好ましい。さらに、通常の包装、輸送、貯蔵などの条件において、安定であることが好ましい。また、経済的に製造でき、有機溶媒や他の環境上問題を有する化合物の使用を極力少なくして製造できることも必要である。さらに、インラインコーティングに対応できるフィルムであることが好ましい。すなわち、上記の各要求を組合せて満足するフィルムが望まれている。
【0004】
公知の収縮フィルムとしては、PVC(ポリビニルクロライド)、延伸ポリスチレンフィルム、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を有する共重合ポリエチレンテレフタレート(PETG)等のより環境に影響を受けやすい共重合ポリエステル等のフィルムが挙げられる。これらのフィルムは、優れた収縮性を有し、機械的特性や外観も良好である。しかしながら、PETGや他の公知の樹脂から成るフィルムよりも、もっと経済性に優れるフィルムが望まれている。さらに、リサイクル性に優れ、通常のPETフィルム製造装置を少しだけ改良するだけで製造できることが望ましい。
【0005】
ジオール系ポリエステル樹脂が収縮フィルムに利用できるという示唆が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のポリエステル樹脂は、プロパンジオール単位を有する共重合ポリエステルであるが、ここで使用されているプロパンジオールは、2−メチル−1,3−プロパンジオールの様な簡単な分子構造を有するものではなく、2−メチル,2−エチル−1,3−プロパンジオールや、2−メチル,2−プロピル−1,3−プロパンジオール等の高度に枝分かれ構造を有する化合物である。この他にも多くのプロパンジオール化合物が知られているが、2−メチル−1,3−プロパンジオールは知られてなく、2−メチル−1,3−プロパンジオールの使用は不利益であると考えられる。また、上記の様なプロパンジオール単位を有する共重合ポリエステルの示唆はあるものの、実際にプロパンジオール単位を有する共重合ポリエステルから成る収縮フィルムは製造・販売されておらず、プロパンジオール単位を有する共重合ポリエステルを使用した目的とする収縮フィルムの製造において、技術的制限や他の困難性があると考えられる。
【0006】
【特許文献1】米国特許第4996291号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、優れた収縮性を有する収縮ポリエステルフィルムを提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、収縮特性を容易に制御できる収縮ポリエステルフィルムを提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、その製造において経済性に優れる収縮ポリエステルフィルムを提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、ゆっくりと結晶化が起こる収縮ポリエステルフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1,3−プロパンジオール単位を有するポリエステルは結晶化しやすいことが知られている。同様に、1,3−プロパンジオール単位を有するポリマーは、結晶化を促進する材料として添加することが出来る。このような性質は、収縮フィルムの収縮率を高くするには不適応な材料と思われる。しかしながら、1,3−プロパンジオールの第2位の炭素を置換した1,3−プロパンジオールは、むしろ結晶化を遅延させる。すなわち、このような置換1,3−プロパンジオール単位を含有させることにより、収縮率を高く出来る可能性があると考えられる。
【0012】
本発明者らは、ポリエチレンテレフタレート中のエチレングリコール成分を部分的に2−メチル−1,3−プロパンジオールに置換えることにより、優れた収縮特性を有するフィルムを得ることを見出した。すなわち、従来、収縮フィルムへの応用が示唆されているものの、満足のいく収縮性が得られないと信じられていたプロパンジオール系共重合ポリエステルよりも、より分岐構造の少ないプロパンジオール単位を含有する共重合ポリエステルを使用したフィルムにおいて、上記性質を見出した。そして、2−メチル−1,3−プロパンジオールを使用した共重合ポリエステルを使用したフィルムにおいて、公知の収縮フィルムより優れた収縮性を有する場合を見出した。さらに、公知の収縮フィルムにおいて使用されている成分はベンゼン環を有する構造を有するが、本発明で見出された2−メチル−1,3−プロパンジオール成分は、メチル基を有する直鎖構造を有する。
【0013】
したがって、上記目的は、ポリエチレンテレフタレート中のエチレングリコール成分を部分的に2−メチル−1,3−プロパンジオールに置換えることにより達成できることを見出した。すなわち、樹脂中およびフィルム中の2−メチル−1,3−プロパンジオールの含有量を変化させることにより、フィルムの収縮特性および結晶化度を制御できることを見出した。
【0014】
本発明の要旨は、ジカルボン酸と2−メチル−1,3−プロパンジオールを含有するジオールとをモノマーとして製造される共重合ポリエステル樹脂から成る収縮ポリマーフィルムであって、80℃の熱水浴中で10秒間処理した際の主たる収縮方向の収縮率が50%以上であることを特徴とする収縮ポリマーフィルムに存する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の収縮ポリマーフィルムは、収縮特性に優れ、収縮特性および結晶化度を容易に制御でき、その製造において経済性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明で使用するプロパンジオールは、2−メチル−1,3−プロパンジオールであり、プロパンジオールの1置換体である。2−メチル−1,3−プロパンジオールとしては、Lyondell Chemical Company社製「MP Diol」は市販品として入手できるため好ましい。2−メチル−1,3−プロパンジオール単位を有する共重合ポリエステルは、フィルム製造が可能であるガラス転移温度(Tg)を有する。上記共重合ポリエステルが、室温にて粘着性を有する程度のあまりにも低いTgを有する場合、多くの用途において適用が困難となる。2−メチル−1,3−プロパンジオールよりも枝分かれ構造の多いプロパンジオールを使用した共重合ポリエステルは、より低いTgを有する。そのようなポリエステルは製造(重合)が困難であり、粘着性を有するため、重合体として不適である。また、そのような重合体を使用した収縮フィルムは、貯蔵や輸送中に生じる突然の温度上昇により、意図しない収縮が生じるおそれがあり、エンドユーザーや消費者に対して商品として提供することが出来ない。しかしながら、このような場合は、そもそも目的とする収縮特性を達成できない。本発明において、上記共重合ポリエステルのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは50〜72℃、より好ましくは55〜65℃、特に好ましくは60〜63℃である。
【0017】
2−メチル−1,3−プロパンジオール単位を有する共重合ポリエステルは、上記の様な問題を解消できる程の高いガラス転移温度(Tg)を有し、2−メチル−1,3−プロパンジオール単位の含有量が比較的高くても高いガラス転移温度(Tg)を有する。例えば、2−メチル−1,3−プロパンジオール単位の含有量が35モル%である共重合ポリエステルは、非結晶性であり完全なアモルファスである。上記の様な枝分かれの多い構造を有するジオール単位を同様の含有量で有する共重合ポリエステルの場合、完全にアモルファスであるものの、上記の様な問題点を有する適用不可の共重合ポリエステルである。
【0018】
2−メチル−1,3−プロパンジオール単位を含有する共重合ポリエステルから成るフィルムは、優れたヒートシール性を有し、通常のヒートシール温度において、フィルム同士のヒートシールだけでなく、他の材料の表面に対してもヒートシールを行うことが出来る。ヒートシール条件としては、90〜170℃の温度で0.5〜10秒間ヒートシールを行う。なお、本発明のヒートシール試験で採用する条件は、温度90℃、圧力40ポンド/インチで5秒間である。ヒートシール圧力は、上記のヒートシール時間中、20〜60psi(代表的には40psi)であり、上記のヒートシール温度で行ってもよく、また、上記のヒートシール温度に加熱する代りに圧力のみを負荷してもよい。ヒートシールテストは、通常、ポリマーフィルム同士で行うが、塗布層を有するフィルム同士で行ってもよい。試験法としては、シール部分が剥離するのに必要な力またはシール部分付近が破壊されるのに必要な力を測定し、評価する。このような試験において、代表的には、3ミル(3/1000インチ)の厚さのフィルムが使用される。そして、4ポンド/インチの圧力を負荷する。
【0019】
2−メチル−1,3−プロパンジオール単位は、ポリエステルを製造する際に、エチレングリコールを部分的に2−メチル−1,3−プロパンジオールで置換することにより導入する。通常、ポリエステル樹脂のジオール成分は、エチレングリコール単位100モル%である。本発明において、一般的に収縮性を付与するために使用される添加単位の含有量よりも低い2−メチル−1,3−プロパンジオール単位の含有量を有する共重合ポリエステル樹脂により、より高い収縮性が得られることを見出した。ジオール成分中の2−メチル−1,3−プロパンジオール単位の含有量は、5〜50モル%、好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは20〜30モル%である。2−メチル−1,3−プロパンジオール単位以外のジオール構成単位としては、エチレングリコール単位、エチレングリコール以外の単位またはそれらの単位の組合せが挙げられる。
【0020】
2−メチル−1,3−プロパンジオール単位の含有量(すなわちエチレングリコール単位への置換量)が10モル%を超える場合、非晶性が増加し、再加熱による収縮性が高まる。ここで、高い収縮性とは、主たる収縮方向の収縮率が50%を超える場合を示す。収縮率の測定は、80℃(場合によっては99℃)の熱水浴中で10秒間処理して行う。すなわち、試料のすべての方向について長さを測定し、熱水浴中に10秒間浸漬する。そして処理後の試料の長さを測定し、処理前と比較して収縮率を決定する。
【0021】
2−メチル−1,3−プロパンジオール単位の含有量は100モル%まで取り得ることが出来る。ただし、通常の重合条件において、2−メチル−1,3−プロパンジオールの反応率は44〜45モル%であって、使用できる程の分子量が得られにくい。しかしながら、2−メチル−1,3−プロパンジオール単位を含有する共重合ポリエステルは、他のより高度に枝分かれしたプロパンジオール単位を含有する共重合ポリエステルと比較して、影響を受けにくい。すなわち、より高度に枝分かれしたプロパンジオール単位を含有する共重合ポリエステルでは、プロパンジオール単位の含有量を低く制限しないと、上述の様な問題点を生じる。そして、プロパンジオール単位の含有量をわずかに変化させるだけで、収縮特性は大きく変化してしまい、収縮特性の式化、フィルムの製造および制御が困難となる。しかしながら、2−メチル−1,3−プロパンジオール単位を含有する共重合ポリエステルでは、2−メチル−1,3−プロパンジオール単位の含有量を変化させても、よりゆるやかに収縮特性が変化するため、収縮特性の式化および製造において、自由度を得ることが出来る。
【0022】
ベースフィルムの製造方法は、米国特許第5,350,601号明細書(カルバートソンら著)に記載されており、本発明に援用する。ジオール及び/又はグリコール成分と、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、マロン酸、アジピン酸、アゼライン酸、グルタル酸、スベリン酸、コハク酸またはこれら2種以上の混合物などのジカルボン酸成分(またはそのエステル誘導体)との重縮合反応により製造されることが好ましい。好ましいグリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ブタンジオール等のポリオール等が挙げられ、これらは2種以上組合せて使用してもよい。
【0023】
収縮率が50%未満のフィルムは、特にポリエステルフィルムにおいて、低い収縮率が要求されるいくつかの分野で使用されている。しかしながら、収縮率が50%を超えるフィルムが、市場において、特に包装ラベルフィルム等の市場において従来より好まれている。本発明の実施態様において、主たる収縮方向の好ましい収縮率は50〜80%(最大限収縮したとして)、更に好ましくは60〜80%、より更に好ましくは70〜80%、特に好ましくは75〜80%である。
【0024】
本発明における好ましい樹脂を使用することによって、技術的メリットを有することが出来る。例えば、2−メチル−1,3プロパンジオール単位を有する樹脂は、市販品として得られるPETG系収縮フィルムの構成樹脂と比較して、粘度が低い。そのため、2−メチル−1,3プロパンジオール単位を有する樹脂フィルムは、わずかな変更を加えるだけで、通常のポリエステル樹脂フィルムを製造する装置を使用して製造できる。さらに、粘度が低いことにより、剪断応力による熱の発生を減少させ、フィルターが長持ちし、フィルムにしまや筋が入るのを少なく出来るという技術的効果もある。
【0025】
本発明のフィルムには、公知の添加剤を含有させることが出来る。添加剤としては、顔料、他の着色剤、安定剤(紫外線安定剤を含む(ただしこれに限定されない))、帯電防止剤、接着促進剤、酸化防止剤、つや消し剤、フィラー、可塑剤、滑剤などが挙げられる。
【0026】
本発明の収縮フィルムは、2−メチル−1,3−プロパンジオール単位の含有量を広い範囲で変更することが出来る。それにより、例えば、主たる収縮方向の収縮率が78%のフィルムや、収縮温度が80℃を超えるフィルムを得ることも出来る。収縮率の小さい公知のフィルムについても製造することが出来る。この様な多種のフィルムの製造に柔軟に対応できることは、多種の製造ラインに適応できるというメリットを有する。本発明のフィルムにおいて、最大収縮率が80℃未満で達成できることが好ましく、これにより、フィルムの加工速度を速く出来たり、収縮工程において低い温度で処理することが出来る。。2−メチル−1,3−プロパンジオール単位の含有量が0モル%のフィルムは(すなわちPETフィルム)、基本的に収縮性を有しない。2−メチル−1,3−プロパンジオール単位の含有量が35モル%のフィルムは、熱収縮により、横方向延伸の前のフィルムの大きさにほぼ100%戻る。
【0027】
本発明のフィルムは、非晶性が高いために引張強度が増加し、耐衝撃性に優れる。さらに、2−メチル−1,3−プロパンジオールは他の入手可能なプロパンジオールと比較して安価であるため、本発明のフィルムは公知の収縮フィルムと比較して安価に製造できる。また、2−メチル−1,3−プロパンジオールの含有量が比較的少ないにもかかわらず、優れた収縮特性を示す。そのため、収縮性に寄与するジオール成分または他の収縮性を付与する成分をより多量に使用しなければいけない公知のフィルムと比較して、本発明のフィルムはより安価に製造できる。
【0028】
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、テレフタル酸と、その当量の2−メチル−1,3−プロパンジオール及びエチレングリコールを重縮合して作られたものであることが好ましい。最適な共重合体は、100モル%のテレフタル酸と、所望の収縮率を達成できる量の2−メチル−1,3−プロパンジオールと、残量のエチレングリコールから製造されることが好ましい。
【0029】
本発明のポリエステルフィルムを構成する収縮性ポリエステル樹脂は、ポリエステルフィルム中で単独であるいは主成分として使用される。好ましい態様として、本発明のポリエステル樹脂と他のポリエステル樹脂および/またはポリエステル以外の樹脂とのブレンド体が使用できる。このようなブレンド体を使用することにより、2−メチル−1,3−プロパンジオールの含有量を容易に調節できる。例えば、2−メチル−1,3−プロパンジオール単位の含有量が35モル%である共重合ポリエステルと2−メチル−1,3−プロパンジオール単位を含まないポリエステルとを等量ずつブレンドすることにより、2−メチル−1,3−プロパンジオール単位の含有量を17.5モル%に調節することが出来る。PETG、PEN、ポリスチレン、他の種々の樹脂をブレンドすることにより、得られるフィルムの性質を調節することも出来る。
【0030】
本発明のフィルムは透明性が高く、しまが入ることもない。すなわち、内容物や他の包装される材料がフィルムを介して見ることが出来るため、この様な特性は、多くの包装フィルムに応用する際に重要である。
【0031】
本発明のフィルムは、公知の塗布層を有することが出来る。塗布層としては、特に限定されないが、例えば、接着促進層、表面改質層、印刷接着促進層、帯電防止層、耐ブロッキング層、つや消し層、ヒートシール層、ガスバリア層などが挙げられる。塗布液の溶媒によるフィルム表面の溶解、環境問題、製造作業上の安全性などを考慮すると、塗布液は水性であることが好ましい。
【0032】
本発明のフィルムの厚さは、応用する用途によって広い範囲をとることが出来る。ラベルや他の用途に使用する場合、フィルムの厚さは、好ましくは10〜200μm、更に好ましくは25〜100μmである。
【0033】
過度に黄変したり、物性が劣化した場合を除き、塗布層を有する端材フィルムを新しい原料中に混合してリサイクルを行う場合、再生原料を有するフィルムの物性は重要である。廃棄される端材フィルムを再使用できることにより、原料の節約、廃棄処理費用の削減、不必要な浪費の削減などを行うことが出来る。本発明のフィルムは、優れた再利用特性を有する。
【0034】
さらに、本発明のフィルムは積層体とすることが出来る。積層体としては、ポリエステル/ポリオレフィン積層体、ポリエステル/接着剤/ポリオレフィン積層体などのポリマー/ポリマー積層体、ポリエステル/アルミニウム積層体などのポリマー/金属積層体、ポリマー/紙積層体、ポリマー/接着剤/紙積層体などが挙げられる。塗布層を有するポリマーフィルム、フィルム積層体も上記の積層体に使用できる。フィルム表面の濡れ性や塗布層の接着性を高めるため、接着層を設けることも上記の塗布層に含まれる。
【0035】
本発明のフィルムは、公知の方法により製造することが出来る。例えば、ポリエステル樹脂を溶融し、鏡面回転ドラム上に押出し、非晶シートを形成する。得られたシートは急冷され、フィルム強度、靭性、所望の収縮率を付与するために、1方向以上に延伸される。通常、非晶シートは、1方向以上において、2〜10倍、好ましくは4〜7倍に延伸される。2軸延伸よりも1軸延伸されることが好ましい。そして、横方向の延伸が好ましい。
【0036】
延伸温度は、通常、ポリマーの二次転移温度からポリマーの軟化/溶融点までの間の温度で行われる。必要であれば、延伸後、アニーリングによるフィルムの熱処理(熱固定)を行い、フィルムの性質を固定する。特に、2−メチル−1,3−プロパンジオール単位の含有量が低く半結晶性を有する場合や、2−メチル−1,3−プロパンジオールを改質剤として添加した場合は有効である。熱処理により、寸法安定性や良好な引張特性を付与することが出来る。熱処理は、通常190〜240℃の温度で行われる。このような熱処理温度は、2−メチル−1,3−プロパンジオール単位の含有量が多い場合に好ましい。2−メチル−1,3−プロパンジオール単位の含有量が低い場合、熱処理温度が80〜100℃であることが好ましい。本発明において、高い収縮率を有するフィルムを製造する場合、熱処理を行わなくてもよい。
【0037】
ポリマーフィルムの表面改質は特に必要とされないが、所望の性質を付与する塗布層を形成する前に、ポリマーフィルムの表面改質を行うことが好ましい。公知の表面改質方法としては、コロナ処理が最も一般的で好ましく、フィルム表面に塗布層への接着性を付与することが出来る。コロナ処理や他の表面改質法により、塗布層を設ける際の塗布液への濡れ性が十分となるようにすべきである。そのためには、通常、約1.0W/(フィート)・分の強度でコロナ処理を行うことが好ましい。さらに、ポリマーフィルムと上記の塗布層との間に、接着層または他の中間層を任意に設けてもよい。
【実施例】
【0038】
実施例1、比較例1〜3:
以下の表1に示す共重合PET樹脂を使用し、5倍に1軸延伸したフィルムを作成した。得られたフィルムに対し、熱エアーガンを使用して加熱し、収縮率を測定した。加熱は80℃と99℃で行った。2−メチル−1,3−プロパンジオール単位を有する実施例1のフィルムは、他の共重合ジオール単位を有する比較例1〜3のフィルムと比較して、収縮率が高く、特に加熱温度が80℃においてその効果が顕著であった。
【0039】
【表1】

【0040】
以上、実践的であり、且つ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読みとれる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、その様な変更を伴う場合も本発明の技術的範囲であると理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸と2−メチル−1,3−プロパンジオールを含有するジオールとをモノマーとして製造される共重合ポリエステル樹脂から成る収縮ポリマーフィルムであって、80℃の熱水浴中で10秒間処理した際の主たる収縮方向の収縮率が50%以上であることを特徴とする収縮ポリマーフィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の収縮ポリマーフィルムから成るラベル。
【請求項3】
透明である請求項1に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項4】
前記共重合ポリエステル樹脂が、通常の輸送中における温度で熱収縮を起こさない程度のガラス転移温度を有する請求項1に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項5】
前記共重合ポリエステル樹脂が、室温において粘着性を有しない程度のガラス転移温度を有する請求項1に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項6】
温度90℃、圧力40ポンド/インチの条件で5秒間、前記収縮ポリマーフィルム同士をヒートシールすることによりヒートシール可能である請求項1に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項7】
ジオール成分中の2−メチル−1,3−プロパンジオール単位の構成割合が5〜50モル%である請求項1に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項8】
ジオール成分中の2−メチル−1,3−プロパンジオール単位の構成割合が10〜35モル%である請求項1に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項9】
ジオール成分中の2−メチル−1,3−プロパンジオール単位の構成割合が20〜30モル%である請求項1に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項10】
ジオール成分中の2−メチル−1,3−プロパンジオール単位の構成割合が10モル%を超える請求項1に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項11】
ジオール成分中の2−メチル−1,3−プロパンジオール単位の構成割合が50〜100モル%である請求項1に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項12】
主たる収縮方向の収縮率が50%以上である請求項1に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項13】
主たる収縮方向の収縮率が50〜80%である請求項1に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項14】
主たる収縮方向の収縮率が70〜80%である請求項1に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項15】
ジオール成分としてエチレングリコールを含有する請求項1に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項16】
ジオール成分としてエチレングリコールと他のグリコール成分を含有する請求項1に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項17】
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を含有する請求項1に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項18】
さらに他の樹脂を含有する請求項1に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項19】
他の樹脂がPETGである請求項18に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項20】
他の樹脂がポリエチレンナフタレートである請求項18に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項21】
他の樹脂がポリスチレンである請求項18に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項22】
さらに塗布層を有する請求項1に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項23】
塗布層が水性である請求項22に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項24】
厚さが10〜200μmである請求項1に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項25】
厚さが25〜100μmである請求項1に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項26】
共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度が50〜72℃である請求項1に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項27】
共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度が55〜65℃である請求項1に記載の収縮ポリマーフィルム。
【請求項28】
ジカルボン酸と2−メチル−1,3−プロパンジオールを含有するジオールとをモノマーとして製造される共重合ポリエステル樹脂を押出しす工程から成るポリマーフィルムの製造方法であって、得られるポリマーフィルムの、80℃の熱水中で10秒間処理した際の主たる収縮方向の収縮率が50%以上であることを特徴とするポリマーフィルムの製造方法。
【請求項29】
さらに、ポリマーフィルム製造中にインライン法で塗布を行う工程を有する請求項28に記載の製造方法。
【請求項30】
さらに、ポリマーフィルム製造中に熱処理を行う工程を有する請求項28に記載の製造方法。
【請求項31】
さらに、ポリマーフィルム製造後に、収縮性を付与するための熱処理を行う工程を有する請求項28に記載の製造方法。
【請求項32】
フィルムの収縮性が最大となる温度が80℃未満である請求項31に記載の製造方法。
【請求項33】
さらに、少なくとも1方向にポリマーフィルムの延伸を行う工程を有する請求項28に記載の製造方法。
【請求項34】
主たる延伸方向の延伸比が2〜10となるように延伸を行う請求項33に記載の製造方法。
【請求項35】
主たる延伸方向の延伸比が4〜7となるように延伸を行う請求項33に記載の製造方法。

【公表番号】特表2007−521364(P2007−521364A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517301(P2006−517301)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/019133
【国際公開番号】WO2004/113043
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(598053374)ミツビシ ポリエステル フィルム エルエルシー (5)
【Fターム(参考)】