説明

プロペラシャフト

【課題】本発明は、前記した従来の技術が有する問題を解決し、プロペラシャフトにおいて、回転時に生じる曲げ方向の振動をより低減することを目的とする。
【解決手段】本体筒に制振部材が内挿されたプロペラシャフトであって、該制振部材は、(a)振動騒音軽減部と、(b)前記振動騒音軽減部を前記本体筒の内周面に密着するように支持する弾性支持部とから構成され、前記振動騒音軽減部が不織布からなり、該不織布の厚みt(mm)とシャフトの内径をD(mm)の比が、1/80<t/D≦1/4であることを特徴とするプロペラシャフトである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロペラシャフト(推進軸)に関するもののうち、特に、スチールや強化繊維を用いたプロペラシャフト(推進軸)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車や船舶等のプロペラシャフトは、エンジンからの高速回転による加振力やエンジンからのトルク発生の変動に伴う周波数の振動や、他部品の振動およびこれらの高次の振動が複合的に作用する。これらの外部振動の周波数がプロペラシャフトの固有周波数に一致するとプロペラシャフトは共振状態になり、大きな振動や騒音を発生する。発生した騒音は搭乗者に不快感を与えることになる。
【0003】
この問題を解決するためには、振動源の周波数とそれぞれの周波数に対してプロペラシャフトの固有周波数が一致しないように、プロペラシャフトを設計すれば良いが、様々な制約のため、そのような設計が困難な場合もある。
【0004】
そこで良く行われる手法の一つとして、プロペラシャフトを構成する本体筒内に制振構造体を設け、外部からの振動応答を低くするとともに、プロペラシャフト自体に振動減衰機能を付与する技術がある。この技術としては、様々なものが提案されている。
【0005】
例えば、厚紙を円筒状に巻いた紙管を制振部材として本体筒内に挿入し、厚紙の弾性による復元力で紙管を本体筒の内面に密着させ、その密着力により共振を抑制する制振機能を得る技術が特許文献1に開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、本体筒内部に挿入する厚紙を複数回巻き付けて紙管を構成することにより、厚紙が1層だけの紙管より復元力が大きくなるので、紙管と本体筒内面の密着力がより大きくなり、より高い制振機能をえることが開示されている。しかしながら、いずれの方法も厚紙は大きな復元力が期待できる硬い紙が求められるため、厚紙内部の繊維の擦れ合いによる振動エネルギーの熱エネルギーへの変換効果はほとんどない。
【0007】
さらに、特許文献3には、本体筒に挿入する制振構造材として、本体筒内面との摩擦力を期待する層(摩擦係合部)と、本体筒内面と制振材を押しつける層(弾性支持部+筒状保持部)を組み合わせることにより、紙管だけを挿入する場合に比べて、大きな制振効果を得る技術が公開されている。この方法では、周方向に分割された摩擦接合部と、該摩擦接合部と一致するように頂部を設けた弾性支持部の摩擦力による減衰により振動抑制効果を発揮するため、チューブ内面に精度良く摩擦接合部を設ける工程が必要かつ、弾性支持部にも摩擦接合部と一致する形状が求められ、コスト増の要因になる。また、周方向に分割した摩擦接合部を設ける手間を省くために、周方向に分割していないフィルム状物と任意の間隔で頂部を設けた弾性支持部との接触面において発生する摩擦力による減衰を期待する方法が記載されているが、その方法では筒状保持部がないため、振動抑制効果が少ない。また、いずれの方法も摩擦部分はチューブ内周面全体ではないため、摩擦面積が小さくなり効率が悪くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−148621号公報
【特許文献2】特開2006−220187号公報
【特許文献3】特開平8−105489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記した従来の技術が有する問題を解決し、プロペラシャフトにおいて、回転時に生じる曲げ方向の振動をより低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のプロペラシャフトは、前記した課題を解決するため、次の構成を有する。すなわち、
(1)本体筒に制振部材が内挿されたプロペラシャフトであって、該制振部材は、(a)振動騒音軽減部と、(b)前記振動騒音軽減部を前記本体筒の内周面に密着するように支持する弾性支持部とから構成されることを特徴とし、前記振動騒音軽減部が不織布からなり、該不織布の厚みt(mm)とシャフトの内径をD(mm)の比が、1/80<t/D≦1/4であることを特徴とするプロペラシャフト。
(2)前記振動騒音軽減部の不織布の厚みt(mm)とシャフトの内径をD(mm)の比が、1/20≦t/D≦1/4であることを特徴とする(1)に記載のプロペラシャフト。
(3)前記振動騒音軽減部が耐炎化繊維からなることを特徴とする(1)または(2)に記載のプロペラシャフト。
(4)前記振動騒音軽減部がポリエステルからなることを特徴とする(1)または(2)に記載のプロペラシャフト。
(5)前記弾性支持部が厚紙からなる(1)から(4)のいずれかに記載のプロペラシャフト。
(6)前記弾性支持部が少なくとも片面にラミネート加工を施した厚紙からなる(5)に記載のプロペラシャフト。
(7)前記弾性支持部が0.2GPa以上10GPa以下の引張弾性率である熱可塑性樹脂シートであることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載のプロペラシャフト。
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るプロペラシャフトによれば、振動騒音軽減部と弾性支持部の単純な構成かつ、円筒状に巻いた前記部材を本体筒に挿入するだけで、回転時に生じる曲げ方向の振動をより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るプロペラシャフトに制振部材が挿入された状態を示す(a)部分斜視図、および(b)横断面図である。
【図2】本発明に係るプロペラシャフトを用いて、インパルス加振応答による伝達関数を測定する様子を示した概略図である。
【図3】本発明に基づく実施例および比較例の伝達関数測定結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施する望ましい形態を、図を参照しながら説明する。なお、本発明はこれらの図によって限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明に係るプロペラシャフトに制振部材が挿入された状態を示す(a)部分斜視図、および(b)横断面図である。プロペラシャフト10は、最外層として本体筒1を有し、最内層として弾性支持部2、その間に中間層となる振動騒音軽減部3とから構成されている。
【0015】
本発明に用いられる本体筒1の素材は、特に限定されず、金属製でもよいが、小径化、短尺化により、共振周波数が低下する傾向にある繊維強化プラスチック(以下、FRP)を本体筒に適用すると、とくに大きな効果が得られる点で好ましい。
【0016】
本発明において、強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、セラミック繊維等が使用することができ、この中でも危険回転数を考慮すると炭素繊維の使用が好ましい。強化繊維として炭素繊維を単独で用いることが好ましいものの、炭素繊維以外の強化繊維を混合して使用してもよい。その場合、プロペラシャフトに必要なねじり強度や危険回転数を考慮すると、炭素繊維以外の強化繊維としては、強化繊維の全質量あたり40質量%以下とすることが好ましい。
【0017】
また、FRPとするために強化繊維に含浸させる樹脂、いわゆるマトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂などの熱硬化性樹脂が好ましく用いられ、中でも、エポキシ樹脂が特に好ましく用いられる。
【0018】
本発明において、プロペラシャフト10の内部には、(a)振動騒音軽減部3と、(b)前記振動騒音軽減部を前記本体筒の内周面に密着するように支持する弾性支持部2から構成される制振部材が内挿される。
【0019】
振動騒音軽減部3としては、シート状の形態を有するもののうち、不織布を使用することが本発明では重要である。不織布のように織っていない布を使用すると、振動エネルギーを、自身を構成する繊維同士の擦れ合いによる熱エネルギーに変えやすく、また不織布は貯蔵弾性率の高い材料であることから、振動エネルギーを自身の変形による熱エネルギーに変えることができるため、効率よく本体筒の振動を吸収することができる。また、シート状の形態を有する不織布を使用して、本体筒1の内周面をほぼ均一に全面を覆うことが好ましい。プロペラシャフト10全体の振動や騒音をほぼ均一に軽減できるからである。
【0020】
また、挿入する不織布の厚みは、不織布の厚みt(mm)とシャフトの内径をD(mm)としたとき、1/80<t/Dであることが重要である。不織布の厚みが1/80≧t/Dになると、繊維同士の擦れ合いが起こりにくくなるため、振動抑制効果が低下する。なお、かかる不織布の厚みは、複数枚挿入した不織布の合計厚みが1/80<t/Dを満足すれば問題ない。より好ましくは、不織布の厚みは1/20≦t/Dである。厚みが1/20>t/Dになると、プロペラシャフトに不織布を挿入する際に、不織布にしわが発生しやすく、挿入時の作業性が低下するからである。不織布の厚みは厚いほど良いが、余りに厚くなると、重量が重くなりすぎるので、通常は、t/D≦1/4程度が上限である。
【0021】
不織布の素材としては、特に限定されないが、耐熱性の観点から、耐炎化繊維を用いることが好ましい。また、耐炎化繊維に比べると耐熱性は劣るものの、入手しやすさ、経済性を考えると、ポリエステル繊維も好適である。
【0022】
しかしながら、不織布は材料自身が柔らかいため、不織布を単独で巻き付けて本体筒1の内部に挿入しても、本体筒1の内面と十分に接触することができず、効果的に振動エネルギーを熱エネルギーに変換することができない。本発明においては、振動騒音軽減部3単独ではなく、その内側に振動騒音軽減部3を固定する弾性支持部2を設けることが重要である。弾性支持部2として、引張弾性率が0.2GPa以上10GPa以下の熱可塑樹脂シートを用いることが好ましい。ここで、復元力の大きい弾性支持部2を、振動騒音軽減部3が本体筒1の内面と弾性支持部2に挟まれるように設置することにより、振動騒音軽減部3と本体筒1の内面とを十分に接触させることができる。したがって、本発明に係るプロペラシャフトにおいては、制振部材を、振動騒音軽減部3と、振動騒音軽減部3を本体筒1の内周面に密着するように支持する弾性支持部2とからなる構成にすることにより、従来の本体筒1の内面との密着力による振動抑制だけでなく、振動騒音軽減部3の振動エネルギーの熱エネルギー変換による振動抑制効果が得られるのである。
【0023】
弾性支持部2の引張弾性率が0.2GPa未満と小さくなると、本体筒1の内部に挿入したときに復元力を期待することができない。また、弾性支持部2の引張弾性率が10GPaを超えるように大きくなりすぎると、堅くなりすぎて、容易に円筒状に巻くことができず、作業効率が低下する等といった課題が発生する。本発明において、弾性支持部2の引張弾性率の範囲としては、好ましくは0.5GPa以上9GPa以下、より好ましくは0.6GPa以上8GPa以下、さらに好ましくは0.7GPa以上7GPa以下である。なお、弾性支持部2の弾性率は、ASTM D882に準拠して測定することができる。
【0024】
ここで、弾性支持部2は自身の大きな復元力により、本体筒1の内部で広がろうとすることで、振動騒音軽減部3と本体筒1の内面を十分に密着させることができる。さらに、弾性支持部2も、振動騒音軽減部3と同様に、本体筒1の内周面を、全周にわたってほぼ均一に覆うように設けられることが好ましい。このように、弾性支持部2および振動騒音軽減部3を本体筒1の内周面全周にわたってほぼ均一に覆うように設けることにより、先行文献3に開示されるように、弾性支持部2とは別体に設けた筒状保持部に相当するような部材が不要に出来る。
【0025】
弾性支持部2としては、上記の引張弾性率を発現するものであれば、特に材質等は限定されるものではないものの、熱可塑性樹脂シート以外にも、厚紙を用いることが好ましい。
【0026】
このうち、厚紙を用いる場合には、振動騒音軽減部3を本体筒1の内面に密着させやすくするには、堅い厚紙が望ましい。厚紙の形態としては、特に限定されないが、吸水による厚紙の劣化を防止するために、厚紙表面にラミネート加工されたものが好適である。
【0027】
ここで、熱可塑性樹脂シートとしては、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂など熱可塑樹脂が好適に用いられるが、入手しやすさ、耐熱性等を考慮するとポリエチレンテレフタレート樹脂が特に好ましい。
【実施例】
【0028】
次に、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、プロペラシャフトの振動減衰性能は次のようにして測定した。
【0029】
[プロペラシャフトの振動減衰性能]
プロペラシャフトの振動減衰性能は、FFT(Fast Fourier Transformation)を用いたインパルス加振応答による伝達関数から次のようにして測定する。図2に示すように、測定すべきプロペラシャフト4を、その両端を直径5mmのゴム5でつるした状態で、加速度センサー6を全長の1/2の位置に設置し、加速度センサー6の180°反対位置でインパルスハンマー7により加振し、インパルスハンマー7の打撃力と加速度センサー6から検出される加速度のシグナルをFFTアナライザー8へ取り込んで伝達関数を求め、曲げ1次固有値の伝達関数のy軸のピーク値からゲインを読みとった。シャフトの曲げ1次固有値と車体の固有振動数が近いと騒音(こもり音)が発生するが、この時、曲げ1次固有値でのゲイン(dB)の値が小さいほど発生するこもり音は小さくなり、搭乗者の感じる不快音も減少する。
【0030】
(実施例1)
フィラメントワインディング装置に、繊維折り返し治具を両端に固定した全長1300mm、直径80mmのマンドレルをセットし、当該マンドレルに、強化繊維として用いられる東レ(株)製炭素繊維“トレカ(登録商標)”T700SC−24Kの糸束3本を引き揃え、それにビスフェノールA型エポキシ樹脂、酸無水物および硬化促進剤を混合した溶液を含浸させた状態でマンドレルに巻き取るため給糸した。
【0031】
まず、最内層に、強化繊維をマンドレルの軸方向に対して+83度の巻き角度でマンドレルの全長にわたり、厚さ0.2mmで1層積層した。この時、繊維強化プラスチック製のプロペラシャフト本体の両端の接合強度を高めるために、プロペラシャフト本体の端部となるべき位置においては、マンドレルの軸方向に対して±83度の巻き角度でなく、マンドレルの軸方向に対して±85度の巻き角度で基準位置から135.7mmの長さにわたって7層積層して、続いて、同じ基準位置から±85度の巻き角度で181.7mmの長さにわたって8層積層して周方向補強層を両端部のそれぞれに形成した。
【0032】
次に、強化繊維をマンドレルの軸方向に対して±12度の角度で5層積層し、2.5mmの肉厚とした。ここで、強化繊維がマンドレルの外周面をすべて覆うために、1層当たりの強化繊維の往復回数は11回とした。つづいて、マンドレルの全長にわたりマンドレルの軸方向に対して−83度の巻き角度で0.2mm積層して前駆体を形成した。
【0033】
続いて、得られた前駆体を加熱炉に投入し、所定の温度条件にてエポキシ樹脂の硬化を行い、硬化が完了した後、マンドレルから成形品を脱芯した。脱芯後、成形品の両端103.5mmを切り落とし、長さ1093mm、中央部外径86mm、プロペラシャフトのFRP厚み2.9mmのプロペラシャフトを得た。
【0034】
得られたプロペラシャフトの中に、振動騒音軽減部として幅705mm、長さ525mmの不織布(旭化成(株)製の“ラスタン(登録商標)”、厚み5mm、t/D=1/16)を挿入後、弾性支持部として厚紙を挿入した(図2)。得られたプロペラシャフトについて振動減衰性能を測定した結果を、用いた振動抑制シートの材質や形状とともに表1および図3に示した。
【0035】
(実施例2)
用いる弾性支持部として、フィルム(東レ(株)製“ルミラー(登録商標)”、弾性率4GPa)に変更した以外は、実施例1と同様にした。得られたプロペラシャフトについて振動減衰性能を測定した結果を、用いた振動騒音軽減部の材質や形状とともに表1に示した。
【0036】
(実施例3)
用いる振動騒音軽減部として、幅705mm、長さ525mmの“eフェルト”(厚み10mm、t/D=1/8)に変更した以外は、実施例1と同様にした。得られたプロペラシャフトについて振動減衰性能を測定した結果を、用いた振動騒音軽減部の材質や形状とともに表1に示した。
【0037】
(実施例4)
用いる弾性支持部として、フィルム(旭ガラス(株)製“カーボグラス(登録商標)”、弾性率2GPa)に変更した以外は、実施例3と同様にした。得られたプロペラシャフトについて振動減衰性能を測定した結果を、用いた振動騒音軽減部の材質や形状とともに表1に示した。
【0038】
(実施例5)
用いる振動騒音軽減部として幅705mm、長さ525mmの不織布(旭化成(株)製の“ラスタン(登録商標)”、厚み10mm、t/D=1/8)を挿入後、弾性支持部としてフィルム(旭ガラス(株)製“カーボグラス(登録商標)”、弾性率2GPa)に変更した以外は、実施例1と同様にした。得られたプロペラシャフトについて振動減衰性能を測定した結果を、用いた振動騒音軽減部の材質や形状とともに表1に示した。
【0039】
(実施例6)
用いる弾性支持部として両面ラミネート紙(東海加工紙(株)製“サンプルNo34(カタログ記載名)”)に変更した以外は、実施例5と同様にした。得られたプロペラシャフトについて振動減衰性能を測定した結果を、用いた振動騒音軽減部の材質や形状とともに表1に示した。
【0040】
(実施例7)
用いるプロペラシャフトとして長さ900mm、内径80mm、厚み1.5mmのスチール製に変更した以外は、実施例1と同様にした。得られたプロペラシャフトについて振動減衰性能を測定した結果を、用いた振動騒音軽減部の材質や形状とともに表1に示した。
【0041】
(実施例8)
用いるプロペラシャフトとして長さ900mm、内径80mm、厚み1.5mmのスチール製に変更した以外は、実施例2と同様にした。得られたプロペラシャフトについて振動減衰性能を測定した結果を、用いた振動騒音軽減部の材質や形状とともに表1に示した。
【0042】
(比較例1)
振動騒音軽減部を使用しなかった以外は、実施例1と同様にした。得られたプロペラシャフトについて振動減衰性能を測定した結果を、用いた振動騒音軽減部の材質や形状とともに表1および図3に示した。
【0043】
(比較例2)
弾性支持部を使用しなかった以外は、実施例1と同様にした。得られたプロペラシャフトについて振動減衰性能を測定した結果を、用いた振動騒音軽減部の材質や形状とともに表1に示した。
【0044】
(比較例3)
振動騒音軽減部の厚みを変更した以外は、実施例1と同様にした。得られたプロペラシャフトについて振動減衰性能を測定した結果を、用いた振動騒音軽減部の材質や形状とともに表1に示した。
【0045】
(比較例4)
振動騒音軽減部を使用しなかった以外は、実施例4と同様にした。得られたプロペラシャフトについて振動減衰性能を測定した結果を、用いた振動騒音軽減部の材質や形状とともに表1に示した。
【0046】
(比較例5)
用いる振動騒音軽減部として、加熱したプレス機でフィルム状にした“eフェルト”(幅705mm、長さ525mm、厚み5mm、t/D=1/16))を用いた以外は、実施例4と同様にした。得られたプロペラシャフトについて振動減衰性能を測定した結果を、用いた振動騒音軽減部の材質や形状とともに表1に示した。
【0047】
(比較例6)
振動騒音軽減部を使用しなかった以外は、実施例7と同様にした。得られたプロペラシャフトについて振動減衰性能を測定した結果を、用いた振動騒音軽減部の材質や形状とともに表1に示した。
【0048】
実施例1、比較例1、比較例2それぞれの結果を比較すると、厚紙だけ使用した場合に比べ、厚紙と不織布を組み合わせると、ゲインを10dB以上低下させることができた。しかし、不織布のみ使用した場合ではゲイン低下効果がなかったことから、振動騒音軽減部(不織布)と弾性支持部(厚紙)とを組み合わせる必要があることが分かった。また、振動騒音軽減部(不織布)の厚みが薄くなると、振動抑制効果がなくなることがわかった(実施例1、比較例3)。さらに、弾性支持部に復元力の大きいフィルムを使っても、厚紙と同程度のゲイン低下効果が認められた(実施例1、実施例2、実施例5)。またさらに、弾性支持部に使用する厚紙の表面にラミネート加工をしても、厚紙と同程度のゲイン低下効果が認められた(実施例1、実施例6)。しかしながら、厚紙と同様に、弾性支持部のフィルムのみを使用した場合ではゲイン低下効果は得られなかった(実施例4、実施例5,比較例4)。
【0049】
実施例3、実施例4,実施例5、比較例5それぞれの結果を比較すると振動騒音軽減部として、材質よりも不織布としての形態が重要であることがわかった。実施例1、実施例2、実施例7、実施例8それぞれの結果を比較すると、シャフトの材質はFRPに限らずスチールでも効果があることが確認できた。また、シャフト材質がスチールの場合でも、振動騒音軽減部がないと、ゲイン低下効果がなかった(実施例7、比較例6)。
【0050】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係るプロペラシャフトは、車両、船舶、へリコプターなどのあらゆるプロペラシャフトとして利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 本体筒
2 弾性支持部
3 振動騒音軽減部
4 プロペラシャフト
5 ゴム
6 加速度センサー
7 インパルスハンマー
8 FFTアナライザー
10 プロペラシャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体筒に制振部材が内挿されたプロペラシャフトであって、該制振部材は、(a)振動騒音軽減部と、(b)前記振動騒音軽減部を前記本体筒の内周面に密着するように支持する弾性支持部とから構成されることを特徴とし、前記振動騒音軽減部が不織布からなり、該不織布の厚みt(mm)とシャフトの内径をD(mm)の比が、1/80<t/D≦1/4であることを特徴とするプロペラシャフト。
【請求項2】
前記振動騒音軽減部の不織布の厚みt(mm)とシャフトの内径をD(mm)の比が、1/20≦t/D≦1/4であることを特徴とする請求項1に記載のプロペラシャフト。
【請求項3】
前記振動騒音軽減部が耐炎化繊維からなることを特徴とする請求項1または2に記載のプロペラシャフト。
【請求項4】
前記振動騒音軽減部がポリエステルからなることを特徴とする請求項1または2に記載のプロペラシャフト。
【請求項5】
前記弾性支持部が厚紙からなる請求項1から4のいずれかに記載のプロペラシャフト。
【請求項6】
前記弾性支持部が少なくとも片面にラミネート加工を施した厚紙からなる請求項5に記載のプロペラシャフト。
【請求項7】
前記弾性支持部が0.2GPa以上10GPa以下の引張弾性率である熱可塑性樹脂シートであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のプロペラシャフト。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−97899(P2012−97899A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217023(P2011−217023)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】