説明

プロポリスの品質評価方法

【課題】プロポリスの品質評価方法において、容易に判断することができるプロポリスの品質評価方法を提供する。
【解決手段】プロポリスの品質評価方法において、プロポリス中のDNAの大きさを指標とすることを特徴とする。プロポリスの品質評価方法は、例えばプロポリス中のDNAを抽出する工程、該DNAを分子篩の手段を用いることにより、DNAの大きさを測定する工程からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロポリスの品質評価方法に係り、詳しくはプロポリス中のDNAの大きさを測定することにより容易に品質、例えば鮮度を判断することが可能なプロポリスの品質評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロポリスは、巣の防御及び補強等を目的として、ミツバチが採取した植物の滲出液、新芽、及び樹脂等にミツロウを混ぜて作られる膠状ないしは蝋状の物質である。このプロポリスは、ミツバチが原料として巣箱周辺の種々の植物を採取して生産されるため、多種多様な成分を含有している。
【0003】
プロポリス原塊は、紀元前4世紀に編纂されたアリストテレスの動物誌に「皮膚疾患、切り傷、感染症の治療薬」として記載されているように、抗菌効果や抗炎症効果を有していることが古くから知られている。また、プロポリスの主要な生理活性として、例えば抗酸化作用、免疫賦活作用、及び抗癌・抗腫瘍作用が知られている。そのため、プロポリスは、ヨーロッパにおいては医薬品或いは健康食品の素材として古くから用いられてきたが、1985年以降から日本においても健康食品や化粧品の素材の他、疾病の予防や治療等の多くの製品に使用されるようになった。
【0004】
ところで、現在プロポリスの品質(例えば鮮度)に関する明確な基準はなく、一般に、プロポリスの品質の確認及び選別方法は、例えば外観、匂い、柔らかさ、断面、及び触感等の官能評価、並びに抽出エキスの成分に基づいて行われることが多い。しかしながら、それらは経験則に頼るところが大きく、成分によっては諸条件による変化のしやすさが異なる等、試験者又は取り扱い業者によって評価結果に大きな差が生じる場合がある。さらに、例えばプロポリスは産地、巣箱の周辺植物の変化、採取方法、及び管理方法等によって外観等が変化するため、官能評価に基づいて正確にプロポリスの品質を評価することは容易ではなかった。
【0005】
従来より、特許文献1に開示されるように食品中に含まれる特定成分を追跡することにより食品の鮮度を評価する方法が知られている。特許文献1は、食品表面に存在する特定成分に着目することにより、食品の鮮度を判断する方法について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−318617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、プロポリスは、多種多様な成分を有効成分として含有するが、これまで鮮度に関する指標成分等はこれまで示されていなかった。また、プロポリスの成分は起源植物材料の配合比率の相違によって異なってくるものと考えられている。また、同じ産地でも地域、生産者、時期等により物性、成分組成が多少異なることが知られている。プロポリスは、通常ミツバチの巣箱(プロポリス採取用に工夫された巣箱)を数日〜1ヶ月程度野外に設置することにより産生される。そのため、季節により又は巣箱の移動により周辺植物が変化することが考えられ、プロポリスを構成する成分も多様に及ぶことが考えられる。したがって、例えばプロポリス中の特定成分を追跡する場合、プロポリスの産地、周辺植物、採取時期等の相違により、追跡する成分も変化させる必要性が生じるものと思料される。
【0008】
上述したプロポリスの特定の生理活性を追跡することによりプロポリスの品質を評価することも検討されるが、必ずしも明確な経時的な変化が確認されているわけではない。また、着目する生理活性の種類によっては、測定に時間を要し、迅速且つ容易に結果を知ることができない場合も考えられる。
【0009】
本発明は、プロポリスに含有される成分のうちDNAに着目し、該DNAの大きさとプロポリスの品質に相関が得られることを発見したことに基づくものである。
本発明の目的とするところは、プロポリスの品質評価方法において、容易に判断することができるプロポリスの品質評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明のプロポリスの品質評価方法は、プロポリス中のDNAの大きさを指標とすることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプロポリスの品質評価方法において、前記プロポリス中のDNAを抽出する工程、該DNAを分子篩の手段を用いることにより、DNAの大きさを測定する工程からなることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の品質評価方法において、前記品質評価は、プロポリスの鮮度を評価対象とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プロポリスの品質評価方法において、容易に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】2週間(短期)の加速試験におけるDNAのアガロースゲル電気泳動の写真を示す(尚、写真は明瞭化のため白黒反転処理を行っている)。
【図2】8週間(長期)の加速試験におけるDNAのアガロースゲル電気泳動の写真を示す(尚、写真は明瞭化のため白黒反転処理を行っている)。
【図3】2週間(短期)の加速試験におけるDNAの大きさ(塩基対数)分布のピーク値の経時的変化を示すグラフ。
【図4】8週間(長期)の加速試験におけるDNAの大きさ(塩基対数)分布のピーク値の経時的変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のプロポリスの品質評価方法をプロポリスの鮮度評価方法として具体化した実施形態を説明する。
本実施形態のプロポリスの鮮度評価方法は、プロポリス中のDNAの大きさを指標とする。具体的な操作方法としては、好ましくは、まずプロポリス中のDNAを抽出する工程、次に該DNAを分子篩の手段を用いることにより、DNAの大きさを測定する工程からなる。
【0015】
本実施形態のプロポリスの鮮度評価方法は、プロポリス中のDNAの大きさを指標として、経時的にその減少割合を追跡することにより、プロポリスの鮮度を評価するものである。プロポリス中の有効成分であるカフェオイルキナ酸類又はプレニル桂皮酸誘導体は、経時的に含有量が減少することが本発明者らによって確認され、さらに、プロポリス中のDNAの大きさとプロポリス中のカフェオイルキナ酸類又はプレニル桂皮酸誘導体の含有量は、良好な相関があることが確認された。したがって、本実施形態のプロポリスの鮮度評価方法は、プロポリス中のDNAの大きさのみを指標とすることによって、プロポリスの鮮度を評価することができる。
【0016】
鮮度評価に用いられるプロポリスの被検体としては、巣箱から採取したプロポリス原塊が用いられる。プロポリスは、巣の防御及び補強等を目的として、セイヨウミツバチ等のミツバチが採取した植物の滲出液、新芽及び樹脂等に唾液を混ぜて作られる膠状ないしは蝋状の物質である。本実施形態において使用されるプロポリスの産地は、特に限定されず、例えば日本及び中国のアジア、ブラジル、アルゼンチン、及びウルグアイ等の南米諸国、ハンガリー及びブルガリア等のヨーロッパ、カナダ等の北米、オーストラリア及びニュージーランド等のオセアニアのいずれの産地のプロポリスにも適用することができる。これらの中でも特にDNA含有量の高い新芽を多く含むブラジル産プロポリスが好ましく、グリーンプロポリスがより好ましい。
【0017】
本実施形態のプロポリスの鮮度評価方法は、まずプロポリス原塊等の被検体からプロポリス由来のゲノムDNAを抽出する工程が行われることが好ましい。被検体からのゲノムDNAの抽出方法は、分子生物学の分野で公知の方法を用いることができ、必要に応じて精製処理してもよい。ゲノムDNAの抽出方法としては、例えばシリカベーズレジンタイプキット法(Promega Wizard DNA Clean-Up System)、シリカゲル膜タイプキット法(QIAGEN DNeasy Plant Mini Kit 改定法、NIPPON GENE GM quicker)、及びCTAB法が挙げられる。市販品としては、例えばInvitrogen社製のTRIzol Reagentが挙げられる。
【0018】
次に、上記のように抽出されたDNAは、分子篩の手法を用いてDNAの大きさが測定される。分子篩は、DNAを大きさの相違により分離することができる公知の手法であれば、適宜採用することができる。分子篩の簡便な手法としては、例えばろ過、電気泳動、及び分子排斥クロマトグラフィーが挙げられる。これらの手法を単独で使用してもよく、精度を向上させるために2種以上の手法を組み合わせて使用してもよい。ろ過としては、特定の大きさの細孔を有する限外ろ過膜を各種用いることにより、DNAを大きさの相違により分離することができる。電気泳動としては、例えばアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、パルスフィールド電気泳動、及びキャピラリー電気泳動を挙げることができる。分子排斥クロマトグラフィーは、サイズ排除クロマトグラフィー、分子篩クロマトグラフィーとも呼ばれ、分子サイズに基づく篩分けを原理とするクロマトグラフィーである。移動相が有機溶媒であるゲル浸透クロマトグラフィーと移動相が水溶液であるゲルろ過クロマトグラフィーのいずれも採用することができる。これらの中で、操作が簡便でDNAの大きさの分布の確認が容易なアガロースゲル電気泳動が好ましく用いられる。
【0019】
DNAの検出は、例えば、エチジウムブロマイド等のフェナントリジン系の色素を用い検出することができる。エチジウムブロマイドは、核酸に結合して紫外線照射によりDNA量に比例した蛍光を発する。予め標識分子(例えば、蛍光分子、色素分子、及び放射性同位元素等)を用いて合成又はそれらの標識分子を付加したプローブにより、公知の方法を用いてDNAを検出してもよい。
【0020】
次に、上記の方法により検出されたDNAの大きさが求められる。求められるDNAの大きさの単位としては、特に限定されないが、例えばDNAを構成する塩基の数(Base pair:bp)、DNAの分子量(Molecular weight:MW)、DNAの長さ(nm)が挙げられる。それらは市販の各種マーカーを指標として用いることにより求めることができる。被検体中のDNAは、様々な大きさのDNA分子が含有されるため、DNA分子の大きさの分布のピーク値(最大頻度値)、又はDNA分子の大きさの平均値が求められる。これらの中で、比較的算出又は判断が容易なDNAの大きさ、例えば分子量及び塩基対数の分布のピーク値が求められることが好ましい。
【0021】
プロポリスは、植物の生体から採取された新芽等を原料としてミツバチによって作られる。したがって、プロポリス中には植物及びミツバチ由来のDNAが含有される。DNAは物理的、化学的なストレス、例えば紫外線、熱、振動、酸化、及び酵素による分解等を受けることによって除々に切断(断片化)され、時間の経過に伴って大きさの減少を伴う。本実施形態は、プロポリス採取後の一定経過時間毎、例えば日単位、週単位、月単位、及び年単位毎におけるプロポリス中のDNAの大きさの減少割合を追跡することにより、プロポリスの鮮度を評価するものである。
【0022】
本実施形態のプロポリスの鮮度評価方法によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態のプロポリスの鮮度評価方法では、プロポリス中のDNAの大きさを指標とした。したがって、短時間に且つ特別な装置を用いることなく、容易に判断することができる。また、試験者によって判断に差が生じることがないため、外観・匂い等の官能試験に比べ正確な判断をすることができる。
【0023】
(2)本実施形態のプロポリスの鮮度評価方法では、プロポリスの原料となる植物体及び蜂由来のDNAの大きさを指標として判断する。したがって、プロポリスの産地、巣箱の周辺植物の種類、植物の採取部位等の相違によって外観、有効成分の種類・含有量等に差が生じていたとしても、それらの相違に左右されることなく、プロポリスの鮮度を正確に判断することができる。また、本実施形態のプロポリスの鮮度評価方法により、複数の品質(例えば鮮度)に関わる成分をそれぞれ抽出し、それらの成分の変化を経時的に追跡する必要はなく容易に実施することができる。
【0024】
(3)本実施形態のプロポリスの鮮度評価方法では、好ましくはプロポリス中のDNAを抽出する工程、該DNAを分子篩の手段を用いることにより、DNAの大きさを測定する工程からなる。したがって、高価な装置を用いることなく、簡易な手段により判断することができる。
【0025】
(4)本実施形態のプロポリスの鮮度評価方法では、好ましくは分子篩の手法としアガロースゲル電気泳動が用いられる。したがって、操作がより簡便でDNAの長さ分布の確認を容易に行うことができる。
【0026】
(5)本実施形態のプロポリスの鮮度評価方法により、プロポリスの鮮度を容易に判断することができる。したがって、プロポリス自体や該プロポリスを有効成分として含有する健康食品等の飲食品、化粧品の素材、並びに疾病の予防及び治療等に用いられる医薬品等の製品の品質や有効期限等の判断基準として用いることができる。
【0027】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、本発明のプロポリスの品質評価方法をプロポリスの採取時に近いか否かを判断するプロポリスの鮮度評価方法として適用した。そして、上記実施形態の鮮度評価方法を適用することにより、プロポリス中の有効成分の残存量がプロポリスの採取時の含有量に近いか否かを判断することができる。しかしながら、鮮度以外の品質を評価する場合に適用してもよい。例えば、鮮度以外の品質として、例えば抗癌作用等の作用・薬効に関する品質、味覚及び匂い等の官能に関する品質が優れるか否かの評価に適用してもよい。
【0028】
・上記実施形態の採用することにより、採取されたプロポリス原塊について、ミツバチがプロポリスを産生してからどれだけ時間が経過したか、又はプロポリスを巣箱から採取してからの保存条件が適切であったかどうかを総合的に判断する方法に適用することもできる。
【0029】
・プロポリス原塊等の被検体からDNAを抽出することなく、被検体中のDNAの大きさを測定する方法があれば、その方法により、プロポリスの品質を評価してもよい。
・カフェオイルキナ酸類又はプレニル桂皮酸誘導体の含有量又は含有比率からプロポリスの品質を判断することもできる。
【実施例】
【0030】
以下に実施例及び比較例を挙げ、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<試験例1:プロポリス中の成分の経時的変化>
プロポリス原塊としてブラジル産プロポリスを試験試料として使用した。試験試料を冷凍から戻した後に2ヶ月間冷蔵保存し、常温に戻した時点を0週試料とし、その後40℃、湿度75%、密閉なしの状態で4週間保存したものを加速試験処理後の試験試料(1週、2週、3週、4週試料)として使用した。
【0031】
各プロポリス原塊の粉砕物10gに、抽出溶媒としての95容量%エタノール/水35mLを加えて室温(約25℃)で4時間攪拌して抽出した。そして、前記プロポリス粉砕物の攪拌抽出液を濾紙(アドバンテック東洋株式会社製のNo.2)で濾過して残渣を除去することによって、プロポリス抽出液30mL(固形分14.8質量%)を得た。
【0032】
各プロポリス抽出物中の下記カフェオイルキナ酸類及び桂皮酸誘導体の各成分について測定を行なった。各プロポリス抽出物を95容量%エタノールにて100倍希釈して試料溶液を調製した。これらの試料溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分析し、標準品と比べることにより、バッカリン、アルテピリンC、ドゥルパニン、3,4,5−トリカフェオイルキナ酸、3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、及びp-クマル酸の各成分を定性した。尚、プレニル桂皮酸誘導体は、プロポリスの中でもブラジル産グリーンプロポリス特有の成分として知られ、また抗癌作用等の作用・薬効に関する物質としても知られている。
【0033】
HPLCの分析条件は、カラム:Shim−Pack CLC−ODS 6.0mmI.D.×150mm(島津製作所社製)、溶媒:[0%(0分)→100%(50分)→100%(60分)アセトニトリル]+2%酢酸 グラジエント、検出波長:280nm、カラム温度:40℃である。その結果を表1に示す。表1にはHPLCによって算出されるピークの面積値(×1000)を示す。
【0034】
【表1】

表1に示されるように、プロポリス中の有効成分である各カフェオイルキナ酸類及び桂皮酸誘導体の成分は、経時的に含有量が減少していることが確認された。
【0035】
<試験例2:プロポリス中のDNAの大きさの経時的変化>
(試験試料及び保存条件)
プロポリス原塊としてブラジル産プロポリスを試験試料として使用した。試験試料を2週間(短期)加速条件下で保存した場合、及び8週間(長期)加速条件下で保存した場合の2種類の異なる条件で保存した。2週間(短期)保存した場合は、試験試料を冷凍保存から常温に戻した時点を0週試料とし、その後40℃、湿度75%、密閉なしの状態で1週間保存したものを1週試料とし、さらにもう1週間同条件で保存したものを2週試料とした。8週間(長期)保存した場合は、試験試料を冷凍から戻した後に2ヶ月間冷蔵保存し、常温に戻した時点を0週試料とし、その後40℃、湿度75%、密閉なしの状態で2週間保存したものを2週試料とし、さらにもう6週間同条件で保存したものを8週試料とした。
【0036】
(試験試料からのDNAの抽出及び検出)
上記各試験試料のプロポリス原塊からのDNA抽出は、TRIzol Reagent(Invitrogen 社製)を用いて行った。プロポリス原塊を50mg〜100ng、2mLエッペンチューブに秤量した。1mLのTRIzol Reagentを添加して混合した。300μLのクロロホルムを添加し、15秒ほどしっかりと転倒混和させ、常温で2〜3分放置した。これらを5000〜5500rpmで15分低温遠心し、上層を捨てた。450μLのエタノールを添加し、転倒混和させ、常温で2〜3分放置した。2500rpmで5分低温遠心し、上層(フェノール−エタノール層)を捨てた。これに1mLの0.1Mクエン酸ナトリウム−10%エタノールを添加し、常温で30分転倒混和した。2500rpmで5分低温遠心し、上層を捨てた。1.5〜2.0mLの75%エタノールを添加し、常温で30分転倒混和した。2500rpmで5分低温遠心し、上層を捨てた。エッペンチューブを、15〜30分程度風乾させ、300〜600μLの8mM−NaOHで希釈する。TEに20倍希釈して全体を30μLから600μLにした。紫外線吸光度測定(230〜320nm)によって、スペクトルを測定し、257nm近辺にピークがあることを確認した。尚、次工程に示されるように、最終的にDNAの分子量を電気泳動により求めるため、各DNA抽出試料間のDNA濃度を均一にする必要はない。しかしながら、この際、比較を容易にするためにDNA濃度が均一になるよう溶液を調整してもよい。
【0037】
DNA抽出後、2.0%アガロースゲル上で電気泳動し、エチジウムブロマイド染色した後、UV光下でバンドを検出した。特定の塩基対数からなるDNAマーカーを試験試料と同時に泳動し、試験試料のDNAの大きさを塩基対数として求めた。電気泳動写真の結果について、2週間の短期加速試験(冷凍から戻した直後に、40℃、湿度75%、密閉なし)の場合を図1、8週間の長期加速試験(冷凍から戻した後に冷蔵で2ヶ月保存し、その後40℃、湿度14%、密閉なし)の場合を図2にそれぞれ示す。
【0038】
電気泳動で得られたDNAのバンドを画像処理ソフト(ImageJ)を用いて解析し、DNAの大きさ(塩基対数)分布のピーク値を求めた。経過時間に対する各ピーク値の変化について、2週間の短期加速試験(冷凍から戻した直後に、40℃、湿度75%、密閉なし)の場合を図3、8週間の長期加速試験(冷凍から戻した後に冷蔵で2ヶ月保存し、その後40℃、湿度14%、密閉なし)の場合を図4にそれぞれ示す。
【0039】
図3,4に示されるように、2週間の短期加速試験(冷凍から戻した直後に、40℃、湿度75%、密閉なし)及び8週間の長期加速試験(冷凍から戻した後に冷蔵で2ヶ月保存し、その後40℃、湿度14%、密閉なし)のいずれにおいても、DNAの断片化が進行し、経時的にDNAの塩基対数のピーク値が減少していることが確認された。一般に、DNAの含有量を正確に定量することは、困難であり、またプロポリスの産地、収穫時期等により変動することが予測されるためプロポリスの鮮度の指標とすることは容易ではない。一方、上記に示されるようにDNAの大きさを追跡することは、測定が容易であり、且つプロポリスの産地、収穫時期等にかかわらず正確に判断することができる。
【0040】
試験例1の結果と併せて検討すると、プロポリス中のDNAの大きさとプロポリス中の有効成分の含有量は、良好な相関があることが確認された。一般に、プロポリス中の有効成分を抽出し、分離処理後、複数の有効成分をそれぞれ正確に定性及び定量することは可能であるが、それはプロポリスの産地、収穫時期等により各成分の種類及び含有量が変動することが予測される。したがって、プロポリス中のDNAの大きさをプロポリスの鮮度の指標とする方が、判定がより容易である。また、上記に示されるようにDNAの大きさを追跡することは、測定が容易であり、且つプロポリスの産地、収穫時期等にかかわらず正確に判断することができる。
【0041】
<試験例3:プロポリスの抗酸化活性の経時的変化>
プロポリスの生理活性作用の一つである抗酸化作用をラジカル捕捉能試験によって比較した。試験試料として、プロポリス原塊を採取後、2ヶ月間冷蔵(4℃)保存したもの、2ヶ月間冷蔵(4℃)保存したプロポリス原塊をさらに2ヶ月間遮光密閉(40℃雰囲気下)したもの、及び2ヶ月間冷蔵(4℃)保存したプロポリス原塊をさらに2ヶ月間遮光開放(40℃雰囲気下)したものを使用した。
【0042】
各プロポリス抽出物を無水エタノール中に各々8mg/mLの濃度で溶解させて試料溶液を調製した。前記各試料溶液2mLに、170μMのDPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)エタノール溶液2mLを加えて混合し、DPPHエタノール試料溶液とした後、室温で15分間反応させた。そして、分光光度計(島津製作所製UV-1200)を用いて、各DPPHエタノール試料溶液の光の波長519nmにおける吸光度を測定した。なお、対照としてエタノールを用いて同操作を行い、各DPPHエタノール試料溶液(20μg/mL)のラジカル捕捉活性率(%)を求めた。そして、検量線を作成して50%阻害濃度IC50(mg/mL)を算出した(試験はn=3で測定)。その結果を表2に示す。なお、表2においてIC50の値が低いほど抗酸化作用が強いことを示している。
【0043】
【表2】

表2に示されるように、プロポリスの抗酸化活性は、経時的に有意に変化しないことが確認された。したがって、プロポリスの抗酸化活性は、プロポリスの鮮度の指標とすることは有効ではないと思料される。
【0044】
その他、既に食品の鮮度分析に使用されている手法、例えばプロポリス中の遊離グルコース、アンモニア、ACE阻害活性、アミラーゼ活性、K値及び95容量%エタノール/水抽出液のpHをそれぞれ一定期間経過毎に測定を行った。しかしながら、試験例1に示される成分との相関は得られなかったか、あるいはプロポリスに含有されている成分により測定自体が不可能であったことを確認している(データ不添付)。
【0045】
以上により、プロポリスの鮮度の判断として、測定が容易であり且つプロポリスの産地、収穫時期等にかかわらずより正確に判断することができる指標は、プロポリスのDNAの大きさを求めることが特に有効であることが確認された。
【0046】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(a)前記分子篩は、ろ過、電気泳動、及び分子排斥クロマトグラフィーから選ばれる少なくとも一種の手段である前記プロポリスの品質評価方法。
【0047】
(b)前記DNAの大きさの測定は、DNAを構成する塩基対数のピーク値(最大頻度値)が求められることを特徴とする前記プロポリスの品質評価方法。
(c)プロポリス中のバッカリン、アルテピリンC、ドゥルパニン、3,4,5−トリカフェオイルキナ酸、3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、及びp-クマル酸から選ばれる少なくとも一種を指標とすることを特徴とするプロポリスの品質評価方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロポリス中のDNAの大きさを指標とすることを特徴とするプロポリスの品質評価方法。
【請求項2】
前記プロポリス中のDNAを抽出する工程、該DNAを分子篩の手段を用いることにより、DNAの大きさを測定する工程からなることを特徴とする請求項1に記載のプロポリスの品質評価方法。
【請求項3】
前記品質評価は、プロポリスの鮮度を評価対象とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の品質評価方法。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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