説明

プロンプター装置

【課題】被写体光がハーフミラーを通過することによって生じる光路長差を減殺する光学部材をハーフミラーとテレビカメラとの間に設置することにより、撮影画像に色の滲みが発生するのを防止できるプロンプター装置を提供する。
【解決手段】ハーフミラー20とENGカメラ14との間にコートガラス24を配置する。コートガラス24は、反射防止膜がコーティングされたガラス板で構成され、ハーフミラー20と逆方向に所定角度傾斜させて設置する。被写体光が、ハーフミラー20を通過することによって生じる光路長差は、コートガラス24を通過することによって相殺され、結果として、色の滲みの発生しない画像が撮影される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロンプター装置に係り、特にHDTV(High Definition TeleVision:高品位テレビ)カメラ用のプロンプター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロンプター装置は、キャスター等の原稿読上者が、あたかも原稿を暗記して読み上げているかのように、目線をテレビカメラに向けながら原稿を読上げることができるようにした装置である。
【0003】
一般的なプロンプター装置は、テレビカメラの前方にハーフミラーが45度傾斜して配置され、そのハーフミラーの下方に原稿表示用のモニタが表示面を上側にして配置される。被写体光は、ハーフミラーを通過して撮影レンズに入射する一方、モニタに原稿画像が表示されると、その原稿画像がハーフミラーを介してカメラ前方に反射され、原稿読上者に視認できるようになる(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−60938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プロンプター装置を用いてワイド画角で撮影すると、ハーフミラーの上部を通過する光線が、ハーフミラーに対して鋭角で入射するようになり、この結果、図5に示すように、カメラで撮影される画像の上部に色の滲みが出るという欠点がある。
【0005】
すなわち、図6に示すように、ハーフミラーの下部では垂直に近い状態で光線が入射されるため、垂直に入射した光に対して光路長の差は、ほとんどないが、ハーフミラーの上部では水平に近い状態で光線が入射されるため、ハーフミラーの厚みの影響によって垂直に入射した光に対して光路長の差が大きくなってしまうこと、また、ハーフミラーのコーティングの特性上、入射角依存性による光線角度によって周波数特性がズレること、さらに色調整はテレ側の画角で行っていることにより、ワイド画角で撮影した際、撮影画像の上部に色の滲みが出てしまう。
【0006】
特にHDTVカメラの場合、SDTV( Standard Definition TeleVision :標準品位テレビ)カメラよりも色の性能が向上しているため、この問題が顕著になっている。
【0007】
また、HDTVカメラの場合、SDTVカメラよりもワイドな画角で撮影されることから、SDTVカメラ用のものよりも大きなハーフミラーが用いられており、その強度を確保するためにSDTVカメラ用のものよりも厚いものが用いられている。この結果、更に光路長に差が生じるようになり、色が付きやすくなるという欠点がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、撮影画像に色の滲みが発生するのを防止できるプロンプター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、前記目的を達成するために、モニタに表示された画像をテレビカメラの前面に所定角度傾斜させて配置したハーフミラーで前記テレビカメラの前方に反射させるプロンプター装置において、前記ハーフミラーを通過した光に生じる光路長の差を減じる光学部材を前記ハーフミラーと前記テレビカメラとの間に配置したことを特徴とするプロンプター装置を提供する。
【0010】
本発明によれば、ハーフミラーとテレビカメラとの間に配置された光学部材を被写体光が通過することにより、ハーフミラーを通過することによって生じた光路長の差が減殺される。これにより、撮影画像に色の滲みが発生するのを防止できる。
【0011】
また、請求項2に係る発明は、前記目的を達成するために、前記光学部材は、反射防止膜がコーティングされた所定厚さを有する板ガラスで構成され、前記ハーフミラーと逆方向に所定角度傾斜して設置されることを特徴とする請求項1に記載のプロンプター装置を提供する。
【0012】
本発明によれば、ハーフミラーを通過した光に生じる光路長の差を減じる光学部材として、反射防止膜がコーティングされた所定厚さを有する板ガラスが、ハーフミラーと逆方向に所定角度傾斜して設置される。これにより、テレビカメラの撮影レンズに入射する光の光路長が均一になり、色の滲みの発生を防止できる。すなわち、ハーフミラーとほぼ同じ条件で逆方向に傾斜した光学部材を光が通過することにより、ハーフミラーを通過した時に生じた光路長の差が相殺され、結果として均一化される。
【0013】
また、請求項3に係る発明は、前記目的を達成するために、モニタに表示された画像をテレビカメラの前面に所定角度傾斜させて配置したハーフミラーで前記テレビカメラの前方に反射させるプロンプター装置において、白色のチャートを前記テレビカメラで撮影した際、該テレビカメラで撮影される画像の色を均一にするフィルタ部材を前記ハーフミラーと前記テレビカメラとの間に設けたことを特徴とするプロンプター装置を提供する。
【0014】
本発明によれば、ハーフミラーとテレビカメラとの間にフィルタ部材を配置することによって、撮影画像の上部に生じる色の滲みを除去する。すなわち、ハーフミラーを通すことによって撮影画像の上部に色の滲みが発生するが、その色の滲みが出ていない部分に対してフィルタ部材で発生した色と同じ色に着色することにより、全体として均一な色にして、色の滲みを取り去る。このように着色した場合であっても、テレビカメラ側で画面全体に対して色の補正をかけることにより、色の滲みのないクリアな映像を撮影することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るプロンプター装置によれば、テレビカメラで撮影される画像に色の滲みが発生するのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面に従って本発明に係るプロンプター装置を実施するための最良の形態について詳説する。
【0017】
図1は本発明に係るプロンプター装置の第1の実施の形態を示す側面図である。同図に示すように、本実施の形態のプロンプター装置10は、HDTV対応のENGカメラ14に使用されるプロンプター装置であって、プロンプター保持台12を介してENGカメラ14の手前に設置される。
【0018】
プロンプター保持台12は、図示しない三脚に雲台を介して設置されており、このプロンプター保持台12の先端部に形成されたプロンプター保持部12Aにプロンプター装置10が着脱自在に取り付けられる。また、このプロンプター保持台12の後端部に形成されたカメラ保持部12BにENGカメラ14が着脱自在に取り付けられる。
【0019】
プロンプター装置10は、装置本体16にモニタ18、ハーフミラー20、遮光カバー22、コートガラス24が備えられて構成されている。
【0020】
装置本体16は、箱状に形成されており、プロンプター保持台12のプロンプター保持部12Aに着脱自在に取り付けられる。この装置本体16には、図示されていないが、電源スイッチやモニタ18に映し出す映像の入力端子等が設けられている。
【0021】
モニタ18は、表示面を上側にして装置本体16に設けられている。このモニタ18は、装置本体16をプロンプター保持台12に取り付けることにより、ENGカメラ14の前方下側に水平に配置される。
【0022】
ハーフミラー20は、モニタ18の上方に45度傾けられて配置されている。このハーフミラー20は、所定厚さの板ガラスにハーフミラー膜と反射防止膜をコーティングして構成されており、遮光カバー22の内側に固定されている。
【0023】
遮光カバー22は、ハーフミラー20の上面と背面と両側面を覆うように形成されており、装置本体16に立設された支柱20Aに上下動自在に取り付けられている。この遮光カバー22の背面にはENGカメラ14の撮影レンズ14Aを嵌入可能な開口部が形成されており、この開口部にENGカメラ14の撮影レンズ14Aの先端部が嵌入される。
【0024】
コートガラス24は、ハーフミラー20の後方に所定角度傾斜させて配置されている。このコートガラス24は、所定厚さの板ガラスに反射防止膜をコーティングして構成されており、遮光カバー22の内側に固定されている。
【0025】
このようにして取り付けられたコートガラス24は、被写体光がハーフミラー20を通過することによって生じる光路長の差を相殺するように作用する。すなわち、ハーフミラー20と逆方向に傾斜させることにより、ハーフミラー20を被写体光が通過した際に生じた光路長の差を相殺し、光路長を均一にするように作用する。
【0026】
したがって、コートガラス24にはハーフミラー20と同じ構成のもの(同じコーティングで同じ厚さのもの)用いて、ハーフミラー20の逆方向に45度傾けて設置することが好ましいが、本実施の形態では、光の利用効率と設置スペース(ハーフミラー20と撮影レンズ14Aとの間の空間)を考慮して、少なくとも反射防止膜をコーティングした板ガラスを用いて、ハーフミラー20の逆方向に所定角度傾斜させて設置している。なお、このコートガラス24の傾斜角度は、可能な限りハーフミラー20の逆方向の傾斜角度に近づけることが好ましい。
【0027】
前記のごとく構成された本実施の形態のプロンプター装置10の作用は次のとおりである。
【0028】
プロンプター保持台12を雲台を介して三脚に設置し、そのプロンプター保持台12のカメラ保持部12BにENGカメラ14とプロンプター装置10をセットする。このように取り付けられたプロンプター装置10は、そのハーフミラー20がENGカメラ14の手前に配置されるとともに、モニタ18がENGカメラ14の前方下側に配置される。そして、コートガラス24が、ハーフミラー20とENGカメラ14の間に配置される。
【0029】
この状態で撮影を行うと、被写体光がハーフミラー20とコートガラス24を通過して撮影レンズに入射され、被写体像が撮影される。
【0030】
一方、モニタ18に原稿画像を表示させると、その原稿画像がハーフミラー20を介してカメラ前方に反射され、原稿読上者に視認できるようになる。
【0031】
さて、被写体光は、上記のようにハーフミラー20とコートガラス24を通過して撮影レンズに入射されるが、ハーフミラー20を通過する際、ハーフミラー20が傾斜して設置されていることにより、ハーフミラー20の上部と下部で光路長に差が生じる。
【0032】
しかしながら、本実施の形態のプロンプター装置10では、ハーフミラー20の後段にハーフミラー20と逆方向に傾斜したコートガラス24が設置されているため、ハーフミラー20を通過することによって、光路長に差が生じた場合であっても、このコートガラス24を通過することによって、光路長の差が相殺され、光路長が全体として均一化される。
【0033】
この結果、光路差に基づく撮影画像上部の色の滲みの発生が抑制され、画面全体にクリアな映像を撮影できるようになる。
【0034】
なお、上述したように、コートガラス24は、必ずしもハーフミラー20と同じ構成のものを用いる必要はなく、光の利用効率を考慮して、少なくとも反射防止膜がコーティングされた板ガラスを用いればよい。
【0035】
また、コートガラス24の厚さも必ずしもハーフミラー20と同じである必要はなく、表面に施されるコーティングと共に光路長を相殺できる厚さにすることが好ましい。
【0036】
また、コートガラス24の設置角度も必ずしもハーフミラー20と同じ角度にする必要はなく、設置スペースを考慮して、ハーフミラー20の角度に近づけて設置することが好ましい。
【0037】
なお、ハーフミラー20の板厚t1 とコートガラス24の板厚t2 が同じであれば、図1に示すように、ハーフミラー20の上部に入射する光線の入射角θ1 とコートガラス24の上部に入射する光線の入射角θ2 との和(θ1 +θ2 )が、ハーフミラー20の下部に入射する光線の入射角θ3 とコートガラス24の下部に入射する光線の入射角θ4 の和(θ3 +θ4 )が、同じ(θ1 +θ2 =θ3 +θ4 )になるようにコートガラス24の設置角度を設定することが好ましい。これにより、ハーフミラー20の上部を通過する光線と下部を通過する光線の光路長が等しくなり、全体に色の滲みのないクリアな映像を撮影することができるようになる。
【0038】
また、ハーフミラー20の板厚t1 とコートガラス24の板厚t2 とが異なる場合には、t2 /t1 の係数をコートガラス24の上部に入射する光線の入射角θ2 と、コートガラス24の下部に入射する光線の入射角θ4 に乗じてコートガラス24の設置角度を設定することができる。たとえば、コートガラス24の板厚t2 をハーフミラー20の板厚t1 の2倍にした場合には、コートガラス24の上部に入射する光線の入射角θ2 と、コートガラス24の下部に入射する光線の入射角θ4 とを2倍にすることができる。そして、このようにコートガラス24の板厚t1 をハーフミラー20の板厚t1 よりも厚くすることにより、コートガラス24を垂直に近づけて設置できるようになり、更なるコンパクト化が可能になる。
【0039】
図2は、本発明に係るプロンプター装置の第2の実施の形態を示す側面図である。
【0040】
同図に示すように、本実施の形態のプロンプター装置30は、コートガラスに代えてフィルタ32が配置されている点で上述した第1の実施の形態のプロンプター装置10と相違している。これ以外の構成は上述した第1の実施の形態のプロンプター装置10と同じである。したがって、第1の実施の形態のプロンプター装置10と同じ構成部材には、同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0041】
フィルタ32は、ENGカメラ14に装着された撮影レンズ14Aの先端部に着脱自在に取り付けられる。撮影レンズ14Aの先端部内周には、図示しない雌ネジ部が形成されており、この雌ネジ部にフィルタ32の後端部に形成された図示しない雄ネジ部を螺合させることにより、フィルタ32が撮影レンズ14Aに着脱自在に取り付けられる。
【0042】
このフィルタ32は、図3に示すように、グラデーションが付けられたカラーフィルターで構成されており、白色のチャートを撮影した際、その撮影画像の色が均一になるように作用する。
【0043】
すなわち、上記のようにフィルタ32がない場合、ENGカメラ14に撮影される画像は、図5に示すように、画面の上辺部に色の滲みが発生する。フィルタ32は、この画面上辺部に発生する色と同じ色を、撮影画像の色の滲みが出ていない部分に強制的に付け、画面全体の色を均一にする。このため、フィルタ32は、図3に示すように、色の滲みが出ていない部分に、色の滲みが出た部分と同じ色が付くように、下辺部から上辺部に向かってグラデーションが付けられたカラーフィルタで構成されている。
【0044】
前記のごとく構成された本実施の形態のプロンプター装置30の作用は、次のとおりである。
【0045】
上述した第1の実施の形態のプロンプター装置10と同様にモニタ18に原稿画像を表示させると、その原稿画像がハーフミラー20を介してカメラ前方に反射され、原稿読上者に視認できるようになる。
【0046】
一方、被写体光は、ハーフミラー20とコートガラス24を通過して撮影レンズに入射され、ENGカメラ14に撮影される。
【0047】
ここで、フィルタ32がない場合、ENGカメラ14に撮影される画像は、図4(a)に示すように、画面上辺部に色の滲みが発生する。
【0048】
一方、フィルタ32のみを通して撮影される画像は、図4(b)に示すように、フィルタ32がない場合と正反対の画像が撮影される。すなわち、色の滲みが発生していない部分に、発生した色と同じ色が付けられた画像が撮影される。
【0049】
この結果、ハーフミラー20とフィルタ32を通して画像を撮影すると、図4(c)に示すように、全体に同じ色がついた画像が撮影される。
【0050】
このように撮影された画像は、ENGカメラ側で画像処理を施し、色補正することにより、画面全体に色滲みのないクリアな映像にすることができる。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態のプロンプター装置30によれば、上述した第1の実施の形態と同様に画面全体にクリアな映像を撮影できるようになる。
【0052】
なお、本実施の形態では、撮影レンズ14Aの先端にフィルタ32を取り付けているが、フィルタ32の取り付け位置は、これに限定されるものではない。
【0053】
また、上述した実施の形態では、本発明に係るプロンプター装置をHDTV対応のENGカメラに使用する場合を例に説明したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、SDTVカメラにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係るプロンプター装置の第1の実施の形態を示す側面図
【図2】本発明に係るプロンプター装置の第2の実施の形態を示す側面図
【図3】フィルタの正面図
【図4】第2の実施の形態のプロンプター装置の作用の説明図
【図5】従来のプロンプター装置で撮影される画像の説明図
【図6】従来のプロンプター装置の説明図
【符号の説明】
【0055】
10…プロンプター装置、12…プロンプター保持台、14…ENGカメラ、16…装置本体、18…モニタ、20…ハーフミラー、22…遮光カバー、24…コートガラス、30…プロンプター装置、32…フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モニタに表示された画像をテレビカメラの前面に所定角度傾斜させて配置したハーフミラーで前記テレビカメラの前方に反射させるプロンプター装置において、
前記ハーフミラーを通過した光に生じる光路長の差を減じる光学部材を前記ハーフミラーと前記テレビカメラとの間に配置したことを特徴とするプロンプター装置。
【請求項2】
前記光学部材は、反射防止膜がコーティングされた所定厚さを有する板ガラスで構成され、前記ハーフミラーと逆方向に所定角度傾斜して設置されることを特徴とする請求項1に記載のプロンプター装置。
【請求項3】
モニタに表示された画像をテレビカメラの前面に所定角度傾斜させて配置したハーフミラーで前記テレビカメラの前方に反射させるプロンプター装置において、
白色のチャートを前記テレビカメラで撮影した際、該テレビカメラで撮影される画像の色を均一にするフィルタ部材を前記ハーフミラーと前記テレビカメラとの間に設けたことを特徴とするプロンプター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−60365(P2006−60365A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−238199(P2004−238199)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】