説明

プローブハイブリダイゼーションおよび制限を使用したシグナル増幅による標的核酸のアッセイ方法

プローブおよびプローブ断片を再利用することによって増幅されたシグナルを提供する、試料中の核酸を検出するためのオリゴヌクレオチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示がこれによって参照により本明細書中に組み込まれる、2009年11月23日に出願の米国特許仮出願第61/263,596号明細書の出願日の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、試料中の標的核酸配列を検出するためのオリゴヌクレオチドプローブおよび方法に関する。より詳細には、本発明は、標的核酸配列とハイブリダイズしている場合にのみ切断することができるオリゴヌクレオチドプローブに関する。プローブの切断により、プローブの再利用によるシグナル生成およびシグナル増幅の両方が直接または間接的にもたらされる。
【0003】
標的核酸配列の同定は、生物学的研究および医療診断学のどちらにおいても非常に重要である。標的配列の検出を使用して、特定のDNAまたはRNA分子を同定および/または類別する、ならびに突然変異を明らかにすることができる。
【0004】
標的配列の検出および/または同定を達成することができる数々の方法および技法が当分野において存在する。たとえば、ポリヌクレオチド配列決定方法を使用して、標的DNAまたはRNA分子のヌクレオチド配列を決定することができる。配列決定に典型的に使用される方法には、非特許文献1のSangerのジデオキシ方法、または非特許文献2のMaxamおよびGilbertの方法が含まれる。
【0005】
また、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用しても、試料中の標的配列の存在を検出することができる。PCRでは、標的核酸配列を増幅するために、標的配列の領域と特異的に結合するオリゴヌクレオチドプライマーを利用する、増幅産物の生成は標的配列の存在の指標である。
【0006】
標的核酸を同定する別の手法には、オリゴヌクレオチドプローブを標的核酸配列に対してハイブリダイズさせることを含み、ハイブリダイゼーションは標的核酸配列の存在の指標となる。
【0007】
オリゴヌクレオチドプローブは、標的およびオリゴヌクレオチド中の塩基間に水素結合を形成することによって、標的核酸と結合する。一般的なB−DNAは、通常のアデニン−チミン(A−T)およびグアニン−シトシン(G−C)のワトソンおよびクリックの塩基対を有し、それぞれの塩基の間には2個と3個の水素結合が形成される。従来のハイブリダイゼーション技術は、ワトソン−クリック水素結合を介して相補的標的核酸と結合する、配列特異的DNAまたはRNAオリゴヌクレオチドプローブの能力に基づいている。しかし、第1のヌクレオチドとのワトソン−クリック塩基対形成に関与していない原子が別のヌクレオチドと水素結合を形成することができる、他の種類のヌクレオチド間水素結合パターンが知られている。たとえば、チミン(T)は、アデニンとの水素結合を介してATワトソン−クリック塩基対と結合し、それによってT−ATの塩基三つ組を形成することができる。非特許文献3は、T−ATおよびC−GCの塩基三つ組中に存在する交互の水素結合を最初に記載している。より最近では、グアニンが中心チミンと水素結合しているG−TAの塩基三つ組が観察されている。非特許文献4。
【0008】
ワトソン−クリックおよび非ワトソン−クリックの水素結合の両方で標的核酸と結合することができるオリゴヌクレオチドプローブは、標的核酸と非常に安定した複合体を形成し、したがって、様々な研究および診断上の有用性を有する。
【0009】
たとえば、オリゴヌクレオチドは、たとえば非特許文献5に記載のように、フィルターもしくは膜上に固定された、または組織中に存在する標的核酸のプローブとして使用することができる。しかし、この参考文献中に記載されているオリゴヌクレオチドプローブは、その低い結合安定性および選択性によって制約されている。
【0010】
別の例には、溶液相検出方法が含まれる。均一アッセイと呼ばれることもある、いくつかの溶液相検出方法が知られている。当分野で使用する用語「均一」とは、ハイブリダイズしていないオリゴヌクレオチドプローブをプローブ−標的のハイブリッドから分離せずに行う方法をいう。多くの場合、これらの方法は、多くの蛍光標識の蛍光が、オリゴヌクレオチドプローブのコンホメーションまたは近隣の化学環境によって影響を受け得ることによる。
【0011】
Livakらの特許文献1は、標的核酸配列を同定する方法を開示している。この方法では、蛍光レポーター分子およびレポーター分子の蛍光を消光することができる消光分子を含むオリゴヌクレオチドプローブを利用する。この方法によるオリゴヌクレオチドプローブは、プローブがハイブリダイズしておらず、消光分子が、レポーター分子の蛍光を消光するために十分にレポーター分子に近い場合に、少なくとも1つの一本鎖コンホメーションで存在するように構築されている。また、オリゴヌクレオチドプローブは、標的核酸とハイブリダイズしており、消光分子が、レポーター分子の蛍光を消光するために十分にレポーター分子に近く配置されていない場合にも、少なくとも1つのコンホメーションで存在する。これらのハイブリダイズしたおよびハイブリダイズしていないコンホメーションを採用することによって、プローブ上のレポーター分子および消光分子は、プローブがハイブリダイズしている場合およびハイブリダイズしていない場合に異なる蛍光シグナル強度を示す。その結果、この方法は、レポーター分子、消光分子、またはそれらの組合せの蛍光強度の変化に基づいて、特定の標的核酸配列の存在を決定することを可能にする。この手法の制約は、シグナル増幅が可能となっておらず、その結果、低い標的濃度が検出不能であることである。さらに、この方法は、高いバックグラウンドシグナルによって本質的に特徴づけられている。
【0012】
Tyagiらの特許文献2は、核酸標的配列を検出するための単分子および二分子のハイブリダイゼーションプローブを開示している。プローブには、標的相補的配列、標的配列の非存在下で閉じたコンホメーションでプローブを保持している親和性対、またはプローブが閉じたコンホメーションにある場合に相互作用する標識対、または特定の単分子プローブに対しては非相互作用性標識のいずれかが含まれる。標的と標的相補的配列とのハイブリダイゼーションは、プローブを開いたコンホメーションへとシフトさせる。このシフトは、標識対の相互作用の低下、または非相互作用性標識によるシグナルの減少によって検出することができる。特定の単分子プローブは、わずか1ヌクレオチドの差異によって、標的と非標的配列との間を識別することができる。この手法の制約は、シグナル増幅が可能となっておらず、その結果、低い標的濃度が検出不能であることである。さらに、この方法は、高いバックグラウンドシグナルによって本質的に特徴づけられている。
【0013】
Nazarenkoらの特許文献3は、直鎖状もしくはヘアピンのプライマーまたは遮断オリゴヌクレオチドとすることができる、標識した核酸増幅オリゴヌクレオチドを記載している。特許文献3によって開示されているオリゴヌクレオチドは、分子エネルギー移行対のドナーおよび/またはアクセプター部分で標識されている。この部分は、ドナーによって放射される蛍光エネルギーがアクセプターによって吸収されるように、蛍光物質とすることができる。アクセプターは、ドナー部分とは異なる波長の蛍光を発する蛍光物質であってもよく、または、これは非蛍光の暗い消光物質であってもよい。これらのオリゴヌクレオチドは、ドナー部分およびアクセプター部分が増幅産物内に組み込まれるように構成されている。また、本発明は、核酸増幅プライマーを用いて増幅産物を直接検出するための方法およびキットも提供する。標識した直鎖状プライマーを使用する場合、エキソヌクレアーゼを用いた処理または特定の温度を使用することによる処理により、組み込まれていないプライマーを分離する必要性が排除される。この「閉管」法は、増幅産物による持ち越し汚染の可能性を大きく低下させ、試料の高スループットを提供し、また、完全に自動とすることができる。
【0014】
Diamondらの特許文献4は、プリン/ピリミジン水素結合を介して標識したポリヌクレオチドと結合したプローブポリヌクレオチドの複合体を含有する診断試薬を記載している。プローブは、生体試料の標的配列と結合することができる標的結合領域を含有する。特許文献4は、標的ヌクレオチド配列を含有する試料との接触が、最初は標的とプローブの標的結合領域の一本鎖部分との間の結合を引き起こす方法をさらに記載している。その後、標識されたポリヌクレオチドは生じた複合体から置換される。脱離した標識されたポリヌクレオチドの検出により、試料中の標的ヌクレオチド配列の存在および濃度の関数である値が得られる。
【0015】
Hoganらの特許文献5は、標的核酸配列とハイブリダイズする少なくとも2つの別々の標的特異的領域を有する少なくとも1つの核酸鎖と、標的核酸とハイブリダイズしないが、互いにハイブリダイズすることができる相補的領域を保有する、少なくとも2つの明白に異なるアーム領域とを有する、核酸ハイブリダイゼーションプローブを記載している。これらの領域は、適切なハイブリダイゼーション条件下において、標的核酸の非存在下では相補的アーム領域は互いにハイブリダイズしないが、標的核酸の存在下では、プローブの標的特異的領域は標的核酸とアニーリングし、相補的アーム領域は互いにアニーリングし、それによって標的核酸配列の検出に有用な分枝状核酸構造が形成されるように設計されている。Alajemらの特許文献6は、標的核酸(nucleic)が放出され、続く増幅サイクルで利用可能となるという点で特許文献5に記載されているものより改良されたものとして提示されている。
【0016】
上述の方法は、フィルターまたは膜上に固定された核酸を標的とするためにオリゴヌクレオチドプローブを使用する非特許文献5によって記載されているものなどの単純なオリゴヌクレオチドプローブ検出方法より実施することは複雑でないが、一部の制約が依然として当てはまる。たとえば、特許文献1に記載されているものなどの実施が容易な方法では、一部の例では非標的配列とのハイブリダイゼーションも陽性結果を与えるため、偽陽性結果が与えられる可能性がある。
【0017】
一般的に、上記方法は低いシグナルおよび高いバックグラウンドによって特徴づけられている。特許文献5は、鋳型の再利用によるシグナル増幅、および、それによって用いられるオリゴヌクレオチドのアーム領域の長さの適切な選択によるバックグラウンド低下を教示している。より正確な結果を生じることを目的とした方法は、多くの場合、実施することはより複雑である。
【0018】
発癌性ヒトパピローマウイルス(HPV)の検出は、多数の関連する遺伝子型およびHPVゲノムの不均一性のために、重大な課題となっている。現在、FDAに認可されたHPVの高リスク株のスクリーニングアッセイは2つしか存在しない(Qiagenのハイブリッド捕捉2高リスクHPV DNA試験(Hybrid Capture 2 High−Risk HPV DNA Test)(digene HC2)、HologicのCervista HPV)。標的DNA中の配列変動を克服し、確実に包括的な株を網羅するために、HC2アッセイでは複数の長いRNAに基づいたプローブを利用する。しかし、この設計の性質により、Digeneアッセイは低い特異性という問題を有し、HPVの様々な低リスク遺伝子型と交差反応を示す。核酸標的の増幅に基づいた、HPVを検出するための他のアッセイは、配列の不均一性を考慮するために縮重プライマーおよびプローブを用いる必要性によって複雑となっている。一緒に混合した場合、そのようなオリゴヌクレオチドのカクテルは、プライマー二量体の短いアンプリコンの生成をもたらす可能性があり、標的特異的な増幅および検出の効率を減じる、非特異的なプライマー相互作用を生じやすい。このことが1つの理由で、HPV DNAのリアルタイムのプローブに基づいた増幅および検出は幅広く実施されておらず、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8などに記載のような個々の遺伝子型の検出、または非特許文献9、非特許文献10などに記載のような単一の反応において3個までの遺伝子型の検出を含む限定された多重化アッセイ様式に一般に限定されている。挿入色素SYBRグリーンを使用したPCR増幅産物のリアルタイム検出が報告されているが、この技術は信頼性のある臨床診断のために十分な特異性を欠いており、典型的には、陽性結果の正確な解釈に融解曲線の解析を必要とする。このアッセイは非特許文献11および非特許文献12に記載されている。
【0019】
プライマーとプローブとの間の潜在的な相互作用によって課されるアッセイ設計の制約に加えて、現在利用可能なPCR機器は、多重反応の検出に4から6個の光チャネルしか提供していない。その結果、14個すべてのHPVの高リスク遺伝子型の特異的検出には、典型的には複数の別々のPCRが必要とされ、これにより機器のスループットが限定され、上流の検体処理、アッセイ品質管理および試薬製造に対して潜在的に不利な影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第5,876,930号明細書
【特許文献2】米国特許第5,925,517号明細書
【特許文献3】米国特許第5,866,336号明細書
【特許文献4】米国特許第4,766,062号明細書
【特許文献5】米国特許第5,451,503号明細書
【特許文献6】米国特許第6,887,662号明細書
【特許文献7】米国特許第6,743,582号明細書
【特許文献8】米国特許第5,846,726号明細書
【特許文献9】米国特許第5,919,630号明細書
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Sanger et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74:5463-5467 (1977)
【非特許文献2】Maxam et al, Methods in Enzymology, 65:499-559 (1980)
【非特許文献3】Hoogsteen, Acta Crystallographica 12:822 (1959)
【非特許文献4】Griffin et al., Science, 245:967-971 (1989)
【非特許文献5】Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Vols. 1-3, (1989)
【非特許文献6】Flores-Munguia, Roberto, et al, "Performance Assessment of Eight High-Throughput PCR Assays for Viral Load Quantitation of Ocongenic HPV Types," Journal of Molecular Diagnostics, Vol. 6, No. 2, pp. 115-124 (May 2004)
【非特許文献7】Hesselink, A.T., et al, "Comparison of Three Different PCR Methods for Quantifying Human Papillomavirus Type 16 DNA in Cervical Scrape Specimens," Journal of Clinical Microbiology, Vol. 43, No. 9, p. 4868-4871 (Sept. 2005)
【非特許文献8】Tucker, Ruth Ann et al, "Real-time PCR-based Fluorescent Assay for Quantiation of Human Papillomavirus Types 6, 11, 16, and 18, Molecular Diagnosis, Vol. 6, No. 1, pp. 39-47 (2001)
【非特許文献9】Moberg, Martin, et al., "Real-Time PCR-Based System for Simultaneous Quantification of Human Papillomavirus Types Associated with High Risk of Cervical Cancer" Journal of Clinical Microbiology, Vol. 41, No. 7, pp. 3221-3228 (July 2003)
【非特許文献10】Peitsaro, Panu et al, "Integrated Human Papillomavirus Type 16 Is Frequently Found in Cervical Cancer Precursors as Demonstrated by a Novel Quantitative Real-Time PCR Technique," Journal of Clinical Microbiology, Vol. 40, No. 3, pp. 886-891 (2002)
【非特許文献11】Lillo, F. B., et al, "Determination of Human Papillomavirus (HPV) Load and Type in High-Grade Cervical Lesions Surgically Resected from HIV-infected Women during Follow-up of HPV Infection," Clinical Infectious Diseases, Vol. 40, pp. 451-457 (2005)
【非特許文献12】Payan, C., et al., "Human Papillomavirus Quantification in Urine and Cervical Samples by Using the Mx4000 and Light Cycler General Real-Time PCR Systems, Journal of Clinical Microbiology, Vol. 45, No. 3 p. 897-901 (2007)
【非特許文献13】Lane, M, et al, "The thermodynamic advantage of DNA oligonucleotide 'stacking hybridization' reactions: energetics of a DNA nick," Nucleic Acids Research Vol. 25, No. 3 (1997)
【非特許文献14】Yakovchuk et al.; "Base-stacking and base-pairing contributes into thermal stability of the DNA double helix," Nucleic Acids Research, Vol. 34, pp. 564-574 (2006)
【非特許文献15】Zhu, L., et al, "Development of a base stacking hybridization-based microarray method for rapid identification of clinical isolates," Diagnostic Microbiology and Infectious Disease, Vol. 59, pp. 149-156 (2007)
【非特許文献16】Spargo, et al., "detection of M. tuberculosis DNA using thermophilic strand displacement amplification," Mol. Cellular Probes, Vol. 10, pp. 247-256 (1996)
【非特許文献17】Bonnet et al Proc. Natl. Acad. Sci. 96:6171-6176 (1999)
【非特許文献18】Markham, N. R., and Zuker, M., "DINAMelt web server for nucleic acid melting prediction," Nucl. Acid Res. Vol. 33, pp. w577-w581 (2005)
【非特許文献19】Markham, N. R. & Zuker, M. "UNAFold: software for nucleic acid folding and hybridization," Bioinformatics," Vol. II: Structure, Functions and Applications, No. 453 (Keith, J. M., ed., 2008); Methods in Molecular Biology, Ch. 1, pp. 3-31 (Humana Press, Totowa, NJ 2008)
【非特許文献20】"Molecular Cloning: A laboratory Manual" Sandbrook et al., (1989)
【非特許文献21】"Current Protocols in Molecular Biology" Volumes I-III Ausubel, R. M., et ed. (1994)
【非特許文献22】Cell Biology: A Laboratory Handbook" Volumes I-III Cellis, J. E., ed. (1994)
【非特許文献23】"Current Protocols in Immunology" Volumes I-III Coligan J. E., ed. (1994)
【非特許文献24】"Oligonucleotide Synthesis" Gait, M. J., ed. (1984)
【非特許文献25】"Nucleic Acid Hybridization" Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1985)
【非特許文献26】"Transcription and Translation" Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1984)
【非特許文献27】"Animal Cell Culture" Freshney, R. I., ed. (1986)
【非特許文献28】"Immobilized Cells and Enzymes" IRL Press, (1986)
【非特許文献29】"A Practical Guide to Molecular Cloning" Perbal, B., (1984)
【非特許文献30】"Methods in Enzymology" Vol. 1-317 Academic Press
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、一般的な光学的チャネルを使用して単一の多重反応においてHPVの高リスク株を検出するためのアッセイおよび方法が模索されている。また、中等度から高度に豊富な核酸標的配列(たとえばHPVの高リスク株のDNA)を検出するための、高度の多重化を行いやすく、偽陽性結果をもたらす可能性のある雑多なDNAポリメラーゼ酵素の使用を必要としないフォーマットの、シグナル増幅およびバックグラウンド低下のための改良された方法も模索されている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、オリゴヌクレオチドプローブ、および均一な等温の多重化適合性のシグナル増幅システムを使用した標的核酸を検出する方法に関する。一実施形態では、標的核酸は中等度に高い濃度から高濃度で存在する。本明細書中に記載の方法は、プローブハイブリダイゼーションおよび制限によるシグナル増幅(Signal Amplification by Probe Hybridization and Restriction:SAPHyR)と呼ばれる。
【0024】
好ましい実施形態では、この方法は、制限エンドヌクレアーゼの良好に特徴づけられた一本鎖DNAニッキング活性を利用する。制限エンドヌクレアーゼの一例は酵素BsoBIである。反応温度とプローブ融解温度との間の関係性は、切断されたオリゴヌクレオチド断片の周期的生成が生じるように選択する。これらの断片は、二次的な周期的切断反応をさらに誘発して、シグナル(蛍光)を生じさせる。
【0025】
一実施形態では、本方法は、標的核酸を含有すると思われる試料を調製することによって、試料中の標的核酸の存在または非存在を検出する。標的核酸が存在する場合、標的核酸を検出するアッセイのための試料を調製する方法は、当業者に周知であるので、本明細書中では詳述しない。試料からの核酸抽出の一例は、Franklin、Lakesニュージャージー州に位置するBecton Dickinson(BD)からのXTR(商標)技術を用いたBD Viper(商標)システムである。
【0026】
試料から抽出した核酸を、第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブを有する反応混合物、ならびに配列特異的エンドヌクレアーゼと合わせ、第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブは、第1の配列および第2の配列をそれぞれ有する。第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブの第1の配列は、標的核酸の非重複配列に相補的である。第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブそれぞれの第2の配列は互いに相補的であり、配列特異的エンドヌクレアーゼによって認識される二重鎖制限部位を形成する。第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブのうちの少なくとも1つは、制限部位の片側に配置された検出可能な標識および制限部位の反対側に配置された消光部分を有する。この相対的な配置により、第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブの第1の配列を標的核酸の非重複配列と選択的にハイブリダイズさせ、第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブの第2の配列を互いに選択的にハイブリダイズさせる。これらのプローブのハイブリダイゼーションは二重鎖制限部位を形成し、その結果、標的核酸が試料中に存在していれば、配列特異的エンドヌクレアーゼが二重鎖を制限部位で切断する。このようにプローブを切断することにより、標識の検出が可能となる。また、プローブの切断はまた、標的核酸および互いからオリゴヌクレオチドプローブの残りの部分を変性させる。
【0027】
第2の実施形態では、調製した試料を、第1のオリゴヌクレオチドプローブ、第2のオリゴヌクレオチドプローブ、および第3のオリゴヌクレオチドプローブ、ならびに配列特異的エンドヌクレアーゼも有する反応混合物中に合わせる。第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブは、第1の配列および第2の配列をそれぞれ有する。第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブの第1の配列は、標的核酸の非重複配列に相補的である。第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブそれぞれの第2の配列は、少なくとも部分的に互いに相補的であり、プローブが標的とハイブリダイズする際に二重鎖制限部位を形成し、それによって第1のプローブおよび第2のプローブを互いに近接させる。好ましくは、第1のプローブおよび第2のプローブのうちの少なくとも1つは、標的配列とハイブリダイズしていない場合にヘアピン立体配置を有し、それによって、標的核酸の非存在下でプローブが互いにハイブリダイズしないことが確実となる。第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブは標識されておらず、また、第2のオリゴヌクレオチドプローブは第3の配列も有する。第3の配列の少なくとも一部分は、第2のオリゴヌクレオチドプローブの第2の配列と、第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブが標的核酸と結合していない場合に第2のオリゴヌクレオチドプローブが第1のオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズすることを妨げるヘアピンを形成する。第3の配列の少なくとも一部分は、第3のオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズして、二重鎖制限部位を形成する。第3のオリゴヌクレオチドプローブは、第2のオリゴヌクレオチドプローブの第3の配列とハイブリダイズして二重鎖制限部位を形成する第1の配列の片側に配置された検出可能な標識を有する非標的特異的オリゴヌクレオチドプローブである。また、第3のオリゴヌクレオチドプローブは、第3のオリゴヌクレオチドプローブの第1の配列の反対側に配置された消光部分も有する。
【0028】
本実施形態では、標的核酸が試料中に存在する場合は、第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブの第1の配列を、(ヘアピン構造を変性させることによって)標的核酸の非重複配列と選択的にハイブリダイズさせる。ヘアピンループの変性は、第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブの第2の配列間のハイブリダイゼーション、配列特異的エンドヌクレアーゼによる制限部位での前に形成された二重鎖の切断、第3の配列の第2のオリゴヌクレオチドプローブからの分離、ならびに第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブの標的核酸からの解離を可能にする。その後、以下が反応混合物中で、複数のサイクルで起こる:i)第2のオリゴヌクレオチドプローブの第3の配列と第3のオリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーション、したがって化学修飾された二重鎖制限部位の形成、ii)配列特異的制限エンドヌクレアーゼによる、化学修飾された二重鎖制限部位の一本鎖のニッキング、iii)標識の消光物質からの遊離、iv)第3のオリゴヌクレオチドプローブの第2のオリゴヌクレオチドプローブの第3の配列からの解離。その後、そのようにして遊離された標識を、検出可能な標識(たとえば蛍光物質)の存在を検出するための従来の技術を使用して検出し、シグナルの検出が試料中の標的核酸の存在を示す。
【0029】
図4A〜Dを参照して記載した第3の実施形態では、標的核酸を含有すると思われる抽出した核酸を、第1の配列および第2の配列を有する第1のオリゴヌクレオチドプローブ(P1)、第1の配列および第2の配列を有する第2のオリゴヌクレオチドプローブ(P2)、第1の配列および第2の配列を有する第3のオリゴヌクレオチドプローブ(P3)、ならびに配列特異的エンドヌクレアーゼと合わせる。
【0030】
明確にするために、本実施形態中の配列は、図4A〜D中の模式的な配列の表示に従って記載する)。これらの表示は、配列の組成または配列の長さを示すことを意図せず、単に配列の説明とその模式的な表示との間の関連として提供する。本実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドプローブ(P1)は、標的核酸配列に相補的な第1の配列(b’−i’)および第2のオリゴヌクレオチドプローブ(P2)の第1の配列(a’−f’)に相補的な第2の配列(a−c’)を有する。第1のプローブの第2の配列(a−c’)の第1の部分(d−e)は、制限部位の化学修飾された一本鎖部分である。化学修飾された制限部位は、本明細書中にさらに詳述されている。第1のオリゴヌクレオチドプローブ(P1)の第1の(b’−i’)配列の一部分および第2の(a−c’)配列のすべてが二次構造(たとえばヘアピン)を形成する。
【0031】
第2のオリゴヌクレオチドプローブ(P2)は、標的と直接ハイブリダイズしないプローブであり(これは数個の標的特異的ヌクレオチドを有し得るが、標的特異的配列の長さは、反応条件下で標的と安定したハイブリッドを形成するには短すぎる)、第2のプローブ(P2)の第1の配列(a’−f’)の一部分(d’−e’)は、第1のプローブ(P1)の第2の配列(a−c’)の化学修飾された一本鎖部分(d−e)に相補的である。第2のオリゴヌクレオチドプローブの第2の配列(b−e’)は、第3のオリゴヌクレオチドプローブ(P3)の第1の配列(b’−e)に相補的であり、第2のプローブの第2の配列(b−e’)の一部分(d−e)は、制限部位の化学修飾された一本鎖部分である。第2のオリゴヌクレオチドプローブの第1の配列および第2の配列は部分的に重複し(e’−f’)、第2のオリゴヌクレオチドプローブの第1の配列の少なくとも一部分(b’−d’部分)および第2の配列の少なくとも一部分(b−e’部分)が二次構造(たとえばヘアピン)を形成する。
【0032】
第3のオリゴヌクレオチドプローブ(P−3)は、標的と直接ハイブリダイズしないプローブであり(これは数個の標的特異的ヌクレオチドを有し得るが、標的特異的配列の長さは、反応条件下で標的と安定したハイブリッドを形成するには短すぎる)、第1の配列(b’−e)は、第2のオリゴヌクレオチドプローブ(P2)の制限部位の化学修飾された一本鎖部分(d−e)に相補的な一部分(d’−e’)を含み、第1の配列上に配置された検出可能な標識(264)または消光物質(266)部分をさらに含み、第2の配列(d−k)は、第1の配列(b’−e)の一部分(b’−d’)とヘアピンループを形成し、第2の配列上に配置された検出可能な標識(264)または消光部分(266)を有し、その結果、消光部分が、第3のオリゴヌクレオチドプローブ中のその相対的位置のために、検出可能な標識のシグナルを遮断する。
【0033】
本実施形態では、標的核酸が試料中に存在する場合は、標的核酸と第1のオリゴヌクレオチドプローブ(P1)の第1の配列(b’−i’)とを選択的にハイブリダイズさせて、第1の複合体(P1:T)を形成させる。さらに、本方法は、複数のサイクルで、i)第1のオリゴヌクレオチドプローブ(P1)の第2の配列(a−c’)の少なくとも一部分(a−f)と第2のオリゴヌクレオチドプローブ(P2)の第1の配列(a’−f’)とを選択的にハイブリダイズさせて、第2の複合体(P2:P1:T)を形成させ、ii)二重鎖制限部位の化学修飾された一本鎖を形成する第1のオリゴヌクレオチドプローブの第2の配列(a−c’)の一部分(d−e)と第2のプローブ(P2)上の相補的配列(a’−f’)とのハイブリダイゼーションによって形成された二重鎖制限部位の一本鎖部分(d’−e’)を切断し、それによって、第2のオリゴヌクレオチドプローブの第2の配列(b−e’)を第2のオリゴヌクレオチドプローブ(P2)の第1の配列の非重複部分(a’−d’)から分離させ、iii)第2のオリゴヌクレオチドプローブを第1の複合体(P1:T)から解離させる。
【0034】
さらに、本実施形態によれば、複数のサイクルで、i)第2のオリゴヌクレオチドプローブ(P2)の第2の配列(b−e’)を第3のオリゴヌクレオチドプローブ(P3)の第1の配列(b’−e)と選択的にハイブリダイズさせて、第3の複合体を形成させ、それによって、標識を消光物質から分離させ、シグナルを遊離させ、ii)第2のオリゴヌクレオチドプローブの第2の配列の一部分(b−e’)と第3のオリゴヌクレオチドプローブの第1の配列上の相補的配列(b’−e)とのハイブリダイゼーションによって形成された一本鎖(d’−e’)二重鎖制限部位を切断し、iii)標識を消光物質から遊離させ、第2のオリゴヌクレオチドプローブの第2の配列(b−e’)を第3のオリゴヌクレオチドプローブ(P3)の残りから解離させる。この方法では、標識から生成されたシグナルが検出され、これは試料中の標的核酸の存在を示す。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1A】2つの標的特異的プローブならびに2つのプローブが標的核酸と形成する複合体を利用する本発明の一実施形態を例示する図である。
【図1B】2つの標的特異的プローブならびに2つのプローブが標的核酸と形成する複合体を利用する本発明の一実施形態を例示する図である。
【図2A】3つのプローブを利用し、そのうちの1つが非標的特異的標識したレポータープローブであるが、プローブが標的と結合していない場合に二次構造を保有しない方法を例示する図である。
【図2B】3つのプローブを利用し、そのうちの1つが非標的特異的標識したレポータープローブであるが、プローブが標的と結合していない場合に二次構造を保有しない方法を例示する図である。
【図2C】3つのプローブを利用し、そのうちの1つが非標的特異的標識したレポータープローブであるが、プローブが標的と結合していない場合に二次構造を保有しない方法を例示する図である。
【図3A】3つのプローブを利用し、1つの標的特異的プローブがヘアピン構造を備えており、標的特異的プローブ間の標的非依存的ハイブリダイゼーションを遮断する、本発明の第3の実施形態を例示する図である。
【図3B】3つのプローブを利用し、1つの標的特異的プローブがヘアピン構造を備えており、標的特異的プローブ間の標的非依存的ハイブリダイゼーションを遮断する、本発明の第3の実施形態を例示する図である。
【図3C】3つのプローブを利用し、1つの標的特異的プローブがヘアピン構造を備えており、標的特異的プローブ間の標的非依存的ハイブリダイゼーションを遮断する、本発明の第3の実施形態を例示する図である。
【図3D】3つのプローブを利用し、1つの標的特異的プローブがヘアピン構造を備えており、標的特異的プローブ間の標的非依存的ハイブリダイゼーションを遮断する、本発明の第3の実施形態を例示する図である。
【図4A】1つのプローブのみが標的特異的である第4の実施形態を例示する図である。
【図4B】1つのプローブのみが標的特異的である第4の実施形態を例示する図である。
【図4C】1つのプローブのみが標的特異的である第4の実施形態を例示する図である。
【図4D】1つのプローブのみが標的特異的である第4の実施形態を例示する図である。
【図5】図4A〜4Dに記載の3つのプローブの一例を例示する図である。
【図6】遮断プローブを用いる本発明の一実施形態を例示する図である。
【図7A】HPV−16の標的配列を例示する図である。
【図7B】HPV−58の標的配列を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、オリゴヌクレオチドの組および標的核酸配列の検出に使用することができるオリゴヌクレオチドの組を用いる方法を対象とする。具体的には、本発明の方法を使用して、鋳型配列(複数可)とアニーリングした場合に、その間に固有(内在性)の切断部位を形成するオリゴヌクレオチドプローブを利用することによって、特定の標的核酸配列の存在または非存在を検出することができる。その後に続くこの切断部位の切断により、検出可能なシグナルの生成および標的核酸配列からの1つまたは複数のオリゴヌクレオチドの解離がもたらされ、したがって鋳型の再利用およびシグナル増幅が可能となる。
【0037】
本発明によるオリゴヌクレオチドおよび方法の原理および実施は、図面および添付の説明を参照してより良好に理解されるであろう。
【0038】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用が、以下の説明に記載されているまたは実施例によって例示される詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態または様々な方法で実施または実行することができる。また、本明細書中で用いる語句および用語は説明を目的とするものであり、限定的であるとみなされるべきでないことを理解されたい。
【0039】
本明細書中で使用する用語「オリゴヌクレオチド」および「プローブ」ならびに語句「オリゴヌクレオチドプローブ」は、互換性があるように使用され、1つまたは複数の部分的二本鎖コンホメーションを示すことができる一本鎖核酸分子または一本鎖核酸分子のアセンブリをいう。そのような分子(複数可)は、本明細書中にさらに記載するように、一本鎖または二本鎖(適切な変性後)の標的核酸配列の存在または非存在を検出するために、本発明に従って使用することができる。
【0040】
全体にわたって使用する用語「鋳型」または語句「標的核酸配列」とは、メッセンジャーRNAなどの天然に一本鎖形態にあるもの、またはDNAなどの一本鎖形態へと変性されたもののいずれかである核酸鋳型をいう。本発明による標的核酸配列は、粗、部分精製または精製した形態とすることができ、その起源に応じて様々な度合の複雑度を有し得る。本明細書中で使用する、特定の標的核酸配列は、単一のヌクレオチド、たとえば点突然変異、またはさらには複数のヌクレオチドが別の特定の標的核酸配列と異なり得る。
【0041】
本明細書中で使用する語句「相補的または実質的に相補的」とは、事前に決定された温度およびイオン強度のハイブリダイゼーション条件ならびに/または鋳型の存在下で塩基対形成し得る配列をいう。具体的には、「相補的または実質的に相補的」とは、少なくとも70%相補的、さらに好ましくは少なくとも80%相補的、有利には90%から100%相補的であることをいう。「完全に相補的」とは100%相補的であることをいう。
【0042】
本明細書中で使用する用語、ヘアピンとは、一本鎖DNAまたはRNAにおけるステム−ループの分子内塩基対形成を説明するために使用する。ヘアピンまたはヘアピンループは、互いに少なくとも実質的に相補的である、同じプローブの2つの領域から形成される。ヌクレオチド配列中では、相補的配列は、塩基対形成して、対を形成しないループで終わる二重らせんの「ステム」を形成する。
【0043】
本明細書中で使用する語句「好熱性制限酵素」とは、特定の核酸配列を認識および切断する制限エンドヌクレアーゼである。好熱性制限酵素は熱に対する感受性が低い。そのような酵素は、約50℃以上の反応温度を有する。適切な好熱性制限エンドヌクレアーゼの一例はBsoB1制限エンドヌクレアーゼである。これらの酵素は制限エンドヌクレアーゼ制限部位(RERS)を切断する。そのような制限部位は、すべて参照により本明細書中に組み込まれている特許文献7、特許文献8および特許文献9に記載されている。BsoB1は、ある程度の度合の縮重(すなわち変動)で配列を切断する。BsoB1によって切断される縮重配列は周知であり、ctcgag、cccgag、cccgggおよびctcgggが含まれる。これらのRERS配列は、一本鎖形態にある場合は酵素によって切断されない。しかし、RERS配列がその相補体とハイブリダイズしている場合、これは制限エンドヌクレアーゼによって切断可能である。必要な相補性の度合は、具体的なRERSに応じてある程度変動する。しかし、一般に、6個の塩基対の制限部位では、部位中にミスマッチが存在しないことが好ましい(ただし、たとえばBsoBIは、1、3、4または6位でない限りはミスマッチを有することができる)。切断可能なRERS配列のうちの1つが化学修飾されている場合では、化学修飾されていないRERS配列のみが酵素の存在下で切断される。BsoBIは、半修飾されたRERSを認識することができ、修飾されていない鎖を切断することができる制限酵素の一例であるが、それだけには限定されないがHinc II、Ava I、Nci IおよびFnu 4Hを含めた、これらの特性を有する他の酵素が知られている。
【0044】
修飾された制限部位プローブが本発明での使用に企図される。ハイブリダイズしたプローブの一方の鎖の認識部位に修飾を導入することによって、修飾された鎖の酵素的切断を妨げることができる。そのような修飾の一例は、制限エンドヌクレアーゼによって切断されるRERS配列に相補的なプローブ配列上に導入されるチオエート修飾である。修飾の結果、制限部位の一方の鎖のみが切断される。このことは、プローブを複数のサイクルで使用する本発明との関連で重要である。この手法は、インキュベーションを通してより高い濃度の反応物質から恩恵を受け、したがってより高い生成物の形成効率をもたらす。当業者は多くの化学修飾された制限部位を認識しており、それらは本明細書中に詳述しない。当業者は、すべての制限部位が一本鎖ニッキングをもたらす化学修飾を受け入れるわけではないことを理解されよう。したがって、本明細書中に記載の一本鎖ニッキングをもたらすために、特定の酵素のためのRERS配列のみを化学修飾することができる。
【0045】
本発明の特定の実施形態では、化学修飾された制限部位は再利用されたプローブの一部である。特定の実施形態は、標的配列の検出から生じるシグナルをさらに増幅するためにプローブを再利用することを企図する。標的/プローブの複合体を変性させると、切断されていないプローブがさらなる使用のために再利用される。対形成したプローブの最初の生成と同様、制限エンドヌクレアーゼは、対形成したプローブの2つのメンバーがハイブリダイズして二本鎖制限部位を形成する場合にのみ、完全な制限部位(5’−−−−3’)を認識および切断する。しかし、ここでも、ハイブリダイズしたプローブの対の修飾されていない鎖のみが切断される。プローブの融解温度(選択した反応温度で)は、化学修飾されていないプローブが切断された場合に、少なくとも切断されたプローブがその複合体から変性されるように選択される。他の実施形態では、一本鎖の化学修飾されていない制限部位のニッキングによって、すべてのプローブが標的から変性する。
【0046】
一部の実施形態では、検出を可能にするために、本発明のオリゴヌクレオチドプローブアセンブリは、好ましくは1つまたは複数の検出部分でタグ付けする。しかし、以下にさらに詳述されているように、本発明による検出は、標的と結合するオリゴヌクレオチド(複数可)上にそのような検出部分を取り込ませずに達成することもできることを理解されたい。むしろ、標的との結合は、非標的特異的レポータープローブと結合するプローブ断片を与え、レポータープローブはこのプローブ断片とハイブリダイズする。
【0047】
本明細書中に詳述するように、プローブおよびその制限産物の検出は、任意の従来の検出機構を使用して達成される。たとえば、同じ鎖の制限部位に隣接する蛍光レポーター色素および消光基を使用することができる。消光物質は、蛍光基によって放射されたエネルギーを捕捉することができ、したがって、2つの基が互いに十分に近い限り、蛍光基を励起させた際に蛍光が放射されない。当業者は、消光およびシグナル伝達部分をどちらも有するプローブ(シグナル伝達部分からのシグナルは、消光部分のある程度近くにある場合に消光され、間隔が増加した際にシグナルが放射される)または2つのシグナル伝達部分を有するプローブ(距離が増加した場合にシグナルが減少または中止される)を構成するための検討事項を十分に認識しているであろう。消光部分をシグナル伝達部分に十分に近接して保つために、プローブをヘアピンとして構成することができる。この構造では、配列の折り畳まれた部分は、消光部分を、シグナル伝達部分に、配列がそのように折り畳まれていなかった場合よりも近づける。そのような立体配置では、シグナル伝達部分は、ヘアピンが変性した際にシグナルを放射し、したがって、消光部分をシグナル伝達部分から分離することができる。プローブがRERS配列を有する場合、制限エンドヌクレアーゼがRERSを切断し、消光部分を有するプローブの一部分を、シグナル伝達部分を有するプローブの一部分から遊離させる。これにより、消光部分がシグナル伝達部分からさらに分離され、したがって、さらなるシグナルがシグナル伝達部分から放射されることを可能にする。当業者は、シグナルの消光およびシグナルの放射の両方を達成するために必要な分離の量を認識しているであろう。RERS配列を配置した場合、使用する制限酵素に応じて、典型的には4〜18個の塩基のスペーサーが蛍光レポーター色素と消光基との間に必要である。酵素的切断の際、蛍光レポーター色素および消光基は互いに分離し、溶液中に分散される。その結果、蛍光基から消光物質へのエネルギー移行が存在せず、蛍光を検出し得る。
【0048】
反応が進行するにつれて蛍光を検出し得るため、増幅のリアルタイム測定が可能である。蛍光増加の強度および速度は、混合物中に存在する標的分子の数および増幅速度の推定を可能にし得る。
【0049】
上述のように、本発明のプローブは多くの蛍光/消光物質またはドナー/アクセプターの組合せを利用し得る。ドナーがフルオレセインを含めたキサンテン色素群からのものであり、消光物質がローダミン色素群(たとえば6−FAMおよびTAMRA)からのものである組合せが、当分野で一般的に使用されている。Cy5およびROXは、使用することができる別の色素の対である。たとえばフルオレセイン/ローダミン対などの2つのシグナル伝達部分を用いる場合、フルオレセインドナーが励起され、ローダミンアクセプターにエネルギーを移行し、これが特徴的な波長で蛍光を放射し、それによって検出が可能となる。フルオレセインとローダミンとの間の距離が増加した場合、検出されるシグナルは減少し、またはシグナルは検出されない。
【0050】
また、DABCYLおよびQSF−7などの非蛍光消光物質も使用することができる。これらの消光物質は、蛍光色素の選択においてより高い度合の柔軟性を可能にする。色素対の選択は、2つが近接している場合に消光物質が蛍光色素のエネルギーを吸収することを必要とする。色素分離の際の蛍光の増加が可能な限り大きいことが好ましい(様々なエネルギー移行系で3〜20倍の蛍光の増加が報告されている)。1つの蛍光色素のみを使用する場合、最も高い蛍光強度を有する(通常は幅広い発光スペクトルを有する)色素を選択するべきである。同じ標的の2つの別個の領域の検出のために、同じ蛍光/消光基を保有する2つのプローブを設計した場合は、アッセイの感度が増加し得る。あるいは、異なる組合せの蛍光/消光物質色素を利用する場合は、異なる標的を標的とした2つまたはそれ以上のプローブを使用することもできる。しかし、2つまたはそれ以上の蛍光色素を使用する場合、様々な色素の蛍光を区別するためにアッセイの感度が損なわれ得る。これは、様々な色素の蛍光が重ならないような、より狭い発光スペクトルの検出によって行い得る。
【0051】
以下の段落は、従来技術によって教示されているが、以下にさらに強調する一定の制約とともに本発明の教示に従って使用されるオリゴヌクレオチドプローブを記載しており、これらの制約は、シグナルの増幅および/またはバックグラウンドシグナルの低下のために優位な標的核酸の検出をもたらす。
【0052】
図1Aは、標的特異的プローブ10および20を使用するための第1の実施形態を例示し、イメージング部分は標的に特異的である。図1Aでは、(a)および(e)によって表される配列は、標的配列(a’)および(e’)に特異的である。配列(c)および(c’)は、好熱性制限酵素の制限部位を提供するために選択する。好熱性制限エンドヌクレアーゼの一例はBsoB1である。
【0053】
図1Bは、図1Aに模式的に例示したプローブ10および20から形成された複合体を例示する。プローブ10および20は、標的21とカップリングしたプローブ10の融解温度(TmA)または標的21とカップリングしたプローブ20の融解温度(TmB)よりも低い反応温度(THyb)で、そのそれぞれの標的配列(a’)および(e’)とハイブリダイズする。THybは、TmAまたはTmBのうちの少なくとも1つよりも高いため、プローブ10および/または20は、プローブとして標的に周期的にオンとオフをする:標的の複合体が形成し、プローブ10または20のうちの少なくとも1つが切断され、そのプローブは標的21または標的/プローブの複合体より変性することとなる。一部の実施形態では、このプローブサイクリングには温度サイクリングが伴い、および/または温度サイクルによって達成される。このプローブサイクリングは、より多くのプローブが標的とハイブリダイズすることを可能にすることによって、シグナル増幅を促進する。当業者は、融解/ハイブリダイゼーション温度は配列の長さおよび組成の関数であることを認識されよう。当業者は、所定のTHybでの使用に適した配列長および配列組成を選択することができる。
【0054】
本実施形態では、複合体の3つのハイブリダイズした部分の融解温度とハイブリダイゼーション温度との間の熱力学的関係は、TmC<[TmAまたはTmB]<THybである(式中、TmCは、プローブ10および20それぞれの領域(b c d)および(b’ c’ d’)の間に形成されたハイブリッドの融解温度である)。この関係は、標的核酸配列の非存在下において溶液中でプローブ10:プローブ20の複合体が形成されることを妨げる。好ましい実施形態では、配列は、塩基スタッキングを用いて複合体を与えるように選択する。当業者は、塩基スタッキングが図1Bに例示した複合体の安定性に寄与する様式を認識するであろう。
【0055】
(a)および(e)とそのそれぞれの標的とのハイブリダイゼーションは、相補的領域(b)および(b’)、(c)および(c’)ならびに(d)および(d’)を近接させ、ハイブリダイゼーションが起こって二本鎖制限部位60を保有する三重複合体が形成されるようにその局所的濃度を増加させる。その後、この新しく形成された制限部位60は、適切な酵素(たとえばBsoB1)によって切断されて、蛍光物質70を消光物質80から分離させ、これにより、標的依存的に蛍光が生成される。
【0056】
好ましい実施形態では、(a):(a’)または(e):(e’)の融解温度Tmは、(b、c、d):(b’、c’、d’)の融解温度よりも高い。反応は、(b、c、d):(b’、c’、d’)二重鎖の標的非依存的な形成を妨げるために高温のTHybで実施する。また、本実施形態では、反応経過の全体にわたって酵素活性の維持を確実にするために、制限酵素は好熱性でもある。
【0057】
また、ハイブリダイズした領域(a):(a’)および(e):(e’)中の対形成した塩基のスタッキングも、三次プローブ:標的の複合体の安定性を増強させ得る。対形成した塩基のスタッキングは、すべて参照により組み込まれる非特許文献13、非特許文献14、非特許文献15に記載されている。任意選択で、多重反応では、領域(b−d)および(b’−d’)の配列は、多重反応中の様々なプローブ組間の、プローブ10および20の標的非依存的なハイブリダイゼーションの潜在性を低下させるために、それぞれのプローブ対に特異的である。プローブ20および標識したプローブ10のうちの一方または両方は、2つのプローブが標的非依存的にハイブリダイゼーションすることを妨げるヘアピン構造で構成することができる。しかし、以下にさらに詳述するように、本実施形態で達成可能なシグナル増幅の遅い動力学を考慮すると、ヘアピン構造を用いてプローブを構成することは、使用をさらに制約する。
【0058】
図1A〜Bに例示した実施形態の1つの不利点は、プローブ10および20が標的をサイクルに出し入れする速度である。本実施形態では、蛍光の蓄積は、切断されたプローブが標的から解離することならびにプローブ10および20が標的とハイブリダイゼーションして追加の複合体を形成することに依存する。本実施形態を鎖置換増幅(SDA)と比較すると、SDAでは、倍加時間は約30秒であり(非特許文献16を参照)、リアルタイムの蛍光に基づいたシステムにおける増幅された標的の検出は、約108個の切断されたプローブ分子の蓄積を必要とする。したがって、103個の標的分子の入力レベルから、105倍の増幅が必要であり(標的のそれぞれのコピーが1個のプローブ分子の切断をもたらすと仮定する)、約log105回のサイクル(倍加)をlog2で除算し、すなわち約16.6×30秒=8.5分間かかる。対照的に、図1A〜Bに例示した実施形態では、約3秒のサイクル時間を仮定すると(すなわちSDAのそれの1/10)、103個の標的コピーから108個の切断されたプローブを生成するために必要な時間は、108÷103×3秒=300,000秒=83.3時間によって得られ、これは、ほとんどの応用には許容されない時間の長さである。
【0059】
好ましい実施形態では、二次的な、プローブ切断の自続的な方法 (self-sustaining means) が、切断されたプローブの蓄積速度を増加させる。これらの実施形態は、プローブの切断を誘発する機構を提供する。これらの実施形態では、標的と、特定の実施形態では1つまたは複数のプローブを連続的に再利用する。特定の実施形態では、再利用された構成要素は、追加の分析物特異的ハイブリダイゼーション事象を必要とせずに、追加のプローブ切断のラウンドを誘導する。
【0060】
自続的なプローブ切断 (Self-sustaining probe cleavage) は図2A〜2Cに例示されている。本実施形態では、3つのプローブ、すなわちプローブ10、プローブ20およびプローブ22が存在する。プローブ10は、標的核酸上の配列(a’)の相補体である第1の配列(a)を有する。また、プローブ10は、プローブ20上の配列b’、c’およびd’とハイブリダイズする配列(b、cおよびd)も有する。
【0061】
図2Aでは、プローブ10もプローブ20も、レポーター(図1Aおよび1Bに例示した蛍光物質70および消光物質80)を備えていない。その代わりに、プローブ20は、非特異的な標識したレポータープローブ22上の相補的配列(e)とハイブリダイズする配列(e’)が備えられている。
【0062】
図2A〜Cは、その一方が切断を妨げるためにチオエート化されている2つのBsoBI制限部位を有する5’末端を含むように改変されているプローブ20を例示する。プローブ10および20とその相補的配列との標的非依存的ハイブリダイゼーション((b、c、d):(b’、c’、d’))を最小限にするために、反応を、標的特異的プローブ領域(a)および(g’)の融解温度Tm以上である高温THybで実施する。
【0063】
プローブ10中の(a)およびプローブ20中の(g’)と標的中のその相補的標的配列(a’およびg)とのハイブリダイゼーションにより、プローブ10の領域(b、c、d)およびプローブ20の(b’、c’、d’)を近接させ、次に、それらのハイブリダイゼーションおよび二本鎖制限部位60の形成をもたらす。制限部位60は、BsoBI酵素によって切断されて、プローブ10中に相補体を有さないプローブ20(d’、e’、f’)から一本鎖断片23を放出する。プローブ20の断片23(d’、e’、f’)は、標識したレポータープローブ22(d、e、f)の配列に相補的である。図2Bに例示するように、断片(d’、e’、f’)とレポータープローブ22とのハイブリダイゼーション(hybrization)は、半チオエート化されたBsoBI制限部位90の形成をもたらす。この二重鎖の修飾されていない(標識した)鎖は、図2Cに例示するように、BsoBI酵素によってニックが入って断片24(d)および25(e、f)を生じ、これはその相補的配列から解離し、それによって蛍光物質70および消光物質80を分離し、標的依存的に蛍光を生成する。本実施形態の重要な一態様は、チオエート化されたDNA鎖(f’、d’、e’)が、さらなる分析物特異的プローブハイブリダイゼーションに依存せずに、さらなるラウンドのプローブハイブリダイゼーションおよび一本鎖ニッキングを受け、それによって蛍光の蓄積をもたらす能力である。複数の標的分析物を検出する多重化応用では、レポータープローブ22は、複数の分析物特異的プローブ20の配列の5’末端に相補的な普遍的な配列を含み得る。すなわち、複数の異なる標的特異的プローブ20がその5’末端で同一の配列(f’、e’、d’)を有する。
【0064】
図2A〜2Cに記載の機構は本発明の概念を説明するための教授法ツールとして有用であるが、この機構は、領域(a)および(g’)に相補的な配列の非存在(すなわち標的の非存在)下で、溶液中の(b、c、d)と(b’、c’、d’)とのハイブリダイゼーションが原因で標的非依存的なシグナルの可能性をもたらす。いったん、この複合体が形成されると、制限部位60が切断され、これにより標的の存在に非依存的に断片(d’、e’、f’)が生成され、これは偽陽性を与える。
【0065】
第2の実施形態は標的非依存的なシグナルの潜在性を軽減させ、図3A〜Dに例示されている。本実施形態では、プローブ20は、安定したヘアピン構造100を有するように構成されている。ヘアピン100は、2つのプローブが溶液中に遊離している場合に、プローブ10の3’末端とのハイブリダイゼーションを遮断する。ヘアピン構造は2つのRERS配列、60および90を有することに留意されたい。これらのRERS配列は少なくとも部分的にヘアピン構造のループ内に位置しており、好ましくは同じ制限エンドヌクレアーゼの縮重認識配列であるように構成されているため、制限酵素による切断に感受性のある二本鎖制限部位を形成しない。2つのプローブ10、20が、それぞれの(標的)配列へ共にハイブリダイゼーションされる時、すなわち、領域(a)および(g’)が、そのそれぞれの標的配列(a’)および(g)にハイブリダイゼーションするのは、二本鎖ヘアピンが変性している状態にある。図3Bを参照して、プローブ10および20が特定の標的とハイブリダイズしている場合、プローブ10(すなわち配列b、c、d)および20(すなわち配列b’、c’、d’)の2つの相補的末端配列の局所的濃度は十分に高いため、(b、c、d):(b’、c’、d’)の分子間ハイブリダイゼーションが起こる。図3Aに例示した立体配置では、プローブ10および20はどちらも配列bを有することに留意されたい。(b’)と示した配列bの相補体はプローブ22の中にある。ヘアピン構造100は、溶液中に遊離しており、標的とハイブリダイズしていないプローブ20が、普遍的な標識したレポータープローブ22(the Universal labeled Reporter Probe 22)と結合しないようにする。プローブ10およびプローブ22は、それぞれの相補的配列(b、c、dおよびb’、c’、d’)を有するが、それ以外は、どちらも溶液中に遊離している場合にハイブリダイズしないように構成されている。代替実施形態では、プローブ10もヘアピンを有する。いったん、プローブ10および20が標的との結合のために近接すると、プローブ10中の(b、c、d)とプローブ20中の(b’、c’、d’)とのハイブリダイゼーションが起こる。これは図3Bに例示されている。ハイブリダイゼーションにより、制限酵素(BsoB1)によって切断されて、標識したレポータープローブ22中の(b’、e)に相補的な断片23(d’、e’、b)を生じる、二本鎖認識部位60が生じる。
【0066】
プローブ20の断片23(d’、e’、b)とプローブ22とのハイブリダイゼーションにより二本鎖の半チオエート化された制限部位90が作製され、これは、プローブ22に対応する鎖上の制限酵素によってニックが入る。図3Dを参照して、1つのニックが入った断片110は配列(b’)および消光部分80を有する。消光部分80の一例はDabcylである。しかし、これは一例にすぎず、当業者は、以前に記載のように多くの適切な消光部分を認識するであろう。レポータープローブ22の他方のニックが入った断片120は蛍光部分70(たとえば蛍光物質)を保有する。
【0067】
レポータープローブ22のニックが入った断片110、120をプローブ20のその相補的断片23(b、e’、d’)および互いから解離させることにより、蛍光の生成および一本鎖プローブBの断片23(b、e’、d’)の再生がもたらされる。その後、DNA23の保護された(たとえばチオエート化された)一本鎖断片は、さらなるラウンドの自己再生プローブハイブリダイゼーションおよび一本鎖切断を受けることができ、蛍光シグナルの蓄積(および増幅)がもたらされる。
【0068】
図4A〜4Dを参照して、標識していないヘアピンプローブ200を、標的特異的な蛍光の生成における中間体として使用する。プローブ200は、標的配列201(b−i)の一部分の相補体である第1の配列(b’−i’)を有する。プローブ200は、制限部位205の一本鎖のチオエート化された部分である一部分(d−e)を有する第2の配列(a−c’)を有する。第1のオリゴヌクレオチドプローブ200の第1の配列(b’−i’)の一部分および第2の配列(a−c’)全体がヘアピン構造を形成することに留意されたい。ヘアピンには、標的結合配列と結合するプローブ200の配列の一部分が含まれるため、プローブ200と標的201とのハイブリダイゼーションにより、プローブ200のヘアピンを変性させる(すなわちハイブリダイズしなくなる)。一本鎖のチオエート化された制限部位は制限エンドヌクレアーゼによって消化されない(すなわちニックが入らない)。
【0069】
プローブ200は、相補的標的とハイブリダイズして、熱力学的により安定したヘテロ二重鎖複合体210を形成する。図4Bを参照して、複合体210はヘアピンプローブ230とハイブリダイズしている。ヘアピンプローブ230は、複合体210の配列(a−f)とハイブリダイズする第1の配列(a’−f’)を有する。プローブ230は、第3のオリゴヌクレオチドプローブ260上の第1の配列(b’−e)に相補的であり、それとハイブリダイズする第2の配列(b−e’)を有する(図4D)。第1の配列の全体および第2の配列の一部は、第2のオリゴヌクレオチドプローブ230のヘアピン構造(b−b’)を形成する。プローブ230の第1の配列(a’−f’)の一部分255(d’、e’)は、複合体240中のプローブ200の第2の配列(c’−a)の一部分205(d、e)と共に制限部位を形成する。プローブ230の第2の配列(b−e’)の一部分250(d−e)は、プローブ260の第1の配列(b’−e)の一部分262(d’−e’)と共に、半チオエート化された制限部位を形成する(図4D)。
【0070】
プローブ230のハイブリダイゼーションは、熱力学的に好適な三重構造240(プローブ230:プローブ200:標的201)を形成する。プローブ230は、保護された(たとえばチオエート化された)制限部位250および保護されていない(たとえばチオエート化されていない)制限部位255をどちらも保有する。制限部位の保護されていない鎖255のニッキングは、プローブ200から解離する小断片242(d’−a’)および244(b−e’)の形成をもたらす、図4C参照。
【0071】
図4Dに示すように、断片244(b−e’)は、標識したヘアピンレポータープローブ260の第1の配列(b’−e)に相補的である。その相補的配列の長さが原因で、244とプローブ260とのハイブリダイゼーションは、プローブ260のヘアピン構造の維持よりも熱力学的に好適である。その結果、プローブ260中の分子内塩基対形成が破壊され、複合体270(プローブ260:小断片244)の形成がもたらされる。また、プローブ260はシグナル伝達部分264(たとえば蛍光物質)および消光部分266も有する。プローブ260中の分子内塩基対形成の分裂はシグナル伝達部分264を消光部分266から分離させ、シグナルの増加がもたらされる。その後、保護されていない制限部位262(d’−e’)が制限エンドヌクレアーゼによってニックが入り、蛍光物質264および消光物質266がさらに分離され、これは蛍光のさらなる増加をもたらす。断片244(b−e’)はプローブ260の切断された部分から変性し、別のプローブ260と自由に結合し、ここで、以下のサイクルが繰り返される:i)ハイブリダイゼーションによる複合体270の形成、ii)半チオエート化された二重鎖制限部位の保護されていない鎖(d’−e’)の切断、およびプローブ230の断片244の放出。
【0072】
図5は、図4A〜Dに例示した実施形態で使用するためのプローブ200、230および260の具体的な配列番号の一実施形態である。プローブ200は、HPV16標的に特異的な58merである。プローブ200は配列番号1である。HPV16標的は配列番号2である。HPV−16の標的配列は図7Aに例示されている。HPV16配列(太字の斜体で強調)はプローブ200の3’末端の27個のヌクレオチドに相補的であり、それとハイブリダイズする(図5、配列番号1)。
【0073】
プローブ200はHPV−58標的ともハイブリダイズすることが企図される。HPV−58標的は図7Bに例示されている。これは図7B中の配列番号3である。HPV−58配列中の強調した配列は、小文字によって指定した5個のミスマッチのヌクレオチドが散在した、200(図5)との相補性領域(大文字のヌクレオチドによって示す)を含有する。P1:標的の複合体の形成中の、200のヘアピンを展開させる自由エネルギーのコストを考慮した、三状態平衡モデル(非特許文献17)に基づいた計算は、典型的な反応温度(約50℃)下で200とハイブリダイズした、一致した標的(HPV−16)の画分が、ハイブリダイズするミスマッチの標的(HPV−58)の画分よりも約10,000倍高くなることを示す。したがって、このモデルは、ミスマッチ(HPV−58)の標的のシグナルが、一致した(HPV−16)標的と比較してはるかにより低いことを予測する。
【0074】
プローブ200中のヌクレオチド1〜18はプローブ200中のヌクレオチド31〜48に相補的であり、プローブ200中でヘアピン構造を形成する。プローブ200中のチオエート化されたRERS配列205は、ヌクレオチド19から24であり、配列ctcgggであり、BsoBIによる切断を受けやすい配列のうちの1つである。しかし、その化学修飾のために、RERS配列205は、プローブ230中の255と二重鎖制限部位を形成する際に切断されない。上述のように、プローブ200が標的配列と近接して配置された際、熱力学平衡は、プローブ200が標的配列と複合体を形成するのに有利なように、ヘアピンの変性に偏りやすい。プローブ200は約−13.086kcal/モルに等しいdG値を有する。本明細書中に報告したdG値は、非特許文献18、非特許文献19に従って計算した。この値はプローブの二次構造の自由エネルギーであり、所定の条件の組(塩濃度、温度、DNA濃度など)下のヘアピンの相対的安定性を示す。値が高ければ高いほど(よりマイナス)、ヘアピンを変性させるためにより多くのエネルギーが必要である。
【0075】
当業者は、プローブの設計、特に等温プロセスにおいて考慮される多くの要因を認識している。具体的には、制限エンドヌクレアーゼは、それが最適に活性である、定義された温度範囲を有する。したがって、制限エンドヌクレアーゼは等温プロセスの温度に基づいて選択される。また、プローブの安定性は温度の関数である。より長いプローブ(すなわち、標的配列に対してより多くの相補的ヌクレオチドを有するもの)は、より短いプローブ(すなわち、より少ない相補的ヌクレオチドを有するもの)よりも高い温度でハイブリダイズする。プローブの組成(すなわち、配列を構成する詳細なヌクレオチド)がプローブの融解温度およびハイブリダイゼーション温度に影響を与える。また、多くの他の要因もプローブの設計に影響を与え、これらは当業者に周知である。図5に例示した実施形態では、等温プロセス温度は約55℃から約60℃の範囲である。
【0076】
プローブ230は、配列番号4として例示した45merである。プローブ230中、ヌクレオチド17から45がプローブ200のヌクレオチド2から30に相補的であり、それに特異的である。ヌクレオチド1から14および25〜37がプローブ230のヘアピンを形成する。プローブ230のヌクレオチド10から15が保護されたRERS配列250であり、ヌクレオチド23から28が保護されていないRERS配列255である。保護されていない制限部位255は、プローブ200上の保護された制限部位205の相補体である。前述のように、RERS配列250はRERS配列255に縮重する。上述のように、プローブ230が複合体210(プローブ200:標的配列201)と近接して配置された際、熱力学平衡は、複合体210と複合体240を形成することを支持して、ヘアピンの変性に有利に働く。この観点から、プローブ230のdGの値は−10.79kcal/モルである。
【0077】
プローブ260のヌクレオチド配列(シグナル伝達および消光部分を有さない)は、40merの配列番号5として例示されている。ヌクレオチド1から17は、プローブ230の断片244上のヌクレオチド7から23に相補的であり、それと結合する(プローブ230が制限エンドヌクレアーゼによってニックが入って、複合体240から変性される断片242および244が形成された後)。プローブ260は−12.059kcal/モルのdG値を有する。熱力学は、プローブ260がプローブ230からの断片244に近接することで、プローブ260のヘアピン(ヌクレオチド11〜24とその相補的配列のヌクレオチド28〜40によって形成)が変性し、ヘアピンの展開が引き起こされるようなものである。プローブ260は、ヌクレオチド9から14に保護されていないRERS配列262を有する。これは、断片244のチオエート化されたRERS配列250(ヌクレオチド10から15)に相補的であり、それとアラインメントする。生じる二本鎖制限部位は制限エンドヌクレアーゼによってニックが入り、プローブ260の2つの断片が作製される。ヌクレオチド1から9によって定義される第1の断片はシグナル部分264(たとえば蛍光物質)を保有する。ヌクレオチド10から40によって定義される第2の断片は消光部分266を保有する。
【0078】
図6は、プローブハイブリダイゼーションの特異性を増強させるために遮断プローブを使用する、さらなる実施形態を例示する。遮断配列320は、標的配列310の一部分とのハイブリダイゼーションについてプローブ300と競合する。遮断配列320をプローブ300によって置換することは、競合するハイブリッド配列(a、b):(a’、b’)および(b、c):(b’、c’)の相対的熱力学的安定性に依存する。特異性を最大限にするために、プローブ300は、配列(b、c)および標的310中の(b’、c’)の間の完璧な相補性のみが遮断プローブ320の置換をもたらすように設計されている。そのような遮断技術の原理は、本明細書中に記載のすべての実施形態に適用可能である。遮断プローブ320の使用によって提供される1つの利点は、完璧に一致した標的配列およびミスマッチの標的配列の間のプローブのTmの差異が小さい、一塩基多型を検出するための実施形態にある。そのような遮断プローブは、図6に例示するように標的配列に、または1つもしくは複数の標的特異的プローブに部分的に相補的であるように設計し得る。後者の場合、プローブとその特異的な標的とのハイブリダイゼーションは、プローブと遮断オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションよりも熱力学的に好適であり、それによって、標的特異的プローブの存在下で遮断プローブが標的から置換されることを促進する。
【0079】
一般に、本明細書中で使用した命名法は、分子学、生化学、微生物学および組換えDNAの技術において慣用のものである。そのような技術は文献中に十分に記載されている。たとえば、非特許文献20、非特許文献21、非特許文献22、非特許文献23、非特許文献24、非特許文献25、非特許文献26、非特許文献27、非特許文献28、非特許文献29および非特許文献30を参照されたい。
【0080】
本発明は、その具体的な実施形態と併せて記載されているが、多くの代替、改変および変形が当業者に明らかであることが明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および幅広い範囲内にあるすべてのそのような代替、改変および変形を包含することが意図される。本明細書中で言及したすべての出版物、特許および特許出願は、それぞれの個々の出版物、特許または特許出願を、本明細書中に参照により組み込まれていると具体的にかつ個々に示される場合と同程度に、その全体が本明細書中に参照により組み込まれる。さらに、本出願における任意の参考文献の引用または特定は、かかる参考文献が本発明の従来技術として利用可能であるということの承認であると解釈されるべきでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)標的核酸を含有すると思われる試料を調製するステップと、
b)前記試料、第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブ、ならびに配列特異的エンドヌクレアーゼを含む反応混合物を調製するステップであって、第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブは第1の配列および第2の配列をそれぞれ含み、第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブの第1の配列は、前記標的核酸の非重複配列に相補的であり、第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれの第2の配列は互いに相補的であり、したがって前記配列特異的エンドヌクレアーゼによって認識される二重鎖制限部位を形成し、第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブのうちの少なくとも1つは、前記制限部位の片側に配置された検出可能な標識および前記制限部位の反対側に配置された消光部分を含み、したがって、第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブの第1の配列を前記標的核酸の非重複核酸配列と選択的にハイブリダイズさせ、第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブの第2の配列を互いに選択的にハイブリダイズさせ、それによって前記二重鎖制限部位を形成し、その結果、前記標的核酸が前記試料中に存在していれば、前記配列特異的エンドヌクレアーゼが前記二重鎖を前記制限部位で切断し、前記標識の検出が可能となり、標的生物の核酸からおよび互いからオリゴヌクレオチドプローブの残りの部分を変性させる、ステップと
を含むことを特徴とする、試料中の標的核酸の存在または非存在を検出する方法。
【請求項2】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼは、BsoBI、Hinc II、Ava I、Nci IおよびFnu 4Hからなる群から選択される酵素であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼはBsoBIであることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応混合物は、熱サイクリングに供されて、前記標的核酸から切断されたオリゴヌクレオチドを変性させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
熱サイクリング温度は、融解曲線を基準として選択されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記反応混合物は、i)前記標的核酸に対する第1のオリゴヌクレオチドプローブの融解温度、ii)前記標的核酸に対する第2のオリゴヌクレオチドプローブの融解温度、ならびにiii)第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブで形成されたハイブリッドの融解温度よりも高いハイブリダイゼーション温度に維持されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記検出可能な標識は蛍光物質であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記蛍光物質はキサンテン色素であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記消光物質はローダミン色素であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記反応混合物は遮断プローブをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
a)標的核酸を含有すると思われる試料を調製するステップと、
b)前記試料、第1のオリゴヌクレオチドプローブ、第2のオリゴヌクレオチドプローブ、および第3のオリゴヌクレオチドプローブ、ならびに配列特異的エンドヌクレアーゼを含む反応混合物を調製するステップであって、第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブは第1の配列および第2の配列をそれぞれ含み、第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブの第1の配列は、前記標的核酸の非重複配列に相補的であり、第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれの第2の配列は互いに相補的であり、したがって二重鎖制限部位を形成し、第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブは標識されておらず、第2のオリゴヌクレオチドプローブは第3の配列をさらに含み、その少なくとも一部分は、第2のオリゴヌクレオチドプローブの第2の配列と、第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブが前記標的核酸と結合していない場合に第2のオリゴヌクレオチドプローブが第1のオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズすることを妨げるヘアピンを形成し、第3の配列の一部分は、第3のオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズして、二重鎖制限部位を形成し、第3のオリゴヌクレオチドプローブは、第2のオリゴヌクレオチドプローブの第3の配列とハイブリダイズして前記二重鎖制限部位を形成する第1の配列の片側に配置された検出可能な標識と、第3のオリゴヌクレオチドプローブの前記第1の配列の反対側に配置された消光部分とを含む非標的特異的オリゴヌクレオチドプローブであり、
前記標的核酸が前記試料中に存在していれば、第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブの第1の配列を前記標的核酸の前記非重複配列と選択的にハイブリダイズさせ、
したがって、ヘアピンループの変性、第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブの第2の配列間のハイブリダイゼーション、前記配列特異的エンドヌクレアーゼによる前記制限部位での前に形成された二重鎖の切断、第3の配列の第2のオリゴヌクレオチドプローブからの分離、第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブの標的核酸からの解離、ならびに複数のサイクルの:i)第2のオリゴヌクレオチドプローブの第3の配列と第3のオリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーション、したがって化学修飾された二重鎖制限部位の形成、ii)前記配列特異的制限エンドヌクレアーゼによる、前記化学修飾された二重鎖制限部位の一本鎖のニッキング、iii)標識の消光物質からの遊離、およびiv)第3のオリゴヌクレオチドプローブの第2のオリゴヌクレオチドプローブの第3の配列からの解離を可能にし、
前記試料中の前記標的核酸の存在を示す、前記標識から生成されるシグナルを検出するステップと
を含むことを特徴とする、試料中の標的核酸の存在または非存在を検出する方法。
【請求項12】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼは、BsoBI、Hinc II、Ava I、Nci IおよびFnu 4Hからなる群から選択される酵素であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼはBsoBIであることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記反応混合物は、熱サイクリングに供されて、前記標的核酸から切断されたオリゴヌクレオチドを変性させることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
熱サイクリング温度は、融解曲線を基準として選択されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記反応混合物は、i)前記標的核酸に対する第1のオリゴヌクレオチドプローブの融解温度、ii)前記標的核酸に対する第2のオリゴヌクレオチドプローブの融解温度、ならびにiii)第1のオリゴヌクレオチドプローブおよび第2のオリゴヌクレオチドプローブで形成されたハイブリッドの融解温度よりも高いハイブリダイゼーション温度に維持されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記検出可能な標識は蛍光物質であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記蛍光物質はキサンテン色素であることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記消光物質はローダミン色素であることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記化学修飾された制限部位は半修飾されていることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項21】
前記反応混合物は遮断プローブをさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項22】
a)標的核酸を含有すると思われる試料を調製するステップと、
b)以下:
i)前記試料、
ii)第1の配列および第2の配列を有する第1のオリゴヌクレオチドプローブ、第1の配列および第2の配列を有する第2のオリゴヌクレオチドプローブ、第1の配列および第2の配列を有する第3のオリゴヌクレオチドプローブ、ならびに
iii)配列特異的エンドヌクレアーゼ
を含む反応混合物を調製するステップであって、
第1のオリゴヌクレオチドプローブは、標的核酸配列に相補的な第1の配列および第2のオリゴヌクレオチドプローブの第1の配列に相補的な第2の配列を有し、第2の配列の第1の部分は、制限部位の化学修飾された一本鎖部分であり、第1のオリゴヌクレオチドプローブの第1の配列および第2の配列の一部分は二次構造を形成し、
第2のオリゴヌクレオチドプローブは、前記標的と直接ハイブリダイズしないプローブであり、第2のプローブの第1の配列の一部分は、第1のプローブの第2の配列の化学修飾された一本鎖部分に相補的であり、第2のオリゴヌクレオチドプローブの第2の配列は、第3のオリゴヌクレオチドプローブの第1の配列に相補的であり、第2のプローブの第2の配列の一部分は、制限部位の化学修飾された一本鎖部分であり、第2のオリゴヌクレオチドプローブの第1の配列および第2の配列は部分的に重複し、第2のオリゴヌクレオチドプローブの第1の配列および第2の配列の少なくとも一部分は二次構造を形成し、
第3のオリゴヌクレオチドプローブは、前記標的と直接ハイブリダイズしないプローブであり、第1の配列は、第2のオリゴヌクレオチドプローブの制限部位の化学修飾された一本鎖部分に相補的な一部分を含み、第1の配列上に配置された検出可能な標識または消光部分をさらに含み、第2の配列は、第1の配列の一部分とヘアピンループを形成し、第2の配列上に配置された検出可能な標識または消光部分を有し、その結果、前記消光部分が、第3のオリゴヌクレオチドプローブ上のその相対的位置のために、前記検出可能な標識のシグナルを遮断し、
前記標的核酸が前記試料中に存在していれば、前記標的核酸を第1のオリゴヌクレオチドプローブの第1の配列と選択的にハイブリダイズさせて、第1の複合体を形成させ、複数のサイクルで、i)第1のオリゴヌクレオチドプローブの第2の配列の少なくとも一部分と第2のオリゴヌクレオチドプローブの第1の配列とを選択的にハイブリダイズさせて、第2の複合体を形成させ、ii)二重鎖制限部位の化学修飾された一本鎖を形成する第1のオリゴヌクレオチドプローブの第2の配列の一部分と第2のプローブ上の相補的配列とのハイブリダイゼーションによって形成された前記二重鎖制限部位の一本鎖部分を切断し、それによって、第2のオリゴヌクレオチドプローブの第2の配列を第2のオリゴヌクレオチドプローブの第1の配列の非重複部分から分離させ、iii)第2のオリゴヌクレオチドプローブを第1の複合体から解離させ、
複数のサイクルで、i)第2のオリゴヌクレオチドプローブの第2の配列を第3のオリゴヌクレオチドプローブの第1の配列と選択的にハイブリダイズさせて、第3の複合体を形成させ、それによって、標識を消光物質から分離させ、シグナルを遊離させ、ii)第2のオリゴヌクレオチドプローブの第2の配列の前記一部分と第3のオリゴヌクレオチドプローブの第1の配列上の相補的配列とのハイブリダイゼーションによって形成された一本鎖二重鎖制限部位を切断し、iii)標識を消光物質から遊離させ、iv)第2のオリゴヌクレオチドプローブの第2の配列を第3のオリゴヌクレオチドプローブから解離させ、
前記試料中の前記標的核酸の存在を示す、前記標識から生成されるシグナルを検出するステップと
を含むことを特徴とする、試料中の標的核酸の存在または非存在を検出する方法。
【請求項23】
前記二次構造はヘアピンであることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼは、BsoBI、Hinc II、Ava I、Nci IおよびFnu 4Hからなる群から選択される酵素であることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼはBsoBIであることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記検出可能な標識は蛍光物質であることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記蛍光物質はキサンテン色素であることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記消光物質はローダミン色素であることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記核酸標的配列はヒトパピローマウイルス核酸であることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
ヒトパピローマウイルス核酸はヒトパピローマウイルス16型およびヒトパピローマウイルス58型からなる群から選択されることを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記標的核酸は配列番号2および配列番号3からなる群から選択されることを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
第1のオリゴヌクレオチドプローブは配列番号1であり、第2のオリゴヌクレオチドプローブは配列番号2であり、第3のオリゴヌクレオチドプローブは配列番号3であることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
前記化学修飾された制限部位は半修飾されていることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
前記反応混合物は遮断プローブをさらに含むことを特徴とする、請求項22に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2013−511292(P2013−511292A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541159(P2012−541159)
【出願日】平成22年11月23日(2010.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/057781
【国際公開番号】WO2011/063388
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】