説明

ヘキサフルオロプロピレンオキシドの重合

ヘキサフルオロプロオピレンオキシド(HFPO)をオリゴマー化する方法であり、ここで、二量体、三量体、四量体、五量体、及び六量体の総計が、重合化されたHFPOの重量の20%未満を示し、該二量体、三量体、四量体、五量体、及び六量体以外のオリゴマー(残りのオリゴマー)が、1100〜4000g/molの範囲の平均分子量を有する前記方法であって、温度−30℃〜+50℃で、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)と、フッ化カリウム(KF)及びジ−、トリ−、又はテトラ−エチレングリコール−ジメチルエーテルから選択される触媒系とを、3個超かつ12個未満のC原子を有する、任意に極性基を含むが塩素又は臭素を含まない、過フッ素化された脂肪族又は芳香族炭化水素、又は、3個超かつ12個未満のC原子を有する、任意に極性基を含むが塩素又は臭素を含まない、部分的にフッ素化された脂肪族又は芳香族炭化水素から選択される溶媒の存在下で、制御されたモノマー添加連続供給、又はモノマーの1又は2ポーション(ショット)の添加により、3バール未満の圧力において接触させることを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)のアニオン重合に関する。より詳細には、本発明は、HFPOの低分子量オリゴマー類を低量組み合わせた所望の重合度をもたらすHFPOの重合に関する。低分子量オリゴマー類は、4又はそれより低い重合度を有するオリゴマーである。
【背景技術】
【0002】
HFPOの重合は当該技術において良く知られており、様々な刊行物や特許文献に記載されている。
【0003】
米国特許第6,127,517号(特許文献1)は、CsFを触媒として用いるヘキサフルオロプロピレン(HFP)の存在下におけるHFPOの重合を記載している。
【0004】
国際公開第2006093885号(特許文献2)は、非プロトン性有機溶媒の存在下でのKFを触媒として用いるHFPOとHFPの混合物の重合方法に関する。これら全ての方法の欠点は、低沸点(−28℃)に起因した再循環が困難であるHFPを使用することである。
【0005】
PALETA ET AL: “Radical additions to fluoro−olefins − photochemical mono−fluoroalkylation and sequentia1 bis−fluoroalkylation of Oxolane”, JOURNAL OF FLUORINE CHEMISTRY, vol. 80, 1996, pages 125−134(非特許文献1)は、結果として二量体から七量体の範囲のオリゴマーを生じさせる、KF及びジグリム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)を用いた、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)及びエチルフルオロオキサレートの存在下でのHFPOの重合に関する。
【0006】
米国特許出願第2004/0116742号(特許文献3)は、HFPOが低分子量の酸フッ化物と縮合し、その生成物のほぼ100%が1:1であり、1:2が付加生成物となる反応に関する。
【0007】
米国特許第3322826号(特許文献4)は、n=1〜6のオリゴマーをもたらすHFPOの重合方法に関する。
【0008】
欧州特許第151877号は、HFPOの光重合プロセスに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,127,517号
【特許文献2】国際公開第2006093885号
【特許文献3】米国特許出願第2004/0116742号
【特許文献4】米国特許第3322826号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】PALETA ET AL: ”Radical additions to fluoro−olefins - photochemical mono−fluoroalkylation and sequentia1 bis−fluoroalkylation of Oxolane”, JOURNAL OF FLUORINE CHEMISTRY, vol. 80, 1996, pages 125−134
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
CsFを使用する方法の欠点とは、反応の非常に強い発熱的な開始、及びCsイオンによって生成物が汚染される可能性があることである。Csは高価で毒性である。さらに、低分子量オリゴマーはより揮発的であるため、高温の使用にはあまり適していない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の制限並びに欠点を克服するために、本発明は、二量体、三量体、四量体、五量体、及び六量体の総計が、20%未満、好ましくは15%未満、最も好ましくは10%未満の完全に消費されたHFPOの重量を示し、残りが1100〜4000g/molの範囲の平均分子量を有するオリゴマーであるようなオリゴマーを得るための、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)をオリゴマー化する方法を提供するものであり、該方法は、−30℃〜+50℃の温度で、HFPOと、フッ化カリウム(KF)からグリコールエーテルと共に形成された触媒系とを、3個超かつ12個未満の炭素原子、及び任意に極性基を有する、過フッ素化された又は部分的にフッ素化された、塩素化されていない、飽和された、脂肪族又は芳香族炭化水素の存在下で、制御されたモノマー添加により、又はモノマーを1又は2ポーション(ショット)を加えることにより、3バール未満の圧力において接触させることを含む。
【0013】
本発明は、ヘキサフルオロプロオピレンオキシド(HFPO)をオリゴマー化する方法であり、ここで、二量体、三量体、四量体、五量体、及び六量体の総計が、重合化されたHFPOの重量の20%未満、好ましくは15%未満、最も好ましくは10%未満を示し、該二量体、三量体、四量体、五量体、及び六量体以外のオリゴマー(残りのオリゴマー)が、1100〜4000g/molの範囲の平均分子量を有する、該方法であって、−30℃〜+50℃の温度で、HFPOと、フッ化カリウム(KF)からグリコールエーテルと共に得られた触媒系とを、3個超かつ12個未満のC原子を有する、過フッ素化された、飽和された、脂肪族又は芳香族炭化水素から選択される溶媒、及び任意に、該溶媒は極性基を含むが、該溶媒は塩素を含まないか、あるいは該溶媒が、3個超かつ12個未満のC原子を有する、部分的にフッ素化された、飽和された、脂肪族炭化水素又は部分的にフッ素化された芳香族炭化水素から選択され、及び任意に、該部分的にフッ素化された溶媒は極性基を含むが、該部分的にフッ素化された溶媒は塩素を含まない、上記の溶媒の存在下で、制御されたモノマー添加(連続供給)により、又はモノマーの1又は2ポーション(ショット)添加により、3バール未満の圧力において接触させることを含むことを特徴とする、上記の方法を提供する。
【0014】
本発明の方法は、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)の不存在下で行われる。
【0015】
触媒系は、グリコールエーテルと共にフッ化カリウム(KF)から形成され、ここで好ましくは、該グリコールエーテルは、ジエチレングリコール−ジメチルエーテル、トリエチレングリコール−ジメチルエーテル、テトラエチレングリコール−ジメチルエーテル及びペンタエチレングリコールージメチルエーテルから選択される。
【0016】
低分子量の揮発性オリゴマー類は、重合後に得られたオリゴマー類の混合物から蒸発させる。あるいはまた、低分子量の揮発性オリゴマー類は、形成されたオリゴマー類を相当するエステル類に転化した後に、得られたオリゴマー類の混合物から蒸発させる。
【0017】
好ましくは、溶媒は、完全に過フッ素化されていない。好ましくは、オリゴマー化は、芳香族基、エーテル基又はエステル基を含む溶媒の存在下に行われる。
【0018】
好ましくは、オリゴマー化は、−20℃〜+20℃の温度で行われる。
【0019】
好ましくは、オリゴマーは、2バール未満、より好ましくは1.8バール未満の圧力で制御されたモノマー添加によって行われる。
【0020】
オリゴマー化は、追加の極性の、非フッ素化溶媒の存在下で行われる。グリム類(ジ−、トリ−、テトラ−、又はペンタ−エチレングリコール−ジメチルエーテル)は、触媒系の一部である。
【0021】
HFPOとKF(重量による)の比は、20〜140の間で変化し、連続プロセスにおいて好ましくは、20〜60、より好ましくは30〜50の範囲にわたる。
【0022】
好ましくは、オリゴマー化は、制御されたモノマー添加によって行われる。“制御されたモノマー添加”という表現は、転化が、比較的一定のHFPO流(連続供給)で安定され、そして温度と圧力もまた、冷却ジャケットの温度及び反応容器の温度をそれぞれ調節することによって、可能な限り一定に保たれる(一定の圧力とは、プラスマイナス10℃、好ましくはプラスマイナス5℃、より好ましくは、プラスマイナス2℃を意味し;圧力は、3バール、好ましくは2バール、より好ましくは1.8バールを超えて上昇させてはならず、そして、反応容器中の圧力は、30%、好ましくは20%を超えて変化してはならない)。しかしながら、温度と圧力を調節する好ましい方法は、HFPOの添加速度を調整することである。圧力又は温度が設定した限度を超えて上昇する場合、HFPOの添加速度は低減される(が、好ましくはHFPOの添加は完全には停止しない)、また、温度又は圧力が、設定した限度を下回って降下する場合、HFPOの添加速度は高められる。
【0023】
好ましいモノマー添加法は、制御されたモノマー添加であり、従って、モノマーは、連続的に容器中に供給される。
【0024】
HFPOの添加でもって開始する時、容器を真空下に維持し、そしてHFPOの添加の間、圧力及び温度を、反応が行われるレベルまで上昇させてこのレベルを維持する。HFPO添加の終わりには、反応器中に残存するHFPOのオリゴマー化により、圧力が降下し、そしてついには真空が形成される。反応器中に残存するHEPO濃度が低ければ低いほど、反応器中の圧力はますます低くなる。
【0025】
好ましくは、オリゴマー化は、ジ−、トリ−、又はテトラ−エチレングリコールジメチルエーテル(glyme)とフッ化カリウムとの重量比が1.0〜10.0である範囲内でもって行う。
【0026】
好ましくは、オリゴマー化は、過フッ素化された溶媒と、ジ−、トリ−、又はテトラ−エチレングリコールジメチルエーテルとの重量比が1〜25である範囲内でもって行う。
【0027】
本発明の方法に可能な溶媒は、CFCHOCHCF;HCFCFCHOCH;CHFCFOCHCFCHF;FOCH;COCF;CFOCF;CFCOOCHCF;CFCOCHCHOCOCF;CFCHOCOCHCF;ペルフルオロブチルテトラヒドロフラン(C16);CHOCHCFCFH;CFCFCFCFOCH;CHOCHCFCFCFCFH;CHOCHCFCFHCF;CFCHOCOCH;(CFCHOCOCH;CFO−C−OCF;CFOCF;CFOCOCH;CCOOCOCOC;(CFCHOCOCOCH(CF;CHCOCHH;CHCOCHH;CHCOCHCFCFHCF;CHFCFCFCFCOOCH;CFCFCOOCH;CFCFCFCOOCH;CFCF(OCH)COOCH;CHOOC(CFCOOCH(式中、n=2、3、4、6、8)、COCO(CFCOOC;HCFCOOC;CFCFCFCOOC;CFCFCOOC;CFCOOC;CF(CFCOOC;COCFCHFCF;CCOOCH;(CFCFCCH;COCH;COCOCH;(CFCFCOCH;(CFCFCOCF;(CFCFCOCOCH;COCH;COCF;(CFCFCHCFOCH;(CFCFCHCFOCOCH;1,4−ビストリフルオロメチルベンゼン又は1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン;ヘキサフルオロベンゼン;(CFCF(CHCHOAc(式中、n=1、2、3、4)である。
【0028】
エーテル基、エステル基、又は芳香族基を有さないその他の可能なフッ素化溶媒は、デカフルオロシクロヘキサン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、ペルフルオロ−n−ペンテン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン、ペルフルオロ−n−ブタン、ペルフルオロメチルデカリン、H(CFH、H(CFH、CFCHFCHFCFCF、ヘキサフルオロシクロブタンである。
【0029】
可能な、ニトリロ基を有するフッ素化溶媒は、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、ジフルオロベンゾニトリル、又はCFCFCFCN、HCFCFHOCFCF(CF)CNである。
【0030】
好ましい溶媒は、過フッ素化された、又はフッ素化された溶媒である。3個超かつ12個未満の炭素原子を有する、フッ素化、過フッ素化された溶媒のそれぞれが好ましい。より好ましい溶媒は、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン、ペルフルオロ−2−n−ブチル−テトラヒドロフラン、1,1,1,3,3,−ペンタフルオロブタン、1−(プロポキシ)ヘプタフルオロプロパン、1−(メトキシ)ノナフルオロブタン、1−(エトキシ)−ノナフルオロブタン、3−エトキシ−1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,6,−ドデカフルオロ−2−トリフルオロメチル−ヘキサン、ビス(2,2,2−トリフルオロエチルエーテル)、1−メトキシ−1,1,2,3,3,3,−ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,2,2,−ペンタフルオロブタン、トリフルオロメチルベンゼン、トリフルオロメトキシベンゼン、エチレングリコールジトリフルオロアセテート、エチレングリコール−ビス−2,2,2,−トリフルオロエチルエーテル、1−メトキシ−2,2,3,−トリフルオロプロパン、1−メトキシ−2,2,3,3,−トリフルオロプロパン、1−メトキシ−2,2,3,4,4,4,−ヘキサフルオロブタン、1−メトキシ−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタンの群から選択される。ビス−(トリフルオロメチル)−ベンゼン、特に、1,3−ビス−(トリフルオロメチル)−ベンゼンが最も好ましい溶媒である。
【0031】
特に好ましい溶媒は、ノナフルオロブチル−メチルエーテル、1,3−ビス−(トリフルオロメチル)−ベンゼン、及び1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンである。
【0032】
単一のフッ素化された溶媒、又は異なるフッ素化溶媒類の混合物が使用できる。
【0033】
アセトニトリル、1,3−ジシアノ−プロパン、1,4−ジシアノ−ブタンのような、追加のフッ素化されていない溶媒を、共溶媒として存在させることができる。好ましくは、いずれのフッ素化されていない溶媒も存在していないことである。
【0034】
重合後、得られた重合体のオリゴ(HFPO)ω−末端化(オメガ−末端化;IUPAC命名法3−AA−2.2.1参照)酸フッ化物は、発生したHFを中和するために、任意に塩基の存在下でのアルコールとの反応によって一般にエステルに転化される。一般に、過剰なメタノールを、第三アミンと一緒に使用して、酸フッ化物をメチルエステルに転化する。低分子量オリゴマー体のメチルエステル類は、その後高級オリゴマー体のHFPO−メチルエステル類から分離されて、そして蒸留(真空下)によって定量化(重量)される。蒸留後、COOCH基1個と当量の蒸留残滓が、重合化エステルと過剰のアミンとの反応、及び未反応のアミンの滴定によって測定される。この当量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC又はSEC)によって測定可能な平均分子量に近い。低分子量種のピークがないのを確認するのにGCを使用することもできる。残滓と蒸留物のGC分析と組み合わせて、導入したHFPOの量と比較した蒸留残滓の量によって、重合化の間に形成された低分子量のオリゴマーの量が与えられる。
【0035】
本発明によって得られるオリゴマー類は、23℃で、スピンドル番号3を用いたBrookfield(登録商標)回転粘度計によって測定した時の70〜8000mPas、好ましくは300〜3000mPasの粘度を有する。
【0036】
本発明を以下の実施例によって例示する。これらの実施例において、別途指示しない限り、全ての部は重量によるものであり、そして全ての温度は摂氏による度である。
【実施例】
【0037】
実施例
A) 制御されたモノマー添加(一工程):
撹拌器、温度計、加熱及び冷却ジャケット、窒素又はヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)用ガスインレットチューブ、真空ラインへの及び場合により凝縮器に装着された側部アームを接続するための接続部、及び任意の受器を備えた、乾燥したステンレス鋼製の加圧容器中に、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグリム)及び触媒を撹拌下に充填し、そして真空下に100℃まで加熱して微量の水を除去する。−15℃に冷却後、HFPOを真空中に放出し、任意に過フッ素化された、あるいは部分的にフッ素化された溶媒を一緒に添加する。それから、アニオン開環重合のために選択された所望の値に温度を調節し、そして高速で撹拌しながらHFPOの添加を開始して、液体中で気泡の良好な分布と小さい寸法を得る。容器中の圧力は、添加の速度を設定することによって1.2〜1.8バールに調節する。この添加は安定であり、そして、冷却ジャケットの温度を調節することによって温度を可能な限り一定に保つ。
【0038】
一定期間後、HFPOの添加を停止し、そして後真空(200〜700ミリバール)を得た後に、重合反応器中の温度をゆっくりと20℃に上昇させ、過フッ素化された溶媒を真空下で蒸留し、そして蒸留残滓を撹拌しながら乾燥メタノール上に注ぐ。ポリマー及びメタノール相の分離後、形成されたHF及び微量の触媒(KF及びテトラエチレングリコールジメチルエーテル)を除去するために、液体の粘性ポリマー相をメタノールで数回洗浄する。その後、低分子量種を取り除くために得られた重合化HFPOメチルエステルを蒸留する。蒸留は、160℃及び約1mmHgの圧力(真空)で行う。導入(消費)したモノマーHFPOの量に関連した重合化HFPOメチルエステル(蒸留の残滓)の百分率が収率となる。
【0039】
得られたオリゴマー化HFPOメチルエステルは、ろ過により除去される少量のKFを含み得る。生成物は、重合度に依存した粘度を有する透明な油である。
【0040】
以下の実施例1〜4は、一般的な方法A) 制御されたモノマー添加(一工程)に従って行った。細部は、実施例1〜4に与えられた通りである。
【0041】
実施例1
触媒: 18gのKF及び44.9gのテトラエチレングリコールジメチルエーテル
溶媒: 230.0gのノナフルオロブチル−メチルエーテル
温度: −11℃
HFPO添加の時間: 12時間
導入されたHFPOの量: 726g
ポリHFPOメチルエステル(蒸留残滓): 660g
収率: 91%
COOCH基1個に対する当量: 2060g
【0042】
ガスクロマトグラフィーによって蒸留残滓を補足的に分析して以下の結果が得られた。nはオリゴマー化度であった。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例2
触媒: 6gのKF及び14.7gのテトラエチレングリコールジメチルエーテル
溶媒: 34.5gの1,3-ビス−(トリフルオロメチル)−ベンゼン
温度: −11℃
HFPO添加の時間: 7時間
導入されたHFPOの量: 192g
ポリHFPOメチルエステル(蒸留残滓): 167g
収率: 87%
COOCH基1個に対する当量: 2000g
【0045】
実施例3
触媒: 6gのKF及び7.1gのテトラエチレングリコールジメチルエーテル
溶媒: 63.5gの1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン
温度: −11℃
HFPO添加の時間: 7時間
導入されたHFPOの量: 197g
ポリHFPOメチルエステル(蒸留残滓): 182g
収率: 92%
COOCH基1個に対する当量: 1800g
【0046】
実施例4
触媒: 18gのKF及び43.9gのテトラエチレングリコールジメチルエーテル
溶媒: 208.4gの1,3−ビス−(トリフルオロメチル)−ベンゼン
温度: −16℃
HFPO添加の時間: 8時間
導入されたHFPOの量: 731.0g
収率: 93%
COOCH基1個に対する当量: 2446g
【0047】
蒸留された残滓は、ガスクロマトグラフィーで補足的に分析して以下の結果が得られた。nはオリゴマー化度を示した。
【0048】
【表2】

【0049】
B) 制御されたモノマー添加(二工程):
実施例5
加圧容器に1.75gのKFを仕込み、次いで10.0gのテトラグリム及び11.8gのアセトニトリルを添加する。それから、反応器に窒素を流し、そして−10℃に冷却する。第一の工程の間、約25gのHFPOを加圧容器中に導入し、そして可溶性の開始剤化合物に転化させるために数時間撹拌する。その次に、206.7gの1,3-ビス(トリフルオロメチル)-ベンゼンの添加でもって第二の工程を開始し、そして2時間の間に−10℃、0.7バールの圧力で210.0gのHFPOを添加する。メタノールとの反応、及び160℃での蒸留後、1mmHg下で、2400gのエステル当量を有する205gのポリマーが得られる。収率は約87%である。透明の油が得られた。
【0050】
C) 1ショットでのHFPOの導入(制御されていない添加):
乾燥した(熱処理された)、窒素で不活性化された加圧容器中にKFを仕込み、真空下で70℃に加熱し、その後真空移送システムによって、テトラグリム及び(過)フッ素化溶媒と組み合わせる。それから、反応器を−35℃に冷却し、そして一定量のHFPOでゆっくりと満たす。閉じた後、反応温度を撹拌下で0℃まで上昇させて、0℃に達した時、撹拌を15時間継続する。その次に、メタノールの添加によって、重合化した酸フッ化物をオリゴ(HFPO)メチルエステルに転化する。メタノールで洗浄後、ポリマーを160℃、1mmHgで蒸留して低分子量の生成物を除去する。その蒸留残滓は、所望のポリHFPOメチルエステルである。
【0051】
以下の実施例6及び7は、一般的な方法C) 1ショットでのHFPOの導入(制御されていない添加)に従って行った。細部は実施例6及び7中に与えられた通りである。
【0052】
実施例6
触媒: 1.75gのKF及び15.1gのテトラグリム
溶媒: 191.0gの1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン
導入されたHFPOの量: 200.0g
重合化されたHFPOの量: 190.0g
ポリHFPOメチルエステル(蒸留残滓): 175.0g
収率: 88%
COOCH基1個に対する当量: 2700g
【0053】
実施例7
触媒: 1.75gのKF及び15.1gのテトラグリム
溶媒: 206.7gの1,3−ビス−(トリフルオロメチル)−ベンゼン
導入されたHFPOの量: 200.0g
重合化されたHFPOの量: 176.0g
ポリHFPOメチルエステル(蒸留残滓): 164.0g
収率: 82%
COOCH基1個に対する当量: 3500g

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキサフルオロプロオピレンオキシド(HFPO)をオリゴマー化する方法であり、ここで、二量体、三量体、四量体、五量体、及び六量体の総計が、重合化されたHFPOの重量の20%未満を示し、該二量体、三量体、四量体、五量体、及び六量体以外のオリゴマー(残りのオリゴマー)が、1100〜4000g/molの範囲の平均分子量を有する、該方法であって、温度−30℃〜+50℃で、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)と、フッ化カリウム(KF)からグリコールエーテルと共に得られる触媒系とを、3個超かつ12個未満のC原子を有する、任意に極性基を含むが塩素又は臭素を含まない、過フッ素化された、飽和された、脂肪族又は芳香族炭化水素、又は、3個超かつ12個未満のC原子を有する、任意に極性基を含むが塩素又は臭素を含まない部分的にフッ素化された、飽和された、脂肪族又は芳香族炭化水素から選択される溶媒の存在下で、制御されたモノマー添加(連続供給)、又はモノマー(ヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO))の1又は2ポーション(ショット)の添加により、3バール未満の圧力において接触させる段階を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記オリゴマー化が、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)の不存在下で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒が、完全にフッ素化されてなく、かつ、該溶媒が芳香族基、エーテル基、又はエステル基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒が、ノナフルオロブチル−メチルエーテル、1,3-ビス−(トリフルオロメチル)−ベンゼン及び1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記オリゴマー化が、−20℃〜+20℃の範囲の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記オリゴマー化が、制御されたモノマー(連続供給)添加によって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記オリゴマー化が、ジ−、トリ−、又はテトラ−エチレングリコールジメチルエーテルとフッ化カリウムとの重量比が1.0〜10.0である範囲内でもって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記オリゴマー化が、過フッ素化された溶媒と、ジ−、トリ−、又はテトラエチレングリコール−ジメチルエーテルとの重量比が1〜25である範囲内でもって行われる、請求項3に記載の方法。

【公表番号】特表2011−515552(P2011−515552A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501223(P2011−501223)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053532
【国際公開番号】WO2009/118348
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】