説明

ヘッジホッグ阻害剤、放射線及び化学療法薬の併用療法

本発明は、ヘッジホッグ阻害剤を化学療法及び/又は放射線療法と組み合わせて用いる癌性細胞の増殖、細胞の異常成長、及び腫瘍細胞の成長を阻害する治療の組み合わせ及び方法に関する。本発明はまた、治療上有効量のヘッジホッグ阻害剤を化学療法及び/又は放射線療法と同時又は逐次的に併用することにより、化学療法又は放射線療法又は放射線療法及び化学療法の組み合わせのいずれかを受けている哺乳動物の癌患者における化学療法及び/又は放射線療法の増殖抑制効果を高める方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2004年9月30日に出願された米国仮特許願第60/614,617号及び2005年4月27日に出願された米国仮特許願第60/675,207号(両者はそのすべてが参考として本明細書に導入されている)の優先権を主張する。
連邦政府から委託された研究又は開発に関する記述
該当なし
【背景技術】
【0002】
癌の治療には、主として、非常に毒性の試薬を患者に投与する化学療法及び/又は毒性の線量の放射線を患者に照射する放射線治療の使用が含まれる。放射線療法は、癌と診断された患者の約60%に使用される確立された癌治療である。放射線療法は、非常に小さな腫瘍に対してのみ使用される場合に有効な様式である。大きな、又は放射線抵抗性の腫瘍の場合には、放射線治療は化学療法又はホルモン療法と併用される。しかしながら、他の治療との併用でも放射線治療が腫瘍を治癒できない多くの腫瘍が存在する。例えば、化学療法と併用した放射線治療は、局所進行膵臓癌には一般に知られている治療であるが、結果はメジアン生存期間が6〜10ヶ月で十分ではない。(Klinkenbijl JH, et al., “Adjuvant radiotherapy and 5-fluorouracil after curative resection of cancer of the pancreas and peri-ampullary region. Phase III trial of the EORTC Gastrointestinal Tract Cancer Cooperative Group.” Ann. Surg. 1999;230(6):776-784; and Gastrointestinal Tumor Study Group.)
同様にして、ある種の癌の治療に有効である化学療法薬はしばしば他の癌には有効ではないか、許容できない毒性を生ずるほど高用量でのみ有効である。癌の化学療法は近年劇的に進歩したが、単一の薬剤を用いた癌治療はある程度しか成功していない。更に、単独で送達される場合には、EGFR又は血管形成阻害薬のような新規“標的物質”を含む治療薬はヒトの癌治療にほとんど効かない。第一に、いずれの単一物質も存在する悪性細胞の集団内の一小集団のみを標的とするので、癌細胞の小集団は成長し続ける。第二に、細胞は薬剤に長期間暴露されると耐性ができる。多くの化学療法薬は、治癒されるときには併用して送達される。
【0003】
薬剤の耐性を回避し標的細胞集団を増大させるためには、異なる作用機構及び異なる毒性を有する2種以上の物質を用いる併用療法が有用である。更に、ある種の物質の組み合わせは相乗的である可能性があり、それらの複合効果は個々の活性に基づく予測より大きい。従って、異なる物質の併用は癌治療の強力な戦略かもしれない。しかしながら、併用療法は運任せである。多くの場合には、相殺効果及び治療の負担及び拮抗作用の結果、併用のほうがいずれかの治療単独より効果が低くなりうる。多剤耐性もまた問題かもしれない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、電離放射線及び/又は化学療法薬の治療比を改良しうる新規治療計画が改良された、一層効果的な癌治療に必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ヘッジホッグ阻害剤と化学療法及び/又は放射線療法を組み合わせることにより過剰増殖性疾患、特に癌を治療及び予防する方法を提供する。即ち、ヘッジホッグ阻害剤は、放射線療法、化学療法、又は放射線療法及び化学療法の併用療法に対する腫瘍応答を増強しうる。従って、ヘッジホッグ阻害剤は放射線治療及び/又は化学療法の有効性を改良しうる。
一実施態様においては、本発明は、細胞を、同時又は逐次的に、有効用量のヘッジホッグ阻害剤(例えば、シクロパミンのようなステロイドアルカロイド)及び化学療法薬(例えば、タキソールのような抗微小管薬)と接触させることを含む癌性細胞の増殖を阻害する方法を提供する。本発明の別の実施態様においては、ヘッジホッグ阻害剤及び化学療法薬は癌の患者(例えば、ヒト又はその他の哺乳動物)に併用される。
本発明の更に別の実施態様においては、患者にヘッジホッグ阻害剤及び化学療法薬を併用することを含む、化学療法薬を用いた治療が必要な病気の患者において化学療法の増殖抑制効果を増大させる方法が提供される。
【0006】
更なる実施態様においては、本発明は、細胞を、同時に又は逐次的に、有効量のヘッジホッグ阻害剤(例えば、シクロパミンのようなステロイドアルカロイド)及び放射線(例えば、X線又はγ線)と接触させることを含む癌性細胞の増殖を阻害する方法を提供する。本発明の別の実施態様においては、ヘッジホッグ阻害剤及び放射線は癌の患者(例えば、ヒト又はその他の哺乳動物)に併用される。
別の実施態様においては、本発明は、細胞を、同時に又は逐次的に、有効量のヘッジホッグ阻害剤、放射線、及び化学療法薬と接触させることを含む癌性細胞の増殖を阻害する方法を提供する。本発明の別の実施態様においては、ヘッジホッグ阻害剤及び放射線及び化学療法薬は癌の患者(例えば、ヒト又はその他の哺乳動物)に併用される。
本発明の方法は、種々の癌、特に上皮癌、例えば、前立腺癌、肺癌、乳癌、結腸直腸癌及び膵臓癌の治療又は予防に特に有用である。
本発明の特定の適合、組成の変化、及び物理的特性のその他の利点及び十分な評価は、図面とともに以下の典型的な実施態様の詳細な記載を検討することにより得られるであろう。図面は説明及び解説のみのためであり、本発明の限界を定義することは意図しないことは明らかに理解される。
【0007】
本発明は、腫瘍性又は悪性疾患、即ち、悪性細胞がヘッジホッグシグナル経路を発現する疾患を適切に治療する方法を含む。方法は、異常な細胞成長を阻害するために、ヘッジホッグ阻害剤を他の抗癌剤、即ち、化学療法薬又は放射線又はその両者とともに使用することを含む。
ヘッジホッグ(Hh)シグナル経路は、動物の発育中の組織の成長及び器官の形成及び成体組織の恒常性において重要な役割を果たす。Hhシグナル伝達の活性化は通常の組織の修復を伴うが、Hhシグナル伝達の不適切な活性化は癌と関連する。重要なことには、Hhシグナル伝達の阻害物質はHhシグナル伝達に対する規制を撤廃して癌の成長を阻害するので、Hhシグナル伝達の阻害は癌治療の前途有望な方法であることを示唆する。
ヘッジホッグシグナル経路は組織の成長及び分化において重要であり、胚形成ならびに成体組織の恒常性において重要な役割を果たす。ヘッジホッグタンパク質勾配は脊椎動物の中枢神経系における腹側/背側形態及び、とりわけ外皮、筋骨格、胃腸、及び泌尿生殖器系を含む種々の組織における正常な発達に必要不可欠である。分泌されたHhタンパク質はPached(Ptc)受容体を結びつけ、それにより膜貫通受容体タンパク質Smoothened(Smo)を阻害する。これらのことは核転座後の下流転写因子GliによるHhシグナル経路の活性化を許容する。Hhシグナル伝達の活性化は、経路要素Hh、Ptc、及びGliの過剰発現により膵臓癌において明らかにされた。例えば、ヘッジホッグシグナル経路が多くの膵臓腺癌において過剰発現する。Thayerらは、Hhの過剰発現が膵臓上皮内新生組織形成におけるK-ras及びHer-2/neu突然変異を伴い、最終的には侵襲性腺癌に進行する初期の膵臓癌の形質転換モデルを報告した。(Thayer, et al., “Hedgehog is an early and late mediator of pancreatic cancer tumorigenesis,” Nature, 425, 851-856 (2003)を参照されたい。)異常なHhシグナル伝達はまた、乳癌、食道癌、胃癌、及び前立腺癌においても記載されてきた。
【0008】
本発明のいずれかの実施態様を詳細に説明する前に、本明細書に開示され特許請求されているすべての組成物及び方法は、本発明の開示の観点から過度の実験なしに製造及び実行されうることは理解される。本発明の組成物及び方法は典型的な実施態様で記載されているが、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく組成物及び方法及び記載されている方法の工程又は工程の連続において変化が適用されうることは当業者には明らかであろう。特に、化学的及び生理的の両方に関係するある種の薬剤が、同一又は同様な結果を達成しつつ本明細書に記載されている物質に置換されうることは明らかであろう。当業者には明らかなすべてのそのような同様な代替物及び改質は、本発明の精神、範囲及び概念の範囲内であるとみなされる。
本明細書に記載したすべての特許及び印刷物はそのすべてが参考として導入されている。
特に指定がなければ、本明細書において使用したすべての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者の一により一般的に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書において開示され特許請求されている本発明を明らかにするため及び理解を助けるために、以下の定義が有用かもしれない。
本明細書において使用されている“細胞の異常成長”は、良性及び悪性細胞の異常成長又はその他の過剰増殖性疾患を含む正常な規則的な機構に依存しない細胞の成長(例えば、接触阻止不能)を言及することを意味する。
“アシルアミノ”という用語は業界で認められており、以下の一般式により表しうる部分を言及する。
【0009】
【化1】

(式中、R9は、前述の定義のとおりであり、R'11は、水素、アルキル、アルケニル又は(CH2)m-R8を表し、式中のm及びR8は、前述の定義のとおりである。)
【0010】
本明細書において使用されている“脂肪族基”という用語は直鎖状、分岐状、又は環状の脂肪族炭化水素基を言及し、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基のような飽和及び不飽和脂肪族基を含む。
本明細書において使用されている“アルケニル基”及び“アルキニル基”という用語は、前述のアルキルと長さが類似していてそれと置換されうるが、それぞれ1以上の二重結合又は三重結合を含む不飽和脂肪族基を言及する。
本明細書において使用されている“アルコキシル”又は“アルコキシ”という用語は、酸素により親構造に結合している直鎖状、分岐状、又は環状、及びそれらの組み合わせの1乃至8個の炭素原子の基(C1-C8)を言及する。例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロピルキシ、tert-ブトキシ、シクロプロピルオキシ、シクロヘキシルオキシ等が含まれる。“アルコキシル”又は“アルコキシ”はまた、それに結合した酸素を有する前述のように定義されたアルキル基を言及する。“エーテル”は、酸素により共有結合された2つの炭化水素である。従って、アルキルをエーテルにするアルキルの置換基は、=O-アルキル、=O-アルケニル、=O-アルキニル、=O-(CH2)m-R8(式中のm及びR8は前述の定義のとおりである)の一により表しうるようなアルコキシであるか、それと類似している。
【0011】
本明細書において使用されている“アルキル”という用語は、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、及びシクロアルキル置換アルキル基を含む飽和脂肪族基を言及する。いくつかの実施態様においては、直鎖状又は分岐状アルキルはその主鎖に30個以下の炭素原子を有する(例えば、直鎖状連鎖がC1-C30、分岐状連鎖がC3-C30)、更に好ましくは20個以下の炭素原子を有する。同様に、好ましいシクロアルキルはその環構造に3乃至10個の炭素原子を有し、更に好ましくは環構造に5、6又は7の炭素原子を有する。アルキル基の例には、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、シクロヘキシル、メチルシクロプロピル等が含まれる。
更に、本明細書、実施例、及び特許請求の範囲中で使用されている“アルキル”(又は“低級アルキル”)という用語は、“未置換アルキル”及び “置換アルキル”の両方を含むことを意味し、後者は炭化水素主鎖の1以上の炭素上に水素に代わる置換基を有するアルキル部分を言及する。そのような置換基には、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えば、カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、又はアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオアセテート、又はチオホルメート)、アルコキシ、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、複素環、アラルキル、又は芳香族又は複素芳香族部分が含まれうる。炭化水素連鎖上で置換された部分は、適する場合にはそれ自体が置換されうることは当業者には理解されよう。例えば、置換アルキルの置換基には、置換及び未置換の形のアミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネート及びホスフィネートを含む)、スルホニル(スルフェート、スルホンアミド、スルファモイル及びスルホネートを含む)、及びシリル基、ならびにエーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレート、及びエステルを含む)、-CF3、-CN等が含まれうる。シクロアルキルは更に、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノアルキル、カルボニル置換アルキル、-CF3、-CN等で置換されうる。
【0012】
炭素数が特に指定されなければ、本明細書において使用されている“低級アルキル”は、前述のように定義されるが、主鎖構造中に1乃至10個、更に好ましくは1乃至6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。同様に、“低級アルケニル”及び “低級アルキニル”は同様な長さを有する。出願の至るところで、好ましいアルキル基は低級アルキルである。好ましい実施態様においては、本明細書においてアルキルと表される置換基は低級アルキルである。
“アルキルチオ”という用語は、硫黄が結合している前述の定義のようなアルキル基を言及する。好ましい実施態様においては、“アルキルチオ”部分は、-S-アルキル、-S-アルケニル、-S-アルキニル、及び-S-(CH2)m-R8(式中のm及びR8は前述の定義のとおりである)の一により表される。典型的なアルキルチオ基には、メチルチオ、エチルチオ等が含まれる。
“アミン”及び“アミノ”という用語は、例えば、以下の一般式により表しうる部分のような未置換及び置換アミンの両方を言及する。
【0013】
【化2】

(式中、R9、R10、及びR'10は、各々独立して水素、アルキル、アルケニル、-(CH2)m-R8を表すか、又はR9及びR10は、それらが結合しているN原子とともに環構造内に4乃至8個の原子を有する複素環を完成させ、R8は、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環又は多環を表し、mは、0又は1乃至8の整数である。)
【0014】
好ましい実施態様においては、R9又はR10の一方がカルボニルであり、例えば、R9、R10及び窒素はイミドを形成しない。更に好ましい実施態様においては、R9及びR10(及び任意にR'10)は各々独立して水素、アルキル、アルケニル、-(CH2)m-R8を表す。従って、本明細書において使用される“アルキルアミン”という用語は、置換又は未置換アルキルが結合している(即ち、R9及びR10の少なくとも一方がアルキル基である)前述の定義のようなアミン基を言及する。
“アミド”という用語はアミノ置換カルボニルを言及し、以下の一般式により表しうる部分を含む。
【0015】
【化3】

(式中、R9、R10は、前述の定義のとおりである。)
【0016】
アミドの好ましい実施態様には、不安定なイミドは含まれないであろう。
本明細書において使用されている“アラルキル”という用語は、アリール基(例えば、芳香族又は複素芳香族基)で置換されたアルキル基を言及する。
本明細書において使用されている“アルキニル”は、1以上の三重結合を含む、2乃至6個の炭素原子の直鎖状の一価の炭化水素基又は3乃至6個の炭素原子の分岐状の一価の炭化水素基、例えば、エチニル、プロピニル等を言及する。
本明細書において使用されている“アリール”という用語は、0乃至4個のヘテロ原子を含みうる5、6、及び7員環の単環芳香族基、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン及びピリミジン等を含む。環構造内にヘテロ原子を有するアリール基はまた“アリール複素環”又は“複素芳香族”とも呼ばれる。芳香族環は1以上の環上の位置において前述のような置換基、例えば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、複素環、芳香族又は複素芳香族部分、-CF3、-CN等で置換されうる。“アリール”という用語にはまた、1以上の環が芳香族であって、例えば他の環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール及び/又は複素環である、2個以上の炭素原子が2個の隣接している環と共有している(環は“縮合環”である)2以上の環を有する多環系も含まれる。アリール基の例にはフェニル、ナフチル、及びビフェニルが含まれる。
【0017】
本明細書において使用されている“抗微小管薬”という用語は、細胞の微小管の正常機能性を崩壊させることにより細胞分裂を妨げる物質を言及する。典型的な抗微小管薬には、限定するわけではないが、タキソール及びタキソテレ(taxotere)のようなタキサン及びビンクリスチン及びビンブラスチンのようなビンカアルカロイドが含まれうる。
本明細書において使用されている“アルキル化剤”という用語は、一般的にはDNAをアルキル化することにより細胞傷害性を発揮して、細胞の生殖周期を妨害する物質を言及する。典型的なアルキル化剤には、限定するわけではないが、シクロホスファミド、イソスファミド(isosfamide)、メルファラン、ヘキサメチルメラミン、チオテパ又はダカルバジンが含まれうる。
本明細書において使用されている“代謝拮抗物質”という用語は、偽ヌクレオチドを細胞DNAに置換することにより代謝産物の利用を阻害して細胞傷害性を発揮し、それにより、細胞分裂を妨げるかDNA複製に必要な酵素を阻害する抗癌薬を言及する。典型的な代謝拮抗物質には、限定するわけではないが、5-フルオロウラシル、シタラビン、カペシタビン、及びジェムシタビンのようなピリミジン類似物又は2-フルオロデオキシシチジンのようなその類似物、メトトレキサート、イダトレキサート又はトリメトレキサートのような葉酸類似物、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン及びビンデシンのようなビンカアルカロイド、又はネーブルビン、又はエストラムスチン及びタキソイド(taxoid)のようなそれらの合成類似物を含む紡錘体毒、シスプラチンのような白金化合物、及びエトポシド又はテニポシドのようなエピポドフィロトキシン(epipodophyllotoxin)が含まれうる。
【0018】
本明細書において使用されている“アポトーシス”という用語は、プログラム細胞死を言及し、細胞膜ブレブ形成、クロマチン凝縮及び断片化、又はアポトーシス小体の形成のような細胞特性を特徴とする。アポトーシスは、核DNAの断片化により特徴付けられ、興奮剤の存在又は興奮剤又は鎮静剤の除去により活性化され、DNAが損傷した、過剰又は不要な細胞を除去する正常な生理学的プロセスであり、(例えば、遺伝変種によるように)中止される場合には、無制御細胞成長及び腫瘍の形成となりうる細胞の自己破壊の遺伝的に決定された過程である。
本明細書において使用されている“炭素環”という用語は、環の各原子が炭素である芳香族又は非芳香族環を言及する。
“カルボニル”という用語は当業者に認識されており、以下の一般式により表しうるような部分を含む。
【0019】
【化4】

(式中、Xは結合であるか、酸素又は硫黄を表し、R11は水素、アルキル、アルケニル、-(CH2)m-R8又は薬学的に許容しうる塩を表し、R'11は水素、アルキル、アルケニル、-(CH2)m-R8を表し、m及びR8は前述の定義のとおりである。)
【0020】
Xが酸素であり、R11が前述の定義のとおりである場合には、部分は本明細書においてカルボニル基と言及され、特にR11が水素である場合には、式は“カルボン酸”を表す。Xが酸素であり、R'11が水素である場合には、式は“ホルメート”を表す。一般的には、前述の式の酸素原子が硫黄に代わる場合には、式は“チオカルボニル”を表す。Xが硫黄であり、R11又はR'11が水素でない場合には、式は“チオエステル”を表す。Xが硫黄であり、R11が水素である場合には、式は“チオカルボン酸”を表す。Xが硫黄であり、R'11が水素である場合には、式は“チオホルメート”を表す。他方、Xが結合であり、R11が水素でない場合には、前述の式は“ケトン”基を表す。Xが結合であり、R11が水素である場合には、前述の式は“アルデヒド”基を表す。
本明細書において使用されている“ヘテロ原子”という用語は、炭素又は水素以外のいずれかの元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は、ホウ素、窒素、酸素、燐、硫黄及びセレンである。
【0021】
“複素環の”又は“複素環基”という用語は、環構造が1乃至4個のヘテロ原子を含む、3乃至10員環、更に好ましくは、3乃至7員環を言及する。複素環は多環でもよい。複素環基には、例えば、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサチン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナンチリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、アゼチジノン及びピロリジノンのようなラクタム、スルタム、スルトン等が含まれる。複素環は1以上の位置において前述のような置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、複素環、芳香族又は複素芳香族部分、-CF3、-CN等で置換されうる。
“接触する”という用語は、以下の用語、即ち、結合する、添加する、混合する、通過する、培養する等と同義的に本明細書において使用される。更に本発明の化合物は、例えば本明細書に記載されているような非経口、経口、局所及び吸入経路のようないずれかの従来の方法により“投与され”うる。
【0022】
本明細書において使用されている“併用”又は“併用する”という用語は、例えば、ヘッジホッグ阻害剤のような方法の一成分を、例えば放射線及び/又は化学療法薬のような他の成分と同時に、即ち時を違えず同時に、又は逐次的に、即ち一成分の投与後に他の成分を投与することを言及する。即ち、一成分の投与後、第二の成分を第一の成分後実質的に同時に投与してもよいし、第二の成分を第一の成分の有効期間後に投与してもよい。有効期間とは、第一の成分の投与からの最大の利益が認識される期間である。
本明細書において使用されている“併用療法”は、癌の治療中におけるヘッジホッグ阻害剤及び放射線治療、ヘッジホッグ阻害剤及び化学療法薬、又はヘッジホッグ阻害剤、放射線治療及び化学療法薬の適用を言及する。そのような併用療法は、放射線療法及び/又は化学療法の前、最中、及び/又は後のヘッジホッグ阻害剤の投与を含みうる。ヘッジホッグ阻害剤の投与は、放射線治療及び/又は化学療法の適用とは数週間まで離れていてもよく、その前でも後でもよいが、一般的にはヘッジホッグ阻害剤の投与は放射線療法及び/又は化学療法の少なくとも一面と同時であろう(例えば、48時間まで、最も一般的には24時間以内に1回の放射線療法及び/又は化学療法が適用される)。
併用療法はまた、その他の生理学的に活性な物質又は、限定するわけではないが別の抗癌薬及び非薬剤療法(例えば、限定するわけではないが、外科手術)のような様式と更に組み合わせた前述のようなヘッジホッグ阻害剤及び放射線療法及び/又は化学療法の適用も含みうる。
【0023】
本明細書において使用されている“同時に”は、(1)時を違えず同時に、又は(2)一般的な治療計画中の異なった時間に、を意味する。
本明細書において使用されている“ヘッジホッグ阻害剤”という用語は、例えば、活性なヘッジホッグシグナル経路を有する細胞において、ヘッジホッグシグナル経路に対する細胞応答を阻害しうる、特に分泌される成長因子のヘッジホッグ群に対する直接的又は間接的細胞応答を阻害する物質を言及する。ヘッジホッグ阻害剤は、限定するわけではないが、PtcがSmoに及ぼす阻害効果の干渉、Ptcに影響を及ぼさないSmoの活性化、Smoとの直接結合によるSmo機能への影響、及び/又はSmoの下流経路の活性化を含む多くの手段によるヘッジホッグ経路の活性に拮抗しうる。典型的なヘッジホッグ阻害剤には、限定するわけではないが、シクロパミン及びジェルビン(jervine)のようなステロイドアルカロイドが含まれる。
本明細書において使用されている“ハロゲン”という用語は、-F、-Cl、-Br又はIを示す。
本明細書において使用されている“ヒドロキシル”という用語は、-OHを意味する。
本明細書において使用されている“ニトロ”という用語は、-NO2を意味する。
本明細書において使用されている“患者”は、状態、疾患又は病気のために治療を必要とする哺乳動物、好ましくはヒトを言及する。
“ホスホンアミジテ”という用語は、以下の一般式により表しうる。
【0024】
【化5】

(式中、R9及びR10は前述の定義のとおりであり、Q2はO、S又はNを表し、R48は低級アルキル又はアリールを表す。)
【0025】
“ホスホルアミジテ”は、以下の一般式により表しうる。
【0026】
【化6】

(式中、R9及びR10は、前述の定義のとおりであり、Q2はO、S又はNを表す。)
【0027】
“ホスホリル”は、一般的には以下の式により表しうる。
【0028】
【化7】

(式中、Q1はS又はOを表し、R46は水素、低級アルキル又はアリールを表す。)
【0029】
例えば、アルキルのような置換基に使用される場合には、ホスホリルアルキル基のホスホリル基は以下の一般式により表しうる。






【0030】
【化8】

(式中、Q1は、S又はOを表し、各R46は、独立して水素、低級アルキル又はアリールを表し、Q2は、O、S又はNを表す。Q1がSの場合には、ホスホリル部分は“ホスホロチオエート”である。)
【0031】
“多環の”又は“多環基”という用語は、2個以上の炭素原子が2個の隣接している環と共有している2以上の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール及び/又は複素環)を言及する。例えば、環は“縮合環”である。非隣接原子により結合している環は、“架橋”環と呼ばれる。多環の各環は、前述のような置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、複素環、芳香族又は複素芳香族部分、-CF3、-CN等で置換されうる。
本明細書において使用されている“保護基”という語句は、反応性官能基が望ましくない化学変換するのを保護する一時的な置換基を意味する。そのような保護基の例には、カルボン酸のエステル、アルコールのシリルエーテル、及びアルデヒド及びケトンの、それぞれアセタール及びケタールが含まれる。保護基の化学の分野は総説されている(Greene, T. W.; Wuts, P. G. M., Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd ed.; Wiley, N.Y. (1991))。
“セレノアルキル”は、置換セレノ基が結合しているアルキル基を言及する。アルキル基に置換されうる典型的な“セレノエーテル”は、-Se-アルキル、-Se-アルケニル、-Se-アルキニル、及び-Se-(CH2)m-R8(式中のm及びR8は前述の定義のとおりである)の一から選択される。
【0032】
本明細書において使用されている“逐次的に”は、方法の一成分であるヘッジホッグ阻害剤の投与後に他の成分、即ち放射線を適用すること、一成分の投与後に、実質的に第一の成分の直後に第二の成分を投与しうること、又は第一の成分の有効期間の後に第二の成分を投与しうること(有効期間とは、第一の成分の投与からの最大の利益が認識される期間である)を意味する。
本明細書において使用されている“スルフヒドリル”という用語は、-SHを意味する。
本明細書において使用されている“スルホニル”という用語は、-SO2-を意味する。
本明細書において使用されている“置換された”という用語は、すべての許容される有機化合物の置換基を含むことを意味する。幅広い面においては、許容される置換基には、非環式及び環式の、分岐及び非分岐の、炭素環式及び複素環式の、芳香族及び非芳香族の有機化合物置換基が含まれる。許容される置換基は、1以上の同種又は異種の適する有機化合物である。本発明は、許容される有機化合物の置換基により限定されることは決して意図しない。
“スルファモイル”という用語は当業者には認識されており、以下の一般式により表しうる部分を含む。


【0033】
【化9】

(式中、R9及びR10は、前述の定義のとおりである。)
【0034】
“スルフェート(sulfate)”という用語は当業者には認識されており、以下の一般式により表しうる部分を含む。
【0035】
【化10】

(式中、R41は、前述の定義のとおりである。)
【0036】
“スルホンアミド”という用語は当業者には認識されており、以下の一般式により表しうる部分を含む。
【0037】
【化11】

(式中、R9及びR'11は、前述の定義のとおりである。)
【0038】
“スルホネート”という用語は当業者には認識されており、以下の一般式により表しうる部分を含む。
【0039】
【化12】

(式中、R41は、電子対、水素、アルキル、シクロアルキル、又はアリールである。)
【0040】
本明細書において使用されている“スルホキシド”又は“スルフィニル”という用語は、以下の一般式により表しうる部分を言及する。

【0041】
【化13】

(式中、R44は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環、アラルキル、又はアリールからなる群から選択される。)
【0042】
例えば、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミドアルケニル、アミドアルキニル、イミノアルケニル、イミノアルキニル、チオアルケニル、チオアルキニル、カルボニル置換アルケニル又はアルキニルの製造には、アルケニル及びアルキニル基に類似した置換をなしうる。
本明細書において使用されている“治療上有効量”は、癌の治療のために哺乳動物、特にヒトに投与される場合に、癌を治療するのに十分な量を言及する。あるいは、“治療上有効量”は、患者の臨床的に深刻な状態又は症状における改良を引き起こすのに十分な量である。“有効量”はまた、細胞における必要不可欠な生理学的又は医学的応答を導き出す物質(即ち、化学的又は放射性)の量を言及する。
本発明において使用されている、哺乳動物における癌の“治療すること”又は“治療”は、(1)癌の成長の阻害、即ちその発育を阻むこと、(2)癌の拡大の阻止、即ち転移の阻止、(3)癌の軽減、即ち癌の退化を引き起こすこと、(4)癌の再発の阻止、及び(5)癌の症状の緩和、の一以上を含む。“治療”は、治療、阻止及び予防を言及し、特に、予防又は患者が苦しんでいる状態の程度又は発生の可能性を治療又は軽減するために、医薬又は他の様式の適用又は患者に医療処置を遂行することを言及する。
本明細書において使用されている“腫瘍”という用語は、限定するわけではないが、とりわけ、触診、生検、細胞増殖指数、内視鏡検査、マンモグラフィ、デジタルマンモグラフィ、超音波検査、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、陽電子放出断層撮影法(PET)、X線写真、放射性核種評価、CT-又はMRI-誘導吸引細胞診、及び画像誘導針生検を含む臨床スクリーニング又は診断的方法により識別可能な新生物を含む。そのような診断技術は当業者には公知であり、Holland, et al., Cancer Medicine, 4th Ed., Vol. One, Williams & Wilkins, Baltimore, MD (1997)に記載されている。
【0043】
“ED50”という用語は、その最大応答又は効果の50%を引き起こす薬物の用量を言及する。
本発明の方法で適切に治療されうる固形腫瘍には、限定するわけではないが、脳(グリア芽細胞腫、髄芽細胞腫、星状細胞腫、乏突起膠腫、上衣細胞腫)、肺、肝臓、脾臓、腎臓、リンパ節、小腸、膵臓、血液細胞、結腸、胃、乳、子宮内膜、前立腺、睾丸、卵巣、皮膚、頭頸部、食道、骨髄、血液及びその他の組織の腫瘍が含まれる。腫瘍は、転移性及び非転移性として識別されうる。
本明細書において列挙されたいずれかの数値には下方から上方までのすべての値が含まれること、即ち、列挙された最低乃至最高値間の数値のすべての可能な組み合わせが本出願で特別に述べられていると考えられることも特に理解されるべきである。例えば、濃度範囲又は薬効範囲が1乃至50%と述べられている場合には、2乃至40%、10乃至30%、又は1乃至3%等のような値が本明細書において特別に列挙されることを意図する。これらは特に意図されることの例に過ぎない。
本発明のいくつかの実施態様は、細胞をヘッジホッグ阻害剤及び化学療法薬と接触させることにより癌細胞の成長を阻害する方法を提供する。ヘッジホッグ阻害剤及び化学療法薬は、各々が有効な成長阻害量を提供される。ヘッジホッグ阻害剤及び化学療法薬はヒトの癌患者に癌の成長を阻害するのに有効な量が投与されうる。本発明の方法は、ヘッジホッグシグナル経路を発現する悪性細胞に特に適する。
【0044】
説明される実施態様においては、本発明は、膵臓癌細胞の成長を阻害する方法を提供する。換言すれば、方法は、膵臓癌の治療計画の一部を形成しうる。膵臓癌は、非常に不良な予後の一般的な悪性腫瘍である。多くの膵臓癌は、ヘッジホッグシグナル経路を発現又は過剰発現する。
本発明の化合物、特に種々の典型的な種類の置換基を有する変形体(variant)のライブラリは、コンビナトリアル化学及びその他のパラレル合成スキームの影響を受けやすい(例えば、PCT WO 94/08051を参照されたい)。その結果、見込まれるヘッジホッグ阻害剤化合物を同定し、見込まれる阻害剤化合物の特異性、毒性、及び/又は細胞傷害性-運動分布を精密化するために、関連化合物の大きなライブラリ、例えば、前述の化合物の変化に富んだライブラリは、高スループット分析で迅速に選別されうる。例えば、Ptc機能喪失、Hh機能獲得、又はSmo機能獲得のいずれかの細胞を用いて展開されうるPtc、Hh、又はSmo生物活性検定は、Ptcに対するアゴニスト活性又はHh又はSmoに対するアンタゴニスト活性を有する当該化合物に関してそれらのライブラリを選別するのに使用されうる。あるいは、Ptc機能獲得、Hh機能喪失、又はSmo機能喪失のいずれかの細胞を用いる生物活性検定は、Ptcに対するアンタゴニスト活性又はHh又はSmoに対するアゴニスト活性を有する当該化合物に関してそれらのライブラリを選別するのに使用されうる。ヘッジホッグ阻害剤の選別システムを確立するためには、Williams et al., supraも参照されたい。
【0045】
説明のために簡単に述べると、本発明のためのコンビナトリアルライブラリは、所望の性質に関してともに選別されうる化学的に関連した化合物の混合物である。単一反応における多くの関連化合物の調製は、実施する必要のある選別過程の数を低下させて簡単にする。適する物性に関する選別は、従来の方法によりなしうる。
当該ヘッジホッグ阻害剤のような有機低分子の組み合わせライブラリを作り出す技術には、種々の技術が利用できる。(例えば、Blondelle et al., Trends Anal. Chem., 14:83 (1995); U.S. Pat. Nos. 5,359,115 and 5,362,899; 米国特許第5,288,514号; PCT publication WO 94/08051; 米国特許第5,736,412号及び同第5,712,171号; Chen et al., JACS, 116:2661 (1994); Kerr et al., JACS, 115:252 (1993); PCT publications WO 92/10092, WO 93/09668 and WO 91/07087; 及び PCT publication WO 93/20242を参照されたい。これらのすべては、そのすべてが参考として導入されている。)。従って、約100乃至1,000,000又はそれ以上の当該化合物の変形体(diversomer)に関する種々のライブラリが合成され、特定の活性又は性質に関して選別されうる。
ライブラリにおける多様性は、種々の異なるレベルで作り出される。例えば、コンビナトリアル反応に使用される基質アリール基は、例えば、環構造において変化に富むようにコアアリール部分において多様性であり、及び/又はその他の置換基に関してさまざまでありうる。
【0046】
典型的な実施例においては、例えば、任意に候補調節因子の一位置又は合成中間体の置換基に位置する加水分解又は光分解できる基によりポリマービーズに結合している、候補化合物変形体のライブラリが、参考として本明細書に導入されているStill et al. PCT publication WO 94/08051に記載されている技術に適合するスキームを用いて合成されうる。Stillらの技術によれば、ライブラリは一組のビーズ上に合成され、各ビーズは、そのビーズ上に特定の変形体を識別する一組のタグを含む。次いでビーズライブラリは、例えば、Hhアゴニストが捜し求められるPtc機能喪失、Hh機能獲得、又はSmo機能獲得細胞で“めっき”されうる。変形体は、例えば加水分解によりビーズから放出されうる。
前述の関連経路に関する多くの変化が、ヘッジホッグ機能の調節因子として試験されうる幅広い多様な化合物のライブラリの合成を許容する。
更に、その多くが高スループットフォーマットに配置されうる、Ptc、Smo、又はHh機能を調節するヘッジホッグ調節因子のような化合物の能力を決定するのに有効な種々の検定がある。化合物及び天然抽出物のライブラリを試験する多くの薬剤選別プログラムにおいては、所与の時間に調査される化合物の数を最大にするために高スループット検定が望ましい。従って、合成及び天然生成物のライブラリは、ヘッジホッグ調節因子であるその他の化合物に関してサンプリングされうる。
【0047】
無細胞検定のほかに、試験化合物はまた細胞に基づく検定においても試験されうる。一実施態様においては、Ptc機能喪失、Hh機能獲得、又はSmo機能獲得表現型を有する細胞を試験物質と接触させ、例えば、試験物質の存在下における細胞の増殖の阻害に関して得点をつける検定をする。
多くの遺伝子産物が、肘脈障害(ci)群のパッチ付き転写因子、融合した(fu)セリン/トレオニンキナーゼ及び融合したcostal-2、Smo及び抑制遺伝子の遺伝子産物を含むパッチ付き媒介シグナル形質導入にかかわった。
ヘッジホッグタンパク質による細胞の誘導は、その究極の結果が、場合によっては遺伝子の転写又は転換における検出しうる変化である下流エフェクターの活性化及び阻害を含むカスケードを運動において設定する。ヘッジホッグ媒介シグナル伝達の可能な転写標的はパッチ付き遺伝子(Hidalgo and Ingham, 1990 Development 110, 291-301; Marigo et al., 1996)及びショウジョウバエ肘脈遮断遺伝子、Gli遺伝子(Hui et al. (1994) Dev Biol 162:402-413)の脊椎動物同族体である。パッチ付き遺伝子発現は、Shhに応答する肢芽及び神経板の細胞内に生じることが示された。(Marigo et al. (1996) PNAS 93:9346-51; Marigo et al. (1996) Development 122:1225-1233)。Gli遺伝子は、亜鉛フィンガーDNA結合ドメインを有する推定転写因子を記号化する(Orenic et al. (1990) Genes & Dev 4:1053-1067; Kinzler et al. (1990) Mol Cell Biol 10:634-642)。Gli3遺伝子の転写はヘッジホッグの誘導に応答して降下されるが、Gli遺伝子の転写は肢芽におけるヘッジホッグに応答して上昇されると報告された(Narigo et al. (1996) Development 122:1225-1233)。ヘッジホッグシグナル伝達に応答する遺伝子の上昇又は降下調節に応答して、そのようなプロモーター遺伝子をレポーター遺伝子に結合する、例えば、パッチ付き又はGli遺伝子のような標的遺伝子から転写調節塩基配列を選択することにより、ヘッジホッグ媒介シグナル経路を変化させる特定の試験化合物の能力に敏感な転写に基づく検定を誘導しうる。従って、レポーター遺伝子の発現は、ヘッジホッグの調節因子として作用する化合物の開発の有用な選別手段を提供する。
【0048】
本発明のレポーター遺伝子に基づく検定は、前述の、例えば転写調節のような事象のカスケードの最終段階を測定する。従って、検定の一実施態様の実施においては、Ptc機能喪失、Hh機能獲得、Smo機能獲得、又はShh自体による刺激に依存する検出シグナルを発生させるために、レポーター遺伝子構築物を試薬細胞に挿入する。レポーター遺伝子からの転写量は、当業者に公知の適する方法を用いて測定しうる。例えば、レポーター遺伝子からのmRNA発現を、RNAse保護又はRNAをベースとするPCRを用いて検出してもよいし、レポーター遺伝子の保護生成物を特異的汚点又は内因性生物活性により識別してもよい。次いで、レポーター遺伝子からの発現量を、試験化合物の不在下における同一細胞における発現量と比較してもよいし、標的レセプタータンパク質を欠く実質的に同一の細胞における転写量と比較してもよい。転写量の統計的又は別の方法の有意な減少は、試験化合物が正常なptcシグナルに多少作用する(か、機能獲得Hh又はSmoシグナルを抑制する)こと、例えば、試験化合物がヘッジホッグ抑制因子の可能性があることを示す。
一面においては、本発明によるヘッジホッグ阻害剤は、例えば、タンパク質Smoと直接相互作用することによりHhシグナル伝達を阻害するステロイドアルカロイドであるのが適する。特別なヘッジホッグ阻害剤は、例えば、シクロパミン及びその関連化合物のようなある種のステロイドアルカロイドである。(例えば、米国特許願第2004/00729914号; 及び米国特許願第2003/0013646号を参照されたい。)
いくつかの実施態様においては、ステロイドアルカロイドは以下の一般式(I)、又はその不飽和の形及び/又はそのseco-、nor-又はhomo-誘導体で表しうる。
【0049】
【化14】

(式中、原子価及び安定性が認めるように、
R2、R3、R4、及びR5は、各々が結合している環の1以上の置換基を表し、各々に対して、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヒドロキシル、=O、=S、アルコキシル、シリルオキシ、アミノ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、カルボキサミド、酸無水物、シリル、エーテル、チオエーテル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、又は(CH2)m-R8を表し、
R6、R7、及びR'7は、存在しないか又は独立して、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヒドロキシル、=O、=S、アルコキシル、シリルオキシ、アミノ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、カルボキサミド、酸無水物、シリル、エーテル、チオエーテル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、又は(CH2)m-R8を表すか、又は
R6及びR7、又はR7及びR'7は、R6、R7、又はR'7の1以上が存在してそれらに第一又は第二アミンが含まれるという条件で、例えば置換又は未置換の単環又は多環を一緒に形成し、
R8は、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環、又は多環を表し、かつmは0乃至8の整数である。)
【0050】
特別な実施態様においては、R2及びR3は、各々に対して、-OH、アルキル、-O-アルキル、-C(O)-アルキル、又はC(O)-R8であり、
R4は、各々に対して、存在しないか又は、-OH、=O、アルキル、-O-アルキル、-C(O)-アルキル、又はC(O)-R8を表し、
R6、R7、及びR'7は、各々独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミン、イミン、アミド、カルボニル、カルボキシル、カルボキサミド、エーテル、チオエーテル、エステル、又は(CH2)m-R8を表すか、又は
R7及びR'7は、R6、R7、又はR'7の1以上が存在してそれらに第一又は第二アミンが含まれるという条件で、ペルヒドロフロ[3,2-b]ピリジンのようなフラノピペリジン、ピラノピペリジン、キノリン、インドール、ピラノピロール、ナフチリジン、チオフラノピペリジン、又はチオピラノピペリジンを一緒に形成し、
R8は、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環、又は多環を表し、好ましくは、R8は、ピペリジン、ピリミジン、モルホリン、チオモルホリン、ピリダジンである。
いくつかの実施態様においては、ステロイドアルカロイドは以下の一般式(II)、又はその不飽和の形及び/又はそのseco-、nor-又はhomo-誘導体で表しうる。
































【0051】
【化15】

(式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR'7は前述の定義のとおりであり、Xは、好ましくはOであるが、O又はSを表す。)
【0052】
いくつかの実施態様においては、ステロイドアルカロイドは以下の一般式(III)、又はその不飽和の形及び/又はそのseco-、nor-又はhomo-誘導体で表しうる。


【0053】
【化16】

(式中、
R2、R3、R4、R5及びR8は前述の定義のとおりであり、
A及びBは単環又は多環を表し、
Tは、1乃至10結合の長さのアルキル、アミノアルキル、カルボキシル、エステル、アミド、エーテル又はアミン結合を表し、
T' は、存在しないか又は、1乃至3結合の長さのアルキル、アミノアルキル、カルボキシル、エステル、アミド、エーテル又はアミン結合を表し、T及びT'がともに存在する場合には、T及びT'は環A又はBと結合して5乃至8個の環原子の共有結合で閉じた環を形成し、
R9は、環A又はBの1以上の置換基を表し、各々に対して、独立して、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヒドロキシル、=O、=S、アルコキシ、シリルオキシ、アミノ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、カルボキサミド、酸無水物、シリル、エーテル、チオエーテル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、又は(CH2)m-R8を表し、かつ
n及びmは、一緒に結合したA及びR9、又はT、T'、B及びR9に1以上の第一又は第二アミンが含まれる条件で、独立して0、1又は2である)
【0054】
いくつかの実施態様においては、ステロイドアルカロイドは以下の一般式(IV)、又はその不飽和の形及び/又はそのseco-、nor-又はhomo-誘導体で表しうる。
【0055】
【化17】

(式中、
R2、R3、R4、R5、R6及びR9は前述の定義のとおりであり、
R22は、存在しないか又は、アルキル、アルコキシル又はOHを表す。)
【0056】
いくつかの実施態様においては、ステロイドアルカロイドは以下の一般式(V)、又はその不飽和の形及び/又はそのseco-、nor-又はhomo-誘導体で表しうる。











【0057】
【化18】

(式中、
R2、R3、R4、R6及びR9は前述の定義のとおりである。)
【0058】
いくつかの実施態様においては、ステロイドアルカロイドは以下の一般式(VI)、又はその不飽和の形及び/又はそのseco-、nor-又はhomo-誘導体で表しうる。
【0059】
【化19】

(式中、R2、R3、R4、R5及びR9は前述の定義のとおりである。)
【0060】
いくつかの実施態様においては、ステロイドアルカロイドは以下の一般式(VII)、又はその不飽和の形及び/又はそのseco-、nor-又はhomo-誘導体で表しうる。


【0061】
【化20】

(式中、R2、R3、R4、R5及びR9は前述の定義のとおりである。)
【0062】
特に関心があるのは、以下の式(VIII)で示される、シクロパミン、ベラトラミン、及びジェルビンのようなベラトルムアルカロイドの誘導体が含まれるステロイドアルカロイドである。式中のR1、R2、R3及びR4は、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボニル、カルボキシル、ケトン及びアルデヒド、それらの類似物及び誘導体から選択される。Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボニル、カルボキシル、ケトン及びアルデヒド、それらの類似物及び誘導体から選択されるアリール基に結合した1以上の独立した置換基を表す。
【0063】
【化21】

【0064】
特に価値があるのはシクロパミンかもしれない。シクロパミン(ペンシルバニア州のPlymouth Meetingから入手したBIOMOL(登録商標))は以下の式(IX)により表される。




【0065】
【化22】

【0066】
ジェルビンもまた特に価値があるかもしれない。ジェルビン(ペンシルバニア州のPlymouth Meetingから入手したBIOMOL(登録商標))は以下の式(X)により表される。
【0067】
【化23】

【0068】
その他の適するヘッジホッグ阻害剤には、例えば、Williams, et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA, 100, 4616-4621 (2003); Gabay et al., Neuron, 40, 485-499 (例えば、ある種のベンズイミダゾール化合物); 米国特許第6,613,798号; 同第6,545,005号; 同第6,432,970号; 同第6,291,516号; Romer et al., Cancer Cell, 6, 229-240; 米国特許第6,552,016号; 同第6,683,108号; 及び同第6,686,388号(それらはすべて、そのすべてが参考として導入されている)に記載されているような低分子阻害剤が含まれる。
近年、前立腺癌異種移植片MEJM MGHが高用量シクロパミン治療後に完全に退縮することが報告された。シクロパミンはまた、髄芽腫のマウス腫瘍同種移植片において抗腫瘍効果を示した。Hh経路シグナル伝達が過剰活性化した膵臓癌細胞株においては、シクロパミンがアポトーシスを誘導したが、その他の膵臓細胞株は抵抗力があった。いくつかの研究がヘッジホッグ経路タンパク質を過剰発現する種々の腫瘍細胞におけるシクロパミンの細胞傷害効果を示したが、例えば、膵臓癌のような癌の単一治療物質としてのシクロパミンの利用可能性は、腫瘍集団の異種混交化、異なる腫瘍細胞感受性、及び高製造費用により限定される。
本発明のヘッジホッグ阻害剤化合物は、化学療法及び/放射線療法と併用された場合に特に有用であることが見出された。換言すれば、ヘッジホッグ阻害剤がタキソールのような化学療法薬、及び/又は放射線療法と併用される治療の組み合わせが意図される。
【0069】
いくつかの実施態様においては、化学療法薬は抗微小管薬である。パクリタキセル(Integrated BioPharma Inc.から入手しうるTAXOL(登録商標)、本明細書においては“タキソール”と言及される)は、微小管の集合及び安定化を促進する抗微小管薬である。この安定性は、生命維持に必要な間期及び有糸分裂細胞機能に必要不可欠な微小管網目の正常な再組織化を阻害する。核の細胞質内局在中のヘッジホッグ経路Gliタンパク質と微小管との関連性が、例えば、シクロパミンのようなヘッジホッグ経路の阻害剤の抗腫瘍効果をタキソールが増大しうると考えられる。
例えば、アルキル化剤及び代謝拮抗物質のような別の種類の化学療法薬もまた価値がありうる。シスプラチン(ニューヨーク州ニューヨークのBristol-Myers Squibb Co.から入手しうるPLATINOL(登録商標))は、DNA中に存在するグアニンと共有結合を形成するアルキル化剤である。この作用の結果、細胞転写機構及び増殖を妨げる連鎖間及び連鎖内架橋が形成される。調節機構は異常なDNAを検出し、応答のカスケードを活性化してそれを修正し、最終的にはアポトーシスにより細胞死する。
ジェムシタビン(Eli Lilly & Co.から入手しうるGEMZAR(登録商標))は、DNA合成(S相)する細胞を標的とし、G1-S相の発達を阻害する代謝拮抗物質である。ジェムシタビンは、細胞ヌクレオシド・キナーゼによりジホスフェート(dFdCDP)及びトリホスフェート(dFdCTP)ヌクレオシドに活発に代謝される。ジェムシタビンは2つの機構によりDNA合成を阻害する。第一は、ジェムシタビンジホスフェートが、DNA合成のデオキシヌクレオシドトリホスフェートの発生に応答しうるリボヌクレオチド還元酵素を阻害し、第二は、ジェムシタビンがDNAへの取り込みに関してdCTPと競争する。ジェムシタビンは、進行性及び転移膵臓癌において推薦される化学療法薬の一である。
【0070】
放射線療法(又は放射線治療)は、種々の悪性腫瘍の治療に、単独又は化学療法薬及び外科手術と組み合わせて使用される。放射線療法は、直接又は水の放射線分解及び反応性酸素種の発生によりDNAに影響を及ぼす。放射線療法は、DNA鎖切断、修飾塩基、脱塩基部位、糖変性、及びDNA-タンパク質架橋を引き起こす。放射線療法のDNA損傷効果及びシクロパミンによるヘッジホッグ経路の阻害の組み合わせがこれらの単一の物質の各々の抗腫瘍効果を増大しうることが想像される。
抗癌剤、即ち化学療法薬及び/又は放射線療法と組み合わせて使用されるヘッジホッグ阻害剤は、癌性細胞に及ぼす細胞傷害効果を有意に増大させて、治療効果を増大させうることが期待される。特に、有意に増大した成長阻害効果は、抗癌剤が単独で使用される治療計画の場合より低濃度の抗癌剤を用いた前述の組み合わせで得られるので、抗癌剤が単独で大用量使用される場合に通常観察されるより抗癌剤に伴う副作用がかなり低下する治療の提供の可能性が存在する。副作用の発生が低下することにより、癌の治療を受けている患者の生活の質が向上することが予期される。更に、副作用の発生の低下は患者の薬物服用順守を向上させ、副作用の治療に必要な入院の数が低下する。
本発明の治療は、所望の治療又は予防活性、ならびに治療上有効用量の決定に関して生体内で試験しうる。例えば、そのような化合物は、ヒトにおいて試験する前に、限定するわけではないが、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギ等を含む適する動物モデル系において試験しうる。生体内試験においては、ヒトに投与する前に、当業者に公知のいずれかの動物モデル系を使用しうる。
【0071】
典型的なヘッジホッグ阻害剤としてのシクロパミンは、例えば、通常の生理食塩水、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)等のような薬学的に許容しうる媒体中で薬理学的に有効な用量の配合物として調製されうる。添加剤には、殺菌剤、安定剤、緩衝剤等が含まれる。薬剤の配合は、例えば、Hoover, John E., Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA (1975); 及び Liberman, H. A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, NY (1980)において論述されている。
本発明の薬学的組成物の活性成分の実際の用量は、患者に有毒ではなく、特定の患者、組成物、及び投与方法に関して所望の治療応答を得るのに有効な活性成分の量が得られるように変化しうる。選択された用量は、使用する本発明の特定の化合物、又はそのエステル、塩又はアミドの活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排泄速度、治療期間、使用する特定のヘッジホッグ阻害剤と組み合わせて使用するその他の薬剤、化合物及び/又は物質、治療される患者の年齢、性、体重、状態、一般的な健康及び病歴、及び医術において公知の同様な因子を含む種々の因子に依存するであろう。
業界における通常の技術を有する医師は、必要な薬学的組成物の有効量を容易に決定及び処方しうる。例えば、医師は、薬学的組成物に使用される本発明のヘッジホッグ阻害剤化合物の用量を、所望の治療効果を得るために必要な量より少量で開始し、所望の効果が得られるまで徐々にその用量を増大させるであろう。
【0072】
ヘッジホッグ阻害剤は、経口的、非経口的、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮的、舌下、筋肉内、直腸的、経口腔的、鼻腔内、リポソーム内、吸入、経膣的、眼内、カテーテル又はステントによる局所的送達、皮下、関節内、鞘内、又は徐放製剤を含む種々の経路で投与されうる。ヘッジホッグ阻害剤は経口投与されるのが適する。
ヘッジホッグ阻害剤は、放射線療法及び/又は化学療法も宿主に適用されるときに、宿主において癌の阻止又は退縮を引き起こすのに有効な量が投与されうる。更に好ましくは、ヘッジホッグ阻害剤は、約2.0μg/mL以上、更に約3.0μg/mL以上の血中濃度に達するのに有効な量を投与されるのが適する。ヘッジホッグ阻害剤を経口的に投与する場合には、用量は、約5mg/kg/日以上、更に約10mg/kg/日以上であるのが適する。ヘッジホッグ阻害剤の経口薬は、1日に1回以上投与されうる。経口薬が1日に1回以上投与される場合には、適する投薬数は1日に3回である。ヘッジホッグ阻害剤を静脈内投与する場合には、好ましい投薬量は連続的に10mg/kgである。静脈内投薬量は、2時間のような非連続(即ち、限定された)期間、1日に3回、3.3mg/kgであるのが適する。ヘッジホッグ阻害剤は、5%ブドウ糖水溶液のような従来の非生理食塩水注入液を用いて静脈内投与されうる。ヘッジホッグ阻害剤の服薬スケジュールは、例えば、6週間まで、又は本発明が関与する業者により決定されたような、種々の期間でもよい。
所望の治療量が送達される放射線療法及び/又は化学療法の量は変化しうる。放射線療法及び/又は化学療法は、放射線療法及び/又は化学療法がヘッジホッグ阻害剤とともに適用されるときに、宿主において癌の阻止又は退縮を引き起こすのに有効な用量が適用されうる。
【0073】
放射線は種々の方法で適用される。例えば、放射線は、電磁放射線でも微粒子放射線でもよい。本発明の実施において有用な電磁放射線には、限定するわけではないが、X線及びγ線が含まれる。本発明の実施において有用な微粒子放射線には、限定するわけではないが、電子ビーム、陽子ビーム、中性子ビーム、α粒子、及び負パイ中間子が含まれる。放射線は、従来の放射線治療装置及び方法を用い、術中及び定位的方法により送達されうる。本発明の実施において使用するのに適する放射線治療に関する追加の考察は、Steven A. Leibel et al., Textbook of Radiation Oncology, W. B. Saunders Co. (1998)のいたるところに、特に、Chapters 13 及び 14に見出されうる。放射線はまた、例えば、放射性“シード”による、又は標的放射性複合体の全身的送達による標的送達のようなその他の方法によっても送達されうる。その他の放射線送達方法も本発明の実施において使用されうる。
所望の治療量まで送達される放射線の量は変化しうる。放射線は、放射線がヘッジホッグ阻害剤及び/又は化学療法薬とともに適用されるときに、宿主において癌の阻止又は退縮を引き起こすのに有効な量を照射されるのが適する。例えば、放射線は、治療量まで少なくとも1日おきに1回約1グレイ(Gy)フラクション以上照射されるのが適し、更に放射線は、治療量まで少なくとも1日に1回約2Gyフラクション以上照射されるのが適し、更に放射線は、治療量まで1週間に連続して5日間少なくとも1日に1回約2Gyフラクション以上照射されるのが一層適する。別の実施態様においては、放射線は、治療量まで1週間に3回、1日おきに3Gyフラクション照射されるのが適する。更に別の実施態様においては、全部で約20Gy以上、又は約30Gy以上、又は約60Gy以上の放射線が、それを必要とする宿主に照射されるのが適する。
【0074】
患者に送達される化学療法薬の量は変化しうる。適する実施態様においては、化学療法薬は、化学療法薬がヘッジホッグ阻害剤及び/又は放射線療法とともに投与されるときに、宿主において癌の阻止又は退縮を引き起こすのに有効な量が投与されうる。例えば、タキソールは、3週間ごとに3時間のような継続した期間にわたって、約175mg/m2の量が静脈内投与されうる。別の実施態様においては、タキソールは、3週間ごとに3時間のような継続した期間にわたって、約135mg/m2の量が静脈内投与されるのが適する。別の静脈内投薬は、2週間ごとに3時間にわたって、約100mg/m2の量が適する。化学療法の服薬スケジュールは、例えば、全部で4単位の治療に3週間ごとに1回まで、又は本発明が関与する業者により決定されたような、種々の期間でもよい。
以下の実施例は、本発明の好ましい実施態様を明示するために含まれる。以下の実施例に開示されている技術は、発明者により本発明の実施において十分機能することが発見された技術を示すので、その実施の好ましいやりかたを構成すると考えられることは当業者に認められるべきである。しかしながら、当業者は、本発明の開示を踏まえて、多くの変化が開示されている特定の実施態様においてなされ、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく同様な結果が得られることを認めるであろう。
一般的な材料及び方法
【実施例1】
【0075】
細胞培養及び細胞株
Mia PaCa-2、BxPC-3、及びHCT 116細胞は、American Type Culture Collectionから入手した(Mia PaCa-2, CLR-1420(登録商標); BxPC-3, CLR-1687(登録商標); HCT 116, CCL-247(登録商標); ヒトの細胞株, ATCC(登録商標), Rockville, MD)。Mia PaCa-2細胞は、DMEM高グルコース中で成長し、L-グルタミン、ウシ胎仔血清(FBS)、及びペニシリン/ストレプトマイシン1%が補足された。BxPC-3細胞は、10%のFBS及び抗生物質を補足したRPMI 1640媒体中に保持された。HCT 116細胞は、10%のウシ胎仔血清(FBS)及びL-グルタミンを補足したMEM媒体中に保持された。
【実施例2】
【0076】
コロニー形成検定法
250乃至1000個の細胞を60mmの皿で平板培養させた。細胞は一晩培養した。24時間後に放射線(3.5Gy)を照射した。2乃至10μMのシクロパミン(Toronto Research Chemicals, TRC, supplier, Canada)を培養媒体に添加するか、又は両方を併用した。化学療法薬に関しては、平板培養の24時間後に適する濃度で薬剤を培養媒体に添加した。培養物は10乃至14時間培養された。培養後、細胞を0.25%のクリスタル・バイオレットで固定及び染色し、50以上の細胞を含むコロニーの数を数えた。コロニー形成率は対照と比較して正規化した。
【実施例3】
【0077】
PLDR測定
細胞は60mmの皿で成長させて融合させ、3日間融合性を保持した。放射線照射の12時間前に10μMのシクロパミンを媒体に添加した。放射線(3.5Gy)への暴露後、24時間以内の多重時点における生存物検定のために培養物をトリプシン処理し、平板培養させた。
【実施例4】
【0078】
アネキシンV-PE検定
急激に成長する細胞の培養媒体に、化学療法薬を適用又は適用せずに4μMのシクロパミンを添加し、12時間後に放射線を照射した。細胞は、24、48又は72時間後にトリプシン処理した。0.5×106個の新たに分離した細胞についてアネキシン量(Annexin V : PE Apoptosis Detection Kit, BD Biosciences PharmingenTM, San Jose, CA)を測定した。膜透過化の存在は、製造業者の手順で7-AAD(7-アミノ-アクチノマイシンD)染色により追跡した。次いで細胞を、CellQuestソフトウェア(BD CellQuestTM Pro, BD Biosciences Immunocytometry SystemsTM, San Jose, CA)を用い、FACScan(BD FACSCantoTM, BD Biosciences Immunocytometry SystemsTM, San Jose, CA)により分析した。アポトーシス細胞の百分率は、アネキシン単独(初期のアポトーシス)又はアネキシン及び7-ADD(終わりごろのアポトーシス)のいずれかに関して陽性である細胞について記録することにより計算した。すべての実験は3回ずつ実施した。
研究
【実施例5】
【0079】
腫瘍細胞に及ぼすシクロパミン、3.5Gyの放射線、又は両者の組み合わせの影響
試験は、ヘッジホッグを発現しないヒトの結腸癌細胞、HCT 116と比較して、ヘッジホッグを発現する膵臓腫瘍細胞、Mia PaCa-2及びBxPC-3に対してシクロパミンが細胞傷害性であるか否かについて実施した。図1(A)は、4μMのシクロパミン、3.5Gyの放射線、又は両者の組み合わせへの暴露後の2種の膵臓腫瘍細胞株(Mia PaCa-2及びBxPC-3)及び1種の結腸癌細胞株(HCT 116)における正規化生存率を示すグラフを含む。Mia PaCa-2、BxPC-3、及びHCT 116は、それぞれ29%、33%及び92%の生存率であった。次いで、シクロパミン及びIRの影響について研究した。3.5Gyの放射線は、それぞれMia PaCa-2、BxPC-3、及びHCT 116において、26%、66%、及び24%の生存率を示した。4μMのシクロパミン及び放射線は、Mia PaCa-2において4%の生存率、BxPC-3において7%の生存率、及びHCT 116細胞において35%の生存率を示した。生存率はコロニー形成により測定した。シクロパミン+放射線対放射線単独のP値は、Mia PaCa-2及びBxPC-3細胞株に対しては<0.05である。これらのデータは、シクロパミンが、非Hh発現細胞と比較してHh発現膵臓腫瘍細胞に対して選択的に細胞傷害性であることを示す。
【実施例6】
【0080】
膵臓及び結腸癌細胞株のコロニー形成に及ぼすシクロパミンの影響
試験は、ヘッジホッグを発現しないヒトの結腸癌細胞、HCT 116と比較して、ヘッジホッグを発現する膵臓腫瘍細胞、Mia PaCa-2及びBxPC-3に対してシクロパミンが細胞傷害性であるか否かについて実施した。図1(B)は、培養媒体における10μMのシクロパミンへの暴露後の膵臓及び結腸癌細胞株コロニー形成を示す。10μMのシクロパミンにおいては、HCT 116が74%の生存率を示すのに対して、Mia PaCa-2及びBxPC-3は7%及び11%の生存率を示した。P<0.001。これらのデータは、シクロパミンが、非Hh発現細胞と比較してHh発現膵臓腫瘍細胞に対して選択的に細胞傷害性であることを示す。
【実施例7】
【0081】
コロニー形成に及ぼすタキソール、シスプラチン及びジェムシタビンの影響
試験は、シクロパミン及び化学療法薬間の細胞傷害性相互作用の可能性を研究するために実施した。図2は、シクロパミン、タキソール(3.5nM)、シスプラチン(0.8μM)、及びジェムシタビン(7.3nM)への暴露後のコロニー形成を示す。Mia PaCa-2細胞においては、シクロパミン(4μM)は29%の生存率を生じさせ、タキソール(3.5nM)は91%の生存率を示した。タキソール(3.5nM)及びシクロパミン(4μM)の組み合わせは7%の生存率を生じた(P<0.001)。シスプラチン単独(0.8μM)は35%の生存率を生じさせ、シクロパミン(2μM)及びシスプラチン(0.8μM)の組み合わせは11%の生存率を生じた。P=0.56。ジェムシタビン(7.3nM)は35%の生存率を示し、シクロパミン(2μM)との組み合わせは41%の生存率を示した。P=0.7。総合的に、これらのデータは、タキソール及びシクロパミンの相加以上の効果、シスプラチン及びシクロパミンの相加効果、及びシクロパミン及びジェムシタビン間の潜在的な保護効果を示唆する。
【実施例8】
【0082】
アポトーシスに及ぼすシクロパミン、タキソール、又は両者の組み合わせの影響
タキソール及びシクロパミン間の相乗的致死と説明されるアポトーシスが増大するか否かを試験するために、Mia PaCa-2細胞をタキソール(1.7nM)、又はタキソール(1.7nM)及びシクロパミン(4μM)の組み合わせに24時間暴露させた。図3は、シクロパミン(4μM)、タキソール(1.7nM)、又は両者の組み合わせへの24時間の暴露後のアポトーシス細胞の百分率を示す(アネキシンV-PE検定)。アポトーシスは、アネキシンV染色により測定された。タキソールは64.9%のアポトーシスを生じさせたが、タキソール及びシクロパミンの組み合わせは83.5%のアポトーシスを示した(シクロパミン群における18.2%と比較して)。これらのデータは、タキソール及びシクロパミン間の相乗的致死が、ある程度はアポトーシスの増大によることを示唆する。
【実施例9】
【0083】
アポトーシスに及ぼすシクロパミン、Gy放射線、又は両者の組み合わせの影響
増大するアポトーシスにより放射線致死が高められたシクロパミン及び放射線の組み合わせは、アネキシンV検定により測定された。図4は、シクロパミン(4μM)、放射線(3.5Gy)、又は両者の組み合わせへの24、48、又は72時間の暴露後のアポトーシス細胞の百分率(アネキシン検定)を示す。シクロパミンは、24、48、及び72時間後に、それぞれ18.15%、29.8%、及び32.9%のアポトーシスを生じさせた。対照群におけるベースラインのアポトーシス率は16.92%であった。3.5Gyの放射線後のアポトーシスは、24、48、及び72時間後に、それぞれ34.6%、29.5%及び31.2%であった。放射線及びシクロパミンの組み合わせへの暴露後のアポトーシスは、放射線単独との有意な差はなかった(24、48、及び72時間後に、それぞれ32.11%、28.5%、及び32.3%)。これらのデータは、総合的に、アポトーシスの増大により説明されないヘッジホッグ発現腫瘍細胞において、シクロパミンは放射線治療と組み合わせた場合に相加細胞傷害性効果を有することが示された。ヘッジホッグ経路を発現しない細胞においては、シクロパミンは照射後の生存率に有意な影響を及ぼさなかった。
【実施例10】
【0084】
アポトーシスに及ぼすジェルビン、Gy放射線、又は両者の組み合わせの影響
増大するアポトーシスにより放射線致死が高められたジェルビン及び放射線の組み合わせは、ジェルビン(4μM)、放射線(3.5Gy)、又は両者の組み合わせへの24、48、又は72時間の暴露後のアポトーシス細胞の百分率が決定されるアネキシンV検定により測定された。ベースラインのアポトーシス率は対照群において決定される。結果は、ジェルビンが時間に依存して細胞の百分率が増大するアポトーシスを生じさせることを示す。3.5Gyの放射線照射後のアポトーシスは時間の関数として測定される。放射線及びジェルビンの組み合わせへの暴露後のアポトーシスが測定され、放射線単独とほとんど違わないことが見出される。これらのデータは、総合的に、アポトーシスの増大により説明されないヘッジホッグ発現腫瘍細胞において、ジェルビンは放射線治療と組み合わせた場合に相加細胞傷害性効果を有することが示された。
【実施例11】
【0085】
アポトーシスに及ぼすシクロパミン、放射線及びタキソールの影響
研究は、前述の実施例において詳述したアネキシンV検定を用い、シクロパミン、タキソール及び放射線の組み合わせを用いたアポトーシスの増大を測定するために実施する。結果は、時間に依存してアポトーシス細胞の百分率が増大することを示す。
【実施例12】
【0086】
アポトーシスに及ぼすジェルビン、タキソール、又は両者の組み合わせの影響
アポトーシスの増大がタキソール及びジェルビン間の相乗的致死で説明されるか否かを試験するために、Mia PaCa-2細胞をタキソール(1.7nM)、又はタキソール(1.7nM)及びジェルビン(4μM)の組み合わせに24時間暴露させる。アポトーシスはアネキシンV染色により測定する。結果は、タキソール及びジェルビンの組み合わせがタキソール単独より大きなアポトーシス効果を細胞に有し、ジェルビン単独より有意に大きいことを示す。これらのデータは、タキソール及びジェルビン間の相乗的致死がある程度はアポトーシスの増大によることを示唆する。
【実施例13】
【0087】
アポトーシスに及ぼすジェルビン、放射線及びタキソールの影響
研究は、前述の実施例において詳述したアネキシンV検定を用い、ジェルビン、タキソール及び放射線の組み合わせを用いたアポトーシスの増大を測定するために実施する。結果は、時間に依存してアポトーシス細胞の百分率が増大することを示す。
本発明をいくらか特異的に記載及び例証したが、当業者は記載されていることになしうる変化、追加、及び削除を含む種々の修正を認めるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1(A)】4μMのシクロパミン、3.5Gyの放射線、又は両者の組み合わせへの暴露後の2種の膵臓腫瘍細胞株(Mia PaCa-2及びBxPC-3)及び1種の結腸癌細胞株(HCT 116)における正規化生存率を示すグラフを含む。
【図1(B)】培養媒体における10μMのシクロパミンへの暴露後の膵臓腫瘍及び結腸癌細胞株コロニー形成への影響を示す。
【図2】シクロパミン、タキソール(3.5nM)、シスプラチン(0.8μM)、及びジェムシタビン(7.3nM)への暴露後のコロニー形成を示す。
【図3】シクロパミン(4μM)、タキソール(1.7nM)、又は両者の組み合わせへの24時間の暴露後のアポトーシス細胞の百分率を示す(アネキシン検定)。
【図4】シクロパミン(4μM)、放射線(3.5Gy)、又は両者の組み合わせへの24、48、又は72時間の暴露後のアポトーシス細胞の百分率を示す(アネキシン検定)。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッジホッグシグナル回路を発現する癌細胞の成長を阻害する方法であって、前記癌細胞に、前記癌細胞の成長を阻害するための有効量のヘッジホッグ阻害剤及び化学療法薬を接触させることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記細胞を前記ヘッジホッグ阻害剤及び前記化学療法薬と、同時に又は逐次的に接触させる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ヘッジホッグ阻害剤が、ステロイドアルカロイドである請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ヘッジホッグ阻害剤が、下式(I)のステロイドアルカロイドである請求項3記載の方法。
【化1】

(式中、原子価及び安定性が認めるように、
R2、R3、R4、及びR5は、各々が結合している環の1以上の置換基を表し、各々に対して、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヒドロキシル、=O、=S、アルコキシル、シリルオキシ、アミノ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、カルボキサミド、酸無水物、シリル、エーテル、チオエーテル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、又は(CH2)m-R8を表し、
R6、R7、及びR'7は、存在しないか又は独立して、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヒドロキシル、=O、=S、アルコキシル、シリルオキシ、アミノ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、カルボキサミド、酸無水物、シリル、エーテル、チオエーテル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、又は(CH2)m-R8を表すか、又は
R6及びR7、又はR7及びR'7は、R6、R7、又はR'7の1以上が存在してそれらに第一又は第二アミンが含まれるという条件で、例えば置換又は未置換の単環又は多環を一緒に形成し、
R8は、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環、又は多環を表し、かつmは0乃至8の整数である。)
【請求項5】
前記ステロイドアルカロイドが、シクロパミンである請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記ステロイドアルカロイドが、ジェルビンである請求項3記載の方法。
【請求項7】
前記化学療法薬が、抗微小管薬、アルキル化剤、又は代謝拮抗物質である請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記化学療法薬が、タキソール、ジェムシタビン、シスプラチン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記化学療法薬が、タキソールである請求項8記載の方法。
【請求項10】
有効量の前記ヘッジホッグ阻害剤及び前記化学療法薬を哺乳動物の癌患者に併用する請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記併用の結果、細胞アポトーシスに対する細胞の感受性が増大する請求項10記載の方法。
【請求項12】
有効線量の放射線の併用を更に含む請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記ヘッジホッグ阻害剤を患者に経口的、経血管的、皮下、又は経腹膜的に投与する請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記ヘッジホッグ阻害剤を患者に毎日、週2回、隔週、又は毎週投与する請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記シクロパミンを哺乳動物の癌患者に、約5mg/kg(体重)/日以上の用量で投与する請求項5記載の方法。
【請求項16】
哺乳動物の患者における化学療法の増殖抑制効果を高める方法であって、化学療法の増殖抑制効果を高めるための治療上有効量のヘッジホッグ阻害剤及び化学療法薬を患者に併用することを特徴とする方法。
【請求項17】
前記ヘッジホッグ阻害剤が、シクロパミンである請求項16記載の方法。
【請求項18】
哺乳動物の患者におけるヘッジホッグシグナル経路を発現する細胞の異常成長を阻害する方法であって、細胞の異常成長を阻害するための治療上有効量のヘッジホッグ阻害剤及び化学療法薬を併用することを特徴とする方法。
【請求項19】
哺乳動物の患者における腫瘍の成長を阻害又は低下させる方法であって、治療上有効量のヘッジホッグ阻害剤及び化学療法薬を併用し、該併用が腫瘍の成長する能力を阻害又は低下させることを特徴とする方法。
【請求項20】
前記腫瘍が、固形腫瘍又は血行性腫瘍である請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記哺乳動物の患者が、前立腺癌、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、又は膵臓癌を有する請求項19記載の方法。
【請求項22】
ヘッジホッグシグナル経路を発現する癌性細胞の増殖を阻害又は低下させる治療の組み合わせであって、癌性細胞の増殖を阻害又は低下させるための有効量のヘッジホッグ阻害剤及び化学療法薬を含むことを特徴とする組み合わせ。
【請求項23】
ヘッジホッグシグナル経路を発現する癌性細胞の増殖を阻害する方法であって、前記細胞を、治療上有効量のヘッジホッグ阻害剤及び化学療法薬、及び該細胞の増殖を阻害又は低下させるための有効線量の放射線と接触させることを含む。
【請求項24】
ヘッジホッグ阻害剤及び化学療法薬、及び放射線を哺乳動物の癌患者に併用する請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記ヘッジホッグ阻害剤が、ステロイドアルカロイドである請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記ステロイドアルカロイドが、シクロパミンである請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記シクロパミンを、患者に、約5mg/kg(体重)/日以上の用量で投与する請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記シクロパミンを、患者において約2μg/mL以上の血清濃度を得るのに有効な量を患者に投与する請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記化学療法薬が、タキソールである請求項23記載の方法。
【請求項30】
前記タキソールを哺乳動物の癌患者に約100乃至約175mg/m2の用量で投与する請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記タキソールを患者に2週間ごとに約3時間にわたって約135mg/m2の用量で投与する請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記放射線を患者に1日に1回約1グレイフラクション以上の線量を照射する請求項24記載の方法。
【請求項33】
前記放射線が、γ線である請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記放射線が、X線である請求項32記載の方法。
【請求項35】
ヘッジホッグシグナル経路を発現する癌性細胞の増殖を阻害又は低下させる治療の組み合わせであって、治療上有効量のヘッジホッグ阻害剤及び化学療法薬、及び細胞の増殖を阻害又は低下させるための有効線量の放射線を含むことを特徴とする組み合わせ。
【請求項36】
ヘッジホッグシグナル経路を発現する癌性細胞の増殖を阻害又は低下させる方法であって、細胞の増殖を阻害又は低下させるための有効量のヘッジホッグ阻害剤及び有効線量の放射線を細胞と接触させるか又は細胞に導入することを特徴とする方法。
【請求項37】
前記癌性細胞が、前立腺癌、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、又は膵臓癌の細胞を含む請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記ヘッジホッグ阻害剤及び放射線を哺乳動物の癌患者に併用する請求項36記載の方法。
【請求項39】
前記ヘッジホッグ阻害剤が、ステロイドアルカロイドである請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記ステロイドアルカロイドが、シクロパミンである請求項39記載の方法。
【請求項41】
細胞の増殖を阻害又は低下させるために有効量のヘッジホッグ阻害剤及び有効線量の放射線を含む癌性細胞の増殖を阻害又は低下させる治療の組み合わせ。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−514726(P2008−514726A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534826(P2007−534826)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/035331
【国際公開番号】WO2006/039569
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(501242712)ザ ユニヴァーシティー オヴ シカゴ (19)
【Fターム(参考)】