説明

ヘッドマウントディスプレイ

【課題】眼鏡型の支持フレームに対して取り付け性が良く、視界妨げを軽減できるとともに、光量ロスが軽減でき、さらに、立体視を考えた両眼撮像を行う構成に適したヘッドマウントディスプレイを提供する。
【解決手段】画像表示ユニットと、画像光を出射する画像表示部と、第1の偏光ビームスプリッタと、ミラーと、1/4波長板と、第2の偏光ビームスプリッタと、撮像素子とを備えたヘッドマウントディスプレイであって、前記支持フレームは、観察者の顔前に配置されるフロント部と観察者の耳に掛止するためのテンプル部とを具備する眼鏡型に構成されており、前記第1の偏光ビームスプリッタ、前記ミラー、前記1/4波長板、前記第2の偏光ビームスプリッタ、及び前記撮像素子を、前記支持フレームのフロント部を構成するフレームに沿った略水平方向の同一光軸上にそれぞれ配設し、前記ミラー及び1/4波長板については、前記支持フレームの前記フロント部の中央部近傍に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドマウントディスプレイに関し、特に、外光を透過して外界像を視認可能であり、かつ外界像を撮像する撮像手段を具備するシースルー型のヘッドマウントディスプレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、観察者の頭部に装着する支持部に、電子映像を観察者の眼に投影する画像表示部を内蔵した小型の画像表示ユニットを取付けたヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display:HMD)が知られている。
【0003】
かかるHMDの中には、外界像を撮像する撮像手段を備えたものがあるが、例えば、複数のハーフミラーを用いたりすると、撮像手段に至るまでの外光のロスが大きくなるため、例えば、第1の特定方向の偏光を透過する一方、第2の特定方向の偏光を反射する偏光ビームスプリッタを用いた構成が考えられる。
【0004】
すなわち、図7に示す構成であり、観察者Mの頭部に支持フレーム100を介して装着される画像表示ユニット200と、この画像表示ユニット200内に設けられ、電子映像を表す画像光Lbを投射する画像表示装置300とを備えている。また、画像表示装置300から出射された画像光Lbを反射して観察者Mの眼Eに入射させる一方、外光Laのうち第1の特定方向の偏光(例えばS偏光)La1を透過して観察者Mの眼Eに入射させるとともに、第2の特定方向の偏光(例えばP偏光)La2を反射させる偏光ビームスプリッタ400と、この偏光ビームスプリッタ400を挟んで画像表示装置300とは反対側に配置され、偏光ビームスプリッタ400を反射した外光Laの第2の特定方向の偏光La2を撮像する撮像装置500とを備えている。なお、画像表示装置300としては液晶表示装置が用いられ、この液晶表示装置から出射された画像光Lbは偏光ビームスプリッタ400により反射する偏光である。また、撮像装置500としてはCCD(Charge Coupled Device Image Sensor)が一般的に用いられる。
【0005】
しかし、かかる構成では、撮像装置500が画像表示ユニット200とは反対側に位置することになるため、HMDが大型化するとともに、撮像装置500が視界を邪魔するおそれが大である。
【0006】
他方、撮像手段であるカメラを画像表示ユニット側に設けたHMDも知られている(例えば、特許文献1を参照。)。かかる特許文献1には、保持部に装着される画像表示ユニット内に、画像表示部とカメラを配設するとともに、観察者の眼の前方に、外光の一部を透過し、外交の一部の光路を変更する偏光ビームスプリッタ及び1/4波長板などの光学素子を設けたHMDが開示されている。
【0007】
かかる構成により、光学素子により光路を変更された外光の一部がカメラに導かれ、画像表示ユニットに内蔵されたカメラによって外界像を撮像することができることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−156096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に開示されている上述のHMDは、画像表示装置、偏光ビームスプリッタ、1/4波長板及び撮像装置が、垂直方向の光軸に配置されたものであり、画像表示ユニットを保持する保持部としても、ヘルメットタイプなどが想定されているものであり、日常的に、特に外出時などに装着する場合に、デザイン性、装着性の点で優る眼鏡型に対応したものではなかった。
【0010】
また、顔の中心部分に対する左右方向の位置に対称性を持たせにくいので、一方の眼用の装置を、他方の眼に装着し直したりするには、位置決めなどが容易でなく、適した構成ではなかった。
【0011】
本発明は、撮像装置を備え、表示画角と撮像画角を合わせ、撮像時、表示時とも光量ロスを最低限に抑え、デザイン性、装着性の良い眼鏡型にて構成したヘッドマウントディスプレイを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、観察者の頭部に支持フレームを介して装着される画像表示ユニットと、この画像表示ユニット内に設けられ、画像光を出射する画像表示部と、この画像表示部から出射された前記画像光を反射して観察者の眼に入射させる一方、外光のうち第1の特定方向の偏光を透過して前記観察者の眼に入射させるとともに、第2の特定方向の偏光を反射させる第1の偏光ビームスプリッタと、この第1の偏光ビームスプリッタにより反射された前記外光の前記第2の特定方向の偏光を反射するミラーと、このミラーと同じ光軸上に並設され、通過する偏光に所定の位相差を生じさせる1/4波長板と、前記画像表示ユニット内に設けられ、前記画像表示部から出射された前記画像光を前記第1の偏光ビームスプリッタ側に反射させるとともに、前記1/4波長板から入射してきた前記外光の前記第1の特定方向の偏光を透過させる第2の偏光ビームスプリッタと、前記画像表示ユニット内に設けられ、前記第2の偏光ビームスプリッタを透過した前記外光の前記第1の特定方向の偏光を撮像する撮像素子と、を備え、前記支持フレームは、観察者の顔前に配置されるフロント部と、このフロント部の左右両端部にそれぞれ連結され、前記観察者の耳に掛止するためのテンプル部とを具備する眼鏡型に構成されており、前記第1の偏光ビームスプリッタ、前記ミラー、前記1/4波長板、前記第2の偏光ビームスプリッタ、及び前記撮像素子を、前記支持フレームのフロント部を構成するフレームに沿った略水平方向の同一光軸上にそれぞれ配設するとともに、前記ミラー及び1/4波長板については、前記支持フレームの前記フロント部の中央部近傍に配置したヘッドマウントディスプレイとした。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1記載のヘッドマウントディスプレイにおいて、前記ミラーの位置を、前記画像表示部の下手側に設けられた光学系の射出瞳と共役位置に配置したことを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のヘッドマウントディスプレイにおいて、前記前記ミラーの位置となる前記共役位置が前記フロント部の中央位置になるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3に記載のヘッドマウントディスプレイにおいて、前記共役位置は、前記観察者の両眼を結ぶ眼幅線と、前記第1の偏光ビームスプリッタにおける前記観察者から観て遠方側の端部から前記眼幅線と略平行に延びる線上までの間に位置する輻輳点とによって規定される領域内に設定されており、この共役位置に前記ミラー及び1/4波長板を配設したことを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のヘッドマウントディスプレイにおいて、前記画像表示ユニットから出射される画像光の向きが漸次顔面に近接するように、当該画像光の光軸を顔面側に傾けたことを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のヘッドマウントディスプレイにおいて、前記画像表示ユニットを、前記支持フレームの左右側に設け、各画像表示ユニットに対応するミラー及び1/4波長板を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載のヘッドマウントディスプレイにおいて、前記左右の画像表示ユニットを左右対称に配置して立体視撮像を行えるようにしたことを特徴とする。
【0019】
請求項8に係る発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載のヘッドマウントディスプレイにおいて、前記画像表示ユニットに対応する反射ミラーと1/4波長板とを一体構造としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1の偏光ビームスプリッタ、ミラー、1/4波長板、第2の偏光ビームスプリッタ及び撮像素子を支持フレームのフロント部を構成するフレームに沿った略水平方向の同一光軸上にそれぞれ配設するため、これら光学系構成要素や画像表示ユニットが互いに左右方向に配置されることになる。したがって、例えば、眼鏡型の支持フレームに取り付け易くなるため、装着性、使い勝手が良く、デザイン性も向上させることができるとともに、撮像する際に光量ロスを可及的に抑えることができるHMDを提供することができる。さらに、左右対称の構成とすれば、立体画像の撮像をより容易に行うのに適した両眼撮像タイプの構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態に係るヘッドマウントディスプレイの平面視による概略説明図である。
【図2】同ヘッドマウントディスプレイにおける第1の偏光ビームスプリッタ、反射ミラー及び1/4波長板を配置する所定領域を示す説明図である。
【図3】同じく第1の偏光ビームスプリッタ、反射ミラー及び1/4波長板の取付構造を示す説明図である。
【図4】同じく第1の偏光ビームスプリッタ、反射ミラー及び1/4波長板の取付構造の変形例を示す説明図である。
【図5】第2の実施形態に係るヘッドマウントディスプレイの平面視による概略説明図である。
【図6】同ヘッドマウントディスプレイにおける第1の偏光ビームスプリッタ、反射ミラー及び1/4波長板の取付構造を示す説明図である。
【図7】従来のヘッドマウントディスプレイの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施形態]
以下、第1の実施形態に係るヘッドマウントディスプレイ(以下、「HMD」とする場合がある)について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
先ず、HMDの全体的な構成について説明する。図1に示すように、本実施形態に係るHMDは、電子映像を表示し、この電子映像を視認させる画像光Lbを出射する画像表示部としての液晶表示装置10を矩形箱形のケーシング17に内蔵した画像表示ユニット1を備えている。
【0024】
また、HMDは、液晶表示装置10に制御信号を送信するとともに、HMD全体の駆動制御を行う制御部及び制御部に指令を送る操作部備えるコントロールユニット2を備えており、このコントロールユニット2と画像表示ユニット1とを伝送ケーブル3を介して接続している。なお、操作部では、少なくともHMDのオン・オフや後述するCCDイメージセンサ(Charge Coupled Device Image Sensor、以後「CCD」と略す)18による撮像操作を含む操作が行えるようになっている。
【0025】
コントロールユニット2は、観察者M1の衣服のポケットなどに収納したり、腰などに取付けたりして携行することができる箱形ケーシングにより構成されている。そして、図示しない操作部を介して起動操作することにより、内蔵したコンテンツ記憶部に記憶されたコンテンツデータに対応する画像信号を、伝送ケーブル3を介して画像表示ユニット1の液晶表示装置10に送信することができる。
【0026】
また、コントロールユニット2に、例えば、外部入出力端子を設け、外部のパーソナルコンピュータ等との間でコンテンツデータの入出力を行ったりすることもできる。なお、ここでコンテンツデータとは、文字を表示させるためのデータ、静止画像を表示させるためのデータ及び動画像を表示させるためのデータのうちの少なくとも1つのデータで構成されるものであり、例えば、パソコン等で使用される文書ファイルや画像ファイル、動画ファイルなどである。
【0027】
画像表示ユニット1は、支持フレームとしての眼鏡型フレーム6にアタッチメント7を介して取り付けられている。なお、支持フレームである眼鏡型フレーム6は、観察者Mの顔前に配置されるフロントフレーム151からなるフロント部15と、このフロント部15の左右両端部にそれぞれ連結され、観察者Mの耳に掛止するためのテンプル部16,16とを具備している。このように、画像表示ユニット1は、一般的な眼鏡と同様に観察者Mの頭部に装着することで、画像表示ユニット1を観察者Mの左側あるいは右側のいずれにも容易に配置することができる。
【0028】
また、HMDは、液晶表示装置10から出射された画像光Lbを反射して観察者Mの眼に入射させる一方、外光Laのうち第1の特定方向の偏光を透過して観察者Mの眼Eに入射させるとともに、前記第1の特定方向とは異なる第2の特定方向の偏光を反射させる第1の偏光ビームスプリッタ11を備えている。すなわち、本実施形態に係るHMDは、第1の偏光ビームスプリッタ11を透過した外光Laと第1の偏光ビームスプリッタ11で反射した画像光Lbとを観察者Mの眼Eに入射させて、外光Laによる外景に画像光Lbによる表示画像を重ねて観察者Mに視認させることができるシースルータイプとなっている。
【0029】
ここで、本実施形態では、外光Laのうち、第1の偏光ビームスプリッタ11を通過する第1の特定方向の偏光をS偏光La1とし、第1の偏光ビームスプリッタ11で反射する第2の特定方向の偏光をP偏光La2としている。さらに、液晶表示装置10から出射される画像光Lbについては、ここではP偏光としており、第2の偏光ビームスプリッタ12により反射される。
【0030】
また、HMDは、第1の偏光ビームスプリッタ11により反射された外光Laの第2の特定方向の偏光であるP偏光La2を反射する反射ミラー13と、この反射ミラー13と同じ光軸上であって、第1の偏光ビームスプリッタ11側に近接して並設され、通過する偏光に所定の位相差を生じさせる1/4波長板14を備えている。したがって、外光Laのうち反射ミラー13で反射されたP偏光La2は1/4波長板14を通過するとS偏光La1に変換される。
【0031】
画像表示ユニット1のケーシング17内には、液晶表示装置10から出射された画像光Lbを第1の偏光ビームスプリッタ11側に反射させるとともに、1/4波長板14を通過してきた外光Laの第1の特定方向の偏光(S偏光La1)を透過させる第2の偏光ビームスプリッタ12が配設されている。そして、この第2の偏光ビームスプリッタ12の下手側には、図示しないレンズ群や光学素子などを備える光学系である光学ユニットが配設されている。
【0032】
さらに、ケーシング17内には、第2の偏光ビームスプリッタ12を透過した外光LaのS偏光La1を撮像する撮像素子であるCCD(Charge Coupled Device Image Sensor)18を備えている。
【0033】
かかる構成により、液晶表示装置10から出射され、コンテンツを表示画像として観察者Mに視認させる画像光Lbは、ケーシング17内で第2の偏光ビームスプリッタ12により反射されて顔面の向く方向と直交する方向、すなわち眼鏡型フレーム6のフロント部15を構成するフロントフレーム151に沿った略水平方向に進み、フロントフレーム151の中央部近傍に設けられた第1の偏光ビームスプリッタ11によって反射されて観察者Mの眼Eに入射し、表示画像を認識させることができる。
【0034】
また、第1の偏光ビームスプリッタ11は観察者Mの眼Eと対向するようにハーフミラー9が設けられているため、外光Laの第1の特定方向の偏光をS偏光La1が当該第1の偏光ビームスプリッタ11を透過して観察者Mの眼Eに入射されることになる。したがって、観察者Mは外光Laによる外景に画像光Lbによる表示画像を重ねて視認することができる。
【0035】
かかる構成のHMDにおいて、本実施形態の特徴となるのは、第1の偏光ビームスプリッタ11、反射ミラー13、1/4波長板14、第2の偏光ビームスプリッタ12及びCCD18を、眼鏡型フレーム6のフロント部15を構成するフロントフレーム151に沿った略水平方向の同一光軸上にそれぞれ配設するとともに、反射ミラー13及び1/4波長板14については、眼鏡型フレーム6のフロント部15の中央部近傍に配置したことにある。
【0036】
したがって、第1の偏光ビームスプリッタ11により反射された外光LaのP偏光La2が反射ミラー13により反射され、1/4波長板14を通過して変換されたS偏光La1はそのまま第1の偏光ビームスプリッタ11を通過するとともに、画像表示ユニット1のケーシング17内に侵入して第2の偏光ビームスプリッタ12を通過してCCD18に至る。このようにして、本実施形態に係るHMDによれば、観察者Mが視認している外景画像と同じ視角の外形画像として撮像することが可能となる。しかも、光量ロスを可及的に抑えた状態で撮像することができる。
【0037】
ところで、反射ミラー13の位置としては、液晶表示装置10の下手側に設けられた光学系としての光学ユニット(不図示)の射出瞳と共役位置に配置することが光学的には好ましい。すなわち、画像光Lbが第1の偏光ビームスプリッタ11で反射された側にできる観察者Mの眼E(特に瞳孔)近傍の瞳と、これと共役な、仮に画像光Lbが第1の偏光ビームスプリッタ11を透過した場合にその透過側にできるはずの仮想の瞳に反射ミラー13を配置するのである。これは、第1の偏光ビームスプリッタ11へ入射する外光Laのうち、透過した外光La1の射出瞳が観察者Mの眼Eの瞳孔付近であり、反射した外光La2の側の射出瞳がその瞳孔と共役な位置となるため、その外光La2の側の射出瞳と、前記仮想の瞳と略一致させるためである。
【0038】
このようにするとともに、撮像素子であるCCD18の撮像面を、第2の偏光ビームスプリッタ12の透過側の液晶表示装置10の表示面と共役な位置に配置することで、光学ユニットが共用できるなど、光学設計が容易となり、コスト面での利点もある。
【0039】
さらに、反射ミラー13の位置となる、前記光学ユニットの射出瞳との共役位置を、前記フロント部15の中央位置になるように構成することが好ましい。すなわち、本実施形態のように、反射ミラー13及び1/4波長板14をフロント部15の中央部近傍に配置している場合、このフロント部15の中央部近傍と光学ユニットの射出瞳とを共役位置とすることで、反射ミラー13及び1/4波長板14が、観察者Mから視認し難くなる。
【0040】
さらに好ましくは、前記共役位置としては、観察者Mの左右の眼E,Eを結ぶ線である眼幅線と、第1の偏光ビームスプリッタ11における観察者Mから観て遠方側の端部から前記眼幅線と略平行に延びる線上までの間に位置する輻輳点とによって規定される所定の領域内に設定することが好ましい。そして、かかる瞳共役位置に反射ミラー13及び1/4波長板14を配設するのである。
【0041】
ここで、輻輳点とは、左右の眼E,Eの視線が視対象に収束する位置のことであり、簡単に言えば、左右の眼E,Eの視線が交差する点を指す。
【0042】
また、この輻輳点を頂点とした場合の頂角を輻輳角と呼び、平面視では、図2(a)に示すように、左右の眼E,E間の距離となる眼幅線dを底辺とし、視対象までの距離f1を高さとする二等辺三角形の頂点の角度となる。本実施形態では、図示するように、輻輳角の1/2をなす角度θのうち、左の眼Eに近い角度θで規定される所定領域S内に反射ミラー13の反射面及び1/4波長板14が位置するようにしている。
【0043】
しかし、輻輳点は必ずしも正面視の位置に存在するものではなく、図2(b)に示すように、視対象が正面でなく、左右いずれかにずれた状態でも存在する。したがって、所定領域Sは必ずしも平面視で二等辺三角形になるものではなく、図示するように、左右の眼E,E間の距離となる眼幅線dを底辺、左目Eから視対象までの距離f2を高さとする略直角三角形となる場合がある。この場合、視認性阻害部材5の配設位置としては、前述したように、輻輳角の1/2をなす角度θのうち、左の眼Eに近い角度θで規定される範囲内には制限されない。
【0044】
このように、反射ミラー13及び1/4波長板14を、上述した所定領域S内で、かつ光学ユニット(不図示)の射出瞳と共役位置に配置することで、観察者Mからはより視認され難くなり、観察者Mの視界を妨げる虞を可及的に抑えることができる。したがって、視界が妨げられた状態、すなわち、外界像の視認性が損なわれた状態を強いられることがないため、HMDの使用感を損なうことなく、快適に使用することができるようになる。
【0045】
以下、さらに図3を用いてHMDの構成をより具体的に説明する。図3に示すように、画像表示ユニット1のケーシング17は略L字形状に形成されており、その先端面の前側端部から保持部材50をフロントフレーム151に沿うように伸延させている。そして、このケーシング17を眼鏡型フレーム6のフロントフレーム151の左端部とテンプル部16との接続部分を跨ぐように取付けている。
【0046】
かかるケーシング17の内部において、図1に示すように、液晶表示装置10を、観察者Mの直視方向、すなわち顔面の向きと同じ方向に画像光Lbが出射されるように配設している。そして、この液晶表示装置10の下手側前方位置に第2の偏光ビームスプリッタ12を所定の配置姿勢で配設し、P偏光である画像光Lbをフロントフレーム151に沿った略水平方向、すなわち顔面の向きに直交する方向へ反射できるようにするとともに、同方向から入射してきた外光LaのS偏光La1を通過させるようにしている。
【0047】
また、CCD18は、ケーシング17の内部において、液晶表示装置10の左前方に位置しており、第2の偏光ビームスプリッタ12を通過する外光LaのS偏光La1を入射できるように配設している。
【0048】
そして、前述したように、ケーシング17からフロントフレーム151に沿うように伸延した保持部材50にケーシング17側から順に、第1の偏光ビームスプリッタ11、1/4波長板14、反射ミラー13を所定の間隔をあけて取付けている。符号55で示すものは、保持部材50の先端に形成したミラー保持部55を示す。
【0049】
こうして、第1の偏光ビームスプリッタ11を左の眼Eと対峙する直前に配置可能とするとともに、観察者Mの鼻の前方、換言すれば、フロント部15の中央部近傍に、反射ミラー13及び1/4波長板14を配置可能としている。しかも、前述したように、反射ミラー13及び1/4波長板14の位置を、輻輳角の内側で、かつ光学ユニット(不図示)の射出瞳と共役位置となるように設定している。ところで、本実施形態では、反射ミラー13の第1の偏光ビームスプリッタ11の側をなす面に1/4波長板14を取付けて両者一体型としているが、反射ミラー13と1/4波長板14とを、互いの間に間隙を設けて配設することもできる。
【0050】
このように、本実施形態に係るHMDでは、液晶表示装置10を除き、第1の偏光ビームスプリッタ11、反射ミラー13、1/4波長板14、第2の偏光ビームスプリッタ12及びCCD18を、眼鏡型フレーム6のフロント部15を構成するフロントフレーム151に沿った略水平方向の同一の光軸上にそれぞれ配設したため、観察者Mが視認している外景画像と同じ視角の外形画像として撮像することが可能となる。
【0051】
図4に示したHMDは、画像表示ユニット1から出射される画像光Lbの向きが漸次顔面に近接するように、当該画像光Lbの光軸を顔面側に傾けた構成としたものである。
【0052】
すなわち、図示するように、画像表示ユニット1に内蔵した第2の偏光ビームスプリッタ12の配置姿勢を変え、当該第2の偏光ビームスプリッタ12により反射する画像光Lbの向きが、漸次、観察者Mの顔面に近接するようにしている。そのために、保持部材52についても中途から所定の角度で顔面側に傾けている。また、画像表示ユニット1のケーシング17内に侵入して第2の偏光ビームスプリッタ12を通過する外光LaのS偏光La1を正面から受光できるように、CCD18も第2の偏光ビームスプリッタ12に合わせて傾けて配設している。
【0053】
かかる構成とすれば、保持部材52の先端が顔面に漸次近接するため、この先端に取付けた反射ミラー13と1/4波長板14とを顔前に大きく突出させないで済む。しかも、反射ミラー13と1/4波長板14との面積をより小さくすることも可能となる。また、反射ミラー13と1/4波長板14とも傾斜することになり、この傾斜は前述した輻輳角の1/2をなす角度θと略同じ角度である。そのため、反射ミラー13と1/4波長板14の前方への長さを可及的に短くしてコンパクト化することができる。
【0054】
なお、図4においては、保持部材52を中途から傾斜させているが、画像表示ユニット1のケーシング17と連接される基端部から傾斜させる構成としてもよい。
【0055】
[第2の実施形態]
次に、図5を参照しながら第2の実施形態に係るHMDについて説明する。なお、以下の説明では、上述してきた実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0056】
図5に示す構成は、図1で説明した画像表示ユニット1と基本的に同一構造の画像表示ユニット1を、眼鏡型フレーム6の左右側にそれぞれ設け、各画像表示ユニット1に対応する反射ミラー13及び1/4波長板14を設けた構成としたものである。すなわち、本実施形態では、観察者Mは両方の眼E,Eそれぞれで表示画像と外景とを視認できる両目用のHMDとしている。図中、符号4は左右の画像表示ユニット1,1同士を電気的に接続する信号線であり、ここでは、眼鏡型フレーム6のフロントフレーム151に沿わせて配線している。
【0057】
また、本実施形態では、画像表示ユニット1が左右対称となるように配置しており、眼鏡型フレーム6のフロント部15の中央位置に配置した反射ミラー13及び1/4波長板14は、一枚の反射ミラー13の左右側面にそれぞれ1/4波長板14を取付けた一体構造としている。なお、左右の画像表示ユニット1のうち、一方の画像表示ユニット1には、表示画像を左右反転させる機構が組み込まれたものとしている。
【0058】
このように、基本的に同一構造の画像表示ユニット1を左右対称となるように配置しているため、両目用のHMDを構成する上でコスト増を抑えることができる。また、本実施形態においても、反射ミラー13及び1/4波長板14の位置としては、液晶表示装置10の下手側に設けられた光学系としての光学ユニット(不図示)の射出瞳と共役位置に配置することができるとともに、光学ユニットの射出瞳との共役位置を、フロント部15の中央位置にすることができる。
【0059】
さらに、図示するように、反射ミラー13及び1/4波長板14は輻輳角αの内側に位置させることもできる。すなわち、観察者Mの左右の眼E,Eの間の距離dを底辺とし、視対象までの距離を高さとする略二等辺三角形の頂点の角度(輻輳角α)で規定される二等辺三角形で表される領域内に反射ミラー13及び1/4波長板14を位置させている。なお、この場合においても、第1の実施形態で説明したように、反射ミラー13及び1/4波長板14の配設位置は、光学ユニットの射出瞳との共役位置であって、共役位置としては、観察者Mの左右の眼E,Eを結ぶ線である眼幅線と、第1の偏光ビームスプリッタ11における観察者Mから観て遠方側の端部から前記眼幅線と略平行に延びる線上までの間に位置する輻輳点とによって規定される所定の領域内に設定することが好ましい。
【0060】
図6に本第2の実施形態に係るHMDの第1の偏光ビームスプリッタ11、反射ミラー13及び1/4波長板14の具体的な取付構造を示しており、図示するように、左右の画像表示ユニット1、1の各ケーシング17の先端面の前側端部間を、フロントフレーム151に沿うように伸延する保持部材51で連結している。そして、この保持部材51の中央位置にミラー保持部55を形成し、このミラー保持部55において、反射ミラー13及び1/4波長板14を取付けている。
【0061】
このように、本実施形態に係るHMDにおいても、液晶表示装置10を除き、第1の偏光ビームスプリッタ11、反射ミラー13、1/4波長板14、そして左右の画像表示ユニット1の内部に収納された第2の偏光ビームスプリッタ12及びCCD18を、眼鏡型フレーム6のフロント部15を構成するフロントフレーム151に沿った略水平方向の同一の光軸上にそれぞれ配設されることになる。そのため、左のCCD18は観察者Mの左の眼Eが、右のCCD18は観察者Mの右の眼Eがそれぞれ視認している外景画像と同じ視角の外形画像として撮像することが可能となる。
【0062】
したがって、本実施形態に係るCCDによれば、左右のCCD18,18で撮像した各画像データは、観察者Mの視角と同じでありながらも互いに視差を有する画像データとなる。よって、かかる画像データを用いれば、所謂3Dと呼ばれる立体画像を撮像するための両眼撮像による立体視撮像を容易に行うことができる。特に、近年では、立体映像が注目されているが、本実施形態に係るHMDを用いれば、観察者Mの視線に極めて近い視点における立体画像を容易に得ることが可能となる。
【0063】
以上、本発明を、実施形態を通して説明してきたが、本発明は各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の主旨を逸脱することのない限り、実施形態の構成を適宜組合せてもよいし、各構成要素の形状や装置のレイアウトなどは適宜変更することができる。
【0064】
例えば、保持部材50,51,52の構成などは、各実施形態に限るものではなく、適宜設計することができる。また、上述してきた実施形態では、保持部材50,51,52は、その基端を画像表示ユニット1のケーシング17の先端に連接した構成としたが、例えば、フロントフレーム151の中央部近傍に取付けることもできる。
【0065】
また、両眼用のHMDであれば、眼鏡型フレーム6に代えてゴーグルタイプにして、保持部材51をゴーグルの外殻部で兼用することもできる。
【0066】
また、画像表示ユニット1については、眼鏡型フレーム6のフロント部15に取付けた構成として説明したが、画像表示ユニット1はテンプル部16に取付けることもできる。
【0067】
さらに、上述してきた実施形態では、HMDの画像表示装置として、画像表示ユニット1に液晶表示装置10を設けたが、必ずしも液晶表示装置10とする必要はなく、画像表示装置としては、例えば、有機EL(Organic Electroluminescence)表示装置とすることもできる。その場合、画像表示装置の出射光は、液晶表示装置10の場合のような特定の方向の偏光特性とはなっていないので、偏光ビームスプリッタに対応した偏光特性を持たせる手段が必要となる。
【0068】
なお、上述してきた実施形態では、偏光ビームスプリッタ11,12を通過する偏光をP偏光、偏光ビームスプリッタ11,12により反射する偏光をS偏光とし、液晶表示装置10から出射される画像光LbをP偏光としたが、その逆であってもよく、その場合、偏光ビームスプリッタ11,12による光分離特性も逆のものを用いればよい。
【0069】
ところで、反射ミラー13及び1/4波長板14の配設位置を規定するための輻輳角αの範囲としては、観察者Mとなる人間の左右の眼E,E間の距離d(図5参照)と反射ミラー13及び1/4波長板14の前方長さとからも適宜設定することができる。左右の眼E,E間の距離dの成人の平均値は60〜70mmであることが知られているため、反射ミラー13及び1/4波長板14の前方長さを20mm程度以下とすれば、0°<α<120°程度とすることができる。つまり、0°<α<120°の条件における輻輳角αの内側に設定した瞳共役位置に反射ミラー13及び1/4波長板を配設すればよいことになる。
【0070】
しかし、できるだけ視野の妨げにならない観点で言えば、αを出来るだけ大きい角度に設定して反射ミラー13及び1/4波長板14の配設位置を規定するとよい。例えば、図3や図4のように、保持部材50,52における反射ミラー13を支持する点を観察者Mの両眼E、Eと視線が交差する輻輳点と考えて、両眼E、Eと輻輳点でできる領域内つまり、輻輳角αの内側に反射ミラー13及び1/4波長板14を配設すると、視野の妨げとなることを低減できる。また、反射ミラー13及び1/4波長板14を、観察者Mの両眼E,Eの中間位置にできるだけ近づけて配設すると、より視野の妨げとなりにくくなる。また、反射ミラー13及び1/4波長板14は、画像光Lbが最も収束する瞳位置(観察者Mの眼E側の射出瞳(ほぼ瞳孔位置)と共役な瞳位置)に配設して、出来るだけ小さくすることが望ましい。
【符号の説明】
【0071】
E 眼
La 外光
La1 S偏光(外光の第1の特定方向の偏光)
La2 P偏光(外光の第2の特定方向の偏光)
Lb 画像光
M 観察者
α 輻輳角
θ 輻輳角の1/2をなす角度
1 画像表示ユニット
6 眼鏡型フレーム(支持フレーム)
11 第1の偏光ビームスプリッタ
12 第2の偏光ビームスプリッタ
13 反射ミラー
14 1/4波長板
15 フロント部
16 テンプル部
151 フロントフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察者の頭部に支持フレームを介して装着される画像表示ユニットと、
この画像表示ユニット内に設けられ、画像光を出射する画像表示部と、
この画像表示部から出射された前記画像光を反射して観察者の眼に入射させる一方、外光のうち第1の特定方向の偏光を透過して前記観察者の眼に入射させるとともに、第2の特定方向の偏光を反射させる第1の偏光ビームスプリッタと、
この第1の偏光ビームスプリッタにより反射された前記外光の前記第2の特定方向の偏光を反射するミラーと、
このミラーと同じ光軸上に並設され、通過する偏光に所定の位相差を生じさせる1/4波長板と、
前記画像表示ユニット内に設けられ、前記画像表示部から出射された前記画像光を前記第1の偏光ビームスプリッタ側に反射させるとともに、前記1/4波長板から入射してきた前記外光の前記第1の特定方向の偏光を透過させる第2の偏光ビームスプリッタと、
前記画像表示ユニット内に設けられ、前記第2の偏光ビームスプリッタを透過した前記外光の前記第1の特定方向の偏光を撮像する撮像素子と、
を備え、
前記支持フレームは、観察者の顔前に配置されるフロント部と、このフロント部の左右両端部にそれぞれ連結され、前記観察者の耳に掛止するためのテンプル部とを具備する眼鏡型に構成されており、
前記第1の偏光ビームスプリッタ、前記ミラー、前記1/4波長板、前記第2の偏光ビームスプリッタ、及び前記撮像素子を、前記支持フレームのフロント部を構成するフレームに沿った略水平方向の同一光軸上にそれぞれ配設するとともに、前記ミラー及び1/4波長板については、前記支持フレームの前記フロント部の中央部近傍に配置したことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項2】
前記ミラーの位置を、前記画像表示部の下手側に設けられた光学系の射出瞳と共役位置に配置したことを特徴とする請求項1記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項3】
前記前記ミラーの位置となる前記共役位置が前記フロント部の中央位置になるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項4】
前記共役位置は、前記観察者の両眼を結ぶ眼幅線と、前記第1の偏光ビームスプリッタにおける前記観察者から観て遠方側の端部から前記眼幅線と略平行に延びる線上までの間に位置する輻輳点とによって規定される領域内に設定されており、この共役位置に前記ミラー及び1/4波長板を配設したことを特徴とする請求項2又は3に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項5】
前記画像表示ユニットから出射される画像光の向きが漸次顔面に近接するように、当該画像光の光軸を顔面側に傾けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項6】
前記画像表示ユニットを、前記支持フレームの左右側に設け、各画像表示ユニットに対応するミラー及び1/4波長板を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項7】
前記左右の画像表示ユニットを左右対称に配置して立体視撮像を行えるようにしたことを特徴とする請求項6に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項8】
前記画像表示ユニットに対応する反射ミラーと1/4波長板とを一体構造としたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のヘッドマウントディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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