説明

ヘッドライト装置及び鞍乗型車両

【課題】ハンドルカバーによってヘッドライト装置を支持した場合でも、光源に伝わる振動を抑制しつつ当該光源の光軸の方向を調整することができるヘッドライト装置、及び当該ヘッドライト装置を備える鞍乗型車両を提供する。
【解決手段】ヘッドライトユニット110は、ハンドルカバー190によって支持される。ヘッドライトユニット110は、ヘッドライトブラケット140と、ヘッドライトユニット110に伝わる振動を抑制するグロメット171とを備える。ハンドルカバー190は、グロメット171を介してヘッドライトブラケット140を支持する。ヘッドライトブラケット140は、ヘッドライトバルブ210の光軸の方向を変更可能に支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両のハンドルの少なくとも一部を覆うハンドルカバーによって支持されるヘッドライト装置、及び当該ヘッドライト装置を備える鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車などの鞍乗型車両では、ハンドルの前方など、鞍乗型車両の前部にヘッドライト装置が設けられる。
【0003】
このようなヘッドライト装置に関して、ハンドルの少なくとも一部を覆うハンドルカバーによってヘッドライト装置を支持しつつ、ヘッドライト装置に備えられる光源、具体的にはバルブの光軸の方向を調整する光軸調整機構を備えた構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−046676号公報(第3−4頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のヘッドライト装置には、次のような問題があった。すなわち、上述したような従来のヘッドライト装置では、ハンドルカバーを介してエンジンの振動や走行に伴う振動が光源(バルブ)に伝わる。
【0005】
このため、光源の光軸が振動したり、光源に対して悪影響を与えたりするといった問題があった。特に、光軸調整機構を備えたヘッドライト装置では、エンジンの振動や走行に伴う振動が光源に伝わり易いといった問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ハンドルカバーによってヘッドライト装置を支持した場合でも、光源に伝わる振動を抑制しつつ光源の光軸の方向を調整することができるヘッドライト装置、及び当該ヘッドライト装置を備える鞍乗型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した問題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、鞍乗型車両(自動二輪車10)のハンドル(ハンドル40)の少なくとも一部を覆うハンドルカバー(ハンドルカバー190)によって支持されるヘッドライト装置(ヘッドライトユニット110)であって、光源(ヘッドライトバルブ210)を含むヘッドライト部(ヘッドライト部110H)と、前記ハンドルカバーに固定され、前記ヘッドライト部を支持する支持部材(ヘッドライトブラケット140)と、前記ヘッドライト部に伝わる振動を抑制する制振部材(グロメット171)とを備え、前記ハンドルカバーは、前記制振部材を介して前記支持部材を支持し、前記支持部材は、前記光源の光軸(光軸A1)の方向を変更可能に支持することを要旨とする。
【0008】
このようなヘッドライト装置によれば、支持部材は、制振部材を介してハンドルカバーによって支持される。また、支持部材は、光源の光軸の方向を変更可能に支持する。すなわち、このようなヘッドライト装置によれば、ハンドルカバーによってヘッドライト装置を支持した場合でも、光源に伝わる振動を抑制しつつ当該光源の光軸の方向を調整することができる。
【0009】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記支持部材は、前記ヘッドライト部を回動可能に支持する回動支持手段(背面部141及びピボット受け141L)と、前記ヘッドライト部が回動しないように固定する固定手段(底面部142及び光軸調整ボルト161)とを有することを要旨とする。
【0010】
本発明の第3の特徴は、本発明の第2に特徴に係り、回動支持手段は、前記ヘッドライト部の後部を支持する後部支持部(背面部141)を有し、前記固定手段は、前記ヘッドライト部の下部を支持する下部支持部(底面部142)を有することを要旨とする。
【0011】
本発明の第4の特徴は、本発明の第3に特徴に係り、前記下部支持部は、前記ヘッドライト部の下部を前記鞍乗型車両の前後方向(F・R方向)に沿って移動可能に支持することを要旨とする。
【0012】
本発明の第5の特徴は、本発明の第3に特徴に係り、前記ヘッドライト部は、前記後部支持部に向けて突出する球状部分(ピボット135L,135R)を有し、前記後部支持部は、前記球状部分を回動可能に支持する球受け部分(ピボット受け141L,141R)を有することを要旨とする。
【0013】
本発明の第6の特徴は、本発明の第4に特徴に係り、前記ヘッドライト部に螺入されるボルト(光軸調整ボルト161)を備え、前記下部支持部には、前記ボルトが挿通され前記ボルトが前記前後方向に沿って移動することができる長孔(光軸調整用長孔143)が形成されることを要旨とする。
【0014】
本発明の第7の特徴は、本発明の第1に特徴に係り、前記ハンドルカバーは、前記鞍乗型車両の前方に向かって凸状の形状を有し、前記ハンドルカバーの内側面(内側面190a)には、前記支持部材が固定される固定ボス部(上側固定ボス192L,192R,193L,193R)が形成されることを要旨とする。
【0015】
本発明の第8の特徴は、本発明の第7に特徴に係り、前記固定ボス部は、前記内側面から前記鞍乗型車両の後方に向かって突出し、前記固定ボス部の根元部分(根元部分192a,193a)は、前記支持部材の後端(上側取付部144L,144R及び下側取付部145L,145R)よりも前方に位置することを要旨とする。
【0016】
本発明の第9の特徴は、本発明の第1に特徴に係り、前記制振部材は、ゴムを用いて形成されることを要旨とする。
【0017】
本発明の第10の特徴は、本発明の第5の特徴に係り、前記球受け部分は、前記ヘッドライト部の正面視において、前記光源の上端と、前記光源の下端との間の領域に少なくとも一部が位置することを要旨とする。
【0018】
本発明の第11の特徴は、本発明の第1乃至第10の何れかの特徴に係るヘッドライト装置を備える鞍乗型車両(自動二輪車10)であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の特徴によれば、ハンドルカバーによってヘッドライト装置を支持した場合でも、光源に伝わる振動を抑制しつつ当該光源の光軸の方向を調整することができるヘッドライト装置、及び当該ヘッドライト装置を備える鞍乗型車両を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(本実施形態に係る鞍乗型車両の構成)
次に、本発明に係る鞍乗型車両の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0021】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0022】
(1)全体概略構成
図1は、本実施形態に係る鞍乗型車両である自動二輪車10の左側面図である。図1に示すように、自動二輪車10は、車体フレーム(不図示)が一般的な鞍乗り型の自動二輪車と比較して下方に配設される、いわゆるアンダーボーン型の自動二輪車である。
【0023】
自動二輪車10は、前輪20と後輪70とを備え、エンジン50が発生する駆動力によって後輪70を駆動する。
【0024】
自動二輪車10は、前輪20を回転可能に支持する左右一対のフロントフォーク21を備える。具体的には、フロントフォーク21は、路面状態の変化に応じて、前輪20を上下方向(実際には、所定のキャスター角が付与された方向)に移動(直線運動)させて、前輪20が受けた衝撃を吸収する。
【0025】
フロントフォーク21の上方には、ハンドルアッシー100が設けられる。ハンドルアッシー100は、前輪20の方向を変えるためにライダーによって操作されるハンドル40やヘッドライトユニット110などによって構成される。
【0026】
(2)ヘッドライト装置の構成
次に、本実施形態においてヘッドライト装置を構成するヘッドライトユニット110の構成について説明する。
【0027】
図2は、ヘッドライトユニット110を含むハンドルアッシー100の正面図である。図3は、左斜め前方からのヘッドライトユニット110の分解斜視図である。図4は、左斜め後方からのヘッドライトユニット110の分解斜視図である。
【0028】
図2に示すように、ハンドルアッシー100は、ヘッドライトユニット110と、ヘッドライトユニット110の外側を囲むハンドルカバー190とを有する。
【0029】
ハンドルカバー190は、ハンドル40(図1参照)の一部を覆う。ヘッドライトユニット110は、ヘッドライト部110Hと、フラッシャー部110L,110Rとを備える。フラッシャー部110L,110Rは、ヘッドライト部110Hに隣接する。
【0030】
ヘッドライト部110Hは、ヘッドライトバルブ210を有する。ヘッドライトバルブ210は、ハロゲンバルブである。本実施形態において、ヘッドライトバルブ210は、光源を構成する。
【0031】
また、ヘッドライト部110Hは、ピボット135L,135Rを有する。ヘッドライト部110Hは、ピボット135L,135Rを中心として上下方向(図中のUP・DN方向)に回動し、ヘッドライトバルブ210の光軸A1(図1において不図示、図7参照)の方向を調整することができる。
【0032】
図3及び図4に示すように、ヘッドライトユニット110は、前面レンズ120、ヘッドライトボディ130及びヘッドライトブラケット140を有する。
【0033】
前面レンズ120は、透明な合成樹脂製のレンズである。ヘッドライトボディ130は、リフレクタ部131、リフレクタ部132L,132R、及びリフレクタ部133L,133Rによって構成される。
【0034】
リフレクタ部131は、リフレクタ部131に取り付けられたヘッドライトバルブ210が放射する光を反射する。
【0035】
リフレクタ部132L(132R)は、リフレクタ部132L(132R)に取り付けられえたポジションランプ220L(220R)が放射する光を反射する。
【0036】
ポジションランプ220L(220R)は、自動二輪車10の位置を他の車両などに認識させる。ポジションランプ220L,220Rの光量は、ヘッドライトバルブ210の光量よりも低い。リフレクタ部132L(132R)と、ポジションランプ220L(220R)とは、リフレクタ部131及びヘッドライトバルブ210の外側に配設される。なお、本実施形態では、前面レンズ120、リフレクタ部131、ヘッドライトバルブ210、リフレクタ部132L(132R)及びポジションランプ220L(220R)によってヘッドライト部110H(図1参照)が構成される。
【0037】
リフレクタ部133L(133R)は、リフレクタ部133L(133R)に取り付けられたフラッシャーバルブ230L(230R)が放射する光を反射する。
【0038】
フラッシャーバルブ230L(230R)は、自動二輪車10が進行方向を変更する際に、自動二輪車10の進行方向、具体的には、左方向または右方向を示すために所定の間隔で点滅する。フラッシャーバルブ230L(230R)は、リフレクタ部132L(132R)の外側に設けられたリフレクタ部133L(133R)に取り付けられる。リフレクタ部133L(133R)と、フラッシャーバルブ230L(230R)とは、リフレクタ部132L(132R)と、ポジションランプ220L(220R)の外側に配設される。
【0039】
ヘッドライトブラケット140は、ヘッドライト部110H、具体的には、前面レンズ120及びヘッドライトボディ130を上下方向に移動可能、つまり、ヘッドライトバルブ210の光軸A1(図7参照)の方向を調整可能に支持する。本実施形態において、ヘッドライトブラケット140は、支持部材を構成する。
【0040】
ヘッドライトブラケット140は、ヘッドライト部110Hの後部を支持する背面部141と、ヘッドライト部110Hの下部を支持する底面部142とを有する。本実施形態において、背面部141は、後部支持部を構成する。また、底面部142は、下部支持部を構成する。
【0041】
背面部141は、ヘッドライト部110Hを回動可能に支持する。具体的には、背面部141は、ピボット135L(135R)を回動可能に支持するピボット受け141L(141R)を有する。本実施形態では、背面部141と、ピボット受け141L,141Rとによって、ヘッドライト部110Hを回動可能に支持する回動支持手段が構成される。また、本実施形態において、ピボット受け141L,141Rは、球受け部分を構成する。
【0042】
つまり、ピボット受け141L(141R)には、ヘッドライトボディ130から背面部141に向けて突出するピボット135L(135R)が圧入される。本実施形態において、ピボット135L(135R)は、球状部分を構成する。
【0043】
底面部142には、光軸調整用長孔143が形成される。光軸調整用長孔143には、光軸調整ボルト161が挿通される。光軸調整用長孔143に挿通された光軸調整ボルト161は、自動二輪車10の前後方向(図5のF・R方向)に沿って移動できる。本実施形態では、底面部142と、光軸調整ボルト161とによって、ヘッドライト部110Hが回動しないように固定する固定手段が構成される。
【0044】
前面レンズ120とヘッドライトボディ130との間には、遮光壁150が配設される。遮光壁150の左側方には、ルーバー160Lが配設される。遮光壁150の右側方には、ルーバー160Rが配設される。
【0045】
遮光壁150は、ヘッドライトバルブ210が放射した光、及びリフレクタ部131によって反射された光を遮る。遮光壁150は、前面レンズ120とリフレクタ部131との間に配設される。また、遮光壁150は、前面レンズ120とヘッドライトバルブ210との間に配設される。ヘッドライトボディ130の後部には、ヘッドライトバルブ210の基部(不図示)を覆うソケットカバー240が取り付けられる。
【0046】
(3)ヘッドライト装置の取付状態
次に、本実施形態においてヘッドライト装置を構成するヘッドライトユニット110の取付状態について説明する。図5は、ハンドルアッシー100の左側面図である。具体的には、図5は、ハンドルカバー190を切断した状態におけるハンドルアッシー100の左側面図である。
【0047】
上述したように、ヘッドライトユニット110は、前面レンズ120、ヘッドライトボディ130及びヘッドライトブラケット140を有する。
【0048】
ヘッドライトユニット110は、ハンドルカバー190に固定される。具体的には、ヘッドライトブラケット140がハンドルカバー190に固定される。なお、ヘッドライトブラケット140のさらに具体的なハンドルカバー190への固定方法については、後述する。
【0049】
ハンドルカバー190は、ステアリングシャフト22に固定される。具体的には、ハンドルカバー190は、取付部191を有する。取付部191は、ステアリングシャフト22に形成されたステー22aに固定される。
【0050】
光軸調整ボルト161は、ヘッドライトボディ130、具体的には、リフレクタ部131に形成された雌ネジ部(不図示)に螺入される。
【0051】
底面部142は、ヘッドライトボディ130、具体的には、リフレクタ部131の下部を前後方向(図中のF・R方向)に沿って移動可能に支持する。
【0052】
図6は、左斜め後方からのヘッドライトユニット110及びハンドルカバー190の分解斜視図である。図6に示すように、ヘッドライトユニット110は、ハンドルカバー190によって支持される。
【0053】
具体的には、上述したようにヘッドライトブラケット140は、ハンドルカバー190に固定される。ハンドルカバー190は、自動二輪車10の前方に向かって凸状の形状を有する。ハンドルカバー190の内側面190aには、ヘッドライトブラケット140が固定される上側固定ボス192L,192R及び下側固定ボス193L,193Rが形成される。本実施形態において、上側固定ボス192L,192R及び下側固定ボス193L,193Rは、固定ボス部を構成する。
【0054】
上側固定ボス192L,192R、及び下側固定ボス193L,193Rは、内側面190aから自動二輪車10の後方に向かって突出する。ヘッドライトユニット110は、ハンドルカバー190の後方からハンドルカバー190に組み込まれ、上側取付部144L,144R及び下側取付部145L,145Rよりも前方に位置する上側固定ボス192L,192R及び下側固定ボス193L,193Rに固定される。
【0055】
ハンドルカバー190は、グロメット171を介してヘッドライトブラケット140を支持する。グロメット171は、ヘッドライトユニット110、具体的には、ヘッドライトバルブ210などのバルブに伝わる振動を抑制する。本実施形態において、グロメット171は、制振部材を構成する。本実施形態では、グロメット171は、ゴムを用いて形成される。
【0056】
グロメット171は、上側取付部144L,144R及び下側取付部145L,145Rにそれぞれ圧入される。グロメット171が圧入された上側取付部144L(144R)は、ワッシャー172及びタッピングスクリュー173を用いて、上側固定ボス192L(192R)に固定される。同様に、グロメット171が圧入された下側取付部145L(145R)には、ワッシャー172及びタッピングスクリュー173を用いて、下側固定ボス193L(193R)に固定される。
【0057】
図7は、図2に示したF7−F7線に沿った断面図である。図7に示すように、ヘッドライトブラケット140の上側取付部144Rは、ワッシャー172及びタッピングスクリュー173を用いて上側固定ボス192Rに固定される。同様に、ヘッドライトブラケット140の下側取付部145Rは、ワッシャー172及びタッピングスクリュー173を用いて下側固定ボス193Rに固定される。
【0058】
上述したように、ヘッドライトブラケット140は、ヘッドライトバルブ210(図2〜図4参照)の光軸A1の方向を変更可能にヘッドライト部110Hを支持する。具体的には、ピボット135Rは、ヘッドライトブラケット140に形成された雌ネジ部(不図示)に螺入される。また、ピボット135Rの球状部分は、ピボット受け141Rに圧入される。ピボット受け141Rに圧入されたピボット135Rは、中心点CTを回動中心として、ヘッドライト部110Hを上下方向(図中のUP・DN方向)に移動させることができる。ヘッドライト部110Hが上下方向に移動すると、光軸A1も上下方向に変更される。なお、ピボット135Lも、ピボット135Rと同様にヘッドライトブラケット140(ピボット受け141L)によって回動可能に支持される。
【0059】
さらに、本実施形態では、上側固定ボス192Rの根元部分192a、及び下側固定ボス193Rの根元部分193aは、ヘッドライトブラケット140の後端、具体的には、上側取付部144R及び下側取付部145Rよりも前方に位置する。
【0060】
また、本実施形態では、図7に示すように、自動二輪車10の側面視において、光軸A1と、直線L1とは、略同一の高さに位置する。直線L1は、中心点CTを通過し、光軸A1と略平行な直線である。
【0061】
つまり、図2に示すように、ピボット135L,135Rは、ヘッドライト部110Hの正面視において、ヘッドライトバルブ210の上端210aと下端210bとの間の領域Sに少なくとも一部が位置する。
【0062】
(作用・効果)
ヘッドライトユニット110によれば、ヘッドライトブラケット140は、グロメット171を介してハンドルカバー190によって支持される。このため、ハンドルカバー190を介して伝わるエンジン50の振動や、自動二輪車10の走行に伴う振動を抑制することができる。また、ヘッドライトブラケット140は、ヘッドライトバルブ210の光軸A1の方向を変更可能に支持する。
【0063】
すなわち、ヘッドライトユニット110によれば、ハンドルカバー190によってヘッドライトユニット110を支持した場合でも、ヘッドライトバルブ210に伝わる振動を抑制しつつ光軸A1の方向を調整することができる。特に、ハロゲンバルブや大型のバルブを用いた場合でも、エンジン50の振動や、自動二輪車10の走行に伴う振動が当該バルブに伝わることを効果的に抑制することができる。
【0064】
本実施形態では、ヘッドライト部110H(前面レンズ120、リフレクタ部131、ヘッドライトバルブ210、リフレクタ部132L(132R)及びポジションランプ220L(220R))は、背面部141と底面部142とによって支持される。
【0065】
このため、背面部141または底面部142の何れかで支持するよりもヘッドライト部110Hをさらに確実に支持することができる。すなわち、ハンドルカバー190を介してヘッドライト部110Hに伝わる振動をさらに抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態では、背面部141がヘッドライト部110Hの後部を支持する。このため、ヘッドライト部110Hの左右側部を支持する場合と比較して、ヘッドライトユニット110の幅方向のサイズを抑制することができる。さらに、ヘッドライトユニット110の幅方向のサイズが抑制されるため、自動二輪車10の前面投影面積が減少し、自動二輪車10の空気抵抗を低減することができる。
【0067】
本実施形態では、背面部141、具体的には、背面部141に形成されたピボット受け141L(141R)が、球状部分を有するピボット135L(135R)を回動可能に支持する。つまり、背面部141とヘッドライト部110Hとは、面接触ではなく点接触となる。このため、ハンドルカバー190を介してヘッドライト部110Hに伝わる振動をさらに抑制しつつ光軸A1の方向を調整することができる。
【0068】
本実施形態では、底面部142には、光軸調整ボルト161が前後方向に沿って移動することができる光軸調整用長孔143が形成される。このため、光軸調整ボルト161を容易に視認されないように隠しつつ、ヘッドライトユニット110の下方から光軸調整ボルト161にアクセスすることによって簡単に光軸A1の方向を調整することができる。
【0069】
本実施形態では、ヘッドライト部110Hの後部を支持する背面部141と、ヘッドライト部110Hの下部を支持する底面部142とを有するヘッドライトブラケット140は、上側固定ボス192L,192R及び下側固定ボス193L,193Rに固定される。上側固定ボス192L,192R及び下側固定ボス193L,193Rの根元部分192a,193aは、ヘッドライトブラケット140の後端、具体的には、上側取付部144L,144R及び下側取付部145L,145Rよりも前方に位置する。
【0070】
このため、ヘッドライト部110Hの重心と、根元部分192a,193aとを接近させることができる。ヘッドライト部110Hの重心と、根元部分192a,193aとが接近すれば、ハンドルカバー190、具体的には、上側固定ボス192L,192R及び下側固定ボス193L,193Rを介して伝わるエンジン50などの振動によるヘッドライト部110Hの振幅を抑制することができる。さらに、ヘッドライトユニット110の前後方向のサイズを抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態では、ピボット135L,135Rは、ヘッドライト部110Hの正面視において、ヘッドライトバルブ210の上端210aと下端210bとの間の領域Sに少なくとも一部が位置する。
【0072】
このため、ピボット135L,135Rが、領域S外に位置する場合と比較して、光軸A1の方向を調整するために確保すべきヘッドライト部110H上部のクリアランス(以下、上部クリアランス)と、ヘッドライト部110H下部のクリアランス(以下、下部クリアランス)とを、同等としつつ小さくすることができる。
【0073】
例えば、ピボット135L,135Rが領域S外に位置し、ヘッドライト部110H上部に接近している場合、上部クリアランスは小さくなるが、下部クリアランスが大きくなる問題がある。ヘッドライトユニット110によれば、このようなクリアランスの不均衡は生じず、上部クリアランスと下部クリアランスとを同等としつつ小さくすることができる。
【0074】
本実施形態では、グロメット171は、ゴムを用いて形成される。このため、グロメット171の製造コストを抑えつつ、ハンドルカバー190を介してヘッドライト部110Hに伝わる振動を効果的に抑制することができる。
【0075】
(その他の実施形態)
上述したように、本発明の一実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態が明らかとなろう。
【0076】
例えば、上述した実施形態では、グロメット171は、ゴムを用いて形成されていたが、グロメット171は、樹脂系の制振部材を用いて形成してもよい。
【0077】
上述した実施形態では、上側固定ボス192L,192R及び下側固定ボス193L,193Rは、上側取付部144L,144R及び下側取付部145L,145Rよりも前方に位置していたが、上側固定ボス192L,192R及び下側固定ボス193L,193Rは、必ずしも上側取付部144L,144R及び下側取付部145L,145Rよりも前方に位置しなくても構わない。
【0078】
上述した実施形態では、ヘッドライトブラケット140は、ヘッドライト部110Hの後部を支持する背面部141と、ヘッドライト部110Hの下部を支持する底面部142とを有していたが、ヘッドライトブラケット140は、必ずしも背面部141及び底面部142を有していなくてもよい。
【0079】
上述した実施形態では、ヘッドライトバルブ210にはハロゲンバルブが用いられていたが、ヘッドライトバルブ210には必ずしもハロゲンバルブを用いなくてもよい。
【0080】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施形態に係る自動二輪車の左側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るヘッドライト装置を含むハンドルアッシーの正面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るヘッドライト装置の左斜め前方からの分解斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るヘッドライト装置の左斜め後方からの分解斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係るハンドルアッシーの左側面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るヘッドライト装置及びハンドルカバーの左斜め後方からの分解斜視図である。
【図7】図2に示したF7−F7線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0082】
10…自動二輪車、20…前輪、21…フロントフォーク、40…ハンドル、50…エンジン、70…後輪、100…ハンドルアッシー、110…ヘッドライトユニット、110H…ヘッドライト部、110L,110R…フラッシャー部、120…前面レンズ、130…ヘッドライトボディ、131,132L,132R,133L,133R…リフレクタ部、135L,135R…ピボット、140…ヘッドライトブラケット、141L,141R…ピボット受け、142…底面部、143…光軸調整用長孔、144L,144R…上側取付部、145L,145R…下側取付部、150…遮光壁、160L,160R…ルーバー、161…光軸調整ボルト、171…グロメット、172…ワッシャー、173…タッピングスクリュー、190…ハンドルカバー、210…ヘッドライトバルブ、210a…上端、210b…下端、220L,220R…ポジションランプ、230L,230R…フラッシャーバルブ、240…ソケットカバー、A1…光軸、CT…中心点、L1…直線、S…領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両のハンドルの少なくとも一部を覆うハンドルカバーによって支持されるヘッドライト装置であって、
光源を含むヘッドライト部と、
前記ハンドルカバーに固定され、前記ヘッドライト部を支持する支持部材と、
前記ヘッドライト部に伝わる振動を抑制する制振部材と
を備え、
前記ハンドルカバーは、前記制振部材を介して前記支持部材を支持し、
前記支持部材は、前記光源の光軸の方向を変更可能に支持するヘッドライト装置。
【請求項2】
前記支持部材は、
前記ヘッドライト部を回動可能に支持する回動支持手段と、
前記ヘッドライト部が回動しないように固定する固定手段と
を有する請求項1に記載のヘッドライト装置。
【請求項3】
前記回動支持手段は、前記ヘッドライト部の後部を支持する後部支持部を有し、
前記固定手段は、前記ヘッドライト部の下部を支持する下部支持部を有する請求項2に記載のヘッドライト装置。
【請求項4】
前記下部支持部は、前記ヘッドライト部の下部を前記鞍乗型車両の前後方向に沿って移動可能に支持する請求項3に記載のヘッドライト装置。
【請求項5】
前記ヘッドライト部は、前記後部支持部に向けて突出する球状部分を有し、
前記後部支持部は、前記球状部分を回動可能に支持する球受け部分を有する請求項3に記載のヘッドライト装置。
【請求項6】
前記ヘッドライト部に螺入されるボルトを備え、
前記下部支持部には、前記ボルトが挿通され前記ボルトが前記前後方向に沿って移動することができる長孔が形成される請求項4に記載のヘッドライト装置。
【請求項7】
前記ハンドルカバーは、前記鞍乗型車両の前方に向かって凸状の形状を有し、
前記ハンドルカバーの内側面には、前記支持部材が固定される固定ボス部が形成される請求項1に記載のヘッドライト装置。
【請求項8】
前記固定ボス部は、前記内側面から前記鞍乗型車両の後方に向かって突出し、
前記固定ボス部の根元部分は、前記支持部材の後端よりも前方に位置する請求項7に記載のヘッドライト装置。
【請求項9】
前記制振部材は、ゴムを用いて形成される請求項1に記載のヘッドライト装置。
【請求項10】
前記球受け部分は、前記ヘッドライト部の正面視において、前記光源の上端と、前記光源の下端との間の領域に少なくとも一部が位置する請求項5に記載のヘッドライト装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れかのヘッドライト装置を備える鞍乗型車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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