説明

ヘッド・サスペンションの製造方法及び基準ピン・ブロック

【課題】アライメント向上をより進展させることを可能にするヘッド・サスペンションの製造方法及び基準ピン・ブロックを提供する。
【解決手段】フレキシャ7及びロード・ビーム19には、両者の結合前に、レーザー溶接の第1打点23及びディンプル部21間の距離を半径とし第1打点23を中心とした円25の範囲内に相当する箇所で相互間の位置決めを行うための基準孔7a,7b及び基準孔19a,19bを各2個形成し、結合前のフレキシャ7及びロード・ビーム19を合わせて各2個の基準孔7a,7b及び基準孔19a,19bに基準ピン31a,31b,31c,31dを差し込ませ、結合前のフレキシャ7及びロード・ビーム19間の位置決めを行わせた状態で第1打点23のレーザー溶接を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ等の情報処理装置に内蔵されるハード・ディスク・ドライブのヘッド・サスペンションに供されるヘッド・サスペンションの製造方法及び基準ピン・ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ヘッド・サスペンションでは、ロード・ビームの剛体部及びフレキシャの双方に、位置決め用の基準孔を設け、基準孔のそれぞれが治具の基準ピンに差し込まれ、剛体部とフレキシャとが位置決めされた状態でレーザー溶接などによって結合される。
【0003】
このような結合により、フレキシャがロード・ビームに対し位置決めして固定され、アライメント向上を図ることができる。
【0004】
また、特許文献1では、フレキシャに基準孔を形成し、ロード・ビームに、バーリング加工孔を設け、バーリング加工孔は、その内周縁にフランジ縁を有し、ロード・ビームとフレキシャとを厚み方向に重ねた状態において、フランジ縁を基準孔に嵌合させることにより、ロード・ビームとフレキシャとの相対位置を位置決めている。
【0005】
このような構造では、クリアランスゼロの位置決めを行わせることが可能となり、アライメント向上を図ることができる。
【0006】
さらに、特許文献2のように、基準孔のピッチを広くとるために製品内及び製品外に2つの基準孔を設け、アライメント向上を図るものもある。
【0007】
しかし、何れの場合も、アライメント向上には限界があった。
【0008】
特に、近年、フレキシャが薄くなる中、その剛性不足から正確な位置決めが困難となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−163904号公報
【特許文献2】特開2002−133808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする問題点は、アライメント向上には限界があった点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のヘッド・サスペンションの製造方法は、アライメント向上をより進展させることを可能とするため、スライダを搭載するフレキシャのタング部をロード・ビームの凸部に当接させ、前記フレキシャを前記ロード・ビームに第1打点でレーザー溶接し、前記タング部を前記凸部に設定した荷重で当接させるヘッド・サスペンションの製造方法であって、前記フレキシャ及びロード・ビームには、両者の結合前に、前記第1打点及び凸部間の距離を半径とし前記第1打点を中心とした円の範囲内に相当する箇所で相互間の位置決めを行うための基準孔を少なくとも各1個形成し、前記結合前のフレキシャ及びロード・ビームを合わせて前記少なくとも各1個の基準孔に基準ピンを差し込ませ、前記基準孔及び基準ピンにより前記結合前のフレキシャ及びロード・ビーム間の位置決めを行わせた状態で前記第1打点のレーザー溶接を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明の基準ピン・ブロックは、前記ヘッド・サスペンションの製造方法に用いる基準ピン・ブロックであって、前記複数個の基準ピンが、単一のブロックに削り出しで突設されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のヘッド・サスペンションの製造方法は、上記構成であるから、フレキシャ及びロード・ビームをタング部及び凸部の位置決めに最も重要なレーザー溶接の第1打点基準で行わせ、アライメント向上をより進展させることができる。
【0014】
本発明の基準ピン・ブロックは、上記構成であるから、基準ピン相互間の位置誤差を抑制し、アライメント向上の進展に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ヘッド・サスペンションの要部平面図である。(実施例1)
【図2】ヘッド・サスペンションの要部拡大概略側面図である。(実施例1)
【図3】第1打点及び基準孔との関係を示す要部拡大平面図である。(実施例1)
【図4】第1打点及び基準孔との関係を示す要部拡大平面図である。(実施例1)
【図5】基準ピン・ブロックの斜視図である。(実施例1)
【図6】基準ピンと基準孔との関係を示す要部斜視図である。(実施例1)
【図7】第1打点及び基準孔との関係を示す要部拡大平面図である。(実施例1の変形例1)
【図8】第1打点及び基準孔との関係を示す要部拡大平面図である。(実施例1の変形例2)
【図9】第1打点及び基準孔との関係を示す要部拡大平面図である。(実施例1の変形例3)
【図10】第1打点及び基準孔との関係を示す要部拡大平面図である。(実施例1の変形例4)
【図11】第1打点及び基準孔との関係を示す要部拡大平面図である。(実施例1の変形例5)
【図12】第1打点及び基準孔との関係を示す要部拡大平面図である。(実施例1の変形例6)
【図13】位置決め精度の向上を示す図表である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
アライメント向上をより進展させることを可能とするという目的を、第1打点を基準にした基準孔に基準ピンを差し込ませることで実現した。
【実施例1】
【0017】
[ヘッド・サスペンションの製造方法]
図1は、本発明実施例1を適用したヘッド・サスペンションの要部平面図、図2は、ヘッド・サスペンションの要部拡大概略側面図、図3は、第1打点及び基準孔との関係を示す要部拡大平面図、図4は、第1打点及び基準孔との関係を示す要部拡大平面図である。
【0018】
図1、図2のように、ヘッド・サスペンション1は、ヘッド部3に後工程でスライダを搭載する。スライダは、フレキシャ7のタング部9に取り付けられ、アウトリガー部11,13により配索された配線部15,17がスライダの書き込み用、読み取り用の素子に導通接続されている。
【0019】
タング部9は、ロード・ビーム19の凸部であるディンプル部21に当接させている。フレキシャ7は、ロード・ビーム19に第1打点23でレーザー溶接し、タング部9をディンプル部21に設定した荷重で当接させている。かかる意味で、第1打点23は、ディンプル部21及びタング部9間の重要な結合点となる。
【0020】
第1打点23は、フレキシャ7に形成した面方向の突部70a上に存在し、突部70a の両側には、入江状部70b、70cが形成されている。
【0021】
図3のように、フレキシャ7及びロード・ビーム19には、両者間のアライメントの結果として、少なくとも各1個、実施例では各2個の基準孔7a,7b,19a,19bが残存している。フレキシャ7の基準孔7a,7bに対応してロード・ビーム19には、基準孔7a,7bよりも大径の拡大孔19c,19dが同芯に残存している。
【0022】
各2個の基準孔7a,7b,19a,19bは、第1打点23を中心とした円25の範囲内、本実施例では、図4のように、より狭い円27の範囲内に存在している。
【0023】
円25は、第1打点23及びでディンプル部21間の距離を半径とし、基準孔を設ける範囲の最大限を示している。円27は、第1打点23及び配線部15,17間の最短距離を半径としている。
【0024】
基準孔7a,7b及び基準孔19a,19bは、ヘッド・サスペンション1の幅方向(図1、図3、図4では、左右Y方向)両側にそれぞれ分けて配置され、前後方向(図1、図3、図4では、前後X方向)両側では、後方に基準孔7a,7bが配置され、前方に基準孔19a,19bが配置されて、第1打点23を四角形状に囲んでいる。
【0025】
基準孔7a,7bは、入江状部70b、70cの後方側に位置し、基準孔19a,19bは、入江状部70b、70c内に位置している。
【0026】
基準孔7a,7b及び基準孔19a,19bをそれぞれ幅方向に結ぶ直線は、第1打点23とディンプル部21との中心を結ぶ直線に直交している。基準孔7a,7bを幅方向に結ぶ直線は、第1打点23及びディンプル部21間外に位置し、基準孔19a,19bを幅方向に結ぶ直線は、第1打点23及びディンプル部21間に位置している。
【0027】

フレキシャ7及びロード・ビーム19には、その他、粗アライメント用の孔7c,19e等が残存している。
【0028】
フレキシャ7及びロード・ビーム19間は、第1打点23の他、複数個所でレーザー溶接により結合されている。
【0029】
[ヘッド・サスペンションの製造方法]
図5は、基準ピン・ブロックの斜視図、図6は、基準ピンと基準孔との関係を示す要部斜視図である。
【0030】
図5の基準ピン・ブロック29は、本願実施例に係るヘッド・サスペンション1の製造方法に用いるものである。基準ピン・ブロック29には、4個の基準ピン31a,31b,31c,31dが設けられ、基準孔7a,7b,19a,19bに対応している。基準ピン31a,31b,31c,31dは、基材ブロックから削り出され、単一のブロック33に一体に突設されている。
【0031】
基準ピン31a,31b,31c,31dは、基材ブロックからNC等の旋削により先細に削り出し加工され、根元の直径は、0.2mm以下、具体的には0.13mm程度であり、基準ピン31a,31bの間隔は、0.68mm程度である。なお、基準ピン31a,31b,31c,31dの直径及び配置間隔は、ヘッド・サスペンション1のサイズに関係し、適宜選択することができる。
【0032】
一方、フレキシャ7とロード・ビーム19とには、両者の結合前に、本実施例において、円27の範囲内に相当する箇所に、基準孔7a,7b、基準孔19a,19b、及び拡大孔19c,19dを形成する。なお、フレキシャ7及びロード・ビーム19には、その他、粗アライメント用の孔7c,19e等が形成される。
【0033】
結合前のフレキシャ7及びロード・ビーム19を重ね合わせて両者の各基準孔7a,7b,19a,19bを第1打点23の回りに配置する。次いで、4個の基準孔7a,7b,19a,19bそれぞれに基準ピン31a,31b,31c,31dを差し込ませる。
【0034】
このとき、基準孔7a,7bよりも径が大きな拡大孔19c,19dの形成で、基準ピン31c,31dによる基準孔7a,7bの位置決めを拡大孔19c、19dに干渉することなく正確に行わせることができる。
【0035】
なお、フレキシャ7及びロード・ビーム19間の基準ピン31a,31b,31c,31dによるアライメントの前に、粗アライメント・ピン35が粗アライメント用の孔7c,19eに差し込まれる。
【0036】
第1打点23の回りで基準ピン31a,31b,31c,31dにより、重ね合わせたフレキシャ7及びロード・ビーム19間の正確な位置決めを行わせ、この状態で第1打点23のレーザー溶接を行う。
【0037】
次いで、その他の箇所もレーザー溶接が行われ、ディンプル部21にタング部9が正確に位置決めされ、且つ設定した正確な荷重により当接させた状態で、フレキシャ7がロード・ビーム19に結合される。
【0038】
かかるフレキシャ7及びロード・ビーム19の位置決め結合は、単独のフレキシャ7及びロード・ビーム19相互、或いはフレキシャ7及びロード・ビーム19の連鎖品の何れでも行わせることができる。
【0039】
溶接の際、溶接位置を画像処理などを利用して第1打点23まわりの基準ピンあるいは基準孔を基準として位置決めし、レーザー溶接することも可能である。これにより、ロード・ビーム19及びフレキシャ7とレーザー打点との位置精度がさらに向上し、第1打点23より先端側の機械的特性、特に振動特性が安定する。
【0040】
[実施例1の変形例]
図7〜図12は、変形例に係り、第1打点及び基準孔との関係を示す要部拡大平面図である。
【0041】
(変形例1)
変形例1の製造方法を適用した図7のヘッド・サスペンション1は、フレキシャ7及びロード・ビーム19の基準孔7d,7e,19f,19gの数を各2個2組とした。この基準孔7d,7e,19f,19gは、第1打点23からオフセットした両側位置に配置された。基準孔7d,7e,19f,19gは同径同芯に形成された。
【0042】
基準孔7d,7e,19f,19gは、入江状部70b、70cの後方側に位置している。
【0043】
基準孔7d,7e,19f,19gを結ぶ直線は、第1打点23とディンプル部21との中心を結ぶ直線に直交している。基準孔7d,7e,19f,19gは、第1打点23及びディンプル部21間外のヘッド・サスペンション1後方側(基部側)へオフセットされている。
【0044】
適用する基準ピン・ブロックは、2個の基準ピンが単一のブロックに突設されたものとなる。
【0045】
フレキシャ7及びロード・ビーム19には、両者の結合前に、円27(図4)の範囲内に相当する箇所に、基準孔7d,7e,19f,19gを形成する。
【0046】
結合前のフレキシャ7及びロード・ビーム19を重ね合わせて両者の各2個の基準孔7d,7e,19f,19gを重ね、2組の基準孔7d,19f、基準孔7e,19gそれぞれに基準ピンを差し込ませる。
【0047】
その他、前記同様である。
【0048】
(変形例2)
変形例2の製造方法を適用した図8のヘッド・サスペンション1は、フレキシャ7及びロード・ビーム19の基準孔7f,19hの数を各1個とし、第1打点23に相当する箇所を前後方向(図1、図8では、前後X方向)両側で挟む位置に配置された。ロード・ビーム19には、基準孔7fと同芯に拡大孔19iが形成された。
【0049】
基準孔7fは、第1打点23及びディンプル部21間外で第1打点23の後方側に位置し、基準孔19jは、第1打点23及びディンプル部21間でフレキシャ7の突部70a 近傍に位置している。
【0050】
基準孔7f,19hは、第1打点23とディンプル部21との中心を結ぶ直線上に配置されている。基準孔7fは、第1打点23及びディンプル部21間外のヘッド・サスペンション1後方側(基部側)に配置され、基準孔19hは、第1打点23及びディンプル部21間に配置され、フレキシャ7の突部70a 近傍に位置している。
【0051】
基準ピン・ブロックは、変形例1同様となる。
【0052】
フレキシャ7及びロード・ビーム19には、両者の結合前に、円27(図4)の範囲内に相当する箇所に、基準孔7f,19h、及び拡大孔19iを形成する。
【0053】
結合前のフレキシャ7及びロード・ビーム19を重ね合わせて両者の各基準孔7f,19hに基準ピンを差し込ませる。
【0054】
その他、前記同様である。
【0055】
(変形例3)
変形例3の製造方法を適用した図9のヘッド・サスペンション1は、フレキシャ7の基準孔7g,7hの数を2個、ロード・ビーム19の基準孔19jの数を1個とし、第1打点23を正三角形状に囲む位置に配置された。ロード・ビーム19には、基準孔7g,7hと同芯に拡大孔19k,19lが形成された。
【0056】
基準孔7g,7hは、入江状部70b、70cの後方側に位置し、基準孔19jは、フレキシャ7の突部70a 近傍に位置している。
【0057】
基準孔7g,7hを結ぶ直線は、第1打点23及びディンプル部21間外で第1打点23とディンプル部21との中心を結ぶ直線に直交し、基準孔19jは、第1打点23とディンプル部21との中心を結ぶ直線上で第1打点23及びディンプル部21間に配置されている。
【0058】
適用する基準ピン・ブロックは、正三角形状に配置された3個の基準ピンが単一のブロックに突設されたものとなる。
【0059】
フレキシャ7及びロード・ビーム19には、両者の結合前に、円27の範囲内に相当する箇所に、基準孔7g,7h、19j、及び拡大孔19k、19lを形成する。
【0060】
結合前のフレキシャ7及びロード・ビーム19を重ね合わせて3個の基準孔7g,7h、19jに基準ピンを差し込ませる。
【0061】
その他、前記同様である。
【0062】
(変形例4)
変形例4の製造方法を適用した図10のヘッド・サスペンション1は、フレキシャ7の基準孔7iの数を1個、ロード・ビーム19の基準孔19m,19nの数を2個とし、第1打点23を二等辺三角形状に囲む位置に配置された。ロード・ビーム19には、基準孔7iと同芯に拡大孔19oが形成された。
【0063】
基準孔7iは、第1打点23の後方側に位置し、基準孔19m,19nは、入江状部70b、70c内に位置している。
【0064】
基準孔7iは、第1打点23とディンプル部21との中心を結ぶ直線上で第1打点23及びディンプル部21間外に配置され、基準孔19m,19nを結ぶ直線は、第1打点23及びディンプル部21間で第1打点23とディンプル部21との中心を結ぶ直線に直交している。
【0065】
適用する基準ピン・ブロックは、三角点状に配置された3個の基準ピンが単一のブロックに突設されたものとなる。
【0066】
フレキシャ7及びロード・ビーム19には、両者の結合前に、円27の範囲内に相当する箇所に、基準孔7i,19m,19n、及び拡大孔19oを形成する。
【0067】
結合前のフレキシャ7及びロード・ビーム19を重ね合わせて3個の基準孔7i,19m,19nに基準ピンを差し込ませる。
【0068】
その他、前記同様である。
【0069】
(変形例5)
変形例5の製造方法を適用した図11のヘッド・サスペンション1は、フレキシャ7の基準孔7j,7k,7lの数を3個、ロード・ビーム19の基準孔19p,19q,19rの数を3個とし、第1打点23を六角形状に囲む位置に配置された。ロード・ビーム19には、基準孔7j,7k,7lと同芯に拡大孔19s,19t,19uが形成された。
【0070】
基準孔7kは、第1打点23及びディンプル部21間外で第1打点23の後方側に位置し、基準孔7j,7lは、入江状部70b、70cの後方側に位置し、基準孔19qは、第1打点23及びディンプル部21間で突部70a 近傍に位置し、基準孔19p,19rは、入江状部70b、70c内に位置している。
【0071】
基準孔7k,19qは、第1打点23とディンプル部21との中心を結ぶ直線上に配置されている。
【0072】
基準孔7j,7l及び基準孔19p,19rをそれぞれ幅方向に結ぶ直線は、第1打点23とディンプル部21との中心を結ぶ直線に直交している。基準孔7j,7lを幅方向に結ぶ直線は、第1打点23及びディンプル部21間外に位置し、基準孔19p,19rを幅方向に結ぶ直線は、第1打点23及びディンプル部21間に位置している。
【0073】
適用する基準ピン・ブロックは、六角形状に配置された6個の基準ピンが単一のブロックに突設されたものとなる。
【0074】
フレキシャ7及びロード・ビーム19には、両者の結合前に、円27の範囲内に相当する箇所に、基準孔7j,7k,7l、19p,19q,19r及び拡大孔19s,19t,19uを形成する。
【0075】
結合前のフレキシャ7及びロード・ビーム19を重ね合わせて6個の基準孔7j,7k,7l、19p,19q,19rに基準ピンを差し込ませる。
【0076】
その他、前記同様である。
【0077】
(変形例6)
変形例6の製造方法を適用した図12のヘッド・サスペンション1は、フレキシャ7の基準孔7mの数を1個、ロード・ビーム19の基準孔19v,19wの数を2個とし、第1打点23を正三角形状に囲む位置に配置された。ロード・ビーム19には、基準孔7mと同芯に拡大孔19xが形成され、フレキシャ7には、基準孔19v,19wと同芯に拡大孔7n,7oが形成された。
【0078】
基準孔19v,19wは、入江状部70b、70cの後方側に位置し、基準孔7mは、フレキシャ7の延長された突部70a bに位置している。
【0079】
基準孔19v,19wを結ぶ直線は、第1打点23及びディンプル部21間外で第1打点23とディンプル部21との中心を結ぶ直線に直交し、基準孔7mは、第1打点23とディンプル部21との中心を結ぶ直線上で第1打点23及びディンプル部21間に配置されている。
【0080】
適用する基準ピン・ブロックは、正三角形状に配置された3個の基準ピンが単一のブロックに突設されたものとなる。
【0081】
フレキシャ7及びロード・ビーム19には、両者の結合前に、円27の範囲内に相当する箇所に、基準孔7m,19v,19w、及び拡大孔19x,7n,7oを形成する。
【0082】
結合前のフレキシャ7及びロード・ビーム19を重ね合わせて3個の基準孔7m,19v,19wに基準ピンを差し込ませる。
その他、前記同様である。
[実施例の作用効果]
本発明実施例では、スライダを搭載したフレキシャ7のタング部9をロード・ビーム19のディンプル部21に当接させ、フレキシャ7をロード・ビーム19に第1打点23でレーザー溶接し、タング部9をディンプル部21に設定した荷重で当接させるヘッド・サスペンション1の製造方法であって、フレキシャ7及びロード・ビーム19は、両者の結合前に、レーザー溶接の第1打点23及びディンプル部21間の距離を半径とし第1打点23を中心とした円25(図3)の範囲内に相当する箇所にそれぞれ両者の結合時に相互間の位置決めを行うための基準孔7a,7b及び基準孔19a,19bを少なくとも各1個、例えば各2個形成し、結合前のフレキシャ7及びロード・ビーム19を合わせて各2個の基準孔7a,7b及び基準孔19a,19bに基準ピン31a,31b,31c,31dを差し込ませ、結合前のフレキシャ7及びロード・ビーム19間の位置決めを行わせた状態で第1打点23のレーザー溶接を行う。
【0083】
このため、フレキシャ7及びロード・ビーム19をタング部9及びディンプル部21の位置決めに最も重要なレーザー溶接の第1打点23基準で行わせ、アライメント向上をより進展させることができる。
【0084】
特に、レーザー溶接の第1打点23基準で基準孔7a,7b及び基準孔19a,19bを設けるから、基準孔7a,7b及び基準孔19a,19b相互間隔を狭くすることができ、近年フレキシャ7が薄くなる中、その剛性不足が有っても基準孔7a,7b、基準孔19a,19b、及び基準ピン31a,31b,31c,31dにより正確な位置決めを行なわせることができる。
【0085】
図13は、位置決め精度の向上を示す図表である。図13では、特許文献2の従来例と比較している。ピン2本の例は、例えば図7、図8の変形例2,3であり、ピン4本の例は、例えば図4の実施例である。図1のようにX,Yをとると、バラツキσ(RY,RX)は、従来例に比較して、ピン2本の場合が、より少なくなり、さらにピン4本の場合は、ピン2本の場合よりも少なくなった。
【0086】
2個の基準孔19a,19bによりロード・ビーム19を基準ピン31a,31bに対して位置決め、2個の基準孔7a,7bによりフレキシャ7を基準ピン31c,31dに対して位置決めることで、剛性不足のフレキシャ7の位置決めを確実に行わせることができる。
【0087】
基準孔7a,7b及び基準孔19a,19bは、第1打点23及び配線部15,17間の最短距離を半径とし第1打点23を中心とした円27の範囲内に相当する箇所に形成することができる。
【0088】
この場合、基準孔7a,7b及び基準孔19a,19bを第1打点23基準で確実に配置することができる。
【0089】
図7のヘッド・サスペンション1は、フレキシャ7及びロード・ビーム19の基準孔7d,7e,19f,19gの数を各2個2組とした。この基準孔7d,7e,19f,19gは、第1打点23からオフセットした両側位置に配置された。基準孔7d,7e,19f,19gは同径同芯に形成された。
【0090】
このため、ヘッド・サスペンション1の幅方向での位置決め精度を相対的に高めることができる。
【0091】
ディンプル部21と第一打点23との間に大きな穴がある場合など、フレキシャ7側とロード・ビーム19側とのそれぞれ別々の位置に基準孔を設けるスペースがない場合に、同じ位置に基準孔を設けることによる孔数削減効果がある。
【0092】
2個の基準孔19f,19gによりロード・ビーム19を基準ピンに対して位置決め、2個の基準孔7d,7eによりフレキシャ7を基準ピンに対して位置決めることで、剛性不足のフレキシャ7の位置決めを確実に行わせることができる。
【0093】
図8のヘッド・サスペンション1は、フレキシャ7及びロード・ビーム19の基準孔7f,19hの数を各1個とし、第1打点23に相当する箇所を前後方向(図1、図8では、前後X方向)両側で挟む位置に配置された。ロード・ビーム19には、基準孔7fと同芯に拡大孔19iが形成された。
【0094】
このため、ヘッド・サスペンション1の前後方向での位置決め精度を相対的に高めることができる。また、幅方向に基準孔を2つを設けるスペースが十分でない場合に有効である。
【0095】
図9のヘッド・サスペンション1は、フレキシャ7の基準孔7g,7hの数を2個、ロード・ビーム19の基準孔19jの数を1個とし、第1打点23を正三角形状に囲む位置に配置された。ロード・ビーム19には、基準孔7g,7hと同芯に拡大孔19k,19lが形成された。
【0096】
このため、ヘッド・サスペンション1の幅方向及び前後方向の双方向での位置決め精度を高めることができる。また、先端側のみ幅方向に基準孔を2つ設けるスペースが十分ではない場合に有効である。
【0097】
図10のヘッド・サスペンション1は、フレキシャ7の基準孔7iの数を1個、ロード・ビーム19の基準孔19m,19nの数を2個とし、第1打点23を逆二等辺三角形状に囲む位置に配置された。ロード・ビーム19には、基準孔7iと同芯に拡大孔19oが形成された。
【0098】
このため、ヘッド・サスペンション1の幅方向及び前後方向の双方向での位置決め精度を高めることができる。また、根元側のみ幅方向に基準孔を2つ設けるスペースが十分ではない場合に有効である。
【0099】
図11のヘッド・サスペンション1は、フレキシャ7の基準孔7j,7k,7lの数を3個、ロード・ビーム19の基準孔19p,19q,19rの数を3個とし、第1打点23を六角形状に囲む位置に配置された。ロード・ビーム19には、基準孔7j,7k,7lと同芯に拡大孔19s,19t,19uが形成された。
【0100】
このため、ヘッド・サスペンション1の幅方向及び前後方向の双方向での位置決め精度をより高めることができる。また、基準孔を設けるスペースが十分に有る場合、より高精度な位置決めを実現することができる。
【0101】
図12のヘッド・サスペンション1は、フレキシャ7の基準孔7mの数を1個、ロード・ビーム19の基準孔19v,19wの数を2個とし、第1打点23を正三角形状に囲む位置に配置された。ロード・ビーム19には、基準孔7mと同芯に拡大孔19xが形成され、フレキシャ7には、基準孔19v,19wと同芯に拡大孔7n,7oが形成された。
【0102】
このため、ヘッド・サスペンション1の幅方向及び前後方向の双方向での位置決め精度をより高めることができる。また、先端側ロードビームの孔が、ロードビーム剛性コントロールの理由などから非円形の場合など、基準孔として使うことが困難なとき、先端側でフレキシャ7を位置決めするのに有効である。
【0103】
ロード・ビーム19の基準孔19v,19w又はフレキシャ7の基準孔7f,7g,7h,7i,7j,7k,7l,7mに対応して前記フレキシャ7又はロード・ビーム19に、基準孔19v,19w又、基準孔7f,7g,7h,7i,7j,7k,7l7mよりも大径の拡大孔7n,7o,19i,19k,19l,19o,19s,19t,19u,19xを設けた。
【0104】
このため、基準孔19v,19w、基準孔7f,7g,7h,7i,7j,7k,7l,7mに基準ピンを差し込み位置決めるとき、拡大孔7n,7o,19i,19k,19l,19o,19s,19t,19u,19xに干渉することなく、正確な差し込みを行わせることができる。
【0105】
基準ピン・ブロック29は、複数個の基準ピン31a,31b,31c,31dは、一体である。
【0106】
このため、基準ピン31a,31b,31c,31d相互間の位置精度を維持させ、基準孔の確実な位置決めに寄与する。
【0107】
基準ピン31a,31b,31c,31dは、基材ブロックからNC等の旋削により先細に削り出し加工され、根元の直径は、0.2mm以下、具体的には0.13mm程度であり、基準ピン31a,31bの間隔は、0.68mm程度である。
【0108】
このため、基準孔とのクリアランスを極めて少なくすることができ、位置決め精度をより高めるための使用に適している。
【符号の説明】
【0109】
1 ヘッド・サスペンション
3 ヘッド部
7 フレキシャ
7a,7b,7d,7e,7f,7g,7h,7i,7j,7k,7l,7m 基準孔
7n,7o 拡大孔
9 タング部
11 バネ部
19 ロード・ビーム
19a,19b,19f,19g,19h,19j,19m,19n,19p,19q,19r,19v,19w 基準孔
19i,19k,19l,19o,19s,19t,19u,19x 拡大孔
21 ディンプル部(凸部)
23 第1打点
25,27 円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライダを搭載するフレキシャのタング部をロード・ビームの凸部に当接させ、前記フレキシャを前記ロード・ビームに第1打点でレーザー溶接し、前記タング部を前記凸部に設定した荷重で当接させるヘッド・サスペンションの製造方法であって、
前記フレキシャ及びロード・ビームには、両者の結合前に、前記第1打点及び凸部間の距離を半径とし前記第1打点を中心とした円の範囲内に相当する箇所で相互間の位置決めを行うための基準孔を少なくとも各1個形成し、
前記結合前のフレキシャ及びロード・ビームを合わせて前記少なくとも各1個の基準孔に基準ピンを差し込ませ、
前記基準孔及び基準ピンにより前記結合前のフレキシャ及びロード・ビーム間の位置決めを行わせた状態で前記第1打点のレーザー溶接を行う、
ことを特徴とするヘッド・サスペンションの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のヘッド・サスペンションの製造方法であって、
前記基準孔は、前記第1打点及び配線間の最短距離を半径とし前記第1打点を中心とした円の範囲内に相当する箇所に形成した、
ことを特徴とするヘッド・サスペンションの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のヘッド・サスペンションの製造方法であって、
前記少なくとも各1個の基準孔は、前記第1打点に相当する箇所を挟む両側位置、若しくはオフセットした両側位置に配置された、
ことを特徴とするヘッド・サスペンションの製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載のヘッド・サスペンションの製造方法であって、
前記基準孔は、前記フレキシャとロード・ビームとに分けて3個以上設けられて前記第1打点に相当する箇所を三角点状、又は四角点状、若しくは六角点状に囲む位置に配置された、
ことを特徴とするヘッド・サスペンションの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のヘッド・サスペンションの製造方法であって、
前記ロード・ビームの基準孔又は前記フレキシャの基準孔に対応して前記フレキシャ又はロード・ビームに前記基準孔よりも大径の拡大孔を設けた、
ことを特徴とするヘッド・サスペンションの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載のヘッド・サスペンションの製造方法であって、
前記複数個の基準ピンは、基部側が一体である、
ことを特徴とするヘッド・サスペンションの製造方法。
【請求項7】
請求項6項記載のヘッド・サスペンションの製造方法に用いる基準ピン・ブロックであって、
前記複数個の基準ピンが、単一のブロックに削り出しで突設された、
ことを特徴とするヘッド・サスペンションの製造方法に用いる基準ピン・ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−93071(P2013−93071A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233321(P2011−233321)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】