説明

ヘッド及び打刻装置

【課題】パターンを構成するドットを正確なピッチで形成することを可能とする。
【解決手段】打刻ピン33それぞれを、鉛直軸Lの周りに、かつ鉛直軸Lを中心とする円の周上に配置することで、打刻ピン33それぞれの姿勢を、打刻ピン相互間で同等の姿勢とする。これにより、打刻ピンの位置に起因するドットの位置ずれの発生が抑制され、打刻面にドットが正確なピッチで形成される。また、打刻ピン33相互間の姿勢に差がないため、打刻ピン33が打刻面に当接するときの速度のばらつきが少なくなり、打刻面に径が均一なドットを容易に形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッド及び打刻装置に係り、更に詳しくは、打刻面にドットを打刻する打刻ピンを有するヘッド、及び前記ヘッドを備える打刻装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工業製品の生産工程などでは、例えばQRコード(登録商標)や、データマトリックスなどに代表される二次元コードを、工業製品に直接描画或いは刻印して、製品の管理やトレーサビリィティを実現するダイレクトマーキング技術が注目されている。
【0003】
工業製品に直接形成された二次元コードは、例えばラベルなどのように製造工程で剥離する心配がなく、汚染による劣化や経年劣化なども比較的少ない。このため、高温下や、薬品などにさらされる劣悪な環境下にある製造工程などでは、ダイレクトマーキング技術は必要不可欠な技術になりつつある。
【0004】
このダイレクトマーキング技術は、YAGレーザやCOレーザなどで、対象物に非接触でマーキングを行う方法と、例えばピンなどで対象物の表面を打刻してマーキングを行う方法とがある。
【0005】
対象物の表面を打刻してマーキングする方法は、金属部品などによく用いられるマーキング方法であり、例えば特許文献1に記載された打刻装置によって実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−276607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された装置に代表される打刻装置では、対象物に所定のピッチでマトリクス状にドットを打刻することで、最終的なパターンが形成される。このため、例えば対象物に二次元コードをマーキングする場合などには、コードを読み取るスキャナの読み取り精度との関係を考慮して、打刻ピンを精度よく位置決めし、所望の径のドットをある程度正確なピッチで形成する必要がある。
【0008】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、パターンを構成するドットを正確なピッチで形成することが可能なヘッド及び打刻装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のヘッドは、打刻面にドットを打刻する打刻装置に用いられるヘッドであって、所定の軸周りに配置され、前記打刻面に沿った第1方向に関して等間隔に配置された複数の打刻ピンと、前記打刻ピンそれぞれの一端を前記打刻面に当接させて、前記打刻面にドットを打刻する打刻手段と、を備え、前記打刻ピンそれぞれは、前記打刻ピンの中心軸と前記所定の軸との成す角度が相互に等しく配置されているとともに、長さが相互に等しいことを特徴とする。
【0010】
また、前記打刻ピンそれぞれは、前記所定の軸からの距離が相互に等しくなるように配置されていてもよい。
【0011】
また、前記打刻手段は、前記所定の軸周りに配置された、前記打刻ピンそれぞれを駆動する複数のアクチュエータを有していてもよい。
【0012】
また、前記アクチュエータそれぞれは、前記所定の軸からの距離が相互に等しくなるように配置されていてもよい。
【0013】
また、前記打刻ピンの一端は、前記打刻面に沿った一面内に位置することとしてもよい。
【0014】
また、前記所定の軸は、前記打刻面に直交することとしていてもよい。
【0015】
また、前記打刻ピンの前記打刻面と当接する側は、円錐状、または球状に形成されていることとしてもよい。
【0016】
本発明の打刻装置は、物体の打刻面に複数のドットからなるパターンを形成する打刻装置であって、本発明のヘッドと、前記打刻面に沿って、前記ヘッドを、前記物体に対して、前記第1方向、及び前記第1方向に交差する第2方向へ相対移動させる移動手段と、を備える。
【0017】
また、前記第1方向及び前記第2方向は直交することとしてもよい。
【0018】
また、前記パターンは二次元コードであることとしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
パターンを構成するドットが正確なピッチで形成される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る打刻装置のブロック図である。
【図2】打刻ユニットの斜視図である。
【図3】ヘッドを+Y側から見た図である。
【図4】ヘッドの内部構造を示す図である。
【図5】打刻ピンの配置を説明するための図(その1)である。
【図6】打刻ピンの配置を説明するための図(その2)である。
【図7】打刻ピンの配置を説明するための図(その3)である。
【図8】打刻ユニットのブロック図である。
【図9】図9(A)は、パルス信号を示す図である。また、図9(B)は、打刻ピンの変位と時間との関係を表す曲線を示す図である。
【図10】打刻ユニットの配置を説明するための図である。
【図11】対象物に形成される二次元コードの一例を示す図である。
【図12】打刻装置の動作を説明するための図である。
【図13】図13(a)及び図13(b)は、ヘッドの特徴を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図12を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る打刻装置10の概略的な構成を示すブロック図である。この打刻装置10は、外部装置や外部システムから出力された二次元コードを、対象物に打刻する装置である。
【0022】
図1に示されるように、打刻装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、主記憶部12、補助記憶部13、入力部14、検出部15、インターフェイス16、及び打刻ユニット20を備えている。
【0023】
前記主記憶部12は、RAM(Random Access Memory)等を含んで構成されている。この主記憶部12は、CPU11の作業領域として用いられる。
【0024】
前記補助記憶部13は、ROM(Read Only Memory)、磁気ディスク、半導体メモリ等の不揮発性メモリを含んで構成されている。この補助記憶部13は、CPU11が実行するプログラム、及びプログラムの実行に必要な各種パラメータなどを記憶している。また、CPU11による処理結果などを含む情報を逐次記憶する。
【0025】
前記入力部14は、電源スイッチや打刻装置10に対する指令を入力するための操作パネルなどを含んで構成されている。ユーザの指示は、この入力部14を介して入力され、システムバス10aを経由してCPU11に通知される。
【0026】
前記打刻ユニット20は、対象物の表面に複数のドットから構成される二次元コードなどのパターンを形成する。図2は、打刻ユニット20の斜視図である。図2に示されるように、打刻ユニット20は、ベース部材21、ベース部材21に対してY軸に沿って移動可能に設けられたY移動体23、Y移動体23に対してX軸に沿って移動可能に設けられたX移動体24、X移動体24にホルダ25を介して取り付けられたヘッド30、及び打刻ユニット20の制御を行うドライバ26を備えている。
【0027】
前記ベース部材21は、長手方向をX軸方向としXY平面に平行な板状の第1部分21aと、長手方向をX軸方向としXZ面に平行な板状の第2部分21bの2部分からなる断面L字状の部材である。また、このベース部材21に形成された第1部分21aの+Y側端部には、長手方向をX軸方向とする支持プレート22が固定されている。
【0028】
前記支持プレート22の−Y側の面と、ベース部材21に形成された第2部分21bの+Y側の面とはほぼ平行になっている。そして、支持プレート22とベース部材21の第2部分21bの間には、一端部が支持プレート22に固定され、他端部が第2部分21bに固定された、長手方向をY軸方向とする円柱状のYガイド52A,52Bがそれぞれ架設されている。
【0029】
前記Y移動体23は、X軸方向を長手方向とする板状の移動部23aと、移動部23aの+X側端部及び−X側端部から−Z方向へ延びる一対の支持部23bとからなる部材である。また、Y移動体23の移動部23aの中央部には、Y軸方向に貫通する円形開口23cが形成され、この円形開口23cの+X側及び−X側には円形開口23dがそれぞれ形成されている。そして、Y移動体23の一対の支持部23bの間には、両端部が一対の支持部23bにそれぞれ固定された、長手方向をX軸方向とする円柱状のXガイド51A,51Bがそれぞれ架設されている。
【0030】
上述のように構成されたY移動体23は、移動部23aの円形開口23dにそれぞれ挿入された1組のYガイド52A,52Bによって、ベース部材21に対してY軸方向に移動可能に支持されている。
【0031】
また、Y移動体23の移動部23aに形成された円形開口23cには、ベース部材21の第2部分21b、及び支持プレート22に、+Y側端部及び−Y側端部が回転可能に支持された送りネジ60Yが螺合されている。Y移動体23は、送りネジ60YがYモータ50Yによって回転されることで、Y軸方向に移動される。
【0032】
前記X移動体24は、Z軸方向を長手方向とする直方体状の部材である。このX移動体24の中央部にはX軸方向に貫通する円形開口24aが形成され、この円形開口24aの+Z側及び−Z側には円形開口24bがそれぞれ形成されている。
【0033】
上述のように構成されたX移動体24は、円形開口24bにそれぞれ挿入されたXガイド51A,51Bによって、Y移動体23に対してX軸方向に移動可能に支持されている。
【0034】
また、X移動体24に形成された円形開口24aには、両端部がY移動体23に形成された支持部23bによって回転可能に支持された送りネジ60Xが螺合されている。X移動体24は、送りネジ60XがXモータ50Xによって回転されることで、X軸方向に移動される。
【0035】
前記ヘッド30は、X移動体24の+Y側の面に固定されたU字状のホルダ25によって支持されている。図3は、ヘッド30を+Y側から見た図である。図3に示されるように、ヘッド30は、長さが相互に等しい9本の打刻ピン33と、9本の打刻ピン33それぞれを駆動する9つのアクチュエータ40が収容されたケーシング31と、打刻ピン33それぞれを保持する保持部材32とを有している。
【0036】
以下、本発明の実施形態に係る打刻ユニット20のヘッド30を図面を参照して説明する。図4は、本実施形態に係る打刻ユニット20のヘッド30の断面図であり、ケーシング31の中心を通りXZ平面に平行する断面である。なお、図4ではケーシング31のレバーホルダ天板31bと、ケーシング31と保持部材32とを固定する固定ばね31cと、は省略している。打刻ピン33の−Z側端部は下方に向かって細くなる円錐状、或いは球状に整形されている。また+Z側端部には、他の部分よりも経が大きい大径部33aが形成されている。そして、−Z側端部が保持部材32から突き出た状態で、Z軸に沿って移動可能に保持されている。
【0037】
本実施形態に係る打刻ユニット20のヘッド30は、保持部材32と、打刻ピン33と、復帰ばね113と、打刻ピン駆動レバー114と、可動ヨーク116と、ヨークケース117と、ヨークプレート118と、駆動コイル43と、を備える。
【0038】
打刻ピン駆動レバー114、可動ヨーク116、駆動コイル43により、打刻ピン33を駆動するアクチュエータ40が構成される。
【0039】
ヨークケース117、ヨークプレート118は、9つのアクチュエータ40を収容するケーシング31を構成する。
【0040】
保持部材32はその内部に打刻ピン33および打刻ピンガイド板115〜115を収納しており、この比較的長尺となる打刻ピン33は、打刻ピンガイド板115〜115によって、保持部材32内において概ね一定の姿勢を維持する。打刻ピンガイド板115〜115は板体にガイドとなる穴を貫通させたものであり、このガイド穴に打刻ピンを通すことで打刻ピンの姿勢を維持している。
【0041】
復帰ばね113は、打刻ピン33を+Z方向に付勢するためのものであり、コイルスプリングからなり、それぞれに打刻ピン33が挿入される。
【0042】
打刻ピン駆動レバー114は、打刻ピン33それぞれを待機位置から−Z側(下方)に移動させるためのものである。打刻ピン駆動レバー114には、軟磁性体からなり、円柱形状を有している可動ヨーク116が例えばカシメ加工により一体に固定されている。
【0043】
打刻ピン33は復帰ばね113により、+Z方向に付勢されるが、打刻ピン33の大径部33aが打刻ピン駆動レバーと当接することで、それ以上の+Z方向への移動を規制されている。この位置が打刻ピン33の待機位置である。
【0044】
打刻ピン駆動レバー114は、レバーホルダ31a内において、打刻ピン駆動レバー114の打刻ピン33の大径部33aとの当接部(先端)と反対側の端部(後端)は図示しない保持機構によって保持されており、これによって打刻ピン駆動レバー114はZ軸方向に揺動することが可能である。なお、保持機構は、例えばレバーホルダ31aの天板であるレバーホルダ天板31bと、打刻ピン駆動レバー114の端部との間に板ばねを設ける等して構成される。
【0045】
ヨークケース117は、可動ヨーク116を引きつけて打刻ピン駆動レバー114を待機位置から−Z方向(下方)へ駆動するためのものであり、例えば、電磁軟鉄や珪素鋼等などの軟磁性体からなる。ヨークケース117は、保持部材32上に保持される。ヨークケース117には、可動ヨーク116が配される位置に対応して円柱形状のコアが設けられており、このコアを中心として駆動コイル43が設けられる。
【0046】
ヨークプレート118は、閉じた磁路を形成するためのものであり、例えば、電磁軟鉄や珪素鋼等などの軟磁性体からなる。
【0047】
駆動コイル43は、電流が供給されて、ヨークケース117とヨークプレート118とを磁化するためのものである。ヨークケース117とヨークプレート118とが磁化されると、可動ヨーク116が引き付けられるため、打刻ピン駆動レバー114先端は−Z方向へ揺動する。打刻ピン駆動レバー114先端が−Z方向に揺動するのに伴って、打刻ピン33も−Z方向に移動する。
【0048】
駆動コイル43への電流の供給が中断されると、打刻ピン33を+Z方向に付勢している復帰ばね113により、打刻ピン33および打刻ピン駆動レバー114は待機位置に復帰する。
【0049】
図5は、9本の打刻ピン33の配置を示す斜視図である。図5に示されるように、9本の打刻ピン33それぞれは、+Z側端がZ軸に平行な鉛直軸Lを中心とする円C1に沿って位置した状態で、保持部材32によって保持されている。また、打刻ピン33をそれぞれ駆動する打刻ピン駆動レバー114および駆動コイル43も鉛直軸Lからの距離が相互に等しくなるように配置されている。
【0050】
また、図6に示すように打刻ピン33は、打刻ピン33の中心軸と鉛直軸Lとの成す角度θが9つの打刻ピン33にわたって相互に等しくなるように配置される。なお、角度θは、作図の便宜上、図6では鉛直軸Lに平行な線lと打刻ピン33の中心軸とのなす角度θとして示している。本実施形態では図6に示されるように、打刻ピン33それぞれの下端は、鉛直軸L上に中心を有し半径が円C1よりも小さい円C2上に位置するように配置されている。
【0051】
図7は、打刻ピン33それぞれの下端(対象物に当接する端)の配置を示す図である。本実施形態では、図7を参照するとわかるように、打刻ピン33それぞれの下端は、XY面における円C2上に位置するとともに、Y軸方向に関して距離dずつ離間するように配置されている。この距離dは、解像度を200dpiとするパターンを構成するドットD2の径の2倍の距離に概ね相当し、解像度を300dpiとするパターンを構成するドットD3の径の3倍の距離に概ね相当する。以下、9本の打刻ピン33について、最も−Y側にある打刻ピン33を打刻ピン33と表示し、+Y方向に向かってそれぞれの打刻ピン33を打刻ピン33、33、…33とも表示する。
【0052】
図8は、打刻ユニット20のブロック図である。前記ドライバ26は、ベース部材21に形成された第2部分21bの+Y側に配置され、Xモータ50X、Yモータ50Y、及びヘッド30と電気的に接続されている。そして、図8を参照するとわかるように、CPU11の指示に基づいて、Xモータ50X及びYモータ50Yを駆動して、ヘッド30をX軸方向及びY軸方向へ移動する。また、ヘッド30の打刻ピン33〜33を駆動するアクチュエータ40〜40それぞれの駆動コイル43にパルス信号を供給する。
【0053】
図9(A)には、ドライバ26が、アクチュエータ40〜40それぞれの駆動コイル43に供給するパルス信号P2及びパルス信号P3が示されている。パルス信号P2は、対象物に解像度を200dpiとするパターンを構成するドットを打刻するための電圧信号の1例であり、パルス信号P3は、対象物に解像度を300dpiとするパターンを構成するドットを打刻するための電圧信号の1例である。また、パルス信号P2は、最大電圧がV2であり、パルス幅がTの矩形波である。一方、パルス信号P3は、最大電圧がV2よりも小さいV3であり、パルス幅がTの矩形波である。
【0054】
一例として、図9(B)には、打刻ピン33の、待機位置Dからの変位と時間との関係を示す曲線S2及び曲線S3が示されている。曲線S2は、アクチュエータ40にパルス信号P2が供給されたときの打刻ピン33の変位と時間との関係を示す曲線である。また、曲線S3は、アクチュエータ40にパルス信号P3が供給されたときの打刻ピン33の変位と時間との関係を示す曲線である。
【0055】
曲線S2と曲線S3とを見るとわかるように、打刻ピン33はパルス信号がハイレベルとなる時刻t1から少し遅れて移動を開始する。移動を開始した打刻ピン33は、パルス信号がローレベルとなる時刻t2までの間に加速され、パルス信号がローレベルとなった後も移動を継続し、変位がDとなる対象物に当接する位置に達する。そして、しばらくその位置に留まった後に変位がDとなる待機位置まで戻る。
【0056】
本実施形態においてはパルス信号P2によって得られるドット径が、200dpiのパターンを形成するためのドット径であり、パルス信号P3によって得られるドット径が300dpiのパターンを形成するためのドット径となるように設定されている。
【0057】
ドライバ26は、CPU11からの指示により、最大電圧値及びパルス幅がそれぞれ異なるパルス信号P2、及びパルス信号P3を選択的にアクチュエータ40〜40それぞれに供給する。これにより、対象物に当接するときの打刻ピン33〜33の速度が解像度に見合った速度となり、対象物に、解像度が300dpiのパターンを構成するドットと、解像度200dpiのパターンを構成するドットとを選択的に打刻することができる。
【0058】
上述のように構成された打刻ユニット20は、図10を参照するとわかるように、ベース部材21の上面がほぼ水平となった状態で、例えばベルトコンベア120の上方にヘッド30が位置するように不図示の支持部材によって支持されている。また、本実施形態では、ベルトコンベア120に載置された対象物100の上面は、打刻ピン33の待機位置と打刻限界位置との間に位置した状態となっている。
【0059】
図1に戻り、前記検出部15は、打刻ユニット20の下方にある対象物100を検出しこの検出結果を含む情報を出力する。
【0060】
前記インターフェイス16は、シリアルインターフェイスまたはLAN(Local Area Network)インターフェイスなどの入力ポートと、入力ポートに入力された情報を一時蓄積するバッファなどを備えている。本実施形態では、パソコンなどの外部装置などがインターフェイス16に接続され、このインターフェイス16とシステムバス10aを介して、対象物100に形成する二次元コードに関する情報がCPU11に通知される。
【0061】
前記CPU11は、補助記憶部13に記憶されたプログラムなどを読み出して、このプログラムに従って、打刻ユニット20などの各部を統括的に制御する。
【0062】
次に、上述のように構成された打刻装置10の動作について説明する。前提として、対象物100は、図10に示されるように、打刻ユニット20の下方に搬送され、CPU11によって検出部15を介して検出されているものとする。また、本実施形態では、一例として図11に示される二次元コードを、174行174列のマトリクス上に300dpiの分解能に相当するドットを打刻して形成するものとする。以下、説明の便宜上、上記174行174列のマトリクスを単にコードマトリクス(CM)という。
【0063】
まず、CPU11は、外部装置などから二次元コードに関する情報が供給されると、この管理情報から対象物100に形成するパターンを生成する。本実施形態では、図11に示される二次元コードが生成される。
【0064】
次に、CPU11は、打刻ユニット20を制御して、生成した二次元コードを対象物100の上面に打刻する。以下、この動作について図12を参照しつつ説明する。なお、図12においては、打刻ピン33〜33それぞれは、1〜9までの番号が割り当てられ、この番号を囲む丸で示されている。また、Y軸方向への移動距離は、1/300インチをDとして、このDを用いて示すものとする。
【0065】
CPU11は、ヘッド30を移動させて、図12に示されるように、コードマトリクスCMの1行目、4行目、7行目の+X側に、打刻ピン33〜33を位置決めする。そして、この状態から、ヘッド30を−X方向へ移動させながら、打刻ピン33〜33をそれぞれ駆動して、コードマトリクスCMの1行目、4行目、7行目に、二次元コードを構成するドットを打刻していく。
【0066】
コードマトリクスCMの1行目、4行目、7行目の打刻が完了すると、CPU11は、ヘッド30を距離10Dだけ+Y方向へ移動させ、コードマトリクスCMの2行目、5行目、8行目、11行目、14行目、17行目の+X側に、打刻ピン33〜33を位置決めする。そして、この状態から、ヘッド30を−X方向へ移動させながら、打刻ピン33〜33をそれぞれ駆動して、コードマトリクスCMの2行目、5行目、8行目、11行目、14行目、17行目に、二次元コードを構成するドットを打刻していく。
【0067】
コードマトリクスCMの2行目、5行目、8行目、11行目、14行目、17行目の打刻が完了すると、CPU11は、ヘッド30を距離10Dだけ+Y方向へ移動させ、コードマトリクスCMの3行目、6行目、9行目、12行目、15行目、18行目、21行目、24行目、27行目の+X側に、打刻ピン33〜33を位置決めする。そして、この状態から、ヘッド30を−X方向へ移動させながら、打刻ピン33〜33をそれぞれ駆動して、コードマトリクスCMの3行目、6行目、9行目、12行目、15行目、18行目、21行目、24行目、27行目に、二次元コードを構成するドットを打刻していく。
【0068】
コードマトリクスCMの3行目、6行目、9行目、12行目、15行目、18行目、21行目、24行目、27行目の打刻が完了すると、CPU11は、ヘッド30を距離7Dだけ+Y方向へ移動させ、コードマトリクスCMの10行目、13行目、16行目、19行目、22行目、25行目、28行目、31行目、34行目の+X側に、打刻ピン33〜33を位置決めする。そして、この状態から、ヘッド30を−X方向へ移動させながら、打刻ピン33〜33をそれぞれ駆動して、コードマトリクスCMの10行目、13行目、16行目、19行目、22行目、25行目、28行目、31行目、34行目に、二次元コードを構成するドットを打刻していく。
【0069】
以下、CPU11は、上述の動作を繰り返しながら、コードマトリクスCMのすべての行について、二次元コードを構成するドットを打刻する。そして、CPU11は、対象物100に対する二次元コードの生成が完了すると、処理を終了する。
【0070】
以上説明したように、本実施形態では、図5及び図6を参照するとわかるように、打刻ピン33それぞれは、鉛直軸Lを中心とする円の周上に配置されている。これにより、打刻ピン33それぞれは、鉛直軸Lに対する姿勢が相互に同様な姿勢となる。したがって、打刻ピンの位置に起因する、ドット形状のばらつき及びドットの位置ずれの発生が抑制され、打刻面に同形状のドットを正確なピッチで形成することができる。
【0071】
仮に、ヘッド先端のサイズをコンパクトにするために、ドットインパクトプリンタの印字ヘッドで通常用いられる打刻ピンを用いようとすると、9本の打刻ピン33それぞれの+Z側端がZ軸に平行な鉛直軸Lを中心とする円C1に沿って配置した状態で、かつ、9本の打刻ピン33を、それぞれの下端が直線上に位置するように配置することになる。ところが、この場合は配置された位置によって、打刻ピン33それぞれの鉛直軸Lに対する角度θに差異が生じる。このため、相互に長さが等しいワイヤを用いると、図13(a)に示すように、打刻ピン33相互の下端の位置(−Z側端)は均一にならず、差異が生じる。
【0072】
この差異が生じたままでドットを形成すると、ストロークが異なるので打刻ピンの配置位置の違いによる形状のばらつき及び位置ずれが生じる。この問題を解決するためには、長さの異なるワイヤを用いて、下端の位置が均一になるようにするか、下端の位置が均一になるように、打刻ピン33の下端をカットする必要がある。
【0073】
一方、本実施形態では、打刻ピン33それぞれの鉛直軸Lに対する角度θが同一であるため、鉛直軸Lに対して相互に同様の姿勢となる。このため、図13(b)に示すように、相互に長さが等しいワイヤを用いても打刻ピン33相互の下端の位置は均一となり、差異は生じない。したがって打刻ピン33相互間のストロークを均一にすることができるので、打刻ピンの位置に起因する、ドット形状のばらつき及びドットの位置ずれの発生が抑制され、打刻面に同形状のドットを正確なピッチで形成することができる。
【0074】
また、打刻ピン33の下端の位置を均一にするためにカットする必要もない。このことは本実施形態のように、金属板、樹脂板等の各種媒体に打刻を施すために打刻ピン33の−Z側端部が下方に向かって細くなる円錐状、または球状に整形されているために打刻ピン33の下端をカットすることができないような場合に極めて有用である。
【0075】
また、本実施形態では、打刻ピン33それぞれの下端は、鉛直軸L上に中心を有し半径が円C1よりも小さい円C2上に配置されているので、ヘッド30先端のサイズをコンパクトにしつつ、打刻ピン33として、相互に長さが等しいワイヤを用いることができる。このため、打刻ピンごとに異なる長さのワイヤを用意する必要がなくなり部品の共通化を図ることができる。
【0076】
また、本実施形態では、打刻ピン33それぞれが、鉛直軸Lに対して相互に同様の姿勢となる。これにより、打刻ピン33が打刻面に当接するときの速度のばらつきが少なくなる。したがって、打刻面に形成されるドットの径が均一になり、結果的に、ドットから構成されるパターンを打刻面に精度良く形成することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではない。
【0078】
例えば、上記実施形態では、解像度が200dpi及び300dpiのパターンを形成する場合について説明したが、これに限らず、対象物に当接するときの打刻ピン33の速度を制御することで、種々の解像度のパターンを構成するドットを打刻することができる。一般に、対象物に当接するときの打刻ピンの速度とドット径とは比例関係にある。この特性を利用して、打刻ピン33の速度を制御することで、種々の解像度のパターンを構成するドットを打刻することができる。
【0079】
また、本実施形態では、対象物100に対してヘッド30を移動させながら対象物100にパターンを形成したが、これに限らず、ヘッド30に対して、対象物100を移動させてもよい。
【0080】
また、本実施形態に係る打刻ユニット20では、ヘッド30を相互に直交するX軸方向及びY軸方向へ移動させる場合について説明したが、これに限らずヘッド30は、対象物100の打刻面に沿って移動可能な構成であればよい。
【0081】
また、上記実施形態において打刻装置10の補助記憶部13に記憶されているプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto-Optical disk)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムをインストールすることにより、上述の処理を実行する装置を構成することとしてもよい。
【0082】
また、プログラムをインターネット等の通信ネットワーク上の所定のサーバ装置が有するディスク装置等に格納しておき、例えば、搬送波に重畳させて、ダウンロード等するようにしても良い。
【0083】
なお、上述の機能を、OS(Operating System)が分担して実現する場合又はOSとアプリケーションとの協働により実現する場合等には、OS以外の部分のみを媒体に格納して配布してもよく、また、ダウンロード等しても良い。
【0084】
なお、本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のヘッド及び打刻装置は、対象物にドットを打刻して、ドットから構成されるパターンを形成するのに適している。
【符号の説明】
【0086】
10 打刻装置
11 CPU
12 主記憶部
13 補助記憶部
14 入力部
15 検出部
16 インターフェイス
20 打刻ユニット
21 ベース部材
21a 第1部分
21b 第2部分
22 支持プレート
23 Y移動体
23a 移動部
23b 支持部
23c,23d 円形開口
24 X移動体
24a,24b 円形開口
25 ホルダ
26 ドライバ
30 ヘッド
31 ケーシング
32 保持部材
33 打刻ピン
40 アクチュエータ
41 可動部材
42 可動子
43 駆動コイル
44 スプリング
45 ベース
50X Xモータ
50Y Yモータ
51A,51B Xガイド
52A,52B Yガイド
60X,60Y 送りネジ
100 対象物
120 ベルトコンベア



【特許請求の範囲】
【請求項1】
打刻面にドットを打刻する打刻装置に用いられるヘッドであって、
所定の軸周りに配置され、前記打刻面に沿った第1方向に関して等間隔に配置された複数の打刻ピンと、
前記打刻ピンそれぞれの一端を前記打刻面に当接させて、前記打刻面にドットを打刻する打刻手段と、を備え、
前記打刻ピンそれぞれは、前記打刻ピンの中心軸と前記所定の軸との成す角度が相互に等しく配置されているとともに、長さが相互に等しい、
ことを特徴とするヘッド。
【請求項2】
前記打刻ピンそれぞれは、前記所定の軸からの距離が相互に等しくなるように配置された請求項1に記載のヘッド。
【請求項3】
前記打刻手段は、前記所定の軸周りに配置された、前記打刻ピンそれぞれを駆動する複数のアクチュエータを有する請求項1又は2に記載のヘッド。
【請求項4】
前記アクチュエータそれぞれは、前記所定の軸からの距離が相互に等しくなるように配置された請求項3に記載のヘッド。
【請求項5】
前記打刻ピンの一端は、前記打刻面に沿った一面内に位置する請求項1乃至4のいずれか一項に記載のヘッド。
【請求項6】
前記所定の軸は、前記打刻面に直交する請求項1乃至5のいずれか一項に記載のヘッド。
【請求項7】
前記打刻ピンの前記打刻面と当接する側は、円錐状、または球状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のヘッド。
【請求項8】
物体の打刻面に複数のドットからなるパターンを形成する打刻装置であって、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のヘッドと、
前記打刻面に沿って、前記ヘッドを、前記物体に対して、前記第1方向、及び前記第1方向に交差する第2方向へ相対移動させる移動手段と、
を備える打刻装置。
【請求項9】
前記第1方向及び前記第2方向は直交する請求項8に記載の打刻装置。
【請求項10】
前記パターンは二次元コードである請求項8又は9に記載の打刻装置。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−214663(P2010−214663A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61929(P2009−61929)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】