説明

ヘッド移動機構を備えたインクジェットプリンタ

【課題】摩耗により生じるラインヘッドの微小移動量の誤差をなくし、高品質な画像記録を行う。
【解決手段】本発明の一実施形態は、複数のノズルが配列されたラインヘッドと、ラインヘッドを保持するヘッドホルダと、を有するヘッドユニットと、ヘッドユニットを前記配列の方向となる主走査方向に移動させるヘッド移動機構と、を具備し、ヘッド移動機構は、異なる径部に位置された少なくとも2つの当接位置を有し、該当接位置でヘッドホルダに当接するカムと、ヘッドホルダをカムに向かって付勢する付勢部材と、カムを回転させて、前記当接位置で停止させるモータと、を有し、さらに、モータによるカムの回転時に、カムとヘッドホルダとを離間させる当接解除部と、を有するインクジェットプリンタである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッド移動機構を備えたインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、複数のノズルが配列されたインクヘッドを搭載し、ピエゾ方式等によりこれらノズルからインク滴を吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェットプリンタが知られている。このようなインクジェットプリンタの一例として、画像記録の高速化を図るために、記録媒体の搬送方向と直交する方向(主走査方向)に配列された1つ、又は複数のインクヘッドにより構成されたラインヘッドを有し、記録媒体のみを移動させて画像を記録するフルライン型インクジェットプリンタ(以下、ラインプリンタと称す。)がある。
【0003】
このようなラインプリンタでは、ラインヘッドを構成している各インクヘッドに形成されたノズルの間隔(ノズルピッチ)が、そのまま、主走査方向の記録ドット密度となるが、例えば、特許文献1には、ラインヘッドを主走査方向(ノズル列方向)に微小移動させることでノズルピッチ以上の高密度な画像記録を行うインクジェットプリンタが開示されている。このインクジェットプリンタは、インクジェットヘッド(ラインヘッド)を固定するキャリッジと、キャリッジの長手方向(主走査方向)一端側に設けられた偏向送りカムと、キャリッジの長手方向(主走査方向)他端側に設けられた付勢ばねと、を有する。偏心送りカムは、付勢ばねによって常にキャリッジと接触した状態となっている。この状態で偏心送りカムをパルスモータにより回転させることによって、ラインヘッドが主走査方向に微小移動し、高密度な画像記録を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−71947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、キャリッジと偏心送りカムとが常に当接した状態でラインヘッドを主走査方向に微小移動させている。このため、キャリッジと偏心送りカムとの一方、又は両方が摩耗してしまう。この結果、ラインヘッドを所望の位置に正確に微小移動させることができなくなり、記録される画像の品質が低下してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、摩耗により生じるラインヘッドの微小移動量の誤差をなくし、高品質な画像記録を行うことができるインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による一実施形態は、複数のノズルが配列されたラインヘッドと、前記ラインヘッドを保持するヘッドホルダと、を有するヘッドユニットと、前記ヘッドユニットを前記配列の方向となる主走査方向に移動させるヘッド移動機構と、を具備するインクジェットプリンタであって、前記ヘッド移動機構は、異なる径部に位置された少なくとも2つの当接位置を有し、該当接位置で前記ヘッドホルダに当接するカムと、前記ヘッドホルダを前記カムに向かって付勢する付勢部材と、前記カムを回転させて、前記当接位置で停止させるモータと、を有し、さらに、前記モータによる前記カムの回転時に、該カムと前記ヘッドホルダとを離間させる当接解除部と、を有するインクジェットプリンタである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、摩耗により生じるラインヘッドの微小移動量の誤差をなくし、高品質な画像記録を行うことができるインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明のインクジェットプリンタを概略的に示す正面図である。
【図2】図2は、第1の実施形態における画像記録部、ヘッド移動機構及び当接解除部を示す斜視図である。
【図3】図3(a)は、解像度を2倍としたときの1回目の画像記録時における画像記録部、ヘッド移動機構及び当接解除部を示す概略的な側面図、図3(b)は、ヘッドホルダとカムとの当接状態を示す概略的な側面図である。
【図4】図4は、複数のノズルが設けられたラインヘッド及びこれらノズルから記録媒体に吐出された1回目の記録ドットを示す図である。
【図5】図5(a)は、当接解除部を駆動させたときの画像記録部、ヘッド移動機構及び当接解除部を示す概略的な側面図、図5(b)は、ヘッドホルダとカムとを示す概略的な側面図である。
【図6】図6(a)は、解像度を2倍としたときの2回目の画像記録時における画像記録部、ヘッド移動機構及び当接解除部を示す概略的な側面図、図6(b)は、ヘッドホルダとカムとの当接状態を示す概略的な側面図である。
【図7】図7は、主走査方向にd/2だけ移動したラインヘッド及びこのラインヘッドの複数のノズルから記録媒体に吐出された1回目及び2回目の記録ドットを示す図である。
【図8】図8(a)並びに図8(b)は、変形例1の画像記録部、ヘッド移動機構及び当接解除部を示す概略的な側面図である。
【図9】図9(a)並びに図9(b)は、変形例2の画像記録部、ヘッド移動機構及び当接解除部を示す概略的な側面図である。
【図10】図10は、第2の実施形態におけるカムを示す斜視図である。
【図11】図11(a)乃至図11(d)は、第2の実施形態におけるカムとヘッドホルダとの当接状態を時系列的に示す概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、図1乃至図7を参照して説明する。
図1は、インクジェットプリンタ1の構成を概略的に示す正面図である。インクジェットプリンタ1は、媒体供給部10と、搬送部20と、画像記録部30と、第1のヘッド移動部としてのヘッド移動機構40(図1には示されない、図2並びに図3参照)と、第2のヘッド移動部としての当接解除部50(図1には示されない、図2並びに図3参照)と、昇降機構60と、クリーニング部70と、媒体排出部80と、を有している。これら構成部は、媒体排出部80の後述する排出トレイ82を除いて、プリンタ本体フレーム2内に収容されている。また、これら構成部は、パーソナルコンピュータやCPU等の演算処理部を備えた不図示の制御部により制御される。
【0012】
まず、媒体供給部10について説明する。
媒体供給部10は、本実施形態ではインクジェットプリンタ1の最下部に配置されている。この媒体供給部10は、所定の大きさにカットされた記録紙やフィルム等の記録媒体(カット媒体)3を収納する供給トレイ11と、供給トレイ11内に収納された記録媒体3を1枚ずつ取り出すピックアップローラ12と、ピックアップローラ12によって取り出された記録媒体3を搬送部(搬送経路)20へ案内するための供給ガイド13と、を有している。
【0013】
供給トレイ11には、一定の圧力でピックアップローラ12に記録媒体3を当接させるための不図示のばねが設けられている。また、ピックアップローラ12には、記録媒体3が搬送部20の後述するドラム22に電気的に吸着された後において従動ローラとして機能するように、不図示のワンウェイクラッチが内蔵されている。
【0014】
次に、搬送部20について説明する。
搬送部20は、帯電ローラ21と、ドラム22と、媒体端検知部23と、除電器24と、剥離爪25と、を有している。
【0015】
帯電ローラ21は、搬送部(搬送経路)20における最上流側に、ドラム22に対向して設けられている。この帯電ローラ21は、供給ガイド13により案内された記録媒体3をドラム22の外周面に案内するとともに、正放電することで記録媒体3をドラム22の外周面に電気的に吸着させる働きをする。本実施形態では、オゾンが発生しにくいように、+帯電としている。
【0016】
ドラム22は、ドラム22の回転軸22aによって、プリンタ本体フレーム2に回転可能に軸支されている。このドラム22は、記録時に記録媒体3を巻き付けて搬送するのに用いられ、回転軸22aに連結された不図示のモータを駆動させることによって、図1に矢印で示した方向(時計回り)に一定速度で回転する。また、ドラム22の回転軸22aには、相対的回転角を検出する図示しないエンコーダが連結されている。なお、ドラム22は、中空アルミ円筒と両側面のフランジとからなり、円筒表面は絶縁プラスチックコートされている。また、ドラム22自体はスラスト方向のガタが発生しないように構成されている。
【0017】
媒体端検知部23は、帯電ローラ21の下流側の搬送経路に、ドラム22に対向して設けられている。この媒体端検知部23は、発光素子と受光素子とを有している。媒体端検知部23は、発光素子からの光がドラム22の外周面又は記録媒体3の表面で反射されて受光素子に受信されたとき、ドラム22の外周面と記録媒体3の表面との反射率の違いによって、ドラム22上に吸着された記録媒体3の境界(記録媒体端)を検知し、記録媒体3の絶対的回転位置を検出する。
【0018】
除電器24は、詳細は後述する画像記録部30の下流側の搬送経路に、ドラム22に対向して設けられている。この除電器24は、交流放電をすることでドラム22に電気的に吸着された状態にある記録媒体3の吸着力をなくす(除電する)働きをする。
剥離爪25は、その先端部がドラム22の外周面に接するように配置され、吸着力がなくなった記録媒体3をドラム22から剥離するとともに、媒体排出部80へ案内する。なお、剥離動作を行うときを除いて、剥離爪25の先端部は、除電器24による除電タイミングと同期して駆動される不図示のアクチュエータにより、ドラム22の外周面から離間した位置に退避される。
【0019】
次に、画像記録部30について、図1乃至図3を参照して説明する。
図2は、画像記録部30、ヘッド移動機構40及び当接解除部50を示す斜視図である。また、図3(a)は、画像記録部30、ヘッド移動機構40及び当接解除部50を示す概略的な側面図、図3(b)は、ヘッドホルダ32とカム41との当接状態を示す概略的な側面図である。
【0020】
画像記録部30は、部媒体端検知部23と除電器24との間の搬送経路中に、ドラム22の外周面に沿うように対向して設けられている。この画像記録部30は、ラインヘッド31及びラインヘッド31を保持するヘッドホルダ32により構成されているヘッドユニットと、一端側がヘッドホルダ32に、他端側が不図示の記録部固定フレームにそれぞれ接続され、ヘッドホルダ32を記録部固定フレームに対して鉛直方向に吊り下げ式に保持するヘッド支持機構となる2枚1組の平行板ばね33と、を有している。本実施形態では、搬送経路の上流側から順番に、シアン(C)、ブラック(K)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のラインヘッド31がヘッドホルダ32に一体的に組み合わされて、ヘッドユニットを構成している。
【0021】
なお、本実施形態のラインヘッド31は、記録媒体3の搬送方向に直交する方向に記録媒体3の記録領域を超えるように配列された1つのインクヘッド、あるいは互い違いに(千鳥状に)配列された複数のインクヘッドによって構成されている。
【0022】
ラインヘッド31のノズル面31a、すなわちドラム22に対向している側には、複数のノズル31bがノズルピッチdで列をなして形成(配列)されている。ドラム22に電気的に吸着された記録媒体3がラインヘッド31の下方を通過したとき、ラインヘッド31は、不図示の制御部から受信した画像記録データに応じてこれらノズル31bからインクを吐出して、記録媒体3に画像を記録する。
平行板ばね33は、弾性材料でできており、材料の弾性域内で外力に応じて撓むことで、ヘッドホルダ32を主走査方向に略直進移動可能なように保持している。
【0023】
次に、第1のヘッド移動部としてのヘッド移動機構40及び第2のヘッド移動部としての当接解除部50について、図2並びに図3を参照して説明する。
ヘッド移動機構40は、ラインヘッド31の長手方向(主走査方向)一端側に設けられ、ヘッドホルダ32に当接するカム41と、カム41に接続され、カム41を駆動(回転)させるためのモータ42とからなる駆動部と、ラインヘッド31の長手方向他端側に設けられ、ヘッドホルダ32をカム41に向かって付勢する付勢ばね43と、を有している。
また、本実施形態では、当接解除部50として、カム41と同じ側、つまりラインヘッド31の長手方向一端側に、プル/プッシュタイプのソレノイド51が設けられている。ソレノイド51は、付勢ばね43による付勢力とは逆方向に、ヘッドホルダ32に外力を与える。なお、ソレノイド51は、記録部固定フレームによって支持されている。
【0024】
カム41は、図3(b)に示すように、ヘッドホルダ32と当接する第1の当接位置A1を含む第1の径部と、第2の当接位置A2を含む第2の径部とを有する。つまり、カム41は、異なる径部に位置された少なくとも2つの当接位置を有する偏心カムである。本実施形態では、両位置のカム41の径差は、ノズルピッチdの半分のd/2相当の距離としている。
カム41は、カムの外周端面(カム曲面)の1点でヘッドホルダ32に接しており、モータ42を駆動させることによりカム41の径差に応じて、ヘッドユニット(ラインヘッド31、ヘッドホルダ32)を図3(a)に矢印で示した方向に微小移動させる。なお、駆動部(カム41、モータ42)は、記録部固定フレームによって支持されている。
【0025】
圧縮コイルばねである付勢ばね43は、一端側が不図示の記録部固定フレームに、他端側がヘッドホルダ32にそれぞれ接続されている。そして付勢ばね43は、十分な付勢力によってヘッドホルダ32をカム41(カム曲面)に向けて付勢することで、ヘッドホルダ32とカム41との当接した状態を保つ。なお、本実施形態における付勢ばね43の付勢力Fbは、後述する微小移動時の最大加速度αmaxによってヘッドユニットに発生する最大荷重Fmax=M×αmax(Mはヘッドユニットの質量)よりも大きくなるようなばねが選定されている(F>Fmax)。
【0026】
次に、昇降機構60について説明する。
昇降機構60は、不図示の記録部固定フレームに螺合され、鉛直方向に延びたリードスクリュ61と、リードスクリュ61の上端部に取り付けられた第1のギヤ62と、昇降モータ63の軸63Aに取り付けられ、第1のギヤ62と嵌合している第2のギヤ64と、を有している。この昇降機構60は、昇降モータ63の駆動によってリードスクリュ61が回転すると、リードスクリュ61と螺合された記録部固定フレームが昇降する。かくして、昇降機構60は、画像記録部30を、ヘッドクリーニング時や画像記録待機時においてドラム22から退避した退避位置と、画像記録時においてドラム22に近接している画像記録位置とに移動させる。
【0027】
次に、クリーニング部70について説明する。
クリーニング部70は、ドラム22の外周面に沿うように対向して設けられている。このクリーニング部70は、画像記録部30のラインヘッド31をクリーニングするために設けられている。そのため、特に図示しないが、ラインヘッド31をクリーニングするためのワイプブレードや吸引機構等の既知のクリーニング機構を有している。
【0028】
このクリーニング部70は、待機時や画像記録時には、図1に示すように、ラインヘッド31の近傍に配置されている(退避位置)。クリーニングを行う際は、まず、昇降機構60によって画像記録部30を上昇、すなわちドラム22から上方に離間させる。これにより、画像記録部30とドラム22との間に空間が形成される。次に、クリーニング部70を不図示のクリーニング部移動機構によって前記空間に向かって移動させ、画像記録部30と対向させる(クリーニング位置)。そして、クリーニング部70が、画像記録部30(ラインヘッド31)のクリーニングを行う。クリーニングが終わると、画像記録部30及びクリーニング部70は、図1に示す退避位置に移動する。
【0029】
次に、媒体排出部80について説明する。
媒体排出部80は、ベルトユニット81と、排出トレイ82と、を有している。ベルトユニット81は、不図示の吸引ユニットと、複数のローラと、これらローラに架け渡された複数の孔が形成された無端ベルトと、により構成されている。このベルトユニット81は、画像記録後に剥離爪25によってドラム22から剥離された記録媒体3の記録面の裏面を無端ベルト上に吸引吸着して、排出トレイ82へと搬送する。排出トレイ82は、画像記録された記録媒体3を整列収納する。
【0030】
以上のように構成されたインクジェットプリンタ1による、1枚の記録媒体3への一連の画像記録動作について、図3乃至図7を参照して説明する。以下では、解像度を2倍にするために、つまりノズルピッチdの2倍の密度で画像を記録するために、1回目の画像記録の後、ヘッドユニット(ラインヘッド31、ヘッドホルダ32)をノズルピッチdの半分d/2だけ移動させて、2回目の画像記録を行う場合について説明する。
【0031】
画像記録動作が開始されると、ドラム22が図1の矢印方向(時計回り)に回転し始める。そして、予め設定されたタイミングを見計らって、記録媒体3が供給トレイ11からピックアップローラ12により1枚送り込まれる。送り込まれた記録媒体3は、供給ガイド13により案内されて、帯電ローラ21、ドラム22の外周面へと搬送される。同時に、帯電ローラ21は、正(+)放電を開始し、記録媒体3をドラム22の外周面に電気的に吸着させる。
【0032】
ドラム22の外周面に吸着された記録媒体3は、ドラム22の回転に従って搬送され、媒体端検知部23の下方を通過する。このとき、媒体端検知部23が、ドラム22の外周面上での記録媒体3の搬送方向の先端を検出する。先端が検出されると、この検出した情報、及びエンコーダ情報が、不図示の制御部に送信され、これら情報に基づいて続く画像記録部30(ラインヘッド31)による記録媒体3への画像記録開始及び終了のタイミングが決定される。そして、C、K、M、Yの各ラインヘッド31のノズル31bから、記録すべき所望のデータに基づいて各色のタイミングでインクが吐出されて、図4に示すように、記録媒体3に1回目の画像記録がなされる。このとき、ヘッド移動機構40のカム41は、図3(b)に示すように、第1の当接位置A1でヘッドホルダ32と当接している。
【0033】
そして、1回目の画像記録の後、除電器24を作動させず、故に記録媒体3がドラム22から剥離されることなくもう1回転させて、記録媒体3が再びラインヘッド位置に達する。
【0034】
このとき、本実施形態では、図5(a)に示すように、カム41を回転させる前に、当接解除部50としてのソレノイド51を伸張させることで、付勢ばね43による付勢力とは反対方向の外力をヘッドホルダ32に与える。そして、図5(b)に示すように、ヘッドホルダ32とカム41との当接状態を解除する。つまりヘッドホルダ32とカム41とを離間させる。この状態で、ヘッドホルダ32とカム41との当接位置が、カム41の第1の当接位置A1から第2の当接位置A2へと変更されるように、モータ42を駆動させてカム41を回転させる。回転中、ヘッドホルダ32とカム41とが離間されているため、これらが摩耗することはない。
【0035】
その後、図6(a)に示すように、ソレノイド51を縮ませて元の位置に戻す。すると、ヘッドホルダ32とカム41とは、付勢ばね43による付勢力によって図6(b)に示すように、カム41が図3(b)に示す状態から180°回りきった状態で、第2の当接位置A2で再び接触する。そして、ヘッドホルダ32とカム41とが第2の当接位置A2で当接した状態で、2回目の画像記録がなされる。つまり、図7に示すように、ラインヘッド31を正確にd/2だけ移動させた状態で、1回目の画像記録がなされた記録媒体3に再び画像記録がなされる。
【0036】
このように、カム41が回転する際、ヘッドホルダ32とカム41との当接状態を当接解除部50としてのソレノイド51により解除するため、ヘッドホルダ32及びカム41は摩耗しない。つまり、摩耗により生じるヘッドユニットの移動量の誤差をなくすことによって、記録される画像品質の低下を防ぐことが可能となる。
【0037】
また、カムを回転させるモータ42にかかる負荷を小さくすることができるため、モータを小型化することができ、低コスト化に寄与する。なお、ヘッドホルダ32とカム41との当接位置を第2の当接位置A2から第1の当接位置A1に切り替える時も同様にヘッドホルダ32とカム41との当接を解除する。
【0038】
少なくとも画像記録動作中は、ラインヘッド31のノズル面31a又はその近傍に、記録媒体3に印加した静電電位と同じ電位(この例では+電位)で数百ボルト〜数キロボルトのバイアス電位を印加している。このため、ドラム22に静電気で密着した記録媒体3やゴミ等は、同じ電位のノズル面31aとは反発し合い、ノズル面31aやノズル31bに付着しにくくなっている。
【0039】
画像記録の終了した記録媒体3が除電器24の下方を通過するのとほぼ同時に、除電器24はAC放電を開始し、ドラム22に電気的に密着された記録媒体3のドラム22の外周面への吸着力をなくす(除電する)。
【0040】
その直後、剥離爪25が、不図示のアクチュエータにより、除電器24による除電のタイミングと同期して駆動され、記録媒体3をドラム22の外周面から剥離して、記録媒体3の搬送方向の先端をベルトユニット81に受け渡す。ベルトユニット81は、少なくとも画像記録時は矢印方向に、ドラム22の周速よりも速い速度で移動している。よって、ベルトユニット81上に移動した記録媒体3は、不図示の吸引ユニットの負圧で無端ベルトの穴を介して、無端ベルト上に密着搬送される。そして、記録媒体3は、排出トレイ82上に排出される。かくして、1枚の記録媒体3への一連の画像記録動作が終了する。
【0041】
なお、本実施形態では、ドラム22への記録媒体3の吸着手段として帯電ローラ21で発生される静電気を利用しているが、例えば、絶縁されたドラム22の外周面に網目上の電位のかかる配線を施し、この網目に電位をかけて電荷により記録媒体3を電気的に吸着するようにしてもよい。あるいは、ドラム22の外周面に複数の貫通穴を設け、ドラム22内を負圧にして、記録媒体3をドラム22の外周面に吸着させてもよい。
【0042】
また、本実施形態では、ラインヘッド31の微小移動量をd/2、第1の当接位置A1と第2の当接位置A2との径差を前記微小移動量に等しいd/2、1回の補間記録におけるカム41の回転量を180°としているが、微小移動量、カム41の径差の割り付け、及びカム41の回転量はこれに限定されない。
【0043】
また、本実施形態では、解像度を2倍にするためにラインヘッド31をノズルピッチdの半分d/2だけ移動させているが、ラインヘッド31の移動量はこれに限定されない。つまり、ノズルピッチをd、1枚当たりの記録回数をn回とし、ラインヘッド31の1回当たりの移動量Mがd/n(nは2以上の任意の整数)となるようにカム41の形状を変更することによって、ノズルピッチdのn倍の解像度の補間記録を行うことも可能である(この場合、M<d)。また、1回当たりの移動量Mを(n+1)d /nとすることで、ノズルピッチdのn倍の解像度の補間記録を行うことも可能である(この場合、M>d)。
【0044】
(変形例1)
変形例1について、図8を参照して説明する。変形例1では、当接解除部50として、ソレノイド51に代わって電磁石52を用いる。
【0045】
本変形例では、図8(a)に示すように、カム41が設けられているのと同じ側に電磁石52を配置し、さらに、この電磁石52が発生するものと同一の磁極53をヘッドホルダ32に配置している。そして、図8(a)に示すように電磁石52に通電すると、電磁石52と磁極53との磁気反発力によってヘッドホルダ32とカム41との当接が解除され、この状態でカム41を回転させる。
【0046】
また、図8(b)に示すように、付勢ばね43が設けられているのと同じ側に、つまりカム41が設けられているのとは反対側に電磁石52を配置してもよい。なお、ヘッドホルダ32自体が磁性体であれば、磁極を配置しなくてもよい。そして、図8(b)に示すように電磁石52に通電すると、電磁石52と磁極53との磁気吸引力によってヘッドホルダ32とカム41との当接が解除され、この状態でカム41を回転させる。このように本変形例においても前述した第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0047】
(変形例2)
変形例2について、図9を参照して説明する。変形例2では、当接解除部50として、ソレノイド51に代わって圧電素子54を用いる。
【0048】
本変形例では、図9(a)に示すように、ヘッドホルダ32の、カム41が設けられているのと同じ側に、圧電素子54が設けられている。そして、図9(a)に示すように圧電素子54を駆動すると、圧電素子54が伸長もしくは収縮することよってヘッドホルダ32とカム41との当接が解除され、この状態でカム41を回転させる。
【0049】
また、図9(b)に示すように、ヘッドホルダ32の、付勢ばね43が設けられているのと同じ側に、つまりカム41が設けられているのとは反対側に、圧電素子54を設けてもよい。そして、図9(b)に示すように圧電素子54を駆動すると、圧電素子54が伸長もしくは収縮することよってヘッドホルダ32とカム41との当接が解除され、この状態でカム41を回転させる。このように本変形例においても前述した第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0050】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について、図10並びに図11を参照して説明する。以下では、第1の実施形態と同等の構成部材には同じ参照符号を付して、その説明は省略する。
【0051】
第1の実施形態及び変形例では、当接解除部50としてのソレノイド51、電磁石52、圧電素子54などによって、カム41の回転時に、このカム41とヘッドホルダ32との当接状態を解除したが、本実施形態では、このカム(以下、第1のカム45と称する)と、このカムと一体的に駆動(回転)されるさらなるカム(以下、第2のカム46と称する)とを有するカム44を設ける。本実施形態では、第2のカム46が当接解除部50としての役割を果す。
【0052】
図10は、カム44(第1のカム45及び第2のカム46)を示す斜視図である。これら第1のカム45及び第2のカム46は、モータ軸42aを介してモータ42に連結されており、モータ42を駆動させたとき、一体的に回転されるように、相対的な回転位置を固定して併設されている。これら第1のカム45と第2のカム46との両方が、ヘッドホルダ32と当接する第1の当接位置A1及び第2の当接位置A2を有しているが、第1のカム45は、これら当接位置A1、A2以外の外周面がヘッドホルダ32と当接しない形状となっている。つまり、第1のカム45は、ヘッドホルダ32がカム44の第1の当接位置A1又は第2の当接位置A2と当接するように微小位置決めを行う微調整用のカムであり、第2のカム46は、摩擦で擦り減っても構わない,粗い位置決めを行う粗調整用のカムである。
【0053】
図11(a)乃至図11(d)は、本実施形態におけるヘッドホルダ32とカム44との当接状態を時系列的に示す概略的な側面図である。1回目の画像記録時には、図11(a)に示すように、カム44(第1のカム45及び第2のカム46)は、第1の当接位置A1でヘッドホルダ32と当接している。その後、図11(b)に示すように、モータ42を駆動させることによって、カム44を回転させる。回転中、第2のカム46の外周面はヘッドホルダ32に常に当接しているが、第1のカム45の外周面はヘッドホルダ32から離間されている。つまり、微調整用の第1のカム45は、回転中、ヘッドホルダ32との摩擦により摩耗しない。
【0054】
そして、図11(c)に示すように、カム44(第1のカム45及び第2のカム46)が、第2の当接位置A2でヘッドホルダ32と当接するところで、モータ42が停止され、カム44は回転を停止する。この状態で2回目の画像記録がなされる。つまり、第1の実施形態と同様に、ヘッドユニットを正確にd/2だけ移動させた状態で、1回目の画像記録がなされた記録媒体3に再び画像記録がなされる。
【0055】
また、さらなる画像記録時には、図11(d)に示すように、モータ42を駆動させることによってカム44を再び回転させる。回転中、上記と同様に、第2のカム46の外周面はヘッドホルダ32に当接しているが、第1のカム45の外周面はヘッドホルダ32から離間されている。
【0056】
このように、本実施形態では、当接解除部50として第1の実施形態のようなソレノイド等を設ける必要がない。本実施形態では、当接解除部50として第2のカム46を設け、第2のカムの駆動源として第1のカム45を回転させる駆動源を用いることによって、新たな駆動源を設けることなく、ヘッドホルダ32と第1のカム45との当接状態を解除し、これらの間の摩耗をなくすことができる。
【0057】
また、粗調整用の第2のカム46がヘッドホルダ32と当接することにより摩耗が生じても、第1のカム45がヘッドホルダ32と当接する位置の精度には影響を与えないので、高品質な画像記録を維持することができる。
【0058】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内でさまざまな改良並びに変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…インクジェットプリンタ、2…プリンタ本体フレーム、3…記録媒体、10…媒体供給部、11…供給トレイ、12…ピックアップローラ、13…供給ガイド、20…搬送部、21…帯電ローラ、22…ドラム、23…媒体端検知部、24…除電器、25…剥離爪、30…記録部、31…ラインヘッド、31a…ノズル面、31b…ノズル、32…ヘッドホルダ、33…平行板ばね、40…ヘッド移動機構、41…カム、42…ステッピングモータ、43…付勢ばね、44…カム、45…第1のカム、46…第2のカム、50…当接解除部、51…ソレノイド、52…電磁石、53…磁極、54…圧電素子、60…昇降機構、61…リードスクリュ、62…第1のギヤ、63…昇降モータ、64…第2のギヤ、70…クリーニング部、80…媒体排出部、81…ベルトユニット、82…媒体排出トレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルが配列されたラインヘッドと、前記ラインヘッドを保持するヘッドホルダと、を有するヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを前記配列の方向となる主走査方向に移動させるヘッド移動機構と、を具備するインクジェットプリンタであって、
前記ヘッド移動機構は、
異なる径部に位置された少なくとも2つの当接位置を有し、該当接位置で前記ヘッドホルダに当接するカムと、
前記ヘッドホルダを前記カムに向かって付勢する付勢部材と、
前記カムを回転させて、前記当接位置で停止させるモータと、を有し、さらに、
前記モータによる前記カムの回転時に、該カムと前記ヘッドホルダとを離間させる当接解除部と、
を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記当接解除部が前記カムと前記ヘッドホルダを離間させるタイミングは、前記カムを回転させる前であることを特徴とする請求項1のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記当接解除部は、前記ヘッドホルダを介して前記付勢部材を変形させることにより、前記カムと前記ヘッドホルダとを離間させることを特徴とする請求項2のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記当接解除部は、前記付勢ばねを直接変形させることにより、前記カムと前記ヘッドホルダとを離間させることを特徴とする請求項2のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記当接解除部は、前記カムと一体的に回転することにより、前記カムと前記ヘッドホルダとを離間させることを特徴とする請求項1のインクジェットプリンタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate