説明

ヘッド素子検査機

【課題】カンチレバーを交換する場合、調整冶具を使用せずにかつ短時間でカンチレバーの位置を調整できるヘッド素子検査機を提供すること。
【解決手段】ヘッド素子検査機1は、カンチレバー5を保持するカンチレバーホルダ4と、カンチレバーホルダ4を取り付けるホルダベース3と、ホルダベース3をZ方向に駆動するZ方向駆動軸22と、ヘッド素子を保持してXY方向に駆動するワークテーブル21とを備える。カンチレバーホルダ4とホルダベース3には、カンチレバー5の位置をX方向とY方向に調整する調整機構(調整ネジ44、偏芯ピン34)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッド素子の磁気的な実効トラック幅等を検査するヘッド素子検査機に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜磁気ヘッドの発生磁界形状を測定し磁気的な実効トラック幅等を検査するために、原子サイズレベルの高分解能を有する磁気力顕微鏡(MFM:Magnetic Force Microscope)などのヘッド素子検査機が用いられる。磁気力顕微鏡では磁界検出用のカンチレバーを有し、これをヘッド素子上でスキャン移動することで磁界形状を測定する。ヘッド素子検査機では検査を開始する際、カンチレバーを基準位置に位置決めする必要がある。
【0003】
これに関連する技術として特許文献1には、より簡単にかつ短時間にカンチレバーの位置決め作業を行うことを目的に、調整治具を用いてホルダベースに対してカンチレバーを保持するホルダスライダを基準位置に移動させた後に、レバーホルダ(ホルダベースとホルダスライダ)を走査型プローブ顕微鏡のレバーホルダ保持部に装着する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−20534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される従来技術では、カンチレバーを交換する場合、調整冶具を用いてカンチレバーを基準位置に位置決めしてカンチレバーホルダ(レバーホルダ)にて保持し、そのカンチレバーホルダを検査機に装着するものである。しかし、この方法では別途調整冶具の準備、調整作業スペースの確保が必要であり、冶具を複数個使用する場合は、それぞれの冶具にて調整した位置が異ならないように冶具間の合わせ込みが必要である。また、カンチレバーが位置決めされたカンチレバーホルダを検査機に装着する際に位置ズレが発生する恐れもあり、その場合には再度の位置調整が必要となり調整時間が増大する。
【0006】
本発明の目的は、カンチレバーを交換する場合、調整冶具を使用せずにかつ短時間でカンチレバーの位置を調整できるヘッド素子検査機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、カンチレバーによりヘッド素子の特性を検査するヘッド素子検査機において、カンチレバーを保持するカンチレバーホルダと、カンチレバーホルダを取り付けるホルダベースと、ホルダベースをZ方向に駆動するZ方向駆動軸と、ヘッド素子を保持してXY方向に駆動するワークテーブルとを備え、カンチレバーホルダとホルダベースには、カンチレバーの位置をX方向とY方向に調整する調整機構を有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カンチレバーをヘッド素子検査機へ取り付けた後に位置調整を行うので、調整冶具や調整作業スペースが不要となる。また、取付け誤差や、部品の個体差に関係なく、一度の調整で位置決めが完了するため、カンチレバー交換時間を大幅に短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ヘッド検査システムの一実施例を示す外観図。
【図2】ヘッド素子検査機1の機構部2の構成を示す図。
【図3】ホルダベースユニット3の詳細図。
【図4】カンチレバーホルダ4の詳細図。
【図5】カンチレバー5の保持方法を示す拡大図。
【図6】カンチレバーホルダ4の取付方法を示す拡大図。
【図7】モニター14を用いたカンチレバー5の位置調整方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は、ヘッド素子検査機を備えたヘッド検査システムの一実施例を示す外観図である。ヘッド素子検査機では、薄膜磁気ヘッド製造過程においてウエハから切り出されたローバー状態の薄膜磁気ヘッドに含まれる記録ヘッド素子について、磁気力顕微鏡(MFM)にて発生磁界形状を測定し、磁気的な実効トラック幅の検査を非破壊で実施するものである。この検査では、各ヘッド素子のボンディングパッドより記録信号(励磁用信号)を入力し、磁気ヘッドの浮上高さ相当分の位置でカンチレバー(磁性探針)をスキャン移動させ、ヘッド素子から発生される磁界の形状を測定するものである。
【0011】
ヘッド素子検査機1の構成は、磁気力顕微鏡の機構部2が収納されているフレームA(11a)と、機構部2のドライバ、測定・検査の制御を行う制御盤、それらに必要な電源などが収納されているフレームB(11b)を備える。さらに、ヘッド素子検査機1を制御、操作するための制御PC(12)と装置電源操作部13、測定結果を表示するモニター14を備える。
【0012】
図2は、ヘッド素子検査機1の機構部2の構成を示す図である。以下、装置のX,Y,Z軸方向を図に示すように定義して説明する。
ワークテーブル21は、ワーク(ローバー状態の薄膜磁気ヘッド)6を吸着保持し、ワーク6をX,Y方向に駆動する2軸方向の駆動軸(粗動軸)と微小駆動させるためのピエゾ素子を有する。カンチレバーZ方向駆動軸(粗動軸)22は、カンチレバー5をZ方向に駆動し、ワーク6から所定高さ(磁気ヘッドの浮上高さ相当分の位置)へ移動させ、また非検査時には退避位置へ移動させる。カンチレバーZ方向駆動軸22の先端部22aにはホルダベースユニット3を有し、ホルダベースユニット3には後述するカンチレバーホルダ4を介してカンチレバー5を取り付ける。また、先端部22aには、カンチレバー5をZ方向に微小移動させるためのピエゾ素子が実装され、ピエゾ素子によって駆動する重量を最小限にしている。
【0013】
カメラ23はワーク6の表面形状を撮影し、モニター14に表示する。撮影画像はワークの位置アライメントに用いられ、またカンチレバー5の交換時の位置調整に用いられる。カメラZ方向駆動軸24は、カメラ23のピントを調整する。給電ユニット25は、ワーク6のボンディングパッドより記録信号(励磁用信号)を入力する。
【0014】
作業者は、ワーク複数本が入った収納ケースをヘッド素子検査機1の所定位置へセットする。制御PC12を操作すると、図示しない搬送ロボットが収納ケースからワーク複数本を1本ずつ取出し、ワークテーブル21へ搬送し、検査・測定が終了したワークを収納ケースへ戻す。
【0015】
以下、カンチレバー5周辺の取付機構について詳細に説明する。
図3は、ホルダベースユニット3の詳細図を示し、(a)はX方向から見た図、(b)はZ方向から見た図である。ホルダベースユニット3はカンチレバーZ方向駆動軸22の先端部22aの下側(Z方向)に配置され、カンチレバーホルダ4を取り付ける部品である。なお、図3ではカンチレバーホルダ4を除いて示している。
【0016】
ホルダベースユニット3は、ホルダベース(基準)31aとホルダベース(押え)31bとホルダベース(底面)31cが連結され、凹部を有する一体構造となっている。カンチレバーホルダ4はこの凹部に挿入され、ホルダベース(底面)31cにはカンチレバーホルダ4を吸着保持するための吸着マグネット32を有する。なお、カンチレバーホルダ4と接触するホルダベース(底面)31cの接触面は、XY面に平行ではなく所定角だけZ方向に傾斜させている。これは、カンチレバーホルダ4(カンチレバー5)を所定角だけ傾けて取り付けるためである。
【0017】
ホルダベース(底面)31cに実装されている基準ピン33は、カンチレバーホルダ4を保持する時のX方向の基準位置を与える。ホルダベース(押え)31bに実装されているプランジャ35は、カンチレバーホルダ4をホルダベース(基準)31aへ押し付けることで、カンチレバーホルダ4のθ方向の位置決めを行う。プランジャ35は、板バネ等の弾性材を使用しても良い。ホルダベース(基準)31aに実装されている偏芯ピン34は偏芯構造になっており、これを回すことで連結されているホルダベース31a,31b,31cをY方向に移動させ、カンチレバーホルダ4のY方向位置決めを行う。
【0018】
図4は、カンチレバーホルダ4の詳細図を示し、(a)はZ方向から見た図、(b)はY方向から見た図、(c)はX方向から見た図である。
カンチレバーホルダ4は、ホルダ本体41のホルダ位置決め部41aにカンチレバー5を保持する。カンチレバー5を高精度に保持するため、カンチレバー5をZ方向に押さえるための押えバネ42、カンチレバー取付け時のX方向の位置決めを行う基準ピン43、及びホルダベースユニット3への取付け後にX方向の位置調整を行う調整ネジ44を有している。ホルダ本体41のホルダ基準面41bとホルダ接触面41cは、それぞれホルダベースユニット3のホルダベース(基準)31aとホルダベース(底面)31cに取り付けられる。
【0019】
図5は、カンチレバー5の保持方法を示す拡大図で、(a)はZ方向から見た図、(b)はX方向から見た図である。
カンチレバー5は、カンチレバーホルダ4のホルダ位置決め部41aと押えバネ42に挟まれて保持される。そのとき、カンチレバー5が接触するホルダ位置決め部41aと押えバネ42の先端部42aは、それぞれテーパ形状となっている。押えバネ先端部42aによりカンチレバー5を押えることで、カンチレバー5の浮き上がりを防止するとともに、カンチレバー5をホルダ位置決め部41aの方向へ押し付ける。一方ホルダ位置決め部41aは、押し付けられたカンチレバー5のθ方向位置決めを行うと同時に、テーパ形状によりカンチレバー5の浮き上がりを防止している。これらにより、カンチレバー5はθ方向に位置決めされた状態でカンチレバーホルダ4に保持される。
【0020】
またカンチレバー5のX方向位置決めは、カンチレバー5を基準ピン43に当たるまで押込むことによって行われる。
このようにカンチレバー5との接触部をテーパ形状とすることで、カンチレバー5の個体差により交換するカンチレバー5の厚みが多少変わっても、調整や部品交換をすることなく同じ効果を発揮することができる。
【0021】
図6は、カンチレバーホルダ4の取付方法を示す拡大図で、Y方向から見た図である。
カンチレバー5を保持したカンチレバーホルダ4は、そのホルダ接触面41cをホルダベースユニット3の吸着マグネット32に引付けさせながら、ホルダベース31cに沿って矢印70の方向に挿入される。挿入後のカンチレバーホルダ4は、吸着マグネット32による引付け力とプランジャ35による押し付け力によって保持される。そのときカンチレバーホルダ4は、図3に示したプランジャ35によりホルダベース(基準)31aへ押し付けられるので、θ方向の位置決めがなされる。また、カンチレバーホルダ4の挿入時に、調整ネジ44の先端44aがホルダベースユニット3の基準ピン33に当たるまで挿入させることで、カンチレバーホルダ4のX方向の位置決めもなされる。
【0022】
次に、カンチレバーホルダ4をホルダベースユニット3に取付けた後、カメラ23でカンチレバー5を撮影し、モニター14の画像を用いてカンチレバー5のX,Y位置の調整を行う。
【0023】
図7は、モニター14を用いたカンチレバー5の位置調整方法を示す図である。モニター画面には、位置合わせの基準となる十字状のマーカ80を前もって表示させ、これにカメラ23で撮影されたカンチレバー5の画像を表示する。そして、カンチレバー5の先端5aがマーカ80の交点位置80aに来るように画面を見ながら調整する。
【0024】
調整では、ホルダベースユニット3の偏芯ピン34を回すことにより、カンチレバー5はY方向に移動する。また、カンチレバーホルダ4の調整ネジ44を回すことにより、カンチレバー5はX方向に移動する。これにより、カンチレバー5の個体差や交換による取付け誤差による位置ズレを修正することができる。なお、マーカ80は十字マーク以外でも良く、また、カンチレバー5の位置合わせ部は先端以外でも良い。
【0025】
本実施によれば、ヘッド素子検査機1のホルダベースユニット3及びカンチレバーホルダ4に調整機構(偏芯ピン34と調整ネジ44)を設けることにより、交換するカンチレバー5を簡易的に位置決めして取り付けた後、調整機構によりカンチレバー5の最終的な位置調整が可能となる。その結果、従来のようにカンチレバーをヘッド素子検査機に取り付ける前に基準位置へ調整する必要がなくなり、そのための調整冶具及び調整作業スペースが不要となる。本実施例で追加した調整機構はいずれも簡単な構造であり、これによりヘッド素子検査機1が大型化することはない。
【0026】
また従来方法では、調整冶具を使用してカンチレバーの位置を調整しても、検査機へ取り付ける時に位置ズレが発生し再度調整が必要となる場合があったが、本実施例によれば再度調整する事態は発生しない。すなわち、取付け誤差や部品の個体差に影響されずに一度の調整のみで位置決めが完了するので、調整時間を大幅に短縮することができる。
【0027】
上記実施例では、ヘッド素子検査機の機能として磁気力顕微鏡(MFM)による磁気ヘッドの実効トラック幅の検査を例に挙げたが、本発明はこれに限定せず、走査型トンネル顕微鏡(STM)や原子間力顕微鏡(AFM)などのようにカンチレバーを用いてヘッド素子の特性を原子サイズのレベルで測定する走査型プローブ顕微鏡(SPM)にも同様に適用できる。
【符号の説明】
【0028】
1…ヘッド素子検査機、
11a…フレームA、
11b…フレームB、
12…制御PC、
13…装置電源操作部、
14…モニター、
2…機構部、
21…ワークテーブル、
22…カンチレバーZ方向駆動軸、
23…カメラ、
24…カメラZ方向駆動軸、
25…給電ユニット、
3…ホルダベースユニット、
31a…ホルダベース(基準)、
31b…ホルダベース(押え)、
31c…ホルダベース(底面)、
32…吸着マグネット、
33…基準ピン、
34…偏芯ピン、
35…プランジャ、
4…カンチレバーホルダ、
41a…ホルダ位置決め部、
41b…ホルダ基準面、
41c…ホルダ接触面、
42…押えバネ、
43…基準ピン、
44…調整ネジ、
5…カンチレバー、
6…ワーク、
70…挿入方向、
80…マーカ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンチレバーによりヘッド素子の特性を検査するヘッド素子検査機において、
前記カンチレバーを保持するカンチレバーホルダと、
該カンチレバーホルダを取り付けるホルダベースと、
該ホルダベースをZ方向に駆動するZ方向駆動軸と、
前記ヘッド素子を保持してXY方向に駆動するワークテーブルとを備え、
前記カンチレバーホルダと前記ホルダベースには、前記カンチレバーの位置をX方向とY方向に調整する調整機構を有していることを特徴とするヘッド素子検査機。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッド素子検査機において、
前記カンチレバーの調整機構として、
前記カンチレバーホルダには、該カンチレバーホルダを前記ホルダベースに対してX方向に移動可能な調整ネジを、
前記ホルダベースには、前記カンチレバーホルダを該ホルダベースに対してY方向に移動可能な偏芯ピンを有することを特徴とするヘッド素子検査機。
【請求項3】
請求項1または2に記載のヘッド素子検査機において、
前記カンチレバーホルダは、前記カンチレバーを基準ピンと押えバネにて基準位置に保持するとともに、
前記ホルダベースは、前記カンチレバーホルダを吸着マグネットとプランジャにて基準位置に取り付けることを特徴とするヘッド素子検査機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−113727(P2013−113727A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260439(P2011−260439)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)