説明

ヘッドIC、リード回路及び媒体記憶装置

【課題】ヘッドの読み取り信号の振幅レベルを調整するヘッドICにおいて、ヘッドの出力特性のばらつきを調整して、リードチャネルのAGCの入力ダイナミックレンジに収める。
【解決手段】リードチャネル(102)に接続されたヘッドIC(103)に、AGCアンプ(10)を設け、このAGCアンプ(10)を、フィードバックループ制御型の第1のアンプ(12)とフィードフォワード制御型の第2のアンプ(40)で構成する。これにより、目標値に対する制御の精度が高く、また応答速度が速いAGCアンプを構成できる。更に、AGCの引き込み時間の増大防止、安定性の保証、AGCの誤判定防止を図る事が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドの読み取り信号の出力レベルを調整するヘッドIC、リード回路及び媒体記憶装置に関し、特に、出力レベルが異なるヘッドの読み取り信号を所定のレベルに調整するヘッドIC、リード回路及び媒体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体記憶装置、例えば、磁気ディスク装置においては、ヘッドが媒体からデータを読み出す。近年のトラック密度の増加に伴い、媒体の磁束の検出感度が高いヘッドが提供されており、例えば、MR(Magnetic Resistance)素子が、リードヘッドに使用されている。更に、より検出感度の高い素子として、トンネル効果を利用したTuMR(又はTMR)素子の適用が使用されつつある。
【0003】
このようなリード素子個々の出力レベルは一定でなく、且つ温度変動による素子の特性変化や浮上量の変動により、出力レベルは変化する。このため、データを復調する前に、リード素子の出力レベルを調整する回路が必要となる。
【0004】
図9は、従来の媒体記憶装置の構成図、図10は、従来のリード回路のブロック図である。図9に示すように、媒体(磁気ディスク)210のデータを読み取る磁気ヘッド202a,202bは、アクチュエータ200の先端に設けられる。
【0005】
アクチュエータ200は、回転軸204を中心に回転し、磁気ヘッド202a,202bを磁気ディスク210の所望のトラックに位置付ける。磁気ヘッド202a,202bは、アクチュエータ200に設けられたヘッドIC220に接続され、ヘッドIC220は、アクチュエータ200の外の制御回路230に接続される。
【0006】
磁気ヘッド202a,202bから制御回路230までの距離が長いため、磁気ヘッド202a,202bから又はへの信号レベルが変化したり、ノイズが混入する。これを防止するため、磁気ヘッド202a,202bと制御回路230との間に、ヘッドIC220を設け、信号レベルの調整を行うものである。このヘッドIC220は、磁気ヘッドと制御回路との間の多数の信号線を纏め、配線を容易にする目的もある。例えば、制御回路230とヘッドIC220間は、シリアルインターフェース(SIF)で接続し、ヘッドIC220と各磁気ヘッド202a,202b間は、個別の信号線で接続する。
【0007】
図10は、図9のリード系回路の詳細図であり、磁気ヘッド202a(又は202b)のリード素子202−1に接続するヘッドIC220には、可変ゲインアンプ(プリアンプ)220−1が設けられており、設定されたゲイン値で、リード素子202の出力を増幅する。可変ゲインアンプ220−1は、ゲイン調整範囲は、4段階程度であり、装置出荷時に、ヘッド毎に調整して、ヘッド毎に、設定される。
【0008】
一方、ヘッドIC220に接続される制御回路230には、リードチャネル230−1が設けられ、リードチャネル230−1に設けられたAGC(Automatic Gain Control)アンプ230−2が、ヘッドIC220の可変ゲインアンプ220−1の出力を受ける。
【0009】
AGCアンプ230−2は、差動増幅器230−3と、AGC回路230−4で構成される。AGC回路230−4は、差動増幅器230−3の出力値と基準の出力値とを比較して、比較結果をフィードバックして、差動増幅器230−3のゲイン値を調整し、差動増幅器230−3の出力レベルを基準レベルに調整する(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
このAGC回路230−4は、磁気ディスク210のトラックの1セクタ内の変化を追従するような高速のフィードバック係数(周波数、ゲイン変更量)を設定し、1セクタ内の信号レベルを均一化する。
【特許文献1】特開平10−021647号公報(図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術では、このような素子自体の特性や浮上量変動等の環境条件の変動による出力レベルの変動は、主に、リードチャネルのAGCアンプにより、調整していた。
【0012】
しかしながら、近年の記録密度の向上により、リード素子もより検出感度の高いTuMR素子が使用されつつある。この検出感度の高いリード素子は、検出感度が、MR素子の10倍程度とされているが、個々のリード素子の信号出力レベルのばらつきは、これに応じて大きい。
【0013】
又、検出感度が高いため、温度変動や浮上量の変動による信号レベルの変動も大きい。このような大きな信号レベルの変動があると、リードチャネルのAGCアンプで調整するのが困難となるおそれがある。
【0014】
又、記録密度の向上により、ヘッドの読み取り信号の周波数が高くなり、リードチャネルのAGCアンプも高速化が要求され、AGCの入力ダイナミックレンジが狭くなっている。このため、レベル変動をリードチャネルのAGCアンプの変更で、調整することが、困難となる。
【0015】
このため、可変ゲインアンプの設定値を調整することも考えられるが、可変ゲインアンプの設定値は、4段階程度のため、調整が難しい。又、可変ゲインアンプの設定値の段数を増加して、調整することも考えられるが、このようにすると、初期設定時に、ゲイン設定段数が、大幅に増加し、ディスクのシステムエリアが読める程度まで、ゲインを調整するための時間がかかる。
【0016】
更に、このように多段階にすると、リードチャネルのAGCアンプのダイナミックレンジとの関係も考慮する必要があり、より調整時間が長くなり、且つレベル変動の調整に制限がある。
【0017】
従って、本発明の目的は、ヘッド出力レベルのばらつきが大きくても、ヘッドの出力変動を自動的に調整するためのヘッドIC、リード回路及び媒体記憶装置を提供することにある。
【0018】
又、本発明の他の目的は、リードチャネルのAGC回路の入力ダイナミックレンジが狭くなっても、ヘッドの出力変動を自動的に調整するためのヘッドIC、リード回路及び媒体記憶装置を提供することにある。
【0019】
更に、本発明の他の目的は、ヘッドの出力変動を調整する時間を短縮し、且つ安定に、ヘッドの出力変動を自動調整するためのヘッドIC、リード回路及び媒体記憶装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的を達成するため、本発明のヘッドICは、ヘッドの読み取り信号の振幅レベルを調整して、AGCアンプを有するリードチャネルに出力するヘッドICにおいて、前記読み取り信号を設定されたゲイン値で増幅する第1の差動増幅器と、前記第1の差動増幅器の出力を設定された第2のゲイン値で増幅する第2の差動増幅器と、前記第1の差動増幅器の出力振幅レベルと基準レベルとの差を取り、所定の引き込み特性に応じて、前記第1の差動増幅器のゲイン値をフィードバックループ制御で自動調整し、且つ前記第1の差動増幅器のゲイン値の自動調整終了後、前記第1の差動増幅器の出力振幅レベルと第2の基準レベルとの差を取り、所定の引き込み特性に応じて、前記第2の差動増幅器のゲイン値をフィードフォワード制御で自動調整するAGC回路とを有する。
【0021】
又、本発明のリード回路は、ヘッドの読み取り信号の振幅レベルを調整するリード回路において、前記ヘッドからの読み取り信号の振幅レベルを調整するヘッドICと、前記ヘッドICに接続され、AGCアンプを有するリードチャネルとを有し、前記ヘッドICは、前記読み取り信号を設定されたゲイン値で増幅する第1の差動増幅器と、前記第1の差動増幅器の出力を設定された第2のゲイン値で増幅する第2の差動増幅器と、前記第1の差動増幅器の出力振幅レベルと基準レベルとの差を取り、所定の引き込み特性に応じて、前記第1の差動増幅器のゲイン値をフィードバックループ制御で自動調整し、且つ前記第1の差動増幅器のゲイン値の自動調整終了後、前記第1の差動増幅器の出力振幅レベルと第2の基準レベルとの差を取り、所定の引き込み特性に応じて、前記第2の差動増幅器のゲイン値をフィードフォワード制御で自動調整するAGC回路とを有する。
【0022】
又、本発明の媒体記憶装置は、媒体の情報を読み取るヘッドと、前記ヘッドからの読み取り信号の振幅レベルを調整するヘッドICと、前記ヘッドICに接続され、AGCアンプを有するリードチャネルとを有し、前記ヘッドICは、前記読み取り信号を設定されたゲイン値で増幅する第1の差動増幅器と、前記第1の差動増幅器の出力を設定された第2のゲイン値で増幅する第2の差動増幅器と、前記第1の差動増幅器の出力振幅レベルと基準レベルとの差を取り、所定の引き込み特性に応じて、前記第1の差動増幅器のゲイン値をフィードバックループ制御で自動調整し、且つ前記第1の差動増幅器のゲイン値の自動調整終了後、前記第1の差動増幅器の出力振幅レベルと第2の基準レベルとの差を取り、所定の引き込み特性に応じて、前記第2の差動増幅器のゲイン値をフィードフォワード制御で自動調整するAGC回路とを有する。
【0023】
更に、本発明では、好ましくは、前記AGC回路は、前記第1の差動増幅器のゲイン値を、前記第2の差動増幅器の入力振幅レベル範囲のセンター値を目標に調整し、前記第2の差動増幅器のゲイン値を、前記リードチャネルの入力振幅レベル範囲のセンター値を目標に調整する。
【0024】
更に、本発明では、好ましくは、外部から設定された前記第1の差動増幅器のゲイン値と前記第2の増幅器のゲイン値を受信するインタフェース部と、前記AGC回路のゲイン値と、前記インタフェース部からのゲイン値を選択的に、前記第1及び第2の差動増幅器に設定するための第1及び第2のスイッチとを更に有する。
【0025】
更に、本発明では、好ましくは、前記第1及び第2の差動増幅器は、前記AGCイネーブル信号がオンの時に、前記AGC回路により、AGCアンプとして動作し、前記AGCイネーブル信号がオフの時に、前記AGC回路で自動調整されたゲイン値により固定アンプとして、動作する。
【0026】
更に、本発明では、好ましくは、前記第1のスイッチからのゲイン値をラッチし、且つ前記第1の差動増幅器に前記ゲイン値を設定するための第1のラッチ回路と、前記第2のスイッチからのゲイン値をラッチし、且つ前記第2の差動増幅器に前記ゲイン値を設定するための第2のラッチ回路とを更に有する。
【0027】
更に、本発明では、好ましくは、前記インタフェース部は、前記AGCイネーブル信号により、前記AGC回路を動作させて得たゲイン値を、前記第1及び第2のラッチ回路から初期値として、外部に読み出し、且つ前記外部から前記読み出した初期値を受信して、前記第1及び第2のスイッチに出力する。
【0028】
更に、本発明では、好ましくは、ヘッド選択信号に応じて、前記第1の差動増幅器に、複数のヘッドのいずれかを接続するヘッド切り替え部を設け、前記インタフェース部は、前記選択されたヘッドの前記ゲイン値を受信し、前記第1及び第2の差動増幅器に前記選択されたヘッドに対応するゲイン値を設定する。
【発明の効果】
【0029】
ヘッドICに、AGCアンプを設けたので、ヘッドIC内で、ヘッドからの読み取り信号の振幅レベルが自動調整され、リードチャネルのAGCアンプの入力ダイナミックレンジに入る信号レベル調整ができる。又、このAGCアンプをフィードバックループ制御型の第1のアンプとフィードフォワード制御型の第2のアンプで構成することにより、目標値に対する制御の精度が高く、また応答速度が速いAGCアンプを構成できる。更に、AGCの引き込み時間の増大防止、安定性の保証、AGCの誤判定防止を図る事が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を、媒体記憶装置、リード回路の第1の実施の形態、リード回路の動作、リード回路の第2の実施の形態、他の実施の形態の順で説明するが、本発明は、この実施の形態に限られない。
【0031】
(媒体記憶装置)
図1は、本発明の一実施の形態の媒体記憶装置の構成図である。図1は、媒体記憶装置として、磁気ディスク装置を示す。図1に示すように、磁気記憶媒体である磁気ディスク117が、スピンドルモータの回転軸118に設けられている。スピンドルモータは、磁気ディスク117を回転する。アクチュエータ(VCM)119は、先端に磁気ヘッド126を備え、磁気ヘッド126を磁気ディスク117の半径方向に移動する。
【0032】
アクチュエータ119は、回転軸を中心に回転するボイスコイルモータ(VCM)で構成される。磁気ディスク装置に、2枚の磁気ディスク117が搭載される場合には、各磁気ディスクの面をリード/ライトする4つの磁気ヘッド126が、同一のアクチュエータ119で同時に駆動される。
【0033】
磁気ヘッド126は、リード素子と、ライト素子とからなる。例えば、磁気ヘッド126は、スライダに、トンネル効果磁気抵抗(TuMR)素子を含むリード素子を積層し、その上にライトコイルを含むライト素子を積層して、構成される。
【0034】
ヘッドIC103は、図9で示したように、アクチュエータ119の側面に設けられ、図2以下で後述するように、AGCアンプを含むリード系回路と、ライト系回路からなる。そして、ヘッドIC103は、リードモードでは、磁気ヘッド126のリード素子からの読み取り信号を増幅して、出力し、ライトモードでは、磁気ヘッド126のライト素子にライト駆動電流を流す。
【0035】
リードチャネル102は、リード系回路と、ライト系回路とを有し、リード系回路は、AGCアンプ107と、信号復調回路106とを備える。マイクロコントローラ(MCU)104は、ハードディスクコントローラ(HDC)104aと、マイクロプロセッサ(MPU)104bとを備える。
【0036】
ハードディスクコントローラ(HDC)104aは、コマンドの解析を行い、サーボ信号のセクタ番号を基準にして,1周内の位置を判断し,データの記録・再生を制御し、且つリードデータやライトデータを一時格納する。MPU104bは、各部の制御を行うとともに、信号復調回路106からのサーボ位置信号から現在位置を検出(復調)し、検出した現在位置と目標位置との誤差に従い、アクチュエータ119のVCM駆動指令値を演算する。
【0037】
サーボ・コンボ回路105は、VCM駆動指令値で、アクチュエータ119を駆動し(駆動電流を流し)、又、スピンドルモータを駆動する。インターフェイス回路101は、USB(Universal Serial Bus),SATA(Serial AT Attached)やSCSI(Small Component System Interface)等のインターフェイスで、ホストと通信する。
【0038】
磁気ディスク117には、外周から内周に渡り、各トラックにサーボ信号(位置信号)が、円周方向に等間隔に配置される。又、各トラックは、複数のセクタで構成され、セクタ毎に、サーボ信号が記録される。サーボ信号は,サーボマークと、トラック番号と、インデックスと、オフセット情報(サーボバースト)PosA,PosB,PosC,PosDとからなる。
【0039】
この位置信号をヘッド126で読み取り、トラック番号とオフセット情報PosA,PosB,PosC,PosDを使い,磁気ヘッドの半径方向の位置を検出する。さらに、インデックス信号Indexを元にして,磁気ヘッドの円周方向の位置を把握する。
【0040】
このような,位置信号やデータを読み取るため、磁気ヘッド126のリード素子の読み取り出力を、ヘッドIC103でレベル調整し、且つリードチャネル102のAGC回路107で所定レベルに調整する。
【0041】
(リード回路の第1の実施の形態)
図2は、本発明のリード回路の第1の実施の形態の回路図、図3は、図2の構成の比較・ゲイン決定回路の回路図である。図2において、図1で示したものと同一のものは、同一の記号で示してあり、ヘッドIC103には、4つ(4チャネル)のリード素子(TuMR素子)126−0〜126−3が接続される。
【0042】
ヘッドIC103は、各々リード素子126−0〜126−3の出力を増幅する第1の差動増幅器50−0〜50−3と、ヘッド選択信号(Head Select)により、いずれかの差動増幅器50−0〜50−3の出力を選択するヘッド選択回路(マルチプレクサ)52とを有する。
【0043】
又、ヘッドIC103は、AGCアンプ部10を有する。このAGCアンプ部10は、第1の差動増幅器50−0〜50−3の出力電圧が、マルチプレクサ52から入力される第2の差動増幅器12と、第2の差動増幅器12の出力を増幅する第3の差動増幅器40とを有する。
【0044】
又、AGCアンプ部10は、第2の差動増幅器12のマイナス側出力電圧と、第2の差動増幅器12のプラス側出力電圧との差をとり、差動信号の振幅を抽出する差動振幅変換器22と、抽出した振幅と基準値を比較し、ゲインを決定する比較・ゲイン決定回路14(図3で後述する)と、AGC動作を制御するAGCシーケンサ34とを有する。
【0045】
更に、AGCアンプ部10は、第2の増幅器12のゲイン値をラッチする第1のゲインラッチ回路38と、第3の増幅器40のゲイン値をラッチする第2のゲインラッチ回路48とを有する。
【0046】
更に、AGCアンプ部10は、AGCシーケンサ34の指示により、比較・ゲイン決定回路14の出力を、第2のスイッチ30又は第3のスイッチ46のいずれかに切り替える第1のスイッチ42と、第1のゲインラッチ回路38を、第1のスイッチ42又は後述するレジスタ36とのいずれかに接続するための第2のスイッチ30と、第2のゲインラッチ回路48を、第1のスイッチ42又は後述するレジスタ36とのいずれかに接続するための第3のスイッチ46とを有する。
【0047】
ヘッドIC103は、シリアルデータイネーブル信号SDEN,シリアルクロックSCLKを、MCU104から受け取り、また、シリアルデータSDATAを、MCU104と送信及び受信するシリアルインタフェース部32と、シリアルインタフェース部32と内部とのデータの受け渡しのためのレジスタ36とを有する。又、ヘッドIC103は、第3の増幅器40の出力を、リードチャネル102のAGCアンプ107に出力するためのバッファアンプ54を有する。
【0048】
図3に示すように、比較・ゲイン決定回路14は、ローパスフィルタ(Low Pass Filter)15と、サンプル&ホールド回路16と、コンパレータ17−0〜17−3と、デコーダー18と、比較値設定回路19とを有し、AGCシーケンサ34により回路のオン/オフ、動作タイミング等が制御される。
【0049】
ローパスフィルタ15は、差動振幅変換器22からの差動振幅信号の高周波成分をカットし、ノイズによるAGCの誤動作を防止する。サンプル&ホールド回路16は、デコーダー18で差動増幅器のゲイン値が決定するまで、ローパスフィルタ15からの差動振幅信号のピーク値を保持する。比較値設定回路19は、後述する第2の増幅器12の比較値Aと、第3の増幅器40の比較値Bとを格納し、第2の増幅器12のAGC調整時は、比較値Aが、第3の増幅器40のAGC調整時は、比較値Bが、選択される。
【0050】
コンパレータ17−0〜17−3は、サンプル&ホールド回路16からの差動振幅信号のピーク値と、比較値設定回路19からの比較値とを比較し、ピーク値が、比較値以上であれば、ロジック信号1を、ピーク値が比較値より小さい場合には、ロジック信号0を出力する。
【0051】
デコーダー18は、コンパレータ17−0〜17−3からのロジック信号を受け取り、ロジック信号の組み合わせに従って、第2又は第3の差動増幅器12,40のゲイン値を決定し、スイッチ42に送る。
【0052】
このように、AGCアンプ部10は、直列接続された2つの差動増幅器12,40で構成され、且つ前段の差動増幅器12が、フィードバックループ制御形のAGCアンプを構成し、後段の差動増幅器40が、フィードフォワード制御型のAGCアンプを構成する。この動作は、以下に説明する。
【0053】
(リード回路の動作)
図4は、図2のAGCシーケンサの動作説明図、図5は、図2のヘッドICの第2の増幅器のAGC動作の説明図、図6は、図2のヘッドICの第3の増幅器のAGC動作の説明図である。
【0054】
図4に示すように、ヘッドIC103は、リード/ライト端子からリード信号を受けると、リードモードとなり、第1の増幅器50−0〜50−3、マルチプレクサ52、第2の増幅器12、第3の増幅器40、出力バッファアンプ54とを、イネーブルとして、リードパスを形成する。同時に、AGCシーケンサ34をイネーブルにする。
【0055】
シリアルインタフェース部32は、MCU104からヘッド選択信号(選択ヘッド番号を含む)を受け、レジスタ36のヘッド選択データ域にセットする。これにより、レジスタ36からマルチプレクサ52にヘッド選択信号が与えられ、マルチプレクサ52は、ヘッド選択信号で指示されたヘッドの出力(即ち、第1の増幅器の出力)を選択して、出力し、且つ選択されなかった第1の差動増幅器をディセーブルにする。MCU104が、ヘッドIC103にヘッド選択信号を送るタイミングに制限はなく、ヘッドIC103が、リードモードになる前でも、リードモードになった後でもよい。
【0056】
ヘッドIC103がリードモードになった時、AGCアンプ部10でゲイン値を自動調整する場合には、MCU104は、シリアルインタフェース部32に、AGCイネーブル信号を送る。このAGCイネーブル信号は、レジスタ36にセットされ、AGCシーケンサ34に与えられる。
【0057】
AGCシーケンサ34は、第2の増幅器12のゲイン調整を開始する。即ち、第1のスイッチ42を、図2のように、「a」側に接続し、且つ第2のスイッチ30を、「a」側に接続する。これにより、比較・ゲイン決定回路14は、第1のゲインラッチ回路38に接続される。
【0058】
これとともに、AGCシーケンサ34は、出力ミュート信号(Output Mute)をオンにして、出力バッファアンプ54をミュートとし、且つ差動振幅変換器20をイネーブルとする。更に、AGCシーケンサ34は、比較・ゲイン決定回路14に、第2の増幅器12のゲイン調整を指示する。
【0059】
これにより、差動振幅変換器22は、差動増幅器12の出力のマイナス側電圧と、プラス側の電圧との差(差動振幅信号)を比較・ゲイン決定回路14に出力する。
【0060】
比較・ゲイン決定回路14では、ローパスフィルタ15が、差動振幅変換器22からの差動振幅信号の高周波成分をカットし、ノイズによるAGCの誤動作を防止する。次に、サンプル&ホールド回路16は、デコーダー18で差動増幅器12のゲイン値が決定するまで、差動振幅信号のピーク値を保持する。比較値設定回路19は、図5に示すように、第2の増幅器12の出力振幅の比較値Aを、コンパレータ17−0〜17−3に出力する。
【0061】
コンパレータ17−0〜17−3は、サンプル&ホールド回路16からの差動振幅信号のピーク値と、比較値設定回路19からの比較値Aとを比較し、ピーク値が、比較値以上であれば、ロジック信号1を、ピーク値が比較値より小さい場合には、ロジック信号0を出力する。
【0062】
デコーダー18は、コンパレータ17−0〜17−3から受け取ったロジック信号の組み合わせに従って、第2の差動増幅器12の出力振幅値が,コンパレータ17−1と17−2の比較値Aの間(第2の差動増幅器12の出力振幅のセンター値)になるような、差動増幅器12のゲイン値を決定し、2つのスイッチ42,30を介し、第1のゲインラッチ回路38に出力する。これにより、第2の増幅器12は、フィードバックループ制御により、ゲイン値が自動調整される。
【0063】
AGCシーケンサ34は、所定のゲイン調整時間が終了すると、第2の増幅器12のゲイン調整を終了する。これにより、第2の増幅器12のゲイン値は、第1のゲインラッチ回路38に保持されたゲインに固定される。そして、AGCシーケンサ34は、第3の増幅器40のゲイン調整を開始する。
【0064】
即ち、第1のスイッチ42を、図2のように、「b」側に接続し、且つ第3のスイッチ46を、「a」側に接続する。これにより、比較・ゲイン決定回路14は、第2のゲインラッチ回路48に接続される。
【0065】
これとともに、AGCシーケンサ34は、出力バッファアンプ54をミュートのままとし、且つ差動振幅変換器22をイネーブルのままとする。更に、AGCシーケンサ34は、比較・ゲイン決定回路14に、第3の増幅器40のゲイン調整を指示する。
【0066】
これにより、差動振幅変換器22は、差動増幅器12の出力(差動増幅器40の入力)のマイナス側電圧と、プラス側の電圧との差(差動振幅信号)を比較・ゲイン決定回路14に出力する。
【0067】
比較・ゲイン決定回路14では、ローパスフィルタ15が、差動振幅変換器22からの差動振幅信号の高周波成分をカットし、ノイズによるAGCの誤動作を防止する。次に、サンプル&ホールド回路16は、デコーダー18で差動増幅器40のゲイン値が決定するまで、差動振幅信号のピーク値を保持する。比較値設定回路19は、図6に示すように、第3の増幅器40の出力振幅の比較値Bを、コンパレータ17−0〜17−3に出力する。
【0068】
コンパレータ17−0〜17−3は、サンプル&ホールド回路16からの差動振幅信号のピーク値と、比較値設定回路19からの比較値Bとを比較し、ピーク値が、比較値以上であれば、ロジック信号1を、ピーク値が比較値より小さい場合には、ロジック信号0を出力する。
【0069】
デコーダー18は、コンパレータ17−0〜17−3から受け取ったロジック信号の組み合わせに従って、第3の差動増幅器40の出力振幅値が,リードチャネル102の入力振幅のセンター値になるような、第3の差動増幅器40のゲイン値を決定し、2つのスイッチ42,46を介し、第2のゲインラッチ回路48に出力する。これにより、第3の増幅器40は、フィードフォワード制御により、ゲイン値が自動調整される。
【0070】
AGCシーケンサ34は、所定のゲイン調整時間が終了すると、第3の増幅器40のゲイン調整を終了する。これにより、第3の増幅器40のゲインは、第2のゲインラッチ回路48に保持されたゲイン値に固定される。AGCシーケンサ34は、第3の増幅器40のゲイン調整完了後、出力ミュート信号をオフにして、出力バッファアンプ54のミュートを解除する。これにより、選択されたヘッドのリード出力が、AGCアンプ部10で、出力レベル調整され、出力バッファアンプ54から、リードチャネル102に出力される。
【0071】
AGCシーケンサ34は、全てのゲイン調整が完了した後、差動振幅変換器22と、比較・ゲイン決定回路14とをディセーブルにするとともに、スイッチ42,30,46を、図2に示す接続状態に戻す。更に、AGCシーケンサ34は、ゲインラッチ回路38に保持された第2の差動増幅器12のゲイン値と、ゲインラッチ回路48に保持された第3の差動増幅器40のゲイン値を、レジスタ36にセットして、レジスタ36に保持された差動増幅器12,40のゲイン値を更新する。最後に、AGCシーケンサ34は、AGCイネーブル信号をオフにして、レジスタ36のAGCイネーブル設定をクリアする。
【0072】
このように、第2の増幅器12と、第3の増幅器40とからなる2つのアンプで、AGCアンプを構成し、第2の増幅器12と第3の増幅器40間の接続を、AGCの制御入力とする。
【0073】
このように構成した理由を説明する。AGCアンプには、フィードバックループ制御型と、フィードフォワード制御型とがある。フィードバックループ制御型AGCの場合、目標値に対する制御の精度は高いが、アンプ出力(=AGC制御入力)の振幅は、数十mVpp(peak to peak)〜数百mVppと範囲が広い場合には、AGC開始時のアンプの出力の変動が大きい。特に、リード素子に、TuMR素子を利用した場合には、個々のリード素子で、このような振幅範囲のばらつきがある。
【0074】
このことは、フィードバックループ制御型AGCを単独で使用する場合には、AGCのフィードバックループゲインの変動が大きくなることを意味し、AGCが安定するまでの引き込み時間が増大し、又、AGCが、安定しない場合が発生する。
【0075】
一方、フィードフォワード制御型AGCを単独で使用する場合には、AGC後の調整結果が、フィードバックされないため、ゲインの変更に対する反応は速い。しかし、リードチャネルの入力レベル範囲であるが、最適ではないゲイン(例えば、リード出力が、リードチャネルの入力レベルの最大値あるいは最小値になるゲイン)に設定される可能性がある。また、アンプ入力(=AGC制御入力)は、信号レベルが小さいため、AGCのレベル判定時に誤検出する可能性がある。
【0076】
本実施の形態では、フィードバックループ制御型AGCとフィードフォワード制御型AGCとを連結した構成を採用している。そして、AGCシーケンサ34は、図4に示すシーケンスに従って、最初に、第2の増幅器12のゲイン値をフィードバックループ制御(制御入力が、第2の増幅器12の出力)で調整する。第2の増幅器12の出力レベル範囲は、フィードバック制御型AGCを単独で使用する場合のアンプ出力に比較して、振幅の範囲が小さく、AGCのフィードバックループゲインの変動を小さくすることが出来る。このため、AGCの引き込み時間の増大を防止し、且つAGCの安定性を保証することが可能となる。
【0077】
図5に示すように、第2の増幅器12のゲイン値は、第2の増幅器12の出力振幅値が、第3の増幅器40の入力振幅範囲のセンター値を目標に調整されるが、図5に示すように、調整範囲はある幅を持つ。これは、コンパレータ17のビット数(分解能)と、第2の増幅器12のゲイン値が、有限の固定された値を持つためである。
【0078】
次に、AGCシーケンサ34は、第3の増幅器40のゲイン値をフィードフォワード制御(制御入力は、第3の増幅器40の入力)で調整する。第3の増幅器40の入力振幅範囲は、フィードフォワード制御型AGCを単独で使用する場合のアンプ入力に比較して、振幅が大きく、AGCのレベル判定時の誤検出を防止することが可能性となる。
【0079】
第3の増幅器40は、図6に示すように、リードチャネル102の入力振幅範囲のセンター値を目標に調整されるが、図6に示すように、調整範囲はある幅を持つ。この理由は、第2の増幅器12の理由と同じである。
【0080】
このAGCの組み合わせにおいて、前段、後段のAGCともフィードバックループ制御型とした場合には、前述のように、収束時間が長くなる。逆に、前段をフィードフォワード制御型、後段をフィードバックループ制御型とすると、前段のAGCアンプは、入力信号が小さいため、前段のフィードフォワード型AGCのゲイン誤差が大きくなる。
【0081】
本実施の形態は、前段をフィードバックループ制御型AGCで構成し、入力振幅が小さくても、誤差を少なくし、後段をフィードフォワード制御型AGCで構成し、振幅が大きい範囲で、収束時間が早くなる。
【0082】
AGCシーケンサ34は、図4に示すように、AGCによるゲイン調整中に、リード出力をミュート(振幅は0Vpp, 出力電圧はリードチャネル102の入力Common電圧範囲内であり、理想はセンター値である)することが出来る。
【0083】
このミュート動作により、AGCのゲイン調整中に、リード出力が、リードチャネル102に入力され、リードチャネル102の動作が不安定になるのを防止できる。なお、ヘッドICのAGC動作中に、リードチャネル102が、ヘッドICからの入力をミュートするようにすれば、この機能を使用しなくても良い。
【0084】
このように、2つのAGCを連結し、順次、AGCのゲイン調整を行うため、コンパレータ17は、制御入力範囲が比較的狭くてよく、実施例のように、4bit程度で構成できる。このため、比較・ゲイン決定回路の回路規模を小さくできる。
【0085】
このように、ヘッドIC103は、外部からの指示に応じて、AGCによるAGCアンプ12、40のゲイン調整モードを持ち、更に、外部からの与えられたゲイン値で、AGCアンプ12,40のゲインを設定するモードを併用できる構成を有する。
【0086】
即ち、前記したように、ヘッドIC103で全てのゲイン調整が完了した後、ゲインラッチ回路38に保持された第2の差動増幅器12のゲイン値と、ゲインラッチ回路48に保持された第3の差動増幅器40のゲイン値は、レジスタ36にセットされているため、図1のMCU104が、シリアルインタフェース部32より、読み出し、内蔵メモリに格納できる。
【0087】
逆に、AGCイネーブル信号がオフの時に、MCU104が、内蔵メモリのゲイン初期値(前述の読み出した値)を読み出し、シリアルインタフェース部32を介して、レジスタ36にセットする。この場合に、第2のスイッチ30、第3のスイッチ46は、「b」側に接続されているため、レジスタ36にセットされた差動増幅器12,40のゲイン値は、各々、第2のスイッチ30、第3のスイッチ46を介し、第1のゲインラッチ回路38、第2のゲインラッチ回路48に設定される。
【0088】
(リード回路の第2の実施の形態)
図7は、本発明のリード回路の第2の実施の形態の回路図、図8は、その動作シーケンス図である。図7において、図1、図2で説明したものと同じものは、同一の記号で示してある。この実施の形態は、図1のMCU104のメモリ28に、各ヘッド(チャネル)のゲイン測定値を格納する。
【0089】
図8により、図7の構成の動作を説明する。磁気ディスク装置の電源が投入されると、MCU104は、磁気デイスク117のシステムエリア(SA)が記録された磁気ヘッド126に対応するヘッド選択信号を、ヘッドIC103のシリアルインタフェース部32に、送信する。次に、MCU104は、シリアルインタフェース部32に、図4で説明したリード信号とAGCイネーブル信号を送信する。第1の実施の形態で説明したように、ヘッドIC103は、AGCアンプ部10でゲインの自動調整を行う。
【0090】
MCU104は、ヘッドIC103のゲイン調整時間を経過すると、磁気ヘッド126を、磁気ディスク117のシステムエリアに位置付け、ヘッドIC103、リードチャネル回路102に、システムエリアのデータの読み出しを指示する。
【0091】
尚、磁気ディスク117のシステムエリアには、装置のステータス情報(各リードヘッドの最適ゲイン、バイアス電流/電圧、各ライトヘッドのライト波形のブースト量、その他の各種の設定パラメータ)が、記憶されている。MCU104は、ヘッドIC103,リードチャネル回路102を介し、磁気ディスク117のシステムエリアのデータを読み出し、メモリ28に格納した後、各部に設定する。又、MCU104は、ヘッドIC103に、TuMR素子のバイアス電流/電圧、ライト素子のライト波形のブースト量を設定する。これにより、磁気デイスク117のデータのリード/ライト動作の準備が完了する。
【0092】
MCU104が、リード又はライトを行う場合に、ヘッドIC103にヘッド選択信号を与える。これにより、ヘッドIC103のマルチプレクサ52は、指示されたヘッドを選択する。次に、MCU104は、そのヘッドの2つのゲイン初期値(差動増幅器12,40)を、ヘッドIC103のシリアルインタフェース(SIF)部32に与える。
【0093】
これにより、レジスタ36、スイッチ30,46を介し、ラッチ回路38、48に、与えられたゲイン初期量がセットされる。即ち、差動増幅器12、40は、セットされたゲイン量で、増幅動作する。即ち、固定ゲインで、動作する。そして、このゲインで、データ読み取りを開始する。
【0094】
同様に、ヘッドチェンジが生じた場合には、MCU104は、ヘッドIC103にヘッド選択信号を与え、マルチプレクサ52は、指示されたヘッドを選択する。次に、MCU104は、その選択ヘッドの2つのゲイン初期値(差動増幅器12,40)を、ヘッドIC103のシリアルインタフェース(SIF)部32に与える。これにより、レジスタ36、スイッチ30,46を介し、ラッチ回路38、48に、与えられたゲイン初期量がセットされる。即ち、差動増幅器12、40は、セットされたゲイン量で、増幅動作する。
【0095】
このため、AGCのゲイン調整モードを使用して、初期ゲインを調整でき、ヘッドの特性のばらつきが大きくても、高速に、リードチャネル回路102のAGC回路のダイナミックレンジに入る振幅に調整できる。
【0096】
又、この調整初期値を、メモリに格納しておくことにより、ヘッド選択時に、対応する初期ゲインを読み出し、AGCアンプ10に設定することにより、AGC動作が必要なく、最適ゲインに設定できる。即ち、比較・ゲイン決定回路14,差動振幅変換器22,AGCシーケンサ34を動作させないため、消費電力の軽減の効果が大きい。特に、携帯機器に搭載される場合には、供給電力が限られているため、この低消費電力化の効果は、大きい。特に、AGCの実行時間を最小限とでき、結果として、全体の消費電力を下げ、且つヘッドのばらつきが大きくても、最適なゲインでリード動作できる。
【0097】
更に、この実施の形態では、ヘッドIC103内で自動レベル調整するため、外部との余分な信号線を必要としない。このため、図9で説明したように、アクチュエータに搭載するのに、実装上、好適である。
【0098】
(他の実施の形態)
前述の実施の形態では、AGC回路を、図2等の構成で説明したが、アナログ形式のAGC回路や、積分回路を持つAGC回路等の他のAGC回路を適用できる。又、磁気ディスク装置のヘッドのリード回路の例で説明したが、他の媒体記憶装置のリード回路にも適用できる。
【0099】
更に、第2の増幅器12、第3の増幅器40のゲイン調整は、工場出荷前に行い、各ヘッド(チャネル)の測定ゲインを、メモリ(又は磁気ディスクのシステムエリア)に格納するようにしても良い。又、磁気ディスク装置の最初のパワーオン時に、第2の増幅器12、第3の増幅器40のゲイン調整を行い、各ヘッド(チャネル)の測定ゲインを、メモリ(又は磁気ディスクのシステムエリア)に格納するようにしても良い。
【0100】
同様に、磁気ディスク装置の動作中に、所定時間毎に、又は温度等の環境変化が生じた場合や、リード信号のエラーレートを測定し、エラーレートが基準値を越えた場合に、キャリブレーションの1つとして、第2の増幅器12、第3の増幅器40のゲイン調整を行い、各ヘッド(チャネル)の測定ゲインで、メモリ(又は磁気ディスクのシステムエリア)のゲインを更新するようにしても良い。
【0101】
以上、本発明を、実施の形態で説明したが、本発明は、その趣旨の範囲内で種々の変形が可能であり、これを本発明の範囲から排除するものではない。
【0102】
(付記1)ヘッドの読み取り信号の振幅レベルを調整して、AGCアンプを有するリードチャネルに出力するヘッドICにおいて、前記読み取り信号を設定されたゲイン値で増幅する第1の差動増幅器と、前記第1の差動増幅器の出力を設定された第2のゲイン値で増幅する第2の差動増幅器と、前記第1の差動増幅器の出力振幅レベルと基準レベルとの差を取り、所定の引き込み特性に応じて、前記第1の差動増幅器のゲイン値をフィードバックループ制御で自動調整し、且つ前記第1の差動増幅器のゲイン値の自動調整終了後、前記第1の差動増幅器の出力振幅レベルと第2の基準レベルとの差を取り、所定の引き込み特性に応じて、前記第2の差動増幅器のゲイン値をフィードフォワード制御で自動調整するAGC回路とを有することを特徴とするヘッドIC。
【0103】
(付記2)前記AGC回路は、前記第1の差動増幅器のゲイン値を、前記第2の差動増幅器の入力振幅レベル範囲のセンター値を目標に調整し、前記第2の差動増幅器のゲイン値を、前記リードチャネルの入力振幅レベル範囲のセンター値を目標に調整することを特徴とする付記1のヘッドIC。
【0104】
(付記3)外部から設定された前記第1の差動増幅器のゲイン値と前記第2の増幅器のゲイン値を受信するインタフェース部と、前記AGC回路のゲイン値と、前記インタフェース部からのゲイン値を選択的に、前記第1及び第2の差動増幅器に設定するための第1及び第2のスイッチとを更に有することを特徴とする付記1のヘッドIC。
【0105】
(付記4)前記第1及び第2の差動増幅器は、AGCイネーブル信号がオンの時に、前記AGC回路により、AGCアンプとして動作し、前記AGCイネーブル信号がオフの時に、前記AGC回路で自動調整されたゲイン値により固定アンプとして、動作することを特徴とする付記1のヘッドIC。
【0106】
(付記5)前記第1のスイッチからのゲイン値をラッチし、且つ前記第1の差動増幅器に前記ゲイン値を設定するための第1のラッチ回路と、前記第2のスイッチからのゲイン値をラッチし、且つ前記第2の差動増幅器に前記ゲイン値を設定するための第2のラッチ回路とを更に有することを特徴とする付記3のヘッドIC。
【0107】
(付記6)前記インタフェース部は、前記AGCイネーブル信号により、前記AGC回路を動作して得たゲイン値を、前記第1及び第2のラッチ回路から初期値として、外部に読み出し、且つ前記外部から前記読み出した初期値を受信して、前記第1及び第2のスイッチに出力することを特徴とする付記3のヘッドIC。
【0108】
(付記7)ヘッド選択信号に応じて、前記第1の差動増幅器に、複数のヘッドのいずれかを接続するヘッド切り替え部を設け、前記インタフェース部は、前記選択されたヘッドの前記ゲイン値を受信し、前記第1及び第2の差動増幅器に前記選択されたヘッドに対応するゲイン値を設定することを特徴とする付記3のヘッドIC。
【0109】
(付記8)ヘッドの読み取り信号の振幅レベルを調整するリード回路において、前記ヘッドからの読み取り信号の振幅レベルを調整するヘッドICと、前記ヘッドICに接続され、AGCアンプを有するリードチャネルとを有し、前記ヘッドICは、前記読み取り信号を設定されたゲイン値で増幅する第1の差動増幅器と、前記第1の差動増幅器の出力を設定された第2のゲイン値で増幅する第2の差動増幅器と、前記第1の差動増幅器の出力振幅レベルと基準レベルとの差を取り、所定の引き込み特性に応じて、前記第1の差動増幅器のゲイン値をフィードバックループ制御で自動調整し、且つ前記第1の差動増幅器のゲイン値の自動調整終了後、前記第1の差動増幅器の出力振幅レベルと第2の基準レベルとの差を取り、所定の引き込み特性に応じて、前記第2の差動増幅器のゲイン値をフィードフォワード制御で自動調整するAGC回路とを有することを特徴とするリード回路。
【0110】
(付記9)前記AGC回路は、前記第1の差動増幅器のゲイン値を、前記第2の差動増幅器の入力振幅レベル範囲のセンター値を目標に調整し、前記第2の差動増幅器のゲイン値を、前記リードチャネルの入力振幅レベル範囲のセンター値を目標に調整することを特徴とする付記8のリード回路。
【0111】
(付記10)前記ヘッドICは、外部から設定された前記第1の差動増幅器のゲイン値と前記第2の増幅器のゲイン値を受信するインタフェース部と、前記AGC回路のゲイン値と、前記インタフェース部からのゲイン値を選択的に、前記第1及び第2の差動増幅器に設定するための第1及び第2のスイッチとを更に有することを特徴とする付記8のリード回路。
【0112】
(付記11)前記第1及び第2の差動増幅器は、前記AGCイネーブル信号がオンの時に、前記AGC回路により、AGCアンプとして動作し、前記AGCイネーブル信号がオフの時に、前記外部からの設定ゲインにより固定アンプとして、動作することを特徴とする付記1のリード回路。
【0113】
(付記12)前記第1のスイッチからのゲイン値をラッチし、且つ前記第1の差動増幅器に前記ゲイン値を設定するための第1のラッチ回路と、前記第2のスイッチからのゲイン値をラッチし、且つ前記第2の差動増幅器に前記ゲイン値を設定するための第2のラッチ回路とを更に有することを特徴とする付記10のリード回路。
【0114】
(付記13)前記インタフェース部は、前記AGCイネーブル信号により、前記AGC回路を動作して得たゲイン値を、前記第1及び第2のラッチ回路から初期値として、外部に読み出し、且つ前記外部から前記読み出した初期値を受信して、前記第1及び第2のスイッチに出力することを特徴とする付記10のリード回路。
【0115】
(付記14)ヘッド選択信号に応じて、前記第1の差動増幅器に、複数のヘッドのいずれかを接続するヘッド切り替え部を設け、前記インタフェース部は、前記選択されたヘッドの前記ゲイン値を受信し、前記第1及び第2の差動増幅器に前記選択されたヘッドに対応するゲイン値を設定することを特徴とする付記10のリード回路。
【0116】
(付記15)媒体の情報を読み取るヘッドと、前記ヘッドからの読み取り信号の振幅レベルを調整するヘッドICと、前記ヘッドICに接続され、AGCアンプを有するリードチャネルとを有し、前記ヘッドICは、前記読み取り信号を設定されたゲイン値で増幅する第1の差動増幅器と、前記第1の差動増幅器の出力を設定された第2のゲイン値で増幅する第2の差動増幅器と、前記第1の差動増幅器の出力振幅レベルと基準レベルとの差を取り、所定の引き込み特性に応じて、前記第1の差動増幅器のゲイン値をフィードバックループ制御で自動調整し、且つ前記第1の差動増幅器のゲイン値の自動調整終了後、前記第1の差動増幅器の出力振幅レベルと第2の基準レベルとの差を取り、所定の引き込み特性に応じて、前記第2の差動増幅器のゲイン値をフィードフォワード制御で自動調整するAGC回路とを有することを特徴とする媒体記憶装置。
【0117】
(付記16)前記AGC回路は、前記第1の差動増幅器のゲイン値を、前記第2の差動増幅器の入力振幅レベル範囲のセンター値を目標に調整し、前記第2の差動増幅器のゲイン値を、前記リードチャネルの入力振幅レベル範囲のセンター値を目標に調整することを特徴とする付記15の媒体記憶装置。
【0118】
(付記17)外部から設定された前記第1の差動増幅器のゲイン値と前記第2の増幅器のゲイン値を受信するインタフェース部と、前記AGC回路のゲイン値と、前記インタフェース部からのゲイン値を選択的に、前記第1及び第2の差動増幅器に設定するための第1及び第2のスイッチとを更に有することを特徴とする付記15の媒体記憶装置。(10、図2)
(付記18)前記第1及び第2の差動増幅器は、前記AGCイネーブル信号がオンの時に、前記AGC回路により、AGCアンプとして動作し、前記AGCイネーブル信号がオフの時に、前記AGC回路で自動調整されたゲイン値により固定アンプとして、動作することを特徴とする付記15の媒体記憶装置。
【0119】
(付記19)前記第1のスイッチからのゲイン値をラッチし、且つ前記第1の差動増幅器に前記ゲイン値を設定するための第1のラッチ回路と、前記第2のスイッチからのゲイン値をラッチし、且つ前記第2の差動増幅器に前記ゲイン値を設定するための第2のラッチ回路とを更に有することを特徴とする付記17の媒体記憶装置。
【0120】
(付記20)前記インタフェース部は、前記AGCイネーブル信号により、前記AGC回路を動作して得たゲイン値を、前記第1及び第2のラッチ回路から初期値として、外部に読み出し、且つ前記外部から前記読み出した初期値を受信して、前記第1及び第2のスイッチに出力することを特徴とする付記17の媒体記憶装置。
【産業上の利用可能性】
【0121】
ヘッドICに、AGCアンプを設けたので、ヘッドIC内で、ヘッドからの振幅が自動調整され、リードチャネルのAGCアンプの入力ダイナミックレンジに入る信号レベル調整ができる。又、このAGCアンプをフィードバックループ制御型の第1のアンプとフィードフォワード制御型の第2のアンプで構成することにより、目標値に対する制御の精度が高く、また応答速度が速いAGCアンプを構成できる。更に、AGCの引き込み時間の増大防止、安定性の保証、AGCの誤判定防止を図る事が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の媒体記憶装置の一実施形態の構成図である。
【図2】本発明のリード回路の第1の実施の形態の回路図である。
【図3】図2の比較・ゲイン決定回路の回路図である。
【図4】図2のAGCシーケンサの動作説明図である。
【図5】図2の第2の差動増幅器のAGC動作の説明図である。
【図6】図2の第3の差動増幅器のAGC動作の説明図である。
【図7】本発明のリード回路の第2の実施の形態の回路図である。
【図8】図7のリード回路の動作シーケンス図である。
【図9】従来の媒体記憶装置の説明図である。
【図10】従来のリード回路の説明図である。
【符号の説明】
【0123】
10 AGCアンプ
12 第1(第2)の差動増幅器
14 比較・ゲイン決定回路(AGC回路)
15 ローパスフィルタ
16 サンプル&ホールド回路
17−0〜17−3 コンパレタータ
18 デコーダー
19 比較値設定回路
22 差動振幅変換器(AGC回路)
28 メモリ
30,42,46 スイッチ
32 インタフェース部
34 AGCシーケンサ(AGC回路)
36 レジスタ
38,48 ゲインラッチ回路
40 第2(第3)の差動増幅器
52 マルチプレクサ(ヘッド切り替え部)
102 リードチャネル
103 ヘッドIC
104 MCU
107 AGCアンプ
126−0〜126−3 リード素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドの読み取り信号の振幅レベルを調整して、AGCアンプを有するリードチャネルに出力するヘッドICにおいて、
前記読み取り信号を設定されたゲイン値で増幅する第1の差動増幅器と、
前記第1の差動増幅器の出力を設定された第2のゲイン値で増幅する第2の差動増幅器と、
前記第1の差動増幅器の出力振幅レベルと基準レベルとの差を取り、所定の引き込み特性に応じて、前記第1の差動増幅器のゲイン値をフィードバックループ制御で自動調整し、且つ前記第1の差動増幅器のゲイン値の自動調整終了後、前記第1の差動増幅器の出力振幅レベルと第2の基準レベルとの差を取り、所定の引き込み特性に応じて、前記第2の差動増幅器のゲイン値をフィードフォワード制御で自動調整するAGC回路とを有する
ことを特徴とするヘッドIC。
【請求項2】
前記AGC回路は、前記第1の差動増幅器のゲイン値を、前記第2の差動増幅器の入力振幅レベル範囲のセンター値を目標に調整し、前記第2の差動増幅器のゲイン値を、前記リードチャネルの入力振幅レベル範囲のセンター値を目標に調整する
ことを特徴とする請求項1のヘッドIC。
【請求項3】
外部から設定された前記第1の差動増幅器のゲイン値と前記第2の増幅器のゲイン値を受信するインタフェース部と、
前記AGC回路のゲイン値と、前記インタフェース部からのゲイン値を選択的に、前記第1及び第2の差動増幅器に設定するための第1及び第2のスイッチとを更に有する
ことを特徴とする請求項1のヘッドIC。
【請求項4】
前記第1及び第2の差動増幅器は、AGCイネーブル信号がオンの時に、前記AGC回路により、AGCアンプとして動作し、前記AGCイネーブル信号がオフの時に、前記AGC回路で自動調整されたゲイン値により固定アンプとして、動作する
ことを特徴とする請求項1のヘッドIC。
【請求項5】
ヘッドの読み取り信号の振幅レベルを調整するリード回路において、
前記ヘッドからの読み取り信号の振幅レベルを調整するヘッドICと、
前記ヘッドICに接続され、AGCアンプを有するリードチャネルとを有し、
前記ヘッドICは、
前記読み取り信号を設定されたゲイン値で増幅する第1の差動増幅器と、
前記第1の差動増幅器の出力を設定された第2のゲイン値で増幅する第2の差動増幅器と、
前記第1の差動増幅器の出力振幅レベルと基準レベルとの差を取り、所定の引き込み特性に応じて、前記第1の差動増幅器のゲイン値をフィードバックループ制御で自動調整し、且つ前記第1の差動増幅器のゲイン値の自動調整終了後、前記第1の差動増幅器の出力振幅レベルと第2の基準レベルとの差を取り、所定の引き込み特性に応じて、前記第2の差動増幅器のゲインをフィードフォワード制御で自動調整するAGC回路とを有する
ことを特徴とするリード回路。
【請求項6】
前記AGC回路は、前記第1の差動増幅器のゲイン値を、前記第2の差動増幅器の入力振幅レベル範囲のセンター値を目標に調整し、前記第2の差動増幅器のゲイン値を、前記リードチャネルの入力振幅レベル範囲のセンター値を目標に調整する
ことを特徴とする請求項5のリード回路。
【請求項7】
前記第1及び第2の差動増幅器は、AGCイネーブル信号がオンの時に、前記AGC回路により、AGCアンプとして動作し、前記AGCイネーブル信号がオフの時に、前記AGC回路で自動調整されたゲイン値により固定アンプとして、動作する
ことを特徴とする請求項5のリード回路。
【請求項8】
媒体の情報を読み取るヘッドと、
前記ヘッドからの読み取り信号の振幅レベルを調整するヘッドICと、
前記ヘッドICに接続され、AGCアンプを有するリードチャネルとを有し、
前記ヘッドICは、
前記読み取り信号を設定されたゲイン値で増幅する第1の差動増幅器と、
前記第1の差動増幅器の出力を設定された第2のゲイン値で増幅する第2の差動増幅器と、
前記第1の差動増幅器の出力振幅レベルと基準レベルとの差を取り、所定の引き込み特性に応じて、前記第1の差動増幅器のゲイン値をフィードバックループ制御で自動調整し、且つ前記第1の差動増幅器のゲイン値の自動調整終了後、前記第1の差動増幅器の出力振幅レベルと第2の基準レベルとの差を取り、所定の引き込み特性に応じて、前記第2の差動増幅器のゲイン値をフィードフォワード制御で自動調整するAGC回路とを有する
ことを特徴とする媒体記憶装置。
【請求項9】
前記AGC回路は、前記第1の差動増幅器のゲイン値を、前記第2の差動増幅器の入力振幅レベル範囲のセンター値を目標に調整し、前記第2の差動増幅器のゲイン値を、前記リードチャネルの入力振幅レベル範囲のセンター値を目標に調整する
ことを特徴とする請求項8の媒体記憶装置。
【請求項10】
外部から設定された前記第1の差動増幅器のゲイン値と前記第2の増幅器のゲイン値を受信するインタフェース部と、
前記AGC回路のゲイン値と、前記インタフェース部からのゲイン値を選択的に、前記第1及び第2の差動増幅器に設定するための第1及び第2のスイッチとを更に有する
ことを特徴とする請求項8の媒体記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−134806(P2009−134806A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309679(P2007−309679)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】