説明

ヘテロアリールアリールエーテル

【課題】ヘテロアリールアリールエーテルを提供する。
【解決手段】本発明は、任意選択的に置換されたヘテロアリールアリールエーテルの、特にフェノキシピリジン類の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意選択的に置換されたヘテロアリールアリールエーテルの、特にフェノキシピリジン類の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘテロアリールアリールエーテルは、ファインケミカルならびに、例えば、抗鬱剤、抗生物質またはセロトニン再摂取阻害剤などの薬剤および農薬の製造のための中間体として非常に重要である。
【0003】
ヘテロアリールアリールエーテルの様々な調製方法は公知である。
【0004】
それらの合成は、例えば、塩基を使用するピリジルピリジニウム塩とフェノール類との反応によって行うことができる(Chem.Ber.89(1956)、2921−2933ページ;特開2001−002644号公報)。この方法の欠点は、ピリジルピリジニウム塩が先ず第一に相当する塩素化ピリジンから縮合されなければならず、次にピリジンが使用できない副産物として生成されることである。その結果として、この方法は生態学的におよび経済的に不利である。
【0005】
Cherng等(Tetrahedron 58(2002)、4931−4935ページ)には、マイクロ波照射を使った極性溶媒中の求核試薬でのハロピリジンの置換によるヘテロアリールアリールエーテルの調製が記載されている。この方法の欠点は、良好な収率を達成するために、例えば、4−ヨードピリジンなどの、高価な出発原料を使用しなければならず、かつ、不十分な収率が得られるにすぎないことである。
【0006】
Angelo等(Tetrahedron Letters 47(2006)、5045−5048ページ)には、置換ヘテロアリールアリールエーテルを調製するための触媒としての銅粉および塩基としての炭酸セシウムの存在下でマイクロ波照射を使った塩素複素環化合物とフェノール誘導体との反応が記載されている。銅の毒性、そしてまたマイクロ波加熱および高価な炭酸セシウムの使用という理由で、この方法は工業的使用に好適ではない。
【0007】
DE 69829048 T2号明細書は、N,N−ジメチルホルムアミド中で塩基として炭酸カリウムを使用する4−ヒドロキシベンズアルデヒドでの4−クロロピリジン塩酸塩の置換による4−(4−ピリジンオキシ)ベンズアルデヒドに導く方法を記載している。この方法の欠点は、理論の多くとも13%の低収率が得られるにすぎないことである。
【0008】
DE 60201819 T2号明細書は、穏和な条件下にフェノラートによるピリジニレンの置換によるヘテロアリールアリールエーテルの調製を記載している。この方法の欠点は、同様に低収率および電子供与性の基で置換されたピリジニレンへの出発原料の限定である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−002644号公報
【特許文献2】DE 69829048 T2号明細書
【特許文献3】DE 60201819 T2号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Chem.Ber.89(1956)、2921−2933ページ
【非特許文献2】Cherngら、Tetrahedron 58(2002)、4931−4935ページ
【非特許文献3】Angeloら、Tetrahedron Letters 47(2006)、5045−5048ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の方法は良好な収率をもたらさないか高価な特殊化学品を必要とするかのいずれかであり、かつ、その結果としてヘテロアリールアリールエーテルの工業的製造に不適当であることが共通している。従って、ヘテロアリールアリールエーテルの効率的な調製に好適である方法を提供する必要性があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
意外にも、好適な反応条件下における任意選択的に置換されたフェノールと任意選択的に置換されたハロゲン化ヘテロアリールまたは擬ハロゲン化ヘテロアリールとの反応が、高い化学収率で進行してヘテロアリールアリールエーテルを与えることが今見いだされた。
【0013】
本発明はそれ故、式(I)
ARYL−O−HETEROARYL (I)
(式中、ARYLは、
アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アリールアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルキレン、ハロアルコキシ、ハロアルキルチオ、5〜6員環ヘテロアリール、および3〜7員環の飽和または部分不飽和複素環
の群から、互いに独立して、選択される基で任意選択的に一置換または多置換されているC〜C20アリールであり、
そしてHETEROARYLは、
アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アリールアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルキレン、ハロアルコキシ、ハロアルキルチオ、5〜6員環ヘテロアリール、3〜7員環の飽和または部分不飽和複素環
の群から、互いに独立して、選択される基で任意選択的に一置換または多置換されているピラジニル、ピリジル、ピリミジニルまたはピリダジニルである)
の化合物の調製方法であって、式(II)
ARYL−OCat (II)
(式中、ARYLは上記の意味を有し、そしてCatは任意の所望の一価の陽イオンまたは1/n当量のn価の陽イオンである)
の化合物が式(III)
HETEROARYL−Y (III)
(式中、HETEROARYLは上記の意味を有し、そしてYはハロゲンまたは擬ハロゲンである)
の化合物と反応させられることを特徴とする方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の範囲は、互いに任意の組み合わせで、すなわち、特定の分野と好ましい分野との間でも、概してまたは好ましい分野内で明記される、上記のおよび本明細書で以下に挙げられる全ての基の定義、パラメーターおよび例示を包含する。
【0015】
本発明の文脈において、アルキルまたはアルケニルまたはアルコキシは、1〜15個のまたは2〜6個のまたは1〜6個の炭素原子を有する直鎖、環式、分枝もしくは非分枝のアルキルまたはアルケニルまたはアルコキシ基である。
【0016】
例としておよび好ましくは、アルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−、イソ−、s−またはt−ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−デシルおよびn−ドデシルである。
【0017】
例としておよび好ましくは、アルケニルは、ビニル、アリル、イソプロペニルおよびn−2−ブテン−1−イルである。
【0018】
例としておよび好ましくは、アルコキシは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−ペントキシおよびn−ヘキソキシである。
【0019】
本発明の文脈において、アルコキシカルボニルは好ましくは、カルボニル基で連結されている、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝のアルコキシ基である。次のものを例としておよび好ましくは挙げてもよい:メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニルおよびt−ブトキシカルボニル。
【0020】
本発明の文脈において、アルコキシカルボニルアミノは、好ましくは1〜6個の炭素原子をアルコキシ基中に有し、カルボニル基に連結されている直鎖のまたは分枝のアルコキシカルボニル置換基付きアミノ基である。次のものを例としておよび好ましくは挙げてもよい:メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、n−プロポキシカルボニルアミノおよびt−ブトキシカルボニルアミノ。
【0021】
本発明の文脈において、アリールは、好ましくは6〜20個の芳香族炭素原子を有する単環、二環または三環の炭素環芳香族基(C〜C20アリール)である。さらに、炭素環芳香族基は、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アリール、アリールアルキル、ジアルキルアミノ、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルキレン、ハロアルコキシ、ハロアルキルチオ、5〜6員環ヘテロアリールおよび3〜7員環の飽和または部分不飽和の複素環の群から選択された、1環当たり5つ以下の同一のまたは異なる置換基で置換することができる。例としておよび好ましくは、C〜C20アリールは、ビフェニル、フェニル、ナフチル、フェナントレニル、アントラセニルまたはフルオレニルである。
【0022】
アリールアルキルは、直鎖、環式、分枝もしくは非分枝の、上の定義に従ったアルキル基を各場合に互いに独立して意味し、上の定義に従ったアリール基で一置換、多置換または完全置換することができる。アリールアルキルの一例はベンジルである。
【0023】
例としておよび好ましくは、ハロゲンは、フッ素、塩素または臭素、特に好ましくは塩素である。
【0024】
本発明の文脈において、ジアルキルアミノは、各場合に好ましくは1〜6個の炭素原子を有する、1つまたは2つの同一のまたは異なる、環式、直鎖または分枝のアルキル置換基を有するアミノ基である。
【0025】
例としておよび好ましくは、ジアルキルアミノは、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチル−N−メチルアミノ、N−メチル−N−n−プロピルアミノ、N−イソプロピル−N−n−プロピルアミノ、N−t−ブチル−N−メチルアミノ、N−エチル−N−n−ペンチルアミノおよびN−n−ヘキシル−N−メチルアミノである。
【0026】
本発明の文脈において、ハロアルキルまたはハロアルキレンまたはハロアルコキシは、ハロゲン原子で一置換、多置換または完全置換されている、上の定義に従った直鎖、環式、分枝もしくは非分枝のアルキルまたはアルキレンまたはアルコキシ基である。
【0027】
例としておよび好ましくは、ハロアルキルは、ジクロロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロイソプロピルおよびノナフルオロブチルである。
【0028】
例としておよび好ましくは、ハロアルキレンは、クロロエチレン、ジクロロエチレンまたはトリフルオロエチレンである。
【0029】
例としておよび好ましくは、ハロアルコキシは、ジフルオロメトキシ、フルオロエトキシ、フルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、トリクロロメトキシおよび2,2,2−トリフルオロエトキシである。
【0030】
本発明の文脈において、ハロアルキルチオは、ハロゲン原子で一置換、多置換または完全置換されている、1〜15個の炭素原子を有する直鎖、環式、分枝もしくは非分枝の基である。例としておよび好ましくは、ハロアルキルチオは、クロロエチルチオ、クロロブチルチオ、クロロヘキシルチオ、クロロペンチルチオ、クロロドデシルチオ、ジクロロエチルチオ、フルオロエチルチオ、トリフルオロメチルチオおよび2,2,2−トリフルオロエチルチオである。
【0031】
本発明の文脈において、5〜6員環ヘテロアリールは好ましくは、ヘテロ芳香族の環炭素原子によって、任意選択的にまたヘテロ芳香族の環窒素原子によっても連結されている、一連のS、Nおよび/またはOからの3つ以下の同一のまたは異なるヘテロ原子を持った芳香族複素環である。例として、次のものを挙げてもよい:フラニル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル。ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、フリルおよびチアゾリルが好ましい。
【0032】
本発明の文脈において、3〜7員環の飽和または部分不飽和複素環は好ましくは、環炭素原子または環窒素原子によって連結されている、かつ、1つまたは2つの二重結合を含有することができる、一連のS、Nおよび/またはOからの3つ以下の同一のまたは異なるヘテロ原子を持った複素環である。一連のS、Nおよび/またはOからの2つ以下の同一のまたは異なるヘテロ原子を持った5〜7員環の飽和複素環が好ましい。例として、次のものを挙げてもよい:テトラヒドロフル−2−イル、テトラヒドロフル−3−イル、ピロリジン−1−イル、ピロリジン−2−イル、ピロリジン−3−イル、ピロリン−1−イル、ピペリジン−1−イル、ピペリジン−4−イル、1,2−ジヒドロピリジン−1−イル、1,4−ジヒドロピリジン−1−イル、ピペラジン−1−イル、モルホリン−4−イル、チオモルホリン−4−イル、アゼピン−1−イル、1,4−ジアゼピン−1−イル。ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニルおよびピロリジニルが好ましい。
【0033】
本発明の文脈において、擬ハロゲンは、その化学的特性がハロゲンのそれに非常に似ている基を意味する。これらは、例えば、トシレート、トリフレート、メシレートおよびノナフルオロブチルスルホネートなどの、例えばスルホネートおよびハロスルホネート、しかしまたチオシアネートおよびアジドである。
【0034】
好ましくは、ARYLは、アルコキシ、ジアルキルアミノ、ハロアルキル、ハロアルキルチオまたはハロアルキルオキシの群から、互いに独立して選択される基で任意選択的に一置換または多置換されているC〜C20アリール基である。
【0035】
特に好ましい実施形態では、ARYLは、トリフルオロメトキシ、メトキシおよびメチルの群から、互いに独立して選択される基で任意選択的に一置換または多置換されているC〜C20アリール基である。非常に特に好ましい実施形態では、ARYLは、2、3および/または4位にトリフルオロメトキシ、メトキシおよびメチルの群からの基で任意選択的に一置換または多置換されているC〜C20アリール基である。
【0036】
好ましい一実施形態では、HETEROARYLは、アルコキシ、アルキル、アリール、ハロアルキル、ハロアルキルチオまたはハロアルキルオキシの群から、互いに独立して選択される基で任意選択的に一置換または多置換されているピリジルである。非常に特に好ましい実施形態では、HETEROARYLは、2、3および/または4位にトリフルオロメトキシ、メトキシおよびメチルの群からの基で任意選択的に一置換または多置換されているピリジルである。
【0037】
式(II)の好ましい化合物は、フェノール、4−メトキシフェノール、2−トリフルオロメトキシフェノール、4−トリフルオロメトキシフェノールおよびp−クレゾールである。式(III)の好ましい化合物は4−クロロピリジンである。さらに特に好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、4−[4−トリフルオロメトキシフェノキシ]ピリジン、4−[4−メチルフェノキシ]ピリジン、4−フェノキシピリジン、4−[4−メトキシフェノキシ]ピリジンおよび4−[2−トリフルオロメトキシフェノキシ]ピリジンである。
【0038】
式(III)の化合物は、例えば、式(IIIa)
HETEROARYL−YHX (IIIa)
の化合物を塩基と反応させることによって調製することができる。HXはプロトン酸である。例としておよび好ましくは、化合物(IIIa)は、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩またはフッ化水素酸塩の形態での化合物(III)の塩である。
【0039】
本発明による方法の文脈において、式(II)の化合物は、例えば、式(IIa)
ARYL−OH (IIa)
の化合物を、使用されるフェノール類を脱プロトン化することができる好適な塩基と反応させることによって調製することができる。好ましくは、これらの塩基の対応する酸は、標準条件下に測定された、10より大きいpKa値を有する。pKa値は特に好ましくは15より大きい。
【0040】
本明細書に挙げてもよい好適な塩基の例は、例えば、水素化ナトリウム、ナトリウムアミド、リチウムジエチルアミド、ナトリウムメチラート、カリウム第三ブチラート、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの、アルカリ土類金属またはアルカリ金属水素化物、水酸化物、アミド、アルコラートまたは炭酸塩、およびまたトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピペリジン、N−メチルピペリジン、N,N−ジメチルアミノピリジンおよび1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デセン−5(MTBD)および2,8,9−トリイソプロピル−2,5,8,9−テトラアザ−1−ホスファビシクロ[3.3.3]ウンデカン(TTPU)などの、第三級アミンである。好適な塩基のさらなる例は、アリールアニオンおよびシクロペンタジエニルアニオンである。アルカリ土類金属またはアルカリ金属水酸化物、およびまた、例えば、カリウム第三ブチラートなどの立体障害アルコラートが特に好ましい。
【0041】
式(I)の化合物の工業的製造中に、式(III)の化合物の重合生成物は望ましくない副生物であり、それは大いに回避されるべきである。これらの重合生成物は、貯蔵容器中でまたは高温での初期装入物中で式(III)の化合物の自己縮合によって例えば形成され、純度および収率の低下につながり、さらに、パイプラインを閉塞し得る。その結果として、特別な手順が有利である。
【0042】
本方法はそれ故好ましくは、例えば、先ず第一に任意選択的に1つもしくはそれ以上の溶媒中でおよび任意選択的に1つもしくはそれ以上の好適な塩基の存在下に、式(II)の化合物を最初に導入し、次に式(III)の化合物を添加することによって実施される。あるいはまた,任意選択的に1つもしくはそれ以上の溶媒中で、式(IIa)の化合物を最初に導入し、そして1つもしくはそれ以上の好適な塩基の存在下に、式(III)の化合物と接触させることができる。あるいはまた、任意選択的に1つもしくはそれ以上の溶媒中で、式(IIa)のまたは式(II)の化合物を最初に導入し、過剰の塩基と混ぜ合わせ、そして式(IIIa)の化合物と接触させることができる。あるいはまた、反応はまた、式(IIIa)の化合物および塩基を使って、より正確には式(III)の化合物が、例えば、好適な塩基を添加することによって式(IIIa)の化合物から先ず第一に調製されるような方法で実施することができる。
【0043】
さらなる実施形態では、式(IIIa)の脱プロトン化は元の場所でも行うことができる。
【0044】
本発明による方法を実施するための好適な溶媒は、特に、有機溶媒である。好適な有機溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、様々な石油エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン,テトラクロロメタンなどの、例えば、脂肪族、脂環式または芳香族、任意選択的にハロゲン化された炭化水素;ジエチルエーテル、メチル第三ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランまたはエチレングリコールジメチルもしくはジエチルエーテルなどのエーテル;アセトン、2−ブタノンまたはメチルイソブチルケトンなどのケトン;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルピロリドン、N−メチルカプロラクタムまたはヘキサメチルリン酸トリアミドなどのアミド;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド;テトラメチレンスルホンなどのスルホン、またはかかる有機溶媒の混合物である。芳香族炭化水素、脂肪族および脂環式アミド、スルホキシドおよびスルホランが好ましく、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、p−キシレンおよびキシレン異性体混合物が特に好ましい。
【0045】
反応温度は、例えば、20℃〜300℃であることができる。反応温度は、好ましくは125℃〜200℃、特に好ましくは135℃〜180℃である。
【0046】
例えば、貯蔵容器中での式(III)の化合物の温度は−30℃〜20℃であることができる。その結果として、貯蔵容器中での自己縮合は本質的に防止される。
【0047】
本発明による方法は好ましくは、特に銅などの、元素の周期表の4から12族の遷移金属を本質的に含まないで実施される。用語「本質的に含まない」は、式(II)のおよび式(III)の化合物の質量の合計を基準とする遷移金属の含有率が合わせて0〜1000ppm、好ましくは0〜10ppmであることを意味する。
【0048】
原則として、様々な圧力下で作業することが可能である。周囲圧力で作業することが好ましい。
【0049】
好ましくは、式(III)のまたは式(IIIa)の化合物の添加は、添加中の式(II)の化合物のおよび式(III)のまたは式(IIIa)の化合物の計量量の比が5:1〜1000:1であるように実施される。添加は、例えば、小分けして、半連続的にまたは連続的に行うことができる。添加は特に好ましくは小分けして行われる。添加中の式(II)の化合物対式(III)のまたは式(IIIa)の化合物の計量量の比は特に好ましくは5:1〜20:1である。
【0050】
例えば、全反応を基準とする、使用される式(II)の化合物のおよび式(III)のまたは式(IIIa)の化合物の計量量比は、1:2〜10:1、好ましくは1:1〜5:1、特に好ましくは1:1〜2:1であることができる。
【0051】
特に好ましい一実施形態では、式(IIa)の化合物は好適な塩基と接触させられる。初期装入物は次に反応温度に加熱される。式(IIIa)の化合物は次に、添加中の式(II)の化合物対式(IIIa)の化合物の計量量比が5:1〜20:1であるように小分けして添加される。好ましい一実施形態では、反応温度は135℃〜180℃である。
【0052】
本発明による方法で、式(I)の化合物を工業的プロセスで高収率で調製することが可能である。その作業はそれ自体公知の方法で、例えば公知の溶媒、例えば水およびメチル第三ブチルエーテル、での抽出によって行うことができる。
【0053】
本発明に従って製造される式(I)の化合物は、例えばファインケミカル、薬剤、例えば抗鬱剤、抗生物質またはセレトニン再摂取阻害剤、および農薬の製造のための中間体として特に好適である。
【実施例】
【0054】
1.4−[4−トリフルオロメトキシフェノキシ]ピリジンの合成
36.4gのカリウム第三ブチラート(0.32モル)を、不活性雰囲気下で室温で200mlのN,N−ジメチルアセトアミドに溶解させた。35.3gの4−トリフルオロメトキシフェノール(0.19モル)を次に、40分間にわたって撹拌される溶液に添加した。溶液を次に100℃に加熱し、20gの4−クロロピリジン塩酸塩(0.13モル)を2時間にわたって4部にわけて反応液に添加した。反応液を140℃に加熱し、140℃で24時間撹拌した。5.0gのカリウム第三ブチラート(0.045モル)を添加し、反応物をさらなる16時間還流で撹拌した。反応液を室温に冷却し、100mlの水および100mlのメチル第三ブチルエーテルと混ぜ合わせ、10%濃度塩酸を使用してpHを1〜2に調整した。相を分離した。水相を50mlの15%濃度水酸化ナトリウム溶液でpHを11に調整し、各場合に100mlのメチル第三ブチルエーテルで3回抽出した。合わせた有機相を500mlの水で洗浄した。溶媒を減圧下で除去した。これにより、85.5重量%の純度の25.3gの4−[4−トリフルオロメトキシフェノキシ]ピリジン(0.085モル)および理論の65.5モル%の収率を得た。
【0055】
2.4−[4−メチルフェノキシ]ピリジンの合成
40.4gのカリウム第三ブチラート(0.36モル)を、不活性雰囲気下で室温で220gのN,N−ジメチルアセトアミドに溶解させた。19.5g(0.18モル)のp−クレゾールを次に、40分間にわたって撹拌される溶液に添加した。溶液を次に140℃に加熱し、18gの4−クロロピリジン塩酸塩(0.12モル)を30分間隔で10部にわけて反応液に添加した。反応液を140℃で60時間撹拌した。反応液を室温に冷却し、100mlの水および150mlのメチル第三ブチルエーテルと混ぜ合わせ、37%濃度塩酸を使用してpHを1に調整した。相を分離した。水相を、50%濃度水酸化ナトリウム溶液を使用してpHを11より大きくなるように調整し、各場合に150mlのメチル第三ブチルエーテルで2回抽出した。有機相を一緒にした。溶媒を減圧下に除去した。これにより、20.5gの4−[4−メチルフェノキシ]ピリジン(0.11モル、理論の91モル%)を得た。
【0056】
3.4−フェノキシピリジンの合成
75gのカリウム第三ブチラート(0.63モル)を、不活性雰囲気下で室温で375gのN,N−ジメチルアセトアミドに溶解させた。30g(0.32モル)のフェノールを次に、40分間にわたって撹拌される溶液に添加した。溶液を次に140℃に加熱し、32gの4−クロロピリジン塩酸塩(0.21モル)を5時間にわたって小分けして反応液に添加した。反応液を140℃で19時間撹拌した。反応液を室温に冷却し、100mlの水および150mlのメチル第三ブチルエーテルと混ぜ合わせ、37%濃度塩酸を使用してpHを1に調整した。相を分離した。水相を、50%濃度水酸化ナトリウム溶液を使用してpHを11より大きくなるように調整し、各場合に150mlのメチル第三ブチルエーテルを使用して2回抽出した。有機相を一緒にした。溶媒を減圧下で除去した。これにより、34gのフェノキシピリジン(0.19モル、理論の94モル%)を得た。
【0057】
4.4−[4−メトキシフェノキシ]ピリジンの合成
58.0gのカリウム第三ブチラート(0.52モル)を、不活性雰囲気下で室温で232.3gのN,N−ジメチルアセトアミドに溶解させた。48.2g(0.39モル)の4−メトキシフェノールを次に、撹拌される溶液に添加した。溶液を次に136〜140℃に加熱し、40gのクロロピリジン塩酸塩(0.26モル)を18時間にわたって8部にわけて計量供給した。反応液を140℃で7時間撹拌した。反応液を室温に冷却し、325gの水および300gのメチル第三ブチルエーテルと混ぜ合わせ、37%濃度塩酸を使用してpHを1に調整した。相を分離した。水相を、50%濃度水酸化ナトリウム溶液を使用してpHを11より大きくなるように調整し、各場合に200gのメチル第三ブチルエーテルで2回抽出した。有機相を一緒にした。溶媒を減圧下で除去した。これにより、45.5gの4−[4−メトキシフェノキシ]ピリジン(0.23モル、理論の87モル%)を得た。
【0058】
5.4−[2−トリフルオロメトキシフェノキシ]ピリジンの合成
16.7gのカリウム第三ブチラート(0.15モル)を、不活性雰囲気下で室温で67gのN,N−ジメチルアセトアミドに溶解させた。19.9g(0.11モル)の2−トリフルオロメトキシフェノールを次に、撹拌される溶液に添加した。溶液を次に140℃に加熱し、11.2gのクロロピリジン塩酸塩(0.075モル)を30分間隔で10部にわけて反応混合物に添加し、140℃で60時間撹拌した。反応液を室温に冷却し、150mlの水および150mlのメチル第三ブチルエーテルと混ぜ合わせ、37%濃度塩酸を使用してpHを1に調整した。相を分離した。水相を、50%濃度水酸化ナトリウム溶液を使用してpHを11より大きくなるように調整し、各場合に150mlのメチル第三ブチルエーテルで2回抽出した。有機相を一緒にした。溶媒を減圧下で除去した。これにより、14.2gの4−[2−トリフルオロメトキシフェノキシ]ピリジン(0.057モル、理論の75モル%)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
ARYL−O−HETEROARYL (I)
(式中、ARYLは、
アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アリールアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルキレン、ハロアルコキシ、ハロアルキルチオ、5〜6員環ヘテロアリール、および3〜7員環の飽和または部分不飽和複素環
の群から、互いに独立して選択される基で任意選択的に一置換または多置換されているC〜C20アリールであり、
そして
HETEROARYLは、
アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アリールアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルキレン、ハロアルコキシ、ハロアルキルチオ、5〜6員環ヘテロアリール、3〜7員環の飽和または部分不飽和複素環
の群から、互いに独立して選択される基で任意選択的に一置換または多置換されているピラジニル、ピリジル、ピリミジニルまたはピリダジニルである)
の化合物を調製するための方法であって、式(II)
ARYL−OCat (II)
(式中、ARYLは上記の意味を有し、そしてCatは任意の所望の一価の陽イオンまたは1/n当量のn価の陽イオンである)
の化合物が式(III)
HETEROARYL−Y (III)
(式中、HETEROARYLは上記の意味を有し、そしてYはハロゲンまたは擬ハロゲンである)
の化合物と反応させられることを特徴とする方法。
【請求項2】
ARYLが、アルキル、アリール、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシおよびハロアルキルチオの群から、互いに独立して選択される基で任意選択的に一置換または多置換されているC〜C20アリールである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ARYLが、トリフルオロメトキシ、メトキシおよびメチルの群から、互いに独立して選択される基で任意選択的に一置換または多置換されているC〜C20アリールであることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
HETEROARYLが、アルキル、アリール、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシおよびハロアルキルチオの群から、互いに独立して選択される基で任意選択的に一置換または多置換されているピリジルであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
HETEROARYLが、トリフルオロメトキシ、メトキシおよびメチルの群から、互いに独立して選択される基で任意選択的に一置換または多置換されている4−ピリジルであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
HETEROARYL−Yが4−クロロピリジンであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記式(I)の化合物が4−[4−トリフルオロメトキシフェノキシ]ピリジン、4−[4−メチルフェノキシ]ピリジン、4−フェノキシピリジン、4−[4−メトキシフェノキシ]ピリジンおよび4−[2−トリフルオロメトキシフェノキシ]ピリジンであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
式(II)の化合物への式(III)のまたは式(IIIa)の化合物の添加が、添加中の式(II)の化合物対式(III)のまたは式(IIIa)の化合物の定量比が5:1〜1000:1であるような方法で行われることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記添加が、添加中の式(II)の化合物対式(III)のまたは式(IIIa)の化合物の定量比が5:1〜20:1であるように行われることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
反応温度が20℃〜300℃であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
反応温度が135℃〜180℃であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
反応が元素の周期表の4から12族の遷移金属を本質的に含まないで実施されることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記反応がN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、p−キシレンまたはキシレン異性体混合物の存在下に行われることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
化合物(IIa)からの化合物(II)の調製が、対応する酸が10より大きいpKa値を有する好適な塩基を使用して実施されることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
薬剤、農薬または中間体の生成のための請求項1から14のいずれか一項に記載の方法によって調製される化合物(I)の使用。

【公開番号】特開2010−100623(P2010−100623A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−244836(P2009−244836)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(506207853)サルティゴ・ゲーエムベーハー (35)
【Fターム(参考)】