説明

ヘドロ封じ込め工法およびそれに使用する水底層拘束部材および水底層拘束用蛇籠

【課題】海域、湖沼、河川、運河等において、浅場を水底層の上層に造成する際に、施工性が簡易で、ヘドロ等の水底層の強度性状による悪影響を受け難く、生息する生物の育成に適した空間が安定して得られると共に、現在、産業廃棄物として処分されている貝殻の有効利用も図ることができる、ヘドロ封じ込め工法およびそれに使用する水底層拘束部材および、これを収める水底層拘束用蛇籠を提供する。
【解決手段】線状部材に挿通する2枚貝等の皿状の貝殻を、該線状部材の長手方向に間隔を存して略平行に配置して並べることで数珠つなぎにして形成した水底層拘束部材を、水底層拘束用蛇籠の内部に貝殻の周縁位置が間隔をもって相互に重なり合う状態で収め、この水底層拘束用蛇籠を水底層の上層に複数個水平方向に設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海域、湖沼、河川、運河等において、水底層の上層に浅場を造成するヘドロ封じ込め工法およびそれに使用する水底層拘束部材および水底層拘束用蛇籠に関し、加えて水底層拘束部材として、現在、産業廃棄物として処分されている貝殻を有効活用するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、海域、湖沼、河川、運河等の水域環境改善に向けた社会的ニーズが高まり、この有効な実現手段として浅場の造成が注目されている。またこの様な、水底での新たな浅場の造成には、環境への配慮として天然材料の利用、さらに望ましくは、現在、産業廃棄物として処分されている天然材料の活用が時代の要請となっている。
【0003】
浅場造成手段の従来技術としては、例えば、海底の一定領域を区画する潜堤を築き、区画された領域内部に砂材を撒き出すもの、また、同様の目的のため産業廃棄物を活用するものとして、鉄鋼製造プロセスで発生する高炉スラグを用いるものなどがある(例えば下記特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特許第3143776号公報
【特許文献2】特開2005−240543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる浅場の造成は、低コスト、高能率で行うことが課題となるが、ここで問題となるのは、浅場を造成する水域の底層部に堆積されたヘドロの処分である。
【0005】
従来、このヘドロ処理には、1)ヘドロを浚渫により除去する方法、2)ヘドロの上層に砂等を敷き込む覆砂手段によるヘドロの封じ込め方法、が行われてきたが、以下のような理由により何れも有効な解決手段とはなり得ていない。
【0006】
1)については、除去したヘドロの陸上での処理、廃棄、投棄に広大な場所を要することと、ヘドロが含有する有機物質処理に要する費用が膨大である。2)では、浅場造成のために敷き込まれた砂2が、一般的に極めて低強度のヘドロ層1の内部に埋没してしまい、覆砂効果が十分に発揮されない。図9はその様子を示すもので、敷き込まれる砂を周囲から拘束するための潜堤となる砕石3を投入しても、ヘドロ内に埋没してしまい、潜堤として機能しない。
【0007】
本発明の目的は前記従来技術の不都合を解消し、海域、湖沼、河川、運河等において、浅場を水底層の上層に造成する際に、施工性が簡易で、ヘドロ等の水底層の強度性状による悪影響を受け難く、生息する生物の育成に適した空間が安定して得られる共に、現在、産業廃棄物として処分されている貝殻の有効利用も図ることができる、ヘドロ封じ込め工法およびそれに使用する水底層拘束部材および、これを収める水底層拘束用蛇籠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明はヘドロ封じ込め工法として、線状部材に挿通する2枚貝等の皿状の貝殻を、該線状部材の長手方向に間隔を存して略平行に配置して並べることで数珠つなぎにして形成した水底層拘束部材を、水底層拘束用蛇籠の内部に貝殻の周縁位置が間隔をもって相互に重なり合う状態で収め、この水底層拘束用蛇籠を水底層の上層に複数個水平方向に設置すること、および、水底層拘束用蛇籠は、水底層の上層に複数個水平方向に設置し、かつ、複数段水深方向に積層すること、さらに、水底層拘束用蛇籠は、その内部に納めた水底層拘束部材が挿通される線状部材の長手方向が略直交するように、水底に設置することを要旨とするものである。
【0009】
ヘドロ封じ込め工法に使用する水底層拘束部材としては、2枚貝等の皿状の貝殻の略中央部に孔をあけ、線状部材を前記貝殻に設けた孔を挿通するとともに、線状部材長手方向への貝殻の位置移動を規制し、貝殻同士の間隔を保持する係止部材を貝殻間で線状部材に設け、貝殻を間隔を存して略平行に並べることで数珠つなぎにして形成したこと、線状部材に挿通される貝殻がホタテ貝であること、もしくは、牡蠣、アワビであること、線状部材に設ける係止部材は、線状部材が貫通する孔を中心部に有する断面○型状であること、または、線状部材が貫通する孔を中心部に有し、かつその側面に線状部材が嵌合される切り込み部を有する断面C型状であり、かつ、線状部材に嵌合した際には切り込み部が閉じる弾性部材からなること、または、線状部材そのものに輪差を設けることを要旨とするものである。
【0010】
ヘドロ封じ込め工法に使用する水底層拘束用蛇籠としては、線状部材に挿通する2枚貝等の皿状の貝殻を、該線状部材の長手方向に間隔を存して略平行に配置して並べることで数珠つなぎにして形成した水底層拘束部材を、水底層拘束用蛇籠の内部に貝殻の周縁位置が間隔をもって相互に重なり合う状態で収めると共に、線状部材の両端部を水底層拘束用蛇籠の対向する面部に結合することを要旨とするものである。
【0011】
本発明による水底層拘束部材は、線状部材に挿通する2枚貝等の皿状の貝殻を線状部材の長手方向に間隔を存して略平行に並べ、数珠つなぎにして形成したものであり、水底層拘束部材が水底層拘束用蛇籠の内部に貝殻の周縁位置が相互に重なり合う状態で収めることで、貝殻間に存在する空隙面積が限定されるので、ヘドロを確実に拘束することができる。浅場造成水域の下層に堆積するヘドロは、一般的に極めて低強度であることから水底層拘束用蛇籠はヘドロ層内にある程度沈降するが、通常の場合、水底層拘束用蛇籠のヘドロ層内への埋没は最大でも水底層拘束用蛇籠の一層分程度、あるいはそれ以下の深さに留まる。水底層拘束用蛇籠はそれ自体が軽量であり、内部に設置される貝殻の比重も概ね1.5以下であることから埋没防止に有効に作用する。水底への敷設はクレーンによる吊下げ作業を効率的に行うべく、複数の水底層拘束用蛇籠を平面的に予め連結し、これを水底に敷設すると好適である。さらに広範な水底面に敷設するためには、ダイバー等による作業で水底に設置した水底層拘束用蛇籠を相互に連結しても良い。
【0012】
この様に、ヘドロ等からなる水底層上に設置する水底層拘束用蛇籠内に、水底層拘束部材を設け、水底層拘束用蛇籠のヘドロ等の水底層中への沈降を妨げることにより、水底層上に安定して設置できるようにすると共に、浅場造成のために撒き立てられる砂材等の材料を水底層拘束用蛇籠内に封じ込めて、撒き立て材料の水流による移動を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように本発明のヘドロ封じ込め工法およびそれに使用する水底層拘束部材および水底層拘束用蛇籠は、浅場を造成する水域に堆積したヘドロ等の水底層に直接設置するのみで、ヘドロ層に対する浚渫、廃棄、投棄等の特段の工程を要することなく砂等の浅場造成材料を水底層上に撒き立てることができ、かつまた、現在、産業廃棄物としての処分を要し、その再利用の社会的ニーズが全国的に高まっている天然材料の貝殻を有効に活用できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。先に、本発明のヘドロ封じ込め工法に使用する水底層拘束部材および水底層拘束用蛇籠について説明すると、図1は本発明の水底層拘束用蛇籠の側面図、図2は同上縦断側面図で、図中4は籠体、5は水底層拘束部材である。
【0015】
水底層拘束部材5は、比較的面積が広く、形状が略平皿状や略平板状の貝殻であるホタテや牡蠣等の2枚貝もしくは巻貝であるアワビの貝殻6の略中央部に孔7をあけ、この貝殻6に設けた孔7に線状部材8を挿通するとともに、線状部材8の長手方向への貝殻6の位置移動を規制し、貝殻6同士の間隔を保持する係止部材9を貝殻6間で線状部材8に設け、貝殻6を平行に間隔を存して並べ、数珠つなぎにして形成した。
【0016】
線状部材8はワイヤー等の金属製、ナイロンロープ等の合成樹脂製を問わない。天然繊維の紐を使用することもできる。
【0017】
係止部材9は、線状部材8に設けられるもので、図示は省略するが貫通する孔を中心部に有する断面○型状のパイプもしくは輪体によるもの、もしくは線状部材8が貫通する孔を中心部に有し、かつその側面に線状部材が嵌合される切り込み部を有する断面C型状であり、かつ、線状部材に嵌合した際には切り込み部が閉じる様に弾性部材からなるホース体によるものなどである。
【0018】
係止部材9が、断面○型状のパイプもしくは輪体による場合は金属製、合成樹脂製、木製等を問わないが、比較的硬質であり、線状部材8に貝殻6とこの係止部材9を交互に挿通して、係止部材9が貝殻6間に介在することで、線状部材8の長手方向への貝殻6の位置移動を規制し、貝殻6同士の間隔を保持する。
【0019】
係止部材9が、弾性部材からなるホース体による場合は合成樹脂や合成ゴム等可撓性のある材料を使用するが、係止部材9が貝殻6間に介在することで、線状部材8の長手方向への貝殻6の位置移動を規制し、貝殻6同士の間隔を保持する点は同様である。
【0020】
線状部材8に係止部材9と貝殻6を交互に挿通した後、C型断面の切り込み部を閉合するように係止部材9を変形させる。または、予め貝殻6を挿通した線状部材8を後述の籠体4内に掛渡し、その後、この係止部材9の切り込み部を線状部材に嵌合し、最終的にこれを併合するように変形させる等により作成することもできる。
【0021】
また、他の実施形態として、係止部材9は、線状部材8そのものに輪差を設けることにより形成することもできる。線状部材8自体に輪差を作りこれを結んだり、線状部材に、別の線状部材を結びつけて作成する。この場合、係止部材9は、貝殻6に設けた孔7を通り抜けない大きさであればよく貝殻6の前後でこれを形成することで、貝殻6を一枚一枚拘束し、貝殻6同士間隔保持は係止部材9相互の間隔調整で行う。
【0022】
前記いずれの場合にも線状部材8の端部には係止輪体8aを形成しておくこともできる。
【0023】
水底層拘束用蛇籠となる籠体4には、その内部に水底層拘束部材5を、貝殻6の周縁位置が間隔をもって相互に重なり合う状態で収め、線状部材の長手方向への貝殻の移動を拘束できるもので、水底に、籠体4の形状を独自で保持できるように設置する必要がある。よって、形状が無定形に変形してしまう網袋状ではなく、少なくとも各辺部材が、それを囲む面を保持できる程度の剛性を有していることが望ましい。材質は金属、合成樹脂を問わない。
【0024】
また、運搬や保管時の取り扱いを容易にするため、籠体4を折り畳み可能に構成しても良い。材質は硫化物や塩分に対する耐腐食性を有すれば特に限定しないが、海中に設置する漁礁等に従来から用いられ耐久性が実証されているポリエステルを用いれば好適である。図示の水底層拘束用蛇籠は直方体状であるが、これに限らず立方体、円柱、多角形柱等の形状でも良い。
【0025】
さらに、籠体4に生分解性樹脂組成物を用いてもよい。この場合の生分解性樹脂組成物は生分解性天然素材と生分解性合成樹脂の混合からなり、生分解性天然素材は、米粉、澱粉、変性澱粉、澱粉誘導、セルロース、セルロース誘導体等を用いることが可能であり、例えば米粉を使用した場合、その粒径は1〜100μm程度の微細な大きさが適宣であり、好ましくは38μm(400メッシュ)である。
【0026】
また、生分解性合成樹脂としては、脂肪族ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリラクチド酸、ポリグリコール酸、アセチルセルロース、ポリビニルアルコール等、従来知られている各種の生分解性合成樹脂を用いることができる。
【0027】
生成する生分解性樹脂組成物を100重量部としたときに生分解性天然素材と生分解性合成樹脂との混合比が、生分解性天然素材:生分解性合成樹脂=2〜40:98〜60になるような成分の配合が好ましい。
【0028】
そして、例えばペレット状の樹脂組成物を製造するには、前記生分解性合成樹脂の所定量をその融点以上の温度で押出機中で溶融混練し、この混練物の中に、前記生分解性天然素材(米粉)の所定量を混入して分散・混合させ、これをノズルから紐状に押し出すとペレット状に造粒される。
【0029】
得られたペレット状樹脂組成物は、従来の合成樹脂ペレット状組成物と同様に射出成形、押出成形(インフレーションやTダイ成形用)、ブロー成形、シート成形、真空成形により、ネットへの成形が可能である。
【0030】
籠体4内で、水底層拘束部材5を形成する線状部材8は、籠体4の平面左右方向(図面1の左右方向)及び側面奥行き方向(図面2の奥行き方向)の断面から見て略平行に掛渡され、線状部材8の両端部は籠体4を構成する面部に接続されている。
【0031】
さらに、貝殻を挿通する線状部材8は、隣接する貝殻6が、籠体4の平面左右方向(図面1の左右方向)及び側面奥行き方向(図面2の奥行き方向)の断面から見て、貝殻の周縁位置が間隔をもって相互に重なり合うように、籠体4内に掛渡される。
【0032】
これらの貝殻6は、線状部材8の所定位置に係止部材9により固定されているため、線状部材8の長手方向への移動が生ぜず、籠体4(水底層拘束用蛇籠)下部のヘドロ等の水底層や、上層に撒き立てられる砂等の材料を、これら貝殻6間の空隙に確実に封じ込め、籠体4(水底層拘束用蛇籠)の沈下や水底層拘束部材、撒き立てられる砂等の材料の水流による流出の防止が確実となる。
【0033】
本発明のヘドロ封じ込め工法としては、水底層拘束部材5を納めた籠体4、すなわち、水底層拘束用蛇籠を水深方向に積層する浅場の造成方法で、図5は、ヘドロ層等の水底層への水底層拘束用蛇籠の埋没が比較的浅く、概ね水底層拘束用蛇籠一層分以下の程度の場合の施工例である。
【0034】
初めに、作業船(図示せず)を水上所定位置に到達させて本発明の水底層拘束用蛇籠をクレーン等で吊下げ、水底に設置する。この際、浅場造成水域の下層に堆積するヘドロは、一般的に極めて低強度であることから水底層拘束用蛇籠はヘドロ層内にある程度沈降するが、本発明の水底層拘束用蛇籠内に掛渡された線状部材8に挿通される貝殻6はその周縁位置が水底層拘束用蛇籠の平面方向及び側面方向の断面から見て間隔をもって相互に重なり合うことで貝殻6間に存在する空隙面積が限定されるので、ヘドロを確実に拘束し、水底層拘束用蛇籠のヘドロ層内への埋没は最大でも水底層拘束用蛇籠一層分程度、あるいはそれ以下の深さに留まる。
【0035】
水底層拘束用蛇籠はそれ自体が軽量であり、内部に設置される貝殻の比重も概ね1.5以下であることから埋没防止に有効に作用する。水底への水底層拘束用蛇籠の敷設はクレーンによる吊下げ作業を効率的に行うべく、複数の水底層拘束用蛇籠を平面的に予め連結し、これを水底に敷設すると好適である。
【0036】
さらに広範な水底面に水底層拘束用蛇籠を敷設するためには、ダイバー等による作業で水底の水底層拘束用蛇籠を相互に連結しても良い。
【0037】
ヘドロ層に一部埋没した状態で敷設された水底層拘束用蛇籠の上部から、撒き立て材料としての砂10を作業船のクレーンのバケット11等から投下させることにより、水底層拘束用蛇籠上部に砂10を投入する。
【0038】
水底層拘束用蛇籠内に掛渡された線状部材8に挿通される貝殻6はその周縁位置が水底層拘束用蛇籠の平面方向及び側面方向の断面から見て間隔をもって相互に重なり合うことで貝殻間に存在する空隙面積が限定されるので、撒き立て材料である砂10が貝殻6間に確実に封じ込められ、海底の水流による移動を防止できる。
【0039】
本実施例では、水底層拘束用蛇籠の下層部分にはヘドロ層αが充填、上層部分には撒き立て部材である砂10が充填され、浅場が効果的に造成される。
【0040】
図6は、浅場造成水域に、比較的深いヘドロ等の水底層が水底層拘束用蛇籠の一層分以上、堆積している場合の施工例を示す。ヘドロ等の水底層が一定の厚み以上となる場合は、本発明の水底層拘束用蛇籠といえども、一層分のみではヘドロ層α内に埋没してしまう事態が起こり得る。
【0041】
この場合は、水底層拘束用蛇籠を複数段積み上げて海底面に吊下げ敷設することにより上段の水底層拘束用蛇籠をヘドロ層α上部に露出させ、その後は上述の方法によって撒き立て材料である砂10を水底層拘束用蛇籠上部から投下し浅場を造成する。なお、最下段の水底層拘束用蛇籠には沈下促進用として砕石12を投入しておく。
【0042】
この場合でも、クレーンによる吊下げ作業の効率化のため、複数の水底層拘束用蛇籠を平面的及び高さ方向に予め連結し、これを水底に敷設することや、さらに広い水底面に水底層拘束用蛇籠を敷設するためには、ダイバー等による作業で水底の水底層拘束用蛇籠を相互に連結しても良い。また、ヘドロ層αの厚みが予め判明していれば、この厚みに基づいて露出するに足る層分の水底層拘束用蛇籠を予め複数個積層して連結し、これを水底層上に敷設しても良い。
【0043】
なお、図5、図6に示す実施例では、構成面の各面が全て平面であり、かつネット状の水底層拘束用蛇籠を元に説明したが、水底面の起伏状態に応じて底面形状の傾斜や凹凸を調整したものや、水底面や撒き立て材料の拘束効果に配慮して、構成面の一部をネットに替えて板状部材とするものを採用しても良い。
【0044】
図7は、水底層拘束用蛇籠内に設置する貝殻6の面方向が一方向に整列するのみでは、面の開放方向からヘドロ等の水底層や砂等の撒き立て材料が流出してしまい、十分に拘束、封じ込めが出来ないという問題生ずる場合の施工例を示す。
【0045】
この図7に示すように、貝殻6の面方向が一方向(図面で上下方向)に整列して設置された中央部の水底層拘束用蛇籠群Aを包囲するように、水底層拘束用蛇籠群A内の線状部材の掛渡し方向と略直交する方向に、線状部材8を掛渡した水底層拘束用蛇籠群Bを敷設して、水底層拘束用蛇籠群Aで移動する(図面で上下方向)可能性のあるヘドロ等の水底層や撒き立て材料を、水底層拘束用蛇籠群Bにより確実に拘束、封じ込めができるようにしている。
【0046】
水底層拘束用蛇籠群A、Bの敷設パターンはこれに限定されるものではなく、要点は、水底層拘束用蛇籠が施設される水域を平面的に見て、中心部に施設する水底層拘束用蛇籠群に拘束されるヘドロ等の水底層や撒き立て材料の移動を、それを包囲する水底層拘束用蛇籠群が拘束できることである。
【0047】
なお、図示は省略するが、本発明に係る水底層拘束部材を水底層拘束用蛇籠内に収めたものを用いてその上部から覆砂をすることにより、現在問題となっているダム湖における富栄養化の防止対策としても活用できる。
【0048】
ダム湖の湖底に堆積した有機汚泥(ヘドロ等)からは栄養塩が流出すると、湖水に富栄養化をもたらし、アオコ等が異常発生して環境悪化の要因となるが、この対策として、湖底に堆積した有機汚泥の上層を覆砂する手段がある。本発明に係る水底層拘束部材5を水底層拘束用蛇籠に収めたものを水底に設置して、その上部から覆砂を行えば、上述の問題を解決することが出来、ダム湖の水質改善が実現できる。
【0049】
さらに、本発明の水底層拘束部材を納めた水底層拘束用蛇籠は、ヘドロもしくはそれに近い状態での場所での護岸造成に伴う浅場づくりで、一度掘り下げた水底部を埋め戻す場合にも、基盤として適用することが可能である。図8はその様子を示すもので、新設護岸14を構築する際に、工事によって掘り下げた場所に本発明の水底層拘束用蛇籠を並べて基礎とし、その上に仮置き材料13を撒きだす。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の水底層拘束用蛇籠の1実施形態を示す側面図である。
【図2】本発明の水底層拘束用蛇籠の1実施形態を示す縦断側面図である。
【図3】本発明の水底層拘束部材の製作過程を示す斜視図である。
【図4】本発明の水底層拘束部材の側面図である。
【図5】本発明のヘドロ封じ込め工法の1実施形態を示す側面図である。
【図6】本発明のヘドロ封じ込め工法の他の実施形態を示す側面図である。
【図7】本発明のヘドロ封じ込め工法のさらに他の実施形態を示す平面図である。
【図8】本発明の水底層拘束用蛇籠の利用例の1つを示す側面図である。
【図9】ヘドロの封じ込めが出来ないことの説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1…ヘドロ層 2…砂
3…砕石 4…籠体
5…水底層拘束部材 6…貝殻
7…孔 8…線状部材
8a…係止輪体
9…係止部材 10…砂
11…クレーンのバケット 12…砕石
13…仮置き材料 14…新設護岸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状部材に挿通する2枚貝等の皿状の貝殻を、該線状部材の長手方向に間隔を存して略平行に配置して並べることで数珠つなぎにして形成した水底層拘束部材を、水底層拘束用蛇籠の内部に貝殻の周縁位置が間隔をもって相互に重なり合う状態で収め、この水底層拘束用蛇籠を水底層の上層に複数個水平方向に設置することを特徴とするヘドロ封じ込め工法。
【請求項2】
水底層拘束用蛇籠は、水底層の上層に複数個水平方向に設置し、かつ、複数段水深方向に積層する請求項1記載のヘドロ封じ込め工法。
【請求項3】
水底層拘束用蛇籠は、その内部に納めた水底層拘束部材が挿通される線状部材の長手方向が略直交するように、水底に設置する請求項1または請求項2記載のヘドロ封じ込め工法。
【請求項4】
2枚貝等の皿状の貝殻の略中央部に孔をあけ、線状部材を前記貝殻に設けた孔を挿通するとともに、線状部材長手方向への貝殻の位置移動を規制し、貝殻同士の間隔を保持する係止部材を貝殻間で線状部材に設け、貝殻を間隔を存して略平行に並べることで数珠つなぎにして形成したことを特徴とするヘドロ封じ込め工法に使用する水底層拘束部材。
【請求項5】
線状部材に挿通される貝殻がホタテ貝である請求項4記載のヘドロ封じ込め工法に使用する水底層拘束部材。
【請求項6】
線状部材に挿通される貝殻が牡蠣である請求項4記載のヘドロ封じ込め工法に使用する水底層拘束部材。
【請求項7】
線状部材に挿通される貝殻がアワビである請求項4記載のヘドロ封じ込め工法に使用する水底層拘束部材。
【請求項8】
線状部材に設ける係止部材は、線状部材が貫通する孔を中心部に有する断面○型状である請求項4記載のヘドロ封じ込め工法に使用する水底層拘束部材。
【請求項9】
線状部材に設ける係止部材は、線状部材が貫通する孔を中心部に有し、かつその側面に線状部材が嵌合される切り込み部を有する断面C型状であり、かつ、線状部材に嵌合した際には切り込み部が閉じる弾性部材からなる請求項4記載のヘドロ封じ込め工法に使用する水底層拘束部材。
【請求項10】
線状部材に設ける係止部材は、線状部材そのものに輪差を設ける結び目である請求項4記載のヘドロ封じ込め工法に使用する水底層拘束部材。
【請求項11】
線状部材に挿通する2枚貝等の皿状の貝殻を、該線状部材の長手方向に間隔を存して略平行に配置して並べることで数珠つなぎにして形成した水底層拘束部材を、水底層拘束用蛇籠の内部に貝殻の周縁位置が間隔をもって相互に重なり合う状態で収めると共に、線状部材の両端部を水底層拘束用蛇籠の対向する面部に結合することを特徴とするヘドロ封じ込め工法に使用する水底層拘束用蛇籠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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