ヘリウム分離材及びその製造方法
【課題】 耐熱性に優れ、ヘリウムの透過性及び選択性に優れるヘリウム分離材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明のヘリウム分離材1は、連通孔を有し且つ無機材料からなる基体11と、該基体11の表面層を被覆し且つ非晶質物質を含む非晶質物質含有膜12と、上記表面層における連通孔内に内接した非晶質物質含有膜12の表面に配設され且つ結晶質物質を含む結晶質物質含有膜13とを備え、該結晶質物質含有膜に包囲された細孔14(平均径0.261〜0.288nm)を有する。
【解決手段】 本発明のヘリウム分離材1は、連通孔を有し且つ無機材料からなる基体11と、該基体11の表面層を被覆し且つ非晶質物質を含む非晶質物質含有膜12と、上記表面層における連通孔内に内接した非晶質物質含有膜12の表面に配設され且つ結晶質物質を含む結晶質物質含有膜13とを備え、該結晶質物質含有膜に包囲された細孔14(平均径0.261〜0.288nm)を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性に優れ、ヘリウムの透過性及び選択性に優れるヘリウム分離材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分子径の小さなヘリウム、水素等からなるガスを含む混合ガスから、これらのガスを選択的に分離する材料(分離膜)及びその方法が検討されている。
ヘリウム分離材としては、高分子からなる分離膜が知られており、特許文献1には、銀又は銅を含む炭素膜からなる気体分離膜が開示されている。また、特許文献2には、特定の構造を有するポリエーテル共重合体と、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン等の多官能アルコキシシランとからなる組成物を加水分解及び重縮合して得られる高分子型の気体分離膜が開示されている。
【特許文献1】特開2003−53167号公報
【特許文献2】特開2005−74317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高分子からなる膜は、ガスの透過性が十分でなく、また、200℃以上の高温域において形状が保持できず、使用できないといった問題点があった。
そのため、無機材料からなるガス分離材が検討されており、水素の分子径より小さな細孔を有する、即ち、オングストロームオーダーに孔径制御され、且つ、優れた透過性及び選択性を併せ持つガス分離材が求められている。
本発明の目的は、耐熱性に優れ、ヘリウムの透過性及び選択性に優れるヘリウム分離材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、無機材料からなる多孔質基体の表面層(基体の表面、及び、基体表面近傍における連通孔の内壁表面)に、非晶質物質を含む膜と、該膜上、特に連通孔内の該膜上に積層された結晶質物質を含む膜とを備えるヘリウム分離材において、結晶質物質を含む膜を内壁として包囲された、分子径の小さな細孔により、ヘリウムの透過性及び選択性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
1.連通孔を有し且つ無機材料からなる基体と、該基体の表面層を被覆し且つ非晶質物質を含む非晶質物質含有膜と、上記表面層における連通孔内に内接した非晶質物質含有膜の表面に配設され且つ結晶質物質を含む結晶質物質含有膜とを備え、該結晶質物質含有膜に包囲された細孔を有することを特徴とするヘリウム分離材。
2.上記非晶質物質含有膜が非晶質無機物質からなり、且つ、上記結晶質物質含有膜が結晶質無機物質からなる上記1に記載のヘリウム分離材。
3.上記細孔の平均径が0.261〜0.288nmである上記1又は2に記載のヘリウム分離材。
4.上記非晶質物質が、SiO2、SiOC、SiC、SiCN及びSiBCNからなる群から選ばれた少なくとも1種である上記1乃至3のいずれかに記載のヘリウム分離材。
5.上記連通孔内に内接している上記非晶質物質含有膜の平均厚さが1.5〜100nmである上記1乃至4のいずれかに記載のヘリウム分離材。
6.上記結晶質物質含有膜の平均厚さが0.5〜4nmである上記1乃至5のいずれかに記載のヘリウム分離材。
7.上記結晶質物質がSiCである上記1乃至6のいずれかに記載のヘリウム分離材。
8.上記基体を構成する無機材料が、Al2O3、ZrO2、ムライト、コーディエライト、AlN、Si3N4及びSiCからなる群から選ばれた少なくとも1種である上記1乃至7のいずれかに記載のヘリウム分離材。
9.非晶質物質形成用組成物を、連通孔を有し且つ無機材料からなる基体の、少なくとも該連通孔の内壁に浸透させ塗膜を形成する塗膜形成工程と、該塗膜を含む基体を熱処理し、上記連通孔内に内接し且つ非晶質物質を含む非晶質物質含有膜を形成する非晶質物質含有膜形成工程と、上記非晶質物質含有膜の表面に、結晶質物質を含む結晶質物質含有膜を形成する結晶質物質含有膜形成工程とを備えることを特徴とするヘリウム分離材の製造方法。
10.上記非晶質物質形成用組成物が、ポリカルボシラン、ポリシラン、ポリシラザン及びポリカルボシラザンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する上記9に記載のヘリウム分離材の製造方法。
11.上記基体を構成する無機材料が、Al2O3、ZrO2、ムライト、コーディエライト、AlN、Si3N4及びSiCからなる群から選ばれた少なくとも1種である上記9又は10に記載のヘリウム分離材の製造方法。
12.上記基体が有する連通孔の平均径が、5〜200nmである上記9乃至11のいずれかに記載のヘリウム分離材の製造方法。
13.上記非晶質物質含有膜形成工程における熱処理温度が、600〜1,500℃である上記9乃至12のいずれかに記載のヘリウム分離材の製造方法。
14.上記結晶質物質含有膜形成工程において、化学的気相合成を行う上記9乃至13のいずれかに記載のヘリウム分離材の製造方法。
15.上記結晶質物質含有膜形成工程における化学気相合成が、珪素化合物のガス、及び炭素化合物のガスの存在下で加熱する工程を備える上記14に記載のヘリウム分離材の製造方法。
16.上記化学気相合成が、珪素化合物のガス、及び炭素化合物のガスの導入並びに排気を行いながら加熱する工程を備える上記15に記載のヘリウム分離材の製造方法。
17.上記珪素化合物が、モノシラン、ジシラン及びジクロロシランからなる群から選ばれた少なくとも1種である上記15又は16に記載のヘリウム分離材の製造方法。
18.上記炭素化合物が、アセチレン、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、塩化メチル、塩化ビニルからなる群から選ばれた少なくとも1種である上記16又は17に記載のヘリウム分離材の製造方法。
19.上記9乃至18のいずれかに記載の方法により得られたことを特徴とするヘリウム分離材。
【発明の効果】
【0005】
本発明のヘリウム分離材によれば、上記構成を有することから200℃以上、好ましくは400℃以上、更に好ましくは500℃以上の高温域において良好な形状保持性を有し、長寿命であり、ヘリウムの透過性及び選択性に優れる。
また、本発明のヘリウム分離材の製造方法によれば、耐熱性に優れ、ヘリウムの透過性及び選択性に優れるヘリウム分離材を容易に製造することができる。特に、容易に且つ効率的に膜厚制御された、非晶質物質を含む非晶質物質含有膜、及び結晶質物質を含む結晶質物質含有膜を形成することができ、その結果、ヘリウムのみが透過する細孔を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
1.ヘリウム分離材
本発明のヘリウム分離材は、連通孔を有し且つ無機材料からなる基体11と、該基体11の表面層を被覆し且つ非晶質物質を含む非晶質物質含有膜12(以下、膜[A]ともいう。)と、上記連通孔内に内接した非晶質物質含有膜[A]12の表面に配設され且つ結晶質物質を含む結晶質物質含有膜13(以下、膜[B]ともいう。)とを備え、該結晶質物質含有膜[B]13に包囲された細孔14を有することを特徴とする(図1参照)。この細孔14は、上記連通孔の内壁に膜[A]12及び膜[B]13が順次積層したことにより、膜[B]13により包囲形成されたものである。即ち、この細孔14は、上記連通孔の内径(細孔径)が縮小されており、その内径は、ヘリウム分子径より長く水素分子径より短い。従って、本発明のヘリウム分離材を用いることにより、ヘリウムを含む混合ガスは、上記細孔14を通るヘリウムと、この細孔14を通らない、それ以外のガスとに分離される。
本発明において、「基体の表面層」とは、基体の表面、及び、基体表面近傍における連通孔の内壁表面の両方を意味し、具体的には、基体の表面並びに該基体から内部5μm程度の深さまでの部分の両方を意味する。また、「非晶質」及び「結晶質」は、X線回折により測定される結晶化度が、それぞれ、40%未満及び60%以上であることを意味する。
【0007】
1−1.基体
この基体は、1面から他面へと線状又は網目状に貫通する細孔、即ち、連通孔を有し、無機材料からなるものであれば、その構造、形状、大きさ等は、特に限定されない。この連通孔は、単一の貫通孔であってよいし、複数の貫通孔が規則的又は不規則的に連続してもよい。
上記基体は、好ましくは多孔体であり、無機材料から製造されたものであってよいし、有機材料(高分子、有機金属化合物、多糖類等)から製造されたものであってもよい。従って、上記基体の構成材料の例としては、アルミニウム化合物、珪素化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物等が挙げられる。これらは、酸化物、窒化物及び炭化物のいずれでもよい。
【0008】
アルミニウム化合物としては、アルミナ(Al2O3)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、コーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、窒化アルミニウム(AlN)等が挙げられる。
珪素化合物としては、シリカ(SiO2)、SiOC、窒化珪素(Si3N4)炭化珪素(SiC)、SiCN、SiBCN、サイアロン(SiAlON)等が挙げられる。
ジルコニウム化合物としては、ジルコニア(ZrO2)、ホウ化ジルコニウム(ZrB2)等が挙げられる。
また、チタン化合物としては、チタニア(TiO2)、チタン酸アルミニウム(Al2O3・TiO2)等が挙げられる。
これらのうち、耐熱性の観点から、Al2O3、ムライト、コーディエライト、AlN、Si3N4、SiC及びZrO2が好ましい。
【0009】
上記基体は、上記無機材料の1種のみからなる単一構造体であってよいし、その積層体であってもよい。また、2種以上の無機材料を含む単一構造体であってよいし、その積層体であってもよい。更には、互いに異なる無機材料からなる構造体を積層してなる積層体であってもよい。
【0010】
上記基体の形状は、目的、用途等に応じて選択されるが、塊状(多面体、球等)、板状(平板、曲板等)、筒状(円筒、角筒等)、半筒状、棒状等とすることができる。
また、基体の大きさも、目的、用途等に応じて選択される。特に、混合ガスの分離に関わる厚さとしては、好ましくは150μm以上である。
本発明のヘリウム分離材の形状及び大きさは、上記基体の形状及び大きさに反映され、ほぼ同等である。
【0011】
上記基体は、市販の多孔体を用いてよいし、特開2000−8193号等に開示された公知の方法により製造されたものを用いてもよい。
【0012】
1−2.非晶質物質含有膜[A]
この膜[A]は、上記基体の表面層を被覆し且つ非晶質物質を含む膜である。従って、上記膜[A]は、基体表面上の膜と、基体表面近傍における連通孔を内接する(連通孔の内周面に沿っている)膜とが連続している。
【0013】
上記膜[A]は、非晶質物質を、通常、60〜100質量%含む膜である。結晶質物質を含んでもよい。
上記非晶質物質としては、非晶質無機物質が好ましく、珪素化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物等が挙げられる。これらは、酸化物、窒化物及び炭化物のいずれでもよく、上記基体の構成材料として例示した化合物を用いることができる。特に、SiO2、SiOC、SiC、SiCN及びSiBCNが好ましい。
上記結晶質物質としては、上記の珪素化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物等における酸化物、窒化物及び炭化物の結晶化物が挙げられる。
【0014】
上記膜[A]は、メソ細孔及び/又はミクロ細孔を備える膜であってよいし、中実体の膜であってもよい。メソ細孔及びミクロ細孔の場合には、通常、上記非晶質物質を主成分とする骨格を備える。
【0015】
上記連通孔内に内接している膜[A]の平均厚さは、好ましくは1.5〜100nm、より好ましくは1.8〜50nm、更に好ましくは2〜30nmである。この厚さが大きすぎると、ガスの透過速度が低下する傾向にある。一方、小さすぎると、膜内に欠陥が生成する傾向にある。
【0016】
上記膜[A]の態様を、断面図を用い、図2及び図3に示す。図2は、膜[A]12が基体11の表面層を被覆した状態(以下、「積層体」という。)の一例を示す概略図であり、基体11が有する、隣り合う連通孔の内径が異なる場合において、基体表面上の膜と、基体表面近傍における連通孔を内接する膜とが連続していることを示す。
また、図3は、膜[A]12が基体11の表面層を被覆した積層体の他の例を示す概略断面図であり、基体11が有する連通孔の内径がより小さい場合には、連通孔が、膜[A]の構成材料によって充填され閉じた状態となる。この場合、充填部は、膜[A]の細孔構造によっては、分子径の小さい特定のガスのみが透過し、ガス分離能を有する場合がある。一方、膜[A]が中実体である場合、基体11の一部となり、本発明のヘリウム分離材の機械的強度、熱的安定性(耐熱性)等を向上させることができる。
尚、図2等の概略図において、基体11の連通孔は、基体11に対して垂直方向に示しているが、斜め方向に連通する場合もある。他の図においても同様である。
【0017】
上記膜[A]の形成方法は、特に限定されないが、例えば、非晶質物質を形成可能な材料を基体の表面層に塗布する等した後、基体が変形、変質等しない温度で熱処理する方法等が挙げられる。詳細な方法は、後述される。
【0018】
1−3.結晶質物質含有膜[B]
この膜[B]は、上記表面層における連通孔内に内接した非晶質物質含有膜[A]の表面に配設され且つ結晶質物質を含む膜である。
【0019】
上記膜[B]は、単結晶及び/又は多結晶からなる結晶質物質を、通常、60〜100質量%含む膜である。非晶質物質を含んでもよい。
上記結晶質物質としては、珪素化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物等が挙げられる。これらは、酸化物、窒化物及び炭化物のいずれでもよい。
【0020】
珪素化合物としては、炭化珪素、窒化珪素、サイアロン等が挙げられる。
アルミニウム化合物としては、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライト等が挙げられる。
チタン化合物としては、チタン酸アルミニウム、炭化チタン、窒化チタン等が挙げられる。
ジルコニウム化合物としては、ジルコニア、ホウ化ジルコニウム等が挙げられる。
これらのうち、SiC、Al2O3、ジルコニア等が好ましく、特に、SiCが好ましい。
【0021】
上記膜[B]は、上記のように、結晶質物質を60質量%以上含み、通常、中実体の緻密な膜であることから、0.288nmを超える分子径の大きなガスが透過しにくい。
【0022】
上記膜[B]の平均厚さは、好ましくは0.5〜4nm、より好ましくは0.6〜3.5nm、更に好ましくは0.7〜3nmである。この平均厚さが小さすぎると、膜[B]の熱的安定性が低下する場合がある。尚、図1のように、ヘリウム分離に係る細孔14は、膜[B]13に包囲されてなるものであり、その内径の平均値が、通常、0.261〜0.288nm、好ましくは0.270〜0.280nmであることから、上記膜[B]の厚さは、その形成の際に調整されて、上記範囲となる。
【0023】
上記膜[B]は、上記連通孔内の膜[A]表面のどの位置にあってもよく、基体の最表面近傍にあってよいし(図4参照)、それより少し内部にあってよいし(図5参照)、更には、膜[A]の全面であってもよい(図6参照)。また、上記膜[B]は、上記基板11表面上の膜[A]の表面にあってもよい(図示せず)。
上記膜[B]の態様を、断面図を用い、図4、図5及び図6に示す。図4は、膜[B]13が、連通孔内の膜[A]12の表面の、基体の最表面近傍に形成されていることを示す概略図である。図5は、膜[B]13が、連通孔内の膜[A]12の表面の、基体の表面から少し内部に形成されていることを示す概略図である。
また、図6は、膜[B]13が、連通孔内の膜[A]12の全表面に形成されていることを示す概略図である。
尚、図4、図5及び図6において、符号131は、連通孔内の膜[A]12により包囲形成された連通孔内に、膜[B]の構成材料が充填された状態を示す。この充填部131は、ガス分離能をほとんど有さない。
【0024】
上記膜[B]の形成方法は、特に限定されないが、例えば、結晶質物質を形成可能な気体を、加熱された、膜[A]が形成されている基体の連通孔に導入する方法;結晶質物質を形成可能な材料を連通孔内の膜[A]の表面に塗布する等した後、積層体が変形、変質等しない温度で熱処理する方法等が挙げられる。詳細な方法は、後述される。
【0025】
本発明のヘリウム分離材は、上記のように、連通孔を有する基体11と、少なくともこの連通孔に内接する膜[A]12と、この膜[A]12の表面に積層されている膜[B]13とを備え、この膜[B]13に包囲された細孔14が、上記好ましい細孔径を有することによりガス分離機能を発揮する。
【0026】
2.ヘリウム分離材の製造方法
本発明のヘリウム分離材の製造方法は、非晶質物質形成用組成物を、連通孔を有し且つ無機材料からなる基体の、少なくとも該連通孔の内壁に浸透させ塗膜を形成する塗膜形成工程と、該塗膜を含む基体を熱処理し、上記連通孔内に内接し且つ非晶質物質を含む非晶質物質含有膜(膜[A])を形成する非晶質物質含有膜形成工程と、上記非晶質物質含有膜(膜[A])の表面に、結晶質物質を含む結晶質物質含有膜(膜[B])を形成する結晶質物質含有膜形成工程とを備えることを特徴とする。
【0027】
上記基体は、1面から他面へと線状又は網目状に貫通する細孔、即ち、連通孔を有し、無機材料からなるものであれば、その構造、形状、大きさ等は、特に限定されない。これらに関して、いずれも、上記発明「ヘリウム分離材」と同様とすることができる。特に、基体の構成材料は、Al2O3、ムライト、コーディエライト、AlN、Si3N4、SiC及びZrO2が好ましい。また、上記基体は、均一厚さを有するものが好ましく、板状、筒状等であって、厚さ又は肉厚が150〜1,000μmであるものが好ましい。
上記連通孔の平均細孔径は、好ましくは5〜200nm、より好ましくは5〜150nm、更に好ましくは6〜100nmである。
【0028】
上記基体は、上記のように、市販品や、公知の方法により得られたものを用いることができる。尚、上記連通孔の平均細孔径が上記好ましい範囲にある一方、その分布が広い場合や、平均細孔径が200nmを超えて大きすぎる場合には、基体の機械的強度が十分でないことがあり、その後、膜[A]等の形成時に変形等が発生する場合がある。従って、基体を補強するために、膜[A]の形成前に、予め、基体の構成材料と同じ又は異なる材料となる前駆体組成物を用いて、基体の表面や、連通孔の内壁に堆積させてもよい(図8参照)。連通孔の内壁に堆積させた場合には、平均細孔径を上記好ましい範囲内で、分布を狭くすることができ、後続の工程を効率よく進めることができる。尚、図8は、補強された基体の一例を示す概略断面図であり、基体用支持体111と、この基体用支持体111の表面を被覆する補強層112とを備え、補強層に包囲された連通孔15を備える。
この補強方法としては、上記前駆体組成物を、ディッピング法、スプレー法、スピン法等により上記基体の表面や、連通孔の内壁表面に浸透させて塗膜とし、その後、熱処理する方法等が挙げられる。尚、この前駆体組成物は、ゾル・ゲル法で得られたもの等を用いることができる。
【0029】
本発明において、塗膜形成工程により、連通孔を有し且つ無機材料からなる基体の、少なくとも該連通孔の内壁に浸透させ塗膜を形成する。具体的には、下記の非晶質物質形成用組成物を用い、ディッピング法、スプレー法、スピン法等が適用される。これらの方法により、通常、基体の表面、及び、連通孔の内壁全面に塗膜が形成される。
【0030】
上記非晶質物質形成用組成物としては、熱処理等により、非晶質物質を形成可能なものが好ましく、上記本発明のヘリウム分離膜を構成する膜[A]に含まれる、珪素化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物等の1種以上を非晶質状態で形成するものが好ましい。
【0031】
非晶質の珪素化合物を形成する組成物としては、珪素含有高分子を含む溶液又は分散液;アルコキシシラン化合物の溶液;珪酸ナトリウム、水ガラス、コロイダルシリカ等のシリカゾル等を含有する組成物が挙げられる。これらのうち、珪素含有高分子を含む組成物が好ましい。
珪素含有高分子としては、珪素原子及び炭素原子を主として含む化合物が好ましい。その他には、酸素原子、水素原子、窒素原子、ホウ素原子等が挙げられる。
この珪素含有高分子としては、ポリカルボシラン、ポリシラン、ポリシラザン、ポリカルボシラザン等が挙げられる。これらの変性化合物(一部を下記に例示)を用いることもできる。これらの高分子化合物の数平均分子量は、通常、500〜100,000である。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
上記珪素含有高分子のうち、ポリカルボシランは、下記一般式(1)〜(3)で表される単位を、単独であるいは2種以上組み合わせて含む高分子化合物である。
【化1】
【化2】
〔式中、R1は、炭素数1〜10のアルキル基を示す。〕
【化3】
〔R1及びR2は、それぞれ、同じであっても異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキル基を示す。〕
【0033】
上記ポリシランとしては、ポリ(ジメチルシラン)、ポリ(ジエチルシラン)、ポリ(ジ−n−プロピルシラン)、ポリ(ジ−n−ブチルシラン)、ポリ(ジ−n−ヘキシルシラン)、ポリ(メチルフェニルシラン)、ポリ(エチルフェニルシラン)、ポリ(n−プロピルフェニルシラン)、ポリ(ジフェニルシラン)、ポリ(メチルフェニルシラン−co−ジメチルシラン)、ポリ(メチルフェニルシラン−co−ジ−n−ヘキシルシラン)等が挙げられる。
【0034】
また、上記ポリシラザンは、下記一般式(4)及び(5)で表される単位を、単独であるいは組み合わせて含む高分子化合物である。
【化4】
【化5】
〔式中、R3は、炭素数1〜3のアルキル基を示す。〕
【0035】
上記一般式(4)及び(5)で表される単位において、−SiH2−の1つのH(水素原子)が炭素数1〜3のアルコキシ基に置換されて含まれる高分子化合物を変性化合物として用いることができる。
【0036】
また、上記珪素含有高分子及び/又はその変性化合物と、アルミニウム、チタン等を含む金属アルコキシドとを含有する組成物を用いることもできる。この変性化合物としては、ヒドロキシル基を有するポリシラン等が挙げられる。
【0037】
上記珪素含有高分子及び/又はその変性化合物は、通常、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキセン等の速乾性の溶媒に溶かして用いられる。均一な塗膜を形成するための好ましい濃度は、0.1〜5質量%であり、より好ましくは0.25〜2.5質量%、更に好ましくは0.5〜1.5質量%である。この濃度が低すぎると、形成される膜[A]の表面にピンホールが発生する場合がある。また、濃度が高すぎると、膜[A]の膜厚が上記好ましい範囲を超えて大きくなり、クラックが発生しやすくなる場合がある。いずれの場合も、良好なガス分離性能に影響を与えることとなる。
【0038】
上記珪素含有高分子等の溶液は、酸素及び水蒸気の非存在下で用いることが好ましく、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で用いることが好ましい。
【0039】
また、非晶質のアルミニウム化合物を形成する組成物としては、アルミニウム含有アルコキシドの溶液;アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、アルミナゾル等の溶液又は分散液等を含有する組成物が挙げられる。
【0040】
非晶質のジルコニウム化合物を形成する組成物としては、ジルコニウムアルコキシドの溶液、オキシ塩化ジルコニウム、塩化ジルコニウム等を含有する組成物が挙げられる。
また、非晶質のチタン化合物を形成する組成物としては、チタンアルコキシドの溶液;塩化チタン、ジアルキルアミノチタニウム等を含有する組成物が挙げられる。
【0041】
上記のように、この塗膜形成工程によって、塗膜は、基体の凹凸を反映して、ほぼ全表面に形成されるが、基体表面に凹部、溝等がある場合もその場所に非晶質物質形成用組成物が充填され、連続した塗膜となる。
また、上記塗膜の厚さは、基体が有する連通孔の細孔径、用いる非晶質物質形成用組成物の種類及び濃度等により、適宜、調整される。
【0042】
上記塗膜形成工程の後、通常、塗膜を乾燥させる等により、厚さが5〜100nm程度の被膜とする。その後、非晶質物質含有膜形成工程に進めることにより、上記被膜を含む基体が熱処理されて、非晶質物質含有膜[A]が形成される。
【0043】
上記非晶質物質含有膜形成工程における熱処理条件は、アルゴンガス、窒素ガス等の雰囲気中、大気圧下において、加熱温度が、好ましくは600〜1,500℃、より好ましくは625〜1,000℃、更に好ましくは650〜800℃である。この温度範囲で熱処理することにより、原料の分解が円滑に進行し(効率よい製膜速度を有し)、その結果、均一な非晶質物質含有膜を得ることができる。上記温度が低すぎると、非晶質物質の生成が不完全となる場合がある。一方、温度が高すぎると、結晶質物質が多量に生成する場合がある。尚、加熱時間、昇温速度等は、適宜、選択されるが、加熱時間は、通常、1〜5時間である。
【0044】
熱処理前の塗膜が、ポリカルボシラン、ポリシラン、ポリシラザン、ポリカルボシラザン及びこれらの変性化合物の1種以上を含む場合には、非晶質物質含有膜形成工程後の膜[A]に含まれる非晶質物質は、通常、SiO2、SiOC、SiC及びSiCNの1種以上である。
また、上記塗膜が、トリアルキルボロン、ジアルキルアミノボロン等の1種以上を含む場合には、非晶質物質含有膜形成工程後の膜[A]に含まれる非晶質物質は、通常、SiBCNである。
尚、いずれの場合も、熱処理条件によっては、膜[A]に結晶質物質が含有されることがある。
【0045】
上記非晶質物質含有膜形成工程により得られた膜[A]は、少なくとも基体の連通孔内に内接しており、塗膜が、基体のほぼ全表面に形成されていた場合には、膜[A]12も同様に、基体の表面層を含む基体11のほぼ全表面に形成され(図2参照)、残された連通孔以外に、ヘリウムの透過する経路のない積層体とすることができる。この経路があると、分子ふるいの際に、クヌーセン拡散と呼ばれる挙動を示し、所望のガス分離性能が得られない場合がある。
尚、基体の連通孔の内径がより小さく、その連通孔に上記非晶質物質形成用組成物が充填されていた場合には、熱処理により、連通孔が、非晶質物質で充填され閉じた状態となる(図3参照)。
【0046】
上記非晶質物質含有膜形成工程の後、結晶質物質含有膜形成工程に進めることにより、積層体の膜[A]の表面に結晶質物質含有膜[B]が形成される。
【0047】
この結晶質物質含有膜形成工程においては、結晶質物質を形成可能な気体を、加熱された、積層体の連通孔に導入する(以下、「化学的気相合成」という。)方法;結晶質物質を形成可能な材料を連通孔内の膜[A]の表面に塗布する等した後、積層体が変形、変質等しない温度で熱処理する方法;積層体を、結晶質物質を形成可能な材料を含む溶液中に浸漬した状態で、電気的処理する方法等を適用することができる。
【0048】
本発明に係る結晶質物質含有膜形成工程においては、化学的気相合成が好ましい。この方法は、密閉された反応系に載置した積層体の、少なくとも連通孔に、化学反応により結晶質物質を生成する気体原料を供給して、膜[A]の表面に結晶質物質を含む膜を堆積させるものである。
【0049】
上記気体原料は、通常、形成しようとする結晶質物質(酸化物、窒化物、炭化物等)を構成する元素からなる化合物のガスである。特に、熱化学反応により結晶質物質が生成されるような気体原料を選択することが好ましい。
気体原料は、2種以上を用いることが好ましく、珪素化合物のガス、及び、炭素化合物のガスを少なくとも用いることが好ましい。
珪素化合物としては、モノシラン、ジシラン、ジクロロシラン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、炭素化合物としては、室温で気体であれば、特に限定されず、アセチレン、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、塩化メチル、塩化ビニル等が挙げられる。きこれらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
化学的気相合成に際し、上記気体原料は、積層体が載置された反応系に充満させた状態で加熱してもよいが、好ましくは、積層体を介して、この積層体の一方側(表面層側)と他方側とが区画された状態で、第1のガスを供給する手段と、第2のガスを供給する手段とを少なくとも備える装置を用いて導入され、その後、加熱された積層体の連通孔内の一方側から他方側へ強制的に通過させる。上記気体原料を「強制的に通過させる」ためには、他方側にポンプ等の排気手段を適用すればよい。ヘリウム分離は、連通孔内の膜[A]上に形成される膜[B]に包囲された細孔の内径に大きく寄与するため、気体原料が集中的に積層体の連通孔内を通過することで、緻密な膜[B]を形成することができる。
尚、反応系への気体原料の導入は、上記のガスを個別に供給してよいし、水素ガス等の気相反応に関与しないガスを、キャリアガスとして用いて供給してもよい。更に、上記のガスは、反応系内に個別に導入されてよいし、反応系への導入前に混合した後、反応系内に導入されてもよい。また、上記のガスの導入速度及び反応系からの排気速度は、特に限定されないが、連続的に導入してよいし、間欠的に導入してもよい。
【0051】
上記気体原料を導入する際の、反応系の加熱温度は、好ましくは600〜800℃、より好ましくは650〜780℃、更に好ましくは680〜750℃である。この温度が低すぎると、気相反応が進行しない場合があり、一方、高すぎると、成膜速度が高くなり、ガス透過速度が低下する場合がある。
【0052】
上記化学的気相合成は、0.5〜4秒の気体原料の導入による反応により、単結晶及び/又は多結晶からなる結晶化物質を含有する膜を形成することができる。従って、連通孔内の膜[A]上に緻密であり且つ結晶化物質の含有割合の高い膜[B]を形成するために、更には、平均径が0.261〜0.288nmである細孔とするために、上記気体原料の導入を繰り返し行うことが好ましい。上記好ましい装置を用いると、この繰り返しにより、結晶性物質が連通孔の内壁に堆積することによる内径が縮小し、気体原料の流れが円滑でなくなり、上記好ましい平均径を有する細孔を得ることができる。
【0053】
上記化学的気相合成を適用し、気体原料を、加熱された積層体の連通孔内に強制的に通過させて得られた膜[B]は、積層体の表面に形成されることもあるが、気体原料のほとんどが連通孔内で反応し、連通孔内の膜[A]の表面に形成される(図6参照)。尚、上記連通孔の内径が0.3nm以下と、小さい場合には、気体原料の反応による生成物により閉塞する場合がある(図6の符号131)。
【0054】
上記結晶質物質含有膜形成工程を化学気相合成以外の方法で行う場合も、公知の方法の条件を適宜、選択することにより、膜厚を調整しつつ膜[B]を形成することができる。
【0055】
上記結晶質物質含有膜形成工程により得られた膜[B]は、ヘリウムのみに対して透過性に優れた細孔を形成することができ、しかも、基体、膜[A]及び膜[B]が無機材料からなることから、100℃以下はもちろん、100℃以上、好ましくは200℃以上の温度において、耐熱性及び耐久性に優れたヘリウム分離材が得られる。
【0056】
本発明のヘリウム分離材は、上記のように、耐熱性に優れた、ヘリウムを含む混合ガスからヘリウムを分離する分子ふるい膜等として有用である。特に、600℃において、ヘリウム及び一酸化炭素の分離の場合には、その透過係数比(He/CO)を好ましくは15以上、より好ましくは25以上、更に好ましくは35以上とすることができる。また、ヘリウム及び水素の分離の場合には、その透過係数比(He/H2)を好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上、更に好ましくは3以上とすることができる。
尚、上記のように、上記結晶質物質含有膜形成工程においては、膜[B]の膜厚を調整することができるので、細孔の内径が水素の分子径より大きくなるように、例えば、0.29〜0.32nmとなるように膜[B]を形成した場合には、水素ガス分離材として用いることができる。
【実施例】
【0057】
以下に例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。尚、下記記載において、「%」は、特に断らない限り質量基準である。
実施例1
α−Al2O3からなり、内壁及び外壁の間に網目状に連通する細孔(平均細孔径100nm)を有する多孔質の管状体111(内径1.8mm、外径2.6mm及び長さ85mm)の両端面を、α−Al2O3からなり、同じ内径及び外径を有する中実体の管21、及び、α−Al2O3からなり、同じ内径及び外径を有し、底面が凹面である中実体の有底管22の各端面によりガラスシールし、複合体2を得た(図7参照)。即ち、この複合体2は、中実体の管21と、多孔質管状体111と、中実体の有底管22とをこの順に備え、各管の端面どうしを密着させるためのガラス封止部23を備える。
その後、ゾル・ゲル法により調製したベーマイトゾル(PVA濃度;3.5%)内に、上記複合体2を10秒間浸漬した。次いで、このゾルを乾燥させ、アルゴンガス雰囲気中、800℃で3時間熱処理し、複合体2の全表面(管状体111の細孔内壁面を含む)にγ−Al2O3からなる膜を形成させた。この操作を再度繰り返し、管状体111と、この管状体111の全表面を被覆したγ−Al2O3膜112とを備える基体部(以下、「基体」ともいう。)11(図8参照)を含む基体付き複合体3(図示せず)を得た。この基体11の平均細孔径は10nmであった。図8は、基体付き複合体3を構成する基体11を示す図であり、この基体11を連通孔部分で破断したときの部分断面を示す概略図である。管状体111の表面にγ−Al2O3膜112が形成されていることを示す。
【0058】
次に、アルゴンガス雰囲気のグローブボックス内で調製した、ポリカルボシラン(数平均分子量;10,700)のキシレン溶液(濃度1%)に、上記基体付き複合体3を5秒間浸漬した(図10参照)。基体付き複合体3の外側から、毛細管現象により、上記キシレン溶液を浸透させた。
その後、このキシレン溶液を乾燥させ、アルゴンガス雰囲気中、800℃で1時間熱処理し、基体付き複合体3の全表面に非晶質のSiOCを含む膜12(基体付き複合体3の表面における膜厚130nm。連通孔内における膜厚は2.5〜4nmと思われる。以下、「SiOC膜」ともいう。)が形成された、SiOC膜付き管状体4を含むSiOC膜付き複合体5を得た。図11は、SiOC膜付き管状体4において、SiOC膜付き管状体111を破断したときの断面画像(電子顕微鏡による)であり、γ−Al2O3膜112の表面にSiOC膜12が形成されていることを示す。
【0059】
次いで、CVD装置(図12参照)の炉7の内部に、SiOC膜付き複合体5をセットし、水素ガス雰囲気中、725℃で20分間予熱した。SiOC膜付き複合体5の温度が恒温に達した後、下記の原料ガス〔1〕〜〔3〕からなる混合ガスを炉内へ間欠的に導入し、混合ガスの導入による装置内の内圧が大気圧近くまで上昇するまで、炭化珪素多結晶を、SiOC膜付き管状体4の細孔におけるSiOC膜12表面に堆積させ(連通孔内における膜厚は0.7〜2.5nmと思われる。)、ヘリウム分離材1を得た。破断画像を図13に示す。
尚、原料ガス〔1〕(キャリアガス)として水素ガス、原料ガス〔2〕として水素ガス及びSiH2Cl2ガスからなる混合ガス(SiH2Cl2濃度;1体積%)、並びに原料ガス〔3〕として水素ガス及びアセチレンガスからなる混合ガス(アセチレン濃度;1体積%)を用いた。各原料ガスの導入量は、原料ガス〔1〕〜〔3〕の順に、1sccm、0.5sccm、及び0.5sccmであり、各原料ガスは、炉内へ導入する前に混合した。また、原料ガス〔1〕〜〔3〕からなる混合ガスは、導入時間2秒及びインターバル2秒の繰り返しで導入し、これを3,500回繰り返した。
尚、図13の画像において、炭化珪素多結晶からなる膜13は、微細なため判別できないが、X線測定により、SiOC膜付き管状体4の細孔において、炭化珪素多結晶が存在していることを確認した。
【0060】
上記で得られたヘリウム分離材を用い、図14に示すガス透過試験装置により、定容積圧力変化法に基づき、600℃における単成分ガス透過試験を行った。まず、減圧にした透過側ラインに設置したバッファタンク内の圧力変化によってガス分子の流量を定量する。大気圧の供給ガスを、ヘリウム分離材を保持した透過セル内に500cc/分にて流し、真空ポンプによりバッファタンク内を4Torrに減圧した後に、真空ポンプとバッファタンクとの間に設置したストップバルブを閉じ、圧力計P2によってタンク内が8Torrに昇圧するまでの時間を計測した。用いた単成分ガスの種類は、ヘリウムガス(He)、水素ガス(H2)及び一酸化炭素ガス(CO)である。単位面積及び単位圧力差のもとで透過するガスについて、透過率を測定した。単位は、mol/m2・s・Paである。また、上記各ガスの透過率の値を用い、ガス分離性能を表す指標として透過率の比である透過係数比He/H2及びHe/COを求めた。得られたヘリウムガス透過率、水素ガス透過率及び透過係数比を表1に示す。
【0061】
実施例2
実施例1で得た基体付き複合体3を用い、下記要領でヘリウムガス分離材を得た。
アルゴンガス雰囲気のグローブボックス内で調製した、ポリカルボシラン(数平均分子量;10,700)のキシレン溶液(濃度0.8%)に、上記基体付き複合体3を5秒間浸漬した(図10参照)。基体付き複合体3の外側から、毛細管現象により、上記キシレン溶液を浸透させた。
その後、このキシレン溶液を乾燥させ、アルゴンガス雰囲気中、800℃で1時間熱処理し、基体付き複合体3の全表面にSiOC膜を形成させた。この浸漬−乾燥−熱処理の操作を再度繰り返し、基体付き複合体3の表面における膜厚140nm(連通孔内における膜厚は3〜4.5nmと思われる。)のSiOC膜12を有するSiOC膜付き複合体5を得た。
【0062】
次いで、実施例1と同じCVD装置を用い、同じ原料ガス〔1〕〜〔3〕からなる混合ガスを、導入時間2秒及びインターバル2秒の繰り返しで導入し、これを3,000回繰り返すことにより、SiOC膜付き管状体4の細孔におけるSiOC膜12表面に炭化珪素多結晶を堆積させ(連通孔内における膜厚は0.6〜2nmと思われる。)、ヘリウム分離材1を得た。
このヘリウム分離材について、実施例1と同様にして、各ガスの透過率を測定した。ヘリウムガス透過率及び透過係数比を表1に示す。
【0063】
実施例3
α−Al2O3からなり、内壁及び外壁の間に網目状に連通する細孔(平均細孔径150nm)を有する多孔質の管状体(内径2.0mm、外径2.9mm及び長さ85mm)の両端面を、実施例1と同様にして、α−Al2O3からなる中実体の管、及び、α−Al2O3からなる中実体の有底管の各端面によりガラスシールし、複合体2を得た。
その後、実施例1で用いたベーマイトゾル内に、上記複合体2を10秒間浸漬した。次いで、このゾルを乾燥させ、アルゴンガス雰囲気中、800℃で3時間熱処理し、複合体2の全表面にγ−Al2O3からなる膜を形成させた。この操作を更に2回繰り返し、管状体と、この管状体の全表面を被覆したγ−Al2O3膜とを備える基体11を含む基体付き複合体3を得た。この基体11の平均細孔径は10nmであった。
【0064】
次に、アルゴンガス雰囲気のグローブボックス内で調製した、ポリカルボシラン(数平均分子量;10,700)のキシレン溶液(濃度0.5%)に、上記基体付き複合体3を5秒間浸漬した(図10参照)。基体付き複合体3の外側から、毛細管現象により、上記キシレン溶液を浸透させた。
その後、このキシレン溶液を乾燥させ、アルゴンガス雰囲気中、800℃で1時間熱処理し、基体付き複合体3の全表面にSiOC膜を形成させた。この浸漬−乾燥−熱処理の操作を更に2回繰り返した。そして、上記キシレン溶液を用い、浸漬時間10秒間及び熱処理温度750℃として、浸漬−乾燥−熱処理の操作を更に3回繰り返し、基体付き複合体3の表面における膜厚110nm(連通孔内における膜厚は2〜3.5nmと思われる。)のSiOC膜12を有するSiOC膜付き複合体5を得た。
【0065】
次いで、実施例1と同じCVD装置を用い、炉7の内部に、SiOC膜付き複合体5をセットし、水素ガス雰囲気中、710℃で20分間予熱した。SiOC膜付き複合体5の温度が恒温に達した後、上記原料ガス〔1〕〜〔3〕からなる混合ガスを炉内へ間欠的に導入し、SiOC膜付き管状体4の細孔におけるSiOC膜12表面に炭化珪素多結晶を堆積させ(連通孔内における膜厚は0.5〜1.8nmと思われる。)、ヘリウム分離材1を得た。
尚、各原料ガスの導入量は、原料ガス〔1〕〜〔3〕の順に、1sccm、0.4sccm、及び0.8sccmである。また、原料ガス〔1〕〜〔3〕からなる混合ガスは、導入時間2秒及びインターバル2秒の繰り返しで導入し、これを2,800回繰り返した。
このヘリウム分離材について、実施例1と同様にして、各ガスの透過率を測定した。ヘリウムガス透過率及び透過係数比を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
上記実施例から明らかなように、α−Al2O3からなる管状体表面にγ−Al2O3膜が形成されてなる基体の表面及び連通孔内壁に、SiOCを含む非晶質物質含有膜を形成し、その後、連通孔内の非晶質物質含有膜に結晶質物質含有膜を積層することにより、ヘリウムと、大きな分子径を有するガスとを分離することができた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のヘリウム分離材は、天然ガス等の粗ヘリウム原料からのヘリウムの抽出、分離等に有用であり、特に、被処理試料が加熱状態にある場合、非酸化性雰囲気にて使用される場合等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明のヘリウム分離材の破断表面の一例を示す概略図である。
【図2】非晶質物質含有膜12が基体11の表面層を被覆した積層体の一例を示す概略断面図である。
【図3】非晶質物質含有膜12が基体11の表面層を被覆した積層体の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明のヘリウム分離材の表面層における断面図の一例を示す概略図である。
【図5】本発明のヘリウム分離材の表面層における断面図の他の例を示す概略図である。
【図6】本発明のヘリウム分離材の表面層における断面図の他の例を示す概略図である。
【図7】実施例1において作製した複合体2を示す概略斜視図である。
【図8】実施例1、2及び3において、補強された基体11の断面を示す概略図である。
【図9】実施例1、2及び3において、基体11の表面に非晶質物質含有膜12が形成された断面を示す概略図である。
【図10】実施例1及び2において非晶質物質含有膜を形成するための工程の一部を示す説明図である。
【図11】実施例1において基体の表面に形成された非晶質物質含有膜の断面を示す画像である。
【図12】非晶質物質含有膜の表面に結晶質物質含有膜を形成するためのCVD装置を示す概略図である。
【図13】実施例1において得られたヘリウム分離材の断面を示す画像である。
【図14】定容積圧力変化法を原理とするガス透過性能評価装置の模式図である。
【符号の説明】
【0070】
1;ヘリウム分離材
11;基体(基体部)
111;基体用支持体(多孔質管状体)
112;補強膜(γ−Al2O3膜)
12;非晶質物質含有膜(SiOC膜)
13;結晶質物質含有膜(炭化珪素多結晶膜)
131;結晶質物質充填部
14;細孔
15;連通孔
2;複合体
21;アルミナ管
22;アルミナ有底管
23;ガラス封止部
3;基体付き複合体
4;SiOC膜付き管状体
5;SiOC膜付き複合体
6;キシレン溶液
7;CVD装置の炉。
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性に優れ、ヘリウムの透過性及び選択性に優れるヘリウム分離材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分子径の小さなヘリウム、水素等からなるガスを含む混合ガスから、これらのガスを選択的に分離する材料(分離膜)及びその方法が検討されている。
ヘリウム分離材としては、高分子からなる分離膜が知られており、特許文献1には、銀又は銅を含む炭素膜からなる気体分離膜が開示されている。また、特許文献2には、特定の構造を有するポリエーテル共重合体と、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン等の多官能アルコキシシランとからなる組成物を加水分解及び重縮合して得られる高分子型の気体分離膜が開示されている。
【特許文献1】特開2003−53167号公報
【特許文献2】特開2005−74317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高分子からなる膜は、ガスの透過性が十分でなく、また、200℃以上の高温域において形状が保持できず、使用できないといった問題点があった。
そのため、無機材料からなるガス分離材が検討されており、水素の分子径より小さな細孔を有する、即ち、オングストロームオーダーに孔径制御され、且つ、優れた透過性及び選択性を併せ持つガス分離材が求められている。
本発明の目的は、耐熱性に優れ、ヘリウムの透過性及び選択性に優れるヘリウム分離材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、無機材料からなる多孔質基体の表面層(基体の表面、及び、基体表面近傍における連通孔の内壁表面)に、非晶質物質を含む膜と、該膜上、特に連通孔内の該膜上に積層された結晶質物質を含む膜とを備えるヘリウム分離材において、結晶質物質を含む膜を内壁として包囲された、分子径の小さな細孔により、ヘリウムの透過性及び選択性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
1.連通孔を有し且つ無機材料からなる基体と、該基体の表面層を被覆し且つ非晶質物質を含む非晶質物質含有膜と、上記表面層における連通孔内に内接した非晶質物質含有膜の表面に配設され且つ結晶質物質を含む結晶質物質含有膜とを備え、該結晶質物質含有膜に包囲された細孔を有することを特徴とするヘリウム分離材。
2.上記非晶質物質含有膜が非晶質無機物質からなり、且つ、上記結晶質物質含有膜が結晶質無機物質からなる上記1に記載のヘリウム分離材。
3.上記細孔の平均径が0.261〜0.288nmである上記1又は2に記載のヘリウム分離材。
4.上記非晶質物質が、SiO2、SiOC、SiC、SiCN及びSiBCNからなる群から選ばれた少なくとも1種である上記1乃至3のいずれかに記載のヘリウム分離材。
5.上記連通孔内に内接している上記非晶質物質含有膜の平均厚さが1.5〜100nmである上記1乃至4のいずれかに記載のヘリウム分離材。
6.上記結晶質物質含有膜の平均厚さが0.5〜4nmである上記1乃至5のいずれかに記載のヘリウム分離材。
7.上記結晶質物質がSiCである上記1乃至6のいずれかに記載のヘリウム分離材。
8.上記基体を構成する無機材料が、Al2O3、ZrO2、ムライト、コーディエライト、AlN、Si3N4及びSiCからなる群から選ばれた少なくとも1種である上記1乃至7のいずれかに記載のヘリウム分離材。
9.非晶質物質形成用組成物を、連通孔を有し且つ無機材料からなる基体の、少なくとも該連通孔の内壁に浸透させ塗膜を形成する塗膜形成工程と、該塗膜を含む基体を熱処理し、上記連通孔内に内接し且つ非晶質物質を含む非晶質物質含有膜を形成する非晶質物質含有膜形成工程と、上記非晶質物質含有膜の表面に、結晶質物質を含む結晶質物質含有膜を形成する結晶質物質含有膜形成工程とを備えることを特徴とするヘリウム分離材の製造方法。
10.上記非晶質物質形成用組成物が、ポリカルボシラン、ポリシラン、ポリシラザン及びポリカルボシラザンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する上記9に記載のヘリウム分離材の製造方法。
11.上記基体を構成する無機材料が、Al2O3、ZrO2、ムライト、コーディエライト、AlN、Si3N4及びSiCからなる群から選ばれた少なくとも1種である上記9又は10に記載のヘリウム分離材の製造方法。
12.上記基体が有する連通孔の平均径が、5〜200nmである上記9乃至11のいずれかに記載のヘリウム分離材の製造方法。
13.上記非晶質物質含有膜形成工程における熱処理温度が、600〜1,500℃である上記9乃至12のいずれかに記載のヘリウム分離材の製造方法。
14.上記結晶質物質含有膜形成工程において、化学的気相合成を行う上記9乃至13のいずれかに記載のヘリウム分離材の製造方法。
15.上記結晶質物質含有膜形成工程における化学気相合成が、珪素化合物のガス、及び炭素化合物のガスの存在下で加熱する工程を備える上記14に記載のヘリウム分離材の製造方法。
16.上記化学気相合成が、珪素化合物のガス、及び炭素化合物のガスの導入並びに排気を行いながら加熱する工程を備える上記15に記載のヘリウム分離材の製造方法。
17.上記珪素化合物が、モノシラン、ジシラン及びジクロロシランからなる群から選ばれた少なくとも1種である上記15又は16に記載のヘリウム分離材の製造方法。
18.上記炭素化合物が、アセチレン、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、塩化メチル、塩化ビニルからなる群から選ばれた少なくとも1種である上記16又は17に記載のヘリウム分離材の製造方法。
19.上記9乃至18のいずれかに記載の方法により得られたことを特徴とするヘリウム分離材。
【発明の効果】
【0005】
本発明のヘリウム分離材によれば、上記構成を有することから200℃以上、好ましくは400℃以上、更に好ましくは500℃以上の高温域において良好な形状保持性を有し、長寿命であり、ヘリウムの透過性及び選択性に優れる。
また、本発明のヘリウム分離材の製造方法によれば、耐熱性に優れ、ヘリウムの透過性及び選択性に優れるヘリウム分離材を容易に製造することができる。特に、容易に且つ効率的に膜厚制御された、非晶質物質を含む非晶質物質含有膜、及び結晶質物質を含む結晶質物質含有膜を形成することができ、その結果、ヘリウムのみが透過する細孔を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
1.ヘリウム分離材
本発明のヘリウム分離材は、連通孔を有し且つ無機材料からなる基体11と、該基体11の表面層を被覆し且つ非晶質物質を含む非晶質物質含有膜12(以下、膜[A]ともいう。)と、上記連通孔内に内接した非晶質物質含有膜[A]12の表面に配設され且つ結晶質物質を含む結晶質物質含有膜13(以下、膜[B]ともいう。)とを備え、該結晶質物質含有膜[B]13に包囲された細孔14を有することを特徴とする(図1参照)。この細孔14は、上記連通孔の内壁に膜[A]12及び膜[B]13が順次積層したことにより、膜[B]13により包囲形成されたものである。即ち、この細孔14は、上記連通孔の内径(細孔径)が縮小されており、その内径は、ヘリウム分子径より長く水素分子径より短い。従って、本発明のヘリウム分離材を用いることにより、ヘリウムを含む混合ガスは、上記細孔14を通るヘリウムと、この細孔14を通らない、それ以外のガスとに分離される。
本発明において、「基体の表面層」とは、基体の表面、及び、基体表面近傍における連通孔の内壁表面の両方を意味し、具体的には、基体の表面並びに該基体から内部5μm程度の深さまでの部分の両方を意味する。また、「非晶質」及び「結晶質」は、X線回折により測定される結晶化度が、それぞれ、40%未満及び60%以上であることを意味する。
【0007】
1−1.基体
この基体は、1面から他面へと線状又は網目状に貫通する細孔、即ち、連通孔を有し、無機材料からなるものであれば、その構造、形状、大きさ等は、特に限定されない。この連通孔は、単一の貫通孔であってよいし、複数の貫通孔が規則的又は不規則的に連続してもよい。
上記基体は、好ましくは多孔体であり、無機材料から製造されたものであってよいし、有機材料(高分子、有機金属化合物、多糖類等)から製造されたものであってもよい。従って、上記基体の構成材料の例としては、アルミニウム化合物、珪素化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物等が挙げられる。これらは、酸化物、窒化物及び炭化物のいずれでもよい。
【0008】
アルミニウム化合物としては、アルミナ(Al2O3)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、コーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、窒化アルミニウム(AlN)等が挙げられる。
珪素化合物としては、シリカ(SiO2)、SiOC、窒化珪素(Si3N4)炭化珪素(SiC)、SiCN、SiBCN、サイアロン(SiAlON)等が挙げられる。
ジルコニウム化合物としては、ジルコニア(ZrO2)、ホウ化ジルコニウム(ZrB2)等が挙げられる。
また、チタン化合物としては、チタニア(TiO2)、チタン酸アルミニウム(Al2O3・TiO2)等が挙げられる。
これらのうち、耐熱性の観点から、Al2O3、ムライト、コーディエライト、AlN、Si3N4、SiC及びZrO2が好ましい。
【0009】
上記基体は、上記無機材料の1種のみからなる単一構造体であってよいし、その積層体であってもよい。また、2種以上の無機材料を含む単一構造体であってよいし、その積層体であってもよい。更には、互いに異なる無機材料からなる構造体を積層してなる積層体であってもよい。
【0010】
上記基体の形状は、目的、用途等に応じて選択されるが、塊状(多面体、球等)、板状(平板、曲板等)、筒状(円筒、角筒等)、半筒状、棒状等とすることができる。
また、基体の大きさも、目的、用途等に応じて選択される。特に、混合ガスの分離に関わる厚さとしては、好ましくは150μm以上である。
本発明のヘリウム分離材の形状及び大きさは、上記基体の形状及び大きさに反映され、ほぼ同等である。
【0011】
上記基体は、市販の多孔体を用いてよいし、特開2000−8193号等に開示された公知の方法により製造されたものを用いてもよい。
【0012】
1−2.非晶質物質含有膜[A]
この膜[A]は、上記基体の表面層を被覆し且つ非晶質物質を含む膜である。従って、上記膜[A]は、基体表面上の膜と、基体表面近傍における連通孔を内接する(連通孔の内周面に沿っている)膜とが連続している。
【0013】
上記膜[A]は、非晶質物質を、通常、60〜100質量%含む膜である。結晶質物質を含んでもよい。
上記非晶質物質としては、非晶質無機物質が好ましく、珪素化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物等が挙げられる。これらは、酸化物、窒化物及び炭化物のいずれでもよく、上記基体の構成材料として例示した化合物を用いることができる。特に、SiO2、SiOC、SiC、SiCN及びSiBCNが好ましい。
上記結晶質物質としては、上記の珪素化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物等における酸化物、窒化物及び炭化物の結晶化物が挙げられる。
【0014】
上記膜[A]は、メソ細孔及び/又はミクロ細孔を備える膜であってよいし、中実体の膜であってもよい。メソ細孔及びミクロ細孔の場合には、通常、上記非晶質物質を主成分とする骨格を備える。
【0015】
上記連通孔内に内接している膜[A]の平均厚さは、好ましくは1.5〜100nm、より好ましくは1.8〜50nm、更に好ましくは2〜30nmである。この厚さが大きすぎると、ガスの透過速度が低下する傾向にある。一方、小さすぎると、膜内に欠陥が生成する傾向にある。
【0016】
上記膜[A]の態様を、断面図を用い、図2及び図3に示す。図2は、膜[A]12が基体11の表面層を被覆した状態(以下、「積層体」という。)の一例を示す概略図であり、基体11が有する、隣り合う連通孔の内径が異なる場合において、基体表面上の膜と、基体表面近傍における連通孔を内接する膜とが連続していることを示す。
また、図3は、膜[A]12が基体11の表面層を被覆した積層体の他の例を示す概略断面図であり、基体11が有する連通孔の内径がより小さい場合には、連通孔が、膜[A]の構成材料によって充填され閉じた状態となる。この場合、充填部は、膜[A]の細孔構造によっては、分子径の小さい特定のガスのみが透過し、ガス分離能を有する場合がある。一方、膜[A]が中実体である場合、基体11の一部となり、本発明のヘリウム分離材の機械的強度、熱的安定性(耐熱性)等を向上させることができる。
尚、図2等の概略図において、基体11の連通孔は、基体11に対して垂直方向に示しているが、斜め方向に連通する場合もある。他の図においても同様である。
【0017】
上記膜[A]の形成方法は、特に限定されないが、例えば、非晶質物質を形成可能な材料を基体の表面層に塗布する等した後、基体が変形、変質等しない温度で熱処理する方法等が挙げられる。詳細な方法は、後述される。
【0018】
1−3.結晶質物質含有膜[B]
この膜[B]は、上記表面層における連通孔内に内接した非晶質物質含有膜[A]の表面に配設され且つ結晶質物質を含む膜である。
【0019】
上記膜[B]は、単結晶及び/又は多結晶からなる結晶質物質を、通常、60〜100質量%含む膜である。非晶質物質を含んでもよい。
上記結晶質物質としては、珪素化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物等が挙げられる。これらは、酸化物、窒化物及び炭化物のいずれでもよい。
【0020】
珪素化合物としては、炭化珪素、窒化珪素、サイアロン等が挙げられる。
アルミニウム化合物としては、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライト等が挙げられる。
チタン化合物としては、チタン酸アルミニウム、炭化チタン、窒化チタン等が挙げられる。
ジルコニウム化合物としては、ジルコニア、ホウ化ジルコニウム等が挙げられる。
これらのうち、SiC、Al2O3、ジルコニア等が好ましく、特に、SiCが好ましい。
【0021】
上記膜[B]は、上記のように、結晶質物質を60質量%以上含み、通常、中実体の緻密な膜であることから、0.288nmを超える分子径の大きなガスが透過しにくい。
【0022】
上記膜[B]の平均厚さは、好ましくは0.5〜4nm、より好ましくは0.6〜3.5nm、更に好ましくは0.7〜3nmである。この平均厚さが小さすぎると、膜[B]の熱的安定性が低下する場合がある。尚、図1のように、ヘリウム分離に係る細孔14は、膜[B]13に包囲されてなるものであり、その内径の平均値が、通常、0.261〜0.288nm、好ましくは0.270〜0.280nmであることから、上記膜[B]の厚さは、その形成の際に調整されて、上記範囲となる。
【0023】
上記膜[B]は、上記連通孔内の膜[A]表面のどの位置にあってもよく、基体の最表面近傍にあってよいし(図4参照)、それより少し内部にあってよいし(図5参照)、更には、膜[A]の全面であってもよい(図6参照)。また、上記膜[B]は、上記基板11表面上の膜[A]の表面にあってもよい(図示せず)。
上記膜[B]の態様を、断面図を用い、図4、図5及び図6に示す。図4は、膜[B]13が、連通孔内の膜[A]12の表面の、基体の最表面近傍に形成されていることを示す概略図である。図5は、膜[B]13が、連通孔内の膜[A]12の表面の、基体の表面から少し内部に形成されていることを示す概略図である。
また、図6は、膜[B]13が、連通孔内の膜[A]12の全表面に形成されていることを示す概略図である。
尚、図4、図5及び図6において、符号131は、連通孔内の膜[A]12により包囲形成された連通孔内に、膜[B]の構成材料が充填された状態を示す。この充填部131は、ガス分離能をほとんど有さない。
【0024】
上記膜[B]の形成方法は、特に限定されないが、例えば、結晶質物質を形成可能な気体を、加熱された、膜[A]が形成されている基体の連通孔に導入する方法;結晶質物質を形成可能な材料を連通孔内の膜[A]の表面に塗布する等した後、積層体が変形、変質等しない温度で熱処理する方法等が挙げられる。詳細な方法は、後述される。
【0025】
本発明のヘリウム分離材は、上記のように、連通孔を有する基体11と、少なくともこの連通孔に内接する膜[A]12と、この膜[A]12の表面に積層されている膜[B]13とを備え、この膜[B]13に包囲された細孔14が、上記好ましい細孔径を有することによりガス分離機能を発揮する。
【0026】
2.ヘリウム分離材の製造方法
本発明のヘリウム分離材の製造方法は、非晶質物質形成用組成物を、連通孔を有し且つ無機材料からなる基体の、少なくとも該連通孔の内壁に浸透させ塗膜を形成する塗膜形成工程と、該塗膜を含む基体を熱処理し、上記連通孔内に内接し且つ非晶質物質を含む非晶質物質含有膜(膜[A])を形成する非晶質物質含有膜形成工程と、上記非晶質物質含有膜(膜[A])の表面に、結晶質物質を含む結晶質物質含有膜(膜[B])を形成する結晶質物質含有膜形成工程とを備えることを特徴とする。
【0027】
上記基体は、1面から他面へと線状又は網目状に貫通する細孔、即ち、連通孔を有し、無機材料からなるものであれば、その構造、形状、大きさ等は、特に限定されない。これらに関して、いずれも、上記発明「ヘリウム分離材」と同様とすることができる。特に、基体の構成材料は、Al2O3、ムライト、コーディエライト、AlN、Si3N4、SiC及びZrO2が好ましい。また、上記基体は、均一厚さを有するものが好ましく、板状、筒状等であって、厚さ又は肉厚が150〜1,000μmであるものが好ましい。
上記連通孔の平均細孔径は、好ましくは5〜200nm、より好ましくは5〜150nm、更に好ましくは6〜100nmである。
【0028】
上記基体は、上記のように、市販品や、公知の方法により得られたものを用いることができる。尚、上記連通孔の平均細孔径が上記好ましい範囲にある一方、その分布が広い場合や、平均細孔径が200nmを超えて大きすぎる場合には、基体の機械的強度が十分でないことがあり、その後、膜[A]等の形成時に変形等が発生する場合がある。従って、基体を補強するために、膜[A]の形成前に、予め、基体の構成材料と同じ又は異なる材料となる前駆体組成物を用いて、基体の表面や、連通孔の内壁に堆積させてもよい(図8参照)。連通孔の内壁に堆積させた場合には、平均細孔径を上記好ましい範囲内で、分布を狭くすることができ、後続の工程を効率よく進めることができる。尚、図8は、補強された基体の一例を示す概略断面図であり、基体用支持体111と、この基体用支持体111の表面を被覆する補強層112とを備え、補強層に包囲された連通孔15を備える。
この補強方法としては、上記前駆体組成物を、ディッピング法、スプレー法、スピン法等により上記基体の表面や、連通孔の内壁表面に浸透させて塗膜とし、その後、熱処理する方法等が挙げられる。尚、この前駆体組成物は、ゾル・ゲル法で得られたもの等を用いることができる。
【0029】
本発明において、塗膜形成工程により、連通孔を有し且つ無機材料からなる基体の、少なくとも該連通孔の内壁に浸透させ塗膜を形成する。具体的には、下記の非晶質物質形成用組成物を用い、ディッピング法、スプレー法、スピン法等が適用される。これらの方法により、通常、基体の表面、及び、連通孔の内壁全面に塗膜が形成される。
【0030】
上記非晶質物質形成用組成物としては、熱処理等により、非晶質物質を形成可能なものが好ましく、上記本発明のヘリウム分離膜を構成する膜[A]に含まれる、珪素化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物等の1種以上を非晶質状態で形成するものが好ましい。
【0031】
非晶質の珪素化合物を形成する組成物としては、珪素含有高分子を含む溶液又は分散液;アルコキシシラン化合物の溶液;珪酸ナトリウム、水ガラス、コロイダルシリカ等のシリカゾル等を含有する組成物が挙げられる。これらのうち、珪素含有高分子を含む組成物が好ましい。
珪素含有高分子としては、珪素原子及び炭素原子を主として含む化合物が好ましい。その他には、酸素原子、水素原子、窒素原子、ホウ素原子等が挙げられる。
この珪素含有高分子としては、ポリカルボシラン、ポリシラン、ポリシラザン、ポリカルボシラザン等が挙げられる。これらの変性化合物(一部を下記に例示)を用いることもできる。これらの高分子化合物の数平均分子量は、通常、500〜100,000である。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
上記珪素含有高分子のうち、ポリカルボシランは、下記一般式(1)〜(3)で表される単位を、単独であるいは2種以上組み合わせて含む高分子化合物である。
【化1】
【化2】
〔式中、R1は、炭素数1〜10のアルキル基を示す。〕
【化3】
〔R1及びR2は、それぞれ、同じであっても異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキル基を示す。〕
【0033】
上記ポリシランとしては、ポリ(ジメチルシラン)、ポリ(ジエチルシラン)、ポリ(ジ−n−プロピルシラン)、ポリ(ジ−n−ブチルシラン)、ポリ(ジ−n−ヘキシルシラン)、ポリ(メチルフェニルシラン)、ポリ(エチルフェニルシラン)、ポリ(n−プロピルフェニルシラン)、ポリ(ジフェニルシラン)、ポリ(メチルフェニルシラン−co−ジメチルシラン)、ポリ(メチルフェニルシラン−co−ジ−n−ヘキシルシラン)等が挙げられる。
【0034】
また、上記ポリシラザンは、下記一般式(4)及び(5)で表される単位を、単独であるいは組み合わせて含む高分子化合物である。
【化4】
【化5】
〔式中、R3は、炭素数1〜3のアルキル基を示す。〕
【0035】
上記一般式(4)及び(5)で表される単位において、−SiH2−の1つのH(水素原子)が炭素数1〜3のアルコキシ基に置換されて含まれる高分子化合物を変性化合物として用いることができる。
【0036】
また、上記珪素含有高分子及び/又はその変性化合物と、アルミニウム、チタン等を含む金属アルコキシドとを含有する組成物を用いることもできる。この変性化合物としては、ヒドロキシル基を有するポリシラン等が挙げられる。
【0037】
上記珪素含有高分子及び/又はその変性化合物は、通常、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキセン等の速乾性の溶媒に溶かして用いられる。均一な塗膜を形成するための好ましい濃度は、0.1〜5質量%であり、より好ましくは0.25〜2.5質量%、更に好ましくは0.5〜1.5質量%である。この濃度が低すぎると、形成される膜[A]の表面にピンホールが発生する場合がある。また、濃度が高すぎると、膜[A]の膜厚が上記好ましい範囲を超えて大きくなり、クラックが発生しやすくなる場合がある。いずれの場合も、良好なガス分離性能に影響を与えることとなる。
【0038】
上記珪素含有高分子等の溶液は、酸素及び水蒸気の非存在下で用いることが好ましく、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で用いることが好ましい。
【0039】
また、非晶質のアルミニウム化合物を形成する組成物としては、アルミニウム含有アルコキシドの溶液;アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、アルミナゾル等の溶液又は分散液等を含有する組成物が挙げられる。
【0040】
非晶質のジルコニウム化合物を形成する組成物としては、ジルコニウムアルコキシドの溶液、オキシ塩化ジルコニウム、塩化ジルコニウム等を含有する組成物が挙げられる。
また、非晶質のチタン化合物を形成する組成物としては、チタンアルコキシドの溶液;塩化チタン、ジアルキルアミノチタニウム等を含有する組成物が挙げられる。
【0041】
上記のように、この塗膜形成工程によって、塗膜は、基体の凹凸を反映して、ほぼ全表面に形成されるが、基体表面に凹部、溝等がある場合もその場所に非晶質物質形成用組成物が充填され、連続した塗膜となる。
また、上記塗膜の厚さは、基体が有する連通孔の細孔径、用いる非晶質物質形成用組成物の種類及び濃度等により、適宜、調整される。
【0042】
上記塗膜形成工程の後、通常、塗膜を乾燥させる等により、厚さが5〜100nm程度の被膜とする。その後、非晶質物質含有膜形成工程に進めることにより、上記被膜を含む基体が熱処理されて、非晶質物質含有膜[A]が形成される。
【0043】
上記非晶質物質含有膜形成工程における熱処理条件は、アルゴンガス、窒素ガス等の雰囲気中、大気圧下において、加熱温度が、好ましくは600〜1,500℃、より好ましくは625〜1,000℃、更に好ましくは650〜800℃である。この温度範囲で熱処理することにより、原料の分解が円滑に進行し(効率よい製膜速度を有し)、その結果、均一な非晶質物質含有膜を得ることができる。上記温度が低すぎると、非晶質物質の生成が不完全となる場合がある。一方、温度が高すぎると、結晶質物質が多量に生成する場合がある。尚、加熱時間、昇温速度等は、適宜、選択されるが、加熱時間は、通常、1〜5時間である。
【0044】
熱処理前の塗膜が、ポリカルボシラン、ポリシラン、ポリシラザン、ポリカルボシラザン及びこれらの変性化合物の1種以上を含む場合には、非晶質物質含有膜形成工程後の膜[A]に含まれる非晶質物質は、通常、SiO2、SiOC、SiC及びSiCNの1種以上である。
また、上記塗膜が、トリアルキルボロン、ジアルキルアミノボロン等の1種以上を含む場合には、非晶質物質含有膜形成工程後の膜[A]に含まれる非晶質物質は、通常、SiBCNである。
尚、いずれの場合も、熱処理条件によっては、膜[A]に結晶質物質が含有されることがある。
【0045】
上記非晶質物質含有膜形成工程により得られた膜[A]は、少なくとも基体の連通孔内に内接しており、塗膜が、基体のほぼ全表面に形成されていた場合には、膜[A]12も同様に、基体の表面層を含む基体11のほぼ全表面に形成され(図2参照)、残された連通孔以外に、ヘリウムの透過する経路のない積層体とすることができる。この経路があると、分子ふるいの際に、クヌーセン拡散と呼ばれる挙動を示し、所望のガス分離性能が得られない場合がある。
尚、基体の連通孔の内径がより小さく、その連通孔に上記非晶質物質形成用組成物が充填されていた場合には、熱処理により、連通孔が、非晶質物質で充填され閉じた状態となる(図3参照)。
【0046】
上記非晶質物質含有膜形成工程の後、結晶質物質含有膜形成工程に進めることにより、積層体の膜[A]の表面に結晶質物質含有膜[B]が形成される。
【0047】
この結晶質物質含有膜形成工程においては、結晶質物質を形成可能な気体を、加熱された、積層体の連通孔に導入する(以下、「化学的気相合成」という。)方法;結晶質物質を形成可能な材料を連通孔内の膜[A]の表面に塗布する等した後、積層体が変形、変質等しない温度で熱処理する方法;積層体を、結晶質物質を形成可能な材料を含む溶液中に浸漬した状態で、電気的処理する方法等を適用することができる。
【0048】
本発明に係る結晶質物質含有膜形成工程においては、化学的気相合成が好ましい。この方法は、密閉された反応系に載置した積層体の、少なくとも連通孔に、化学反応により結晶質物質を生成する気体原料を供給して、膜[A]の表面に結晶質物質を含む膜を堆積させるものである。
【0049】
上記気体原料は、通常、形成しようとする結晶質物質(酸化物、窒化物、炭化物等)を構成する元素からなる化合物のガスである。特に、熱化学反応により結晶質物質が生成されるような気体原料を選択することが好ましい。
気体原料は、2種以上を用いることが好ましく、珪素化合物のガス、及び、炭素化合物のガスを少なくとも用いることが好ましい。
珪素化合物としては、モノシラン、ジシラン、ジクロロシラン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、炭素化合物としては、室温で気体であれば、特に限定されず、アセチレン、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、塩化メチル、塩化ビニル等が挙げられる。きこれらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
化学的気相合成に際し、上記気体原料は、積層体が載置された反応系に充満させた状態で加熱してもよいが、好ましくは、積層体を介して、この積層体の一方側(表面層側)と他方側とが区画された状態で、第1のガスを供給する手段と、第2のガスを供給する手段とを少なくとも備える装置を用いて導入され、その後、加熱された積層体の連通孔内の一方側から他方側へ強制的に通過させる。上記気体原料を「強制的に通過させる」ためには、他方側にポンプ等の排気手段を適用すればよい。ヘリウム分離は、連通孔内の膜[A]上に形成される膜[B]に包囲された細孔の内径に大きく寄与するため、気体原料が集中的に積層体の連通孔内を通過することで、緻密な膜[B]を形成することができる。
尚、反応系への気体原料の導入は、上記のガスを個別に供給してよいし、水素ガス等の気相反応に関与しないガスを、キャリアガスとして用いて供給してもよい。更に、上記のガスは、反応系内に個別に導入されてよいし、反応系への導入前に混合した後、反応系内に導入されてもよい。また、上記のガスの導入速度及び反応系からの排気速度は、特に限定されないが、連続的に導入してよいし、間欠的に導入してもよい。
【0051】
上記気体原料を導入する際の、反応系の加熱温度は、好ましくは600〜800℃、より好ましくは650〜780℃、更に好ましくは680〜750℃である。この温度が低すぎると、気相反応が進行しない場合があり、一方、高すぎると、成膜速度が高くなり、ガス透過速度が低下する場合がある。
【0052】
上記化学的気相合成は、0.5〜4秒の気体原料の導入による反応により、単結晶及び/又は多結晶からなる結晶化物質を含有する膜を形成することができる。従って、連通孔内の膜[A]上に緻密であり且つ結晶化物質の含有割合の高い膜[B]を形成するために、更には、平均径が0.261〜0.288nmである細孔とするために、上記気体原料の導入を繰り返し行うことが好ましい。上記好ましい装置を用いると、この繰り返しにより、結晶性物質が連通孔の内壁に堆積することによる内径が縮小し、気体原料の流れが円滑でなくなり、上記好ましい平均径を有する細孔を得ることができる。
【0053】
上記化学的気相合成を適用し、気体原料を、加熱された積層体の連通孔内に強制的に通過させて得られた膜[B]は、積層体の表面に形成されることもあるが、気体原料のほとんどが連通孔内で反応し、連通孔内の膜[A]の表面に形成される(図6参照)。尚、上記連通孔の内径が0.3nm以下と、小さい場合には、気体原料の反応による生成物により閉塞する場合がある(図6の符号131)。
【0054】
上記結晶質物質含有膜形成工程を化学気相合成以外の方法で行う場合も、公知の方法の条件を適宜、選択することにより、膜厚を調整しつつ膜[B]を形成することができる。
【0055】
上記結晶質物質含有膜形成工程により得られた膜[B]は、ヘリウムのみに対して透過性に優れた細孔を形成することができ、しかも、基体、膜[A]及び膜[B]が無機材料からなることから、100℃以下はもちろん、100℃以上、好ましくは200℃以上の温度において、耐熱性及び耐久性に優れたヘリウム分離材が得られる。
【0056】
本発明のヘリウム分離材は、上記のように、耐熱性に優れた、ヘリウムを含む混合ガスからヘリウムを分離する分子ふるい膜等として有用である。特に、600℃において、ヘリウム及び一酸化炭素の分離の場合には、その透過係数比(He/CO)を好ましくは15以上、より好ましくは25以上、更に好ましくは35以上とすることができる。また、ヘリウム及び水素の分離の場合には、その透過係数比(He/H2)を好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上、更に好ましくは3以上とすることができる。
尚、上記のように、上記結晶質物質含有膜形成工程においては、膜[B]の膜厚を調整することができるので、細孔の内径が水素の分子径より大きくなるように、例えば、0.29〜0.32nmとなるように膜[B]を形成した場合には、水素ガス分離材として用いることができる。
【実施例】
【0057】
以下に例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。尚、下記記載において、「%」は、特に断らない限り質量基準である。
実施例1
α−Al2O3からなり、内壁及び外壁の間に網目状に連通する細孔(平均細孔径100nm)を有する多孔質の管状体111(内径1.8mm、外径2.6mm及び長さ85mm)の両端面を、α−Al2O3からなり、同じ内径及び外径を有する中実体の管21、及び、α−Al2O3からなり、同じ内径及び外径を有し、底面が凹面である中実体の有底管22の各端面によりガラスシールし、複合体2を得た(図7参照)。即ち、この複合体2は、中実体の管21と、多孔質管状体111と、中実体の有底管22とをこの順に備え、各管の端面どうしを密着させるためのガラス封止部23を備える。
その後、ゾル・ゲル法により調製したベーマイトゾル(PVA濃度;3.5%)内に、上記複合体2を10秒間浸漬した。次いで、このゾルを乾燥させ、アルゴンガス雰囲気中、800℃で3時間熱処理し、複合体2の全表面(管状体111の細孔内壁面を含む)にγ−Al2O3からなる膜を形成させた。この操作を再度繰り返し、管状体111と、この管状体111の全表面を被覆したγ−Al2O3膜112とを備える基体部(以下、「基体」ともいう。)11(図8参照)を含む基体付き複合体3(図示せず)を得た。この基体11の平均細孔径は10nmであった。図8は、基体付き複合体3を構成する基体11を示す図であり、この基体11を連通孔部分で破断したときの部分断面を示す概略図である。管状体111の表面にγ−Al2O3膜112が形成されていることを示す。
【0058】
次に、アルゴンガス雰囲気のグローブボックス内で調製した、ポリカルボシラン(数平均分子量;10,700)のキシレン溶液(濃度1%)に、上記基体付き複合体3を5秒間浸漬した(図10参照)。基体付き複合体3の外側から、毛細管現象により、上記キシレン溶液を浸透させた。
その後、このキシレン溶液を乾燥させ、アルゴンガス雰囲気中、800℃で1時間熱処理し、基体付き複合体3の全表面に非晶質のSiOCを含む膜12(基体付き複合体3の表面における膜厚130nm。連通孔内における膜厚は2.5〜4nmと思われる。以下、「SiOC膜」ともいう。)が形成された、SiOC膜付き管状体4を含むSiOC膜付き複合体5を得た。図11は、SiOC膜付き管状体4において、SiOC膜付き管状体111を破断したときの断面画像(電子顕微鏡による)であり、γ−Al2O3膜112の表面にSiOC膜12が形成されていることを示す。
【0059】
次いで、CVD装置(図12参照)の炉7の内部に、SiOC膜付き複合体5をセットし、水素ガス雰囲気中、725℃で20分間予熱した。SiOC膜付き複合体5の温度が恒温に達した後、下記の原料ガス〔1〕〜〔3〕からなる混合ガスを炉内へ間欠的に導入し、混合ガスの導入による装置内の内圧が大気圧近くまで上昇するまで、炭化珪素多結晶を、SiOC膜付き管状体4の細孔におけるSiOC膜12表面に堆積させ(連通孔内における膜厚は0.7〜2.5nmと思われる。)、ヘリウム分離材1を得た。破断画像を図13に示す。
尚、原料ガス〔1〕(キャリアガス)として水素ガス、原料ガス〔2〕として水素ガス及びSiH2Cl2ガスからなる混合ガス(SiH2Cl2濃度;1体積%)、並びに原料ガス〔3〕として水素ガス及びアセチレンガスからなる混合ガス(アセチレン濃度;1体積%)を用いた。各原料ガスの導入量は、原料ガス〔1〕〜〔3〕の順に、1sccm、0.5sccm、及び0.5sccmであり、各原料ガスは、炉内へ導入する前に混合した。また、原料ガス〔1〕〜〔3〕からなる混合ガスは、導入時間2秒及びインターバル2秒の繰り返しで導入し、これを3,500回繰り返した。
尚、図13の画像において、炭化珪素多結晶からなる膜13は、微細なため判別できないが、X線測定により、SiOC膜付き管状体4の細孔において、炭化珪素多結晶が存在していることを確認した。
【0060】
上記で得られたヘリウム分離材を用い、図14に示すガス透過試験装置により、定容積圧力変化法に基づき、600℃における単成分ガス透過試験を行った。まず、減圧にした透過側ラインに設置したバッファタンク内の圧力変化によってガス分子の流量を定量する。大気圧の供給ガスを、ヘリウム分離材を保持した透過セル内に500cc/分にて流し、真空ポンプによりバッファタンク内を4Torrに減圧した後に、真空ポンプとバッファタンクとの間に設置したストップバルブを閉じ、圧力計P2によってタンク内が8Torrに昇圧するまでの時間を計測した。用いた単成分ガスの種類は、ヘリウムガス(He)、水素ガス(H2)及び一酸化炭素ガス(CO)である。単位面積及び単位圧力差のもとで透過するガスについて、透過率を測定した。単位は、mol/m2・s・Paである。また、上記各ガスの透過率の値を用い、ガス分離性能を表す指標として透過率の比である透過係数比He/H2及びHe/COを求めた。得られたヘリウムガス透過率、水素ガス透過率及び透過係数比を表1に示す。
【0061】
実施例2
実施例1で得た基体付き複合体3を用い、下記要領でヘリウムガス分離材を得た。
アルゴンガス雰囲気のグローブボックス内で調製した、ポリカルボシラン(数平均分子量;10,700)のキシレン溶液(濃度0.8%)に、上記基体付き複合体3を5秒間浸漬した(図10参照)。基体付き複合体3の外側から、毛細管現象により、上記キシレン溶液を浸透させた。
その後、このキシレン溶液を乾燥させ、アルゴンガス雰囲気中、800℃で1時間熱処理し、基体付き複合体3の全表面にSiOC膜を形成させた。この浸漬−乾燥−熱処理の操作を再度繰り返し、基体付き複合体3の表面における膜厚140nm(連通孔内における膜厚は3〜4.5nmと思われる。)のSiOC膜12を有するSiOC膜付き複合体5を得た。
【0062】
次いで、実施例1と同じCVD装置を用い、同じ原料ガス〔1〕〜〔3〕からなる混合ガスを、導入時間2秒及びインターバル2秒の繰り返しで導入し、これを3,000回繰り返すことにより、SiOC膜付き管状体4の細孔におけるSiOC膜12表面に炭化珪素多結晶を堆積させ(連通孔内における膜厚は0.6〜2nmと思われる。)、ヘリウム分離材1を得た。
このヘリウム分離材について、実施例1と同様にして、各ガスの透過率を測定した。ヘリウムガス透過率及び透過係数比を表1に示す。
【0063】
実施例3
α−Al2O3からなり、内壁及び外壁の間に網目状に連通する細孔(平均細孔径150nm)を有する多孔質の管状体(内径2.0mm、外径2.9mm及び長さ85mm)の両端面を、実施例1と同様にして、α−Al2O3からなる中実体の管、及び、α−Al2O3からなる中実体の有底管の各端面によりガラスシールし、複合体2を得た。
その後、実施例1で用いたベーマイトゾル内に、上記複合体2を10秒間浸漬した。次いで、このゾルを乾燥させ、アルゴンガス雰囲気中、800℃で3時間熱処理し、複合体2の全表面にγ−Al2O3からなる膜を形成させた。この操作を更に2回繰り返し、管状体と、この管状体の全表面を被覆したγ−Al2O3膜とを備える基体11を含む基体付き複合体3を得た。この基体11の平均細孔径は10nmであった。
【0064】
次に、アルゴンガス雰囲気のグローブボックス内で調製した、ポリカルボシラン(数平均分子量;10,700)のキシレン溶液(濃度0.5%)に、上記基体付き複合体3を5秒間浸漬した(図10参照)。基体付き複合体3の外側から、毛細管現象により、上記キシレン溶液を浸透させた。
その後、このキシレン溶液を乾燥させ、アルゴンガス雰囲気中、800℃で1時間熱処理し、基体付き複合体3の全表面にSiOC膜を形成させた。この浸漬−乾燥−熱処理の操作を更に2回繰り返した。そして、上記キシレン溶液を用い、浸漬時間10秒間及び熱処理温度750℃として、浸漬−乾燥−熱処理の操作を更に3回繰り返し、基体付き複合体3の表面における膜厚110nm(連通孔内における膜厚は2〜3.5nmと思われる。)のSiOC膜12を有するSiOC膜付き複合体5を得た。
【0065】
次いで、実施例1と同じCVD装置を用い、炉7の内部に、SiOC膜付き複合体5をセットし、水素ガス雰囲気中、710℃で20分間予熱した。SiOC膜付き複合体5の温度が恒温に達した後、上記原料ガス〔1〕〜〔3〕からなる混合ガスを炉内へ間欠的に導入し、SiOC膜付き管状体4の細孔におけるSiOC膜12表面に炭化珪素多結晶を堆積させ(連通孔内における膜厚は0.5〜1.8nmと思われる。)、ヘリウム分離材1を得た。
尚、各原料ガスの導入量は、原料ガス〔1〕〜〔3〕の順に、1sccm、0.4sccm、及び0.8sccmである。また、原料ガス〔1〕〜〔3〕からなる混合ガスは、導入時間2秒及びインターバル2秒の繰り返しで導入し、これを2,800回繰り返した。
このヘリウム分離材について、実施例1と同様にして、各ガスの透過率を測定した。ヘリウムガス透過率及び透過係数比を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
上記実施例から明らかなように、α−Al2O3からなる管状体表面にγ−Al2O3膜が形成されてなる基体の表面及び連通孔内壁に、SiOCを含む非晶質物質含有膜を形成し、その後、連通孔内の非晶質物質含有膜に結晶質物質含有膜を積層することにより、ヘリウムと、大きな分子径を有するガスとを分離することができた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のヘリウム分離材は、天然ガス等の粗ヘリウム原料からのヘリウムの抽出、分離等に有用であり、特に、被処理試料が加熱状態にある場合、非酸化性雰囲気にて使用される場合等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明のヘリウム分離材の破断表面の一例を示す概略図である。
【図2】非晶質物質含有膜12が基体11の表面層を被覆した積層体の一例を示す概略断面図である。
【図3】非晶質物質含有膜12が基体11の表面層を被覆した積層体の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明のヘリウム分離材の表面層における断面図の一例を示す概略図である。
【図5】本発明のヘリウム分離材の表面層における断面図の他の例を示す概略図である。
【図6】本発明のヘリウム分離材の表面層における断面図の他の例を示す概略図である。
【図7】実施例1において作製した複合体2を示す概略斜視図である。
【図8】実施例1、2及び3において、補強された基体11の断面を示す概略図である。
【図9】実施例1、2及び3において、基体11の表面に非晶質物質含有膜12が形成された断面を示す概略図である。
【図10】実施例1及び2において非晶質物質含有膜を形成するための工程の一部を示す説明図である。
【図11】実施例1において基体の表面に形成された非晶質物質含有膜の断面を示す画像である。
【図12】非晶質物質含有膜の表面に結晶質物質含有膜を形成するためのCVD装置を示す概略図である。
【図13】実施例1において得られたヘリウム分離材の断面を示す画像である。
【図14】定容積圧力変化法を原理とするガス透過性能評価装置の模式図である。
【符号の説明】
【0070】
1;ヘリウム分離材
11;基体(基体部)
111;基体用支持体(多孔質管状体)
112;補強膜(γ−Al2O3膜)
12;非晶質物質含有膜(SiOC膜)
13;結晶質物質含有膜(炭化珪素多結晶膜)
131;結晶質物質充填部
14;細孔
15;連通孔
2;複合体
21;アルミナ管
22;アルミナ有底管
23;ガラス封止部
3;基体付き複合体
4;SiOC膜付き管状体
5;SiOC膜付き複合体
6;キシレン溶液
7;CVD装置の炉。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連通孔を有し且つ無機材料からなる基体と、該基体の表面層を被覆し且つ非晶質物質を含む非晶質物質含有膜と、上記表面層における連通孔内に内接した非晶質物質含有膜の表面に配設され且つ結晶質物質を含む結晶質物質含有膜とを備え、該結晶質物質含有膜に包囲された細孔を有することを特徴とするヘリウム分離材。
【請求項2】
上記非晶質物質含有膜が非晶質無機物質からなり、且つ、上記結晶質物質含有膜が結晶質無機物質からなる請求項1に記載のヘリウム分離材。
【請求項3】
上記細孔の平均径が0.261〜0.288nmである請求項1又は2に記載のヘリウム分離材。
【請求項4】
上記非晶質物質が、SiO2、SiOC、SiC、SiCN及びSiBCNからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1乃至3のいずれかに記載のヘリウム分離材。
【請求項5】
上記連通孔内に内接している上記非晶質物質含有膜の平均厚さが1.5〜100nmである請求項1乃至4のいずれかに記載のヘリウム分離材。
【請求項6】
上記結晶質物質含有膜の平均厚さが0.5〜4nmである請求項1乃至5のいずれかに記載のヘリウム分離材。
【請求項7】
上記結晶質物質がSiCである請求項1乃至6のいずれかに記載のヘリウム分離材。
【請求項8】
上記基体を構成する無機材料が、Al2O3、ZrO2、ムライト、コーディエライト、AlN、Si3N4及びSiCからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1乃至7のいずれかに記載のヘリウム分離材。
【請求項9】
非晶質物質形成用組成物を、連通孔を有し且つ無機材料からなる基体の、少なくとも該連通孔の内壁に浸透させ塗膜を形成する塗膜形成工程と、該塗膜を含む基体を熱処理し、上記連通孔内に内接し且つ非晶質物質を含む非晶質物質含有膜を形成する非晶質物質含有膜形成工程と、上記非晶質物質含有膜の表面に、結晶質物質を含む結晶質物質含有膜を形成する結晶質物質含有膜形成工程とを備えることを特徴とするヘリウム分離材の製造方法。
【請求項10】
上記非晶質物質形成用組成物が、ポリカルボシラン、ポリシラン、ポリシラザン及びポリカルボシラザンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項9に記載のヘリウム分離材の製造方法。
【請求項11】
上記基体を構成する無機材料が、Al2O3、ZrO2、ムライト、コーディエライト、AlN、Si3N4及びSiCからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項9又は10に記載のヘリウム分離材の製造方法。
【請求項12】
上記基体が有する連通孔の平均径が、5〜200nmである請求項9乃至11のいずれかに記載のヘリウム分離材の製造方法。
【請求項13】
上記非晶質物質含有膜形成工程における熱処理温度が、600〜1,500℃である請求項9乃至12のいずれかに記載のヘリウム分離材の製造方法。
【請求項14】
上記結晶質物質含有膜形成工程において、化学的気相合成を行う請求項9乃至13のいずれかに記載のヘリウム分離材の製造方法。
【請求項15】
上記結晶質物質含有膜形成工程における化学気相合成が、珪素化合物のガス、及び炭素化合物のガスの存在下で加熱する工程を備える請求項14に記載のヘリウム分離材の製造方法。
【請求項16】
上記化学気相合成が、珪素化合物のガス、及び炭素化合物のガスの導入並びに排気を行いながら加熱する工程を備える請求項15に記載のヘリウム分離材の製造方法。
【請求項17】
上記珪素化合物が、モノシラン、ジシラン及びジクロロシランからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項15又は16に記載のヘリウム分離材の製造方法。
【請求項18】
上記炭素化合物が、アセチレン、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、塩化メチル、塩化ビニルからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項16又は17に記載のヘリウム分離材の製造方法。
【請求項19】
請求項9乃至18のいずれかに記載の方法により得られたことを特徴とするヘリウム分離材。
【請求項1】
連通孔を有し且つ無機材料からなる基体と、該基体の表面層を被覆し且つ非晶質物質を含む非晶質物質含有膜と、上記表面層における連通孔内に内接した非晶質物質含有膜の表面に配設され且つ結晶質物質を含む結晶質物質含有膜とを備え、該結晶質物質含有膜に包囲された細孔を有することを特徴とするヘリウム分離材。
【請求項2】
上記非晶質物質含有膜が非晶質無機物質からなり、且つ、上記結晶質物質含有膜が結晶質無機物質からなる請求項1に記載のヘリウム分離材。
【請求項3】
上記細孔の平均径が0.261〜0.288nmである請求項1又は2に記載のヘリウム分離材。
【請求項4】
上記非晶質物質が、SiO2、SiOC、SiC、SiCN及びSiBCNからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1乃至3のいずれかに記載のヘリウム分離材。
【請求項5】
上記連通孔内に内接している上記非晶質物質含有膜の平均厚さが1.5〜100nmである請求項1乃至4のいずれかに記載のヘリウム分離材。
【請求項6】
上記結晶質物質含有膜の平均厚さが0.5〜4nmである請求項1乃至5のいずれかに記載のヘリウム分離材。
【請求項7】
上記結晶質物質がSiCである請求項1乃至6のいずれかに記載のヘリウム分離材。
【請求項8】
上記基体を構成する無機材料が、Al2O3、ZrO2、ムライト、コーディエライト、AlN、Si3N4及びSiCからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1乃至7のいずれかに記載のヘリウム分離材。
【請求項9】
非晶質物質形成用組成物を、連通孔を有し且つ無機材料からなる基体の、少なくとも該連通孔の内壁に浸透させ塗膜を形成する塗膜形成工程と、該塗膜を含む基体を熱処理し、上記連通孔内に内接し且つ非晶質物質を含む非晶質物質含有膜を形成する非晶質物質含有膜形成工程と、上記非晶質物質含有膜の表面に、結晶質物質を含む結晶質物質含有膜を形成する結晶質物質含有膜形成工程とを備えることを特徴とするヘリウム分離材の製造方法。
【請求項10】
上記非晶質物質形成用組成物が、ポリカルボシラン、ポリシラン、ポリシラザン及びポリカルボシラザンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項9に記載のヘリウム分離材の製造方法。
【請求項11】
上記基体を構成する無機材料が、Al2O3、ZrO2、ムライト、コーディエライト、AlN、Si3N4及びSiCからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項9又は10に記載のヘリウム分離材の製造方法。
【請求項12】
上記基体が有する連通孔の平均径が、5〜200nmである請求項9乃至11のいずれかに記載のヘリウム分離材の製造方法。
【請求項13】
上記非晶質物質含有膜形成工程における熱処理温度が、600〜1,500℃である請求項9乃至12のいずれかに記載のヘリウム分離材の製造方法。
【請求項14】
上記結晶質物質含有膜形成工程において、化学的気相合成を行う請求項9乃至13のいずれかに記載のヘリウム分離材の製造方法。
【請求項15】
上記結晶質物質含有膜形成工程における化学気相合成が、珪素化合物のガス、及び炭素化合物のガスの存在下で加熱する工程を備える請求項14に記載のヘリウム分離材の製造方法。
【請求項16】
上記化学気相合成が、珪素化合物のガス、及び炭素化合物のガスの導入並びに排気を行いながら加熱する工程を備える請求項15に記載のヘリウム分離材の製造方法。
【請求項17】
上記珪素化合物が、モノシラン、ジシラン及びジクロロシランからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項15又は16に記載のヘリウム分離材の製造方法。
【請求項18】
上記炭素化合物が、アセチレン、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、塩化メチル、塩化ビニルからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項16又は17に記載のヘリウム分離材の製造方法。
【請求項19】
請求項9乃至18のいずれかに記載の方法により得られたことを特徴とするヘリウム分離材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図14】
【図11】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図14】
【図11】
【図13】
【公開番号】特開2007−137752(P2007−137752A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337864(P2005−337864)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000173522)財団法人ファインセラミックスセンター (147)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000173522)財団法人ファインセラミックスセンター (147)
【Fターム(参考)】
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