説明

ヘリコバクター・ピロリ菌のテストストリップ及び検出方法

【課題】ヘリコバクター・ピロリ菌のテストストリップ及び検出方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、ヘリコバクター・ピロリ菌の検出に用いられるテストストリップ、及び、検出方法を提供する。テストストリップには主に第1片体、第2片体、第1ろ過層、及び、第2ろ過層が含まれる。第1片体は大まかにその中央部位に位置する凸部を備える。第2片体は第1片体の凸部に対応する凹部を備える。第1ろ過層は検体の受けに用い、円盤状の構造を有し、その大きさは第1片体の凸部と該第2片体の凹部の相互に嵌合する密閉空間内に収容され、アジ化ナトリウム(NaN3)、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、尿素(Urea)等の成分を具備する。第2ろ過層は、中空の環状構造で、密閉空間内の第1ろ過層の下方に収容され、第1ろ過層の検体内からのウレアーゼを受けることに用い、アジ化ナトリウム、フェノールレッド(phenol red)と尿素等の成分を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テストストリップ及び検出方法の提供に関し、特に、ヘリコバクター・ピロリ菌の検出に用いるものに関する。
【背景技術】
【0002】
1982年、2名のオーストラリア医師であるバリー・マーシャル(Barry J. Marshall)とロビン・ウォレン(Robin Warren)により、胃潰瘍を引き起こす主な病因が過去周知されてきたストレス或いは生活リズムの乱れ等の要因でなく、ヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobacter pylori、HP)であることが発見された。これら病原菌は体内に入った後、胃と十二指腸の保護粘膜の中に寄生し、粘膜層の保護を弱らせて、胃潰瘍を引き起こしていた。
【0003】
人体内にヘリコバクター・ピロリ菌が存在するどうかを検出する場合、従来の検出方法の一つとして尿素呼気試験(Urea Breath Test、UBT)がある。被験者は、炭素同位体の尿素検査薬を内服してから30分間後に呼気試験を行い、このうち、上記炭素同位体は13C或いは14Cとすることができる。ヘリコバクター・ピロリ菌に感染された者からは、大量の炭素同位体を含んだ二酸化炭素が吐き出される。この試験原理は、ヘリコバクター・ピロリ菌にウレアーゼ(Urease)が大量に含有し、尿素(Urea)がアンモニウムイオン(NH4+)と二酸化炭素(CO2)に分解され、また二酸化炭素が呼吸器系から排出される。しかし、尿素呼気試験に使用される測定機器は非常に高価で、且つ診断結果を確立する場合、通常更に一歩進んで検体を取り出して、細菌の培養を行い、細菌培養の結果を利用することで偽陽性の状況を排除できるが、細菌培養の作業は非常に時間を費やし、且つ失敗し易い。
【0004】
尿素をヘリコバクター・ピロリ菌の検出に使用する場合、二酸化炭素の発生量によってヘリコバクター・ピロリ菌の存在の有無を判定できるほかに、アンモニウムイオン発生の有無の検出を通じても判定できる。アンモニウムイオンが溶液の環境内において弱アルカリ性を呈するため、最初の手法は、検体を尿素及びフェノールレッドを含んだ検出溶液内に入れ、フェノールレッドの呈色反応を利用して検体中にヘリコバクター・ピロリ菌が存在するかどうかを判断する。しかしこの種検出溶液の安定性は比較的弱く、室温のもとでの保存が非常に難しいものとなっている。もう一つの検出方法は、上記反応材料をゲル中に入れ、更に一歩進ハーフウェット(half−wet)式試薬として改良する。しかしながら、検体の反応時間は約数時間から1日必要となり、且つ変色程度が高くない場合、変色の有無の判断が難しく、偽陰性の状況が起き、そのため使用上やはり簡便性のある方法となっていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の問題を解決するため、本発明ではテストストリップを提供し、主に第1片体、第2片体、第1ろ過層、及び第2ろ過層が含まれる。第1片体は大まかにその中央部位に位置する凸部を備える。第2片体は第1片体の凸部に対応する凹部を備える。第1ろ過層は検体の受けに用い、円盤状の構造を有し、その大きさは該第1片体の凸部と該第2片体の凹部の相互に嵌合する密閉空間内に収容され、アジ化ナトリウム(NaN3)、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、尿素等の成分を具備する。第2ろ過層は、中空の環状構造で、密閉空間内の第1ろ過層の下方に収容され、第1ろ過層の検体内からのウレアーゼを受けることに用いる。第2ろ過層はアジ化ナトリウム、フェノールレッド(phenol red)、尿素等の成分を具備する。
【0006】
これにより、本発明の主な目的は、ヘリコバクター・ピロリ菌を検出するためのドライ式テストストリップを提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、簡単に色差を通じて検体中にヘリコバクター・ピロリ菌の存在の有無を見て取れることができるテストストリップを提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、数10分間から1時間以内で検体中にヘリコバクター・ピロリ菌の存在の有無を判断できるテストストリップを提供することである。
【0009】
本発明では、更に一歩進んで検出方法を提供し、これは以下のステップを含む。
(a)第1片体、第2片体、第1ろ過層及び第2ろ過層を含み、第1片体には大まかにその中央部位に位置する凸部が設けられ、また第2片体には第1片体の凸部に対応する凹部が設けられ、第1ろ過層は円盤状の構造で、アジ化ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、尿素等の成分を具備し、第1片体の凸部と第2片体の凹部の相互に嵌合する密閉空間内に収容され、又、第2ろ過層は中空の環状構造で、アジ化ナトリウム、フェノールレッド、尿素等の成分を具備し、密閉空間内の第1ろ過層の下方に収容され、ヘリコバクター・ピロリ菌の検出に用いられるテストストリップを提供する。
(b)検体を提供する。
(c)第1片体を開き、上記の検体をテストストリップの第1ろ過層に置くと、検体内のウレアーゼが第1ろ過層から第2ろ過層へ浸透していく。
(d)テストストリップを閉合し、凸部を通じて第1ろ過層と第2ろ過層を押圧して好ましい押圧及び閉合効果を達成する。
(e)最終的に、テストストリップの第1ろ過層と第2ろ過層の色差を比較して、検体中にヘリコバクター・ピロリ菌が存在するかどうかを決定する。
【0010】
本発明の別の目的は、ドライ式テストストリップを利用してヘリコバクター・ピロリ菌の検出を行う検出方法を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、簡単に色差を通じて検体中にヘリコバクター・ピロリ菌の存在の有無を見て取ることができる検出方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、数10分間から1時間以内に検体中にヘリコバクター・ピロリ菌の存在の有無を判断できる検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明は、ヘリコバクター・ピロリ菌の検出に用いられるテストストリップ、及び、検出方法を提供する。テストストリップには主に第1片体、第2片体、第1ろ過層、及び、第2ろ過層が含まれる。第1片体は大まかにその中央部位に位置する凸部を備える。第2片体は第1片体の凸部に対応する凹部を備える。第1ろ過層は検体の受けに用い、円盤状の構造を有し、その大きさは第1片体の凸部と該第2片体の凹部の相互に嵌合する密閉空間内に収容され、アジ化ナトリウム(NaN3)、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、尿素等の成分を具備する。第2ろ過層は、中空の環状構造で、密閉空間内の第1ろ過層の下方に収容され、第1ろ過層の検体内からのウレアーゼを受けることに用い、アジ化ナトリウム、フェノールレッド(phenol red)と尿素等の成分を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施例のテストストリップの分解見取図である。
【図2】本発明の第1の実施例のテストストリップの閉合見取図である。
【図3】本発明の第2の実施例の検出方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のヘリコバクター・ピロリ菌のテストストリップ及び検出方法の各実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。
【実施例】
【0016】
まず、本発明の第1の実施例のテストストリップ分解図について、図1を参照して説明する。テストストリップ100は、ヘリコバクター・ピロリ菌を検出するために用いるもので、これには第1片体110、第2片体120、第1ろ過層130及び第2ろ過層140が含まれる。第1片体110には大まかに中央部位に位置する凸部112を備え、第2片体は第1片体の凸部112に対応する凹部122を備える。
【0017】
次に、本発明の第1の実施形態におけるテストストリップ閉合図について、図2を参照して説明する。第1ろ過層130は検体1を受けることに用いるもので、円盤状の構造を備え、第1片体の凸部112と第2片体の凹部122の相互に嵌合する密閉空間160内に収容され、且つアジ化ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、尿素等の成分を具備する。アジ化ナトリウムは抗菌に用いられ、テストストリップ100を比較的長時間保存させることができる。リン酸二水素ナトリウムは検出反応時の緩衝物質(buffer)として用いられる。尿素はウレアーゼと反応し、検体1中にヘリコバクター・ピロリ菌の主成分が存在するかどうかを検出するものである。
【0018】
第2ろ過層140は、中空の環状構造で、密閉空間160内の第1ろ過層130の下方に収容され、第1ろ過層130の検体1内からのウレアーゼを受けることに用いられる。第2ろ過層140はアジ化ナトリウム、フェノールレッド、尿素等の成分を具備する。アジ化ナトリウムの働きは上述に述べたとおりで、抗菌に用いられ、テストストリップ100を比較的長時間保存させることができる。フェノールレッドはpH値の酸アルカリ指示薬である。尿素の働きは上記にあるものと同様で、ウレアーゼと反応し、検体1中にヘリコバクター・ピロリ菌の主成分が存在するかどうかを検出することに用いられる。検体1中にウレアーゼが含まれている場合、ウレアーゼが第1ろ過層130及び第2ろ過層140内の尿素を分解して、アンモニウムイオンを生成させ、フェノールレッドを帯びた第2ろ過層140を変色させることで、第1ろ過層130と色差が生じる。正常の場合、ヘリコバクター・ピロリ菌に感染していない検体中にウレアーゼがないため、第2ろ過層140と第1ろ過層130に生じた色差によって検体1中にヘリコバクター・ピロリ菌が含有することを推察できる。
【0019】
好ましい実施形態において、図1に示すように、検出結果の正確性を確保するため、第1ろ過層130と第2ろ過層140の間において、検体1中のヘモグロビン或いはその他干渉物質が第1ろ過層130から第2ろ過層140へ浸透することを阻止する薄膜150を増設できる。
【0020】
上記各成分のテストストリップ100における割合は、下記のものが好ましい。
【0021】
アジ化ナトリウムの体積パーセンテージは、約0.001%から0.003%とする。
【0022】
リン酸二水素ナトリウムの濃度は、約6.5ミリモル(mM)から19.5ミリモル(mM)とする。
【0023】
フェノールレッドの体積パーセンテージは約0.025%から0.075%であり、及び、
【0024】
尿素の体積パーセンテージは約0.5%から1.5%とする。
【0025】
上記テストストリップ100はドライ式試薬紙で検体1中にヘリコバクター・ピロリ菌が存在するかどうかを検査し、数10分間から1時間以内で結果が判明できる。従来の試薬片と比べても更にスピーディーに検出結果を得ることができる。その他、2枚式のろ過層設計において、ヘリコバクター・ピロリ菌が存在する状態で、第2ろ過層140にフェノールレッドが含まれることによってピンク色に変り、第1ろ過層130の色は変わらないので、利用者は第1ろ過層130と第2ろ過層140の色差を通じて検体1中にヘリコバクター・ピロリ菌が存在するかどうかを簡単に判断でき、使用上の簡便性を大幅に向上することができる。そのため本発明で提供するテストストリップ100で検出した場合、迅速で正確な検出結果を得ることができる。
【0026】
本発明は、更に第2の好ましい実施例を提供し、図3を参照して説明する。図3に示すように、ヘリコバクター・ピロリ菌を検出に用いる検出方法であり、その特徴のステップを以下に示す。
【0027】
ステップ21:まず、テストストリップ100を提供し、テストストリップ100の各部材符号は図1を参照にしてください。テストストリップ100には第1片体110、第2片体120、第1ろ過層130及び第2ろ過層140が含まれる。第1片体が大まかに中央部位に位置する凸部112を備える。第2片体が第1片体の凸部112に対応する凹部122を備える。
【0028】
ステップ22:検体1を提供し、また該検体1は消化器検体であり、該検体1の取り出しは内視鏡或いはその他外科手術の方法を通じて採取できる。
【0029】
ステップ23:第1片体110を開き、検体1をテストストリップ100の第1ろ過層130に置く。第1ろ過層130がアジ化ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、尿素等の成分を具備し、円盤状の構造で、第1片体110の凸部112と第2片体120の凹部122の相互に嵌合する密閉空間160内(図2に表示)に収容される。検体1中のウレアーゼは第1ろ過層130から第2ろ過層140へ浸透拡散できる。第2ろ過層140はアジ化ナトリウム、フェノールレッド、尿素等の成分を具備し、中空の環状構造で、密閉空間160内の第1ろ過層130の下方に収容される。
【0030】
ステップ24:テストストリップ100を閉合し、凸部112により第1ろ過層130と第2ろ過層140を押圧することで好ましい押圧及び閉合効果を達成する。
【0031】
ステップ25:第1ろ過層130と第2ろ過層140の色差により、検体1内にウレアーゼが含まれる場合、ウレアーゼが第1ろ過層130及び第2ろ過層140内の尿素を分解して、アンモニウムイオンを生成し、フェノールレッドの第2ろ過層140を変色させる。また第1ろ過層130にフェノールレッド指示薬を含有していないため、依然として本来の色を保持し、第2ろ過層140が変色の有無の対照とすることができる。こうすることで、テストストリップ100の第1ろ過層130と第2ろ過層140の色差によって検体1中にヘリコバクター・ピロリ菌が存在するかどうかを決定できる。
【0032】
好ましい実施形態において、図1に示すように、検出結果の正確性を確保するため、第1ろ過層130と第2ろ過層140の間において、検体1中のヘモグロビン或いはその他干渉物質が第1ろ過層130から第2ろ過層140へ浸透することを阻止する薄膜150を増設できる。
【0033】
テストストリップ100内の上記各成分の好ましい割合は、第1の実施例内で述べることとおるため、ここでは繰り返して記述しない。
【0034】
上記検出方法は、2層のろ過層の色差を通じて検体中にヘリコバクター・ピロリ菌が存在するかどうかを判断するため、判断上の精度と簡便性を大幅に向上させることができる。
【0035】
以上、本発明につき各実施例及びその図面を通じて詳細に説明したが、当該技術分野における熟練者は、本発明の各実施例がこの例示で決して本発明を限定するものではないことを理解し、即ち本発明の実質的精神を逸脱しない範囲内において種々の改良変更をなし得ることは、本発明に含むものであるのが勿論である。このため、本発明は、添付されている特許請求の範囲で定義する。
【符号の説明】
【0036】
1 検体
100 テストストリップ
110 第1片体
120 第2片体
130 第1ろ過層
140 第2ろ過層
112 凸部
122 凹部
150 薄膜
160 密閉空間
21、22、23、24、25 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘリコバクター・ピロリ菌を検出することに用いられるテストストリップであって、
大まかにその中央部位に位置する凸部を備える第1片体と、
前記第1片体の凸部と相互に嵌合して1つの密閉空間を形成して凹部を備える第2片体と、
検体を受けることに用いられ、円盤状の構造を備え、前記密閉空間内に収容された第1ろ過層と、を含み
前記テストストリップは、中空の環状構造で、前記密閉空間内の前記第1ろ過層の下方に収容され、前記第1ろ過層からの検体を受けることに用いられる第2ろ過層を更に含み、且つ、前記第1ろ過層がアジ化ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、尿素等の成分を具備し、前記第2ろ過層がアジ化ナトリウム、フェノールレッド、尿素等の成分を具備することを特徴とする、
ヘリコバクター・ピロリ菌を検出することに用いられるテストストリップ。
【請求項2】
ヘリコバクター・ピロリ菌を検出することに用いられる検出方法であって、
第1片体、第2片体、第1ろ過層、及び、第2ろ過層を含み、前記第1片体には大まかにその中央部位に位置する凸部が設けられ、前記第2片体には前記第1片体の凸部と相互に嵌合して1つの密閉空間を形成するする凹部が設けられ、前記第1ろ過層はアジ化ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、尿素等の成分を具備し、円盤状の構造で、前記密閉空間内に収容され、前記第2ろ過層はアジ化ナトリウム、フェノールレッド、尿素等の成分を具備し、中空の環状構造で、前記密閉空間内の前記第1ろ過層の下方に収容されるテストストリップを提供するステップと、
検体を提供するステップと、
前記第1片体を開き、前記検体を前記テストストリップの前記第1ろ過層に置くステップと、
前記テストストリップを閉合し、前記凸部を通じて前記第1ろ過層と前記第2ろ過層を押圧して好ましい押圧、及び、閉合効果を達成するステップ、及び、
前記テストストリップの前記第1ろ過層と前記第2ろ過層の色差を比較して、前記検体中にヘリコバクター・ピロリ菌が存在するかどうかを決定するステップと、を含むことを特徴とする、
ヘリコバクター・ピロリ菌を検出することに用いられる検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−131011(P2010−131011A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271865(P2009−271865)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(509330013)實創國際生技股▲分▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】