説明

ヘルペスウイルス感染症を治療する方法

本発明は、本質的に有効量のジクロフェナク(例えば、3〜7%w/w)またはその薬学的に許容される塩からなる有効成分を、それを必要とする対象に投与することにより、対象のヘルペスウイルス活性を阻害する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、本質的に有効量のジクロフェナクまたはその薬学的に許容される塩からなる有効成分を、それを必要とする対象に投与することにより、対象のヘルペスウイルス活性を阻害する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヘルペスウイルスは、二本鎖DNAウイルスの大きな科を含む。ヘルペスウイルス科は、宿主範囲および指向性、ウイルス生活環、ならびにウイルス持続性および潜伏期などのいくつかの生物学的特性に基づいて、3つの亜科(すなわち、α、βおよびγ)に分類することができる。ヘルペスウイルスの8種、単純ヘルペスウイルス1型および2型(HSV−1およびHSV−2)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、ならびにヒトヘルペスウイルス6型、7型および8型(HHV−6、HHV−7およびHHV−8)はヒトに感染することが示されている。
【0003】
ヘルペスイウルスの中で、2種の一般的に知られたウイルスは、HSV1およびHSV2と呼ばれる単純ヘルペスウイルス1型および2型、ならびに水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)である。HSV1は、熱性疱疹または単純疱疹として一般的に知られている口腔顔面病変を引き起こす。これらの病変は、最も一般的には、唇に現れるが、顔、口腔粘膜、目および鼻、ならびに時々、手の幹(the trunk of hands)に現れ得る。口の感染症は、単純疱疹(熱性疱疹)とも呼ばれる口唇ヘルペスという用語で示される。顔の他の部分も発症することがあり、これらの感染症は、顔面単純ヘルペスと呼ばれる。感染症は、体の他の部分にも現れ得る。米国人口の約30%が、HSV1の再発エピソードを患っている。HSV2は、HSV1ほど一般的ではないが、生殖器病変を引き起こす。逆に、性器ヘルペスは、約30%のケースがHSV1によって引き起こされている。
【0004】
水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)は、チキンポックスとして一般的に知られている水痘および帯状疱疹として一般的に知られている帯状ヘルペスを引き起こす。帯状疱疹は、皮膚および神経に影響を及ぼし、特定の神経セグメントに沿って現れる小さな疱疹または病変の群を特徴とする。病変は、背中に最も一般的に見られ、患部の鈍痛が先に起こり得る。
【0005】
いったん個体がヘルペスウイルスに感染すると、ウイルスはその後体内に潜伏して残っている。潜伏状態では、ウイルスは、神経節中の神経細胞体中に位置している。インフルエンザ感染、他の呼吸器障害、胃腸感染症、ストレス、疲労、月経、妊娠、アレルギー、日光または発熱などの特定の刺激によって、潜伏ウイルスが活性化され、明らかにされた神経路に沿って神経節から皮膚表面へ移動し、そこで増殖して症状を引き起こし得る。
【0006】
アシクロビル、化学名アシクログアノシンは、ウイルスコードDNAポリメラーゼを標的化するグアノシン類似体抗ウイルス薬である。アシクロビルは、主として単純ヘルペスウイルス感染症の治療、ならびに帯状ヘルペス(帯状疱疹)の治療に使用されている。アシクロビルは、水痘(チキンポックス)、帯状ヘルペス、および性器ヘルペスが初めてもしくは繰り返し発生している人々において、疼痛を減少させ、触痛または疱疹の治癒を早めるために使用されている。アシクロビルは、合成ヌクレオシド類似体と呼ばれる抗ウイルス剤のクラスにある。それは、ヘルペスウイルスの体内での拡散を止めることによって働く。アシクロビルは、性器ヘルペスを治癒させず、性器ヘルペスの他の人々への拡散を止めることはできない。アシクロビルは水に難溶性であり、低い生物学的利用能を示す。比較的長い回復時間を要し(すなわち、一般的には、患者が回復するのに2週間以上かかる)、高い処方費用を伴うことが、この薬物を患者にとってあまり魅力的ではなくしている。
【0007】
局所麻酔薬であるリドカイン、2−(ジエチルアミノ)−N−(2,6−ジメチルフェニル)−アセトアミドは、心室頻拍(心臓の不整脈)の治療のための静脈注射溶液として知られている。リドカインはまた、局所適用またはエアゾール(鼻閉を減少させるための鼻エアゾールなど)で、局所血流を減少させるための血管収縮薬として広く使用されている。さらに、リドカインは、帯状疱疹後神経痛(PHN)、帯状疱疹による神経損傷痛(帯状ヘルペスおよび帯状疱疹後神経痛)および類似の神経障害の減少における治療効果で知られている。
【0008】
リドカインベースは脂溶性である。これは水に不溶性であるので、液体溶液を得るためにエタノールなどを要する水性懸濁液への使用には適していない。しかしながら、その塩形態、リドカイン−HClは、水およびアルコールに極めて可溶性である。したがって、リドカイン−HClは、一般的に、注射液の調製に使用される形態である。
【0009】
2−(2,6−ジクロロアニリノ)フェニル酢酸であるジクロフェナクは、関節リウマチの治療用の抗リウマチ剤としての役割で知られている。ジクロフェナクは、NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)の酢酸系に属する。ジクロフェナクは、炎症を軽減するため、および関節炎または急性傷害などの状態における疼痛を減少させる鎮痛薬として使用されている。水への溶解度が比較的低いために、ジクロフェナクの水性注射液は得るのが困難である。
【0010】
ヘルペスウイルス感染症を治療し、ウイルス活性を阻害する有効な方法が必要とされている。この方法は、複数薬物を使用せず、最小限の副作用しか有さない。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、対象のヘルペスウイルス活性を阻害する方法に関する。本方法は、本質的に有効量のジクロフェナクまたはその薬学的に許容される塩からなる有効成分を、それを必要とする対象に局所投与するステップを含む。本方法は、ヘルペスウイルス感染症を治療するために、ただ1つの活性化合物、すなわちジクロフェナクのみを必要とする。本方法は、複数薬物の使用を必要としない。
【0012】
本発明は、単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)、単純ヘルペスウイルス2型、水痘帯状疱疹ウイルスおよびこれらの組み合わせを含むヘルペスウイルスの活性を阻害するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)5%リドフェナク(lidofenac)および5%アシクロビル、(b)5%アシクロビル、ならびに(c)5%リドフェナクによる、病変数、病変面積およびウイルス力価への阻害効果を示す図である。
【図2】リドフェナク(1%、3%および5%)、ジクロフェナク(5%)、リドカイン(5%)およびアシクロビル(5%)によるウイルス力価への阻害効果を比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
発明者等は、ヘルペスウイルス活性を阻害する有効な方法を発見した。発明者等は、動物で試験した場合、活性化合物として単独のジクロフェナクまたはその薬学的に許容される塩が、抗ヘルペスウイルス効果を有し、ヘルペスウイルス力価を減少させるのに十分であることを発見した。ヘルペスウイルス活性を阻害するためにアシクロビルまたはリドカインなどの追加の活性化合物は必要とされない。本方法は、単一の薬物を使用することにより、複数薬物によって引き起こされる副作用を最小化し、患者のコンプライアンスを向上させ、経済的利点をもたらす。
【0015】
本発明は、対象のヘルペスウイルス活性を阻害する方法に関する。本方法は、ヘルペスウイルス感染症を患っている対象を同定するステップと、本質的に有効量のジクロフェナクまたはその薬学的に許容される塩からなる有効成分を対象に局所投与し、それによってウイルス活性を阻害するステップとを含む。
【0016】
本明細書で使用する「薬学的に許容される塩」は、親化合物の所望の生物活性を保持し、望ましくない中毒学的効果を与えない塩である。薬学的に許容される塩は、金属または有機対イオンにより形成することができ、それだけに限定されないが、ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ金属塩;マグネシウムまたはカルシウムなどのアルカリ土類金属塩;およびアンモニウムまたはテトラアルキルアンモニウム塩、すなわちNX4+(式中、XはC1~4である)を含む。本出願で使用する「薬学的に許容される塩」は、塩形態としての別の活性化合物を含まない。
【0017】
本明細書で使用する「有効量」は、ウイルス活性を減少および阻害するのに有効な量を指す。ウイルス活性は、ウイルス力価、病変数および/または病変面積によって測定することができる。有効量のジクロフェナクは、約1〜10%、好ましくは2〜8%、または3〜7%、または4〜6%である。
【0018】
本方法は、単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)、単純ヘルペスウイルス2型、水痘帯状疱疹ウイルスおよびこれらの組み合わせを含むヘルペスウイルスの活性を阻害する。
【0019】
本方法は、有効量のジクロフェナクまたはその薬学的に許容される塩を対象の患部に投与する。好ましいジクロフェナクは、ジクロフェナクナトリウムまたはジクロフェナクカリウムであり、ジクロフェナクナトリウムがより好ましい。有効量のジクロフェナクは、約1〜10%、好ましくは2〜8%、3〜8%、3〜7%または4〜6%(w/w)である。例えば、有効量のジクロフェナクは、約5%(w/w)である。患部は、典型的には、対象の外部組織である。ジクロフェナク治療後、合計病変数、病変サイズおよびウイルス力価は減少する。
【0020】
本出願で使用する「約」は、列挙された値の±10%を指す。
【0021】
本発明はまた、1つまたは複数の薬学的に許容される担体および活性化合物ジクロフェナクまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物中の活性化合物またはその薬学的に許容される塩は、一般に、約1〜10%、または2〜8%、または3〜8%、または3〜7%、または4〜6%(w/w)の量である。例えば、医薬組成物中の活性化合物は、約1、3または5%である。
【0022】
薬学的に許容される担体は、従来の基準を使用して当業者により選択され得る。薬学的に許容される担体には、それだけに限定されないが、非水ベース溶液、懸濁液、乳濁液、マイクロエマルジョン、ミセル溶液、ゲルおよび軟膏が含まれる。薬学的に許容される担体はまた、それだけに限定されないが、生理食塩水および電解質水溶液;塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセロールおよびブドウ糖などのイオン性および非イオン性浸透圧剤;水酸化物塩、ヒドロニウム塩、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩およびホウ酸塩などのpH調整剤および緩衝液;亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、チオ亜硫酸塩、アスコルビン酸、アセチルシステイン、システイン、グルタチオン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、トコフェロールおよびアスコルビン酸パルミテートの塩、酸および/または塩基などの抗酸化剤;レシチン、それだけに限定されないが、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルイノシトールを含むリン脂質などの界面活性剤;ポロキサマーおよびポロキサミン、ポリソルベート80、ポリソルベート60およびポリソルベート20などのポリソルベート、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなどのポリエーテル:ポリビニルアルコールおよびポビドンなどのポリビニル;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースならびにこれらの塩などのセルロース誘導体;鉱物油および白色ワセリンなどの石油誘導体;ラノリン、ラッカセイ油、パーム油、ダイズ油などの脂肪;モノ−、ジ−およびトリグリセリド;カルボキシポリメチレンゲルなどのアクリル酸のポリマー、ならびにデキストランなどの多糖類、ならびにヒアルロン酸ナトリウムなどのグリコサミノグリカンを含む成分を含んでもよい。このような薬学的に許容される担体は、周知の保存剤を使用して、細菌汚染から保護してもよく、これらの保存剤には、それだけに限定されないが、塩化ベンザルコニウム、エチレンジアミン四酢酸およびその塩、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、メチルパラベン、チメロサール、ならびにフェニルエチルアルコールが含まれ、または薬学的に許容される担体は単一使用もしくは複数使用のために保存剤非含有製剤として製剤化してもよい。
【0023】
活性化合物を含む局所製剤は、ゲル剤、クリーム剤、ローション剤、液剤、乳剤、軟膏剤、スプレー剤、溶液剤(solution)および懸濁剤の形態であり得る。
【0024】
一実施形態では、活性化合物は、局所適用によって患部に送達することができる液剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤または他の種類の懸濁剤を含む、任意の許容される担体に組み込まれる。別の実施形態では、医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、シロップ剤、坐剤、注射剤などの剤形とすることができる。上記医薬組成物は、従来の方法により調製することができる。
【0025】
本発明の医薬組成物は、局所、経口、非経口(静脈内、筋肉内、皮下または直腸など)および他の全身投与経路を含む全身投与の許容される様式のいずれかによって、適用することができる。活性化合物は最初に血漿に到達し、次いで、標的組織中に分散する。組成物の処方は、感染症の程度および各患者の個々の応答に基づいて変えることができる。局所投与は、本発明のための投与の好ましい経路である。
【0026】
好ましい実施形態では、組成物は、患部上に局所適用され、その中に擦り込まれる。組成物は、1日に少なくとも1回もしくは2回、または1日当たり3〜5回局所適用される。一般に、局所組成物は、約1〜10%、好ましくは約2〜6%、2〜10%、3〜7%、3〜8%、3〜10%、4〜6%、4〜7%または4〜8%(w/w)の活性化合物を含む。例えば、局所組成物は、約3%または5%(w/w)の活性化合物を含む。患部に応じて、用量当たり典型的には0.01〜10g、好ましくは0.05〜5gの局所組成物が個体に適用される。一般に、活性化合物は、1〜500mg、好ましくは2.5〜250mg/用量で個体に局所適用される。例えば、0.05gの5%ジクロフェナクナトリウム(2.5mg)が、病変面積1cm2当たりに適用される。活性化合物は皮膚を通過し、不快部位に送達される。
【0027】
当業者は、多種多様な送達機構もまた本発明に適していることを認識するだろう。
【0028】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらの実施例が本発明の範囲をその中に記載される特定の手順に限定すると解釈すべきではない。
【実施例】
【0029】
実施例1.クリーム製剤の調製
クリーム基剤±[有効成分]を以下のステップによって調製した:
1.油相の調製:混合容器を油浴(80±2℃)に浸した。[アシクロビル、50g]メチルパラベン(1g)、プロピルパラベン(1g)、セチルアルコール(60g)、ソルビタンモノステアレート60(12g)、ステアリン酸(20g)、合成鯨蝋(50g)、ジメチルポリシロキサン(30g)およびミグリオール812(70g)を混合容器に添加し、撹拌してよく混合した。混合物を150メッシュによって1回濾過して粒子を除去した。
2.水相の調製:別の混合容器を油浴(80±2℃)に浸した。[ジクロフェナクナトリウム塩、50g][ジクロフェナク酸リドカイン塩、10g、30gまたは50g]ポリソルベート60(36g)、プロピレングリコール(160g)、クエン酸ナトリウム(10g)および総重量を1000gにするのに十分な精製水を混合容器に添加し、攪拌して完全に溶解させた。混合物を150メッシュによって1回濾過して粒子を除去した。
3.乳化:油相を、35〜40mmHgの真空圧力を有する蒸気ジャケット付タンク中に移した。水相を、Homo−Mixer(25〜35Hz)を使用して一定の攪拌速度で、25分間で蒸気ジャケット付タンクにゆっくり添加した。
4.前ステップの乳濁液をゆっくりの攪拌条件下で30℃の温度に冷却して、クリームの剤形の局所製剤を得た。
【0030】
実施例2.動物への異なる化合物の試験
目的:
(1)ADO−1、ADO−2、ADO−3およびADO−4;(2)1%VDO99クリーム、3%VDO99クリーム、5%VDO99クリームおよびこれらのプラセボ;(3)VGO99クリーム(ジクロフェナクナトリウム、50mg(RA009))、VDO99クリーム(ジクロフェナク酸、リドカイン塩50mg(RA052))、VAO99クリーム(リドカイン、50mg(RA001))およびこれらのプラセボクリームを、ヘルペス動物モデルに試験した。クリーム製剤±有効成分を実施例1にしたがって調製した。
【0031】
試験化合物:
I群
ADO−1:5%アシクロビル(50mg/g)+5%ジクロフェナク酸リドカイン塩(リドフェナク50mg/g)
ADO−2:5%アシクロビル(50mg/g)
ADO−3:5%ジクロフェナク酸リドカイン塩(リドフェナク50mg/g)
ADO−4:基剤
【0032】
II群
1%VDO99クリーム:ジクロフェナク酸、リドカイン塩(リドフェナク10mg/g、RA032);
VDO99プラセボクリーム(RA035プラセボ);
3%VDO99クリーム:ジクロフェナク酸、リドカイン塩(リドフェナク30mg/g、RA033);
VDO99プラセボクリーム(RA036プラセボ);
5%VDO99クリーム:ジクロフェナク酸、リドカイン塩(リドフェナク50mg/g、RA034);
VDO99プラセボクリーム(RA037プラセボ)。
【0033】
III群
1%VDO99クリーム:ジクロフェナク酸、リドカイン塩(リドフェナク10mg/g、RA032);
VDO99プラセボクリーム(RA035プラセボ);
3%VDO99クリーム:ジクロフェナク酸、リドカイン塩(リドフェナク30mg/g、RA033);
VDO99プラセボクリーム(RA036プラセボ);
5%VGO99クリーム、ジクロフェナクナトリウム、50mg/g(RA009)、
プラセボクリーム(RA010);
5%VDO99クリーム、ジクロフェナク酸、リドカイン塩(リドフェナク50mg/g、RA052)、
プラセボクリーム(RA053);
5%VAO99クリーム、リドカイン、50mg/g(RA001)、
プラセボクリーム(RA003)。
【0034】
化合物は、使用しない時は暗所で室温に保った。5%ACV/PEG(Zovirax Ointment)を実験の対照として使用した。
【0035】
動物接種
ハートレイ系非近交系アルビノモルモットを本実験で使用した。6つまたばね式ワクチン接種装置(Sterneedle、Pan Ray Division、Ormont Drug、Englewood、New Jersey)の10回の起動によって、HSV−1ウイルスストック(0.035ml)を、十分間隔をあけた部位で、各領域に適用し皮膚を通して導入した。接種日を0日目とした。約250mgの試験薬物を1、2および3日目に4x/日で適用した。
【0036】
5%ACV/PEG(Zovirax Ointment)についての投与計画を、1、2および3日目について5x/日の発明者等の標準的投与計画から1、2および3日目について4x/日に減少させて、I群の計画に調和させた。
【0037】
II群およびIII群について、1、2および3日目について5x/日の発明者等の標準的投与計画の、5%ACV/PEG(Zovirax Ointment)のための投与計画を実験対照として使用した。
【0038】
4日目に、動物の背中の上の部位をNairで1回処理し、動物の背中の上の再成長毛を除去した。動物の病変を数え、動物の写真を撮り、病変サイズを測定するために後で使用した。動物を屠殺し、異なる領域から全層皮膚を取り出した。処理領域の各々からの長方形の皮膚を、氷浴中2%ウシ胎児血清(FBS)を含む15mlの組織培養液中に入れた。次いで、サンプルをStomacher80 Biomaster labブレンダー(Seward Co.)中で均質化した。壊死組織片を遠心分離によってペレット化し、上清を回収し、VERO76細胞(腎臓、アフリカミドリザル、ATCC CRL#1587)におけるプラーク形成により感染力について分析するまで−70℃で凍結した。
【0039】
皮膚刺激
発明者等は、(1)ADO−1、ADO−2、ADO−3およびADO−4;(2)1%VDO99クリーム、3%VDO99クリーム、5%VDO99クリームおよびこれらのプラセボ;(3)VGO99クリーム(ジクロフェナクナトリウム、50mg(RA009))、VDO99クリーム(ジクロフェナク酸、リドカイン塩50mg(RA052))、VAO99クリーム(リドカイン、50mg(RA001))およびこれらのプラセボクリームを、1、2および3日目全てで、1x/日、2x/日、4x/日および5x/日の投与計画を使用して、皮膚刺激について、感染していないハートレイ系非近交系アルビノモルモットに試験した。
【0040】
I群:ADO−1、ADO−2、ADO−3およびADO−4
感染動物における試験のための化合物ADO−1、−2および−3が不足すると思われたので、5x/日の投与計画を早期に中止した。
【0041】
2x/日および4x/日の投与計画の両方で、基剤を含む全化合物は、中等度に刺激性であった。しかし、4x/日の投与計画を使用することにした。
【0042】
II群:1%VDO99クリーム、3%VDO99クリーム、5%VDO99クリームおよびこれらのプラセボ
プラセボを含む全化合物は、3つの投与計画いずれでも中等度から重度に刺激性であった。スポンサーと共に、発明者等は、2x/日の投与計画で、最も強力な化合物5%VDO99およびそのプラセボを使用することにした。発明者等は、その投与計画でさえ、5%VDO99およびその基剤によって引き起こされる皮膚刺激が、病変を数え測定するために4日目に病変を視覚化するのを妨げ得ると判断した。これは事実であることが判明した。
【0043】
III群:VGO99クリーム(ジクロフェナクナトリウム、5%(RA009))、VDO99クリーム(ジクロフェナク酸、リドカイン塩50mg(RA052))、VAO99クリーム(リドカイン、50mg(RA001))およびこれらのプラセボクリーム
そのプラセボを含む、VGO99クリームおよびVDO99クリームは、3つの投与計画全てで、中等度から重度に刺激性であった。VAO99クリームは、1、2および3日目で、1xおよび2x/日で軽度に刺激性で、4x/日で中等度から重度に刺激性であった。
【0044】
1%VDO99クリーム、3%VDO99クリームおよびこれらのプラセボクリームは、3つの投与計画全てで、中等度から重度に刺激性であった。発明者等は、2x/日の投与計画を使用することにした。発明者等は、その投与計画でさえ、化合物およびこれらの基剤によって引き起こされる皮膚刺激が、病変を数え測定するために4日目に病変を視覚化するのをおそらく妨げるだろうと判断した。これは事実であることが判明した。4日目に、感染動物において、皮膚刺激が有効な評価を妨げた:
1%VD099については、12のうちの3の薬物/プラセボクリームペア
3%VD099については、12のうちの6の薬物/プラセボクリームペア
VG099については、12のうちの11の薬物/プラセボクリームペア
VD099については、12のうちの8の薬物/プラセボクリームペア
VA099については、12のうちの7の薬物/プラセボクリームペア
【0045】
結果
I群
10個の活性化合物対基剤ペアを試験した。
HSV−1の感染は、基剤を含む活性化合物によって引き起こされる刺激を悪化させ、4日目に病変を数えるために病変を見るのを非常に困難にした。これはこのモデルで時々起こり、予測することが困難である。刺激はまた、4日目に撮影した写真から病変を測定することを非常に困難にした。これらの困難性のために、病変数および総病変面積についての比較の数が減少し、「n」が有意性を得るのに十分大きくなる機会を減少させた。
【0046】
ヒトにおける忍容性が高い化合物は、しばしば発明者等のモデルにおける動物に刺激性であり得るので、発明者等のモデルにおける皮膚刺激は、ヒトにおける皮膚刺激の予測因子とはなり得ない。
【0047】
表1は、実験についてp≦0.05の有意性のレベルを有する、分析(InStat.V3、GraphPad Software,Inc.)の結果を示している。
【0048】
ADO−1は、基剤(ADO−4)と比較すると、病変数で26%および総病変面積で47%の統計的に有意な減少を達成した。ADO−1は、ウイルス力価の減少傾向を示した。
【0049】
ADO−2は、基剤(ADO−4)と比較すると、総病変面積で26%およびウイルス力価で51%の統計的に有意な減少を達成した。ADO−2は、病変数の減少傾向を示した。
【0050】
ADO−3は、基剤(ADO−4)と比較すると、ウイルス力価で86%の統計的に有意な減少を達成しただけであった。ADO−3は感染動物において最も刺激性であるように思われたので、病変数および総病変面積についての結果またはこれらの結果の欠如は、その文脈で理解する必要がある。
【0051】
5%ACV/PEGは、その基剤と比較すると、総病変面積で有意な減少を達成した。5%ACV/PEGについてのこれらの結果は、発明者等のモデルにとって典型的ではないが、発明者等は、概して、1、2および3日目で5x/日の投与計画を使用する。発明者等は、典型的に、総病変面積およびウイルス力価における有意な減少、すなわちADO−2と非常に類似である結果を確認している。
【0052】
II群
1%VD099、3%VD099、5%VD099およびこれらのそれぞれの基剤は全て、動物の皮膚に中等度から重度に刺激性であった。スポンサーと共に、資源を保護するために、発明者等は、1、2および3日目で2x/日の投与計画で、最も強力な化合物5%VD099およびそのプラセボを使用することにした。
【0053】
HSV−1の感染は、基剤を含む試験化合物によって引き起こされる刺激を悪化させ、4日目に病変を数えるために病変を見るのを非常に困難にした。これはこのモデルで時々起こる。刺激はまた、4日目に撮影した写真から病変を測定することを非常に困難にした。これらの困難性のために、病変数および総病変面積についての比較の数が減少し、「n」が有意性を得るのに十分大きくなる機会を減少させた。
【0054】
表IIは、実験についてp≦0.05の有意性のレベルを有する、分析(InStat.V3、GraphPad Software,Inc.)の結果を示している。
【0055】
5%VD099は、そのプラセボと比較すると、病変数で23%の統計的に有意な減少、総病変面積で26%の統計的に有意な減少およびウイルス力価で52%の統計的に有意な減少を達成した。
【0056】
5%ACV/PEGは、その基剤と比較すると、病変数で10%、総病変面積で33%およびウイルス力価で79%の有意な減少を達成した。5%ACV/PEGについてのこれらの結果は、発明者等のモデルにとって典型的である。これらの結果はまた、発明者等のモデルにおいて真の抗ウイルス剤について参照する一般的な有効性のパターンを反映している:ウイルス力価の減少は、総病変面積の減少よりも大きく、総病変面積の減少は病変数の減少よりも大きい。(ウイルス力価減少>総病変面積減少>病変数減少。)
【0057】
III群
1%VD099、3%VD099、VG099、VD099、VA099およびこれらのそれぞれの基剤は全て、動物の皮膚に中等度から重度に刺激性であった。
【0058】
HSV−1の感染は、その基剤を含む試験化合物によって引き起こされる刺激を悪化させ、4日目に病変を数えるために病変を見るのを非常に困難にした。これはこのモデルで時々起こる。刺激はまた、4日目に撮影した写真から病変を測定することを非常に困難にした。これらの困難性のために、病変数および総病変面積についての比較の数が減少し、「n」が有意性を得る、または統計的検定を行うのに十分大きくなる機会を減少させた。
【0059】
表IIIは、実験についてp≦0.05の有意性のレベルを有する、分析(InStat.V3、GraphPad Software,Inc.)の結果を示している。
【0060】
最も注目すべき結果は、VGO99が、そのプラセボクリームと比較すると、ウイルス力価で93%の統計的に有意な減少を達成したことである。
【0061】
5%ACV/PEGは、その基剤と比較すると、総病変面積で27%およびウイルス力価で71%の有意な減少を達成した。5%ACV/PEGについてのこれらの結果は、発明者等のモデルにとって典型的である。これらの結果はまた、発明者等のモデルにおいて真の抗ウイルス剤について参照する一般的な有効性のパターンを反映している:ウイルス力価の減少は、総病変面積の減少よりも大きく、総病変面積の減少は病変数の減少よりも大きい。(ウイルス力価減少>総病変面積減少>病変数減少。)
【0062】
結果の概要
I群
ADO−3、5%リドフェナクは、ウイルス力価で86%の減少を達成した。
ADO−1、アシクロビルおよびリドフェナクの組み合わせは、ウイルス力価でリドフェナクほど優れた減少を達成しなかった。しかしながら、ADO−1は、病変数および総病変面積でより小さいが有意な減少を達成した。
【0063】
II群
5%VDO99(RA034)、5%リドフェナクは、発明者等のモデルにおいて有効性の3つの基準全てで控えめであるが有意な結果を達成した。5%VDO99およびその基剤の両者はまた、動物の皮膚に同等に刺激性であった。
【0064】
III群
VGO99(RA009)、ジクロフェナクナトリウム、50mg/g(5%w/w)は、発明者等のモデルにおいてウイルス力価で93%の減少を達成した。VG099およびそのプラセボクリームの両者はまた、動物の皮膚に同等に刺激性であり、発明者等が、この化合物が病変数および総病変面積の減少に対して有したかもしれない効果を評価するのを妨げた。
【0065】
結果を図1および図2にも要約する。図1は、(a)5%リドフェナクおよび5%アシクロビル、(b)5%アシクロビル、ならびに(c)5%リドフェナクによる、病変数、病変面積およびウイルス力価の阻害効果を示している。5%リドフェナクの3つのデータポイントが存在したので、グラフ中の5%リドフェナクについてのデータは、3つのセットのデータの平均値を表す。図1は、5%アシクロビル+5%リドフェナクが、病変数および病変面積の最高の阻害効果を有し、5%リドフェナクがウイルス力価の最高の阻害効果を示したことを示している。
【0066】
図2は、リドフェナク(1%、3%および5%)、ジクロフェナク(5%)、リドカイン(5%)およびアシクロビル(5%)のウイルス力価に対する阻害効果を比較している。リドフェナク(1%、3%および5%)は、ウイルス力価の阻害効果の用量反応を示した。5%ジクロフェナクは、ウイルス力価の非常に優れた阻害効果を示した。5%リドカインのみが、ウイルス力価への阻害効果が小さかった。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
実施例3.臨床試験実施計画書
目的:
帯状ヘルペスの患者におけるVGO99(5%ジクロフェナクナトリウムクリーム)の有効性を評価する。有効性は、痛みの強さおよび病変評価によって判定する。
【0072】
試験評価項目
以下の評価項目を評価する:
・主要有効性評価項目は、帯状疱疹関連痛の完全な停止までの時間である。対象は、少なくとも7日間痛みがない(0〜100の数値的評価スケールで痛みが0と報告される)場合に、痛みが完全に停止したと定義される。
・急性期の痛み(全痂皮がなくなる時までに経験する痛み)がなくなるまでの時間。
・追跡調査期間の終わりに帯状疱疹関連痛が完全に停止した対象の粗率。
・治療期間の終わりおよび追跡調査期間の終わりに小水疱、潰瘍および痂皮がない対象の粗率。
・試験薬物投与後の特定の来診時のVAS疼痛スコアのパーセントの減少。
【0073】
治療計画:局所VGO99クリーム、10g/チューブ、病変への局所使用
【0074】
対照計画:局所プラセボクリーム、10g/チューブ、病変への局所使用
【0075】
対象
・20歳〜75歳の男性または女性。
・限局性の皮膚病変(丘疹、斑または小水疱)による無併発性帯状ヘルペスの臨床診断を受けた対象。
・帯状ヘルペスによる発疹および/または芽胞(bud vesicles)の発症後72時間以内に試験薬物を投与することができる対象。
・スクリーニング/ベースラインの対象は、視覚的アナログスケール(VAS)で少なくとも40mmのスコアを有していなければならない。
・実施計画書に記載の試験日誌の完成を含む、研究者の指示を理解しそれに従う能力。
【0076】
試験実施計画書
全選択基準を満たす対象を、以下の28日間の治療の1つを受けるよう無作為に割り当てる:
I群:VGO99クリーム(5%ジクロフェナクナトリウム)
II群:プラセボクリーム
患者を、帯状疱疹関連痛が完全に停止するまで、ただし長くても28日まで、1日に4回、約0.05g/cm2でVGO99クリームまたはプラセボクリームのいずれかを受けるよう無作為化する。試験薬物投与の最後の投薬後、全対象を4週間追跡調査する。
【0077】
本試験は、約8週間続き、0(ベースライン)、3±1、7±1、14±2、21±2、28±2および56±7日目の7回の試験訪問を含む。全試験訪問は、疼痛レベルについてのアンケートおよび皮膚患部の検査を含む。
【0078】
統計的方法
有効性評価項目について、事象変数までの時間(帯状疱疹関連痛の完全な停止までの時間および急性期の痛みがなくなるまでの時間を含む)についてのKaplan−Meier法を実施し、95%両側信頼区間に沿った中央値を報告する。局所製剤の2つの群間の事象までの時間を比較するためにログランク検定を使用し、ここでは対象は、28日間または特定の事象が達成されるまでのいずれか早い方まで治療される。Cox回帰モデルを使用して、年齢、発疹発症から治療開始までの時間および/または他の有意な予後指数についての調整をして、治療群間の事象時間を解析する。
【0079】
本発明、ならびに本発明を製造および使用する方法および工程は、本発明が属する分野の当業者が本発明を製造および使用することを可能にするのに十分な、明確な、簡潔な、および正確な用語で、ここで記載されている。前記は本発明の好ましい実施形態を記載しており、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を逸脱することなく、その範囲内でその修正を行うことができることを理解すべきである。本発明とみなされる主題を具体的に指摘し、明確に主張するために、以下の特許請求の範囲は、本明細書を締めくくる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象のヘルペスウイルス活性を阻害する方法であって、
ヘルペスウイルス感染症に罹患している対象を同定するステップと、
本質的に有効量のジクロフェナクまたはその薬学的に許容される塩からなる有効成分を前記対象に局所投与し、それによってウイルス活性を阻害するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記ヘルペスウイルスが、単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)、単純ヘルペスウイルス2型、水痘帯状疱疹ウイルスおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ジクロフェナクが、前記対象の外部組織上の病変に局所投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記有効量のジクロフェナクが、約3〜5%(w/w)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記有効量のジクロフェナクが、約5%(w/w)である、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−508402(P2013−508402A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535382(P2012−535382)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/053602
【国際公開番号】WO2011/050196
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(509165460)ユン シン ファーマシューティカル インダストリアル カンパニー,リミティド (3)
【出願人】(504096608)カールスバッド テクノロジー,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】