説明

ヘルメット用ホルダ及び情報開示装置

【課題】ヘルメットに機器類を着脱自在に装着させるにあたり、該機器類を複数のヘルメットの間で流用可能にするヘルメット用ホルダを提供する。
【解決手段】機器類が取り付けられてヘルメット60に着脱自在に装着されるヘルメット用ホルダ10であって、弾性を有し、ヘルメット60の外側を左右方向、前後方向及び上下方向に挟持するようにして装着される。このとき、該ホルダ10は、前後に延びる左右一対の第1保持部11と、前記第1保持部11の前端部から斜め後上方に延びる左右一対の第2保持部12と、前記第2保持部12の後端部から前方に延びる左右一対の第3保持部13と、を有していてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば画像を表示する表示器等の機器類が取り付けられてヘルメットに着脱自在に装着されるヘルメット用ホルダに関する。また、このようなヘルメット用ホルダに取り付けられた表示器を備えてなる情報開示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルメットは、工事作業時やレジャービークルの運転時に利用され、用途等に応じて多くの種類がある。なお、レジャービークルとしては、例えば自動二輪車、不整地走行用車両或いは小型滑走艇等が知られている。自動二輪車等のハンドルの近傍には、例えば車速、エンジン回転速度、エンジンクーラント温度等を表示するメータが設けられている。近年の自動二輪車等では、ナビゲーション情報等のような運転者の便宜を図った様々な情報を画像として表示する表示器をヘルメット側に設けることが提案されている。
【0003】
特許文献1には、工事作業用のヘルメットに通信器を着脱自在に装着するため、ヘルメットの前後方向中央部分を左右に亘って着脱自在に取り付けられる帯状のヘッドバンドが開示されている。また、この特許文献1では、頭部に装着されて利用者の耳や顔部を露出させる種類のヘルメットが想定されており、ヘッドバンドには通信器を内蔵した耳当てが連設されている。
【特許文献1】特開昭64−68507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘルメットの形状は、その種類によって大きさ等が異なっているため、従来において前記表示器を着脱自在に取り付けようとする場合、その表示器が取り付けられてヘルメットに着脱自在に装着されるヘッドバンド等が専用品なる。専用品となれば、別種類のヘルメットに装着しようとするときには、これに対応する専用品を高価な表示器と共に用意しなければならず、利用者にとって不利益となる。更に、自動二輪車の運転時に利用されるヘルメットに適用する場合においては、走行風圧等の外力に抗してヘルメットにしっかりと保持する構造を備えていることが求められる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ヘルメットに機器類を着脱自在に装着させるにあたり、該機器類を複数のヘルメットの間で流用可能にするヘルメット用ホルダを提供することを目的としている。また、このようなヘルメット用ホルダに取り付けられた表示器を備えてなる情報開示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るヘルメット用ホルダは、機器類が取り付けられており、ヘルメットに着脱自在に装着されるヘルメット用ホルダであって、弾性を有し、ヘルメットの外側を左右方向、前後方向及び上下方向に挟持するようにして装着される。
【0007】
この構成によれば、ヘルメット用ホルダと共に機器類をヘルメットに対して着脱自在になっている。このとき、ホルダが弾性を有しているため、互いにサイズが異なるヘルメットを、その違いを吸収してしっかりと保持することができる。また、ヘルメットへの取付状態では、ホルダの復元力がヘルメットに外側から内側に向けて作用し、ホルダは、ヘルメットを外側からしっかりと保持するようになる。このように、利用していたヘルメットに替えて他のヘルメットを利用したい場合には、ヘルメット用ホルダを付け替えることで簡単に機器類を利用可能になる。ヘルメット利用者は、表示器を内蔵したヘルメットを買い直す必要がなく、また新品に交換するときにおいてはヘルメットの選択自由度が高くなる。
【0008】
また、前後に延びる左右一対の第1保持部と、前記第1保持部の前端部から斜め後上方に延びる左右一対の第2保持部と、前記第2保持部の後端部から前方に延びる左右一対の第3保持部と、を有していてもよい。この構成によれば、第1保持部によりヘルメットの下部領域を前後に亘って保持させ、第2保持部によりヘルメットの側部を前後及び上下に亘って保持させ、第3保持部により該ヘルメットの上部領域を前後に亘って保持させることができるようになる。このときには、ヘルメット用ホルダに左右への外力が作用しても、左右一方の第1乃至第3保持部がヘルメットに密着した状態を維持し、ヘルメットをしっかりと保持する。また、上方への外力が作用しても、第1及び第3保持部がヘルメットに密着した状態を維持する。また、下方への外力が作用しても、第2及び第3保持部がヘルメットに密着した状態を維持する。また、前後方向への外力が作用しても、第1乃至第3保持部がヘルメットに密着した状態を維持する。このようにヘルメット用ホルダは、あらゆる方向への外力に抗してヘルメットに密着した状態を維持し、ヘルメットを外側からしっかりと保持するようになる。そして、左右一対の第1乃至第3保持部からなるホルダは、側面視Z字状の簡素な構造となっており、ヘルメット用ホルダの重さを軽減することができる。
【0009】
また、前記左右一対の第1保持部の後端を互いに連結してヘルメットの下部領域の後部を保持する第4保持部を有している場合には、前方への外力が作用しても、第4保持部がヘルメットの下部領域の後部に密着した状態を維持するようになり、ヘルメットを更にしっかりと保持する構造を実現できる。
【0010】
また、前記機器類が、利用者が視認可能に画像を表示する表示器を含んでいてもよく、この場合には、前述したような効果を有するヘッドマウントディスプレイ装置を複数のヘルメットの間で流用することができるようになる。
【0011】
また、前記ホルダの前部に前記表示器の画面部が取り付けられていてもよい。この構成によれば、ヘルメットへの装着状態において、画面部に表示された画像は、ヘルメット利用者の前方への視界のうち上部の周辺視野に配置することができ、画面部上の画像がヘルメット利用者にとって邪魔とならない。
【0012】
また、前記表示器の取付位置を調整する調整機構を備えていることが好ましい。これにより、複数のヘルメット間でのサイズの違いを吸収し、表示器をヘルメットの前面側へと移動させて利用者が画像を視認可能な状態となるように容易に設定することができるようになる。
【0013】
また、前記表示器の画面部が上下方向に揺動自在に取り付けられていてもよい。これにより、表示器により提供される画像を必要としないときであっても、画面部を退避させることができるようになる。
【0014】
また、前記機器類が、周辺を照明する照明器又は周辺を撮像する撮像器を含んでいてもよく、この場合には、前述したような効果を有するヘッドマウントタイプの照明装置や撮像装置を提供することができる。
【0015】
また、本発明に係る情報開示装置は、ヘルメット用ホルダと、レジャービークルに搭載されて表示すべき画像の情報を該表示器に送信するビークル搭載装置とを備えてなる。
【0016】
この構成によれば、レジャービークルの運転者は、利用していたヘルメットを交換した場合には、その交換したヘルメットにヘッドマウントディスプレイ装置を取り付ければよく、これにより、該レジャービークルを運転しているときに、情報に応じた画像が再び提供されるようになる。このように、レジャービークルの運転者は、ディスプレイ装置を内蔵したヘルメットを買い直す必要がない。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、表示器等の機器類のみを交換して、他のヘルメットにも簡単に該機器類を取り付けることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明に係るヘルメット用ホルダ10を有してなるヘッドマウントディスプレイ装置(以下、HMD装置)1の外観を示す斜視図であり、図2は、本発明に係る情報開示装置40の構成を示すブロック図である。本実施形態の情報開示装置40は、レジャービークルの一例たる自動二輪車の運転者に多数の情報を画像として提供するように構成されている。
【0019】
図1に示すように、HMD装置1は、ヘルメットに着脱自在に装着されるホルダ10と、ホルダ10に取り付けられた画像表示器とからなり、画像表示器は、画像投射ユニット3(図2)等を内蔵するハウジング2と、ハウジング2に取り付けられたスクリーン4とを備える。以下の説明における方向は、HMD装置1が適正に取り付けられているヘルメットを装着したヘルメット利用者が見る方向を基準としている。
【0020】
図2に示すように、情報開示装置40は、このHMD装置1と、自動二輪車に搭載された車載装置30とを備えてなる。HMD装置1は、前述した画像投射ユニット3及びスクリーン4と、車載装置30の車載側無線通信装置31と近距離無線通信するヘッド側無線通信装置5と、例えばマイクロプロセッサからなる情報処理装置6とを備えている。ハウジング2には、画像投射ユニット3、ヘッド側無線通信装置5及び情報処理装置6と、これらに電力を供給する電源として用いられるバッテリ(図示略)とが内蔵される。画像投射ユニット3は、例えばLEDを用いたセグメント型の投影装置からなり、提供すべき情報に応じて予め定められた定型の画像を投射する。スクリーン4は、例えばハーフミラーからなり、画像投射ユニット3からの画像を反射投影する。
【0021】
車載装置30は、HMD装置1のヘッド側無線通信装置5と近距離無線通信する車載側無線通信装置31と、例えばマイクロプロセッサからなる情報処理装置32とを備えている。更に、車載装置30は、この情報処理装置32に電気的に接続されて情報処理装置32へ各種情報を提供する機器として、夜間に車両前方の歩行者の存在を検出し、該検出情報を出力するナイトビジョン装置33と、目的地までの走行経路上にて次の交差点(或いは次に進路変更を行なうべき交差点)までの距離情報及び該交差点での進行方向指示情報を出力するナビゲーション装置34と、車車間通信により自車両と他車両の位置や速度を検出し、注意を喚起すべき接近車両を検出するとその旨を表す接近車両検出情報を出力する接近車両検出装置35と、エンジン回転数やギヤポジション等の検出情報を出力する車両制御装置36と、走行車速の検出情報を出力する車速センサ37と、タイヤの空気圧が不足しているか否かを検出し、不足を検出するとその旨を表す空気圧不足検出情報を出力するタイヤ空気圧監視装置38と、路車間通信により走行経路上における障害物等の有無を検出し、障害物等が有ると検出するとその旨を表す障害物検出情報を出力する路車間通信装置39とを備えている。情報処理装置32は、各機器33〜39から出力される情報に応じたコマンドを車載側無線通信装置31に出力する。
【0022】
図3は、車載装置30が搭載される自動二輪車50を側面視で示す模式図である。図3に示すように、車載側無線通信装置31及び情報処理装置32は、1つのケース内に収容されて自動二輪車50の後部座席部分51に配設され、ナイトビジョン装置33は、自動二輪車50の前部部分52に配設され、ナビゲーション装置34は、自動二輪車50のハンドルの近傍部分53に配設され、接近車両検出装置35及び車両制御装置36は、自動二輪車50の運転座席の下方部分54に配設され、車速センサ37及びタイヤ空気圧監視装置38は、前輪及び後輪のタイヤのホイール部分55,56に配設される。また、路車間通信装置39は、自動二輪車50の後部座席部分51に配設され、車載側無線通信装置31及び情報処理装置32と同じケース内に収容されている。
【0023】
なお、ヘッド側無線通信装置5及び車載側無線通信装置31は、例えばBluetooth(登録商標)等の無線通信規格に準拠した近距離無線通信ユニットを利用して構成している。この近距離無線通信ユニットを利用したヘッド側無線通信装置5及び車載側無線通信装置31では、予めグルーピング設定がなされると共に、通信可能な空間範囲(例えば半径5m)が設定されている。これにより、HMD装置1が取り付けられているヘルメットを有する運転者が自動二輪車50に接近すれば、ヘッド側無線通信装置5及び車載側無線通信装置31が自動的に通信可能な状態となり、情報開示装置40がON状態となる。また、運転者がヘルメットを携行して自動二輪車50から離れれば、ヘッド側無線通信装置5及び車載側無線通信装置31の間での通信が自動的に停止し、情報開示装置40がOFF状態となる。
【0024】
情報開示装置40がON状態になると、車載側無線通信装置31により、情報処理装置32からのコマンドがヘッド側無線通信装置5に送信される。ヘッド側無線通信装置5は、受信したコマンドの情報を情報処理装置6に出力する。情報処理装置6は入力したコマンドに応じて画像投射ユニット3に駆動制御信号を出力する。画像投射ユニット3は、入力された駆動制御信号に応じて定型の画像を投射する。これにより、スクリーン4には、自動二輪車50の運転者に提供すべき情報に応じた様々な画像が表示される。即ち、目的地までの走行経路上における次の交差点までの距離を示す画像や、その交差点での進行方向を示す画像や、エンジン回転数やギヤポジションや車速を示す画像が表示される。また、夜間にて前方に歩行者が存在するときにはその旨を示す画像や、注意すべき接近車両が存在するときにはその旨を示す画像や、タイヤ空気圧が不足しているときにはその旨を示す画像や、走行経路上に障害物等が存在するときにはその旨を示す画像をそれぞれ表示することもできる。
【0025】
このように、HMD装置1を取り付けたヘルメットを装着して車載装置30が搭載された自動二輪車50を運転している運転者は、情報開示装置40によって走行に際して有用となる様々な情報が提供される。
【0026】
図4乃至図9は、ヘルメット60に取り付けられた状態のHMD装置1の六面図である。まずヘルメット60について簡単に説明する。自動二輪車の運転者により利用されるヘルメットは、用途や機能に応じて様々なタイプに分類される。本実施形態では、図4(a)にフルフェイス型のヘルメット601を、図4(b)にジェット型のヘルメット602を、図4(c)にオフロード型のヘルメット603を例示している。図5乃至図9においては、フルフェイス型を代表して示している。
【0027】
図4の左側面図に示すように、フルフェイス型のヘルメット601は、卵形の外形を呈している。ジェット型のヘルメット602は、フルフェイス型のヘルメット601に対し、前面が大きく開放されて顎周辺に対応する部分が省略されており、通気性が高められている。オフロード型のヘルメット603は、フルフェイス型のヘルメット601に対し、利用者の顎周辺を覆う前下部が大型になっている。各ヘルメット601,602,603は、略左右対称形状となっている。また、各ヘルメット601,602,603の前下部の形状は互いに異なっている。
【0028】
なお、フルフェイス型及びジェット型のヘルメット601,602においては、利用者の目周辺を開放する部分にシールド651,652が上下に揺動自在に設けられている。運転者は、シールド651,652を上方に向けて揺動して該開放部分を開放することによって通気性を高めたり、下方に向けて揺動して該開放部分を閉塞することによって走行風圧から防護したりすることができる。
【0029】
フルフェイス型のヘルメット601の平断面視外形は、前後に長寸の略楕円形となっており、断面をとる上下位置に応じて大きさが異なっている。図6の平面図及び図9の底面図には、平断面視で最大となる外形が外郭線Aで表されており、図7の右側面図には、その平断面視で最大となる外郭が前後に延びる一点鎖線Aで表されている。以下では、図7に一点鎖線Aで示されるように平断面視外形が最大となる上下位置よりも下方の領域をヘルメット60の下部領域61aと称し、上方の領域をヘルメット60の上部領域61bと称する。下部領域61a及び上部領域61bでの平断面視外形は、外郭線Aで表されているものよりも小さくなっている。また、フルフェイス型のヘルメット601の正断面視外形は、上下方向に長寸の略楕円形となっており、断面をとる前後位置に応じて大きさが異なる。図5の正面図及び図8の背面図には、正断面視での最大となる外形が外郭線Bで表されており、図7の右側面図には、その正断面視での最大となる外郭が上下に延びる一点鎖線Bで表されている。以下では、図7に一点鎖線Bで示される正断面視外形が最大となる前後位置よりも前方の領域をヘルメット60の前部領域62aと称し、後方の領域をヘルメット60の後部領域62bと称する。また、ヘルメット601の平断面視外形における左右幅は、概ね一点鎖線Bが通る前後中央付近にて最も大きくなっており、その位置から前方あるいは後方に向かうに連れて左右の幅が小さくなっている。なお、ジェット型のヘルメット602や、オフロード型ヘルメット603においても、概ね同様の形状となっている。
【0030】
次に、HMD装置1の構造について説明する。図4乃至図9に示すように、HMD装置1がヘルメット60に取り付けられている状態においては、ホルダ10がヘルメット60の外側を抱え込むようにして設けられ、ハウジング2がヘルメット60の上部に配置され、スクリーン4がヘルメット60の前上部に配置される。
【0031】
ホルダ10は、その全体が合成樹脂材から一体的に成形され、弾性を有している。ホルダ10は、左右一対の左部10L及び右部10Rを備えている。左部10L及び右部10Rはそれぞれ、滑らかに湾曲する帯状に形成され、側面視Z字状となっている。すなわち、ホルダ10の左部10L及び右部10Rはそれぞれ、前後に延びる第1保持部11と、第1保持部11の前端から斜め後上方へと延びる第2保持部12と、第2保持部12の後端から前方に延びる第3保持部13とを有する。更にホルダ10は、左右の第1保持部11,11の後端を連結して設けられる第4保持部14を有し、左右の第3保持部13,13の前端部を連結して設けられる連結部15を有している。この第4保持部14及び連結部15により、左右一対の第1乃至第3保持部11〜13が一体のループ状となっている。また、第1保持部11と第2保持部12との間を繋いでリブ部16が設けられている。これにより、第2保持部12は、第1保持部との境目となる前端部を中心にして上下に揺動しにくくなる。
【0032】
第1保持部11の平坦面は略左右方向に向けられており、第1保持部11は左右外側に凸となるように弓形に湾曲している。第2保持部12は、第1保持部11の前端から、左右内側に切れ込み且つ捩られるようにして、斜め後上方へと延びている。この捩れにより、第2保持部12の平坦面は、第1保持部11に繋がる前端部にて略左右方向に向けられているのに対し、後端部にて略前後方向に向けられている。第3保持部13の平坦面は略上下方向に向けられており、第3保持部13は上方に凸となるように弓形に湾曲している。連結部15の中央部にはボルト17が取り付けられており、このボルト17の下端には連結部15から下方に突出する吸盤が設けられている。この吸盤は、ボルト17の回動に応じて上下位置を調整可能になっている。さらに、このボルト17及び吸盤は、連結部15にて前後に延びるようにして形成されたスリット溝18内に受容され、このスリット溝18に沿って前後位置を調整可能になっている。
【0033】
図10は、図7のX−X矢視図である。図10に示すように、第1保持部11は、ヘルメット60の外面に密着する裏面11a側からその反対側となる表面11b側に向かうに連れて幅(図10の紙面上下方向寸法)が小さくなっている。なお、図示略するが第2乃至第4保持部12〜14についても、同様にして形成されている。
【0034】
図6及び図7に示すように、ハウジング2とホルダ10との間には、ハウジング2のホルダ10に対する取付位置を前後方向に調整する調整機構20が設けられている。調整機構20は、左右の第3保持部13の後部にて斜め上後方に突出して設けられ、前後に並ぶ複数のリブ21と、ハウジング2から後方に延び、このリブ21に上側から覆い被さるようにして設けられる左右一対のブラケット22とを備える。ブラケット22の裏面側にて前下がり及び後上がりに延びる図示しない係止部が、隣り合う所定のリブ21同士の間に嵌め合わされる。これにより、ブラケット22が該リブ21に係止される。
【0035】
なお、ブラケット22には、前後に延びるスリット溝23が形成されている。第3保持部13の前端部には上方に突出して図示しないナットが設けられており、ブラケット22がリブ21に係合されたときにナットがこのスリット溝23内に配置される。このナットには、スリット溝23の幅よりも径の大きいワッシャを介して、ボルト24が螺合される。ボルト24を下方へと締め付けるとワッシャから下方への押圧力がブラケット22に作用し、ブラケット22が第3保持部13に対して強固に取り付けられる。
【0036】
この調整機構20には、ボルト24を緩めて上方へと移動させると、リブ21とブラケット22の係合を解除してハウジング2を上方に持ち上げることができるようになる。このようにボルト24が緩んだ状態において、スリット溝23に沿ってハウジング2の前後位置を調整し、所望の位置にてハウジング2を持ち下げ、ブラケット22の係止部を再度隣り合う係止リブ21の間に嵌合させる。更に、ボルト24を締め付け、ワッシャをブラケット22の上面におけるスリット溝23の周囲に密着させる。これによりブラケット22が第3保持部13に固定され、ブラケット22に繋がるハウジング2や、ハウジング2に取り付けられたスクリーン4のホルダ10に対する取付位置が変更される。
【0037】
図5及び図6に示すように、スクリーン4は、左右両端に突出してピン7が一体に成形されている。このピン7をハウジング2の前端部において左右方向に窪ませるようにして形成されたボス孔に密嵌させることにより、スクリーン4が画像投射ユニット3に対して上下に揺動自在に取り付けられる。なお、スクリーン4は揺動自在であるものの、揺動させる外力がフリーになるとその位置で静止するように構成されている。
【0038】
このHMD装置1を取り付けるためには、予め調整機構20を利用して所定の位置で画像投射ユニット3及びスクリーン4のホルダ10に対する取付位置を調整しておく。また、予め吸盤の前後位置を調整しておく。そして、第1保持部11の前端を左右外側へと弾性変形させると共に第3保持部13の前端を上方へと弾性変形させ、ヘルメット60に後側から取り付ける。そして、第4保持部14の平坦面をヘルメット60の下部領域61aの後部に密着させた状態で、第1保持部11と第3保持部13の変形を解除する。すると、図7に示すように、第1保持部11の平坦面が、ヘルメット60の下部領域61aに前後に亘って密着する。また、第2保持部12の平坦面が、ヘルメット60の下部領域61aの前部から上部領域61bの後部に亘って密着する。このとき、第2保持部12は、前述したように捩じられているため、曲面となっているヘルメット60の外面にしっかりと密着する。第3保持部13の平坦面は、ヘルメット60の上部領域61bに前後に亘って密着する。また、連結部16は、ヘルメットの上側中心部を覆うようにして密着する。ホルダ10は、ヘルメット60の内側に向けて復元力を発揮し、ヘルメット60を抱え込むようにして外側から保持する。そして、ボルト17を締め付けて吸盤をヘルメット60の外面に吸着させる。
【0039】
このようにしてHMD装置1が取り付けられたヘルメット60を装着して自動二輪車50を走行したときには、HMD装置1に走行風圧が作用する。第1乃至第4保持部11〜14は、図10に示すように、ヘルメット60の外面に密着する裏面側からその反対側となる表面側に向かうに連れて幅が小さくなっている。また、図6に示すように、スクリーン4の前端は尖っている。このため、HMD装置1に吹きつけられた走行風は、スムーズに後方へと流れ、HMD装置1に作用する空気抵抗が軽減される。
【0040】
HMD装置1は、走行時にて空気抵抗等の影響により外力を受ける虞があるが、このような外力に抗してヘルメット60に密着している状態を維持し、ヘルメット60から取り外されにくくなっている。すなわち、HMD装置1に左方への外力が作用したときには、右部10Rの第1乃至第3保持部11〜13が、ヘルメット60に密着している状態を維持する。右方への外力が作用したときには、左部10Lの第1乃至第3保持部11〜13がヘルメット60に密着している状態を維持する。上方への外力が作用したときには、下部領域61aに密着している左右一対の第1保持部11が、上部領域61bまで移動せずヘルメット60に密着している状態を維持する。また、左右一対の第2保持部12は、下部領域61aに密着している前端部が上部領域61bまで移動することはないため、ヘルメット60に密着している状態を維持する。下方への外力が作用したときには、上部領域61bに密着している左右一対の第3保持部13が、下部領域61aまで移動せずヘルメット60に密着している状態を維持する。後方への外力が作用したときには、左右一対の第1乃至第3保持部11〜13は、前部領域62aに密着している前端部が後部領域62bまで移動することはないため、ヘルメット60に密着している状態を維持する。前方への外力が作用したときには、左右一対の第1乃至第3保持部11〜13が、後部領域62bに密着している後端部が前部領域62aまで移動することはないため、ヘルメットに密着している状態を維持する。更に、第4保持部がヘルメットに密着している状態を維持する。
【0041】
このとき、ハウジング2がヘルメット60の上部に配置され、スクリーン4がヘルメット60のシールド65の前上側を覆うようにして配置される。従って、スクリーン4により反射された画像は、ヘルメット60の利用者のヘルメット60内部からの視野のうち、中心視野よりも上方の周辺視野に位置する。なお、スクリーン4は、ハーフミラーであるため、ヘルメット60の利用者は、スクリーン60における画像が投射されていない部分を透視して、その前方の光景を視認することができる。このため、スクリーン4がシールドの前側を覆うようにして配置されていても、利用者の視界を狭めることはない。
【0042】
ヘルメット60の利用者が、HMD装置1からの画像の提供を必要としないときには、スクリーン4をピン7の軸周りに揺動させてシールド651,652の上側へと退避させることができる。スクリーン4を退避させるべく揺動する操作を行うと、操作する手が離れた位置でスクリーン4は静止し、スクリーン4が退避した状態で維持される。
【0043】
このようにスクリーン4がシールドの上側に退避することにより、シールド65をスクリーン4に干渉させずに揺動させることができるようになる。なお、シールド651,652が開放される方向と、スクリーン4が退避する方向が同一方向となっている。このため、シールド65を開放するべく揺動すればシールド65とスクリーン4とが係合し、シールド65と共にスクリーン4を上方に同時に揺動させることもでき、スクリーン4の揺動操作を簡便に行うことができる。
【0044】
HMD装置1をヘルメット60から取り外すときには、第1保持部11を左右に押し広げるように弾性変形させ、第3保持部13を上方へと撓ませつつ、全体を後方に引き抜けばよい。
【0045】
このHMD装置1は、ヘルメット60と別体となっており、複数のヘルメット60の間で流用可能になっている。このため、ディスプレイ装置を内蔵したヘルメットを買い直していく必要がない。また、HMD装置1と関係なくヘルメットの交換を行うことができるようになる。
【0046】
ここで、図7に示すように、左右一対の第1保持部11の前端及び第2保持部12の前端は、一点鎖線Bより前方に位置しているもののヘルメット60の前面側まで延びておらず、側部でとどまっている。このため、後方への外力に抗することができると共に、図4に示すように前下部の形状が相違する3タイプのヘルメット601,602,603のそれぞれの間で流用可能になる。第1保持部11及び第2保持部12がこのように形成されることで、HMD装置1の汎用性が高くなっている。
【0047】
また、ヘルメット60を保持するホルダは、帯状に形成された第1乃至第4保持部11〜14から構成され、側面視Z字状の簡素な構造でヘルメット60を外側から抱え込んでしっかりと保持する構造が実現されている。このため、HMD装置1を小型軽量化することができる。
【0048】
これまで、本発明に係るHMD装置及び情報開示装置の実施形態を説明したが、本発明の範囲は必ずしも上記範囲に限られず、適宜変更可能である。例えば、ホルダ10(即ち、第1乃至第4保持部11〜14、連結部15及びリブ部16の少なくともいずれか)の裏面にゴム材、シリコン、樹脂材等の弾性体を設けてもよい。これにより、ホルダ10のヘルメット60に対する密着性が向上し、HMD装置1がヘルメットから更に取り外されにくくなる。
【0049】
また、本発明に係る表示器は、LEDを用いたセグメント型の投影装置に限らず、液晶表示装置などの他の態様であってもよい。すなわち、表示器の画面部としては、上記実施形態のようなコンバイナ型のスクリーンに限られず、液晶モニタなど他の態様であってもよい。
【0050】
また、本発明に係る情報開示装置40は、上記実施形態では自動二輪車50に対して適用されたが、不整地走行用車両や小型滑走艇等の他のレジャービークルにも同様にして適用可能である。
【0051】
また、上記実施形態では、本発明に係るヘルメット用ホルダ10に画像表示器を取り付けた場合を例示したが、照明器や撮像器を取り付けてもよい。これにより、ヘルメット利用者の見る方向に合わせて前方周辺を照明するヘッドマウント型の照明装置や、同様にして前方周辺を撮像するヘッドマウント型の撮像装置を提供することができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
このように、本発明に係るヘルメット用ホルダ及び情報開示装置は、ヘルメットが利用される様々な場面で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係るヘルメットマウントディスプレイ装置の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る情報開示装置の構成を示すブロック図である。
【図3】車載装置が搭載される自動二輪車を側面視で示す模式図である。
【図4】ヘルメットに取り付けられた状態で示す上記ヘルメットマウントディスプレイ装置の左側面図であり、(a)がフルフェイス型のヘルメットに取り付けられた状態、(b)が、ジェット型のヘルメットに取り付けられた状態、(c)が、オフロード型のヘルメットに取り付けられた状態である。
【図5】上記フルフェイス型のヘルメットに取り付けられた状態で示すヘルメットマウントディスプレイ装置の平面図である。
【図6】上記フルフェイス型のヘルメットに取り付けられた状態で示すヘルメットマウントディスプレイ装置の背面図である。
【図7】上記フルフェイス型のヘルメットに取り付けられた状態で示すヘルメットマウントディスプレイ装置の右側面図である。
【図8】上記フルフェイス型のヘルメットに取り付けられた状態で示すヘルメットマウントディスプレイ装置の底面図である。
【図9】上記フルフェイス型のヘルメットに取り付けられた状態で示すヘルメットマウントディスプレイ装置の正面図である。
【図10】図7のX−X矢視図である。
【符号の説明】
【0054】
1 ヘッドマウントディスプレイ装置
2 ハウジング
3 画像投射ユニット(表示器)
4 スクリーン(画面部)
10 ホルダ(ヘルメット用ホルダ)
11 第1保持部
12 第2保持部
13 第3保持部
14 第4保持部
20 調整機構
30 車載装置(ビークル搭載装置)
40 情報開示装置
50 自動二輪車(レジャービークル)
60 ヘルメット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器類が取り付けられており、ヘルメットに着脱自在に装着されるヘルメット用ホルダであって、
弾性を有し、ヘルメットの外側を左右方向、前後方向及び上下方向に挟持するようにして装着されるヘルメット用ホルダ。
【請求項2】
前後に延びる左右一対の第1保持部と、前記第1保持部の前端部から斜め後上方に延びる左右一対の第2保持部と、前記第2保持部の後端部から前方に延びる左右一対の第3保持部と、を有する、請求項1記載のヘルメット用ホルダ。
【請求項3】
前記左右一対の第1保持部の後端部を互いに連結してヘルメットの下部領域の後部を保持する第4保持部を有する、請求項2記載のヘルメット用ホルダ。
【請求項4】
前記機器類が、利用者が視認可能に画像を表示する表示器を含む、請求項1乃至3の何れか記載のヘルメット用ホルダ。
【請求項5】
前記ホルダの前部に前記表示器の画面部が取り付けられた、請求項4記載のヘルメット用ホルダ。
【請求項6】
前記表示器の取付位置を調整する調整機構を備える、請求項4又は5記載のヘルメット用ホルダ。
【請求項7】
前記表示器の画面部が上下方向に揺動自在に取り付けられた、請求項4乃至6の何れか記載のヘルメット用ホルダ。
【請求項8】
前記機器類が、周辺を照明する照明器又は周辺を撮像する撮像器を含む、請求項1乃至3の何れか記載のヘルメット用ホルダ。
【請求項9】
請求項4乃至7の何れか記載のヘルメット用ホルダと、
レジャービークルに搭載されて表示すべき画像の情報を前記表示器に送信するビークル搭載装置と、を備える情報開示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−285799(P2008−285799A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134784(P2007−134784)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】