説明

ベッドに転換可能な椅子

【課題】ベッドに転換可能な椅子での転換作業に際して、分離密着する部分に誤って手を入れても、挟み込まれない構造の椅子を提供する。
【解決手段】本発明のベッドに転換可能な椅子は、座面シート10と、背もたれシート20と、背面シート30と、椅子本体架台とが丁番で順次接続され、座面シート下部には台車40が設けられ、座面シート10が前方に引き出されることでベッドに転換可能な椅子であって、該台車40は、背もたれシート側に張り出し部41を有し、該張り出し部41の上方両側部に手先が入る大きさの切り欠き部42が設けられ、上方両側部から手先の届かない距離の内部に支持部が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベッドに転換可能な椅子に関し、特に背もたれシートと座面シートとが連動し、座面シートを引き出すことによりベッドに転換できるベッド兼用椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
ベッド兼用のソファーや椅子はすでに色々なタイプのものが商品化されて、病院、職場や家庭で使用されている。これらの多くのものは、ソファーや椅子の背もたれを倒してマット面の面積を増加させてベッドに転換するタイプのものである。しかしながら、これらのタイプのものはある程度の室内空間が必要であり、病室や家庭など室内空間が限られた場所で使用するには難しい面があった。また最近では、病院では個室が好まれ、病室には患者用ベッドの他に見舞客や付添者のための椅子など置かれるが、この椅子がベッドに転換できると夜も付添いが楽になる。そのため、限られた空間でも、ベッドと椅子とに相互に転換できる椅子が要望されていた。
【0003】
これまでに、シートを3部分に分割し、丁番などで連結し、それぞれ座面シート、背もたれシート、背もたれ背面シートとし、各シートを折り畳むことで椅子(ソファー)とし、座面シートを引出し、各シートを連続した平面に引伸ばすことでベッドとすることのできる椅子は、これまでに特許文献1〜7にも示されるように既に数多くタイプのものが提案されている。
【0004】
そして、座面シートの引出しをスムーズに行うために、特許文献1には、椅子本体の架台のベースフレームとこのフレームに組み込んだスライドフレームとを利用するものが提案され、特許文献2には、椅子本体の架台に設けられた案内路と座面シート架台に設けられたガイドローラーとを利用するものが提案され、特許文献3には座面シート(マット)の下面に脚部とキャスターとが設けられ、この脚部を持ち上げ、このキャスターを利用して座面シートを引出すものが提案されている。特許文献1や2に記載のものは、複雑な構成を必要とする。また、これらの椅子は座面シートを引き出すことで、簡単にベッドに転換できるものではあるが、座面シートはベッドに転換した場合のベッド面となるために、水平となっており、椅子として使用する場合には必ずしも座り心地がよい椅子とはいえない。
【0005】
また、特許文献4には、略三角形状の係止片とロック片とを組み合わせて、椅子として使用する場合にはこの組み合わせでロックし、ベッドとして使用する場合にはこのロックを解除して座面シートを引き出す構造の椅子兼用ベッドが示されている。この椅子は、座面シートがコロ付き脚で移動自在となっているため、座面シートの傾きは平面のままであり、特許文献1〜3と同様に必ずしも座り心地がよい椅子とはいえない。特許文献5と6にはロック機構で背もたれの角度を調整しリクライニング可能な椅子が示されているが、座面シートの傾きは調整されない。一方、特許文献7には、座面シート前方先端のみに楔を入れて、椅子とした場合にはこの楔の作用により前方が持ちあがり、座面シートが背もたれに向けて下方に傾斜するようにした椅子兼用ベッドが示されている。このものは椅子としてセットした場合に、座面シートの前端が移動用の台車より持ち上がり、台車との間に隙間ができ、この隙間を覆う工夫が必要であった。
【0006】
また以上のような、これまでに提案されている3部分に分割したシートによるベッドに転換できる椅子は、折り畳んだり引き出したりするのに力を要し、一人で素早く、簡単かつ安全に転換できるものではなかった。そのため、本願の出願人は、先にベッドに転換可能な椅子の提案を行った(特願2009−208044号)。この椅子は、座り心地の良い安楽椅子と寝心地の良いベッドとに相互に、一人で素早く、簡単に転換でき、小さなスペースでも置くことができ、さらに移動も簡単にできるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭63−159548号公報
【特許文献2】特公平3−8762号公報
【特許文献3】特開平8−242973号公報
【特許文献4】実開昭62−73751号公報
【特許文献5】実開平6−15556号公報
【特許文献6】登録実用新案第3063848号公報
【特許文献7】特開昭57−134117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記したような先行技術や本願の出願人の提案したベッド兼用椅子においては、背もたれシートと座面シートとが連動しており、座面シート下部に設けられた台車を利用して、座面シートを引き出したりや押し込んだりすることにより、ベッドと椅子とに転換できる。しかし、この台車には張り出し部が設けられており、張り出し部は背もたれシート側に座面シートから張り出している。そして、座面シートを引き出し、背もたれシートを水平にしてベッドに転換した時には、背もたれシートの座面シートとの接続端部は、この台車の張り出し部で支えられ、背もたれシートが水平を保つようになっている。そのため、転換作業に際して、この張り出し部と背もたれシートの端部との間に手先を挟まれる可能性があった。
【0009】
そのため本発明では、このベッドに転換可能な椅子での転換作業に際して、台車の張り出し部と背もたれシートとの間に誤って手を入れても、挟み込まれない構造の椅子を提供しようとするものである
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のベッドに転換可能な椅子は、座面シートと、背もたれシートと、背面シートと、椅子本体架台とが丁番で順次接続され、座面シート下部には台車が設けられ、座面シートが前方に引き出されることでベッドに転換可能な椅子であって、該台車は、背もたれシート側に張り出し部を有し、該張り出し部の上方両側部に手先が入る大きさの切り欠き部が設けられ、上方両側部から手先の届かない距離の内部に支持部が設けられていることを特徴とする。ここで、手先が入る大きさとは、切り欠き部に手先を入れても周囲に空間の余裕がある大きさであり、手先の届かない距離とは、切り欠き部にうっかり手先を入れても届かない距離である。
【0011】
上記のベッドに転換可能な椅子において、座面シート下部に設けられた台車の側面には下部を摺動面とした樹脂レールが設けられ、椅子本体架台には樹脂レールの収納部が設けられ、該収納部の先端には前面を斜面とし後面を垂直面とした楔形金具が設けられ、該楔形金具は、樹脂レールの収納後には後面にて該樹脂レールを係止でき、座面シートの前方への引出時もしくは後方への押込時には、楔形金具の頂部にて樹脂レールが摺動可能となっていることも特徴とする。ここで用いられる樹脂レールとは、少なくともその摺動面は摩擦係数が小さくかつ耐摩耗性に優れた合成樹脂からなるレールであって、楔形金具の頂部で摺動可能となっているものである。そのため、レール全体をこのような摩耗特性に優れた合成樹脂で作成するか、金属などの支持体材料とこの樹脂とを組合せて、摺動面である下面が樹脂面となるように作成してもよい。
【0012】
さらに上記の椅子において、椅子本体には方向自在キャスターが設けられ、台車には引出方向に方向固定されたキャスターが設けられ、かつ台車を椅子本体架台に収納後は台車に設けられたキャスターは床より浮いた状態となっていることが好ましい。そして、台車の側面に設けられた引出用樹脂レールは前方に向かって下方に傾斜して設けられ、椅子本体架台に設けられた該樹脂レールの収納部は、該樹脂レールを収納し台車を床より浮かすことのできる位置で水平に設けられていることも好ましい。この場合、座面シートは、椅子本体架台に収納後には背もたれ向かって下方に傾斜し、安楽椅子として好ましい形状となり、前方引出後には台車に支えられて水平となりベッドとして好ましい形状となる。
【0013】
さらに上記の椅子において、台車の側面に設けられた樹脂レールの下方に、レール状ストッパーが設けられ、該ストッパーは、座面シートの前方引出時に座面シートの引上げる高さを制限し、さらに転換作業の安全性を高めることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のベッドに転換可能な椅子では、台車の張り出し部には、その両側部に切り欠き部が設けられているために、ベッドへの転換時に台車の支持部と背もたれシートの端部との間に手先の入る空間が存在し、誤って手先を差し入れても挟み込まれることがなく安全に転換を行うことができる。そして、張り出し部の中央部に支持部が設けられているため、ベッド転換時には、手先の入り込むことのない支持部で、背もたれシートの端部を支持し、背もたれシートを水平に保つことができる。
【0015】
また、樹脂レールとこのレールの収納部の先端に設けた楔形金具との組合せを用いることにより、座面シートを引出してベッドに転換したり、座面シートを押込んで椅子に戻したりする作業が一人で素早く、簡単かつ安全にできる。すなわち、座面シートの引出しに当たっては、座面シートを台車ごと持ち上げて、楔形金具にて収納部に係止されている樹脂レールを持ち上げ、摺動面を楔形金具の頂部に置き、楔形金具の頂部で摺動させ、摺動性に優れた樹脂レールの特性を十分に活かして、小さな力で座面シートをスムーズに引き出し、ベッドに転換できる。一方、ベッドから椅子に転換するために、背もたれシートを折り畳むのに座面シートを押込むと、樹脂レールの摺動面の後端は楔形金具の全面の斜面に沿って楔形金具の頂部にまで押上げられ、次いで、樹脂レールの摺動面は楔形金具の頂部でスムーズに摺動し、樹脂レールは収納部に収まり、楔形金具の後面にて係止され、簡単に椅子に転換できる。この転換作業は、摺動性に優れた樹脂レールと楔形金具とを組合せた簡易な構造により、一人で素早く、簡単にでき、さらに台車の支持部に設けた切り欠き部の存在により、座面シートの引出に際しても手先を挟み込まれることなく安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のベッドに転換可能な椅子の斜視図である。
【図2】ベッドに転換した、本発明のベッドに転換可能な椅子の斜視図である。
【図3】ベッドに転換した状態のフレームの側面図である。
【図4】本発明の椅子における台車本体の斜視説明図である。
【図5】従来の椅子における台車本体の斜視説明図である。
【図6】椅子からベッドに転換する各ステップの側面説明図である。
【図7】樹脂レールの収納部、楔形金具およびストッパーの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態につき図面を参照にして詳細に説明する。図1はベッドに転換できる椅子の斜視図である。側面50は左右に設けられ、その上部には肘掛51が設けられている。左右の側面50の間に、座面シート10と、背もたれシート20と、背面シート30とが設けられており、これらのシートはそれぞれ支持体と丁番で接続され、丁番を中心として回転可能となっている。したがって、座面シート10をその下部に設けられた台車40と共に前方に引出すことにより、図2に示されるベッドに転換することができる。このベッドは通常は座面シート10を足側にし、背面シート30を頭側にして使用され、図2には枕70が配置してある。尚、背もたれシート20に装着されているベルト60は、ベッドの状態から椅子の状態にするときに、掴んで引上げるのに使用される。
【0018】
上記の転換に際して、図1に示す椅子の状態では、背もたれシート20は立てられた状態にあるが、図2に示されるベッドでは、背のたれシート20は水平にされ、座面シート10に接続する端部は、台車40の背もたれシート20側への張り出し部41の上面で支えられている状態になる。本発明においては、このベッドへの転換作業に際して、誤って手先を入れても挟み込まれないように、台車40の張り出し部41上方両側部に切り欠き部42が設けられている。この切り欠き部42は手先を入れたときでも、手先の周囲に空間がある大きさであればよく、高さは凡そ3cm以上、横幅は凡そ8cm以上とすることが好ましい。
【0019】
図3には、図2に示すベッドに転換した状態の椅子本体、台車、各シート支持体のフレームが示されている。図3に示した座面シート10、背もたれシート20および背面シート30は、それぞれ座面シート支持体11、背もたれシート支持体21および背面シート支持体31に取り付けられ、そして各支持体および本体架台53とは丁番12、23および35で接続され、丁番を中心として回転可能となっている。一方、台車40は座面シート支持体11の下部に接合され、座面シート支持体11より張り出した部分で張り出し部41を構成している。張り出し部41の上面は、背もたれシート支持体21の端部21aを支える役割を担うが、本発明の台車40では上方両側部に切り欠き部42が設けられ、上方内部に設けられた支持部43で端部21aを支える。図4に本発明の台車40本体の斜視説明図を示す。支持部43は台車40の側面より手先の届かない距離の内部に位置して設けられているため、両側面に設けられている切り欠き部42にうっかり手先を入れても挟まれることがない。この手先の届かない距離としては、凡そ8cm以上とすることが好ましい。
【0020】
図5には従来のベッドに転換可能な椅子の台車40´の本体を示している。この本体は全体の形状が直方体となっており、張り出し部41の上面41aにて、背もたれシート支持体21の端部21aを支えることになるため、この上面41aと端部21aとの間に、誤って手先を入れ、挟み込まれる可能性があった。これに対して、本発明の台車40では、図4に示すように切り欠き部42が設けられているため、手先を挟み込まれることがない。そして図3に示したように、手先の届かない位置に設けられた支持部43にて端部21aを支えるため、手先を挟みこまれることなく背もたれシートを水平に保つことができる。
【0021】
図3、4に示した支持部43は丸パイプ状材料にて構成したが、背もたれシート支持体21の端部21aを支えることができればよく、また内部に配置されるため、その形状には特に限定されず、材料も台車を構成するフレーム材と同じく角鋼管、山形鋼材などで構成してもよい。
【0022】
図1に示す椅子から、図2に示すベッドへの転換の機構を、図6の側面説明図を参照にして説明する。図6は、椅子の状態1から、2〜4の状態を経由してベッドの状態5となることの側面説明図である。前記したように、座面シート10を支える座面シート支持体11と背もたれシート20を支える背もたれシート支持体21とは丁番12で接続され、背もたれ支持体21と背面シート30を支える背面シート支持体31とは丁番23で接続され、背面シート支持体31と椅子本体架台53とは丁番35で接続され、それぞれが互いを接続している丁番を中心として回転可能となっている。そのため、状態1に示されるように各シート10、20、30が折畳まれて椅子を形成した状態から、座面シート10を前方に引出すことにより、2〜4の状態を経由して状態5となり、各シート10、20、30は平面状に接続され、ベッドを形成することができる。図3には、ベッドに転換した状態の椅子本体、台車、各シート支持体のフレームおよび丁番が示されている。
【0023】
各図でも示したように、座面シート10の下部に設けられた台車40の側面には、樹脂部44aと支持部44bとで構成される樹脂レール44が設けられている。椅子本体架台53には樹脂レール44の収納部54が水平に設けられ、収納部54の先端には楔形金具55が設けられている。楔形金具55は前面が斜面で後面が垂直面となっている。椅子の状態1では、樹脂レール44は収納部54に収納され、この樹脂レール44の先端は楔形金具55の後面の垂直面で係止されている。また収納部54は、台車40に設けられた方向固定キャスター45を床面FLより浮き上がらせることのできる高さに調整されている。そのため椅子の状態1では、椅子本体は方向自在キャスター52で支えられ、自由に移動可能となっている。拡大図A〜Cは楔形金具55と樹脂レール44との組合せ部分を拡大した説明図であるが、拡大図Aに示されるように、樹脂レール44は樹脂部44aと支持体44bとからなっており、摺動面を担う樹脂部44aを下にして収納部54に収納され、楔形金具55の後面で係止されている。
【0024】
収納部54と楔形金具55の取り付け状態は図7に示すように、椅子本体架台53に、収納部上面が水平となるように収納部54が取り付けられ、この収納部上面に樹脂レール44が収納される。収納部54の先端には楔形金具55が取り付けられており、図7では金属板を楔形に加工し、金具基材57と組み合わせて楔形金具55としている。楔形金具55の前面は斜面となっており、後面は垂直面であり収納部54と一体化している。斜面から垂直面に変化する頂点56にて、樹脂レール44の樹脂部44aを摺動させて座面シート10の引き出しや押込みを行うことができる。
【0025】
図6の状態1から、座面シート10を引出すには、その前部を持ち上げ、樹脂レール44の先端を収納部54から浮かせ、楔形金具55の後面による樹脂レール44の係止を解き、ついで、状態2の拡大図Bに示すように樹脂部44aを楔形金具55の頂部56の上に置き、頂部56の上で樹脂部44aを摺動させながら座面シート10を台車40と共に前方へ引出す。ある程度引出した状態3では、台車40に設けられたキャスター45のうち前方のキャスターは床面FLに接する。さらに引出した状態4では、拡大図Cに示すように樹脂部44aの後端48が楔形金具55の斜面を滑り降り、座面シート10は台車40のキャスター45により支えられる。さらに、座面シート10を台車40と共に前方へ引出すことでベッドの状態5となる。後端48を拡大図Cに示すように、斜めに切り落とした形状としておくことで、斜面の滑り降りをスムーズにすることができる。さらには、後述するように、椅子の状態1にするために、楔形金具55の斜面を滑り上らせるときにも、スムーズに滑らすことができる。
【0026】
ベッドの状態5では、図3にも示されるように、丁番12、23が完全に開き、丁番35が閉じて、各シート10、20、30が平面状に接続されたベッドとなっている。この状態5では、背もたれシート支持体21の端部21aは支持部43で支えられ、背もたれシート20は水平となっている。この状態4から状態5となる過程で、端部21aを手先で掴んだりする場合がありうる。その場合、従来の台車では状態5になるときに手先が挟み込まれてしまう可能性があるが、本発明の台車では、切り欠き部42が設けられているため、挟み込まれることが避けられる。
【0027】
そして上記の状態5では、座面シート10は水平になっており寝心地の良いベッド面となっている。一方、樹脂レール44は前方に向かって下方に傾斜して台車40の側面に設けられており、椅子の状態1では、この樹脂レール44は水平に設けられた収納部54に収納され、水平となるため、座面シート10は背もたれシート20に向かって下方に傾斜することになり、座り心地の良い椅子となる。
【0028】
前記とは逆にベッドから椅子に転換するには、図6の状態5から状態4〜2を経由して状態1とすることで転換できる。まず、状態5で座面シート10を後方に押込むのであるが、このときに図2に示されるようにベルト60が装着されている場合には、このベルトを掴み、背もたれシート20を軽く引上げながら、座面シート10を台車40と共に後方へ押込む。そして、状態4において、樹脂レール44の樹脂部44aの後端48が楔形金具55の斜面に当り、さらに押込むことによりその斜面を滑り上がり、状態3〜2において、樹脂部44aは楔形金具55の頂部56の上を摺動し、樹脂部44aの先端が頂部56を乗り越えたところで、収納部54に収納され、状態1となり、樹脂レール44は楔形金具55の後面で係止される。
【0029】
また、台車40にはレール状のストッパー46が樹脂レール44の下方に設けられている。このストッパー46は座面シート10の引上げる高さを制限するものであり、図7に示すように台車40を引上げた場合に、楔形金具55がストッパーに当たることで引上げる高さを制限している。また、この例ではストッパー46は樹脂部46aと支持体46bとからなり、樹脂レール44をちょうど上下に反転した構造となっており、樹脂レール44と平行に、台車40の前部に設けられている。これは、座面シート10の引上げは、同シートの引出しの最初に行われるが、引上げた状態のままで引出しが行われることもあるため、このような構造としておくと引出し作業がスムーズに行えるためである。また、ここではストッパー46は台車の側面の前半部分に設けてあるが、この引上げは引出しの最初に行われるためであり、台車10の側面全体に設けても差し支えはない。さらに、ストッパーとして機能すればよいので、必ずしも図で示したような樹脂部46aと支持体46bの組合せとする必要はない。
【0030】
各図に示した形態では、樹脂レール44は樹脂部44aと支持体44bとからなるものを示したが、樹脂レール44は少なくとも下面の摺動部分が摩擦係数の小さい耐摩耗性に優れた合成樹脂であればよく、このような構成に限られるものではない。したがって、角鋼管などの支持体にこのような合成樹脂の板状体を貼り合わせたものでもよいし、樹脂レール全体をこのような合成樹脂で作成してもよい。さらには角鋼管の表面にこのような合成樹脂をコーティングして、摺動面としたものでもよい。
【0031】
本発明の樹脂レールの樹脂部に用いられる摩擦係数が小さくかつ耐摩耗性に優れた合成樹脂としては、ポリアセタール(ポリオキシメチレン)、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン46などのポリアミド、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、ポリプロピレン、分子量百万を超える超高分子量ポリエチレンなどが好ましく用いられる。特にポリアセタールが加工特性や摺動特性の面から好ましく、さらに摺動特性を向上するために潤滑オイルを配合したり、フッ素樹脂などを充填したりしてもよく、また、コポリマー、ホモポリマーのいずれのタイプのポリアセタールでも使用することができる。これらの合成樹脂は角柱状に成型し樹脂レールとしてもよく、板状体に成型し角鋼管などの支持体に貼り合わせたり、または支持体表面にコーティングしたりして樹脂レールとされる。
【0032】
楔形金具は前記のように、鋼板などの金属板を楔形状に加工したものでもよいし、金属材料を楔形状に鋳造したものでもよい。さらには、金属材料ではなく、前記したような耐摩耗性に優れた合成樹脂を楔形状に成型したものでも使用できる。
【0033】
また、本発明の椅子では、台車40には方向固定キャスター45が設けられ、座面シート10の引出しや押込みをより容易にできるようになっている。そして、椅子本体には方向自在キャスター52が設けられ、椅子本体の移動が容易にできるようになっているが、この方向自在キャスター52にはストッパーが併設してあることが好ましい。そして、移動後にはストッパーを働かせて移動後の場所に固定したり、前述のベッドと椅子の転換作業時にもストッパーを働かせて、安全に作業ができるようにしたり、さらにベッドに転換する場合にも同様に働かせることができるのが好ましい。
【0034】
このように本発明の椅子では、台車40の張り出し部41の上方両側部に切り欠き部42が設けられているために、椅子とベッドとの相互の転換に際して、手先を挟み込むことなく安全に作業ができ、さらに、摺動性に優れた樹脂レール44と楔形金具55とを組み合わせた簡易な構造を採用することにより、座面シート10の固定や固定の解除が簡単にできるため、椅子とベッドとの相互の転換が一人で素早く、安全で簡単にできる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のベッドに転換できる椅子は、安全であって、一人で素早く、簡単な作業で、座り心地の良い安楽椅子と寝心地の良いベッドとに相互に転換でき、小さなスペースでも置くことができ、さらに移動も簡単にできるので、室内空間の限られた病院の病室などでの付添者用、病院での待合室での応急用、病院などの宿直者用などに好適に用いることができ、さらに、一般家庭、工場やオフィスの休憩室などにも用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
10 座面シート
11 座面シート支持体
20 背もたれシート
21 背もたれシート支持体
21a 端部
30 背面シート
31 背面シート支持体
12、23、35 丁番
40 台車
40´ 台車(従来のタイプ)
41 張り出し部
42 切り欠き部
43 支持部
44 樹脂レール
44a 樹脂部(樹脂レール)
44b 支持体(樹脂レール)
45 方向固定キャスター
46 ストッパー
46a 樹脂部(ストッパー)
46b 支持体(ストッパー)
48 樹脂部(樹脂レール)後端
50 側面
51 肘掛
52 方向自在キャスター
53 椅子本体架台
54 収納部
55 楔形金具
56 頂部
57 金具基材
60 ベルト
70 枕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面シートと、背もたれシートと、背面シートと、椅子本体架台とが丁番で順次接続され、座面シート下部には台車が設けられ、座面シートが前方に引き出されることでベッドに転換可能な椅子であって、該台車は、背もたれシート側に張り出し部を有し、該張り出し部の上方両側部に手先が入る大きさの切り欠き部が設けられ、上方両側部から手先の届かない距離の内部に支持部が設けられていることを特徴とするベッドに転換可能な椅子。
【請求項2】
請求項1に記載のベッドに転換可能な椅子において、座面シート下部に設けられた台車の側面には下部を摺動面とした樹脂レールが設けられ、椅子本体架台には樹脂レールの収納部が設けられ、該収納部の先端には前面を斜面とし後面を垂直面とした楔形金具が設けられ、該楔形金具は、樹脂レールの収納後には後面にて該樹脂レールを係止でき、座面シートの前方への引出時もしくは後方への押込時には、その頂部にて樹脂レールが摺動可能となっていることを特徴とするベッドに転換可能な椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−110505(P2012−110505A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262007(P2010−262007)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【特許番号】特許第4733781号(P4733781)
【特許公報発行日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(397038853)ナゼロ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】