説明

ベビーシューズ

【課題】乳幼児等の動作にかかわらず異物等の入り込みを防止することができるベビーシューズを提供すること。
【解決手段】靴底部10と、アッパー本体部20と、を有し、アッパー本体部には、使用者の足を挿入するための履き口部30と、履き口部の一部を切り欠いて爪先側方向に向かって形成されている足挿入用開口部40と、足挿入用開口部を覆うように配置される舌状当接部50と、舌状当接部をアッパー本体部に対して固定するための固定用ベルト部60aが、舌状当接部に連接され、舌状当接部は、足挿入用開口部の爪先側でアッパー本体部と揺動可能に接続され、舌状当接部の足挿入用開口部から離間する方向の揺動を規制し、足挿入用開口部の爪先側端部の変形を規制するように、弾性規制手段70が配置されているベビーシューズ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に乳幼児等が歩行等の際に使用するベビーシューズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、乳幼児等のための靴としてベビーシューズが広く使用されている。このようなベビーシューズについては、近年、研究が進み、単に大人靴を小型化したような靴ではなく、乳幼児等が履きやすく、歩きやすい構成となっているベビーシューズが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−105526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乳幼児等の歩行について出願人が各種研究した結果、乳幼児等は、その月齢によって歩行又は動作が異なることがわかった。
特に、月齢9ヶ月頃から1歳程度までの乳幼児は、まだ完全な歩行を習得しておらず、所謂「つかまり立ちや伝い歩き等」を行いながら歩行練習をする時期となっている。
したがって、このような時期の乳幼児等のベビーシューズは、歩行の際に、乳幼児等が地面等の凹凸を感じることができるように、また、ベビーシューズを履いていない状態に近づけるため、さらに、乳幼児等が足指等を内部で動かし易いように、全体として柔らかいことが望ましい。
【0005】
しかし、乳幼児等が、かかる柔らかいベビーシューズを履いて、歩行練習する際、ベビーシューズのうち、乳幼児が足を入れるための履き口部及びこの履き口部からアッパーを爪先側に向かって伸びるように形成されている開口である足挿入用開口部を覆うように配置されている舌状当接部が、足の屈曲運動に伴い変形し、舌状当接部と足挿入用開口との間に不測の大きな隙間が生じ、この隙間等から小石等がベビーシューズ内に入り込む。
このような異物等がベビーシューズ内に入り込むと、乳幼児の歩行練習を妨げるという問題が生じた。
【0006】
そこで、本発明は、乳幼児等の動作にかかわらず異物等の入り込みを防止することができるベビーシューズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明によれば、使用者の足の足裏側を配置するための靴底部と、前記靴底部から立ち上がるように、且つ、使用者の足を包むように形成されるアッパー本体部と、を有するベビーシューズであって、前記アッパー本体部には、使用者の足を挿入するための履き口部と、前記履き口部の一部を切り欠いて爪先側方向に向かって形成されている足挿入用開口部と、前記足挿入用開口部を覆うように配置される舌状当接部と、前記舌状当接部を前記アッパー本体部に対して固定するための固定用ベルト部が、前記舌状当接部に連接され、前記舌状当接部は、前記足挿入用開口部の爪先側で前記アッパー本体部と揺動可能に接続され、前記舌状当接部の前記足挿入用開口部から離間する方向の揺動を規制し、前記足挿入用開口部の爪先側端部の変形を規制するように、弾性規制手段が配置されていることを特徴とするベビーシューズにより達成される。
【0008】
前記構成によれば、舌状当接部は、足挿入用開口部の爪先側でアッパー本体部と揺動可能に接続され、舌状当接部の足挿入用開口部から離間する方向の揺動を規制し、足挿入用開口部の爪先側端部の変形を規制するように、弾性規制手段が配置されている。
このように舌状当接部が足挿入用開口部の爪先側でアッパー本体部と揺動可能に接続されているので、足挿入用開口を用いて乳幼児等の足をベビーシューズ内に挿入する場合、舌状当接部が、この開口を妨げないので、この足挿入用開口部の大きさを有効に利用することができる。
また、前記構成では、弾性規制手段が配置され、舌状当接部の足挿入用開口部から離間する方向の揺動を規制し、足挿入用開口部の爪先側端部の変形を規制するように構成されている。
乳幼児等がベビーシューズを履き、歩行運動をする場合、足指の付け根付近が最も屈曲することになる、この屈曲部分を足指屈曲部と呼ぶが、足指屈曲部における足の屈曲に応じて、ベビーシューズのアッパー本体部側も変形することになる。
【0009】
このとき、足指屈曲部に対応するアッパー本体部には、足挿入用開口部の爪先側端部が形成されていると共に、この足挿入用開口部を覆うように配置される舌状当接部が形成されているので、アッパー本体部の変形により、これら舌状当接部と足挿入用開口部との間に想定以上の大きな隙間が形成され、この大きな隙間から小石等が入り込み、歩行の邪魔となることがある。
特に、例えば、歩行練習期の乳幼児等のベビーシューズは、その動きを阻害しないために、アッパー本体部の生地等が柔らかく形成されている。
このようなベビーシューズでは、アッパー本体部が特に柔らかいため、上述の歩行に際し、足挿入用開口部と舌状当接部との間の隙間も大きくなり、小石等が入り込みやすくなる。
このような場合に、前記構成では、舌状当接部の足挿入用開口部から離間する方向の揺動を規制し、足挿入用開口部の爪先側端部の変形を規制するように弾性規制手段が形成されているので、上述の足挿入用開口部と舌状当接部との間の開口が大きくなるのを未然に防ぐことができる。
したがって、乳幼児等の歩行練習を阻害せず、促進するベビーシューズとなる。
【0010】
好ましくは、前記弾性規制手段が、前記アッパー本体部及び前記舌状当接部に対して配置されると共に、使用者の足が最も屈曲する部分である足指屈曲部の前記アッパー本体部側における対応領域の近傍で、かつ、前記足挿入用開口部の爪先側端部側に配置されていることを特徴とするベビーシューズである。
【0011】
前記構成によれば、弾性規制手段が、アッパー本体部及び舌状当接部に対して配置されると共に、使用者の足が最も屈曲する部分である足指屈曲部のアッパー本体部側における対応領域の近傍で、かつ、足挿入用開口部の爪先側端部側に配置されている。
このため、足のうち、最も大きく屈曲変形する部分に対応して、弾性規制手段が形成されているので、舌状当接部と挿入用開口部との間が最も大きく開く部分における、かかる変形を有効に抑えることができる。
【0012】
好ましくは、使用者の踵が配置される踵部を有し、前記踵部には、その形状を保持させるためのカウンター部が配置され、前記靴底部は、使用者の這い歩きに際して生じる使用者の足の変形に従い、中央領域が凹状に変形可能な構成となっており、前記カウンター部と前記アッパー本体部との境界線が、この靴底部の変形により生じる前記アッパー本体部の変形方向に対応して形成されていることを特徴とするベビーシューズである。
【0013】
前記構成によれば、使用者の踵が配置される踵部を有し、踵部には、その形状を保持させるためのカウンター部が配置されている。このため、使用者の踵をカウンター部によって保持できるので、歩き易いベビーシューズとなる。
また、特に、例えば、月齢9ヶ月頃から1歳程度までの乳幼児は、まだ完全な歩行を習得しておらず、所謂「つかまり立ちや伝い歩き等」を行いながら歩行練習をする時期となっている。
このような乳幼児が、移動する際は、まだ歩行ができず、所謂「ハイハイ」と呼ばれる「這い歩き」で移動する。すなわち、移動に際しては、足を折り曲げ、膝を地面等に接地させると共に、手を地面等に接地させ、膝と手を動かすことで移動することになる。
この「這い歩き(ハイハイ)」をするとき、乳幼児は、足が「這い歩き」の邪魔にならないように、足首をまっすぐに伸ばし、足底の例えば、足指屈曲部より踵部側の部分である中央部を凹状に変形させる動きをする。
このため、靴底部は、使用者の這い歩きに際して生じる使用者の足の変形に従い、中央領域が凹状に変形可能な構成となっている。
したがって、使用者の足の動きに沿って、アッパー本体部も変形するので、「這い歩き」をし易いベビーシューズとなっている。
【0014】
また、カウンター部とアッパー本体部との境界線が、この靴底部の変形により生じるアッパー本体部の変形方向に対応して形成されている。このため、使用者の踵を保持するために形成されている他の部分より剛性が高いカウンター部が、靴底部やアッパー本体部の変形を阻害することがない。
したがって、「這い歩き」をし易く、同時に歩行もし易いベビーシューズとなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、乳幼児等の動作にかかわらず異物等の入り込みを防止することができるベビーシューズを提供することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態にかかるベビーシューズを示す概略斜視図である。
【図2】図1のベビーシューズの概略側面図である。
【図3】図1のベビーシューズの舌状当接部を足挿入用開口部から離間する方向に移動させた状態を示す概略平面図である。
【図4】人の足指屈曲部の位置を示す概略説明図である。
【図5】図1のベビーシューズの概略中央縦断面図である。
【図6】図5のBの部分を示す概略拡大図である。
【図7】サイドゴムテープが配置されない状態で乳幼児が足指屈曲部を屈曲させた状態を示す概略図である。
【図8】サイドゴムテープが配置された状態で乳幼児が足指屈曲部を屈曲させた状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0018】
図1及び図2に示すベビーシューズ1は、乳幼児の月齢9ヶ月程度から12ヶ月程度までの乳幼児のためのものである。
この時期の乳幼児は、歩行を完全に習得する前の状態で、歩行練習を盛んに行う時期となる。また、この時期の乳幼児は、手でバランスを取りながら数歩歩く程度であるため、手すり等につかまって、立ち上がること等ができる、所謂「伝い歩き」の時期となる。
【0019】
この時期の歩行の特徴としては、立っている時間は短く、移動する際には、所謂「ハイハイ」である「這い歩き」を行うこと等があげられる。
【0020】
図1及び図2に示すように、本実施の形態のベビーシューズ1は、使用者である例えば、乳幼児(たっち、伝い歩き、手放し歩き時期、月齢9ヶ月程度から12ヶ月程度、靴のサイズ、11.0cm乃至12.5cm)の足裏側を配置するための靴底部10を有している。
また、この靴底部10から立ち上がるように、且つ乳幼児の足を包むように形成されるアッパー本体部20が形成されている。
さらに、このアッパー本体部20には、乳幼児等の足を挿入するための履き口部30が形成されている。
また、この履き口部30の一部を切り欠いて爪先側方向に向かって形成されている足挿入用開口部40が形成されていると共に、この足挿入用開口部40を覆うように舌状当接部50が形成されている。
【0021】
図3に示すように、舌状当接部50を、移動させることで、乳幼児の足を挿入させるための広い領域が確保される構成となっている。
なお、本実施の形態のベビーシューズ1は、乳幼児が歩行練習をする時期に履くため、靴を履くときは、主に保護者が乳幼児にベビーシューズ1を履かせることになる。
そこで、本実施の形態のベビーシューズ1の図3に示す足挿入用開口部40の長手方向の長さは、他のより高月齢のベビーシューズより広く形成されている。
すなわち、足挿入用開口部40の履き口部30の踵部側端部から爪先側端部までの長さL2と、履き口部30の踵部側端部からベビーシューズ1の爪先までの長さL1との比率が、従来のベビーシューズに比べ、大きく形成されている。
【0022】
また、図3に示すように、舌状当接部50の両側には、それぞれ固定用ベルト部である固定用ベルト60a、60bがそれぞれ連接して形成されている。
具体的には、図3に示すように、固定用ベルト60a、60bの裏面側に、ベルト側面ファスナー61a、61bが形成されていると共に、アッパー本体部20側の表面にもアッパー側ファスナー21a、21bが形成されている。
このため、これらを当接させることで固定用ベルト60aを介して舌状当接部50をアッパー本体部20に固定することが可能となっている。
一方、この固定状態から利用者が固定用ベルト60a等の先端部等を把持し、固定用ベルト60a等をアッパー本体部20から引き離すように移動させることで、固定用ベルト60a等の固定状態が解除される構成となっている。つまり、固定用ベルト60a、60bは、アッパー本体部20に対して着脱可能の構成となっている。
【0023】
なお、図1に示すように、履き口部30の踵部80側である後側には、履き口部30内に乳幼児の足を挿入する際に用いるループ31が形成されている。
一方、アッパー本体部20の爪先側である爪先部22は、その表面に、厚さ0.8mmの合皮22aが配置され,剛性が高められている。これにより、ベビーシューズ1内の爪先部22は、形状が保持され、その内側には、所定の空間が確保され、乳幼児がベビーシューズ1内で足指を上下左右に動かすことができる。
乳幼児、特に、月齢9ヶ月程度から12ヶ月程度までの乳幼児は、歩行動作の練習の際、足指を上下左右に動かすことで、そのバランスを取っている。
したがって、本実施の形態のベビーシューズ1では、爪先部22の形状が保持されているので、乳幼児のかかる足指の動きを妨げない構成となっており、乳幼児が歩行動作の練習をし易い構成となっている。
【0024】
ところで、図1乃至図3に示すように、舌状当接部50は、足挿入用開口部40の爪先側である接続部51で、アッパー本体部20と接続され、図2の矢印Aに示すように、接続部51を支点に揺動可能な構成となっている。
なお、乳幼児が歩行運動をする際に、足指の根本近傍を屈曲させるが、この屈曲部分が図4に示す足指屈曲部Cである。
図4に示すように、足指屈曲部Cは人の足指の第1趾から第5趾の根本付近に渡って形成されている。そして、この部分が、歩行に際し、最も屈曲する部分となる。
【0025】
また、本実施の形態では、この足指屈曲部Cの上方のアッパー本体部20に、舌状当接部50の接続部51が位置する構成となっている。
そして、図1乃至図3のベビーシューズ1では、アッパー本体部20及び舌状当接部50に、弾性規制手段である例えば、サイドゴムテープ70が形成されている。
このサイドゴムテープ70は、帯状の弾性力のあるゴム等から成るテープ状の部材であり、アッパー本体部20上では、アッパー本体部20に縫い合わされて固定されていると共に、舌状当接部50に対しては、その内部に挿入配置されている。
【0026】
図6に示すように、サイドゴムテープ70は、舌状当接部50との関係では、その接続部51側の内部に収容されるようになっている。
なお、これと関連して、ベビーシューズ1の素材等について説明する。
図6に示す舌状当接部50の上端部52(図1等の上端部52)は、舌状当接部50が足挿入用開口部40を覆うように配置された場合、乳幼児の足首に近い位置に配置される。このため、乳幼児が歩行に際し、図4の足指屈曲部Cを曲げたとき、足の甲を最も押し付ける部分となっている。
【0027】
したがって、舌状当接部50の上端部52は柔らかい方が好ましく、例えば、JERSEYと2mmのゴムスポンジ(SBR)より構成されている。
また、舌状当接部50は、図6に示すように、外側素材として、外表素材(例えば、ソフトなメッシュ素材)50a及びスポンジ50bを有し、内側素材として、スポンジ50c及びJERSEY50dを有している。
この外表素材50aは、その厚さが0.4mm、スポンジ50bの厚さが2mm、スポンジ50cの厚さが2mm、JERSEY50dの厚さが0.4mmとなっている。
【0028】
このため、舌状当接部50の厚みが全体で4.8mmとなり、極めて薄い舌状当接部50となっている。
また、図5に示すように、ベビーシューズ1の爪先部22の外側には剛性を高めるための合皮22aが配置されている。
また、図5に示すように、靴底部10の内側には、インソール90が配置されている。そして、インソール90の図4に示す足指屈曲部Cに対応する部分を含む領域には、溝部91が形成され、屈曲し易い構成となっている。このため、ベビーシューズ1内にインソール90を配置しても、このインソール90の存在が、乳幼児の歩行の妨げになり難い構成となっている。
【0029】
ところで、図2のベビーシューズ1の乳幼児の踵が配置される踵部80には、図5に示すように、その表面にカウンター部である例えば、合皮81が配置され、その厚みは、例えば、0.8mm程度となっている。
また、図1及び図2の履き口部30の履き口上端部32には、図5に示すように、内部には、6mmのスポンジ32aが配置され、その外側の履き口外表32bには、JERSEYと2mmのスポンジが配置されている。
【0030】
本実施の形態のベビーシューズ1のアッパー本体部50及び靴底部10は、全体が薄く形成され、変形がし易い構成ともなっている。
このようにベビーシューズ1全体を柔らかく形成するのは、上述のように、乳幼児が歩行の際に、地面等の凹凸を感じることができるように、また、ベビーシューズを履いていない状態に近づけるため、さらに、乳幼児が足指等を内部で動かし易いようにするため等である。
また、ベビーシューズ1の使用者である乳幼児が、移動に際し「這い歩き」を行い、この「這い歩き」、すなわち、「ハイハイ」をする場合、靴底部10を上に向け、足首を真っ直ぐ伸ばし、自己の足裏の中央部(足指屈曲部Cより踵部80側の部分等)を凹状に変形させる。
このとき、この乳幼児の足の動きに沿って、ベビーシューズ1の靴底部10等が変形することが好ましいので、このような変形をするためにも、全体が薄く柔軟に構成されている。
【0031】
ところで、図1及び図2に示すように、サイドゴムテープ70は、足指屈曲部C上ではなく、足指屈曲部Cの近傍で、足指屈曲部Cより後側であって、ベビーシューズ1の全体としては、爪先部22側に配置されている。
つまり、サイドゴムテープ70は、図2の接続部51より踵部80側に配置される。
このため、図2の舌状当接部50を矢印A方向に沿って開くように移動(揺動)させると、サイドゴムテープ70も引き上げられる。
このとき、サイドゴムテープ70の付勢力により、舌状当接部50は、閉じる方向に付勢される。
また、図2に示すように、サイドゴムテープ70は、足挿入用開口部40を跨ぐように配置されるので、足挿入用開口部40を広げない方向に付勢力が働くことになる。
したがって、ベビーシューズ1は、サイドゴムテープ70により、舌状当接部50の接続部51側が、足挿入用開口部40から離間しないように規制し、かつ、足挿入用開口部40の先端側を開かないように規制する構成となっている。
【0032】
本実施の形態のベビーシューズ1は、上述のように、歩行練習中の月齢9ヶ月程度から12ヶ月程度の乳幼児が使用し、移動に際しては「ハイハイ(這い歩き)」をするため、上述のように、全体が薄く柔らかく形成されている。
また、ベビーシューズ1は、上述のように、従来に比べ、足挿入用開口部40を大きく(長く)形成しているので、これを覆う舌状当接部50も長く形成されている。
このため、サイドゴムテープ70が備わっていないベビーシューズを履いて、歩行し、足指屈曲部Cを屈曲させると、図7に示すように、舌状当接部50の接続部51近傍で、足挿入用開口部40と舌状当接部50との間に大きな隙間Dが形成されることになる。
特に、舌状当接部50の先端側に形成された固定用ベルト60a等のみの固定で、舌状当接部50の基端側(爪先側)に押さえ手段がないと、この基端側に浮き上がりが発生し、それが隙間Dとなる。
これでは、この隙間Dから小石等がベビーシューズ内に入り込み、歩行動作の妨げとなる。
【0033】
一方、本実施の形態のベビーシューズ1は、図8に示すように、乳幼児が足指屈曲部Cを屈曲させても、足挿入用開口部40と舌状当接部50との間に大きな隙間Dは生じないため、小石等がベビーシューズ1内に入り込むことがなく、乳幼児が歩行動作の練習をし易い構成となっている。
【0034】
また、本実施の形態では、上述のように、従来と異なり、足挿入用開口部40を大きく形成しているので、保護者等が乳幼児にベビーシューズ1を履かせやすいという利点がある。
しかし、図7に示すように、ベビーシューズの足挿入用開口部40を大きく形成し、アッパー本体部20の生地等を柔らかく形成すると、乳幼児が歩行し、足指屈曲部Cを屈曲させるとき、接続部51の近傍で舌状当接部50と足挿入用開口部40との間に大きな隙間Dが形成される傾向がある。
この点、本実施の形態では、接続部51の近傍にサイドゴムテープ70が配置され、常にゴムの付勢力が隙間Dを閉じる方向(舌状当接部50を押さえる方向)に付与されているので、かかる隙間Dの形成を未然に防ぐことができる。
【0035】
また、本実施の形態では、図2及び図5に示すように、踵部80には、合皮81が、その剛性を保つために形成されている。
そして、この合皮81とアッパー本体部20との境界線である例えば、合皮境界線81aが、靴底部10の踵側から上方に、且つ、爪先方向に湾曲して形成されている。
ベビーシューズ1を履いた乳幼児が、移動のため「ハイハイ(這い歩き)」をする場合、足底を上に向け、足底の中央部(足指屈曲部Cより踵部80側の部分等)を凹状にするように足を動作する。この動きが、図2の矢印E方向の動きである。
このとき、ベビーシューズ1の靴底部10及びアッパー本体部20は、柔らかく形成されているので、乳幼児の足裏のこの動きに追従しようとするが、剛性を持った合皮81が、その動きを阻害するおそれがある。
そこで、本実施の形態では、図2の合皮境界線81aを、この動作に沿った方向とすることで、乳幼児に「ハイハイ(這い歩き)」をし易くし、履き易いベビーシューズ1としている。
【符号の説明】
【0036】
1・・・ベビーシューズ、10・・・靴底部、20・・・アッパー本体部、21a、21b・・・アッパー側面ファスナー、22・・・爪先部、22a・・・合皮、30・・・履き口部、31・・・ループ、32・・・履き口上端部、32a・・・スポンジ、32b・・・履き口外表、40・・・足挿入用開口部、50・・・舌状当接部、50a・・・外表素材、50b・・・スポンジ、50c・・・スポンジ、50d・・・JERSEY、51・・・接続部、52・・・上端部、60a、60b・・・固定用ベルト、61a、61b・・・ベルト側面ファスナー、70・・・サイドゴムテープ、80・・・踵部、81・・・合皮、81a・・・合皮境界線、90・・・インソール、91・・・溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の足の足裏側を配置するための靴底部と、
前記靴底部から立ち上がるように、且つ、使用者の足を包むように形成されるアッパー本体部と、を有するベビーシューズであって、
前記アッパー本体部には、使用者の足を挿入するための履き口部と、
前記履き口部の一部を切り欠いて爪先側方向に向かって形成されている足挿入用開口部と、
前記足挿入用開口部を覆うように配置される舌状当接部と、
前記舌状当接部を前記アッパー本体部に対して固定するための固定用ベルト部が、前記舌状当接部に連接され、
前記舌状当接部は、前記足挿入用開口部の爪先側で前記アッパー本体部と揺動可能に接続され、
前記舌状当接部の前記足挿入用開口部から離間する方向の揺動を規制し、前記足挿入用開口部の爪先側端部の変形を規制するように、弾性規制手段が配置されていることを特徴とするベビーシューズ。
【請求項2】
前記弾性規制手段が、前記アッパー本体部及び前記舌状当接部に対して配置されると共に、使用者の足が最も屈曲する部分である足指屈曲部の前記アッパー本体部側における対応領域の近傍で、かつ、前記足挿入用開口部の爪先側端部側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のベビーシューズ。
【請求項3】
使用者の踵が配置される踵部を有し、
前記踵部には、その形状を保持させるためのカウンター部が配置され、
前記靴底部は、使用者の這い歩きに際して生じる使用者の足の変形に従い、中央領域が凹状に変形可能な構成となっており、
前記カウンター部と前記アッパー本体部との境界線が、この靴底部の変形により生じる前記アッパー本体部の変形方向に対応して形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のベビーシューズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−250870(P2011−250870A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125055(P2010−125055)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000112288)ピジョン株式会社 (144)
【Fターム(参考)】