説明

ベポタスチンの製造方法及びそれに用いられる中間体

式(I)のベポタスチンの立体特異的な製造方法、及びそれに用いられる式(II)〜(IV)を有する新規な中間体が提供される。本発明の方法は、(RS)−4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジンを、塩基存在下において有機溶媒中で、ハロがクロロ、ブロモ、またはヨウ素である4−ハロブタン酸l−メンチルエステルと反応させて式(II)の(RS)−ベポタスチンl−メンチルエステルを生成する段階、式(II)の化合物を、N−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸と有機溶媒中で反応させて式(III)のベポタスチンl−メンチルエステル・N−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸塩の選択的沈殿を誘導する段階、段階2)で形成した沈殿物を濾過して式(III)の化合物を単離する段階、式(III)の化合物を塩基で処理して式(IV)のベポタスチンl−メンチルエステルを遊離させる段階、及び塩基存在下で式(IV)の化合物を加水分解させる段階を含み、99.5% 以上の高い光学純度を有するベポタスチンを高収率で製造することを可能にするので、抗ヒスタミン剤及び抗アレルギー剤の開発に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベポタスチンの立体特異的な製造方法及びそれに用いられる中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
式(I)の光学活性なベポタスチン、(+)−(S)−4−{4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ}ブタン酸、は特許文献1に開示されているように、選択的な抗ヒスタミン剤である。
【化1】

【0003】
特許文献1及び特許文献2は、ラセミ体の(RS)−4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジン(化合物a)を光学活性な(2R、3R)−2−ヒドロキシ−3−(4−メトキシフェニル)−3−(2−ニトロ−5−クロロフェニルチオ)プロピオン酸(化合物)で処理して光学分割することによって、化合物を経て左旋性異性体である(S)−(−)−4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジン(化合物 )を得、それからベポタスチンを製造することを含む、反応式1に示すベポタスチンの製造方法を開示している。
反応式1
【化2】

【0004】
しかし、前記方法は化合物の製造が必要であるので、複雑で経済的にも不利である。
【0005】
特許文献2には、ラセミ体の(RS)−4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジン(反応式1の化合物)を、N−アセチル−L−フェニルアラニン、N−アセチル−L−ロイシン、N−ベンジルオキシカルボニル−L−フェニルアラニン、N−ベンジルオキシカルボニル−L−バリン、N−ベンジルオキシカルボニル−L−トレオニンまたはN−ベンジルオキシカルボニル−L−セリンなどを用いて光学分割する方法が記載されているが、得られる生成物の収率及び光学純度は不十分である。
【0006】
一方、特許文献3は、光学分割された(S)−(−)−4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジン(化合物)を沈殿させた後、ろ液に残留する(R)−(+)−4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジンのラセミ化によって(RS)−4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジン(化合物)を回収する方法を記載している。しかし、塩基存在下、ブタノール中で高温を要する前記ラセミ化法はあまり効率的ではない。
【0007】
従って、本発明者らは、ベポタスチンを立体特異的に製造する改善された方法を開発するため鋭意研究を重ねた結果、(RS)−ベポタスチンl−メンチルエステル、(S)−ベポタスチンl−メンチルエステル・N−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸塩及びベポタスチンl−メンチルエステルのような新規な中間体を用いる方法により、高い光学純度を有するベポタスチンを高収率で製造することができることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−237070号
【特許文献2】特開2000−198784号
【特許文献3】特開平10−237069号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、高い光学純度のベポタスチンを高い立体特異的な方法で製造する方法を提供することである。
本発明の他の目的は、前記方法で用いられる新規な中間体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、
1)(RS)−4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジンを、塩基存在下で有機溶媒中において、ハロがクロロ、ブロモ、またはヨウ素である4−ハロブタン酸l−メンチルエステルと反応させて式(II)の(RS)−ベポタスチンl−メンチルエステルを生成する段階、
2)式(II)の化合物を、N−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸と有機溶媒中で反応させて式(III)のベポタスチンl−メンチルエステル・N−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸塩の選択的沈殿を誘導する段階、
3)段階2)で形成された沈殿物を濾過して式(III)の化合物を単離する段階、
4)式(III)の化合物を塩基で処理して式(IV)のベポタスチンl−メンチルエステルを遊離させる段階、及び
5)塩基存在下で式(IV)の化合物を加水分解させる段階、
を含む、下記式(I)のベポタスチンを製造する方法が提供される。
【化3】

【0011】
次に、本発明の方法の各段階を詳しく説明する。
【0012】
段階1)ラセミ体(RS)−ベポタスチンl−メンチルエステルの製造
反応段階1)において、米国特許第4,929,618号に記載された方法またはこれと類似する方法により製造した(RS)−4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジン(反応式1の化合物)を塩基存在下で有機溶媒中で4−ハロブタン酸l−メンチルエステル(ハロはクロロ、ブロモまたはヨウ素)と反応させて式(II)の(RS)−ベポタスチンl−メンチルエステルを生成する。
前記段階1)で用いられる有機溶媒は、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、またはN,N−ジメチルホルムアミドなどで良い。前記4−ハロブタン酸l−メンチルエステルは(RS)−4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジンに対し1〜1.5当量の量で使用され得る。前記塩基はトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、または炭酸水素ナトリウムであっても良く、4−ハロブタン酸l−メンチルエステルに対し1〜3当量の量で使用される。前記反応は0℃〜溶媒の還流温度範囲内の温度で行われる。
【0013】
段階2)ベポタスチンl−メンチルエステル・N−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸塩の製造(光学分割)
反応段階2)において、段階1)で得られた式(II)の(RS)−ベポタスチンl−メンチルエステルを N−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸と有機溶媒中で反応させて式(III)のベポタスチンl−メンチルエステル・N−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸塩の選択的沈殿を誘導する。
N−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸は(RS)−ベポタスチンl−メンチルエステルに対し0.5〜2.0当量、好ましくは1〜1.2当量の量で使用される。前記有機溶媒は、アセトニトリル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、ジエチルエーテル、またはこれらの混合物でも良く、酢酸メチルまたは酢酸エチルが好ましい。ここで用いられる有機溶媒の量は(RS)−ベポタスチンl−メンチルエステル1g当たり3〜30mlであり、この反応は10℃〜60℃の温度で行われ、反応混合物を5℃〜20℃に冷却し、簡単な濾過によって式(III)の沈殿した塩を単離することができる。
【0014】
段階3)及び4)ベポタスチンl−メンチルエステルの製造
ベポタスチンl−メンチルエステル・N−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸塩を塩基で処理して式(IV)のベポタスチンl−メンチルエステルのみを遊離させる。
この段階において用いられる塩基としては、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムのような弱塩基が使用され得る。前記反応はpH7.5〜9.0で酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、及びジエチルエーテルの中から選ばれた有機溶媒と水の混合溶液中で実施し得る。
【0015】
段階5)ベポタスチンの製造
反応段階5)において、式(IV)のベポタスチンl−メンチルエステルを塩基存在下で加水分解してベポタスチンを生成する。
塩基として水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどがベポタスチンl−メンチルエステルに対し1〜5当量の量で使用され得る。
前記加水分解反応はメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル、及びテトラヒドロフランの中から選ばれた有機溶媒と水の混合物の中で10℃〜60℃で実施し得る。好ましい水と有機溶媒との混合比は1:0.05〜1:20である。
【0016】
また、本発明は、反応段階2)で式(III)の沈殿したベポタスチンl−メンチルエステル・N−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸塩を濾過した後、得られたろ液から(R)−異性体が豊富なベポタスチンl−メンチルエステルを回収する段階、及び前記回収された物質を酸で処理して完全にラセミ化した式(II)の(RS)−ベポタスチンl−メンチルエステルを得る段階をさらに含むことができる。
前記ろ液から(R)−異性体が豊富なベポタスチンl−メンチルエステルを回収するためには、ろ液に水を添加してから炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムのような弱塩基の添加によりpHを7.5〜9.0に調節する。次いで、通常の方法によって有機溶媒を用いて所望の生成物を抽出する。
次いで、アセトニトリル、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールの中から選ばれた有機溶媒中で60℃〜溶媒の還流温度範囲内で酢酸、プロピオン酸及びベンゼンスルホン酸のような有機酸で処理することによって、(R)−異性体が豊富なベポタスチンl−メンチルエステルを完全にラセミ化した(RS)−ベポタスチンl−メンチルエステルに転換させる。
前記有機酸は(R)−異性体が豊富なベポタスチンl−メンチルエステルに対し3〜15当量の量で使用される。もし、有機酸として酢酸を使用すれば、有機溶媒の使用を省略しても良い。好ましい反応時間は12時間以内である。
【0017】
本発明の方法によって製造されたベポタスチンは任意の公知の方法(例えば、日本国特開平10−237070号及び韓国特許出願第2007−33756号)によってベンゼンスルホン酸塩またはカルシウム塩のような薬学的に許容可能な塩に転換することができる。
【0018】
また本発明は、前記製造方法で用いられる新規な中間体、すなわち、式(II)の(RS)−ベポタスチンl−メンチルエステル、式(III)のベポタスチンl−メンチルエステル・N−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸塩、及び式(IV)のベポタスチンl−メンチルエステルを提供する。
【化4】

【発明の効果】
【0019】
(RS)−ベポタスチンl−メンチルエステル、ベポタスチンl−メンチルエステル・N−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸塩及びベポタスチンl−メンチルエステルのような新規な中間体を用いてベポタスチンを製造する本発明の方法は99.5% 以上の高い光学純度を有するベポタスチンを高収率で製造することができるので、抗ヒスタミン剤及び抗アレルギー剤の開発に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施例により詳しく説明する。ただし、下記実施例は本発明を例示するだけであり、本発明が下記実施例により限定されるものではない。
【0021】
参考例:化合物の光学純度決定
実施例に記述された各化合物の光学純度を算出するため、下記条件下でクロマトグラフィーを行うことにより前記化合物の各異性体を単離した。下記式1により各異性体に対する分析結果から光学純度を計算した。
1)ベポタスチンの光学純度の分析条件
検出器:紫外分光光度計(検出波長:225nm)
カラム:YMC Chiralβ−CDs(4.6×250mm,5μm)
移動相:メタノール/酢酸アンモニウム緩衝溶液 =45/55(v/v’、%)
流速:0.8ml/分
2)ベポタスチンl−メンチルエステルの光学純度の分析条件
検出器:紫外分光光度計(検出波長:230Nm)
カラム:ULTRONES−OVM(4.6×150mm,5μm)
移動相:アセトニトリル/0.02Mリン酸二水素カリウム=15/85(v/v’、%)
流速:1.0ml/分
【0022】
【数1】

(Pはベポスタチンまたはベポタスチンl−メンチルエステルのピーク面積であり、Pは(R)−異性体のそれぞれ相応するピーク面積を示し、いずれもクロマトグラム分析から得られた。)
【0023】
製造例1:4−ブロモブタン酸l−メンチルエステルの製造
1−メントール14.6g及びピリジン14.8mlを150mlのジクロロメタンに溶解させた後、それに塩化4−ブロモブチリル17.0gを20mlのジクロロメタンに溶解させて得た溶液を徐々に滴加し、前記混合物を室温で1時間攪拌した。前記反応混合物を100mlの水で洗浄し、減圧下で溶媒を除去して、オイル状の標題化合物27g(収率:97%)を得た。
H−NMR(DMSO−d,ppm):δ4.7(m,1H),3.5(t,2H),2.5(t,2H),2.2(m,2H),2.0(m,1H),1.9(m,1H),1.7(m,2H),1.5(m,1H),1.3(m,1H),1.1(m,3H),0.9(d,6H),0.7(d,3H).
IR(KBr,cm−1):2956,2928,2870,1729,1456,1370,1251,1205,1177,1129,984.
【0024】
製造例2:4−クロロブタン酸l−メンチルエステルの製造
l−メントール1.0g及びピリジン1.0mlを5.0mlのジクロロメタンに溶解させた後、それに塩化4−クロロブチリル 0.7mlを5.0mlのジクロロメタンに溶解させて得た溶液を徐々に滴加し、前記混合物を室温で1時間攪拌した。前記反応混合物を20mlの水で洗浄し、減圧下で溶媒を除去してオイル状の標題化合物1.6g(収率:99%)を得た。
H −NMR(DMSO−d,ppm):δ4.7(m,1H),3.6(t,2H),2.5(t,2H),2.1(m,2H),2.0(m,1H),1.9(m,1H),1.7(m,2H),1.5(m,1H),1.4(m,1H),1.2(m,3H),0.9(d,6H),0.8(d,3H).
IR(KBr,cm−1):2956,2929,2869,1729,1456,1386,1371,1308,1204,1177,1010,984,964,913.
【実施例】
【0025】
実施例1:ラセミ体(RS)−ベポタスチンl−メンチルエステル(式(II)の化合物)の製造
(RS)−4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジン24.0gを240mlのアセトンに溶解させた後、それに製造例1で得られた4−ブロモブタン酸l−メンチルエステル27.0g及び KCO18.3gを順次に加え、前記混合物を7時間還流させた。反応混合物を濾過して不溶性固体を除去した後、ろ液から減圧下で溶媒を除去してオイル状の標題化合物42.0g(収率99%)を得た。
H−NMR(DMSO−d,ppm):δ8.5(m,1H),7.7(t,1H),7.5(d,1H),7.4(d,2H),7.3(m,2H),7.2(m,1H),5.6(s,1H),4.7(m,1H),3.5(br.s,1H),2.7(m,2H),2.3(m,4H),2.1(m,1H),2.0〜1.6(m,11H),1.5(m,1H),1.4(m,1H),1.2(m,3H),0.9(d,6H),0.7(d,3H).
IR(KBr,cm−1):2952,2869,2810,1727,1588,1489,1468,1455,1370,1187,1086,984,807,768,749.
【0026】
実施例2:ラセミ体(RS)−ベポタスチンl−メンチルエステル(式(II)の化合物)の製造
製造例2で得られた4−クロロブタン酸l−メンチルエステル1.0g及びヨウ化ナトリウム1.25gを10mlのメチルイソブチルケトンに加え、前記混合物を5時間還流させた。その結果得られた混合物に、(RS)−4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジン1.0g及び炭酸カリウム1.7gを順次に加えて1時間還流させた。次いで、生成された反応混合物に水15ml及び酢酸エチル30mlを加えて抽出した。それから有機層が分離された後、減圧下で濃縮してオイル状の標題化合物1.8g(収率:99%)を得た。
【0027】
実施例3:ベポタスチンl−メンチルエステル・N−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸塩(式(III)の化合物)の製造
実施例1で得られた(RS)−ベポタスチンl−メンチルエステル90.0gを900mlの酢酸エチルに溶解させた後、それにN−ベンジルオキシカルボニルl−アスパラギン酸塩45.7gを添加して得られた混合物を室温で12時間攪拌した。それから形成された固体沈殿物を濾過して乾燥させて白色結晶の標題化合物48.2g(収率:71%、光学純度:89.7%)を得た。
前記で得た化合物45.0gを450mlの酢酸エチルに加えた後、得られた混合物を加熱して完全に溶解させた。前記溶液を室温に徐々に冷却し、12時間攪拌して固体沈殿を誘導した。前記固体を濾過し乾燥させて白色結晶の標題化合物39.2g(収率:87%、光学純度:96.7%)を得た。
前記で得た粗生成物36.0gを前記工程を繰り返すことによって、酢酸エチルから再結晶化して白色結晶の標題化合物32.8g(収率91%、光学純度:99.5%)を得た。
比旋光度:[α]24 −15.2(c=1.0、MeOH)
融点:108〜110℃(分解)
H−NMR(DMSO−d,ppm):δ8.5(d,1H),7.8(t,1H),7.5(d,1H),7.4〜7.2(m,10H),7.2(m,1H),5.6(s,1H),5.0(s,2H),4.5(m,1H),4.1(m,1H),3.5(br.s,1H),2.9(br.m,2H),2.6〜2.3(m,5H),2.2(t,2H),1.9〜1.6(m,11H),1.5(m,1H),1.4(m,1H),1.0(m,3H),0.9(d,6H),0.7(d,3H).
IR(KBr,cm−1):3412,2956,2928,2870,1725,1592,1491,1455,1435,1389,1227,1191,1068,960,772,696,673.
【0028】
実施例4:ベポタスチンl−メンチルエステル・N−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸塩(式(III)の化合物)の製造
実施例1で得られた(RS)−ベポタスチンl−メンチルエステル90.0gを900mlの酢酸エチルに溶解させた後、それにN−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸45.7gを添加して得られた混合物を溶媒の沸点温度で加熱して溶解させた。前記溶液を室温に徐々に冷却し、12時間攪拌して固体沈殿を誘導した。前記固体を濾過し、乾燥して白色結晶の標題化合物47.5g(収率:70%、光学純度:95.2%)を得た。
【0029】
実施例5:ベポタスチンl−メンチルエステル・ N−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸塩(式(III)の化合物)の製造
実施例1で得られた(RS)−ベポタスチンl−メンチルエステル90.0gを900mlの酢酸エチルに溶解させた後、それにN−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸45.7gを添加して溶媒の沸点温度で加熱して溶解させた。得られた溶液を室温に徐々に冷却し、それに実施例3で得たベポタスチンl−メンチルエステル・N−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸塩0.5gを添加して12時間攪拌した。生成された沈殿物を濾過し乾燥して白色結晶の標題化合物49.5g(収率:73%、光学純度:95.3%)を得た。
【0030】
実施例6:ベポタスチンl−メンチルエステル(式(IV)の化合物)の製造
実施例3で得られたベポタスチンl−メンチルエステル・N−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸塩30gを300mlの酢酸エチル及び200mlの水と混合した後、得られた混合物のpHを飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で8.0に調整して相分離を誘導した。次いで、有機層を分離して、それから減圧下で溶媒を除去してオイル状のベポタスチンl−メンチルエステル19.5g(収率:98%、光学純度:99.5%)を得た。
H−NMR(DMSO−d,ppm):δ8.5(m,1H),7.7(t,1H),7.5(d,1H),7.4(d,2H),7.3(m,2H),7.2(m,1H),5.6(s,1H),4.7(m,1H),3.5(br.s,1H),2.7(m,2H),2.3(m,4H),2.1(m,1H),2.0〜1.6(m,11H),1.5(m,1H),1.4(m,1H),1.2(m,3H),0.9(d,6H),0.7(d,3H).
IR(KBr,cm−1):2953,2869,2811,1728,1588,1489,1469,1456,1434,1370,1253,1188,1108,1086,1015,984,807,768,749,615.
【0031】
実施例7:ベポタスチンの製造
実施例6で得られたベポタスチンl−メンチルエステル15.0gを50mlのエタノールと50mlの水の混合物に溶解させた後、それに水酸化ナトリウム3.4gを加え、得られた混合物を室温で10時間攪拌した。水を加えた後、得られた混合物をエチルエーテルで洗浄し、前記水溶液に30mlの3N塩酸を加え、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層から減圧下で、溶媒を除去した。その結果、発泡状の標題化合物10.2g(収率:92%、光学純度:99.5%)を得た。
H−NMR(CDCl,ppm):δ8.6(d,1H),7.7(t,1H),7.4(d,1H),7.4〜7.2(m,5H),5.6(s,1H),3.8(br.s,1H),3.0(t,2H),2.5(m,2H),2.3(m,2H),1.9(m,4H).
【0032】
実施例8:(S)−ベポタスチンベンゼンスルホン酸塩の製造
実施例7で得たベポタスチン4.0gを40mlのアセトニトリルに溶解させた後、それにベンゼンスルホン酸一水和物 1.5gを加えた。その結果得られた混合物に、米国特許第6,307,052号に記述された方法により得たベポタスチンベンゼンスルホン酸塩0.05gを加えて室温で12時間攪拌した。生成された固体を濾過して微白色結晶性粉末の標題化合物3.0g(収率:64%、光学純度:99.5%)を得た。
融点:161〜163℃
水分:0.2%(カール・フィッシャー水分測定法)
H−NMR(DMSO−d):δ9.2(bs,1H),8.5(d,1H),7.8(t,1H),7.6(m,3H),7.4(m,4H),7.3(m,4H),5.7(d,1H),3.7(bs,2H),3.3(bs、3H),3.1(bs,2H),2.3(t,2H),2.2(m,1H),2.0(m,1H),1.8(m,3H),1.7(m,1H).
IR(KBr,cm−1):3422,2996,2909,2735,2690,2628,1719,1592,1572,1488,1470,1436,1411,1320,1274,1221,1160,1123,1066,1031,1014,996,849,830,771,759,727,693,612、564.1.
【0033】
実施例9:(S)−ベポタスチンカルシウム塩の製造
実施例7で得たベポタスチン4.0gを2.2mlの5N水酸化ナトリウム水溶液及び20mlの水と混合した後、それに塩化カルシウム1.6gを20mlの水に溶解させて得た溶液を徐々に滴加して得られた混合物を室温で12時間攪拌した。生成された固体を濾過して白色結晶性粉末の標題化合物3.62g(収率:86%、光学純度:99.5%)を得た。
水分:4.4%(カール・フィッシャー水分測定法、二水和物の理論値4.23%)
融点:238〜240℃(分解)
H−NMR(DMSO−d,ppm):δ8.4(d,1H),7.8(t,1H),7.5(d,1H),7.4(m,4H),7.2(t,2H),5.6(s,1H),3.5(m,1H),2.6(m,2H),2.2(t,2H),1.9(m,4H),1.8(m,2H),1.6(m,4H).
IR(KBr,cm−1):3338,2945,2825,1589,1562,1490,1471,1432,1412.9,1308,1116,1092,1061,1014,994,808,776,750.
【0034】
実施例10:ラセミ体(RS)−ベポタスチンl−メンチルエステル(式(II)の化合物)の製造
実施例5で沈殿物を濾過した後、得られたろ液に水600mlを加えた後、得られた混合物のpHを炭酸水素ナトリウムで8.0に調整した。次いで、それから有機層を分離して濃縮して、オイル状の(R)−異性体が豊富なベポタスチンl−メンチルエステル57g((R)−異性体:(S)−異性体 =76:24)を得た。
前記で得た(R)−異性体が豊富なベポタスチンl−メンチルエステルを60mlの酢酸に溶解させて3時間還流させてから、それに500mlの水及び500mlの酢酸エチルを加えた。それから有機層を分離して、水及び飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄した後、減圧下で濃縮してオイル状の標題化合物51g(収率:90%、(S)−異性体:(R)−異性体 =49.9:50.1)を得た。
【0035】
実施例11:ベポタスチンl−メンチルエステル・N−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸塩(式(III)の化合物)の製造
実施例10で得られた(RS)−ベポタスチンl−メンチルエステル30.0gを300mlの酢酸エチルに溶解させた後、それにN−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸15.2gを加え、得られた混合物を溶媒の沸点温度で加熱して溶解させた。前記溶液を室温に徐々に冷却し,12時間攪拌して固体沈殿を誘導した。前記固体を濾過し乾燥して白色結晶の標題化合物15.4g(収率:68%、光学純度:95.6%)を得た。
【0036】
本発明を前記具体的な実施例によって記述したが、添付された特許請求の範囲により、定義された本発明の範囲内において、当該分野における熟練者が本発明を多様な変形及び変化させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)(RS)−4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジンを、塩基存在下で有機溶媒中において、ハロがクロロ、ブロモ、またはヨウ素である4−ハロブタン酸l−メンチルエステルと反応させて式(II)の(RS)−ベポタスチンl−メンチルエステルを生成する段階、
2)式(II)の化合物を、N−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸と有機溶媒中で反応させて式(III)のベポタスチンl−メンチルエステル・N−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸塩の選択的沈殿を誘導する段階、
3)段階2)で形成された沈殿物を濾過して式(III)の化合物を単離する段階、
4)式(III)の化合物を塩基で処理して式(IV)のベポタスチンl−メンチルエステルを遊離させる段階、及び
5)塩基存在下で式(IV)の化合物を加水分解させる段階、
を含む、式(I)のベポタスチンを製造する方法。
【化1】

【請求項2】
前記段階1)の溶媒が、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、及び N,N−ジメチルホルムアミドからなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記段階1)で用いられる4−ハロブタン酸l−メンチルエステルの量が、(RS)−4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジンに対し1〜1.5当量である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記段階1)で用いられる塩基が、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、及び炭酸水素ナトリウムからなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記段階2)で用いられる有機溶媒が、アセトニトリル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、及びジエチルエーテルからなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記段階2)で用いられる N−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸の量が、(RS)−ベポタスチンl−メンチルエステルに対し0.5〜2.0当量である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記段階4)で用いられる塩基が、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記段階4)が有機溶媒と水の混合物中でpH7.5〜9.0範囲内で行われる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記有機溶媒が、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、及びジエチルエーテルからなる群から選ばれる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記段階5)で用いられる塩基が、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記段階5)がメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル、及びテトラヒドロフランからなる群から選ばれた有機溶媒と水の混合物中で行われる請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記段階3)で生成されたろ液を塩基で処理して(R)−異性体が豊富なベポタスチンl−メンチルエステルを回収する段階、及び前記回収された物質を酸で処理して式(II)のラセミ体(RS)−ベポタスチンl−メンチルエステルを得る段階をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において中間体として用いられる式(II)の(RS)−ベポタスチンl−メンチルエステル。
【化2】

【請求項14】
請求項1に記載の方法において中間体として用いられる式(III)のベポタスチンl−メンチルエステル・N−ベンジルオキシカルボニルL−アスパラギン酸塩。
【化3】

【請求項15】
請求項1に記載の方法において中間体として用いられる式(IV)のベポタスチンl−メンチルエステル。
【化4】


【公表番号】特表2010−529187(P2010−529187A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512062(P2010−512062)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際出願番号】PCT/KR2008/003161
【国際公開番号】WO2008/153289
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(599139534)ハンミ ファーム. シーオー., エルティーディー. (56)
【Fターム(参考)】