説明

ベランダ用避難装置

【課題】年齢や体力に関わらず、誰にでも避難梯子に安全に乗り移る体勢を取ることができる避難扉であり、緊迫した精神状態でも不安や恐怖心を軽減する方策が施され、平時にも危険防止策が講じられ、ロック機能を備えることができ、ベランダの空間や建物の外観を阻害しない物の提供。
【解決手段】脱出扉を屋外前方に水平に押し出す形状にすることにより、体を持ち上げたり、反転するなど難しい動作をすることなく、前を向いた状態で前進して屋外に移動することが出来るようにした。これによりお年寄りや子供等、体力や運動能力に関係なく誰にでも簡単に避難梯子に乗り移ることが出来る。ロック機能を備えることができ、危険防止策が講じられ安全性の高い避難用押し出し式脱出扉とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外壁やベランダ等の壁に設置される内部に避難用伸縮梯子を備えた押し出し式の脱出扉の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の避難梯子やその設置のための構造は、ベランダに開口部を設け、その開口部をドア状に形成して180度開き、ドアの内側に収納した避難梯子を伸ばして乗り移るものが提供されている(特許文献1)。
【0003】
また、ベランダ壁に四角い開口部を設け、内側に避難梯子を収納し、非常時に伸張して、脱出可能にするものも提供されている(特許文献2)。
【0004】
同様にベランダ床面に開口部を設け床下に避難梯子を収納し、非常時に伸張して、脱出可能にするものも提供されている(特許文献3)。
【0005】
特許文献1では、脱出時に開口部のドアを180度開き、ドアの内側に収納してある避難梯子を伸ばして乗り移るが、梯子の伸張操作をするには、ある程度の身長が無ければ出来ない。また、ベランダ上部にある手摺りを掴みながら、足場や防護柵の無い屋外に体を反転させ、足を横桟部に移すという動作が必要となる。一見容易に行える様に思われるが、体を屋外に出すことは、緊急時とは言え、不安や恐怖心が増大すると推測される。更に、この状況下でお年寄りや子供など体力的に劣っている人が果たして、素早く操作を行い安全に乗り移ることが出来るか問題であり、危惧されるものである。
【0006】
特許文献2では、脱出時には、後ろ向きで四つん這いになり足から外に体を出して足場が見えない状態で、梯子の横桟部を手探り状態で探していかなければならない。また、最終的に体を外に出すまで開口部床面部に腹部を乗せたり床面や開口部の縁を掴まえるなど、体を誘導する為の安全掴まり部が無く、無理な体勢が強いられる。
【0007】
特許文献3では、平常時には床面として利用することから、開口部上部には物を置くことができず、空間利用が制限される。また、寒冷地や降雪地域では、雨水や雪解け水が床面で凍結し開口部が塞がれる恐れがあることから、寒冷地には不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公昭63−94202号公報
【特許文献2】特開2002−88904号公報
【特許文献3】特開2002−13192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような点に鑑みて成されたものであり、設置される場所の空間利用を制限されることなく、年齢や体力に関わらず、誰にでも避難梯子に安全に乗り移る体勢を取ることが出来、緊迫した精神状態でも、不安や恐怖心を軽減して避難が出来るものであり、平常時にも危険防止策を備える事の出来る建築物壁面用脱出扉を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の建築物壁面用脱出扉においては、建築物の壁やベランダ等の壁の一部に設けられる非常口となる開口部を設け、開口部の枠に伸縮式のアームで連結し、内部に伸縮式の避難梯子と非常時の移動の助けとなる複数の掴まり部やステップ等を備えた扉を屋外に水平に押し出し式に取付け、開口部の内側には蓋体となる扉を設け、この蓋上部等に平常時に開かないようにするロック機能を持たせてもよい。
【0011】
この構造では、押し出し扉と内側扉のそれぞれの表面には、それぞれ外壁材や内壁材と同一の素材を使用することができ、非常時の脱出扉として使用しない平常時においては、その表面は周囲の壁とフラットかあるいはフラットに出来るだけ近い状態に設けられ、内側扉取手部は内側に凹む形あるいは凹んだ箇所から引き出す形の構造としベランダ空間を阻害しない。また、3図で扉蓋上部に、幼児等のいたずらや危険防止のためにロック機能を備えた例を示している。
【0012】
本発明は、具体的には以下の構成を有する。
【0013】
(1)建築物の壁やベランダ等の壁の一部に設けられる非常口となる開口部と、
開口部の枠に伸縮式のアームで連結し、内部に伸縮式の避難梯子と非常時の移動の助けとなる複数の掴まり部及びステップを備え、外側に水平に押し出し式に取付けられた扉と、
開口部の内側に設けられた、蓋体となる扉、
災害時等には、蓋体となる内側扉を開け、押し出し扉を水平に押し出し、伸縮性の梯子を下におろし、体の向きを変えることなく、前向きの体勢で避難梯子へ移動し、避難することができることを特徴とする建造物壁面用脱出扉。
【0014】
(2)前記の押し出し扉と内側扉の表面には、それぞれ外壁材や内壁材と同一の素材を使用できる上記(1)に記載の建造物壁面用脱出扉。
【0015】
(3)前記の複数の安全掴まり部と足場ステップを付すことを特徴とする上記(1)または(2)記載の建造物壁面用脱出扉。
【0016】
(4)前記の内側扉は平常時にはそれぞれ設置される場所の壁に対してフラットに設けられ、かつ開閉のための取手部は内側に凹む形にしてベランダ空間を阻害しない上記(1)〜(3)のいずれかに記載の建造物
壁面用脱出扉。
【0017】
(5)前記の押し出し扉は、平常時にはそれぞれ設置される場所の壁に対してフラットかあるいはフラットに出来るだけ近い状態で設けられる上記(1)〜(4)のいずれかに記載の建造物壁面用脱出扉。
【発明の効果】
【0018】
本発明の建築物壁面用脱出扉は、建築物の外壁やベランダ壁等を水平に外側に押し出すことにより、前向きの状態で安全に素早く屋外に出ることが出来る。また、移動体勢に即した足場ステップや体の支えとなる安全掴まり部を複数配置することにより、緊迫した精神状態でも、不安や恐怖心を軽減して避難が出来るものであり、年齢や体力に関係なく安全に乗り移ることが出来る。
【0019】
この構造において、扉下部の伸縮アームの内側に足場となる足場ステップGを付すことにより、ベランダの縁から一歩踏み出し、開口部を跨ぎ直立姿勢で扉に近づくことが出来、避難梯子の伸張操作を安定した体勢で行うことが出来る。
【0020】
この構造において、上下の伸縮アーム間の中間より上の高さに安全用掴まり部F1を付けるこ
とで、ベランダ手摺り下を低姿勢でくぐり抜ける際に、腕で上体を支えて前進出来るようした。また、上部伸縮アーム中央部に安全用掴まり部F2を付し、立ち上がる際に体を支えられるようにした。これにより脚力の弱い人でも容易に上体を引き上げられる。アーム自体も手摺りとして支えとする事が出来るものである。
【0021】
この構造において、押出した扉の上部に立位姿勢で掴まることの出来る安全掴まり部F3を付し
ている。これにより、片方の手でF3を掴みながら扉内部に設置した避難梯子を伸張させ、操作後もF3に掴まり低姿勢をとることなく直立姿勢から、避難梯子の横桟部を確認して足を乗せ降下することが出来る。
【0022】
この構造において、伸縮アームの中間連結部に、上下を繋ぐ縦棒Hを配置し上下のアームを同時に稼動させることが出来るようにすると共に、防護柵の働きも果たす。
【0023】
この構造において、防護柵や体を支える安全掴まり部を移動状態に即して複数配置したことにより非常時の緊迫した状況下でも、不安や恐怖感を軽減することが出来る。
【0024】
この構造において、押し出し扉と内側扉のそれぞれの表面には、それぞれ外壁材や内壁材と同一の素材を使用し、また周囲とフラットあるいはフラットに近い状態にすることで、設置される空間利用を制限せず、また外観上の美しさを保てる。
【0025】
この構造において、内側扉は、平常時は蝶番で両開きの扉とし、かつ開閉のための取手部は内側に凹む形あるいは凹んだ箇所から引き出す形にしてベランダ空間を阻害しない物とした。
【0026】
このロック構造において、押し出し扉上部を2つに分け蝶番で連結し上方向に開けられるL字状の蓋にすることでL字部分が内側扉の上に覆いかぶさることで平時は開かない構造を持つ、3図はL字状の蓋の右側取手部の外側にロック機能を持つバーを付し、取手とバーを一緒に握りロックを解除し、上に持上げることでL字蓋の内
側扉のロックを解除する例であり、これらにより子供のいたずらや誤作動により簡単に開かない構造にして安全性を高めることが可能である。
【0027】
本発明の建築物壁面用脱出扉の設置場所は、ベランダ正面だけでなく両側面及び、建築物の外壁にも取付けることが出来るものであり、これまで避難手段を持たなかった一戸建て住宅等においても安全な避難経路を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】脱出扉を押し出し、伸縮式非難梯子を伸張した図である。
【図2】脱出扉を開いた状態をベランダ内部から見たもので、左ベランダ壁面及び手摺り部を取り除いて記した。
【図3】ロック機能の例である。ロックバーMを取手Kと一緒に握りながら上に持上げることでロックが解除され、内側扉Iも開けられる構造である。
【図4】扉収納時の内側から見た図で足場ステップGと内側扉を除いて記してある。
【図5】収納時の内側から見た図でステップG及び、L字型ロック蓋E、取手K、ロックバーMを記してある。
【図6】伸縮アームの構造である。伸縮アーム大Cは、可動軸側の強度を高める為に、四角柱に形成し、連結側は内側に伸縮アーム小Dを屈折させる為にコの字型である。
【図7】アームの屈折時の図である。
【図8】扉外壁はめ込み溝の構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下図面を基に本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0030】
図1は、本発明に係る脱出用扉を建築物のベランダ壁に取付け、扉を屋外に押し出した状態で、
避難梯子を伸張させ避難経路を確保した実施例である。
災害時には、内側の扉を開け、枠に取り付けられている伸縮可能なアームを伸ばし脱出用扉を水平に押し出して開き、内部に複数設けた掴まり部及び、足場ステップにより上体を支えながら安全な体勢で、扉内側に収納している伸縮性避難梯子を降ろし、前向きの体勢で素早く乗り移り降下避難することが可能である。
【0031】
図2は、本発明の脱出扉を押し出し、避難梯子を開放した際の透視図である。建築物の外壁やベランダ等の壁に非常口となる開口部を設け、開口部の枠に伸縮式のアームで連結し、内部に伸縮式避難梯子を備えた押し出し式の扉を取り付け、押し出し式扉の取り付けた内側には扉を設け、内側
扉は平常時の幼児等のいたずらや事故防止のために図3のロック機能例のように危険防止の方策を
取ることができる。
【0032】
図2は、本発明の脱出扉を開放した場合の図であるが、伸縮アームで取り付けられた伸縮性の避難梯子を備えた扉を押し出し、避難梯子を展開する際に、作業がしやすいように、また安全に避難梯子へ移動ができるように複数の安全掴まり部や扉に近づく為の足場ステップを設ける。
【0033】
本発明に係る建築物壁面用脱出扉においては、沿岸地域への設置も考えられることから、塩害による腐食にも強いアルミニウム合金素材やステンレス鋼等で扉フレームや伸縮アーム及び、接続する金具類にも錆にくい性質を持つ素材の幾つかを適宜組み合わせ強固に形成し、軽量且つ強度と耐久性を兼ね備えた物とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
2階、3階程度の高さを持つ建築物には、非常階段や避難用具が備えられていない建物が殆どであり、本発明を提供することで、災害時等から身を守るための避難経路を備えた安全性の高い建築物として活用する事が出来ることから、利用価値は高いものである。
【符号の説明】
【0035】
A 押し出し扉
B 押し出し扉受け枠
C 伸縮アーム大
D 伸縮アーム小
E L字型ロック蓋
F1 中段安全掴まり部
F2 アーム中央安全掴まり部
F3 扉上部安全掴まり部
G 足場ステップ
I 扉内側扉I扉内側扉
J 足場ステップ固定金具
K L字型ロック解除蓋取手
L 伸縮避難梯子
M ロック解除バー及びロック爪設置例
N ロック受け金具
O ロックバー金具固定台
P 外壁はめ込み溝












【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の壁やベランダ等の壁の一部に設けられる非常口となる開口部と、
開口部の枠に伸縮式のアームで連結し、内部に伸縮式の避難梯子と非常時の移動の助けとなる複数の掴まり部及びステップを備え、外側に水平に押し出し式に取付けられた扉と、
開口部の内側に設けられた、蓋体となる扉、
災害時等には、蓋体となる内側扉を開け、押し出し扉を水平に押し出し、伸縮性の梯子を下におろし、体の向きを変えることなく、前向きの体勢で避難梯子へ移動し、避難することができることを特徴とする建造物壁面用脱出扉。
【請求項2】
前記の押し出し扉と内側扉の表面には、それぞれ外壁材や内壁材と同一の素材を使用できる請求項1に記載の建造物壁面用脱出扉。
【請求項3】
前記の複数の安全掴まり部と足場ステップを付すことを特徴とする請求項1または2記載の建造物壁面用脱出扉。
【請求項4】
前記の内側扉は平常時にはそれぞれ設置される場所の壁に対してフラットに設けられ、かつ開閉のための取手部は内側に凹む形にしてベランダ空間を阻害しない請求項1〜3のいずれかに記載の建造物壁面用脱出扉。
【請求項5】
前記の押し出し扉は、平常時にはそれぞれ設置される場所の壁に対してフラットかあるいはフラットに出来るだけ近い状態で設けられる請求項1〜4のいずれかに記載の建造物壁面用脱出扉。


















(8)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−122400(P2011−122400A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282733(P2009−282733)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【特許番号】特許第4584345号(P4584345)
【特許公報発行日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(309037158)
【Fターム(参考)】