説明

ベルトコンベアのベルトクリーナ

【課題】ベルト表面の付着物の性状が変化しても付着物を確実に除去することのできるようにしたベルトコンベアのベルトクリーナを提供する。
【解決手段】コンベアフレームにはベルト幅方向に延びる第1のクリーナ軸を回転可能に軸支し、第1のクリーナ軸には薄板状、好ましくは先端が鋭角になった薄板状の掻き取りクリーナ25を取付けるとともに、第1の操作アーム28を取付ける。第1のクリーナ軸にはベルト幅方向に延びる第2のクリーナ軸を第2の操作アーム35によって第1のクリーナ軸廻りに回転可能に連結し、第2のクリーナ軸には厚板状、好ましくは先端が平坦面になった厚板状の拭き取りクリーナ40を取付ける。第1の操作アームを回動操作して掻き取りクリーナの先端縁を、第2の操作アームを第1のクリーナ軸廻りに回動操作して拭き取りクリーナの先端面を各々ベルト表面に摺接させ、ベルト表面の付着物が掻き取り、拭き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はベルトコンベアのベルトクリーナに関し、特にベルト表面の付着物の性状に関係なく付着物を確実に除去できるようにしたクリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
ベルトコンベアは現在普及している輸送手段のなかで最も低価格の輸送機であり、各種の工場や設備で多く採用されているが、輸送物が粉状の場合や粉状物を含む場合にはベルト表面の水分等に起因して粉状物がコンベアベルトの表面に付着し、ベルトリターン側で落下飛散すると、環境を悪化させる。
【0003】
また、ベルトコンベアのベルト表面に多量の水分が付着して粉状物が泥状になった場合、あるいは輸送物が泥状物の場合、輸送物がベルトの表面に強固に付着し、ベルトの清掃等の後処理も非常に煩雑である。
【0004】
そこで、チップ式クリーナやスクレーパ式クリーナをコンベアベルトのヘッド近傍やベルトリターン側に設け、ベルト表面の付着物を掻き取るようにしたベルトクリーナが提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【特許文献1】特開2003−312832号公報
【特許文献2】特開2003−276823号公報
【特許文献3】特開2003−182837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のベルトクリーナではチップやスクレーパによってベルト表面の付着物を掻き取るようにしているので、種類の異なる様々な輸送物を輸送しあるいはベルトコンベアの運転状況が変化してベルト表面の付着物の性状が変化すると、ベルト表面に付着物が残ってしまうことがあった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑み、ベルト表面の付着物の性状が変化しても付着物を確実に除去することのできるようにしたベルトコンベアのベルトクリーナを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明に係るベルトコンベアのベルトクリーナは、ヘッド間に無端状に張設されたベルトによって輸送物を輸送するようにしたベルトコンベアにおいて、固定構造部分(例えば、コンベアフレーム)にはベルト幅方向に延びる第1のクリーナ軸が軸受によって回転可能に軸支され、該第1のクリーナ軸には薄板状の掻き取りクリーナが取付けられるとともに、第1の操作アームが取付けられ、該第1の操作アームが回動操作されることにより上記掻き取りクリーナの先端縁がベルト表面に摺接されてベルト表面の付着物が掻き取られるようになっている一方、上記第1のクリーナ軸にはベルト幅方向に延びる第2のクリーナ軸が第2の操作アームによって上記第1のクリーナ軸廻りに回転可能に連結され、上記第2のクリーナ軸には厚板状の拭き取りクリーナが取付けられ、上記第2の操作アームが上記第1のクリーナ軸廻りに回動操作されることにより上記拭き取りクリーナの先端面がベルト表面に摺接されてベルト表面の付着物が拭き取られるようになっていることを特徴とする。
【0008】
本発明の特徴の1つは薄板状の掻き取りクリーナの先端縁をベルト表面に摺接させてベルト表面の付着物を掻き取る一方、厚板状の拭き取りクリーナの先端面をベルト表面に摺接させてベルト表面の付着物を拭き取るようにした点にある。
【0009】
これにより、掻き取りクリーナによってベルト表面の付着物を荒取りすることができ、残ったベルト表面の付着物を拭き取りクリーナによって拭き取ることができるので、ベルト表面の付着物の性状が例えば泥状から乾燥状態に、逆に乾燥状態から泥状に変化しても、付着物を確実に除去することができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は第1のクリーナ軸に掻き取りクリーナを設け、第2のクリーナ軸に拭き取りクリーナを設け、第2のクリーナ軸を第1のクリーナ軸に連結し、第1のクリーナ軸をコンベアフレームに軸支するようにした点にある。
【0011】
これにより、第1のクリーナ軸をコンベアフレームに軸支するだけでベルトクリーナをベルトコンベアにセットすることができる。また、掻き取りクリーナ及び拭き取りクリーナの両方をベルトコンベアにセットできるだけでなく、掻き取りクリーナ又は拭き取りクリーナの一方だけを独立してベルトコンベアにセットすることができる。
【0012】
本発明のさらに他の特徴は第1、第2の操作アームを回動操作することによって掻き取りクリーナ及び拭き取りクリーナをベルト表面に摺接させるようにした点にある。
【0013】
これにより、掻き取りクリーナ及び拭き取りクリーナをベルト表面に最適な圧力でもって摺接させることができ、ベルトを傷つけることなくベルト表面の付着物を確実に除去できる。
【0014】
第1、第2の操作アームは例えばギアや流体シリンダ等を用いて回動操作してもよいが、構造が複雑になる。そこで、第1の操作アーム及び第2の操作アームをチェーン又はロープ(例えば、ワイヤーロープ)によって引っ張ることによってこれらの操作アームを回動操作するようにするのがよい。
【0015】
特に、チェーン又はロープの途中にばね部材(例えば、コイルばね)を介設すると、ばね部材の弾性によって第1、第2の操作アームを回動付勢することができ、ベルトの変動に対して掻き取りクリーナ及び拭き取りクリーナを追従させることができる。
【0016】
チェーンを用いる場合、固定構造部分に挿通穴を有する係止具を取付けら、この係止具の挿通穴にチェーンを挿通して引っ張り、チェーンを構成するリングを挿通穴の周縁に引っ掛けるように構成すると、ベルトコンベアの作動中に第1の操作アーム及び第2の操作アームのベルト表面に対する摺接力を調整することができる。
【0017】
掻き取りクリーナは薄板状であれば先端縁をベルト表面に摺接させることができるが、ベルト表面の付着物をより確実に掻き取る上で、先端を鋭角にした薄板状とするのが好ましい。拭き取りクリーナは厚板状であれば先端面をベルト表面に摺接させることができるが、ベルト表面の付着物をより確実に拭き取る上で、先端が平坦面とした厚板状とするのが好ましい。
【0018】
また、掻き取りクリーナは薄板状になっていれば特にその材質は限定されず、例えば先端縁を硬質チップとしたクリーナを用いることも可能である。しかし、硬質チップを用いると、硬質チップによってコンベアベルト表面の傷つきやコンベアベルトの縦割き、さらにはコンベアベルトの表面摩耗の原因となる。そこで、掻き取りクリーナにはポリエチレン(例えば、超高分子量ポリエチレン)やポリウレタン、あるいは耐熱耐摩耗性のゴムを用いるのがよい。
【0019】
拭き取りクリーナは厚板状になっていれば特にその材質は限定されない、例えば、耐熱耐摩耗性ゴム(例えば、クロロプレンゴム)やポリエチレン(例えば、超高分子量ポリエチレン)等を用いることができるが、付着物を拭き取るという動作を考慮すると、耐摩耗性のあるスポンジ(例えば、ゴム製スポンジ、ポリエチレン製スポンジ等)が好ましい。しかし、スポンジでは剛性が不足し、ベルトの進行に伴って拭き取りクリーナの倒れ込みが発生するおそれがある。
【0020】
そこで、スポンジの入り側(進行方向上流側)に1〜5mm程度の薄板、例えばポリエチレン製の薄板やゴム製の薄板を接着するのがよい。かかる構造にすると、ベルト表面の付着物が乾燥物の場合にはスポンジ先端面とベルト表面との間で付着物同士が相互に干渉しあって確実に拭き取られる一方、ベルト表面の付着物の水分が多い場合には上流側の薄板がスクレーパ(掻き取りクリーナ)として機能し、ベルト表面の付着物が掻き取られつつ拭き取られ、こうして付着物を確実に除去することができる。
【0021】
即ち、掻き取りクリーナは合成樹脂又はゴムで製作されている一方、拭き取りクリーナは合成樹脂製又はゴム製のスポンジで製作されているのがよく、さらには拭き取りクリーナはスポンジ製の厚板の上流側に合成樹脂製又はゴム製の薄板を積層して構成されているのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図9は本発明に係るベルトコンベアのベルトクリーナの好ましい実施形態を示す。図において、コンベアベルト10は前後のヘッド(なお、図1には一方のみを示す)11の間に無端状に張設され、駆動源(図示せず)によってヘッドが回転駆動されてコンベアベルト10が無端状に搬送されるようになっている。
【0023】
このコンベアベルト10のヘッド11近傍には本例のベルトクリーナ20が設けらている。このベルトクリーナ20において、固定構造部分である左右のコンベアフレーム(図示せず)にはL字状の取付け金具21が各々取付けられ、左右の取付け金具21には軸受22が取付けられ、左右の軸受22には第1のクリーナ軸23が水平方向に延びて回転自在に軸支されている。
【0024】
この第1のクリーナ軸23にはブラケット24によって掻き取りクリーナ25が取付けられ、掻き取りクリーナ25はポリエチレンを用いて先端が鋭角になった薄板状に製作されている。
【0025】
第1のクリーナ軸23の外端部には2つのリング26、27が外挿され、一方のリング27には第1の操作アーム28が固定され、第1の操作アーム28の先端にはフック29が取付けられ、フック29にはチェーン30が連結され、チェーン30の途中にはコイルばね31が介設され、又チェーン30は上方に引っ張られ、その他端はベルトコンベアの固定構造部分に取付けられた係止具32の挿通穴に挿通され、挿通穴の周縁にはチェーン30を構成するリングが係止され、これによって第1の操作アーム28は回動操作されて掻き取りクリーナ25が適切な摺接力でもってコンベアベルト10の表面に摺接されるようになっている。
【0026】
また、軸受22にはストッパ22Aが、リング26にはストッパ26Aが固定され、両ストッパ22A、26Aが当接することによって第1の操作アーム28の回動操作が規制されるようになっている。
【0027】
また、第1のクリーナ軸23にはリング33、34が外挿され、一方のリング34は回転自在とされ、このリング34には第2の操作アーム35が固定され、第2の操作アーム35の他端には軸受36が固定され、軸受36には第2のクリーナ軸38が挿入されてねじで締付け固定されている。
【0028】
この第2のクリーナ軸38にはブラケット39によって拭き取りクリーナ40が取付けられている。この拭き取りクリーナ40はスポンジ製の厚板40Aの上流側に樹脂製の薄板40Bを積層しこれらをスペーサ40Cとともにブラケット39内に挿入して構成され、スポンジ製の厚板40Aにはゴム樹脂製のスポンジが用いられ、樹脂製の薄板40Bにはポリエチレン製の薄板が用いられている。
【0029】
第2の操作アーム36の他端側にはフック37が取付けられ、フック37にはワイヤーロープ41が連結され、ワイヤーロープ41は上方に引っ張られ、滑車42で横方向に向けられ、ばねケース43に連結され、ばねケース43内にコイルばねが内蔵され、コイルばねにはストッパー44が連結され、ストッパー44にはチェーン45が連結され、チェーン45の他端は図7に示される係止具32と同様の係止具46によってベルトコンベアの固定構造部分に係止されており、こうして拭き取りクリーナ40の先端面が適切な摺接力でもってコンベアベルト10のリターン側に摺接されるようになっている。
【0030】
今、コンベアベルト10の表面に輸送物が付着し、これがヘッド11まで来ると、掻き取りクリーナ25の鋭角な先端縁によってコンベアベルト10の表面から掻き取られ、付着物の大部分が荒取りされる。
【0031】
コンベアベルト10がさらに進行すると、コンベアベルト10の表面に残った付着物が拭き取りクリーナ40の先端面に達する。コンベアベルト10の表面の付着物が乾燥している場合、付着物は拭き取りクリーナ40の先端面とコンベアベルト10の表面との間で相互に干渉しあい、コンベアベルト10の表面から拭き取られ、これによって付着物は確実に除去される。
【0032】
コンベアベルト10の表面の付着物が水分を含んで例えば泥状の場合、拭き取りクリーナ40の薄板40Bがスクレーパ(掻き取りクリーナ)として機能し、泥状の付着物をさらに掻き取った後、スポンジ製の厚板40Aによって拭き取るので、残った付着物を確実に除去することができる。
【0033】
また、ベルトコンベアを使用する状況によっては掻き取りクリーナ25又は拭き取りクリーナ40のいずれか一方のみを用いる必要がある。かかる場合、掻き取りクリーナ25をブラケット24から取り外すか、あるいは拭き取りクリーナ40を第2の操作アーム35ごと第1のクリーナ軸23から取り外せばよく、こうして掻き取りクリーナ25又は拭き取りクリーナ40のいずれか一方のみを独立して用いることもできる。
【0034】
また、ベルトコンベアの稼働中に掻き取りクリーナ25又は拭き取りクリーナ40の摺接力を調整する必要が生じた場合、チェーン30又は45を係止具32,45の挿通穴の周縁から外して弛めあるいは引っ張った後、そのリングを係止具32,45の挿通穴の周縁に引っ掛ければよい。
【0035】
図10は第2の実施形態を示し、図1ないし図9と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例では第1の操作アーム28のフック29にワイヤーロープ50の先端を引っ掛け、ワイヤーロープ50の途中を第2の操作アーム35のフック37に通した後、上方に引き上げ、滑車42で横方向に方向転換し、ばねケース43、ストッパー44及びチェーン45を経てベルトコンベアの固定構造部分に係止している。
【0036】
このように1本のワイヤーロープ50で第1、第2の操作アーム28、35を引っ張って回動操作するようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係るベルトコンベアのベルトクリーナの好ましい実施形態を示す概略構成図である。
【図2】上記実施形態を示す要部正面図である。
【図3】上記実施形態を示す概略斜視図である。
【図4】上記実施形態を示す分解斜視図である。
【図5】上記実施形態における掻き取りクリーナを示す図である。
【図6】上記実施形態における第1の操作アームの操作方法を示す図である。
【図7】上記第1の操作アームの操作方法におけるチェーンの係止構造を示す図である。
【図8】上記実施形態における拭き取りクリーナを示す図である。
【図9】上記実施形態における第2の操作アームの操作方法を示す図である。
【図10】第2の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
10 コンベアベルト 11 ヘッド
20 ベルトクリーナ 23 第1のクリーナ軸
25 掻き取りクリーナ 28 第1の操作アーム
30 チェーン 32 係止具
35 第2の操作アーム 38 第2のクリーナ軸
40 拭き取りクリーナ 40A スポンジ製厚板
40B ポリエチレン製薄板 41 ワイヤーロープ
45 チェーン 46 係止具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド間に無端状に張設されたベルトによって輸送物を輸送するようにしたベルトコンベアにおいて、
固定構造部分にはベルト幅方向に延びる第1のクリーナ軸が軸受によって回転可能に軸支され、該第1のクリーナ軸には薄板状の掻き取りクリーナが取付けられるとともに、第1の操作アームが取付けられ、該第1の操作アームが回動操作されることにより上記掻き取りクリーナの先端縁がベルト表面に摺接されてベルト表面の付着物が掻き取られるようになっている一方、
上記第1のクリーナ軸にはベルト幅方向に延びる第2のクリーナ軸が第2の操作アームによって上記第1のクリーナ軸廻りに回転可能に連結され、上記第2のクリーナ軸には厚板状の拭き取りクリーナが取付けられ、上記第2の操作アームが上記第1のクリーナ軸廻りに回動操作されることにより上記拭き取りクリーナの先端面がベルト表面に摺接されてベルト表面の付着物が拭き取られるようになっていることを特徴とするベルトコンベアのベルトクリーナ。
【請求項2】
上記第1の操作アーム及び第2の操作アームはチェーン又はロープによって引っ張られることによって回動操作されるようになっている請求項1記載のベルトコンベアのベルトクリーナ。
【請求項3】
上記チェーンが固定構造部分に取付けられた係止具の挿通穴に挿通されて引っ張られ、上記チェーンを構成するリングが上記挿通穴の周縁に引っ掛けられることにより、上記第1の操作アーム及び第2の操作アームのベルト表面に対する摺接力が調整されるようになっている請求項2記載のベルトコンベアのベルトクリーナ。
【請求項4】
上記掻き取りクリーナは先端が鋭角になった薄板状である一方、上記拭き取りクリーナは先端が平坦面となった厚板状である請求項1記載のベルトコンベアのベルトクリーナ。
【請求項5】
上記掻き取りクリーナは合成樹脂又はゴムで製作されている一方、上記拭き取りクリーナは合成樹脂製又はゴム製のスポンジで製作されている請求項1又は4記載のベルトコンベアのベルトクリーナ。
【請求項6】
上記拭き取りクリーナはスポンジ製の厚板の上流側に合成樹脂製又はゴム製の薄板を積層して構成されている請求項5記載のベルトコンベアのベルトクリーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−117396(P2006−117396A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307535(P2004−307535)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(591038428)株式会社洋行 (5)