説明

ベルト制御装置

本発明は、紙、板紙、薄葉紙、またはその他の繊維ウエブ(1)の生産および/または仕上げ機において、これらの紙、板紙、薄葉紙、またはその他の繊維ウエブ(1)を取り扱う装置に関する。この装置は、高曲げ剛性を有するエンドレス循環ベルト(2)を有し、このベルトが、ある巻き角(5)をもって回転自在に取り付けられた制御ローラー(3)に巻きつく。この制御ローラー(3)の少なくとも一方の端部が、ベルト張力の設定のために、調節ゾーン(7)に沿って移動可能であるように取り付けられる。このような装置では、ベルトの走行性は向上し、ベルト(2)の横方向への応力は、巻き角(5)が90度〜180度の間の角度であることと、巻き角(5)の二等分線(4)とほぼ直角をなす制御ローラー(3)の調節方向とにより最小化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、板紙、薄葉紙、またはその他の繊維ウエブの製造および/または仕上げ機において、それらの紙、板紙、薄葉紙、またはその他の繊維ウエブを取り扱うための装置に関する。この装置は、高曲げ剛性を有するエンドレス循環ベルトを備え、このベルトは、ある巻き角で回転可能に取り付けられた制御ローラーに巻きついており、ベルトの張力を設定するために、調節方向に沿って移動可能であるように制御ローラーの少なくとも一方の端部が取り付けられている。
【背景技術】
【0002】
このタイプの制御ローラーが長期にわたって知られており、ベルトの流れに影響を及ぼすこと、特にロール軸に平行なベルトの横方向への離脱を制限することに関して影響を及ぼすことを目的としている。
【0003】
ここでまず、特にベルト走行方向に対して直角に高曲げ剛性を有し、高曲げ応力に晒され、ベルトの寿命が短くなるベルトがある。
【0004】
さらに、ベルト走行方向に対して横方向に高剛性を有するベルトの場合、制御ローラー上でベルトがすべる危険性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、特にベルトの走行方向に対して横方向の、曲げ応力を可能な限り小さくしつつ、ベルトの走行性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記の目的は、巻き角を90度〜180度とし、制御ローラーの調節方向をこの巻き角の二等分線とほぼ直角にすることにより達成される。
【0007】
この場合、巻き角は、180度と、ベルトの制御ローラーに対する衝突および剥離間の角度との差に相当する。
【0008】
制御ローラーの巻きが比較的大きい結果として、より大きな摩擦力をベルトに対して伝えることもできるため、ベルトが制御ローラー上をすべる危険性が著しく軽減される。
【0009】
二等分線とほぼ垂直に装着部材を直線的に調節することにより、ベルト長の変化およびそれに関連する応力の増加を最小限にする。
【0010】
この場合、調節方向と二等分線との間の角度は60度から120度の間でなければならず、80度から100度の間が好ましく、さらに85度から95度の間がより好ましい。ベルトが厚く幅広になるにしたがって、調節方向は二等分線に対して垂直な角度を保ちやすくなる。これは、実質的にベルトの幅と厚みが影響するベルトの剛性によるものである。
【0011】
ベルト長の変化を制限するために、調節行程の長さは最大でも60mmとしなければならない。
【0012】
ベルトの幅と特定の要因に応じて、制御ローラーのベアリングを両方とも調節するか、あるいは一方だけを調節して他方を固定させたままにしておくと有利性があり得る。
【0013】
ベアリングを両方とも調節する場合は、反対方向に調節しなければならない。
【0014】
曲げ応力の問題があるので、装置には、特に、弾性率が100kN/mmより大きい、より好ましくは190kN/mmより大きいベルトを用いるのがよい。
【0015】
さらに、同様の理由で、装置には、幅2m超および/または厚み0.5mm超、より好ましくは厚み0.8mm超のベルトを用いるのがよい。
【0016】
特に、この装置は、ベルトがスチールベルトとして形成されれば、より高い効果を得られる。
【0017】
ベルトの使用において、このベルトが不浸透性であってもまた効果を得られる。
【0018】
この場合、ベルトが、ともに走行する支持部材に対して加圧部材によって押圧されると有利である。また、繊維ウエブが、単独でまたは1つ以上の機能性ベルトとともに、支持部材とベルトとの間を走行すると有利である。
【0019】
これにより、繊維ウエブの脱水または乾燥が可能となる。
【0020】
加圧部材が、加圧された流体で充填された固定加圧室によって形成されており、ここで加圧室がベルトに対して開放しかつ封止されていると、特に効果的な装置となる。
【0021】
加えて、支持部材は回転支持ロールによって形成されねばならない。この場合、制御ローラーを支持ロールの上流に配置しなければならず、制御ローラーから支持ロールまでのベルト長は、ベルトの全長の3分の1未満、より好ましくは4分の1未満となる。
【0022】
ベルトが制御ローラーおよび/または制御ローラーの上流または下流に配置された案内ロール上で滑らないようにするため、制御ローラーまたは案内ロールがロールカバーを有しているとよい。このロールカバーは、好ましくは0.2μ超の高い抵抗を有するゴム製のカバーであるのが好ましい。さらに、ロールカバーに溝があれば、より密着性をあげることができる。この場合、溝は軸に平行に配置するか、またはヘリングボーン形状でなければならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下の文脈において、実施形態を用いて本発明をより詳細に説明する。添付の図面は、本発明による装置全体の概略断面図である。
【0024】
図示されているのは、繊維ウエブ1を乾燥するための抄紙機の乾燥装置である。
【0025】
これは、円筒状の回転加熱支持ロールの形態にある支持部材8と、この支持ロールに巻きつけられた不浸透性のエンドレス循環ベルト2とによって形成される。
【0026】
繊維ウエブ1に加えて、2つの吸水機能ベルト(図示せず)が、ベルト2と支持ロールとによって形成された押圧リップを介して案内され、繊維ウエブ1とベルト2との間で走行する。
【0027】
ベルト2の巻きつき領域において、支持ロールと対向する側に、流体を充填した加圧室を有する、加圧フードの形態にある加圧部材9が配置される。
【0028】
この加圧室はベルト2に対してシールで封止されているので、ベルト2に向けて開放されている加圧室内の流体は、ベルト2を支持ロールの周面に向けて押圧する。
【0029】
この場合、ベルト2が流体で冷却され、吸水機能ベルトは強く縮合される。このようにして、支持ロールによる加熱により繊維ウエブ1から蒸発した水分は、機能ベルトを介して容易に発散される。
【0030】
加圧フードの上流および下流では、おのおの、案内ロール10がベルト2を支持ロールに押圧する。これによって、ベルト2と支持ロールとの間のニップの圧縮がもたらされ、ベルト2と機能ベルトの案内性を向上させる。
【0031】
この加圧フードは固定して配置されているので、ベルト2に対するシールは潤滑されなければならない。この潤滑は流体、即ち、ここでは水を加圧室から漏洩させて行われる。
【0032】
加圧室内の圧力は0.3〜5バールである。
【0033】
この熱伝導ベルト2は、幅数m、厚み0.8mmのスチールベルトによって形成される。ベルト2の弾性率は、200kN/mm超である。
【0034】
ベルト走およびベルト張力を制御するために、両側で回転自在に取り付けられ、支持ロールの上流に配置された制御ローラー3の周囲にベルト2を誘導する。
【0035】
ベルト2の巻き角5はおよそ140度であり、制御ローラー3の両ベアリングを調節行程7にわたって移動させることができる。
【0036】
この場合、巻き角5は180度とベルトの制御ローラー3に対する衝突および離脱間の角度12との角度差に相当する。
【0037】
ベルト長の変化を最小限にして、ベアリングを調節する間のベルト縁部でのベルト走行方向に対する横方向の張力を増すために、制御ローラー3の装着部材の調節方向は、巻き角5の二等分線4に対する垂線6とほぼ同じである。
【0038】
さらに、ウエブの走行方向11に対して横方向に離脱するベルト2に効果的に対抗するために、装着部材を逆方向に調節し、ベルトの平均長ができるだけ伸びないようにする。
【0039】
最長調節行程7は、中央位置を中心としてプラス/マイナス30mmの間にあり、したがって60mmである。
【0040】
これらの測定の結果、上記のような剛性ベルト2の場合に特に、最小曲げ応力に関して最適な状況と、ベルト長変化がほとんどないことと、ベルト2と制御ローラー3との間の高い伝達摩擦力とが得られる。
【0041】
一般的に、曲げ応力はベルト2の幅が広いほど大きくなる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙、板紙、薄葉紙、またはその他の繊維ウエブ(1)の生産および/または仕上げ機において、それら紙、板紙、薄葉紙、またはその他の繊維ウエブを取り扱うための装置であって、ある巻き角(5)をもって回転可能に取り付けられた制御ローラー(3)に巻きつく、高曲げ剛性を備えたエンドレス循環ベルト(2)を備え、前記ベルトの張力を設定するために、調節行程(7)に沿って移動可能であるように前記制御ローラー(3)の少なくとも一方の端部が取り付けられている、前記装置において、
前記巻き角(5)が90度〜180度の間にあり、前記制御ローラー(3)の調節方向が、前記巻き角(5)の二等分線(4)に対してほぼ直角であることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記調節方向と前記二等分線(4)との間の角度が60度〜120度であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記調節方向と前記二等分線(4)との間の角度が80度〜100度であることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記調節方向と前記二等分線(4)との間の角度が85度〜95度であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記調節行程(7)の長さは最大で60mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記制御ローラー(3)の一方のベアリングのみを調節することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記制御ローラー(3)の両方のベアリングを調節することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記ベアリングを逆方向に調節することを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記ベルト(2)の弾性率が100kN/mm超、好ましくは190kN/mm超であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記ベルト(2)の幅が2m超であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記ベルト(2)の厚みが0.5mm超、好ましくは0.8mm超であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記ベルト(2)がスチールベルトとして形成されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記ベルト(2)が不浸透性であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記ベルト(2)が、ともに走行する支持部材(8)に対して加圧部材(9)によって押圧され、前記繊維ウエブ(1)が、単独でまたは1つ以上の機能ベルトとともに、前記支持部材(8)と前記ベルト(2)との間を走行することを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記加圧部材(9)が、加圧された流体で充填された固定加圧室によって形成され、前記加圧室は前記ベルト(2)に向かって開放しかつ前記ベルト(2)に対して封止されることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記支持部材(8)が回転支持ロールによって形成されることを特徴とする請求項14または15に記載の装置。
【請求項17】
前記制御ローラー(3)が前記支持ロールの上流に配置されていることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記制御ローラー(3)から前記支持ロールまでのベルト長が、全ベルト長の3分の1未満、好ましくは4分の1未満であることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記制御ローラーは、好ましくはゴム製の、ロールカバーを有することを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記ロールカバーの摩擦力μが0.2μ超であることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記ロールカバーが、好ましくは軸方向に平行な、またはヘリングボーン形状の溝を有することを特徴とする請求項19または20に記載の装置。

【公表番号】特表2009−537707(P2009−537707A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511424(P2009−511424)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052432
【国際公開番号】WO2007/134890
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(506294244)ボイス パテント ゲーエムベーハー (57)
【氏名又は名称原語表記】Voith Patent GmbH
【Fターム(参考)】