説明

ベルト型濃縮装置

【課題】 無端ベルトに液溜まりを生じさせることなく、ろ材速度を低速から高速まで任意に設定できるベルト型濃縮装置を提供する。
【解決手段】 無端ベルト4の原液供給部と濃縮汚泥排出部の間の適所に複数の円板8を並列した回転押圧部材5を当接し、原液供給側のろ過面4aを下り勾配、排出側のろ過面4bを上り勾配に形成して、排出側の無端ベルト4の裏面にウェッジワイヤー9と,そのろ過面にすき返し羽根13を摺接させ、原液供給側のろ過面4aの終端部に液溜り検出器14を設けたもので、原液供給側のろ過面4aに液溜まりが生じることなく、無端ベルト4のろ材速度を低速から高速まで任意に設定できるので、ろ液分離性能を向上させて、濃縮汚泥濃度を安定させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、し尿、下水汚泥あるいは産業廃水等に凝集剤を添加して固形分を凝集させた後、濃縮脱水するベルト型濃縮装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベルト型濃縮機は、含水率が高く流動性を有する汚泥を走行するろ布や金属ろ材等の無端ベルトのろ過面に供給し、搬送しながら徐々に水分を分離して濃縮脱水を行なうものである。次工程に供給するためには、水分を充分に分離して流動性のない濃縮汚泥としておく必要がある。このベルト型濃縮機は無端ベルトの走行角度を供給側から排出側に向かって上り勾配をもたせたものが一般的であり、ベルト速度を遅くすると、運転状況によりろ液分離性能を低下させる液溜りが発生する。無端ベルトのろ過面の液溜りはろ液の分離が悪くなり、濃縮性能と処理量を悪化させる。ベルト速度を遅くできないため、濃縮汚泥濃度とろ布寿命に影響を及ぼす。そして、ベルト型濃縮機の無端ベルトを水平状、または下り勾配に設置してベルト速度を速くすると、水分が排水側に付いて行き、濃縮汚泥濃度が低下する。これを改善するためにはベルト型濃縮機の機長を長くする必要がある。無端ベルトを水平状、または下り勾配に設置すると、液溜りの検知が困難であり、凝集不良の際は、凝集液が汚泥フロックを生成せずにベルトのろ過面から排出される。
【0003】
ろ過効率を向上させて濃縮濃度を高める手段として、無端ベルトを中間ローラーで押下げ、汚泥供給部から汚泥排出部に搬送する搬送軌道に谷部と山部を形成したベルト型濃縮機が、特許文献1に開示してある。また、濃縮濃度を高める手段として、水平状の無端ベルトに上下に揺動自在な加圧用ローラーと、掻き取った汚泥を無端ベルト上に戻すスクレーパーを設けたベルト型濃縮機も、特許文献2に開示してある。
【特許文献1】特開2005−131523号公報(段落番号0013、図1)
【特許文献2】特許第4067471号公報(請求項1、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の無端ベルトの搬送軌道に谷部と山部を形成するベルト型濃縮機は、谷部を通過する時に汚泥の圧縮と、山部を通過する時にヒビ割れを発生させる効果を奏するが、屈曲させる中間ローラーが流動性のある濃縮汚泥を圧縮し、無端ベルトのろ過面から抜け出し、流動性を有する汚泥がろ材両端部からはみ出る恐れがある。また、水平状の無端ベルトに加圧用ローラーとスクレーパーを設けたベルト型濃縮機は、汚泥の性状や供給量、搬送速度に応じてスクレーパーの間隔を調整して汚泥を切り返して水抜けが良好となり、脱水効率が向上するものであるが、水平状のベルトは、速度を上げるとろ材に排出された水分がベルト裏面に伴付きして排出部について行き、ろ過面からのろ液排出が阻害されて濃縮汚泥濃度が低下する。原液性状の変化に対して、速度での対応ができない。この発明は、原液供給側と汚泥排出側で緩やかなV字を形成し、液だまりを生じさせることなく、ろ材速度を低速から高速まで任意に設定して、濃縮濃度とろ液分離性能を向上させ、濃縮汚泥濃度を安定させるベルト型濃縮装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係るベルト型濃縮装置は、従来の課題を解決するものであって、その要旨とするところは、緊張ロールと駆動ロールに無端ベルトを掛け回し、無端ベルトのろ過面に汚泥を供給して、搬送しながら濃縮脱水するベルト濃縮機において、無端ベルトの原液供給部と濃縮汚泥排出部の間の適所に複数の円板を並列した回転押圧部材を当接し、原液供給側のろ過面を下り勾配とする初期濃縮部と、濃縮汚泥排出側のろ過面を上り勾配とする濃縮ろ過部で緩やかなV字を形成させるもので、ベルトに転接させる回転押圧部材の円板は凝集汚泥を無端ベルトのろ過面に押込むことがなくろ過面にろ液の排出路を形成させる。そして、回転押圧部材で原液供給側のろ過面を下り勾配としたので、無端ベルトに液溜まりを生じさせることがなく、ろ材速度を低速から高速まで任意に広範囲に設定でき、排出側のろ過面を上り勾配とすることで、無端ベルトの高速化が可能であり、原液性状の変化に応じて、無端ベルトの速度調整の対応が行なえる。
【0006】
ベルト型濃縮装置は、無端ベルトの濃縮ろ過部にろ過面を支架させるウェッジワイヤーを当接させるもので、金属ろ材の目詰まりし難い特性が強化され、ベルトの毛細管給水作用とウェッジワイヤーの排水作用を発揮する濃縮機能が得られ、ろ液分離性能が向上する。そして、無端ベルトの濃縮ろ過部のろ過面に、傾斜面を有する鋭角先端部と、すくい面をなす傾斜側面と、無端ベルトから走行後方に離反する逃げ面をなす裏面から構成された複数のすき返し羽根を摺接させるもので、表面や内部に水分を包含する凝集汚泥をすき返し、反転させて濃縮濃度を向上させることができる。また、無端ベルトの初期濃縮部の終端部に液溜り検出器を垂下させれば、ろ液の排出不良の検知が容易となり、凝集不良の汚泥が排出側に搬送されるのを防止できる。ベルト速度と凝集剤の添加率を制御して、濃縮汚泥濃度を安定させた運転を行うことができる。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るベルト型濃縮装置は上記のように構成してあり、無端ベルトに当接させる回転押圧部材が凝集汚泥をろ過面に押込むことがなくろ液の排出路を形成して、原液性状の変化に対して無端ベルトの速度調整の対応が可能となり、濃縮濃度とろ液分離性能を向上させて、濃縮汚泥濃度を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明に係るベルト型濃縮装置を図面に基づき詳述すると、先ず、図1はベルト型濃縮装置の概略側面図であって、ベルト型濃縮機1は、緊張ロール2と駆動ロール3に無端ベルト4が走行自在に掛け回してあり、無端ベルト4の上面に原液を供給して濃縮脱水する。無端ベルト4は、原液供給部と濃縮汚泥排出部の間の適所に回転押圧部材5を当接し、原液供給側の無端ベルト4のろ過面4aを下り勾配とした初期濃縮部Aと、排出側の無端ベルト4のろ過面4bを上り勾配とした濃縮ろ過部Bで緩やかなV字を形成してある。無端ベルト4の初期濃縮部Aは、初期ろ過のための必要長さを確保してある。図2及び図3は回転押圧部材の正面図と側面図であって、ベルト型濃縮機1のフレーム(図示せず)に設けた一対の支持板6、6に回転軸7が支架してあり、間隔をあけて並列した複数の円板8・・・を回転軸7に嵌着して回転押圧部材5を構成してある。回転押圧部材5の円板8は無端ベルト4の移動にしたがって回転し、凝集汚泥を無端ベルト4のろ過面に押込むことがなくろ過面にろ液の排出路を形成させる。無端ベルト4は、原液供給側を下り勾配とすることで、初期濃縮部Aのろ過面4aに液溜まりが生じることなく、無端ベルト4の速度を低速から高速まで任意に広範囲に設定できる。排出側の濃縮ろ過部Bのろ過面4bは、上り勾配とすることで、無端ベルト4の速度を速くでき、原液性状の変化に対して速度調整の対応が可能となる。
【0009】
図1に示すように、上り勾配を形成する濃縮ろ過部Bのろ過面4bの裏面にウェッジワイヤー9を摺接させてある。図4はウェッジワイヤーの斜視図であって、ウェッジワイヤー9は無端ベルト4のろ過面4bの走行方向に細長孔9aを開口してあり、ろ過面4bから排出されたろ液は、ウェッジワイヤー9の傾斜させた細長孔9aの間隙を流れ、無端ベルト4bに負圧を付与して排出機能を高める。ウェッジワイヤー9の細長孔9aがろ過面側からろ液の排出部に向かって広がって、金属ろ材の目詰まりし難い特性を強化して、無端ベルト4の毛細管給水作用とウェッジワイヤー9の排水作用の相乗効果を発揮する濃縮機能が得られ、ろ液分離性能が向上する。なお、符号10は、無端ベルト4の反転部に設けた蛇行修正装置である。
【0010】
図5は他の実施例のベルト型濃縮機の概略側面図であって、この発明のベルト型濃縮機11は、回転押圧部材5を当接させて緩やかなV字形状を形成する無端ベルト12が、原液供給側のろ過面12aを下り勾配とした初期濃縮部Aと、排出側の多数のすき返し羽根13・・・を摺接させたろ過面12bを上り勾配とした濃縮ろ過部Bを形成してある。濃縮ろ過部Bに配設した多数のすき返し羽根13は、フレームに橋架した支持枠(図示せず)から垂下して、千鳥状に交互にろ過面12bに摺接してある。図6及び図7はすき返し羽根の正面図と裏面図であって、すき返し羽根13は、傾斜面を有する鋭角先端部13aと、すくい面をなす傾斜側面13b、13bと、無端ベルト12から走行後方に離反する逃げ面をなす裏面13cから構成してあり、すき返し羽根13の後部形状を穂先状としてある。濃縮ろ過部Bのろ過面12bの裏面には、図4に示すウェッジワイヤー9が、走行方向に細長孔9aを開口して摺接させてある。
【0011】
ベルト型濃縮装置11の濃縮ろ過部Bの始端部では、濃縮汚泥はすき返し羽根13のすくい面をなす傾斜側面13b、13bを乗り越えて反転し、逃げ面をなす裏面13cが無端ベルト12との接触面圧を上げて濃縮汚泥をより効率よく掻取り、同時に、濃縮汚泥を掻取った無端ベルト12のろ過面12bを再生する。濃縮ろ過部Bの中間部では、濃縮汚泥の反転により水分を多く含む面が、すき返し羽根13の鋭角先端部13aと傾斜側面13b、13bで掻き分けられ、更新されたベルト面に再び載置され、反転効果とすき返し効果で濃縮濃度を大幅に向上させる。すき返し羽根13は濃縮ろ過部Bで千鳥状に交互に配置することにより、ろ過面12bの濃縮汚泥を均等にすき返し、反転させて濃縮汚泥濃度を高めることができる。濃縮ろ過部Bの後半部では、ろ過面12bの濃縮汚泥濃度は濃縮が進み固くなり、すき返し羽根13の逃げ面をなす裏面13cに圧搾され、すくい面をなす傾斜側面13b、13bに掻き分けられて、更に、濃縮濃度を向上させる。
【0012】
図1及び図5に示すように、無端ベルト4、12の初期濃縮部Aのろ過面4a、12aの終端部に液溜り検出器14を設ければ、ろ液の排出不良を早期に検知できる。凝集不良による凝集汚泥がろ過されずに、濃縮ろ過部Bに搬送されるのを防止できる。原液性状の変動に対し、ろ材速度を低速から高速まで任意に広範囲に設定できるので、ベルト速度による濃度制御が可能となる。ベルト速度と、凝集剤の添加率を増減させて濃縮汚泥濃度が安定した運転を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
この発明に係るベルト型濃縮装置は、無端ベルトの原液供給側と濃縮汚泥排出側の間の適所に回転押圧部材を当接して、無端ベルトを緩やかなV字に形成し、排出側の無端ベルトの裏面にウェッジワイヤーと,そのろ過面にすき返し羽根を摺接させ、原液供給側の無端ベルトに液溜り検出器を設けたので、ベルトに転接させる回転押圧部材が凝集汚泥を無端ベルトのろ過面に押込むことがなくろ液の排出路を形成して、原液性状の変化に対して無端ベルトの速度調整の対応が可能となり、濃縮濃度とろ液分離性能を向上させて、濃縮汚泥濃度を安定させることができ、水分を充分に分離して流動性のない濃縮汚泥を次工程に供給できるベルト型濃縮機となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明に係るベルト型濃縮装置の概略側面図である。
【図2】同じく、回転押圧部材の正面図である。
【図3】同じく、回転押圧部材の側面図である。
【図4】同じく、ベルトの裏面に摺接させるウェッジワイヤーの斜視図である。
【図5】同じく、他の実施例のベルトプレスの概略側面図である。
【図6】同じく、すき返し羽根の正面図である。
【図7】同じく、すき返し羽根の裏面図である。
【符号の説明】
【0015】
2 緊張ロール
3 駆動ロール
4、12 無端ベルト
4a、4b、12a,12b ろ過面
5 回転押圧部材
8 円板
9 ウェッジワイヤー
13 すき返し羽根
13a 鋭角先端部
13b 傾斜側面
13c 裏面
14 液溜り検出器
A 初期濃縮部
B 濃縮ろ過部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊張ロール(2)と駆動ロール(3)に無端ベルト(4)を掛け回し、無端ベルト(4)のろ過面(4a)に汚泥を供給して、搬送しながら濃縮脱水するベルト型濃縮機において、無端ベルト(4)の原液供給部と濃縮汚泥排出部の間の適所に複数の円板(8・・・)を並列した回転押圧部材(5)を当接し、原液供給側のろ過面(4a)を下り勾配とする初期濃縮部(A)と、濃縮汚泥排出側のろ過面(4b)を上り勾配とする濃縮ろ過部(B)で緩やかなV字を形成することを特徴とするベルト型濃縮装置。
【請求項2】
上記無端ベルト(4)の濃縮ろ過部(B)に、ろ過面(4b)を 支架させるウェッジワイヤー(9)を当接させることを特徴とする請求項1記 載のベルト型濃縮装置。
【請求項3】
上記無端ベルト(4)の濃縮ろ過部(B)のろ過面(4b)に、傾斜面を有する鋭角先端部(13a)と、すくい面をなす傾斜側面(13b、13b)と、無端ベルト(12)から走行後方に離反する逃げ面をなす裏面(13c)から構成された複数のすき返し羽根(13・・・)を摺接させることを特徴とする請求項1または2記載のベルト型濃縮装置。
【請求項4】
上記無端ベルト(4)の初期濃縮部(A)の終端部に液溜り検出器(14)を垂下させたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のベルト型濃縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−110662(P2010−110662A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282876(P2008−282876)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000197746)株式会社石垣 (116)
【Fターム(参考)】