説明

ベルト式動力伝達装置

【目的】 基板に対するアイドラプーリの傾き状態を防止し、テンション調節機構における耐久性増大を図ると共に、各プーリにおけるベルトの片寄り及び外れを防止し、これにより、装置全体の耐久性増大を図ったベルト式動力伝達装置を提供する。
【構成】 駆動用プーリ4の駆動力を負荷用プーリ3,3に伝達するベルト5と、テンション調節機構6とを備え、テンション調節機構6が、駆動用プーリ4及び負荷用プーリ3,3と同一面に配置され且つベルト5に当接可能なアイドラプーリ6Aと、このアイドラプーリ6Aの軸を片持で支持するアイドラブラケット6Bと、このアイドラブラケット6Bをベースプレート2に対し平行になるようその一端側6Cを支持する支持部6Fとにより構成し、アイドラブラケット6Bの他端側6Gをベースプレート2に向けて係止する係止手段としてのクランク部2Aを、ベースプレート2に設けている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ベルト式動力伝達装置に係り、特に、情報処理機器等に用いられるベルト式動力伝達装置に関する。
【0002】
【従来の技術】この種における動力伝達装置は、図3に示すように、基板20上に駆動用モータ7によって回転する駆動用プーリ21と、この駆動用プーリ21にベルト23を介して連結された負荷用プーリ22,22とを有して構成されている。そして、各負荷用プーリ22は、図示しない負荷機構等に連結され、当該負荷機構等を駆動するようになっている。
【0003】また、上記の動力伝達装置には、ベルト23のテンションを調節するテンション調節機構25が基板20上に配置されている。このテンション調節機構25は、負荷機構等のメカ的負荷と駆動モータ24のモータトルクとに見合った値で常にベルト23をある程度のテンションで張るためのものである。
【0004】このテンション調節機構25は、ベルト23に当接可能なアイドラプーリ25Eと、このアイドラプーリ25Eをアイドラシャフト25Eを介して片持で支持するアイドラブラケット25Cとにより構成されている。また、アイドラプーリ25Eの軸は、アイドラブラケット25C対し直角になるよう取り付けられており、アイドラブラケット25Cは、基板20に対し平行になるよう取り付けられている。このため、アイドラプーリ25Eの軸は、基板20に対し直角度を保った状態で配置されている。更に、アイドラブラケット25Cの上端部(図3に示す上端)には、このアイドラブラケット25Cの位置決め兼回転止め用の穴25Aが形成されている。そして、その下側近傍には当該アイドラブラケット25Cのネジ止め用長穴25ネジ止め用長穴25Bが形成されている。
【0005】また、基板20には、図4(図3のD−D線に沿った断面図)に示すように上記の位置決め兼回転止め用の穴25Aに対応する位置決め用突起部20A及び,ネジ止め用長穴25Bに対応するネジ穴20Bがそれぞれ設けられている。ここで、上記の位置決め兼回転止め用の穴25Aは、位置決め用突起部20Aに嵌合可能に且つ回動自在になるよう形成されている。
【0006】次に上述したテンション調節機構25の使用方法を説明する。
【0007】まず、基板20に設けられた位置決め用突起部20Aに、アイドラブラケット25Cの位置決め兼回転止め用の穴25Aを合わせてテンション調節機構25を基板20上に取り付ける。そして、上記の位置決め用突起部20Aを中心としてテンション調節機構25全体を、図3に示す矢印A方向に回動させる。すると、アイドラブラケット25Cにアイドラシャフト25Dを介して支持されたアイドラプーリ25Eが、ベルト23に当接し押圧することにより当該ベルトにテンションを与える。そして、上記のベルト23に所定のテンションが与えられた状態のとき、アイドラブラケット25Cのネジ止め用長穴25と基板20のネジ穴20Bとをネジ26で固着する。すると、アイドラプーリ25Eは、ベルト23に所定のテンションを与えた状態でアイドラブラケット25Cと共に基板20上に固定される(図4参照)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来例では、テンション調節機構25におけるアイドラブラケット25Cは、その一端側が一つのネジ26のみで基板20に取り付られている。すなわち、テンション調節機構25は、基板20に対し片持で支持された状態になっている。このため、ベルト23におけるテンションの増大(アイドラプーリ25Eが、ベルト23に当接し当該ベルト23のテンションを強く張って行くと、このベルト23からの反力が増大し当該反力がアイドラプーリ6Aを介してアイドラブラケット25Cの他端側25Fに加わる)につれて又はアイドラブラケット25Cの強度によっては、アイドラブラケット25Cの他端側25Fが、図4に示す矢印B方向に移動し湾曲して基板20から浮き上がてしまう。このため、アイドラプーリ25Eの取り付け状態が、基板20に対して直角に取り付かず傾いてしまう。したがって、ベルト23が、各プーリの片側に寄ってしまったり、外れてしまうという不都合があった。更に、この傾向は、装置の小型軽量化に伴い、アイドラブラケット25Cの板圧が薄く、小さくなるにつれて多くなるという不都合があった。
【0009】
【目的】本発明の目的は、かかる従来例の有する不都合を改善し、特に、基板に対するアイドラプーリの傾き状態を防止し、テンション調節機構における耐久性増大を図ると共に、各プーリにおけるベルトの片寄り及び外れるという状態を防止し、これにより、装置全体の耐久性増大を図ったベルト式動力伝達装置を提供することを、その目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明では、同一基板上に配置された駆動用プーリ及び負荷用プーリと、駆動用プーリの駆動力を負荷用プーリに伝達するベルトと、このベルトを押圧し当該ベルトのテンションを調節するテンション調節機構とを備えている。そして、このテンション調節機構が、駆動用プーリ及び負荷用プーリと同一面に配置され且つベルトに当接可能なアイドラプーリと、このアイドラプーリの軸を片持で支持するアイドラブラケットと、このアイドラブラケットを基板に対し平行になるようその一端側を支持する支持部とにより構成し、アイドラブラケットの他端側を基板に向けて係止する係止手段を、上記基板に設けるという構成を採っている。これにより前に述べた目的を達成しようとしている。
【0011】
【作用】ベルトのテンションによる反力がアイドラブラケットの他端側に加わって当該他端側がベースプレートから浮き上ろうとしても、このアイドラブラケットにおける他端側が係止手段としてのクランク部に押さえ込まれているため、アイドラブラケットの他端側が湾曲してベースプレートから浮き上がってしまうことがない。
【0012】
【実施例】以下本発明の一実施例を、図1ないし図2に基づいて説明する。
【0013】図1は、本発明に係るベルト式動力伝達装置1の正面図を示す。この図1に示すベルト式動力伝達装置1は、同一基板としてのベースプレート2上に配置された駆動用プーリ4及び負荷用プーリ3,3と、駆動用プーリ4の駆動力を負荷用プーリ3,3に伝達するベルト5と、このベルト5を押圧し当該ベルト5のテンションを調節するテンション調節機構6とを備えている。そして、このテンション調節機構6が、駆動用プーリ4及び負荷用プーリ3,3と同一面に配置され且つベルト5に当接可能なアイドラプーリ6Aと、このアイドラプーリ6Aの軸を片持で支持するアイドラブラケット6Bと、このアイドラブラケット6Bをベースプレート2に対し平行になるようその一端側6Cを支持する支持部6Fとにより構成し、アイドラブラケット6Bの他端側6Gをベースプレート2に向けて係止する係止手段としてのクランク部2Aを、ベースプレート2に設けている。
【0014】これを更に詳述すると、図1に示すようにベースプレート2上には、駆動用プーリ4及び負荷用プーリ3,3がそれぞれ配置されている。これらの駆動用プーリ4及び負荷用プーリ3,3間には、ベルト5が架設されている。また、駆動用プーリ4の軸は、駆動用モータ7の回転軸に固着されており、各負荷用プーリ3の軸は図示しない負荷機講等に連結されている。
【0015】そして、上記のベルト5のテンションを調節するテンション調節機構6が、ベースプレート2上に配置されている。このテンション調節機構6は、ベルト5に当接可能なアイドラプーリ6Aと、このアイドラプーリ6Aをアイドラシャフト6Hを介して片持で支持するアイドラブラケット6Bとにより構成されている。また、アイドラプーリ6Aの軸は、アイドラブラケット6B対して直角になるよう取り付けられており、アイドラブラケット6Bはベースプレート2に対して平行になるよう取り付けられている。このため、アイドラプーリ6Aの軸は、ベースプレート2に対し直角度を保った状態で配置されるようになっている。更に、アイドラブラケット6Bの一端側6Cには、支持部6Fが設けられている。この支持部6Fは、アイドラブラケット6Bにおける位置決め兼回転止め用の穴6Dと,その下側近傍に形成された該アイドラブラケット6Bにおけるネジ止め用長穴6Eとにより構成されている。
【0016】また、ベースプレート2には、図2(図1のC−C線に沿った断面図)に示すように上記の位置決め兼回転止め用の穴6Dに対応する位置決め用突起部2B及び,ネジ止め用長穴6Eに対応するネジ穴2Cがそれぞれ設けられている。ここで、上記の位置決め兼回転止め用の穴6Dは、位置決め用突起部2Bに嵌合可能に且つ回動自在になるよう形成されている。
【0017】そして、アイドラブラケット6Bの他端側6Gをベースプレート2に向けて係止する係止手段としてのクランク部2Aを、上記ベースプレート2に設けている。このクランク部2Aは、図1ないし図2に示すように、ベースプレート2におけるアイドラブラケット6Bの対応位置に切欠き穴2Bを設け、この切欠き穴2Bによってできる切欠辺を曲げ起こすことにより形成されている。そして、このクランク部2Aは、図2に示すようにアイドラブラケット6Bの他端側6Gを摺動可能にはめ込んだ状態になっている。
【0018】次に上述したテンション調節機構25の使用方法を説明する。
【0019】まず、ベースプレート2に設けられた位置決め用突起部2Bに、アイドラブラケット6Bの位置決め兼回転止め用の穴6Dを合わせてテンション調節機構6をベースプレート2上に取り付ける。そして、上記の位置決め用突起部6Dを中心としてテンション調節機構6全体を、図1に示す矢印E方向に回動させる。すると、アイドラブラケット6Bの他端側6Gが、クランク部2Aに摺動しながらはめ込まれる。またこのとき、上記のアイドラブラケット6Bにアイドラシャフト6Hを介して支持されたアイドラプーリ6Aが、ベルト5に当接し押圧することにより当該ベルトにテンションを与える。そして、上記のベルト5に所定のテンションが与えられた状態のとき、アイドラブラケット6Bのネジ止め用長穴6Eとベースプレート2のネジ穴2Cとをネジ9で固着する。すると、アイドラプーリ6Aは、ベルト5に所定のテンションを与えた状態でアイドラブラケット6Aと共にベースプレート2上に固定される。
【0020】以上説明したように、本実施例によると、アイドラブラケット6Bの他端側6Gをベースプレート2に向けて係止する係止手段としてのクランク部2Aを上記ベースプレート2に設けたことから、ベルト5のテンションによる反力がアイドラブラケット6Bの他端側6Gに加わって当該他端側6Gがベースプレート2から浮き上ろうとしても、このアイドラブラケット6Bにおける他端側6Gがクランク部2Aに隙間なく押さえ込まれているため、アイドラブラケット6Bの他端側6Gが湾曲してベースプレート2から浮き上がってしまうことがない。このため、テンション調節機構6における耐久性が増大し、アイドラプーリ6Aの軸はベースプレート2に対して常に直角度を保こができ、斜めに傾くことがない。このため、各プーリにおけるベルト5の片寄り及び外れるという状態を防止し、これにより、装置全体の耐久性増大を図ることができる。
【0021】また、図2に示す用にアイドラシャフト6Hをアイドラブラケット6Bに固着するためのネジ10の頭を、ベースプレート2におけるクランク部2Aを作るための切り欠き穴2B内に入れることにより、装置全体における実装性が向上し小型軽量化を図ることができる。
【0022】
【発明の効果】本発明では、以上のように構成され機能するので、これによると、アイドラブラケットにおける他端側がクランク部に押さえ込まれているため、ベルトのテンションによる反力がアイドラブラケットの他端側に加わた場合でも、このアイドラブラケットの他端側が湾曲してベースプレートから浮き上がってしまうという状態を有効に防止することができる。したがって、アイドラプーリの軸は、ベースプレートに対して常に直角度を保つこができ、斜めに傾いてしまうことがない。このため、テンション調節機構における耐久性が増大し、各プーリにおけるベルトの片寄り及び外れるという状態が防止できる。したがって、装置全体の耐久性増大を図ることができるという従来にない優れたベルト式動力伝達装置を提供することができる。
【0023】
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例を説明する正面図である。
【図2】図1におけるC−C線に沿った断面図である。
【図3】従来例を説明する図である。
【図4】図3におけるD−D線に沿った断面図である。
【符号の説明】
1 ベルト式動力伝達装置
2 同一基板としてのベースプレート
2A 係止手段としてのクランク部
3 負荷用プーリ
4 駆動用プーリ
5 ベルト
6 テンション調節機構
6A アイドラプーリ
6B アイドラブラケット
6C 一端側
6F 支持部
6G 他端側

【特許請求の範囲】
【請求項1】 同一基板上に配置された駆動用プーリ及び負荷用プーリと、前記駆動用プーリの駆動力を前記負荷用プーリに伝達するベルトと、このベルトを押圧し当該ベルトのテンションを調節するテンション調節機構とを備え、このテンション調節機構が、前記駆動用プーリ及び負荷用プーリと同一面に配置され且つ前記ベルトに当接可能なアイドラプーリと、このアイドラプーリの軸を片持で支持するアイドラブラケットと、このアイドラブラケットを前記基板に対し平行になるようその一端側を支持する支持部とを有し、前記アイドラブラケットの他端側を前記基板に向けて係止する係止手段を、前記基板に設けたことを特徴とするベルト式動力伝達装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図4】
image rotate


【図3】
image rotate


【公開番号】特開平5−87200
【公開日】平成5年(1993)4月6日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−273154
【出願日】平成3年(1991)9月25日
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000240617)米沢日本電気株式会社 (6)