説明

ベンゾイル尿素化合物

【課題】有害節足動物に対する優れた防除活性を有する化合物を提供すること。
【解決手段】式(I)〔式中、Rは水素原子、メチル基またはメトキシメチル基を表す。〕で示されるベンゾイル尿素エステル化合物は、有害節足動物に対する優れた殺虫活性を有することから、有用である。。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベンゾイル尿素化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有害節足動物に対する殺虫活性を有する多くの化合物が開発され、実用に供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭61−277660号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は有害節足動物に対する優れた殺虫活性を有する化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は有害節足動物に対する優れた殺虫活性を有する化合物を見出すべく鋭意検討した結果、式(I)

〔式中、Rは水素原子、メチル基またはメトキシメチル基を表す。〕
で示されるベンゾイル尿素化合物(以下、本発明化合物と記す。)が有害節足動物に対する優れた殺虫活性を有することを見出し、本発明に至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明化合物は有害節足動物に対する優れた殺虫活性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明化合物は例えば固体担体、液体担体、ガス状担体と混合し、必要に応じて界面活性剤、その他の製剤用補助剤(固着剤、分散剤等)、安定剤等を添加して、粉剤、水和剤、油剤、乳剤、フロアブル剤、顆粒水和剤、エアゾール等の形態に製剤化することができる。
これらの製剤には、有効成分として本発明化合物を通常、重量比で0.01〜95重量%含有する。
【0008】
上記の製剤化の際に用いられる固体担体としては例えば粘土類(カオリンクレー、珪藻土、合成含水酸化珪素、ベントナイト、フバサミクレー、酸性白土等)、タルク類、セラミック、その他の無機鉱物(セリサイト、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウム、水和シリカ等)等の微粉末または粒状物が挙げられ、液体担体としては例えば水、アルコール類(メタノール、エタノール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルナフタレン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、シクロヘキサン、灯油、軽油等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ニトリル類(アセトニトリル、イソブチロニトリル等)、エーテル類(ジイソプロピルエーテル、ジオキサン等)、酸アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等)、ジメチルスルホキシド、大豆油、棉実油等の植物油が挙げられ、ガス状担体(即ち噴射剤)としては例えばブタンガス、液化石油ガス、ジメチルエーテル、炭酸ガスが挙げられる。
上記の製剤化に必要に応じて用いられる界面活性剤としては例えばアルキル硫酸エステル類、アルキルスルホン酸類、アルキルアリールスルホン酸類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリエチレングリコールエーテル類、多価アルコールエステル類、糖アルコール類が挙げられ、製剤用補助剤としては例えばカゼイン、ゼラチン、デンプン、アラビアガム、セルロース誘導体、アルギン酸、リグニン誘導体、ベントナイト、糖類、合成水溶性高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等)が挙げられ、安定剤としては例えば酸性リン酸イソプロピル、BHT、BHT、植物油、鉱物油、脂肪酸が挙げられる。
【0009】
このようにして得られる製剤はそのままで、或いは水等で希釈して用いる。本発明化合物を有害節足動物に対して施用する場合、その施用量は通常、有害節足動物の生息する区域1ヘクタール当り0.3〜3000g、好ましくは50〜3000gの範囲である。また、本発明化合物を水等で希釈して用いる場合は、希釈した際の本発明化合物の濃度は0.1〜1000ppm、好ましくは10〜500ppmの範囲である。
【0010】
本発明化合物はコナガ、ニカメイガ、ハスモンヨトウ等の有害節足動物に効力を有する。本発明化合物は例えば上記乳剤の水希釈液や油剤を有害節足動物に直接散布するか、或いはそれを有害節足動物が加害する植物に茎葉散布する等の方法により使用することができる。
【実施例】
【0011】
以下に、実施例、製剤例および試験例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0012】
カラム用シリカゲルはメルク社製のキーゼルゲル60(70〜230メッシュ)を用いた。NMRスペクトルはプロトンNMRを示し、内部基準としてテトラメチルシランを用いて、δ値をppmで示した。
【0013】
なお、下記製造例および実施例で用いる略号は、次のような意義を有する。
s:シングレット、br:ブロード(幅広い)、brs:ブロードシングレット(幅広いシングレット)、d:ダブレット、t:トリプレット、q:クワルテット、Me:メチル基、Et:エチル基、Ph:フェニル基、Pr−n(もしくはn−Pr):n-プロピル、Pr−i(もしくはi−PrもしくはiPr):イソプロピル、Pr−cyclo(もしくはcyclo−Pr):シクロプロピル、Bu−n(もしくはn−Bu):n-ブチル、Bu−i(もしくはi−Bu):イソブチル、Bu−s(もしくはs−Bu):sec-ブチル、Bu−t(もしくはt−Bu):tert-ブチル。また、室温とあるのは約15〜25℃を意味する。
【0014】
実施例1
(工程1)
2−フルオロ−4−トリフルオロメトキシアニリン2.08gおよびパラホルムアルデヒド(含量;90重量%)0.46gをメタノール10mlに加え、ここに28%ナトリウムメチラート−メタノール溶液9.90g及びメタノール5mlの混合物を加え、室温で23時間撹拌した。該反応混合物を氷水30mlに加えて、クロロホルム50mlで抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をエタノール40mlに溶解し、ここに水素化ホウ素ナトリウム(含量;90重量%)0.99gを加え、加熱還流下で30分間攪拌した。室温まで放冷した該反応混合物を減圧下で濃縮した後、水30mlおよびクロロホルム30mlを加えて分液した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラム(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)に付すことにより、2−フルオロ−N−メチル−4−トリフルオロメトキシアニリン1.36gを得た。
【0015】
2−フルオロ−N−メチル−4−トリフルオロメトキシアニリン

1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):2.89(3H,m),3.95(1H,br),6.59−6.64(1H,m),6.89−6.94(2H,m)
【0016】
(工程2)
2−フルオロ−N−メチル−4−トリフルオロメトキシアニリン0.50gをジエチルエーテル2.0mlに溶解した溶液に、氷冷下で2,6−ジフルオロベンゾイルイソシアネート0.44gをジエチルエーテル0.5mlに溶解した溶液を加え、室温で1時間撹拌した。該反応液を減圧下で濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラム(酢酸エチル:クロロホルム:ヘキサン=1:1:4)に付すことにより、3−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−1−(2−フルオロ−4−トリフルオロメトキシフェニル)−1−メチル尿素(以下、本発明化合物(1)と記す。)0.68gを得た。
【0017】
本発明化合物(1)

1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):3.23(3H,s),6.92−6.96(2H,m),7.12−7.14(2H,m),7.36−7.43(2H,m),7.90(1H,brs)
【0018】
実施例2
本発明化合物(1)0.50gを1−メチル−2−ピロリドン5.0mlに溶解させた溶液に、氷冷下で水素化ナトリウム60mgを加え、次いでヨウ化メチル0.19mlを加え、氷冷下で3時間撹拌した。該反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液5ml及び水5mlの混合液を加え、酢酸エチル5mlで3回抽出した。得られた有機層を合一し、飽和食塩水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラム(酢酸エチル:クロロホルム:ヘキサン=1:1:4)に付すことにより、1−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−3−(2−フルオロ−4−トリフルオロメトキシフェニル)−1,3−ジメチル尿素(以下、本発明化合物(2)と記す。)0.41gを得た。
【0019】
本発明化合物(2)

1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):3.08(3H,s),3.33(3H,brs),6.87−6.91(2H,m),7.02−7.08(2H,m),7.31−7.39(2H,m)
【0020】
実施例3
(工程1)
2,6−ジフルオロベンズアミド3.00g、36%ホルマリン水溶液3.6mlおよび炭酸カリウム0.10gを混合し、室温で13時間撹拌した。該反応混合物に水10mlを加えて30分間撹拌した後にろ過し、ろ上物を水40mlで洗浄した。得られた固体を五酸化二リン上で減圧乾燥することにより、2,6−ジフルオロ−N−ヒドロキシメチルベンズアミドを2.05gを得た。
【0021】
2,6−ジフルオロ−N−ヒドロキシメチルベンズアミド

1H−NMR(DMSO−d6)δ〔ppm〕:4.63−4.66(2H,m),5.87−5.91(1H,m),7.13−7.17(2H,m),7.48−7.52(1H,m),9.25(1H,brm)
【0022】
(工程2)
2,6−ジフルオロ−N−ヒドロキシメチルベンズアミド10.0gをメタノール100mlに溶解し、ここに35%塩酸1.0mlを加えて、室温で6時間攪拌した。該反応混合物を減圧下で濃縮した。得られた残渣をクロロホルム200mlに溶解して、水100mlで洗浄した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、減圧下で濃縮することにより、2,6−ジフルオロ−N−メトキシメチルベンズアミド10.71gを得た。
【0023】
2,6−ジフルオロ−N−メトキシメチルベンズアミド

1H−NMR(CDCl3)δ〔ppm〕:3.44(3H,s),4.90(2H,d,J=8.0Hz),6.51(1H,br),6.94−7.00(2H,m),7.36−7.44(1H,m
【0024】
(工程3)
2,6−ジフルオロ−N−メトキシメチルベンズアミド1.0gをトルエン10mlに溶解した溶液に、トリメチルシリルクロライド0.66mlを加え、次いでトリエチルアミン0.68mlをトルエン5mlに溶解した溶液を加え、40℃で1時間撹拌した。次いで、該反応混合物を氷冷し、これにトリホスゲン0.66gをトルエン10mlに溶解した溶液を加え、室温で3時間撹拌した。該反応混合物を減圧下で濃縮し、得られた残渣をトルエン20mlに溶解し、水20mlおよび飽和炭酸水素ナトリウム水溶液20mlで順次洗浄した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、得られた溶液に2−フルオロ−N−メチル−4−トリフルオロメトキシアニリン0.85gおよびジイソプロピルエチルアミン0.98mlを加え、バス温100℃で1時間攪拌した。該反応混合物を水40mlで洗浄した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラム(酢酸エチル:クロロホルム:ヘキサン=1:1:4)に付すことにより、1−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−3−(2−フルオロ−4−トリフルオロメトキシフェニル)−1−メトキシメチル−3−メチル尿素(以下、本発明化合物(3)と記す。)1.27gを得た。
【0025】
本発明化合物(3)

1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):3.37(6H,brs),4.86(2H,brs),6.8−7.0(2H,brm),7.03−7.06(2H,m),7.34−7.37(2H,brm)
【0026】
次に、製剤例を示す。なお、部は重量部を表す。
【0027】
製剤例1
本発明化合物(1)〜(3)10部を、キシレン35部とN,N−ジメチルホルムアミド35部との混合物に溶解し、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル14部およびドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム6部を加え、攪拌混合して各々の10%乳剤を得る。
【0028】
製剤例2
本発明化合物(1)〜(3)20部を、ラウリル硫酸ナトリウム4部、リグニンスルホン酸カルシウム2部、合成含水酸化珪素微粉末20部および珪藻土54部を混合した中に加え、攪拌混合して各々の20%水和剤を得る。
【0029】
製剤例3
本発明化合物(1)〜(3)1部を適当量のアセトンに溶解し、これに合成含水酸化珪素微粉末5部、PAP0.3部およびフバサミクレー93.7部を加え、充分攪拌混合し、アセトンを蒸発除去して各々の1%粉剤を得る。
【0030】
製剤例4
本発明化合物(1)〜(3)10部;ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム塩50部を含むホワイトカーボン35部;および水55部を混合し、湿式粉砕法で微粉砕することにより、各々の10%フロアブル剤を得る。
【0031】
製剤例5
本発明化合物(1)〜(3)0.1部をキシレン5部およびトリクロロエタン5部に溶解し、これを脱臭灯油89.9部に混合して各々の0.1%油剤を得る。
【0032】
製剤例6
本発明化合物(1)〜(3)10mgをアセトン0.5mlに溶解し、この溶液を、動物用固形飼料粉末(飼育繁殖用固形飼料粉末CE−2、日本クレア株式会社商品)5gに処理し、均一に混合する。次いでアセトンを蒸発除去させて各々の毒餌を得る。
【0033】
次に、本発明化合物が有害節足動物に対して殺虫活性を有することを試験例にて示す。
【0034】
試験例1
本発明化合物(1)〜(3)の各々30mgを、キシレンおよびN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶液(混合容量比はキシレン:N,N−ジメチルホルムアミド=1:1)0.1mlに溶解し、さらにキシレンおよびソルポール3005X(東邦化学株式会社製)の混合溶液(混合容量比はキシレン:ソルポール3005X=1:9)0.1mlを加えて乳剤を調製した。該乳剤をイオン交換水で3.2ppmに希釈して、供試化合物の試験用薬液を調製した。4葉期のキャベツ(Brassicae oleracea)に該試験用薬液20mlを散布した。キャベツの葉面上の該試験用薬液が乾いた後に、ポリエチレンカップ(容量400ml)に収容し、カップ内にコナガ(Plutella xylostella)の3令幼虫10頭を放ち、5日後に死亡虫数を数えて、死虫率を求めた。
その結果、本発明化合物(1)、(2)及び(3)は死虫率100%を示した。
【0035】
試験例2
本発明化合物(1)〜(3)の各々30mgを、キシレンおよびN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶液(混合容量比はキシレン:N,N−ジメチルホルムアミド=1:1)0.1mlに溶解し、さらにキシレンおよびソルポール3005X(東邦化学株式会社製)の混合溶液(混合容量比はキシレン:ソルポール3005X=1:9)0.1mlを加えて乳剤を調製した。該乳剤をイオン交換水で3.2ppmに希釈して、供試化合物の試験用薬液を調製した。5葉期のキャベツ(Brassicae oleracea)に該試験用薬液20mlを散布した。キャベツ葉面上の該試験用薬液が乾いた後に、ポリエチレンカップ(容量400ml)に収容し、カップ内にハスモンヨトウ(Spodoptela litura)の4齢幼虫10頭を放ち、6日後に死亡虫数を数えて、死虫率を求めた。
その結果、本発明化合物(1)、(2)及び(3)は死虫率100%を示した。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明化合物は有害節足動物に対する優れた殺虫活性を有しているので、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)

〔式中、Rは、水素原子、メチル基またはメトキシメチル基を表す。〕
で示されるベンゾイル尿素化合物。

【公開番号】特開2008−266186(P2008−266186A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110170(P2007−110170)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】