説明

ベンゾジチオール化合物の製造方法

【課題】有機電子材料、紫外線吸収剤、色材、光学材料などの各種機能性材料およびその合成中間体として有用なベンゾジチオール化合物を、安価な原料を使用して簡便に収率良く製造する方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(III)で表される化合物に対して1当量以上の水の存在下で、下記一般式(III)で表される化合物と酸化剤とを反応させることを特徴とする、下記一般式(IV)で表される化合物の製造方法。


[一般式(III)及び(IV)中、R1及びR2は、互いに独立して水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R1及びR2は同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。R3及びR4は、互いに独立して水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R3及びR4は同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾジチオール化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロキノンの2,3位にジチオール環が縮合し、さらにジチオール環の2位にエキソメチレン基を介して各種置換基が置換した構造の化合物が知られている。また、ジチオール環の2位の炭素原子にイミノ基が置換した構造の化合物が知られている。これらの化合物は有機半導体等の有機電子材料およびその合成中間体として有用である。中でもジチオール環の2位の炭素原子にイミノ基が置換した化合物は、テトラチアフルバレン誘導体の合成中間体として特に有用であるため、その簡便な合成法の探求は最近も行われている(例えば非特許文献1を参照)。
これまでに知られているジチオール環の2位の炭素原子にジアルキルイミノ基が置換した化合物は、対応するジアルキルジチオカルバミン酸とベンゾキノンとから合成されていた。ジアルキルジチオカルバミン酸は、任意の有機溶媒に溶解して使用しており、反応は、水を含まない非水系で行われていた(例えば特許文献1並びに非特許文献1及び2を参照)。
ところで、ジアルキルジチオカルバミン酸は、ジアルキルアミンと二硫化炭素とをアルカリ水中で反応させることで調製される。したがって、従来の合成法では非水系で反応を行うために、含水系で調製したジチオカルバミン酸をわざわざ単離して使用する必要があった。
一方、含水系でジチオカルバミン酸とベンゾキノンとの反応を行った例がある(例えば非特許文献3を参照)。しかしながら、この例ではジアルキルジチオカルバミン酸とベンゾキノンとを反応させて中間体を得る段階のみを含水系で行い、中間体を単離してから非水系で次段階を行っており、全工程を通して含水系で行ったものではなく、中間体を単離するという煩雑さを有していた。
【0003】
【特許文献1】特開2008-107767号公報
【非特許文献1】Journal of Organic Chemistry,2004年,第69巻,2164ページ
【非特許文献2】Journal of Chemical Crystallography,1997年,第27巻,515ページ
【非特許文献3】Australian Journal of Chemistry,1974年,第27巻,1309ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、有機電子材料、紫外線吸収剤、色材などの各種機能性材料およびその合成中間体として有用なベンゾジチオール化合物の簡便な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、ジチオカルバミン酸とベンゾキノン類とから得られる中間体を酸化してベンゾジチオール化合物を合成する条件を詳細に検討した結果、従来行われていなかった水の存在下での反応が有利に進行することを見出し、この場合には酸化剤を水溶液として使用できることを見出した。さらに含水系で調製した中間体を単離することなく酸化することで目的物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の課題は、以下の方法によって達成された。
【0007】
<1>下記一般式(III)で表される化合物に対して1当量以上の水の存在下で、下記一般式(III)で表される化合物と酸化剤とを反応させることを特徴とする、下記一般式(IV)で表される化合物の製造方法。
【化5】

[一般式(III)中、R1及びR2は、互いに独立して水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R1及びR2は同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。R3及びR4は、互いに独立して水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R3及びR4は同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。]
【化6】

[一般式(IV)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ一般式(III)におけるR1、R2、R3及びR4と同義である。Xは電荷の調整に必要なイオンを表す。mは0以上の数を表す。]
<2>前記一般式(III)で表される化合物が、下記一般式(I)で表される化合物と下記一般式(II)で表される化合物とを用い、下記一般式(I)で表される化合物に対して5当量以上10000当量以下の水の存在下で反応を行って製造されたものであることを特徴とする、<1>項に記載の方法。
【化7】

[一般式(I)中、R1及びR2は、互いに独立して水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R1及びR2は同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。Mは水素原子、金属原子または塩基の共役酸を表す。pは1ないし4の整数を表し、qは1ないし4の整数を表す。]
【化8】

[一般式(II)中、R3及びR4は、互いに独立して水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、又はカルバモイル基を表し、R3及びR4は同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。]
<3>アルコール系溶剤の存在下で反応を行うことを特徴とする、<1>又は<2>項に記載の方法。
<4>前記一般式(I)で表される化合物と酸とが共存した状態で反応させることを特徴とする、<2>又は<3>項に記載の方法。
<5>前記の製造された一般式(III)で表される化合物を単離することなく前記酸化剤と反応させることを特徴とする、<2>〜<4>のいずれか1項に記載の方法。
<6>前記酸化剤を水溶液として使用することを特徴とする、<1>〜<5>のいずれか1項に記載の方法。
<7>前記酸化剤がペルオキソ二硫酸塩であることを特徴とする、<1>〜<6>のいずれか1項に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によれば、有機電子材料、紫外線吸収剤、色材、光学材料などの各種機能性材料およびその合成中間体として有用なベンゾジチオール化合物を、安価な原料を使用して簡便に収率良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、前記一般式(III)で表される化合物に対して1当量以上の水の存在下で、前記一般式(III)で表される化合物と酸化剤とを反応させることを特徴とする。まず、前記一般式(III)で表される化合物について説明する。
【0010】
前記一般式(III)において、R1及びR2は、互いに独立して水素原子、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリール基(例えばフェニル、ナフチル)、4〜7員環(好ましくは5〜6員環)のヘテロ環基(例えばピリジル、モルホリノ)を表す。また、R1及びR2は更に任意の位置に置換基を有していても良い。
【0011】
1価の置換基(以下、「本発明における置換基」ということがある)としては例えば、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)の直鎖又は分岐のアルキル基(例えばメチル、エチル)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリール基(例えばフェニル、ナフチル)、シアノ基、カルボキシル基、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)の置換又は無置換のカルバモイル基(例えばカルバモイル、N-フェニルカルバモイル、N,N-ジメチルカルバモイル)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルキルカルボニル基(例えばアセチル)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリールカルボニル基(例えばベンゾイル)、ニトロ基、炭素数0〜20(好ましくは0〜10)の置換または無置換のアミノ基(例えばアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアシルアミノ基(例えばアセトアミド、エトキシカルボニルアミノ)、炭素数0〜20(好ましくは0〜10)のスルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド)、炭素数2〜20(好ましくは2〜10)のイミド基(例えばスクシンイミド、フタルイミド)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のイミノ基(例えばベンジリデンアミノ)、ヒドロキシ基、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルコキシ基(例えばメトキシ)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリールオキシ基(例えばフェノキシ)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアシルオキシ基(例えばアセトキシ)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルキルスルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニルオキシ)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリールスルホニルオキシ基(例えばベンゼンスルホニルオキシ)、スルホ基、炭素数0〜20(好ましくは0〜10)の置換または無置換のスルファモイル基(例えばスルファモイル、N-フェニルスルファモイル)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルキルチオ基(例えばメチルチオ)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリールチオ基(例えばフェニルチオ)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル)、4〜7員環(好ましくは5〜6員環)のヘテロ環基(例えばピリジル、モルホリノ)などを挙げることができる。
【0012】
2価の置換基としては例えば、炭素原子に2価置換基が結合した形で、C=CR2、C=O、C=S、C=NR、C=N+2、硫黄原子に2価置換基が結合した形でS=O、リン原子に2価置換基が結合した形で、P=O、P=S、P=NRなどが挙げられる(Rは水素原子、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)の直鎖又は分岐のアルキル基、および炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリール基を表す)。
置換基は更に置換されていても良く、置換基が複数ある場合は、同じでも異なっても良い。置換基同士で結合して環を形成しても良い。
【0013】
1及びR2は同一でも異なっていてもよい。また、R1及びR2は互いに結合して環を形成しても良い。R1及びR2が結合している窒素原子を含んで形成する環の例として、ピロリジン環、ピペリジン環、ペルヒドロアゼピン環、モルホリン環、ピペラジン環が挙げられる。これらはさらに置換基を有していても良い(例えばピペリジン環の2位にメチル基が置換したピペコリン環)。
【0014】
1及びR2は、好ましくはアルキル基、アリール基である。より好ましくはアルキル基である。
具体的には、R1及びR2は、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ベンジル基、フェニル基、2-ヒドロキシエチル基、2-エチルヘキシル基、および互いに結合して形成したピロリジン環、ピペリジン環、ピペコリン環である。より好ましくは、後述する前記一般式(I)で表される化合物の入手しやすさの観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ベンジル基、2-エチルヘキシル基、互いに結合して形成したピロリジン環およびピペリジン環である。さらに好ましくは、前記一般式(III)で表される化合物の調製しやすさの観点から、メチル基、エチル基、ブチル基、互いに結合して形成したピロリジン環およびピペリジン環である。最も好ましくは前記一般式(IV)で表される化合物の取り扱いやすさの観点からメチル基、エチル基である。殊更に好ましくは、前記一般式(III)で表される化合物の溶解性の観点から、R1及びR2がいずれもエチル基の場合である。
1及びR2が置換基を有する場合、その置換基として好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホ基、シアノ基、ヘテロ環である。より好ましくは、前記一般式(I)で表される化合物の入手しやすさの観点から、アルキル基、アリール基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基である。さらに好ましくは、後述する前記一般式(I)で表される化合物の調製しやすさの観点から、アルキル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基である。最も好ましくは、前記一般式(III)で表される化合物の溶解性の観点から、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基である。
【0015】
前記一般式(III)中、R3及びR4は、互いに独立して水素原子、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリール基(例えばフェニル、ナフチル)、4〜7員環(好ましくは5〜6員環)のヘテロ環基(例えばピリジル、モルホリノ)、ハロゲン原子、炭素数0〜20(好ましくは0〜10)のアミノ基(例えばアミノ、ジメチルアミノ、アリールアミノ)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルコキシ基(例えばメトキシ)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルキルチオ基(例えばメチルチオ)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のカルバモイル基(例えばカルバモイル、アルキルカルバモイル)を表す。好ましくは、後述する前記一般式(II)で表される化合物の入手しやすさの観点から、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基である。より好ましくは、反応における副反応抑制の観点から、水素原子、アルキル基である。さらに好ましくは、前記一般式(II)で表される化合物の溶解性の観点から、水素原子である。
【0016】
また、R3及びR4は更に任意の位置に置換基を有していても良い。置換基の例としては、上述の「本発明における置換基」が挙げられる。
3及びR4が置換基を有する場合、その置換基として好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホ基、シアノ基、ヘテロ環である。より好ましくは、後述する前記一般式(II)で表される化合物の入手しやすさの観点から、アルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基である。さらに好ましくは、後述する前記一般式(II)で表される化合物の調製しやすさの観点から、アルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基である。最も好ましくは、前記一般式(II)で表される化合物の溶解性の観点から、アルキル基である。
【0017】
置換基が複数ある場合は、同じでも異なってもよい。R3及びR4は同一でも異なっていてもよい。また、R3及びR4は互いに結合して環を形成しても良い。形成する環の例として、ベンゼン環、イミダゾリン環などが挙げられる。これらはさらに前述した置換基によって置換されていても良い。
【0018】
前記一般式(III)で表される化合物は、原料の入手しやすさ及び溶解性の観点から、下記一般式(III')で表されることがより好ましい。
【0019】
【化9】

【0020】
前記一般式(III')中、R1及びR2は、互いに独立して炭素数1〜10のアルキル基を表す。R3及びR4は、互いに独立して水素原子または炭素数5以下のアルキル基を表す。
【0021】
前記一般式(III)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0022】
【化10】

【0023】
【化11】

【0024】
【化12】

【0025】
【化13】

【0026】
【化14】

【0027】
前記一般式(III)で表される化合物は、前記一般式(I)で表される化合物と前記一般式(II)で表される化合物とを用いて製造することができる。以下に、原料である前記一般式(I)で表される化合物および前記一般式(II)で表される化合物について説明する。
【0028】
前記一般式(I)中、R1及びR2は、それぞれ前記一般式(III)におけるR1及びR2と同義であり、好ましい範囲も同様である。
Mは、水素原子、金属原子または塩基の共役酸を表す。好ましい金属原子としては、K、Na、Li、Be、Ca、Mg、Al、Mn、Fe、Ni、Cu、B、Zn、Teが挙げられ、より好ましくは、前記一般式(I)で表される化合物の取り扱いやすさの観点から、K、Na、Ca、Alであり、最も好ましくは、前記一般式(I)で表される化合物の調製しやすさの観点から、K、Naである。塩基の共役酸としては、アンモニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、ピリジニウムなどが挙げられる。
pは1〜4の整数を表し、qは1〜4の整数を表し、p=qである。
【0029】
前記一般式(I)で表される化合物は、入手しやすさまたは調製しやすさの観点から、下記一般式(I')で表されることがより好ましい。
【0030】
【化15】

【0031】
前記一般式(I')中、R1及びR2は、互いに独立して炭素数1〜10のアルキル基を表す。MはNa又はKを表す。
【0032】
前記一般式(I)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0033】
【化16】

【0034】
【化17】

【0035】
【化18】

【0036】
【化19】

【0037】
前記一般式(I)で表される化合物は、市販の薬品を使用するだけでなく、任意の方法で調製したものを使用することができる。例えば、「Synthesis」,1996年,10巻,1193-1195ページ文献中1194ページ左4行目からの実験項、「Journal of the Chemical Society Dalton Transactions」,1992年,9巻,1477-1484ページ文献中1483ページ左33行目からの実験項、同2000年,4巻,605-610ページ文献中606ページ左15行目からの実験項などに記載されている合成法を用いて得たものを使用することができる。
例えば、例示化合物(1−1)は、ジメチルアミン塩酸塩のメタノール溶液に二硫化炭素および水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応させることにより調製することができる。例示化合物(1−39)は、水酸化カリウムと二硫化炭素の水溶液にジエチルアミンを加えて反応させることによって調製することができる。例示化合物(1−43)は、二硫化炭素とピペリジンとを反応させることにより調製することができる。
【0038】
前記一般式(I)で表される化合物は、単離して使用しても良いし、前記一般式(I)で表される化合物を溶媒存在下で合成して単離せずに溶液または分散液のまま使用しても良い。前記一般式(I)で表される化合物を溶媒存在下で調製して溶液のまま使用することがより好ましく、水溶液を使用して調製して水溶液のまま使用することが特に好ましい。
【0039】
前記一般式(II)中、R3及びR4は、それぞれ前記一般式(III)におけるR3及びR4と同義であり、好ましい範囲も同様である。
前記一般式(II)で表される化合物は、入手しやすさ及び溶解性の観点から、下記一般式(II')で表されることがより好ましい。
【0040】
【化20】

【0041】
前記一般式(II')中、R3及びR4は、互いに独立して水素原子または炭素数5以下のアルキル基を表す。
【0042】
前記一般式(II)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0043】
【化21】

【0044】
【化22】

【0045】
【化23】

【0046】
【化24】

【0047】
前記一般式(II)で表される化合物は、市販の薬品を使用するだけでなく、任意の方法で調製したものを使用することができる。例えば、「Organic Synthesis Collective」,Volume 1巻,482ページ、同2巻,553ページ、同4巻,15ページ、同4巻,148ページ、同4巻,698ページ、同6巻,890ページなどに記載されている合成法を用いて調製したものを使用することができる。例えば、例示化合物(2−1)はハイドロキノンの酸化によって調製したものを使用することができる。
【0048】
本発明における、前記一般式(I)で表される化合物と前記一般式(II)で表される化合物を用いて前記一般式(III)で表される化合物を製造する方法について説明する。
本発明の製造方法は、水の存在下で反応を行うことに特徴がある。前記一般式(I)で表される化合物は一般に極性溶媒に溶けやすい性質を有し、水を含むことによって溶解性が向上する。そのため、前記一般式(I)で表される化合物と組み合わせて使用可能な溶媒種が多くなり、単離、精製、取り扱いなどの操作上の簡便さが改善される。また、前記一般式(I)で表される化合物は上述のように水系の反応で調製されるため、前記一般式(I)で表される化合物の入手が容易になる。無水条件下で反応を行うためには、調製した原料を単離・乾燥する必要があったが、本発明では、調製した原料を単離・乾燥する必要なく反応に供することができる。
【0049】
水の存在量は、前記一般式(I)で表される化合物に対して5当量以上10000当量以下である。より好ましくは10当量以上1000当量以下であり、更に好ましくは20当量以上1000当量以下である。水の存在が少なすぎると、前記一般式(I)で表される化合物を単離する際の水和水として固体に含まれる場合があり、本発明における溶解性向上の効果が低減される。水は5当量以上であれば良く、前記一般式(I)で表される化合物を溶解または分散できる程度の量を使用することが好ましい。また、水の存在量が多すぎると、一般式(I)または(II)で表される化合物が析出して反応に関与できなくなる場合があり、本発明における効果が損なわれてしまう。
用いる水の質量は、前記一般式(I)で表される化合物の質量に対して0.1〜100倍が好ましく、0.2〜10倍がより好ましく、0.5〜5倍がさらに好ましい。
【0050】
前記一般式(I)で表される化合物と前記一般式(II)で表される化合物とのモル比は、3:1〜1:2の範囲が好ましい。前記一般式(I)あるいは前記一般式(II)で表される化合物を過剰に使用する場合には、反応の促進には有利になるものの、反応に使用されない分が残ることになり、副反応の進行、純度や次工程への悪影響などの点で望ましくない。特に前記一般式(II)で表される化合物は酸化剤として機能するために、副反応を抑制するためには必要量だけ使用することが望ましい。前記一般式(I)で表される化合物と前記一般式(II)で表される化合物とのモル比は、3:1〜1:1.5の範囲がより好ましく、2:1〜1:1.2の範囲がさらに好ましく、1.5:1〜1:1.1の範囲が特に好ましく、1.2:1〜1:1の範囲が最も好ましい。
【0051】
前記一般式(I)で表される化合物と前記一般式(II)で表される化合物とを反応させる順序は、前記一般式(I)で表される化合物を含む系に前記一般式(II)で表される化合物を添加しても良いし、前記一般式(II)で表される化合物を含む系に前記一般式(I)で表される化合物を添加しても良い。また、前記一般式(I)で表される化合物と前記一般式(II)で表される化合物との存在比を一定に保つように両者を同時に添加しても良い。前記一方を含む系に他方を添加する方法が、操作が簡便になる点で好ましい。より好ましくは、前記一般式(I)で表される化合物を含む系に前記一般式(II)で表される化合物を添加する方法である。
【0052】
前記一般式(I)で表される化合物は、単独で反応に供しても良いが、任意の媒体に溶解または分散して使用することが好ましい。水または上述した有機溶剤に溶解あるいは分散して使用することがより好ましい。水および有機溶剤の混合液に溶解あるいは分散した状態で使用することがさらに好ましい。水および水と混合する有機溶剤の混合液に溶解あるいは分散した状態で使用することが特に好ましい。水およびメタノールの混合液に溶解した状態で使用することが最も好ましい。水および有機溶剤の混合液の混合比は、任意の比率であって良いが、水:有機溶剤の比が50:1〜1:50の範囲が好ましい(この場合の比率は混合前の体積比で定義する。)。前記一般式(I)で表される化合物の溶解性の観点から、10:1〜1:30の範囲がより好ましく、有機溶剤の使用量低減の観点から10:1〜1:10の範囲がさらに好ましい。
前記一般式(I)で表される化合物を任意の媒体に溶解または分散して使用する際の濃度は、任意の濃度であって良いが、前記一般式(I)で表される化合物:媒体の比が10:1〜1:50の範囲が好ましい(この場合の比率は質量比で定義する。)。溶液または分散液の取り扱いの観点から、2:1〜1:30の範囲がより好ましく、媒体使用量低減の観点から、2:1〜10:1の範囲がさらに好ましい。
【0053】
前記一般式(II)で表される化合物は、単独で反応に供しても良いが、任意の媒体に溶解または分散して使用することが好ましい。水または上述した有機溶剤に溶解あるいは分散して使用することがより好ましい。水と混合する有機溶剤に溶解あるいは分散して使用することがさらに好ましい。メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、2-ブタノン、N,N-ジメチルアセトアミドあるいはN-メチルピロリドンに溶解あるいは分散して使用することが特に好ましい。メタノールに溶解して使用することが最も好ましい。
前記一般式(II)で表される化合物を任意の媒体に溶解または分散して使用する際の濃度は、任意の濃度であって良いが、前記一般式(II)で表される化合物:媒体の比が10:1〜1:50の範囲が好ましい(この場合の比率は質量比で定義する。)。溶液または分散液の取り扱いの観点から、2:1〜1:30の範囲がより好ましく、媒体使用量低減の観点から、2:1〜10:1の範囲がさらに好ましい。
【0054】
前記一般式(I)で表される化合物と前記一般式(II)で表される化合物とを反応させる際に、反応の促進、副反応の抑制、選択性の向上、溶解性の調節などの目的で添加剤を使用しても良い。例えば、酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、コハク酸、シュウ酸、酒石酸、安息香酸、サリチル酸、フタル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ホウ酸、フェノールなどのブレンステッド酸、塩化アルミニウム、ホウ酸トリメチル、四塩化チタン、チタンテトライソプロポキシド、塩化亜鉛などのルイス酸などが挙げられる)、塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、ナトリウムメトキシド、カリウムt-ブトキシド、アンモニアなどの無機塩基、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジアザビシクロ[2.2.0]ウンデセン(DBU)、ピリジンなどの有機塩基などが挙げられる)、有機物(例えば、N,N-ジメチルアミノピリジン、プロリン、トリフェニルホスフィン、)、無機物(例えば、鉄、銅、亜鉛、パラジウム、金、銀、硫黄などの単体、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、塩化鉄、硫化鉄、塩化銅、酢酸パラジウムなどの塩、酸化鉄、酸化チタンなどの金属酸化物などが挙げられる)、その他(例えば、活性炭、セライト、シリカゲル、アルミナ、活性白土、モレキュラーシーブス、ゼオライト、モンモリロナイト、イオン交換樹脂などが挙げられる)などが挙げられる。これらのうち複数のものを使用しても良い。
【0055】
反応の促進および副反応の抑制の観点から、添加剤が酸または塩基であることが好ましい。本発明における前記一般式(I)で表される化合物と前記一般式(II)で表される化合物から前記一般式(III)で表される化合物を得る反応は、前記一般式(I)で表される化合物に対して前記一般式(II)で表される化合物が共役付加する機構が考えられる。共役付加反応はカルボニル基が関係する付加反応であるため、カルボニル基を活性化する観点で酸を添加することがより好ましい。添加剤が塩酸、硫酸、カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、コハク酸、シュウ酸、酒石酸、安息香酸、サリチル酸、フタル酸)またはスルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸)であることがさらに好ましい。適切な反応促進効果が得られる観点からカルボン酸またはスルホン酸が特に好ましく、カルボン酸が最も好ましい。酢酸が添加剤であることが殊更に好ましい。
【0056】
添加剤の使用量は、その目的と効果によって任意に設定することができる。前記一般式(I)で表される化合物に対してモル比0.01〜100倍で添加する場合が好ましく、0.1〜50倍で添加する場合がより好ましく、0.5〜10倍で使用する場合がさらに好ましい。1〜5倍で使用する場合が特に好ましい。なお、添加剤の分子量あるいは式量を正しく求められない場合には質量比で定義することもできる。前記一般式(I)で表される化合物に対して質量比0.01〜100倍で添加する場合が好ましく、0.1〜50倍で添加する場合がより好ましく、0.5〜10倍で使用する場合がさらに好ましい。
【0057】
添加剤の使用方法は、反応の最初から存在していても、途中で添加してもよい。また、前記一般式(I)で表される化合物と共存させても、前記一般式(II)で表される化合物と共存させてもよい。好ましくは、前記一般式(II)で表される化合物と共存させる場合である。より好ましくは、前記一般式(II)で表される化合物と酸を共存させる場合である。さらに好ましくは、前記一般式(II)で表される化合物とカルボン酸を共存させる場合である。特に好ましくは、前記一般式(II)で表される化合物と酢酸を共存させる場合である。
【0058】
反応温度は基質によって適宜選択されるが、好ましくは−10〜80℃であり、より好ましくは0〜60℃、さらに好ましくは0〜40℃、最も好ましくは0〜35℃である。前記一般式(I)で表される化合物と前記一般式(II)で表される化合物の混合中および反応中に、温度を変化させても良い。
【0059】
反応時間は基質によって適宜調整されるが、好ましくは1秒〜5時間、より好ましくは1分〜2時間、さらに好ましくは3分〜1時間、最も好ましくは5分〜30分である。
なお、本発明においては前記一般式(I)で表される化合物と前記一般基(II)で表される化合物との混合が完了してから、反応終了後に行う操作を開始するまでの時間を反応時間と定義し、前記一般式(I)で表される化合物と前記一般式(II)で表される化合物とを混合している時間はこれに含めない。反応の暴走を抑止するためや混合速度および温度の調整による収率、純度および選択性を向上させるために、前記一般式(I)で表される化合物と前記一般式(II)で表される化合物とを混合させる操作は、温度と時間を制御して行うことが望ましい。温度と時間の制御は、反応を行うスケール、容器のサイズや形状、攪拌効率、冷却および加熱効率に依存し、混合速度が反応の選択性にも影響するために一概に規定できるものではないが、一定の温度以下に保ちつつ短時間で混合させることが好ましい。混合させる温度は上述の反応温度より低い温度であることが好ましく、−10〜60℃がより好ましく、−5〜40℃がさらに好ましく、0〜30℃が特に好ましい。混合させる時間は、1秒〜5時間が好ましく、1分〜3時間がより好ましく、5分〜2時間がさらに好ましく、10分〜1時間が特に好ましい。
【0060】
前記一般式(III)で表される化合物は、溶媒や副生成物を除去することで単離しても良いし、単離せずにそのまま次の目的に使用しても良い。単離する場合には、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどを併用することで精製しても良いが、前記一般式(III)で表される化合物の性質および単離方法によって、単離する操作のみを行っても目的に合った品質が得られる場合には精製操作を行わなくても良い。製造工程の簡略化の観点から好ましくは、単離する操作のみを行う場合か、単離せずにそのまま使用する場合であり、より好ましくは、単離せずにそのまま使用する場合である。
【0061】
続いて、前記一般式(III)で表される化合物と酸化剤を反応させて前記一般式(IV)で表される化合物を製造する方法について説明する。
【0062】
前記一般式(IV)で表される化合物について説明する。
前記一般式(IV)において、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ前記一般式(III)におけるR1、R2、R3及びR4と同義である。好ましい場合も同じである。前記一般式(III)におけるR1、R2、R3及びR4と、前記一般式(IV)におけるR1、R2、R3及びR4は、同じものを表しても良いし、本発明の反応中に官能基変換反応(例えば、加水分解反応、エステル交換反応や酸化反応など)を受けて異なるものを表しても良い。同じものを表すことがより好ましい。
【0063】
Xは、電荷の調整に必要なイオンを表す。典型的な陽イオンは水素イオン、無機アンモニウムイオン、炭素数1〜50(好ましくは1〜20)の有機アンモニウムイオン(例えば、トリアルキルアンモニウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、イミダゾリニウムイオン、グアニジニウムイオン)、アルカリ金属イオン(例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン)、およびアルカリ土類金属イオン(例えば、カルシウムイオン)である。一方、陰イオンは具体的に無機陰イオンあるいは有機陰イオンのいずれであってもよく、例えば、ハロゲン化物イオン(例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化物イオン)、炭素数1〜30(好ましくは1〜20)のアルキルスルホン酸イオン(例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸)、炭素数6〜30(好ましくは6〜20)のアリールスルホン酸イオン(例えば、p-トルエンスルホン酸イオン、p-クロロベンゼンスルホン酸イオン)、炭素数6〜30(好ましくは6〜10)のアリールジスルホン酸イオン(例えば、1,3-ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5-ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6-ナフタレンジスルホン酸イオン)、水酸化物イオン、炭素数1〜30(好ましくは1〜10)のアルコキシイオン(例えば、メトキシイオン、エトキシイオン、t-ブトキシイオン)、炭素数6〜30(好ましくは6〜20)のアリールオキシイオン(例えば、フェノキシイオン、ハイドロキノンモノアニオン、カテコールモノアニオン)、炭素数1〜30(好ましくは1〜20)のアルキルカルボン酸イオン(例えば、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、酒石酸イオン)、炭素数6〜30(好ましくは6〜20)のアリールカルボン酸イオン(例えば、安息香酸イオン、サリチル酸イオン)、炭素数1〜30(好ましくは1〜20)のアルキル硫酸イオン(例えば、メチル硫酸イオン)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオンなどが挙げられる。
【0064】
Xが陽イオンの場合に好ましくは、水素イオン、無機アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオン、アルカリ金属イオンである。より好ましくは、水素イオン、有機アンモニウムイオン、アルカリ金属イオンである。さらに好ましくは、水素イオン、アルカリ金属イオンである。特に好ましくは水素イオンである。
Xが陰イオンの場合に好ましくは、ハロゲン化物イオン、アルキルスルホン酸イオン、アリールスルホン酸イオン、水酸化物イオン、アルコキシイオン、アリールオキシイオン、アルキルカルボン酸イオン、アリールカルボン酸イオンである。より好ましくは、ハロゲン化物イオン、アルコキシイオン、アリールオキシイオン、アルキルカルボン酸イオン、アリールカルボン酸イオンである。さらに好ましくは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、メトキシイオン、エトキシイオン、t-ブトキシイオン、フェノキシイオン、ハイドロキノンモノアニオン、酢酸イオン、安息香酸イオンである。特に好ましくは、塩化物イオン、メトキシイオン、エトキシイオン、ハイドロキノンモノアニオン、酢酸イオンである。最も好ましくは、塩化物イオン、ハイドロキノンモノアニオン、酢酸イオンである。前記一般式(IV)で表される化合物の溶解性の観点から殊更に好ましくは酢酸イオンである。
Xは陰イオンの場合がより好ましい。
【0065】
mは電荷の調整に必要な0以上の数を表す。一般式(IV)で表される化合物でXを除く構造とXとの組み合わせによっては、1/2や2/3などの整数以外の値も取り得る。mの値として好ましくは0または1である。
【0066】
前記一般式(IV)で表される化合物でXを除く構造はイミニウムカチオンを部分構造として有しているが、前記一般式(IV)で表される化合物でXを除く構造が実際に陽イオン、陰イオンであるか、あるいは正味のイオン電荷を持つかどうかは、前記一般式(IV)の構造に依存する。好ましくは、陽イオンであるか正味のイオン電荷を持たない場合である。
前記一般式(IV)で表される化合物でXを除く構造が陽イオンである場合、Xは上述した好ましい陰イオンである。
正味のイオン電荷を持たない場合には、R1、R2、R3及びR4で表される置換基中に陰イオンが存在していても良いし、下記一般式(IV-a)で表されるフェノール性水酸基が解離した両性イオン型構造であっても良い。
【0067】
【化25】

【0068】
前記一般式(IV)で表される化合物は、単離の容易さおよび取り扱いの容易さの観点から、下記一般式(IV')または(IV-a')で表されることがより好ましい。
【0069】
【化26】

【0070】
前記一般式(IV')及び(IV-a')中、R1及びR2は、互いに独立して炭素数1〜10のアルキル基を表す。R3及びR4は、互いに独立して水素原子または炭素数5以下のアルキル基を表す。Xは塩化物イオン、酢酸イオンを表す。
【0071】
前記一般式(IV)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0072】
【化27】

【0073】
【化28】

【0074】
【化29】

【0075】
【化30】

【0076】
【化31】

【0077】
本発明における前記一般式(III)で表される化合物と酸化剤を反応させて前記一般式(IV)で表される化合物を製造する方法について説明する。
【0078】
本発明で用いる酸化剤は、どのようなものであっても良い。例えばM.Hudlicky著,“Oxidations in Organic Chemistry”(ACS Monograph,1990年)に記載の酸化剤などが挙げられる。具体的には、酸素(例えば、酸素(O2;空気も含む)、オゾン(O3))、過酸化物(例えば、過酸化水素(H2O2)、過酸化ナトリウム(Na2O2)、過酸化カリウム(K2O2)、過ホウ酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム(Na2S2O8)、ペルオキソ二硫酸カリウム(K2S2O8)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム((NH4)2S2O8)、過硫酸(H2SO5)、ペルオキソ一硫酸カリウム(KHSO5)、Oxone(登録商標;2KHSO5・KHSO4・K2SO4)、ジオキシラン(例えば、ジメチルジオキシラン)、有機過酸(例えば、t-ブチルハイドロパーオキシド(tBuCOOH)、ベンゾイルパーオキシド((PhCOO)2O)、p-ニトロベンゾイルパーオキシド((p-NO2-C6H4COO)2O)、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート((iPrOCOO)2)、t-ブチルパーオキシアセテート(tBuCOOCOCH3)、t-ブチルパーオキシベンゾエート(tBuCOOCOPh)、ビス(トリメチルシリル)パーオキシド(Me3SiOOSiMe3))、過ギ酸(HCOOOH)、過酢酸(CH3COOOH)、過トリフルオロ酢酸(CF3COOOH)、過安息香酸(PhCOOOH)、m-クロロ過安息香酸(m-Cl-C6H4COOOH)、p-ニトロ過安息香酸(p-NO2-C6H4COOOH)、過フタル酸(o-C6H4(CO2H)COOOH)、過マレイン酸(cis-HOOCH=CHCOOOH)、過ジクロロマレイン酸(cis-HOOCCl=CClCOOOH)、過プロピオン酸(C2H5COOOH)、過ラウリル酸(C11H23COOOH)、過ペンタフルオロ安息香酸(C6F5COOOH)、金属(例えば、銅、塩化銅(CuCl)、酸化銅(CuO)、硫酸銅(CuSO4)、クロム酸銅(CuCr2O4)、酢酸銅(Cu(OAc)2)、塩基性炭酸銅(CuCO3・Cu(OH)2)、銀、酸化銀(Ag2O)、硝酸銀(AgNO3)、炭酸銀(Ag2CO3)、臭化水銀(HgBr2)、酸化水銀(HgO)、酢酸水銀(Hg(OAc)2)、トリフルオロ酢酸水銀(HgOCOCF3、Hg(OCOCF3)2)、塩化アルミニウム(AlCl3)、硝酸タリウム(Tl(NO3)3)、モノ酢酸タリウム(TlOAc)、トリ酢酸タリウム(Tl(OAc)3)、硝酸アンモニウムセリウム((NH4)2Ce(NO3)6)、硫酸アンモニウムセリウム((NH4)2Ce(SO4)4・2(NH4)2SO4)、酸化鉛(PbO2、Pb3O4)、酢酸鉛(Pb(OAc)4)、トリフルオロ酢酸鉛(Pb(OCOCF3)4)、三酸化二窒素(N2O3)、亜硝酸(HNO2)、亜硝酸アルキル(例えば亜硝酸エチル(C2H5ONO)、亜硝酸ブチル(C4H9ONO)、亜硝酸ペンチル(C5H11ONO))、四酸化二窒素(N2O4)、硝酸(HNO3)、硝酸アンモニウム(NH4NO3)、硝酸鉛(Pb(NO3)2)、酸化バナジウム(V2O5)、バナジルアセチルアセトナート(VO(acac)2)、酸化ビスマス(Bi2O3)、三酸化ナトリウムビスマス(NaBiO3)、ニトロソ二スルホン酸二カリウム(Fremy塩;ON(SO3K)2)、硫黄、硫酸(H2SO4)、酸化セレン(SeO2)、六フッ化モリブデン(MoF6)、オキシ塩化モリブデン(MoOCl3)、酸化モリブデン(MoO3)、酸化クロム(CrO3)、酸化クロム−ピリジン錯体(Collins試薬;CrO3・2C5H5N)、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC;C5H5N・HCl・CrO3)、クロム酸カリウム(K2CrO4)、クロム酸銀(Ag2CrO4)、重クロム酸カリウム(K2Cr2O7)、二クロム酸ピリジニウム(PDC;(C5H5N)2Cr2O7)、塩化クロミル(Cr2O2Cl2)、t-ブチルクロメート((tBuO)2CrO4)、酢酸クロム((AcO)2CrO4)、塩素、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)、次亜塩素酸カリウム(KOCl)、次亜塩素酸カルシウム(Ca(OCl)2)、次亜塩素酸t-ブチル(tBuOCl)、亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)、亜塩素酸カリウム(KClO2)、塩素酸ナトリウム(NaClO3)、塩素酸カリウム(KClO3)、塩素酸銀(AgClO3)、塩素酸バリウム(Ba(ClO3)2)、N-クロロコハク酸イミド(NCS)、1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、塩化イソシアヌル、ナトリウムN-クロロ-p-トルエンスルホンアミド(Chloramine-T)、臭素、次亜臭素酸ナトリウム(NaOBr)、次亜臭素酸カリウム(KOBr)、亜臭素酸ナトリウム(NaBrO2)、亜臭素酸カリウム(KBrO2)、臭素酸ナトリウム(NaBrO3)、臭素酸カリウム(KBrO3)、N-ブロモコハク酸イミド(NBS)、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、N-ブロモ酢酸アミド(CH3CONHBr)、ピリジニウムブロミドペルブロミド(C5H5NHBr3)、ヨウ素、次亜ヨウ素酸ナトリウム(NaOI)、次亜ヨウ素酸カリウム(KOI)、ヨウ素酸ナトリウム(NaIO3)、過ヨウ素酸(HIO4)、オルト過ヨウ素酸(H5IO6)、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)、過ヨウ素酸カリウム(KIO5)、過ヨウ素酸テトラブチルアンモニウム((C4H9)4NIO4)、ヨードソベンゼン(PhIO)、ヨードベンゼンジアセテート(PhI(OAc)2)、ヨードキシベンゼン(PhIO2)、硫酸マンガン(Mn2(SO4)3)、酢酸マンガン(Mn(OAc)3)、二酸化マンガン(MnO2)、マンガン酸カリウム(K2MnO4)、過マンガン酸カリウム(KMnO4)、過マンガン酸銅(Co(MnO4)2)、過マンガン酸マグネシウム(Mg(MnO4)2)、過マンガン酸亜鉛(Zn(MnO4)2)、塩化鉄(FeCl3)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、鉄酸カリウム(K2FeO4)、ラネーニッケル、四酸化ルテニウム(RuO4)、四酸化オスミウム(OsO4)、ヘキサミン(C6H12N4)、クロラール(CCl3CHO)、クロラニル(C6Cl4O2)、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン(DDQ)、ジエチルアゾジカルボキシレート(EtOOCN=NCOOEt)、ニトロソベンゼン(PhNO)、2-ニトロプロパン(CH3CHNO2CH3)、トリメチルアミンオキシド(Me3NO)、N-メチルモルフォリンオキシド(O(CH2CH2)2NMeO)、ピリジンオキシド(C5H4NO)、1-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニウムクロリド、トリフェニルホスフィンオキシド、ジメチルスルホキシド、フェニルセレニルクロリドなどが挙げられる。これらの酸化剤は前記一般式(III)で表される化合物の酸化剤として機能しても良いし、前記一般式(III)で表される化合物の真の酸化剤を酸化するための共酸化剤として機能しても良い。
【0079】
取り扱いの容易さ、酸化剤の入手性の観点から好ましくは、酸化銀、硫酸アンモニウムセリウム、酸化鉛、酢酸鉛、四酸化二窒素、重クロム酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、塩素酸アンモニウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸アンモニウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸アンモニウム、ヨウ素酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、塩化鉄、硫酸鉄、過酸化水素、N-クロロコハク酸イミド、N-ブロモコハク酸イミド、塩化イソシアヌル、1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、である。
【0080】
目的の酸化反応に対する選択性が高く、望まない酸化反応が起こらない観点から、より好ましくは、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、塩素酸アンモニウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸アンモニウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸アンモニウム、ヨウ素酸ナトリウム、塩化鉄、硫酸鉄、過酸化水素、N-クロロコハク酸イミド、N-ブロモコハク酸イミド、塩化イソシアヌル、1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントインである。
【0081】
酸化剤自体や反応後の処理物の環境への影響が少ない観点から、さらに好ましくは、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、塩素酸アンモニウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸アンモニウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸アンモニウム、塩化鉄、硫酸鉄、過酸化水素、N-クロロコハク酸イミド、塩化イソシアヌル、1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントインである。
【0082】
水溶液としての取り扱いの容易さの観点から特に好ましくは、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素であり、ペルオキソ二硫酸アンモニウムが殊更に好ましい。
【0083】
前記一般式(III)で表される化合物と酸化剤によって前記一般式(IV)で表される化合物を合成する反応において、酸化剤は2電子分の酸化を行っている。2電子分の酸化能を1当量として酸化剤の当量を表すと、本発明に用いる酸化剤の量は、1当量以上10当量以下が好ましい。過剰の酸化剤の後処理を容易にする観点で、より好ましくは1〜5当量である。望まない副反応を抑制する観点で、さらに好ましくは1〜2当量である。生成物である前記一般式(IV)で表される化合物がさらに酸化されるのを抑制する観点で、特に好ましくは1〜1.2当量である。
【0084】
前記一般式(III)で表される化合物と酸化剤とを反応させる順序は、前記一般式(III)で表される化合物を含む系に酸化剤を添加しても良いし、酸化剤を含む系に前記一般式(III)で表される化合物を添加しても良い。また、前記一般式(III)で表される化合物と酸化剤の存在比を一定に保つように両者を同時に添加しても良い。前記一方を含む系に他方を添加する方法が、操作が簡便になる点で好ましい。より好ましくは、前記一般式(III)で表される化合物を含む系に酸化剤を添加する方法である。
【0085】
本発明の製造方法は、水の存在下で反応を行うことに特徴がある。水が存在するので酸化剤を水溶液として使用することが可能となり、無機系の安価酸化剤の使用や酸化剤の選択による反応の制御ができるなどのメリットが得られる。また、前記一般式(III)で表される化合物は一般に極性溶媒に溶けやすい性質を有し、水を含むことによって溶解性が変化するために、溶剤との組み合わせによって、単離、精製、取り扱いなどの操作上の簡便さが改善される。また、前記一般式(III)で表される化合物を上述のように水系の反応で調製した場合には、前記一般式(III)で表される化合物を単離することなくそのまま使用できるようになる。
【0086】
水の存在量は、前記一般式(III)で表される化合物に対して1当量以上である。これ以下では、本発明における水を併用する効果が低減される。水は1当量以上であれば良いが、用いる酸化剤を溶解または分散できる程度の量を使用することが好ましい。用いる水の質量は用いる酸化剤の質量に対して0.1〜100倍が好ましく、反応液全体の体積を小さくできる設備上の優位性の観点から0.2〜10倍がより好ましく、0.5〜5倍がさらに好ましい。
【0087】
本反応において、前記一般式(III)で表される化合物は、いずれの方法で調製されたものを使用しても良いが、前記一般式(I)で表される化合物と前記一般式(II)で表される化合物とを反応させて調製したものを使用することが好ましい。特に、前記一般式(I)で表される化合物に対して5当量以上10000当量以下の水の存在下で、前記一般式(II)で表される化合物と反応させて調製したものであることがより好ましい。加えて、アルコール系溶剤の存在下で反応させて調製したものであることがさらに好ましい。
前記一般式(I)で表される化合物と前記一般式(II)で表される化合物とを反応させて調製した前記一般式(III)で表される化合物は、単離して使用しても良いし、単離せずに溶液または分散液のまま使用しても良い。単離操作の省略による操作の簡便さおよび製造に要する時間短縮の観点から前記一般式(III)で表される化合物を溶媒存在下で合成して溶液または分散液のまま使用することがより好ましく、水を含む溶媒を使用して合成して溶液または分散液のまま使用することが特に好ましい。
【0088】
本反応において、前記一般式(III)で表される化合物および酸化剤のみを用いて行っても良いが、任意の溶剤を使用して行うことができる。溶剤には完全に溶解していても一部乃至は全体が溶解していなくてもよい。
【0089】
本反応において、水に加えて、有機溶剤を併用しても良い。有機溶剤としては、極性溶剤および非極性溶剤のどちらでもよく、極性溶剤の場合にはプロトン性溶剤でも非プロトン性溶剤のどちらでも良い。例えば、炭化水素系(例えば、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン)アルコール系(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール)、グリコールエーテル系(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル)、ケトン系(例えば、アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン)、エーテル系(例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン)、カルボン酸系(例えば、酢酸、プロピオン酸)、スルホン酸系(例えば、メタンスルホン酸)、ニトリル系(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル)、ハロゲン系(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン)、アミド系(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン)、スルホキシド系(例えば、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環系(例えば、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、スルホラン、ピリジン)、エステル系(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル)、尿素系(例えば、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)などが挙げられる。これら溶媒は化合物の溶解性などを考慮して単独または2種以上組み合わせて用いることができる。水と容易に混合する有機溶剤を用いた場合には均一系で反応を行うことができ、水と混合しない有機溶剤を用いた場合には水相と有機相の2相系で反応を行うことができる。これらは原料と生成物の構造と性質および反応制御の観点から任意に選択することができる。また、イオン性液体を溶媒として用いても良いし、フルオラス溶媒を用いても良いし、超臨界流体または亜臨界流体を溶媒として用いても良い。
【0090】
用いることができる有機溶剤として好ましくは、アルコール系、ケトン系、エーテル系、アミド系、ヘテロ環系、炭化水素系、エステル系であり、アルコール系溶剤がより好ましい。中でも好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、アセトン、2-ブタノン、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、酢酸エチルである。さらに好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、トルエン、キシレン、酢酸エチルである。前記一般式(I)、(II)又は(III)で表される化合物の溶解しやすさの観点から、特に好ましくは、メタノール、エタノール、アセトン、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンである。最も好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノールであり、メタノールが殊更好ましい。
【0091】
最も好ましくは、前記一般式(I)で表される化合物と前記一般式(II)で表される化合物とから前記一般式(III)で表される化合物を合成する際に用いたものと同じ溶媒の場合である。殊更に好ましくは、前記一般式(III)で表される化合物を単離せずにそのまま前記一般式(IV)を合成する反応を行うことで、新たな溶媒を使用しない場合である。
【0092】
前記一般式(III)で表される化合物を任意の媒体に溶解または分散して使用する際の濃度は、任意の濃度であって良いが、前記一般式(III)で表される化合物:媒体の比が10:1〜1:50の範囲が好ましい(この場合の比率は質量比で定義する。)。溶液または分散液の取り扱いの観点から、2:1〜1:30の範囲がより好ましく、媒体使用量低減の観点から、2:1〜10:1の範囲がさらに好ましい。
【0093】
本発明において、酸化剤はそのままの状態で使用しても良いが、任意の媒体に溶解または分散して使用することが好ましい。媒体としては水および上述の有機溶剤が挙げられる。媒体が酸化されたり好ましくない酸化物を形成したりするため、使用できる媒体は用いる酸化剤によって制限されるが、組み合わせ可能な酸化剤と媒体が使用できる。中でも水を使用することが、酸化剤の溶解性の観点で好ましい。
【0094】
酸化剤を任意の媒体に溶解または分散して使用する際の濃度は、任意の濃度であって良いが、酸化剤:媒体の比が10:1〜1:50の範囲が好ましい(この場合の比率は質量比で定義する)。溶液または分散液の取り扱いの観点から、2:1〜1:30の範囲がより好ましく、媒体使用量低減の観点から、2:1〜10:1の範囲がさらに好ましい。
【0095】
前記一般式(III)で表される化合物と酸化剤とを反応させる際に、反応の促進、副反応の抑制、選択性の向上、溶解性の調節などの目的で添加剤を使用しても良い。添加剤の例としては、上述したものが挙げられる。
【0096】
反応の促進および副反応の抑制の観点から、添加剤が酸または塩基であることが好ましい。本発明における前記一般式(III)で表される化合物から前記一般式(IV)で表される化合物への反応の機構は明らかではないが、前記一般式(III)で表される化合物が酸化されてベンゾキノン中間体を形成し、続く分子内付加反応によって前記一般式(IV)で表される化合物となる機構が考えられる。前記一般式(III)で表される化合物が酸化されてベンゾキノン中間体となる反応においては、塩基性の方が加速されるため塩基を添加することが好ましく、ベンゾキノン中間体が分子内付加反応によって前記一般式(IV)で表される化合物となる反応においては、カルボニル基を活性化する観点で酸を添加することが好ましく、得られた前記一般式(IV)で表される化合物がさらに酸化されてベンゾキノン副生成物となる反応を抑制するためには、酸を添加することが好ましい。また、添加剤が前記一般式(IV)で表される化合物中のXに相当することで、溶解度の変化を利用して反応を制御することや生成物の単離、精製を容易にすることも好ましい。これらを制御するために複数の添加剤を組み合わせて使用しても良いし、分割して添加しても良い。
【0097】
添加剤が塩酸、硫酸、カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、コハク酸、シュウ酸、酒石酸、安息香酸、サリチル酸、フタル酸)、スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸)、塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ナトリウムメトキシド)であることがさらに好ましい。副反応抑制の観点から、塩酸、カルボン酸、スルホン酸、塩基が特に好ましく、反応促進の観点から、カルボン酸、塩基が最も好ましい。
【0098】
添加剤の使用量は、その目的と効果によって任意に設定することができる。前記一般式(III)で表される化合物に対してモル比0.01〜100倍で添加する場合が好ましく、0.1〜50倍で添加する場合がより好ましく、0.5〜10倍で使用する場合がさらに好ましい。1〜5倍で使用する場合が特に好ましい。なお、添加剤の分子量あるいは式量を正しく求められない場合には質量比で定義することもできる。前記一般式(III)で表される化合物に対して質量比0.01〜100倍で添加する場合が好ましく、0.1〜50倍で添加する場合がより好ましく、0.5〜10倍で使用する場合がさらに好ましい。
【0099】
添加剤の使用方法は、反応の最初から存在していても、途中で添加してもよい。また、前記一般式(III)で表される化合物と共存させても、酸化剤と共存させてもよい。好ましくは、前記一般式(III)と酸化剤との混合が完了した後で添加する場合である。より好ましくは、混合完了した後で酸を添加する場合である。
【0100】
反応温度は基質によって適宜選択されるが、好ましくは−10〜100℃であり、温度管理の容易さの観点からより好ましくは0〜80℃、反応促進の観点からさらに好ましくは10〜60℃、副反応抑制の観点から最も好ましくは20〜50℃である。前記一般式(III)で表される化合物と酸化剤の混合中および反応中に、温度を変化させても良い。
【0101】
反応時間は基質によって適宜調整されるが、好ましくは1秒〜24時間、製造効率向上の観点からより好ましくは1分〜10時間、反応を十分に進行させる観点でさらに好ましくは5分〜8時間、副反応を抑制する観点で最も好ましくは10分〜5時間である。
なお、本発明においては前記一般式(III)で表される化合物と酸化剤との混合が完了してから、反応終了後に行う操作を開始するまでの時間を反応時間と定義し、一般式(III)で表される化合物と酸化剤とを混合している時間はこれに含めない。反応の暴走を抑止するためや混合速度および温度の調整による収率、純度および選択性を向上させるために、前記一般式(III)で表される化合物と酸化剤を混合させる操作は、温度と時間を制御して行うことが望ましい。温度と時間の制御は、反応を行うスケール、容器のサイズや形状、攪拌効率、冷却および加熱効率に依存し、混合速度が反応の選択性にも影響するために一概に規定できるものではないが、一定の温度以下に保ちつつ短時間で混合させることが好ましい。混合させる温度は上述の反応温度より低い温度であることが好ましく、−10〜60℃がより好ましく、−5〜40℃がさらに好ましく、温度管理の容易さの観点で0〜30℃が特に好ましい。混合させる時間は、1秒〜5時間が好ましく、製造効率の観点から1分〜3時間がより好ましく、5分〜2時間がさらに好ましく、10分〜1時間が特に好ましい。
【0102】
前記一般式(IV)で表される化合物は、溶媒や副生成物を除去することで単離しても良いし、単離せずにそのまま次の目的に使用しても良い。単離する場合には、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどを併用することで精製しても良いが、前記一般式(IV)で表される化合物の性質および単離方法によって、単離する操作のみを行っても目的に合った品質が得られる場合には精製操作を行わなくても良い。製造工程の簡略化の観点から好ましくは、単離する操作のみを行う場合か、単離せずにそのまま使用する場合であり、より好ましくは、単離せずにそのまま使用する場合である。
【0103】
本発明における前記一般式(I)、(II)、(III)又は(IV)のいずれかで表される化合物は、同位元素(例えば、2H、3H、13C、15N、17O、18Oなど)を含有していてもよい。
【0104】
本発明における前記一般式(I)、(II)、(III)又は(IV)のいずれかで表される化合物は、構造とその置かれた環境によって互変異性体を取り得る。本明細書においては代表的な形の一つで記述しているが、本明細書の記述と異なる互変異性体も本発明に用いられる前記一般式(I)、(II)、(III)又は(IV)のいずれかで表される化合物に含まれる。
【0105】
本発明における前記一般式(II)又は(III)で表される化合物は、構造とその置かれた環境によって、適切な対イオンを伴ってカチオンあるいはアニオンになり得る。本明細書においては代表的な対イオンとして記述しているが、これら以外の対イオンを有する場合も本発明に用いられる前記一般式(II)又は(III)で表される化合物に含まれる。対イオンは1種類であってもよいし任意の比率からなる複数の種類からなってもよい。
【0106】
本発明で得られた前記一般式(IV)で表される化合物は、「Journal of Organic Chemistry」,2004年,69巻,2146ページ、「Angewandte Chemie International Edition」,2003年,42巻,2765ページ、「Organic Letters」,2002年,4巻,961ページ、「Tetrahedron Letters」,1977年,2223ページ、特開2008-107767号公報、特開2007-304287号公報などに記載されている方法によって、各種機能性材料に誘導することができる。
【0107】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0108】
実施例1
<例示化合物4−2の調製>
ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(例示化合物1−2)三水和物22.5g(0.1mol)を水15mlおよびメタノール100mlに溶解した。窒素気流下で冷却し、ベンゾキノン(例示化合物2−1)10.8g(0.1mol)、および酢酸5.7ml(0.1mol)とメタノール50mlとの溶液を内温20℃以下に保ちながら滴下した。室温で30分間反応させた。反応液を薄層クロマトグラフィー(TLC)で分析し、例示化合物1−2および例示化合物2−1が消失して新たな生成物が生じており、この生成物が質量分析からm/z=257であることから、例示化合物3−2の生成を同定した。この反応液にペルオキソ二硫酸アンモニウム22.8g(0.1mol)と水50mlとの溶液を内温25℃以下に保ちながら添加した。得られた反応混合物を室温で2時間反応させた。生じた固体をろ過し、水20mlおよびメタノール50mlで洗浄し、乾燥させることで例示化合物4−2を23.8g得た。収率93%。
13C NMR(CF3COOD)δ9.35,54.33,116.18,120.56,145.73,187.51。
1H NMR(CF3COOD)δ1.38(t,6H),3.93(q,4H),6.92(s,2H),10.65-10.80(br,2H)
MS m/z 256
【0109】
実施例2〜9
溶媒または添加剤の種類を下記表1に記載のとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして反応を行い、例示化合物4−2を調製した。なお、各実施例における生成物は、実施例1と同様に例示化合物4−2であることが同定された。各実施例における収率を表1に示す。
【0110】
比較例1
溶媒として、水15mlおよびメタノール100mlの代わりにメタノール100mlを用いたこと、並びにペルオキソ二硫酸アンモニウム22.8g(0.1mol)と水50mlとの溶液の代わりにペルオキソ二硫酸アンモニウム22.8g(0.1mol)を固体のまま添加したこと以外は実施例1と同様にして反応を行い、例示化合物4−2を調製した。なお、比較例1における生成物は、実施例1と同様に例示化合物4−2であることが同定された。比較例1における収率を表1に示す。
【0111】
比較例2
溶媒として、メタノール100mlの代わりにアセトン100mlに変更したこと以外は比較例1と同様にして反応を行い、例示化合物4−2を調製した。なお、比較例2における生成物は、比較例1と同様に例示化合物4−2であることが同定された。比較例2における収率を表1に示す。
【0112】
【表1】

【0113】
表1の結果から明らかなように、水を使用しない条件(比較例1及び2)では収率が低かった。これは、酸化剤が反応液に十分に溶けなかったためであると考えられる。これに対し、水の存在下で反応を行った実施例1〜9はいずれも高い収率で目的化合物を調製することができた。
また、実施例1〜9では、前記一般式(III)で表される化合物を単離しなくても前記一般式(IV)で表される化合物を高収率で得ることができた。
水と併用する溶媒としては、実施例1と実施例2との比較から、アルコール系、特にメタノールを用いた場合において収率が高いことがわかった。
酸化剤としては、過硫酸塩を用いた場合(実施例1〜4)において一般的に収率が高くなることがわかった。
【0114】
実施例10
<例示化合物4−2の調製 別法−1>
ジエチルジチオカルバミン酸カリウム(例示化合物1−39)水溶液(>50%水溶液;川口化学工業(株)製)18.7g(0.1mol)とメタノール50mlとを混合した。窒素気流下で氷冷し、ベンゾキノン(例示化合物2−1)5.4g(0.05mol)、および酢酸9.0g(0.15mol)とメタノール50mlとの溶液を内温10℃以下に保ちながら滴下した。内温4℃で30分間反応させた後、ペルオキソ二硫酸アンモニウム11.4g(0.05mol)と水25mlとの溶液を内温10℃以下に保ちながら添加した。得られた反応混合物を室温で2時間反応させた。生じた固体をろ過し、水20mlおよびメタノール50mlで洗浄し、乾燥させることで例示化合物4−2を23.8g得た。収率93%
【0115】
実施例11
<例示化合物4−2の調製 別法−2>
ハイドロキノン5.5g(50mmol)をメタノール50mlに溶解した。窒素気流下で冷却し、ペルオキソ二硫酸アンモニウム11.4g(50mmol)と水50mlとの溶液を内温10℃以下に保ちながら添加した。得られた反応混合物に酢酸25mlを添加し、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(例示化合物1−2)三水和物11.3g(50mmol)と水27.5mlとの溶液を内温10℃以下に保ちながら添加した。氷冷しながら30分攪拌した後、メタノール20mlを添加し、ペルオキソ二硫酸アンモニウム11.4g(50mmol)と水50mlとの溶液を内温10℃以下に保ちながら添加した。得られた反応混合物を室温で攪拌した。濾過して得られた粗生成物の質量分析で、例示化合物4−2に対応する親イオンピークを確認した。
【0116】
実施例12
<例示化合物4−8の調製>
ピペリジンペンタメチレンジチオカルバメート(例示化合物1−43)2.46g(10mmol)をメタノール10mlに溶解した。窒素気流下で氷冷し、ベンゾキノン(例示化合物2−1)1.08g(10mmol)、および酢酸0.57ml(10mmol)とメタノール10mlとの溶液を内温10℃以下に保ちながら滴下した。内温4℃で15分間反応させた後、ペルオキソ二硫酸アンモニウム2.28g(10mmol)と水10mlとの溶液を内温10℃以下に保ちながら添加した。得られた反応混合物を室温で2時間反応させた。メタノール10mlを加え、固体をろ過し、水10mlおよびメタノール10mlで洗浄し、乾燥させることで例示化合物4−8を1.85g得た。収率69%
1H NMR(CF3COOD)δ2.10-2.45(6H),7.34(2H)。
MS m/z 268
【0117】
実施例13
<例示化合物4−1の調製>
ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム(例示化合物1−1)二水和物9.0g(50mmol)を水5.3mlおよびメタノール50mlに溶解した。窒素気流下で冷却し、ベンゾキノン(例示化合物2−1)5.4g(50mmol)、および酢酸8.58ml(150mmol)とメタノール25mlとの溶液を内温10℃以下に保ちながら滴下した。氷冷下で30分間反応させた後、ペルオキソ二硫酸アンモニウム11.4g(50mmol)と水25mlとの溶液を内温10℃以下に保ちながら添加した。得られた反応混合物を50℃水浴上で1時間反応させた。生じた固体をろ過し、水50mlおよびメタノール50mlで洗浄し、乾燥させることで例示化合物4−1を10.4g得た。収率91%
1H NMR(CF3COOD)δ3.92(6H),7.27(2H)。
MS m/z 228
【0118】
実施例14
<例示化合物4−21の調製>
ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(例示化合物1−2)三水和物2.25g(10mmol)を水1mlおよびメタノール10mlに溶解した。窒素気流下で冷却し、2-メチル-1,4-ベンゾキノン(例示化合物2−2)1.22g(10mmol)、および酢酸1.7ml(30mmol)とメタノール5mlとの溶液を内温10℃以下に保ちながら滴下した。氷冷下で30分間反応させた後、ペルオキソ二硫酸アンモニウム2.28g(10mmol)と水5mlとの溶液を内温10℃以下に保ちながら添加した。得られた反応混合物を50℃で2時間反応させた。生じた固体をろ過し、水10mlおよびメタノール10mlで洗浄し、乾燥させることで例示化合物4−21を1.74g得た。収率76%
1H NMR(CF3COOD)δ3.93(6H),7.28(2H)。
MS m/z 228
【0119】
さらに、他の例示化合物についても同様にして反応を行い、調製することができた。具体的には、例示化合物3−4(例示化合物1−4と例示化合物2−1とから調製した)から例示化合物4−4の調製、例示化合物3−5(例示化合物1−11と例示化合物2−1とから調製した)から例示化合物4−5の調製、例示化合物3−22(例示化合物1−2と例示化合物2−3とから調製した)から例示化合物4−23の調製、例示化合物3−4(例示化合物1−2と例示化合物2−10とから調製した)から例示化合物4−23の調製、例示化合物3−28(例示化合物1−2と例示化合物2−37とから調製した)から例示化合物4−28の調製、例示化合物3−33(例示化合物1−55と例示化合物2−1とから調製した)から例示化合物4−33の調製、例示化合物3−47(例示化合物1−59と例示化合物2−37とから調製した)から例示化合物4−47の調製を行い、各例示化合物を収率よく製造することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(III)で表される化合物に対して1当量以上の水の存在下で、下記一般式(III)で表される化合物と酸化剤とを反応させることを特徴とする、下記一般式(IV)で表される化合物の製造方法。
【化1】

[一般式(III)中、R1及びR2は、互いに独立して水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R1及びR2は同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。R3及びR4は、互いに独立して水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R3及びR4は同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。]
【化2】

[一般式(IV)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ一般式(III)におけるR1、R2、R3及びR4と同義である。Xは電荷の調整に必要なイオンを表す。mは0以上の数を表す。]
【請求項2】
前記一般式(III)で表される化合物が、下記一般式(I)で表される化合物と下記一般式(II)で表される化合物とを用い、下記一般式(I)で表される化合物に対して5当量以上10000当量以下の水の存在下で反応を行って製造されたものであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【化3】

[一般式(I)中、R1及びR2は、互いに独立して水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R1及びR2は同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。Mは水素原子、金属原子または塩基の共役酸を表す。pは1ないし4の整数を表し、qは1ないし4の整数を表す。]
【化4】

[一般式(II)中、R3及びR4は、互いに独立して水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、又はカルバモイル基を表し、R3及びR4は同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。]
【請求項3】
アルコール系溶剤の存在下で反応を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記一般式(I)で表される化合物と酸とが共存した状態で反応させることを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。

【請求項5】
前記の製造された一般式(III)で表される化合物を単離することなく前記酸化剤と反応させることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化剤を水溶液として使用することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記酸化剤がペルオキソ二硫酸塩であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。

【公開番号】特開2010−70478(P2010−70478A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238581(P2008−238581)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】