説明

ベンド上の養生装置及びそれを用いたベンド上の養生工法

【課題】送電鉄塔のアーム間の塔体部を塗装する際に、線路停止を不要とでき、かつ、養生ネットの展開、重畳が行える養生装置及びそれを用いた養生工法を提供すること。
【解決手段】送電鉄塔2におけるベンド上のアーム2a(2aA〜2aB)間の塔体部2bを塗装する際の塗装飛沫の飛散を防止するための養生ネット6(6A、6b)を展開する養生装置1である。面単位で上下方向に展開・重畳可能な長方形の絶縁性の養生ネット6(6A、6b)と、標準距離を遵守できるように塔体部2bとは離間して養生ネット6(6A、6b)を塔体部2bの面に沿って上下方向に展開・重畳し、養生ネット6(6A、6b)が展開された状態で養生ネット6(6A、6b)の位置が標準距離を遵守できるように養生ネット6(6A、6b)を塔体部2bとは離間して塔体部2bの外側に固定する固定具4(4A〜4C)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は送電鉄塔におけるベンド上のアーム間を塗装する際のベンド上の養生装置及びそれを用いたベンド上の養生工法に関する。
【背景技術】
【0002】
送電鉄塔は、防錆のために定期的に刷毛塗りなどにより塗装されているが、塗装時に刷毛等から塗料(ペンキ)が垂れ落ちることがよくあり、高所から塗料が垂れ落ちると風等の影響で鉄塔外方に飛散するおそれがある。それ故、市街地にある鉄塔を塗装するときには、線路を停止して、塗料の飛散防止用の養生ネットで送電鉄塔の全体を囲繞したのちに塗装作業が行われていた。
【0003】
しかしながら、送電鉄塔の全体を囲繞する構成では、線路停止が必要であることに加えて、養生ネットが大きくなるという課題がある。このため、鉄塔本体の周囲の一部を養生ネットで囲繞して、塗装すべき位置に応じて囲繞した養生ネットの位置を上下動させることにより養生ネットの大きさを低減できる養生装置及び養生工法が種々提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)
【特許文献1】特開昭59−141669号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2000−179158号公報
【特許文献3】特開2001−347203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの提案されている養生装置及び養生工法では、鉄塔のアーム下部での塗装に対しては有効であるが、ベンド上、特にアーム近辺又はアーム上での養生には送電線と干渉するので採用することができない。
【0005】
また、鉄塔上では、天候の急変などによる安全面の配慮から、一時的に塗装作業を中断する場合がある。塗装作業を一時的に中断する場合では、養生ネットを一時的に重畳するのが望ましい。
【0006】
そこで、本発明は、送電鉄塔のベンド上のアーム間の塔体部を塗装する際に、線路停止を不要とでき、かつ、養生ネットの展開、重畳が行えるベンド上の養生装置及びそれを用いたベンド上の養生工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、送電鉄塔のベンド上のアーム間の塔体部を養生する際に、アーム間を面単位で上下方向に展開・重畳可能な養生ネットを採用することにより、アーム間での養生ネットの展開、重畳が行える養生装置を提供できるのではないかと考えた。また、この場合、面単位で展開される養生ネットの張設位置を所定の標準距離を遵守した範囲内に設定すれば、線路停止を不要としても、塗装作業を安全に行えるのではないかと考えた。
【0008】
すなわち、本発明は、送電鉄塔におけるベンド上のアーム間の塔体部を塗装する際の塗装飛沫の飛散を防止するための養生ネットを展開する養生装置であって、面単位で上下方向に展開・重畳可能な長方形の絶縁性の養生ネットと、標準距離を遵守できるように塔体部とは離間して前記養生ネットを前記塔体部の面に沿って上下方向に展開・重畳し、該養生ネットが展開された状態で養生ネットの位置が標準距離を遵守できるように該養生ネットを塔体部とは離間して該塔体部の外側に固定する固定具と、を備えていることを特徴とするベンド上の養生装置である。
【0009】
また、本発明は、上記養生装置を用いたベンド上の養生工法であって、前記養生ネットを前記アーム間に展開した状態で前記アーム間の塔体部を塗装するとともに、一時的に塗装作業を中断する場合には、前記養生ネットを重畳した状態で塔体部に固定し、また、塗装作業終了時には、養生装置を回収することを特徴とするベンド上の養生工法である。
【0010】
ここで、養生ネットとしては、先端両端部には絶縁性の吊り下げロープが固定され、基部端縁には塔体部との締結部材(例えば、小ロープ)が固定されるとともに、両側縁に養生ネットを鉛直方向に展開するためのカラビナなどの環状のガイド部材を所定間隔を開けて設けているのが好ましい。
【0011】
また、固定具としては、養生ネットの位置を標準距離内に維持するために本体部の四隅より突設して固定される突設固定部材(固定金具)と、該突設固定部材により概略鉛直方向(垂直方向)に固定される垂直ロープ(ガイドロープ)とから構成されるのが好ましい。このような垂直ロープには、養生ネットのカラビナが挿嵌されて養生ネットは垂直ロープに誘導されて上下方向に展開又は重畳可能に構成される。
【0012】
吊り下げロープは、上方の突設固定部材に吊り下げられた滑車などを介して下方から遠隔操作により養生ネットを吊り上げることができる。また、一時的に塗装作業を中断する場合には、吊り下げロープを緩めることにより養生ネットを重畳することができる。
【0013】
重畳した養生ネットを締結部材(小ロープ)により塔体部などに一時的に固定すれば、突風などに対応することもできる。また、塗装作業終了時には、養生装置の全てを回収する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に従えば、面単位で上下方向に展開・重畳可能な養生ネットを採用することにより、送電鉄塔のベンド上のアーム間の塔体部において養生ネットの展開、重畳が行える。また、面単位で上下方向に展開される養生ネットの張設位置を所定の標準距離を遵守した範囲内に設定しているので、線路停止を不要としても、塗装作業を安全に行える。これにより、送電鉄塔のベンド上のアーム間の塔体部を塗装する際に、線路停止を不要とでき、かつ、養生ネットの展開、重畳が行えるベンド上の養生装置及びそれを用いたベンド上の養生工法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
まず、図1〜図3は、本発明に係る養生装置を鉄塔に展開した状態を説明するための概略図である。これらの図において、符号1は、送電鉄塔2に展開された本発明に係る養生装置であり、この養生装置1は、送電鉄塔2から突出した複数のアーム2a(2aA,2aB…)間にある塔体部2bを塗装する際に用いるものである。
【0017】
この養生装置1は、面単位で上下方向に展開・重畳可能な長方形の絶縁性の養生ネット6(6A、6B)と、標準距離を遵守できるように塔体部2bとは離間して養生ネット6を塔体部2bの面に沿って上下方向に展開・重畳し、養生ネット6が展開された状態で養生ネット6の位置が標準距離を遵守できるように養生ネット6を塔体部6bとは離間して塔体部2bの外側に固定する固定具4とを備え、これらの固定具4は、塔体部2bの四隅のアングル型のコーナ柱3から外側に向けて突出して固定されている。
(固定具4を構成する各部材の説明)
この固定具4は、養生ネット6が展開された状態で養生ネット6の位置が標準距離を遵守できるように塔体部2bとの距離を一定距離に離間するものであり、例えば、図4に示すように、固定部材としての仮腕金7とこの仮腕金7を固定するための取付金具8及び取付金具ボルト9とから大略構成されている。
【0018】
ここで、標準距離は鉄塔の仕様により異なり、例えば、110kV以下の鉄塔では、塔体部2bとの標準距離が50cmであり、187kV鉄塔では、標準距離が1mである。
【0019】
仮腕金7は、図5に示すように、二つのボルト孔7aa、7abを有した平板状の基部7aを有し、この基部7aの両側は直角に曲折されて補強片7d、7dが形成されている。また、その基部7aから延設されて棒状部材7bが溶接などにより固定され、この棒状部材7bには、四方に向けて放射状に延設された矢羽根の羽根のような形状の平板状の固定部7cが溶接などにより固定されている。ここで、この固定部7cは、図5(c)に示すように、棒状部材7bとは直交し、かつ、基部7aの平面とはそれぞれ45度傾斜して固定され、これらの固定部7cには、等間隔に棒状部材7bの延設される方向に五つの貫通孔7ca〜7ceが穿設されている。
【0020】
また、取付金具8は、図6に示すように、角度αが135度となるように接合された二つの固定板8a、8bを有し、それらの固定板8a、bの内側は、上下端付近で一対の補強リブ8c、8cにより補強されている。この固定板8aは、外表面を仮腕金7と面接して固定するためのものであり、図6(b)に示すように、二つのボルト孔8aa,8abが設けられ、これらのボルト孔8aa,8abは、仮腕金7のボルト孔7aa、7abとそれぞれ衝合する。
【0021】
また、固定板8bは外表面をコーナ柱3の一外表面と面接するためのものであり、中央部よりに上下に一対のボルト孔8bbが設けられている。これらのボルト孔8bbには、それぞれ後述するボルト部材9が挿通される。
【0022】
ここで、ボルト孔8aaは、ボルト孔8abに比べて僅かに下方に設けられ、この実施例では、ボルト孔8aaとボルト孔8abとを結ぶ直線が水平線とのなす角度βが5度になるように設定されている。
【0023】
つぎに、取付ボルト9は、図7(b)に示すように、頭部に貫通孔9Aaを有し尾部9aに雄ネジ部9dを有するボルト部材9Aと、図7(a)に示すように、頭部にボルト頭部(止め部)9Baを有し尾部9aに雄ネジ部9dを有するボルト部材9Bとから大略構成され、ボルト部材9Aの貫通孔9Aaにはボルト部材9Bのボルト尾部9aが挿嵌されて、ボルト9Aとボルト9Bとは一対となって機能する。また、それぞれのボルト部材9A,9Bには、コーナ柱3の側縁3aへ固定するための嵌合凹部9ba,9baを有する固定片9bが挿嵌され、これらの固定片9bはナット9cにより固定される。
(固定具4の組立)
つぎに、このような各部材の固定具4への組立方法について図4を用いて説明する。
【0024】
仮腕金7の基部7aを固定板8aの内側へ衝合させて、ボルト孔7aa、7abをボルト孔8aa、8abにそれぞれ位置合わせして、固定ボルト10a、10bによりボルト固定する。
【0025】
一方、ボルト部材9Bの尾部9dからボルト部材9Aの頭部の貫通孔9Aaを貫通させ、ついで取付金具8の固定板8bの内側面が頭部貫通孔9Aa側となるようにボルト孔8bbを貫通させる。ついで、それぞれのボルト尾部9aから固定片9bを挿通させ、ナット9cにて仮止めする。以上の操作を繰り返し、上下のボルト孔8bbを貫通させて二組の取付ボルト9を取付金具8に仮止めする。
(固定具4の塔体部への固定)
このような状態に固定具4を組み立てておくことにより、図4に示すように、コーナ柱3の外表面に固定板8bの外表面を当接させつつコーナ柱3の側縁3aにそれぞれの固定片9bの嵌合凹部9baを嵌合させる。ついで、ナット9cにより螺合締め付けを行うことにより、固定具4を塔体部2bから放射状に突出させて固定させることができる。
(養生ネット6の説明)
養生ネット6は、方形の絶縁性の網状体(ネット)から形成されている。このネットの周囲は、例えば、折り返されて鳩目などが適宜の間隔で形成されている。塔体部2bの大きさに合わせるには、複数のネットを並列させ、上下又は左右に隣接する鳩目をインシュロックなどの締結部材(不図示)により締結することにより所望の大きさに調製することができる。
【0026】
正面又は裏面用の養生ネット6A(以下、正面用の養生ネット6Aという。)の上端縁6aは、図8に示すように、直線状のネット支持枠11に固定され、また、養生ネット6Aの適宜の位置(図面では中間位置6bに1カ所)は、直線状のネット支持枠11Aに固定されている。ここで、ネット支持枠11とネット支持枠11Aとは互いに平行である。これにより、これらのネット支持枠11、11Aにより支持されて養生ネット6Aが塔体部2bの一側面を覆うに充分な幅が確保されている。各ネット支持枠11,11Aは、それぞれ接続金具12により接続されてその長さが延長されている。
【0027】
また、養生ネット6Aの上端縁6aの両隅には一対の固定用のカラビナ(環状止め部材)13、13が固定され、これらのカラビナ13,13は、想像線(二点鎖線)で示したように、それぞれ一対の吊り下げロープ14、14に固定するためのものである。また、養生ネット6Aの下端縁6cの両角には、固定用のカラビナ(環状止め部材)13a,13aが固定されている。
【0028】
一方、この養生ネット6Aの両側縁6e、6eには適宜の間隔を開けて複数のカラビナ15…が固定されている。さらに、この養生ネット6Aの下端縁6cにはネットを重畳した場合の結束用の複数の小ロープ16…が固定され、これらの小ロープ16…はネットを重畳した場合の固定バンドとされたり、ネットを展開する場合のネットの下端縁6cを塔体部2bに固定する際に利用される。
【0029】
このような構成の養生ネット6Aでは、図8に示すように、カラビナ15…に、想像線(一点鎖線)で示したガイドロープ(又は垂直ロープ)5,5を挿通することにより、これらのカラビナ15…は、ガイドロープ5に誘導されて養生ネット6を上下方向(重力方向)に展開又は重畳(折り畳む)する際のガイド部材として機能する。
【0030】
一方、アーム2aが張り出されている側面用の養生ネット6B(以下、側面用の養生ネット6Bという。)は、図8に示す正面用の養生ネット6Aにおいて、ネット支持枠11、11Aを設けていないことを除いて、正面用の養生ネット6Aと大略一致している。
【0031】
すなわち、図3(b)に示すように、側面用の養生ネット6Bの上端縁6aの両隅には一対のカラビナ(環状部材)13、13が固定され、これらのカラビナ13,13には一対の吊り下げロープ14、14が固定される。また、養生ネット6Bの下端縁6cの両角には、固定用のカラビナ13a,13aが固定され、これらのカラビナ13a,13aは、塔体部2bに固定される。
【0032】
また、この養生ネット6Bの両側縁6e、6eには上端縁6a又は下端縁6cから適宜の間隔を開けた中間位置に複数のカラビナ15…が固定されている。これらのカラビナ15…には、左右に一対のガイドロープ(又は垂直ロープ)5,5が挿通される。
(作業手順)
つぎに、以上説明した養生装置1を用いた養生ネットの設置手順について説明する。
(事前検討)
事前に現地調査を行い、ネット寸法を調製し、また、標準距離を考慮した固定具4の選択を行う。
(固定具4の取付)
回線遮断板よりも前方には工具や作業者が飛び出さないように留意して四角の各コーナ柱3…の所定の位置(この実施例では、上中下の各アーム2aの基部近辺の四方)に放射状に突出させて固定具4(上方から4A,4B、4Cとそれぞれ呼称する。)を取り付ける。
【0033】
上方の固定具4Aの二つの貫通孔7cd、7cdを利用して、図2(a)に示すように、滑車17をUクレビス(連結部材)18を介して固定し、この滑車17には、吊り下げロープ14を挿通させる。また、固定具4Aの最も外側に張り出している貫通孔7caに、Uクレビス(連結部材)19を介してシンプルスナッチなどの小型の滑車20を取り付ける。
【0034】
一方、下方の固定具4Cの中央の貫通孔7cc、7ccを利用して、図2(c)に示すように、渦巻きクランプ(固定部材)21をカラビナ(連結部材)22を介して固定し、この渦巻きクランプ21により垂直ロープ5を巻き取る。
(垂直ロープの設置)
7mmのケブラーロープを垂直ロープ5として用い、上方の固定具4Aに固定された滑車20を介して下方の固定具4Cに固定された渦巻きクランプ21に巻き取ることにより、アーム2aA、2aC間に垂直に固定する。この際、垂直ロープ5は、中間の固定具4Bの外から二番目の貫通孔7cbを挿通させて鉛直性を確保する。
(養生ネット6Aの取り付け)
正面側の養生ネット6Aの各カラビナ15…を垂直ロープ5に挿通させる。ここで、これらのカラビナ15…の挿通は、養生ネット6Aを重畳させた状態でも行える。一方、小ロープ16…(図3(a)参照。)を適宜の塔体部2bに固定し、作業中に養生ネット6Aの下端が風でなびかないように注意する。
【0035】
ついで、吊り上げロープ14の一端を固定具4Cの貫通孔7ce(図2(c)参照)に締結して固定し、滑車17を介して養生ネット6Aのカラビナ13(図2(a)参照)に挿通させる。
【0036】
吊り上げロープ14にて養生ネット6Aを吊り上げると養生ネット6Aは、図3(a)に示すように、ネット支持枠11により幅方向に展開された状態で、固定具4A、4B間の塔体部2bの所定の位置にセットされる。この状態で、吊り上げロープ14は、図2(c)に示すように、固定具4Cのカラビナ22に固定する。同様にして、反対面側の養生ネット6Aを固定する。
(養生ネット6Bの取り付け)
側面側の養生ネット6Bも、図3(b)に示すように、同様にして中間位置の各カラビナ15を垂直ロープ5に挿通させる。養生ネット6Bの下端縁6c側は、中間位置のアーム2aBの内側を通し、両角に固定されたカラビナ13a,13aをそれぞれコーナ柱3付近の塔体部2bに固定する。また、小ロープ16は、適宜の塔体部2bに固定し、作業中養生ネット6Bの下端が風でなびくことが防止できる。
【0037】
ついで、吊り上げロープ14の一端を固定具4Cに締結して固定し、滑車17を介して養生ネット6Bのカラビナ13に挿通させる。このとき、この吊り上げロープ14は、固定具4Aが設置されている上方のアーム2aAの内側を通過させる。吊り上げロープ14にて養生ネット6Bを吊り上げると、養生ネット6Bの上方は、アーム2aAの内側をとおり吊り上げられるが、固定具4A、4B間の塔体部2bは、垂直ロープ5により展開されて張設されている。これにより、大略図3(b)に示す所定の位置に養生ネット6Bを張設させることができる。同様にして、反対側面の養生ネット6Bも固定する。
【0038】
塔体内の下部に塔体内用の養生ネットを展開して張設することにより養生ネットの設置が完了する。事前検討におけるネット寸法が正確で有れば、養生ネットにたるみは発生しない。
(塗装作業の中断、終了)
塗装作業を中断したい場合には、正面及び裏面側では、吊り下げロープ14を緩めて養生ネット6Aを下端縁6cに向けて重畳させ、小ロープ16により締結する。また、側面側では締結したカラビナ13a及び小ロープ16を解除して、同様に吊り下げロープ14を緩める。これにより、アーム2aB付近に養生ネット6Bを重畳させ、小ロープ16でアーム2aB付近の塔体部2bに締結する。これにより、強風が吹いても養生ネット6A、6Bが飛散することはない。
【0039】
以上の構成によれば、養生ネット6A、6Bは標準距離を維持しつつ展開可能に構成されているので、無停電で全ての作業を行うことができる。
【0040】
また、このような養生装置を用いた養生工法では、吊り下げロープを滑車をとおして引っ張ることにより養生ネットを送電鉄塔のアーム間に展開することができ、また、一時的に塗装作業を中断する場合には、吊り下げロープを緩めて収納ロープを操作することにより養生ネットを重畳することができる。
【0041】
また、本発明によれば、養生ネットは上下方向に展開・重畳させているので、アーム2aが突出した側面側の塔体部2bに対しても、養生ネット6Bを効率的に、かつ、短時間に展開又は重畳させることができる。
【0042】
重畳した養生ネットは締結部材(小ロープ)により塔体部などに一時的に固定することにより作業中断時の安全性を確保できる。
【0043】
固定具4A、4B間の塗装が終了したら、同様な手法により固定具4B、4C間に養生ネット6A、6Bを展開・重畳させ、同様な工法により固定具4B、4C間の塔体部2bの塗装を行う。固定具4B、4C間には、既に標準距離を確保された垂直ロープ(ガイドロープ)5が張設され、かつ、吊り下げロープ14を操作するための滑車17もそのまま利用できるので、養生ネット6A、6Bの移動作業はスムースに行える。
【0044】
固定具4C、4A間のベンド上の塔体部2bの塗装作業の全てが終了した時には、養生装置の全てを回収する。
【変形例】
【0045】
この変形例は、鋼管鉄塔用の固定具40を開示している。
【0046】
この固定具40は、図9及び図10に示すように、基部41に荷締めバンド42を貫通するための上下一対の締結孔43、43を有し、先端に向けて棒状に延設された角形のアーム部44とを備える仮腕金45と、この仮腕金45にボルトナット46などにより位置調整可能に固定される固定金具47と、この固定金具47をアーム部44の背面から把持する把持金具48とから大略構成されている。
【0047】
固定金具47は、長方形の平板鋼材であり、両端には一対の貫通孔47a,47aが穿設され、その内側にアーム部44を挟持してボルト止めをするための二対のボルト孔47b…が対称に設けられている。また、保持金具48は、一対のボルト孔47bに対応したボルト孔48aを有している。
【0048】
つぎに、この固定具40の組立及び鋼管鉄塔への固定について説明する。
【0049】
一個の固定金具47と二個の保持金具48と四個のボルトナット46を用意し、それぞれのボルト孔47a,48aにボルトを挿通させてナットにて仮止めをする。
【0050】
アーム部44の上面44aの所定位置に固定金具47が来るように載置してボルトナット46を締め付けて図9の状態とする。なお、図9では、固定金具47をアーム部44に一個取り付けた状態を示しているが、この固定金具47は通常は二個取り付ける。
【0051】
固定具40の取り付けは、締結孔43に荷締めバンド42を貫通させ、図10に示すように、アーム部44の先端がコーナ柱3から45度の傾きで放射状に突出させた状態で背後を止め金具42aにより固定する。回線遮断板よりも前方には工具や作業者が飛び出さないように留意して各コーナ柱3…の所定の位置に放射状に突出させて固定具40を取り付ける。
【0052】
以下、これらの取り付けられた固定具40には、固定具4の貫通孔7ca〜7ceに相当する多数の貫通孔47a…が設けられているので、これらの貫通孔47a…を利用して、滑車17、20を吊り下げたり、また、渦巻きクランプ21を固定し、所定位置に配設された貫通孔47aを利用して垂直ロープ5を概略鉛直方向に張設し、また、吊り下げロープ14を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る養生装置を鉄塔に展開した状態を説明するための概略図である。
【図2】図1の部分拡大図であり、図2(a)は、固定具4A付近の拡大図、図2(b)は、固定具4B付近の拡大図、図2(c)は、固定具4C付近の拡大図である。
【図3】図3(a)は、図1の正面図であり、図3(b)は、図1の側面図である。
【図4】固定具4の組立と塔体部への固定状況を説明する図である。
【図5】固定具4を構成する部材である仮腕金を説明する図であり、図5(a)は正面図、図5(b)は底面図、図5(c)は左側面図である。
【図6】固定具4を構成する部材である取付金具8を説明する図であり、図5(a)は平面図、図5(b)は正面図である。
【図7】図7(a)及び(b)は、固定具4を構成する部材である一対の取付ボルト(ボルト部材9A、9B)を説明する平面図である。
【図8】養生ネット6Aを説明する図である。
【図9】固定具40の概要を説明する斜視図である。
【図10】固定部40を鋼管鉄塔に取り付けた状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0054】
1:養生装置
2:送電鉄塔
2a(2aA、2aB、2aC):アーム
2b:塔体部
3:コーナ柱
3a:側縁
4(4A、4B、4C):固定具
5:ガイドロープ(垂直ロープ)
6(6A,6B):養生ネット
6a:上端縁
6b:中間位置
6c:下端縁
6e:側縁
7:仮腕金
7a:基部
7aa:ボルト孔
7ab:ボルト孔
7b:棒状部材
7c:固定部
7ca〜7ce:貫通孔
7d:補強片
8:取付金具
8a:固定板
8aa:ボルト孔
8ab:ボルト孔
8b:固定板
8bb:ボルト孔
9:取付金具ボルト
9:取付ボルト
9A:ボルト部材
9Aa:頭部貫通孔
9B:ボルト部材
9Ba:頭部
9a:尾部
9b:固定片
9ba:嵌合凹部
9c:ナット
9d:雄ネジ部
10a:固定ボルト
10b:固定ボルト
11:ネット支持枠
11A:ネット支持枠
12:接続金具
13,13a:カラビナ(環状止め部材)
14:吊り下げロープ
15:カラビナ(環状止め部材:ガイド部材)
16:小ロープ
17:滑車
18:Uクレビス
19:Uクレビス
20:滑車(シンプルスナッチ)
21:渦巻きクランプ
22:カラビナ
40:固定具
41:基部
42:荷締めバンド
42a:止め金具
43:締結孔
44:アーム部
44a:上面
45:仮腕金
46:ボルトナット
47:固定金具
47a:貫通孔
47b:ボルト孔
48:保持金具
48a:ボルト孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電鉄塔におけるベンド上のアーム間の塔体部を塗装する際の塗装飛沫の飛散を防止するための養生ネットを展開する養生装置であって、
面単位で上下方向に展開・重畳可能な長方形の絶縁性の養生ネットと、
標準距離を遵守できるように塔体部とは離間して前記養生ネットを前記塔体部の面に沿って上下方向に展開・重畳し、該養生ネットが展開された状態で養生ネットの位置が標準距離を遵守できるように該養生ネットを塔体部とは離間して該塔体部の外側に固定する固定具と、
を備えていることを特徴とするベンド上の養生装置。
【請求項2】
前記養生ネットを前記アーム間に展開した状態で前記アーム間の塔体部を塗装するとともに、一時的に塗装作業を中断する場合には、前記養生ネットを重畳した状態で塔体部に固定し、また、塗装作業終了時には、養生装置を回収することを特徴とする請求項1記載の養生装置を用いたベンド上の養生工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−262768(P2007−262768A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89802(P2006−89802)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000180357)株式会社四電工 (11)
【Fターム(参考)】