ベース付きコイル
【課題】ベースプレートに対するコイルアッセンブリの組み込み精度を向上させることができ、しかも低背化も実現することが可能なベース付きコイルを提供する。
【解決手段】平板状のベースプレート15上に、環状のコアの外周が絶縁層となるコアカバー11によって覆われるとともに、コアカバー11の外周に巻線12、13が巻回されたコイルアッセンブリが載置されてなるベース付きコイルにおいて、コアカバー11に、その外周を周方向に複数の巻線区画に分割する2以上の第1の隔壁14を形成し、ベースプレート15上に、第1の隔壁14の内周側端部間に介装される第2の隔壁18を立設するとともに、第1の隔壁14の内周側端部と第2の隔壁18の対向端部との間に、互いに係合する係合部14a、15aを形成した。
【解決手段】平板状のベースプレート15上に、環状のコアの外周が絶縁層となるコアカバー11によって覆われるとともに、コアカバー11の外周に巻線12、13が巻回されたコイルアッセンブリが載置されてなるベース付きコイルにおいて、コアカバー11に、その外周を周方向に複数の巻線区画に分割する2以上の第1の隔壁14を形成し、ベースプレート15上に、第1の隔壁14の内周側端部間に介装される第2の隔壁18を立設するとともに、第1の隔壁14の内周側端部と第2の隔壁18の対向端部との間に、互いに係合する係合部14a、15aを形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースプレート上にコイルアッセンブリが取り付けられてコモンモードチョークコイル等として用いられるベース付きコイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶テレビ等のデジタル電子機器類に用いられる差動伝送方式の電送ケーブルには、2本の信号線の伝送特性の相違に起因して発生するコモンモードのノイズ電流を除去するために、コモンモードチョークコイルが介装されている。
【0003】
従来、この種のコモンモードチョークコイルとしては、コアを収納したコアカバーの周に巻線が巻回されてなるコイルアッセンブリがベースプレート上に位置決めされたベース付きコイルが用いられている。そして、当該ベース付きコイルにおいては、通常巻線の線径が大きく、所定の機械的強度を有することから、ベースプレートの四隅に穴を形成し、上記コイルアッセンブリから引き出した巻線の端部を、上記穴に挿通させて、そのまま基板へ実装する構造が多く採用されている。
【0004】
この際に、上記巻線の端部を、ベースプレートの穴に挿通することにより、コイルアッセンブリの位置決めを行っている。
ところが、上記ベース付きコイルは、コイルアッセンブリを単にベースプレート上に当接させる構造であるために、巻線端部の引き出し方や、穴への挿通時の力加減等によって、コイルアッセンブリに傾きが生じたり、あるいは中心から位置ズレを生じたりし易く、このため当該位置出し作業に多くの手間を要するという問題点があった。
【0005】
そこで、本出願人は、上記問題点を解消すべく、先に下記特許文献1において、ベースプレートに対するコイルアッセンブリの位置決めが容易なベース付きコイルを提案した。
図11は、このベース付きコイルを示すもので、コイルアッセンブリ1のコアカバー2に張出し部3を形成し、これと直交する位置にリブ4を設けるとともに、ベースプレート5の上面に凸条部6を延設し、これと直交して突起部7を対に設けたものである。
【0006】
上記構成からなるベース付きコイルによれば、張出し部3を凸条部6に合せて着座させるとともに、突起部7の台部7aへリブ4を当接させ、かつ凸条部6へ張出し部3を当接させて、張出し部3へ設けた孔部3aに、凸条部6へ設けた突起6aを嵌合させることにより、容易かつ確実に、コイルアッセンブリ1をベースプレート5に位置決めすることができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−267744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、この種のベース付きコイルが用いられている液晶テレビにおいては、その薄型化に伴って、使用される上記ベース付きコイルについても一層の薄型化が要請されている。このため、近年、極力コイルアッセンブリ1の高さ寸法を小さく(低背化)して、水平方向の寸法を大きくすることにより対応する方向にある。
【0009】
ところが、上記従来のベース付きコイルにおいては、コイルアッセンブリ1の下面側に張出し部3を形成するとともに、ベースプレート5上に凸条部6や突起部7を形成しているために、逆に全体としての高さ寸法の増加を招き、このような薄型化の要請に応えることが難しいという問題点が生じていた。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ベースプレートに対するコイルアッセンブリの組み込み精度を向上させることができ、しかも低背化も実現することが可能なベース付きコイルを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、平板状のベースプレート上に、環状のコアの外周が絶縁層となるコアカバーによって覆われるとともに、上記コアカバーの外周に巻線が巻回されたコイルアッセンブリが載置されてなるベース付きコイルにおいて、上記コアカバーに、上記コイルカバーの外周を周方向に複数の巻線区画に分割する2以上の第1の隔壁を形成し、上記ベースプレート上に、上記第1の隔壁の上記コイルアッセンブリにおける内周側端部間に介装される第2の隔壁を立設するとともに、上記第1の隔壁の上記内周側端部と上記第2の隔壁の対向端部との間に、互いに係合する係合部を形成したことを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記ベースプレートにおける上記コイルアッセンブリの上記巻線と対向する部分に開口部を形成し、当該開口部内に上記巻線を位置させたことを特徴とするものである。
【0013】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記第2の隔壁の先端部に、板面が当該第2の隔壁と直交する平板部を一体に形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜3のいずれかに記載の発明によれば、ベースプレート上に第2の隔壁を立設し、当該第2の隔壁をコイルアッセンブリ内に挿入して、その両側端部をコイルアッセンブリに形成した第1の隔壁における内周側端部と係合させることにより、上記第1および第2の隔壁によって複数の巻線区画間を画成する隔壁を構成している。このため、容易かつ確実にベースプレート上にコイルアッセンブリを位置決めして固定することができる。
【0015】
しかも、ベースプレート上に立設された第2の隔壁をコイルアッセンブリ内に挿入することによって、当該コイルアッセンブリの位置決めを行っているために、コイルアッセンブリの高さ寸法が増加することが無く、よって低背化も実現することができる。
【0016】
さらに、請求項2に記載の発明においては、ベースプレートにおけるコイルアッセンブリの巻線と対向する部分に開口部を形成し、当該開口部内に上記巻線を落とし込んでいるために、最大でベースプレートの板厚分だけ、一段と低背化を図ることが可能になる。
【0017】
加えて、請求項3に記載の発明のように、上記第2の隔壁の先端部に、板面が当該第2の隔壁と直交する平板部を一体に形成しておけば、上記板面を部品吸着面として利用することができ、よって自動実装時にも対応することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す平面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1のベースプレートを示す平面図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】図1のコイルアッセンブリを示す平面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す平面図である。
【図7】図6のベースプレートを示す平面図である。
【図8】図7の側面図である。
【図9】図7の底面図である。
【図10】図7のA−A線視断面図である。
【図11】従来のベース付きコイルを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
図1〜図5は、本発明に係るベース付きコイルを、コモンモードチョークコイルとして用いられるものに適用した第1の実施形態を示すもので、図中符号10が全体として円筒状をなすコイルアッセンブリである。
このコイルアッセンブリ10は、図5に示すように、フェライト等の磁性体からなる肉厚円筒状の芯材の外周が、絶縁層となる合成樹脂製のコアカバー11によって覆われるとともに、このコアカバー11の外周に、第1の巻線12および第2の巻線13が巻回されたものである。
【0020】
ここで、コアカバー11の外周には、直径方向に対向するようにして一対の第1の隔壁14が一体に形成されており、これら第1の隔壁14によって、第1の巻線12および第2の巻線13が円周方向に区画されている。なお、図中符号12a、13aは、それぞれ第1の巻線12および第2の巻線13の巻始め端部および巻終わり端部である。そして、このコイルアッセンブリ10の内部において対向する第1の隔壁14の内周側端部には、それぞれ軸線方向両端面および対向面に開口する凹溝部14aが形成されている。
【0021】
他方、このコイルアッセンブリ10が位置決め・固定されるベースプレート15は、図3および図4に示すように、絶縁性を有する合成樹脂からなる方形板状の部材で、コイルアッセンブリ10が載置される上面の四隅には、端子台16が一体に形成されている。そして、各端子台16には、L字型端子17が、その一辺17aを下面から突出させるとともに、他辺17bを板面と平行に外方へ突出させるように固定されている。
【0022】
さらに、このベースプレート15の上面中央部には、平板状の第2の隔壁18が一体に立設されている。この第2の隔壁18は、水平方向(ベースプレートの板面に沿う方向)の両端部18a間の長さ寸法が、コイルアッセンブリ10内において対向する第1の隔壁14の凹溝部14aにおける底面間の長さ寸法よりも僅かに小さく形成されており、かつ板厚は、凹溝部14aの幅寸法とほぼ等しくなるように設定されている。なお、図中符号19は、第2の隔壁18の両面中央部とベースプレート15の上面との間に一体化されて第2の隔壁18を補強するブラケットである。
【0023】
そして、コイルアッセンブリ10は、第1の隔壁14の凹溝部14aに、ベースプレート15の第2の隔壁18の各端部18aが挿入されることにより、ベースプレート15に上記水平方向に位置決めされている。ここで、第1の隔壁14の凹溝部14aと、第2の隔壁18の各端部18aとにより、係合部が構成されている。
【0024】
さらに、コイルアッセンブリ10から引き出されている第1および第2の巻線12、13の端部12a、13aが、各々ベースプレート15の端子台16に固定されているL字型端子17の辺17bに絡げられている。これにより、コイルアッセンブリ10は、上下方向への移動が阻止されてベースプレート15に固定されている。他方、ベースプレート15の下面から突出するL字型端子17の辺17aが、実装端子とされている。
【0025】
また、ベースプレート15上には、第1の隔壁14および第2の隔壁18によって、コイルアッセンブリ10の直径方向に連続する隔壁が形成されるとともに、当該隔壁によって第1の巻線12と第2の巻線13とが区画されている。なお、コアカバー11に対する第1の巻線12および第2の巻線13の巻線方向は、それぞれ電流の流れ方向に対して同じ巻線方向(コモン巻き)になっており、これにより第1および第2の巻線12、13は、第1の隔壁14および第2の隔壁18を間に挟んで対称に巻回されている。
【0026】
上記構成からなるベース付きコイルによれば、ベースプレート15上に第2の隔壁18を一体に立設し、この第2の隔壁18をコイルアッセンブリ10内に挿入して、その両側端部18aをコイルアッセンブリ15の第1の隔壁14における凹溝部14aと係合させることにより、第1および第2の隔壁14、18によって第1および第2の巻線12、13を画成する隔壁を構成しているために、容易かつ確実にベースプレート15上にコイルアッセンブリ10を位置決めして固定することができる。
【0027】
しかも、ベースプレート15上に立設された第2の隔壁18を、コイルアッセンブリ10内に挿入することによって、コイルアッセンブリ10の位置決めを行っているために、コイルアッセンブリ10の高さ寸法が増加することが無く、よって低背化も実現することができる。
【0028】
また、ベースプレート15上に端子台16を一体形成し、この端子台16にL字型端子17を設けて、第1および第2の巻線12、13の端部12a、13aを絡げているために、組み立てが容易になると共に、第1および第2の巻線12、13の線径が小さくなって、強度的に端部12a、13aをそのまま実装端子として利用できない場合にも対応することが可能になる。
【0029】
(第2の実施形態)
図6〜図10は、本発明に係るベース付きコイルを、コモンモードチョークコイルとして用いられるものに適用した第2の実施形態を示すもので、図1〜図5に示したものと同一構成部分については、同一符号を付してその説明を簡略化する。
先ず、本実施形態のベース付きコイルにおいては、図9および図10に示すように、ベースプレート20に開口部21が形成されている。
【0030】
当該開口部21は、コイルアッセンブリ10の第1の隔壁14が載置される部分20aおよび第2の隔壁18が形成される中央部分を残して、コイルアッセンブリ10の第1および第2の巻線12、13と対向する部分に形成されている。
【0031】
他方、コイルアッセンブリ10においては、第1の隔壁14におけるベースプレート20の載置部分20aとの当接面が、コアカバー11と面一になるように形成されており、これにより第1および第2の巻線12、13が第1の隔壁14の上記当接面よりも膨出するように巻回されている。そして、コイルアッセンブリ10は、第1および第2の巻線12、13が開口部21内に落とし込まれた状態で、ベースプレート20に位置決め・固定されている。
【0032】
さらに、このベース付きコイルにおいては、第2の隔壁18の先端部に、円板状の平板部22が、その板面を第2の隔壁18と直交させて一体的に形成されている。ここで、平板部22は、その直径がコイルアッセンブリ10の中心部における内部空間の内径よりも僅かに小さくなるように形成されている。
【0033】
また、ベースプレート20の外周には、コイルアッセンブリ10を四方から覆う側壁23が一体に形成されることにより、開口部21を形成することによって減少した全体の強度が補強されており、当該側壁23の角隅部に形成された溝部23a内に、上記L字型端子17の辺17bが挿入されている。
【0034】
上記構成からなる第2の実施形態のベース付きコイルによっても、第1の実施形態に示したものと同様の作用効果を得ることができる。
加えて、このベース付きコイルにおいては、ベースプレート20におけるコイルアッセンブリ10の第1および第2の巻線12、13と対向する部分に開口部21を形成し、各開口部21内に第1および第2の巻線12、13を落とし込んでいるために、ベースプレート20の板厚分だけ、一段と低背化を図ることが可能になる。
【0035】
さらに、ベースプレート20に一体に立設した第2の隔壁18の先端部に、板面が第2の隔壁18と直交する円板状の平板部22を一体に形成しているために、この平板部22の板面を、部品吸着面として利用することができ、よって自動実装時にも対応することができるという効果も得られる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
ベースプレート上にコイルアッセンブリが取り付けられてコモンモードチョークコイル等として用いられるベース付きコイルとして利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 コイルアッセンブリ
11 コアカバー
12 第1の巻線
13 第2の巻線
14 第1の隔壁
14a 凹溝部(係合部)
15、20 ベースプレート
18 第2の隔壁
18a 端部(係合部)
21 開口部
22 平板部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースプレート上にコイルアッセンブリが取り付けられてコモンモードチョークコイル等として用いられるベース付きコイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶テレビ等のデジタル電子機器類に用いられる差動伝送方式の電送ケーブルには、2本の信号線の伝送特性の相違に起因して発生するコモンモードのノイズ電流を除去するために、コモンモードチョークコイルが介装されている。
【0003】
従来、この種のコモンモードチョークコイルとしては、コアを収納したコアカバーの周に巻線が巻回されてなるコイルアッセンブリがベースプレート上に位置決めされたベース付きコイルが用いられている。そして、当該ベース付きコイルにおいては、通常巻線の線径が大きく、所定の機械的強度を有することから、ベースプレートの四隅に穴を形成し、上記コイルアッセンブリから引き出した巻線の端部を、上記穴に挿通させて、そのまま基板へ実装する構造が多く採用されている。
【0004】
この際に、上記巻線の端部を、ベースプレートの穴に挿通することにより、コイルアッセンブリの位置決めを行っている。
ところが、上記ベース付きコイルは、コイルアッセンブリを単にベースプレート上に当接させる構造であるために、巻線端部の引き出し方や、穴への挿通時の力加減等によって、コイルアッセンブリに傾きが生じたり、あるいは中心から位置ズレを生じたりし易く、このため当該位置出し作業に多くの手間を要するという問題点があった。
【0005】
そこで、本出願人は、上記問題点を解消すべく、先に下記特許文献1において、ベースプレートに対するコイルアッセンブリの位置決めが容易なベース付きコイルを提案した。
図11は、このベース付きコイルを示すもので、コイルアッセンブリ1のコアカバー2に張出し部3を形成し、これと直交する位置にリブ4を設けるとともに、ベースプレート5の上面に凸条部6を延設し、これと直交して突起部7を対に設けたものである。
【0006】
上記構成からなるベース付きコイルによれば、張出し部3を凸条部6に合せて着座させるとともに、突起部7の台部7aへリブ4を当接させ、かつ凸条部6へ張出し部3を当接させて、張出し部3へ設けた孔部3aに、凸条部6へ設けた突起6aを嵌合させることにより、容易かつ確実に、コイルアッセンブリ1をベースプレート5に位置決めすることができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−267744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、この種のベース付きコイルが用いられている液晶テレビにおいては、その薄型化に伴って、使用される上記ベース付きコイルについても一層の薄型化が要請されている。このため、近年、極力コイルアッセンブリ1の高さ寸法を小さく(低背化)して、水平方向の寸法を大きくすることにより対応する方向にある。
【0009】
ところが、上記従来のベース付きコイルにおいては、コイルアッセンブリ1の下面側に張出し部3を形成するとともに、ベースプレート5上に凸条部6や突起部7を形成しているために、逆に全体としての高さ寸法の増加を招き、このような薄型化の要請に応えることが難しいという問題点が生じていた。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ベースプレートに対するコイルアッセンブリの組み込み精度を向上させることができ、しかも低背化も実現することが可能なベース付きコイルを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、平板状のベースプレート上に、環状のコアの外周が絶縁層となるコアカバーによって覆われるとともに、上記コアカバーの外周に巻線が巻回されたコイルアッセンブリが載置されてなるベース付きコイルにおいて、上記コアカバーに、上記コイルカバーの外周を周方向に複数の巻線区画に分割する2以上の第1の隔壁を形成し、上記ベースプレート上に、上記第1の隔壁の上記コイルアッセンブリにおける内周側端部間に介装される第2の隔壁を立設するとともに、上記第1の隔壁の上記内周側端部と上記第2の隔壁の対向端部との間に、互いに係合する係合部を形成したことを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記ベースプレートにおける上記コイルアッセンブリの上記巻線と対向する部分に開口部を形成し、当該開口部内に上記巻線を位置させたことを特徴とするものである。
【0013】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記第2の隔壁の先端部に、板面が当該第2の隔壁と直交する平板部を一体に形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜3のいずれかに記載の発明によれば、ベースプレート上に第2の隔壁を立設し、当該第2の隔壁をコイルアッセンブリ内に挿入して、その両側端部をコイルアッセンブリに形成した第1の隔壁における内周側端部と係合させることにより、上記第1および第2の隔壁によって複数の巻線区画間を画成する隔壁を構成している。このため、容易かつ確実にベースプレート上にコイルアッセンブリを位置決めして固定することができる。
【0015】
しかも、ベースプレート上に立設された第2の隔壁をコイルアッセンブリ内に挿入することによって、当該コイルアッセンブリの位置決めを行っているために、コイルアッセンブリの高さ寸法が増加することが無く、よって低背化も実現することができる。
【0016】
さらに、請求項2に記載の発明においては、ベースプレートにおけるコイルアッセンブリの巻線と対向する部分に開口部を形成し、当該開口部内に上記巻線を落とし込んでいるために、最大でベースプレートの板厚分だけ、一段と低背化を図ることが可能になる。
【0017】
加えて、請求項3に記載の発明のように、上記第2の隔壁の先端部に、板面が当該第2の隔壁と直交する平板部を一体に形成しておけば、上記板面を部品吸着面として利用することができ、よって自動実装時にも対応することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す平面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1のベースプレートを示す平面図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】図1のコイルアッセンブリを示す平面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す平面図である。
【図7】図6のベースプレートを示す平面図である。
【図8】図7の側面図である。
【図9】図7の底面図である。
【図10】図7のA−A線視断面図である。
【図11】従来のベース付きコイルを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
図1〜図5は、本発明に係るベース付きコイルを、コモンモードチョークコイルとして用いられるものに適用した第1の実施形態を示すもので、図中符号10が全体として円筒状をなすコイルアッセンブリである。
このコイルアッセンブリ10は、図5に示すように、フェライト等の磁性体からなる肉厚円筒状の芯材の外周が、絶縁層となる合成樹脂製のコアカバー11によって覆われるとともに、このコアカバー11の外周に、第1の巻線12および第2の巻線13が巻回されたものである。
【0020】
ここで、コアカバー11の外周には、直径方向に対向するようにして一対の第1の隔壁14が一体に形成されており、これら第1の隔壁14によって、第1の巻線12および第2の巻線13が円周方向に区画されている。なお、図中符号12a、13aは、それぞれ第1の巻線12および第2の巻線13の巻始め端部および巻終わり端部である。そして、このコイルアッセンブリ10の内部において対向する第1の隔壁14の内周側端部には、それぞれ軸線方向両端面および対向面に開口する凹溝部14aが形成されている。
【0021】
他方、このコイルアッセンブリ10が位置決め・固定されるベースプレート15は、図3および図4に示すように、絶縁性を有する合成樹脂からなる方形板状の部材で、コイルアッセンブリ10が載置される上面の四隅には、端子台16が一体に形成されている。そして、各端子台16には、L字型端子17が、その一辺17aを下面から突出させるとともに、他辺17bを板面と平行に外方へ突出させるように固定されている。
【0022】
さらに、このベースプレート15の上面中央部には、平板状の第2の隔壁18が一体に立設されている。この第2の隔壁18は、水平方向(ベースプレートの板面に沿う方向)の両端部18a間の長さ寸法が、コイルアッセンブリ10内において対向する第1の隔壁14の凹溝部14aにおける底面間の長さ寸法よりも僅かに小さく形成されており、かつ板厚は、凹溝部14aの幅寸法とほぼ等しくなるように設定されている。なお、図中符号19は、第2の隔壁18の両面中央部とベースプレート15の上面との間に一体化されて第2の隔壁18を補強するブラケットである。
【0023】
そして、コイルアッセンブリ10は、第1の隔壁14の凹溝部14aに、ベースプレート15の第2の隔壁18の各端部18aが挿入されることにより、ベースプレート15に上記水平方向に位置決めされている。ここで、第1の隔壁14の凹溝部14aと、第2の隔壁18の各端部18aとにより、係合部が構成されている。
【0024】
さらに、コイルアッセンブリ10から引き出されている第1および第2の巻線12、13の端部12a、13aが、各々ベースプレート15の端子台16に固定されているL字型端子17の辺17bに絡げられている。これにより、コイルアッセンブリ10は、上下方向への移動が阻止されてベースプレート15に固定されている。他方、ベースプレート15の下面から突出するL字型端子17の辺17aが、実装端子とされている。
【0025】
また、ベースプレート15上には、第1の隔壁14および第2の隔壁18によって、コイルアッセンブリ10の直径方向に連続する隔壁が形成されるとともに、当該隔壁によって第1の巻線12と第2の巻線13とが区画されている。なお、コアカバー11に対する第1の巻線12および第2の巻線13の巻線方向は、それぞれ電流の流れ方向に対して同じ巻線方向(コモン巻き)になっており、これにより第1および第2の巻線12、13は、第1の隔壁14および第2の隔壁18を間に挟んで対称に巻回されている。
【0026】
上記構成からなるベース付きコイルによれば、ベースプレート15上に第2の隔壁18を一体に立設し、この第2の隔壁18をコイルアッセンブリ10内に挿入して、その両側端部18aをコイルアッセンブリ15の第1の隔壁14における凹溝部14aと係合させることにより、第1および第2の隔壁14、18によって第1および第2の巻線12、13を画成する隔壁を構成しているために、容易かつ確実にベースプレート15上にコイルアッセンブリ10を位置決めして固定することができる。
【0027】
しかも、ベースプレート15上に立設された第2の隔壁18を、コイルアッセンブリ10内に挿入することによって、コイルアッセンブリ10の位置決めを行っているために、コイルアッセンブリ10の高さ寸法が増加することが無く、よって低背化も実現することができる。
【0028】
また、ベースプレート15上に端子台16を一体形成し、この端子台16にL字型端子17を設けて、第1および第2の巻線12、13の端部12a、13aを絡げているために、組み立てが容易になると共に、第1および第2の巻線12、13の線径が小さくなって、強度的に端部12a、13aをそのまま実装端子として利用できない場合にも対応することが可能になる。
【0029】
(第2の実施形態)
図6〜図10は、本発明に係るベース付きコイルを、コモンモードチョークコイルとして用いられるものに適用した第2の実施形態を示すもので、図1〜図5に示したものと同一構成部分については、同一符号を付してその説明を簡略化する。
先ず、本実施形態のベース付きコイルにおいては、図9および図10に示すように、ベースプレート20に開口部21が形成されている。
【0030】
当該開口部21は、コイルアッセンブリ10の第1の隔壁14が載置される部分20aおよび第2の隔壁18が形成される中央部分を残して、コイルアッセンブリ10の第1および第2の巻線12、13と対向する部分に形成されている。
【0031】
他方、コイルアッセンブリ10においては、第1の隔壁14におけるベースプレート20の載置部分20aとの当接面が、コアカバー11と面一になるように形成されており、これにより第1および第2の巻線12、13が第1の隔壁14の上記当接面よりも膨出するように巻回されている。そして、コイルアッセンブリ10は、第1および第2の巻線12、13が開口部21内に落とし込まれた状態で、ベースプレート20に位置決め・固定されている。
【0032】
さらに、このベース付きコイルにおいては、第2の隔壁18の先端部に、円板状の平板部22が、その板面を第2の隔壁18と直交させて一体的に形成されている。ここで、平板部22は、その直径がコイルアッセンブリ10の中心部における内部空間の内径よりも僅かに小さくなるように形成されている。
【0033】
また、ベースプレート20の外周には、コイルアッセンブリ10を四方から覆う側壁23が一体に形成されることにより、開口部21を形成することによって減少した全体の強度が補強されており、当該側壁23の角隅部に形成された溝部23a内に、上記L字型端子17の辺17bが挿入されている。
【0034】
上記構成からなる第2の実施形態のベース付きコイルによっても、第1の実施形態に示したものと同様の作用効果を得ることができる。
加えて、このベース付きコイルにおいては、ベースプレート20におけるコイルアッセンブリ10の第1および第2の巻線12、13と対向する部分に開口部21を形成し、各開口部21内に第1および第2の巻線12、13を落とし込んでいるために、ベースプレート20の板厚分だけ、一段と低背化を図ることが可能になる。
【0035】
さらに、ベースプレート20に一体に立設した第2の隔壁18の先端部に、板面が第2の隔壁18と直交する円板状の平板部22を一体に形成しているために、この平板部22の板面を、部品吸着面として利用することができ、よって自動実装時にも対応することができるという効果も得られる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
ベースプレート上にコイルアッセンブリが取り付けられてコモンモードチョークコイル等として用いられるベース付きコイルとして利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 コイルアッセンブリ
11 コアカバー
12 第1の巻線
13 第2の巻線
14 第1の隔壁
14a 凹溝部(係合部)
15、20 ベースプレート
18 第2の隔壁
18a 端部(係合部)
21 開口部
22 平板部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状のベースプレート上に、環状のコアの外周が絶縁層となるコアカバーによって覆われるとともに、上記コアカバーの外周に巻線が巻回されたコイルアッセンブリが載置されてなるベース付きコイルにおいて、
上記コアカバーに、上記コイルカバーの外周を周方向に複数の巻線区画に分割する2以上の第1の隔壁を形成し、上記ベースプレート上に、上記第1の隔壁の上記コイルアッセンブリにおける内周側端部間に介装される第2の隔壁を立設するとともに、上記第1の隔壁の上記内周側端部と上記第2の隔壁の対向端部との間に、互いに係合する係合部を形成したことを特徴とするベース付きコイル。
【請求項2】
上記ベースプレートにおける上記コイルアッセンブリの上記巻線と対向する部分に開口部を形成し、当該開口部内に上記巻線を位置させたことを特徴とする請求項1に記載のベース付きコイル。
【請求項3】
上記第2の隔壁の先端部に、板面が当該第2の隔壁と直交する平板部を一体に形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のベース付きコイル。
【請求項1】
平板状のベースプレート上に、環状のコアの外周が絶縁層となるコアカバーによって覆われるとともに、上記コアカバーの外周に巻線が巻回されたコイルアッセンブリが載置されてなるベース付きコイルにおいて、
上記コアカバーに、上記コイルカバーの外周を周方向に複数の巻線区画に分割する2以上の第1の隔壁を形成し、上記ベースプレート上に、上記第1の隔壁の上記コイルアッセンブリにおける内周側端部間に介装される第2の隔壁を立設するとともに、上記第1の隔壁の上記内周側端部と上記第2の隔壁の対向端部との間に、互いに係合する係合部を形成したことを特徴とするベース付きコイル。
【請求項2】
上記ベースプレートにおける上記コイルアッセンブリの上記巻線と対向する部分に開口部を形成し、当該開口部内に上記巻線を位置させたことを特徴とする請求項1に記載のベース付きコイル。
【請求項3】
上記第2の隔壁の先端部に、板面が当該第2の隔壁と直交する平板部を一体に形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のベース付きコイル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−238734(P2011−238734A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108123(P2010−108123)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000237721)FDK株式会社 (449)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000237721)FDK株式会社 (449)
【Fターム(参考)】
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