説明

ペットの管理システム

【課題】飼い主不在のままで動物病院や保健所にペットが持ち込まれた場合などに速やかに飼い主などに連絡可能な飼い犬の管理システムを提案すること。
【解決手段】犬用首輪1は、ベルト2および長さ調節具3からなる首輪本体4と、ここに埋め込まれた非接触型のICチップ5とを備えている。ICチップ5には書き換え不能な読み出し専用の記憶領域6と、書き換え可能な記憶領域7とが含まれ、記憶領域6にはIDコードが記憶されている。動物病院13などでは、ハンディターミナル24を用いて持ち込まれた飼い犬DのペットIDコードを読み取り、インターネット21を経由して、保健所の飼い犬管理用データベース22にアクセスして、ペットIDコードを用いてその飼い犬の飼い主情報、連絡先情報を速やかに取得できる。よって、飼い主に速やかに連絡を取ることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、犬や猫などのペットの飼い主や連絡先などのペット識別情報を担持したペット用首輪を用いて、保健所、動物病院などの各場所においてペットの飼い主や連絡先などをリアルタイムで確認可能なペットの管理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
犬や猫などのペットは、首輪に記載された飼い主や連絡先に基づき管理されている。特に、犬の場合には狂犬病の予防接種が義務付けられている関係上、飼い主に登録が義務付けられており、登録手続きにより交付される鑑札を飼い犬の首輪に付けることにより、各飼い犬が統一的に管理されている。
【0003】
鑑札の代わりに飼い犬の識別や管理を行う方法として、飼い主や連絡先情報を担持したマイクロチップを犬の体内に埋め込む方法も知られている。マイクロチップを用いれば、首輪に付けてある鑑札を見て保健所などに照会することなく、専用のリーダを用いて連絡先などを確認できるので便利である。
【0004】
一方、飼い主などが飼い犬などの所在を携帯電話などの通信回線を介して確認できるように、通信端末を取り付けた首輪が下記の特許文献に開示されている。
【0005】
【特許文献】
実用新案登録第3079237号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、マイクロチップを犬などのペットの体内に埋め込むことによるペットの管理方法は、飼い主にとっては精神的苦痛などの抵抗感があり、動物愛護団体からの苦情のもとにもなりかねない。また、ペット体内へのマイクロチップの埋め込みには所定の時間および費用が掛かってしまうので、手軽に利用できる方法ではない。一方、上記の特許文献に開示されている通信端末が取り付けられた首輪は、飼い主がペットの所在を確認するためのものである。したがって、例えば、保健所に持ち込まれた迷い犬などを職員が首輪の通信端末を利用して確認することはできない。よって、ペットの管理に用いるには不向きである。
【0007】
本発明の課題は、犬などのペットの管理をリアルタイムで簡単に行うことのできるペットの管理システムを提案することにある。特に、鑑札の代わりに用いることにより飼い犬の管理を簡単かつリアルタイムで行うことのできる犬の管理システムを提案することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明のペットの管理システムは、
ペット識別情報を記憶したICチップを備えたペット用首輪と、
前記ICチップの記憶内容を読み出すリーダと、
前記ペット識別情報とその属性情報とが対応付けした形態で記憶保持されているペット管理用データベースと、
前記リーダで読み出された前記ペット識別情報を用いて前記ペット管理用データベースを検索して、当該ペット識別情報の属性情報を出力する処理装置と、
を有していることを特徴としている。
【0009】
本発明のペットの管理システムでは、ペットに付けた首輪のICチップに担持されているペット識別情報、例えばペットのIDコードをリーダにより読み出し、これを用いてペット管理用データベースを検索すれば、その属性情報、例えば飼い主の住所、氏名や連絡先などの情報を得ることができる。よって、保健所や動物病院などに本発明によるペットの管理システムを設置しておけば、交通事故にあった迷い犬などの飼い主の連絡先などをその場で直ちに知ることができる。
【0010】
ここで、前記ICチップに情報を書き込むライタを有していれば、希望の情報を記憶させておくことができる。例えば、ペットの名前などを書き込んでおくことができる。
【0011】
次に、本発明のペットの管理システムを、前記ペット管理用データベース、前記リーダおよび前記ライタを備えた管理装置を備えた構成とすることができる。この場合には、前記処理装置を、通信回線を介して前記管理装置の前記ペット管理用データベースにアクセス可能な通信端末装置とすればよい。この構成によれば、距離的に離れた場所であっても管理装置のペット管理用データベースにアクセスして必要な情報をリアルタイムで確認できる。
【0012】
また、この場合には、複数の前記通信端末装置を有し、各通信端末装置に、それぞれ前記リーダおよび前記ライタが備わっている構成とすればよい。
【0013】
ここで、本発明のペットの管理システムとして、前記管理装置を保健所に設置し、前記通信端末をそれぞれ、ペットの飼い主宅、動物病院、およびペットショップに設置した構成とすることができる。
【0014】
また、前記ペット識別情報には、少なくとも、ペットIDコードを含め、前記ICチップに、前記ペットIDコードが記憶されている読み出し専用領域を形成し、前記ペット管理用データベースを、前記ペットIDコードに基づき対応する属性情報を検索可能な構成とすればよい。
【0015】
さらに、前記ペット識別情報に、ペットIDコードと、ペット所有者情報および連絡先情報を含む属性情報とが含まれている場合には、前記ICチップには、前記ペットIDコードが記憶されている読み出し専用領域と、前記属性情報が記憶されている書き換え可能領域とを形成しておけばよい。
【0016】
さらには、前記通信端末装置のそれぞれに、前記ペット管理データベースに対する所定レベルのアクセス権を付与し、前記管理装置は、各通信端末装置に付与されたアクセス権に基づき、各通信端末装置からの前記ペット管理データベースに対するアクセス要求を管理することが望ましい。例えば、飼い主には最も低いアクセス権を与えて所有しているペットの属性情報のみを確認可能とし、動物病院などにはそれよりも高いアクセス権を付与して、運び込まれたペットの飼い主や連絡先を確認できるようにすればよい。
【0017】
次に、前記ICチップを、非接触状態で記憶保持されている前記ペット識別情報の読み出しおよび書き込みが可能な非接触型ICチップとすれば、記憶情報の読み出し、記憶情報の書き込み操作が簡単になるので便利である。
【0018】
また、前記ICチップは前記首輪本体に埋め込まれていれば、防水性、耐久性が高まるので望ましい。
【0019】
次に、本発明のペットの管理システムは飼い犬の管理システムとして用いるのに適しており、この場合には、前記ペット識別情報には、交付される鑑札に表示されている鑑札情報が含まれるようにすればよい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した飼い犬の管理システムの実施の形態を説明する。図1は本実施の形態のシステムに用いるのに適した犬用首輪を示す説明図であり、図2R>2は犬用首輪を用いた飼い犬の管理システムの構成例を示す説明図である。
【0021】
まず、犬用首輪1は、一般的なベルト2および長さ調節具3からなる首輪本体4と、この首輪本体4のベルト2に埋め込まれた非接触型ICチップ5とを有している。ICチップ5には、書き換え不能な読み出し専用の記憶領域6と、書き換え可能な記憶領域7とが含まれている。
【0022】
書き換え不能な記憶領域6にはペットIDコード、例えば、鑑札8に表示された登録番号などの識別情報が書き換え不可の状態で記憶保持されている。ペットIDコードは多数桁の数字、ローマ字などからなる。書き換え可能な記憶領域7には、飼い主情報(飼い主の住所、氏名など)および連絡先情報(電話番号、住所など)、予防接種情報、血統、販売元のペットショップ情報などの属性情報を書き換え可能な状態で記憶保持可能である。
【0023】
図2を参照して、犬用首輪1を用いた飼い犬Dの管理システム10を説明する。管理システム10は、保健所11に設置した管理装置12と、各動物病院13に設置した通信端末装置14と、各ペットショップ15に設置した通信端末装置16と、各飼い主17が所持している通信端末装置18と、一般ユーザ19が所有している通信端末装置20と、これらを双方向通信可能な状態で接続可能な通信ネットワーク、例えばインターネット21から構成されている。
【0024】
保健所11に設置した管理装置12は、ペット識別情報とその属性情報とが対応付けした形態で記憶保持されているペット管理用データベース22と、ICチップ5に対する書き込みおよび読み出しを行うハンディターミナル23(リーダ、ライタ)とを備えている。各通信端末装置14、16、18も、ハンディターミナル24、25、26をそれぞれ備えており、ハンディターミナル24、25、26で読み出されたペットIDコードを用いてペット管理用データベース22を検索して、当該ペットIDコードの属性情報を出力可能である。
【0025】
ここで、通信端末装置14、16、18のそれぞれには、ペット管理データベース22に対する異なるレベルのアクセス権が付与されている。例えば、動物病院13の通信端末装置14に最も高いアクセス権が付与され、ペットの飼い主17には最も低いアクセス権が付与されている。最も低いアクセス権では、例えば、飼い主のペットの属性情報のみを閲覧可能とされる。このようなアクセス権に基づくペット管理データベース22に対する各通信端末装置からのアクセス要求は、管理装置12によって管理される。また、管理装置12は、発行されるICチップのペットIDコードの書き込み制御、ペット管理用データベース22の更新処理などを行う。
【0026】
この構成の飼い犬の管理システム10の活用例を説明する。例えば、首輪1が付けられている飼い犬Dが交通事故などで動物病院13などに運び込まれた場合には、飼い主が一緒でないときでも、管理装置ICチップ5をハンディターミナル24により読み取ることにより、飼い主や連絡先を知ることができる。すなわち、動物病院13の職員は通信端末装置14からインターネット21を経由して保健所11の飼い犬管理データベース22にアクセスして、読み取ったペットIDコードに基づき飼い主情報、連絡先情報を取得できる。したがって、飼い主に速やかに連絡を取ることができる。また、交通事故などで死亡した飼い犬が保健所に持ち込まれた場合にも、ICチップ5の記憶情報から飼い主に速やかに連絡を取ることができるので、保健所において飼い主に無断で処分されてしまうこともない。
【0027】
なお、飼い主や動物病院、ペットショップなどでは、各種の履歴情報などをICチップ5の記憶領域7にハンディターミナルを用いて書き込むことができる。ICチップ5に飼い主情報および連絡先情報が書き込まれていると、飼い犬管理データベース22にアクセスせずとも連絡先などを知ることができる。しかし、飼い主が替わった場合などにおける更新処理などを考慮すると、保健所などにおいてデータベースを一括管理することが望ましい。
【0028】
(その他の実施の形態)
上記の例は飼い犬の管理などに適した場合のものであるが、本発明は犬以外のペットの管理システムとしても用いることができる。
【0029】
また、本発明のシステムを採用すれば、ペットを取り扱う各機関、個人がネットワーク化されるので、ペット情報の配信や、各ペットショップによるペットのネット販売システムも簡単に構築できる。例えば、図2の例では、一般ユーザの通信端末装置20からペットショップ15のホームページにアクセスしてペットの購入などを行うことができる。この場合においても、各ペットに割り当てられるペットIDコードなどのペット識別情報に基づき、ペット情報およびその取引を管理することができるので、極めて便利である。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のペットの管理システムでは、ペット用首輪にICチップを取り付け、そこに鑑札情報などを記憶保持させるようにしている。また、動物病院、ペットショップなどに、ペット管理用データベースにアクセス可能な処理装置(通信端末装置)を設置して、ICチップのペット識別情報に基づき飼い主情報や連絡先情報を通信網などを介して検索できるようにしてある。
【0031】
したがって、ICチップのリーダを用いることにより、その場でリアルタイムでペットの飼い主や連絡先を知ることができる。よって、動物病院や保健所にペットが持ち込まれた場合に速やかに飼い主に連絡でき、交通事故などで死亡したペットが飼い主に無断で処分されてしまうなどの弊害も回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した犬用首輪を示す説明図である。
【図2】図1の犬用首輪を用いた飼い犬の管理システムを示す説明図である。
【符号の説明】
1 犬用首輪
2 ベルト
3 長さ調節具
4 首輪本体
5 ICチップ
6、7 記憶領域
10 飼い犬の管理システム
11 保健所
12 管理装置
13 動物病院
14 通信端末装置
15 ペットショップ
16 通信端末装置
17 飼い主
18 通信端末装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペット識別情報が記憶されたICチップを備えたペット用首輪と、
前記ICチップの記憶内容を読み出すリーダと、
前記ペット識別情報とその属性情報とが対応付けした形態で記憶保持されているペット管理用データベースと、
前記リーダで読み出された前記ペット識別情報を用いて前記ペット管理用データベースを検索して、当該ペット識別情報の属性情報を出力する処理装置と、
を有しているペットの管理システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記ICチップに情報を書き込むライタを有しているペットの管理システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記ペット管理用データベース、前記リーダおよび前記ライタを備えた管理装置を有し、
前記処理装置は通信回線を介して前記管理装置の前記ペット管理用データベースにアクセス可能な通信端末装置であるペットの管理システム。
【請求項4】
請求項3において、
複数の前記通信端末装置を有し、
各通信端末装置には、それぞれ前記リーダおよび前記ライタが備わっているペットの管理システム。
【請求項5】
請求項4において、
前記管理装置は保健所に設置され、
前記通信端末は、ペットの飼い主宅、動物病院、およびペットショップに設置されているペットの管理システム。
【請求項6】
請求項5において、
前記ペット識別情報には、少なくとも、ペットIDコードが含まれており、
前記ICチップは、前記ペットIDコードが記憶されている読み出し専用領域を備えており、
前記ペット管理用データベースは、前記ペットIDコードに基づき対応する属性情報を検索可能であるペットの管理システム。
【請求項7】
請求項5において、
前記ペット識別情報には、ペットIDコードと、ペット所有者情報および連絡先情報を含む属性情報とが含まれており、
前記ICチップは、前記ペットIDコードが記憶されている読み出し専用領域と、前記属性情報が記憶されている書き換え可能領域とを備えているペットの管理システム。
【請求項8】
請求項7において、
前記通信端末装置のそれぞれには、前記ペット管理データベースに対する所定レベルのアクセス権が付与されており、
前記管理装置は、各通信端末装置に付与されたアクセス権に基づき、各通信端末装置からの前記ペット管理データベースに対するアクセス要求を管理するペットの管理システム。
【請求項9】
請求項1ないし8のうちのいずれかの項において、
前記ICチップは非接触状態で記憶保持されている前記ペット識別情報の読み出しおよび書き込みが可能な非接触型ICチップであるペットの管理システム。
【請求項10】
請求項1ないし9のうちのいずれかの項において、
前記ICチップは前記首輪本体に埋め込まれているペットの管理システム。
【請求項11】
請求項1ないし10のうちのいずれかの項に記載のペットの管理システムを用いた飼い犬の管理システムであって、
前記ペット識別情報には、交付される鑑札に表示されている鑑札情報が含まれている飼い犬の管理システム。

【図1】
image rotate



【図2】
image rotate