説明

ペットフード

【課題】インスリン分泌を抑制し、かつ脂質代謝を亢進させることができるペットフードの提供。
【解決手段】デンプンを10質量%以上含有するペットフードであって、
(A)β−グルカン/デンプンの質量比が0.065以上、且つ、
(B)アミロペクチン/デンプンの質量比が0.76以上
であるペットフード。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットフードに関する。
【背景技術】
【0002】
ペットブームによりペットの飼育数は増大しており、それに伴いペットの高齢化、運動不足、栄養過多等によりペットの肥満、糖尿病、肝臓疾患等が増大している。また、避妊手術後のホルモンバランスの狂いによって肥満する犬や猫が多くなっている。
【0003】
このような肥満や体重増加を防止するためのペットフードが数多く開発されている。アミロペクチンは消化性が高いためインスリン分泌を亢進させるものとされており、このインスリン分泌の増加により肥満が引き起こされると考えられている。これに対して、アミロースは消化性が低くインスリン分泌を抑制することができるため、アミロースを高濃度に含有する高アミロースデンプンを一定量含有させたペットフードが知られている(特許文献1)。また、食後の血糖反応を調整する穀粉として大麦、トウモロコシ、サトウモロコシを一定比で含有させたペットフード(特許文献2)、炭水化物源として大麦、ソルガム及び/又は高アミロースデンプンを一定比で含有させたペットフードが知られている(特許文献3)。
また、水溶性β−グルカンを最大含量とする食物繊維集合体を有効成分として含む、メタボリックシンドローム治療剤が知られている(特許文献4)。
【特許文献1】特開2005−095174号公報
【特許文献2】特表2002−510474号公報
【特許文献3】特開2007−110915号公報
【特許文献4】国際公開WO2007/077929号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高アミロース澱粉を多量に配合したペットフードを給与した場合、血中ケトン体濃度の上昇が観察された。血中ケトン体は脂肪の代謝により生成するものと考えられ、中間生成物たるケトン体を更に減少させるような代謝の亢進が望ましいと考えられる。加えて、ペットの健康を維持する上で糞便の状態を良好に保つことは重要である。更に、ペットの飼育管理上、糞便量が少ないことが望ましい。かかる課題については従来技術では検討されていなかった。
本発明はインスリン分泌を抑制し、かつ脂質代謝を亢進させることができるペットフードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者は種々のデンプンや食物繊維が脂質代謝に与える影響について検討した結果、β−グルカンを特定量配合することにより、脂質代謝に対する作用、特に血中ケトン体濃度低下作用があることを見出した。更に、アミロペクチンを高濃度含有したペットフードにおいてもインスリン分泌を抑制できることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、デンプンを10質量%以上含有するペットフードであって、
(A)β−グルカン/デンプンの質量比が0.065以上、且つ、
(B)アミロペクチン/デンプンの質量比が0.76以上
であるペットフードを提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のペットフードは、インスリン分泌抑制作用に優れるとともに、血中ケトン体濃度を低下させ脂質代謝亢進作用が得られ、肥満防止効果に優れる。また、本発明のペットフードを摂取した場合の糞便量は、従来のペットフードを摂取した場合に比べて減少するという効果も得られる。更に本発明のペットフードの油脂の一部をジアシルグリセロールにすることで血中中性脂肪濃度上昇が抑制され、優れた抗肥満効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のペットフードは、デンプンを10質量%以上含有し、β−グルカン/デンプンの質量比が0.065以上であり、(B)アミロペクチン/デンプンの質量比が0.75以上である。
【0009】
本発明のペットフードは、デンプンを10質量%以上含有する。デンプン含有量(以下、デンプン量ともいう)はペットフード中15〜60質量%、特に20〜50質量%であるのが経済性、摂取性の点から好ましい。デンプン量は実施例に記載の方法で決定される。
【0010】
デンプンはアミロースとアミロペクチンとから構成されるが、本発明のペットフードは、アミロペクチン/デンプンの質量比が0.76以上である。より好ましいアミロペクチン/デンプンの質量比は0.77以上であり、更に好ましくは0.79以上である。ペットフード中のアミロペクチンの含有量は、19質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、21質量%以上が更に好ましい。アミロペクチンの含有量は実施例に記載の方法で決定される。
【0011】
デンプン源としては、ワキシーコーンデンプン、コーンデンプン、小麦デンプン、米デンプン、糯米デンプン、馬鈴薯デンプン、甘露デンプン、タピオカデンプン、サゴデンプン等、各種穀類由来のデンプンが挙げられるが、アミロペクチン含有量を上記の範囲に調整するには、モチ種の穀物を使用することが好ましい。
【0012】
また、本発明のペットフードはβ−グルカンを含有する。本発明に用いるβ−グルカンは水溶性の食物繊維の1種であり、主にイネ科植物の種子の細胞壁に含まれている(1−3,1−4)−β−D−グルカンを指す。β−グルカン含有量は、実施例に記載のAOAC公定法995.16に示される酵素的定量法に従って決定される。
【0013】
β−グルカンを含有するデンプン源としては、大麦、オーツ麦、ライ麦、小麦等が挙げられる。このうち、大麦の品種である、ダイシモチ、米澤モチ2号、CDC−Fiber等のβ−グルカン含有量の高いデンプン源を用いるのが好ましい。
【0014】
本発明ペットフード中のβ−グルカン/デンプンの質量比は、インスリン分泌抑制の点から0.065以上であり、好ましくは0.07以上、より好ましくは0.075以上、更に好ましくは0.08以上である。また、0.5以下が好ましく、0.4以下がより好ましく、0.3以下が更に好ましい。
【0015】
ペットフード中のβ−グルカンの含有量はインスリン分泌抑制の点から、1.6質量%以上が好ましく、1.8質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上が更に好ましく、2.8質量%以上が特に好ましい。
【0016】
上記記載のデンプン源の他、デンプンに化学的処理又は化学修飾を施した加工デンプンを含有することができる。加工デンプンとしては、例えば、アセチル化デンプン、オクテニルコハク酸化デンプン、ヒドロキシプロピル化デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、酢酸デンプン、酸化デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン等が挙げられるが、デンプンから簡単な工程で、高純度で比較的安価に製造できる点、食後の血糖値上昇抑制、食後のインシュリン濃度上昇抑制、肥満防止効果、摂食性、安全性の点から、アセチル化デンプン、オクテニルコハク酸化デンプン、ヒドロキシプロピル化デンプンが好ましい。加工デンプンの含有量は、デンプン中に3質量%以上、更に3〜30質量%、特に3〜20質量%含有するのが、経済性、肥満防止効果、摂取性及び便の状態の点から好ましい。
【0017】
本発明のペットフードにおいては、デンプン以外に、単糖類、オリゴ糖類、多糖類、食物繊維等の成分を含有することもできる。
【0018】
食物繊維としては、動物の消化酵素では分解されない素材をいい、水不溶性食物繊維と水溶性食物繊維を含むが、前者の具体例としては、セルロース、ヘミセルロース等を含有したビートファイバー、ピーファイバー、チコリ根、アルファルファミール、小麦ふすま等が挙げられ、後者の具体例としては、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖等の難消化性オリゴ糖、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、グアガム酵素分解物、サイリウム種皮、グルコマンナン、寒天、水溶性大豆多糖類、水溶性コーンファイバー、イヌリン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸等が挙げられる。中でも、水不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両者を含んだビートパルプが好ましい。
【0019】
本発明のペットフードにおいては、更に油脂を含有することが好ましい。油脂としては、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、コーン油、ナタネ油、大豆油、パーム油、ひまわり油、亜麻仁油、ごま油、ラード、牛脂、魚油、乳脂等が挙げられるが、油脂として配合したものに限られず、他の植物原料、又は動物原料中に油脂が含有されている場合にはこれも含む。油脂は本発明のペットフード中1〜50質量%、更に3〜40質量%、特に5〜30質量%含有するのが、肥満防止効果及び摂取性の点で好ましい。
【0020】
本発明のペットフードにおいては、全油脂中にジアシルグリセロールを10質量%以上含有することが好ましい。また、ジアシルグリセロールは、肥満防止効果の点から、好ましくは全油脂中に20〜100質量%、更に25〜100質量%含有することが好ましい。
【0021】
ジアシルグリセロールは、その構成脂肪酸の80〜100質量%が不飽和脂肪酸(UFA)であることが好ましく、より好ましくは90〜100質量%、更に93〜100質量%、特に93〜98質量%、殊更94〜98質量%であるのが食後の血中インシュリン濃度上昇抑制、肥満防止効果の点で好ましい。ここで、この不飽和脂肪酸の炭素数は14〜24、更に16〜22であるのが好ましい。
【0022】
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸のうち、オレイン酸の含有量は20〜65質量%、更に25〜60質量%、特に30〜50質量%、殊更30〜45質量%であるのが肥満防止効果及び摂取性の点で好ましい。
【0023】
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸のうち、リノール酸の含有量は15〜65質量%、更に20〜60質量%、特に30〜55質量%、殊更35〜50質量%であるのが肥満防止効果及び摂取性の点で好ましい。更に、酸化安定性、肥満防止効果の点から、ジアシルグリセロール中のリノール酸/オレイン酸の含有質量比が0.01〜2.0、更に0.1〜1.8、特に0.3〜1.7であることが好ましい。
【0024】
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸のうち、リノレン酸の含有量は15質量%未満、更に0〜13質量%、特に1〜10質量%、殊更2〜9質量%であるのが肥満防止効果、摂取性、及び酸化安定性の点で好ましい。リノレン酸には、異性体としてα−リノレン酸とγ−リノレン酸が知られているが、α−リノレン酸が好ましい。
【0025】
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸のうち、飽和脂肪酸(SFA)の含有量は20質量%未満であることが好ましく、更に0〜10質量%、更に0〜7質量%、特に2〜7質量%、殊更2〜6質量%であるのが肥満防止効果、摂取性、及び酸化安定性の点で好ましい。飽和脂肪酸としては、炭素数14〜24、特に16〜22のものが好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸が特に好ましい。
【0026】
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸中、炭素数12以下の脂肪酸の含有量は、風味、摂取性の点で5質量%以下であるのが好ましく、更に0〜2質量%、特に0〜1質量%、実質的に含まないのが殊更好ましい。残余の構成脂肪酸は炭素数14〜24、特に16〜22であるのが好ましい。
【0027】
また、食後の血中インスリン濃度上昇抑制、肥満防止効果の点から、ジアシルグリセロール中の1,3−ジアシルグリセロールの割合が50質量%以上、より好ましくは52〜100質量%、更に54〜90質量%、特に56〜80質量%であるジアシルグリセロールを用いるのが好ましい。
【0028】
ジアシルグリセロールは、上述した天然油脂中に含有されるものを含んでいても良いが、ジアシルグリセロールの含有量を調整するために、上述した油脂由来の脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応、油脂とグリセリンとのエステル交換反応等により得たものを配合することが好ましい。なお、ジアシルグリセロールは、アルカリ触媒等を用いた化学反応によっても得ることができるが、1,3−位選択的リパーゼ等の酵素を経て温和な条件の反応によって得たものであることが、酸化安定性、嗜好性の点で好ましい。
【0029】
本発明のペットフードにおける油脂中には、その他にトリアシルグリセロールが含まれ、また、若干のモノアシルグリセロール、遊離脂肪酸等が含まれていても良い。これらは、上述した天然油脂中に含有されるものの他、製造したジアシルグリセロール含有油脂、配合される植物原料、又は動物原料中に含まれる油脂に含有されるものも含む。
【0030】
本発明のペットフードにおいては、更に動物性又は植物性のタンパク質を含むことが、肥満防止効果、摂取性、栄養バランスの点から好ましいが、摂食性の点から動物性タンパク質が好ましい。本発明ペットフード中の動物性又は植物性タンパク質含有量は、5〜70質量%、更に10〜60質量%、特に15〜40質量%含有するのが好ましい。
【0031】
動物性タンパク質としては、カゼイン等の乳タンパク質も挙げられるが、肥満防止効果及び摂取性の点から、動物性肉類タンパク質が好ましい。このような動物性肉類タンパク質としては、牛、豚、羊、うさぎ、カンガルーなどの畜肉及び獣肉、ならびにその副生成物及び加工品;鶏、七面鳥、うずらなどの鳥肉ならびにその副生物及び加工品;魚、白身魚などの魚肉ならびにその副生物及び加工品;ミートミール、ミートボーンミール、チキンミール、フィッシュミール等の上記原料のレンダリング等が挙げられる。このうち肥満防止効果の点で鶏肉、魚肉が特に好ましい。複数の肉類タンパク質を混合して用いる場合には、鶏肉及び/又は魚肉を肉類中の30〜100質量%、特に50〜100質量%含有させるのが好ましい。
【0032】
植物性タンパク質としては、大豆タンパク質、小麦タンパク質、小麦グルテン、コーングルテン等が好ましい。
【0033】
本発明のペットフードには、更に植物ステロールを含有してもよい。植物ステロールは、ペットフード中に、コレステロール低下効果の点で0.1質量%以上、更に0.5質量%以上含有するのが好ましい。また植物ステロール含量の上限は、30質量%までであればよい。ここで植物ステロールとしては、例えばα−シトステロール、β−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、α−シトスタノール、β−シトスタノール、スチグマスタノール、カンペスタノール、シクロアルテノール等のフリー体、及びこれらの脂肪酸エステル、フェルラ酸エステル、桂皮酸エステル等のエステル体が挙げられる。
【0034】
本発明のペットフードには、更に、ぬか類、粕類、野菜、ビタミン類、ミネラル類等を配合することができる。ぬか類としては、米ぬか、ふすま等が、粕類としては、大豆粕等が挙げられる。野菜類としては野菜エキス等が挙げられる。ビタミン類としては、A、B1、B2、D、E、ナイアシン、パントテン酸、カロチン等が挙げられ、0.05〜10質量%含有するのが好ましい。ミネラル類としては、カルシウム、リン、ナトリウム、カリウム、鉄等が挙げられ、0.05〜10質量%含有するのが好ましい。この他、一般的にペットフードに使用されるゲル化剤、保型剤、pH調整剤、調味料、防腐剤、栄養補強剤等も含有することができる。なお製造過程において、油脂の酸化を抑制する目的で窒素などの不活性ガスで置換したり脱気しながら製造することが、特に加熱工程で有効であるため好ましい。また、本発明のペットフードとしては、ドライタイプ、ウエットタイプ、セミモイストタイプ、ジャーキータイプ、ビスケットタイプ、ガムタイプ、粒状、粉状、スープ状等いずれの形態であってもよい。
【0035】
本発明のペットフードを摂取することにより、血中ケトン体濃度低下効果、すなわち脂質代謝改善効果、糞便量減少効果、ペットの肥満防止又は抑制効果、体重増加抑制効果がある。従って、本発明のペットフードの容器には、「ペットの脂質代謝を改善する効果がある」、「ペットの肥満を防止する効果がある」、「ペットの肥満を抑制する効果がある」、「ペットの体重増加を抑制する効果がある」、「肥満が気になるペットに適しています」等、表示することができる。本発明のペットフードは、コンパニオン動物に対して給与することができ、上述の効果は、犬や猫に対し効果が高く、肥満等の問題が生じやすいこと、またドッグフードは炭水化物量が多くなることから糞便量が問題になるため、特に犬について効果が優れている。
【実施例】
【0036】
ペットフード中のβ−グルカン量の測定法
AOAC公定法995.16に示される酵素的定量法によって定量した。具体的にはメガザイム社のβ−グルカン測定キットを用いて測定した。
【0037】
ペットフード中のデンプン量及びアミロペクチン量の測定法
デンプン量及びアミロペクチン量はメガザイム社のアミロース/アミロペクチン測定キットを用いて測定した。分析手順の概要は以下の通りである。
(a)サンプル前処理
1)サンプル23〜25mgを試験管に入れる
2)試験管振盪器にかけながら1mL DMSOを加え沸騰水槽中で15分間加熱
3)放冷後、95%エタノール4mLを加えて澱粉を沈殿させる
4)2,000×gで遠沈後上清を捨て、更に10分間置いてアルコールを抜く
5)1mL DMSOを加え沸騰水槽で15分間加熱
6)ConA溶解液を加えて25mLにする
【0038】
(b)ConA処理及びアミロース測定
1)(a)で調整した溶液1.0mLにConA溶液0.5mLを加えて、1時間放置後20,000×gで10分間遠沈
2)上清1mLにpH4.5の100mM酢酸ナトリウム緩衝液3.0mLを加え、沸騰水槽に5分間入れてConAを変性させる
3)アミログルコシダーゼ/α−アミラーゼ溶液0.1mLを加え、40℃で20分間インキュベート後2,000×gで5分間遠沈
4)上清1mLにGOPOD試薬溶液4mLを加え、40℃で20分間インキュベートの後510nmで吸光度測定
【0039】
(c)総デンプン量測定
1)(a)で調整した溶液0.5mLにpH4.5の100mM酢酸ナトリウム緩衝液4.0mLを加える
2)アミログルコシダーゼ/α−アミラーゼ溶液0.1mLを加えて40℃で10分間インキュベート
3)1mL取り、GOPOD試薬溶液4mLを加えて40℃で20分間インキュベートした後510nmで吸光度測定
【0040】
<ペットフード中の油脂量の測定法>
飼料分析法・解説(2004)第3章II3.2.1に記載のジエチルエーテル抽出法によって定量した。分析は日本食品分析センターに依頼した。
【0041】
<ペットフード中のジアシルグリセロール量の測定法>
AOCS Official Method, Cd,11b-91に記載の方法によって定量した。分析は日本食品分析センターに依頼した。
【0042】
<ペットフード中のタンパク質量の測定法>
飼料分析法・解説(2004)第3章II2.2に記載のケルダール法によって定量した。分析は日本食品分析センターに依頼した。
【0043】
試験例1
ビーグル犬8頭に、表1に示すペットフード(実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、比較例3)をそれぞれ150g与えた。
大麦(1):「サッポロファイバーリッチ厳選大麦精白大麦粉」(サッポロビール株式会社製)であり、β−グルカンを9.1質量%含有し、アミロース/デンプン質量比は1.0である。以下、本品を「β−グルカンリッチ大麦」とも呼ぶ。
大麦(2):「イチバンボシ(品種)」大麦粉であり、β−グルカンを3.7質量%含有し、アミロース/デンプン質量比は0.75である。以下、本品を「通常大麦」とも呼ぶ。
ハイアミロースコーン:日食アルスターH
ジアシルグリセロール高含有油脂:
グリセリド組成(質量%)
遊離脂肪酸1.4%、モノアシルグリセロール3.1%、ジアシルグリセロール84.0%、トリアシルグリセロール10.9%
グリセリド中の脂肪酸組成(質量%)
C16 3.0%、C18 1.1%、C18:1 36.4%、C18:2 44.9%、C18:3 5.1%
油脂:
グリセリド組成(質量%)
遊離脂肪酸3.2%、モノアシルグリセロール1.9%、ジアシルグリセロール4.6%、トリアシルグリセロール90.2%
グリセリド中の脂肪酸組成(質量%)
C16 5.3%、C18 12.1%、C18:1 32.7%、C18:2 47.0%、C18:3 6.8%
【0044】
【表1】

【0045】
給餌前(0分)、及び給餌後60、120、180、240分後にそれぞれ採血を行い、血清を分離した。血清中のインスリン、中性脂肪及び総ケトン体を測定した。ここで、これらの成分濃度は、インスリン:ELISA法(シバヤギ社製レビス(登録商標)インスリンキットイヌ用)、中性脂肪:グリセロール消去法(ニプロ社製エスパ・TG-FS試薬を用いて測定)、総ケトン体:酵素サイクリング法(和光純薬工業社製オートワコー総ケトン体試薬を用いて測定)により測定した。結果を図1〜3に示す。
【0046】
図1より、血中インスリン濃度は、通常大麦を用いた比較例1において食後に大きな上昇が観察された。β−グルカンリッチ大麦を配合した実施例1及び実施例2、並びにハイアミロースコーンを配合した比較例2においては、血中インスリン濃度の上昇が抑制された。
図2より、血中中性脂肪濃度は、β−グルカンリッチ大麦を配合した実施例1及び実施例2において上昇が抑制されることが観察された。
図3より、血中総ケトン体濃度は、β−グルカンリッチ大麦を配合した実施例1及び実施例2においては上昇が観察されなかったが、ハイアミロースコーンを配合した比較例2においては上昇が観察された。
【0047】
図1〜3から明らかなように、β−グルカン/デンプンの質量比を0.065以上として、アミロペクチン/デンプンの質量比を0.76以上に調整した本発明のペットフードは、インスリン分泌抑制効果に優れているだけでなく、中性脂肪を低下させ、ケトン体濃度を低下させる効果を有する。このことは、本発明ペットフードが、筋肉等においてクエン酸回路を充分に機能させ、脂質代謝を亢進させている結果と考えられる。
【0048】
試験例2
ビーグル犬8頭にヒルズ・コルゲート社製サイエンスダイエットアダルト小粒食を1日1回給餌した。それぞれの犬について体重変化が一定の範囲内(月あたり体重の2.5%以内)に収まるように給餌カロリーを調整した。調整したカロリーで4週間給餌した。その後、カロリーは変えずにフードを実施例2記載のフードに切り替えた。フード切り替え時点を0週とし、その4週間前、4週間後の体重を測定した。各個体の0週時の体重を1とし、体重の変化率を平均した。結果を図4に示す。
【0049】
試験例3
犬A(ヘットランドシープドッグ)及び犬B(トイプードル)各1頭に、6日連続で実施例2又は比較例2のペットフードを与え、後半3日間で糞便を回収し重量を測定した。1日あたりのペットフード給与量は犬Aで190g、犬Bで80gであった。その結果、犬A及び犬Bともに、本発明のペットフードを与えると糞便量が減少することがわかった(図5)。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】ペットフード給餌後の血中インスリン濃度を示す図である。
【図2】ペットフード給餌後の血中中性脂肪濃度の相対変化を示す図である。
【図3】ペットフード給餌後の血中総ケトン体濃度の相対変化を示す図である。
【図4】実施例2のペットフードを給餌した際の体重変化率を示す図である。
【図5】ペットフード給餌後の1日あたりの糞便量を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプンを10質量%以上含有するペットフードであって、
(A)β−グルカン/デンプンの質量比が0.065以上、且つ、
(B)アミロペクチン/デンプンの質量比が0.76以上
であるペットフード。
【請求項2】
β−グルカンを1.6質量%以上、かつアミロペクチンを19質量%以上含有する、請求項1記載のペットフード。
【請求項3】
β−グルカンが大麦、オーツ麦、ライ麦及び小麦からなる群より選択される1種以上を由来とする、請求項1又は2記載のペットフード。
【請求項4】
更に、油脂を含有し、全油脂中のジアシルグリセロール含有量が10質量%以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペットフード。
【請求項5】
更に、動物性又は植物性タンパク質を含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のペットフード。
【請求項6】
動物性タンパク質が、動物性肉類タンパク質である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のペットフード。
【請求項7】
犬用ペットフードである請求項1〜6のいずれか一項に記載のペットフード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−207366(P2009−207366A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50870(P2008−50870)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】