説明

ペット用電動ストレッチャー兼診察台

【課題】ペット台の高低差の設定を大きくすることができ、この高低差の間でのペット台の高さ位置の微調整が適確且つスムーズに行えるようにする。
【解決手段】ペット台1を可動台10上に折り畳み昇降機構20を介して架設する。この折り畳み昇降機構20は、パンタグラフ機構21とダンパ型伸縮機構31とを主要部材とし、パンタグラフ機構21は、略中央交叉部において回動自在に軸支した一対のX脚23、23を備え、両X脚の上端は、ペット台1側に回動自在に軸支し、両X脚の下端は、可動台10側に回動自在に軸支する。ダンパ型伸縮機構31は、ピストンロッド31bとシリンダ31aとから成り、且つ前記シリンダ31a側には、当該ピストンロッド31bを伸縮動作するモータM付きの電動アクチュエータ36を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物病院におけるペットの搬送台として使用され、さらに診察台や手術台等としても兼用され、ペット台の高さ位置を調整自在としたペット用電動ストレッチャー兼診察台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本出願人自身により先に出願されたペット用ストレッチャーなる技術がある。すなわち、このペット用ストレッチャーは、ペット台を可動台上に、パンタグラフ機構とダンパとを主要部材とした折り畳み昇降機構を介して架設し、ペット台には、側部に折り畳み昇降機構用の操作レバーが配設され、この操作レバーの手動操作により、ペット台の高さ位置を容易に、しかも安全に調整できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2003−205486
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来においては、操作レバーの手動操作により、ダンパを介して、ペット台の高さ位置を決めることから、当該ダンパによる位置調整範囲内での高さの微調整が非常に難しいものとなる。
【0005】
そこで、本発明は、叙上のような従来存した諸事情に鑑み案出されたもので、従来の折り畳み昇降機構では不可能であったペット台の高低差の設定が可能となり、且つ、できるだけ大きく設定することができ、しかも、この高低差の間でのペット台の高さ位置の微調整が適確且つスムーズに行えるようにしたペット用電動ストレッチャー兼診察台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にあっては、ペット台を可動台上に折り畳み昇降機構を介して架設したペット用電動ストレッチャー兼診察台であって、
前記可動台は、下面に移動用のキャスタが取り付けられており、
前記折り畳み昇降機構は、パンタグラフ機構とダンパ型伸縮機構とを主要部材としており、パンタグラフ機構は、略中央交叉部において回動自在に軸支される一対のX脚を備え、両X脚の上端は、ペット台側に回動自在に軸支され、両X脚の下端は、可動台側に回動自在に軸支され、
一方、ダンパ型伸縮機構は、パンタグラフ機構における一方のX脚に回動自在に軸支されたピストンロッドと、該ピストンロッドが挿入され、他方のX脚に配されたシリンダとを備え、
前記シリンダ側には、当該ピストンロッドを伸縮動作するモータ付きの電動アクチュエータを備えて成ることを特徴とする。
【0007】
ペット台は、その下面側に体重計センサを設け、上面所定部位に体重表示部を設けて成ることを特徴とする。
【0008】
ペダル踏圧操作用のフットスイッチ、あるいは操作ボタンのいずれかにより、電動アクチュエータのモータをON・OFF可能にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の折り畳み昇降機構では不可能であったペット台の高低差の設定が可能となり、且つ、できるだけ大きく設定することができ、しかも、この高低差の間でのペット台の高さ位置の微調整が適確且つスムーズに行える。
【0010】
すなわち、ペット台を可動台上に折り畳み昇降機構を介して架設したペット用電動ストレッチャー兼診察台であって、
前記可動台は、下面に移動用のキャスタが取り付けられており、
前記折り畳み昇降機構は、パンタグラフ機構とダンパ型伸縮機構とを主要部材としており、パンタグラフ機構は、略中央交叉部において回動自在に軸支される一対のX脚を備え、両X脚の上端は、ペット台側に回動自在に軸支され、両X脚の下端は、可動台側に回動自在に軸支され、
一方、ダンパ型伸縮機構は、パンタグラフ機構における一方のX脚に回動自在に軸支されたピストンロッドと、該ピストンロッドが挿入され、他方のX脚に配されたシリンダとを備え、
前記シリンダ側には、当該ピストンロッドを伸縮動作するモータ付きの電動アクチュエータを備えて成るので、
電動によりX脚の伸長または折り畳みが容易に行えることから、ペット台の高さ位置の微調整が適確且つスムーズに行える。しかも、電動アクチュエータの配備によって、従来の折り畳み昇降機構では不可能であったペット台の高低差の大きな設定が可能となり、且つその高低差の間のどの高さでも微調整が可能となる。
【0011】
ペット台は、その下面側に体重計センサを設け、上面所定部位に体重表示部を設けて成るので、体重表示部によってペットの体重値が即座に認識でき、ペットの診察がスムーズに行える。
【0012】
ペダル踏圧操作用のフットスイッチ、あるいは操作ボタンのいずれかにより、電動アクチュエータのモータをON・OFF可能にするので、フットスイッチの足踏み操作または操作ボタンの押圧操作によって、ペット台の高さ位置を容易に、しかも安全に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を実施するための一形態を示すペット用電動ストレッチャー兼診察台の伸長状態の平面図である。
【図2】同じくペット用電動ストレッチャー兼診察台の伸長状態の正面図である。
【図3】同じくペット用電動ストレッチャー兼診察台の伸長状態の側面図である。
【図4】同じくペット用電動ストレッチャー兼診察台の折り畳み状態の側面図である。
【図5】同じくペット用電動ストレッチャー兼診察台の折り畳み状態の正面図である。
【図6】同じく体重計センサと体重表示部の構成・動作を示すもので、(a)はブロック構成図、(b)は動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明に係るペット用電動ストレッチャー兼診察台の実施の一形態を詳細に説明する。
【0015】
本発明において、図において示される符号1は、可動台10上に折り畳み昇降機構20を介して架設したペット台である。
【0016】
図2乃至図5に示すように、可動台10は、ステンレス製の四角形のフレーム10aにて形成されると共に、その下面には、移動用のストッパ付きのキャスタ(キャスターアジャスタ)11が取り付けられ、ペットaの診察台または手術台として使用する場合に、このキャスタ11のストッパによってペット台が不用意に動かないようにしてある。
【0017】
ペット台1は、ステンレス製の四角形の平板部1aと、その四周下端に突設されたフレーム1bとより成る。そして、フレーム1bの後方側(図3の左側)内部には、一対のガイド部3、3が対向配置されている。このガイド部3は、一対のコ字状枠3a、3aにて形成され、開口部が互いに対向するようフレーム1bの内側にそれぞれ固定されている。
【0018】
可動台10のフレーム10aの後方側(図3の左側)には一対のガイド部12、12が対向配置されている。このガイド部12も、一対のコ字状枠12a、12aにて形成され、ペット台1のコ字状枠3a、3aと対応する直下に、開口部が互いに対向するようフレーム10aの内側にそれぞれ固定されている。
【0019】
折り畳み昇降機構20は、ステンレス製のパンタグラフ機構21と1個のダンパ型伸縮機構31とを主要部材として構成されている。
【0020】
パンタグラフ機構21は、略中央交叉部において軸22にて回動自在に軸支されている一対のX脚23、23を備えている。そして、両X脚23、23の上端の一方は、ペット台1のフレーム1b両側の一側近傍内面にピン24にてそれぞれ回動自在に軸支されている。
【0021】
両X脚23、23の上端の他方は、ガイドローラ25、25が回動自在に枢支されており、ペット台1のフレーム1b両側の他端側(後部側)内面に対向配置されたガイド部3、3として設けられたコ字状枠3a、3aにそれぞれ回転移動自在に係合されている。
【0022】
両X脚23、23の下端の一方は、可動台10の前記ペット台1における軸支部と対応する直下にピン26にてそれぞれ回動自在に軸支されている。そして、下端の他方にも、ガイドローラ25、25が回動自在に枢着されており、ペット台1のガイド部3、3と対応する直下のガイド部12、12として設けられたコ字状枠12a、12aにそれぞれ回転移動自在に係合されている。
【0023】
一方、ダンパ型伸縮機構31は、パンタグラフ機構21におけるX脚23、23下端の軸支側(図3の右側)に架け渡された連結角棒33の中央に一対の支持アーム32が設けられ、この一対の支持アーム32先端に、ピストンロッド31b下端が回動自在に軸支されている。
【0024】
反対側のX脚23、23の略中央側には、略逆L字型の支持板35が水平状態に架け渡されており、該支持板35の中央にシリンダ31a上端が固定されている。
【0025】
図1乃至図5に示すように、シリンダ31a側には、ピストンロッド31bを伸縮動作するためのモータM付きの電動アクチュエータ36を備えている。そして、可動台10の近傍には、ペダル踏圧操作用のフットスイッチ37が設置される。このフットスイッチ37は、X脚23、23を折り畳み方向へ作動させるためのスイッチ37aと、X脚23、23を伸長させるためのスイッチ37bとが左右に設けられている。
【0026】
このフットスイッチ37の足踏み操作により、電動アクチュエータ36のモータMが0N作動して、シリンダ31aに対してピストンロッド31bを支持アーム32先端で回転させつつ伸縮動作させ、これによってX脚23、23が伸長したり折り畳まれたりする。尚、フットスイッチ37の替わりに、ペット台1に備えた操作ボタン、有線あるいは無線方式の操作ボタン等(不図示)により、電動アクチュエータ36のモータMをON・OFF可能にしても良い。
【0027】
さらに、可動台10の上部等にバッテリー(不図示)を脱着自在に搭載できるようにしても良い。このバッテリーを電源とすることにより、コンセント等が無い所でもモータMを作動させることもできる。
尚、上記した電動アクチュエータ36の構成は、本発明を何等限定するものではなく、他の種々の電動アクチュエータ36の構成を採用しても良いことは勿論である。
【0028】
また、図1、図3、図4に示すように、ペット台1の下面側には、体重計センサ51が設けられ、さらに、ペット台1の上面所定部位には、例えば、液晶表示パネル等による体重表示部52を設けてある。この体重計センサ51はスイッチ53によってON・OFF作動させる。尚、ペットaをペット台1に載せるだけで、自動的にスイッチ53が入るようにすることもできる。
【0029】
具体的には、図6(a)に示すように、ペット台1は、体重計センサ51の電子式計量秤(ロードセル)54に支持されている。この電子式計量秤54は、ペットaを載せたペット台1全体を計量した後に、この計量値からペットa以外のペット台1等の重量を減算することによってペットaの重量を計測するようになっている。
【0030】
すなわち、電子式計量秤54は制御機構55を介して電動アクチュエータ36のモータMに接続されている。したがって、モータMは、電子式計量秤54からの信号を受けた制御機構55によって、この回転が制御される。制御機構55は計量コントローラ56およびモータMの回転スピードコントローラ57を備えている。
【0031】
図6(b)のフローチャートで示したように、ペット台1にペットaが載せられると同時に、計量コントローラ56は電子式計量秤54からの信号が入力され、そのコントロール信号を回転スピードコントローラ57に出力する。回転スピードコントローラ57はモータMに接続されており、計量コントローラ56からのコントロール信号に基づいてモータMの回転速度を制御する。これにより、ペット台1を昇降移動させる際には、ペット台1に載せられたペットaの体重に応じて電動アクチュエータ36のモータMの回転速度が制御される。
【0032】
すなわち、一定の動力Pを得る場合、モータトルクTと回転数n(回転速度・角速度)とは反比例する(T×n=定数×P)。これにより、所定の動力Pを得ている場合、回転数nを大きくすれば、モータトルクTが小さくて済む。したがって、負荷の軽減となる。一方、モータトルクTが一定の場合には、回転数nを大きくすることで大きな動力Pが得られる。この原理に従って、計量コントローラ56で、ペットaの重量が重いか軽いかの判断信号を、回転スピートコントローラ57に送り、この回転スピードコントローラ57でモータMの回転数nを制御するものとしている。
【0033】
これによって、体重の重い大きなペットaは安全性を考慮して低速でペット台1が上下動する一方で、体重の軽い小さなペットaは、比較的高速でペット台1が上下動するようになっている。
ちなみに、電動アクチュエータ36のモータMの回転制御を電子式計量秤(ロードセル)54とを切り離して所定の定速度にて行なえるようにすることも可能である。
【0034】
次に、以上のように構成されたペット用電動ストレッチャーの使用、動作の一例について説明する。
【0035】
先ず、診察あるいは手術を必要とするペットaをペット台1上面に載せ、所定の場所に搬送する。ペットaを診察または手術する際には、キャスタ11のストッパによってペット台1が不用意に動かないようにする。
【0036】
また、ペット台1下面に配した体重計センサ51により自動的にペットaの体重が計測され、体重表示部52に表示される。
【0037】
この体重計測においては、図6(b)のフローチャートで示したように、電子式計量秤54が、ペットaを載せたペット台1全体を計量した後に、この計量値からペットa以外のペット台1等の重量を減算する(ステップS1)。これによってペットaの重量が計測される。
【0038】
そして、計量コントローラ56は電子式計量秤54からの信号が入力される(ステップS2)。また、そのコントロール信号を回転スピードコントローラ57に出力する(ステップS3)。
【0039】
次いで、モータMに接続された回転スピードコントローラ57は、計量コントローラ56からのコントロール信号に基づいてモータMの回転速度を制御する(ステップS4)。
【0040】
これにより、ペット台1を昇降移動させる際には、ペット台1に載せられたペットaの体重に応じて電動アクチュエータ36のモータMの回転速度が制御されるのである。すなわち、体重の重い大きなペットaはモータMの回転速度を遅くしてペット台1の動作をゆっくりさせる一方、体重の軽い小さなペットaはモータMの回転速度を早くしてペット台1の動作を早くすることができる。
【0041】
次いで、フットスイッチ37における、X脚23、23を折り畳み方向へ作動させるためのスイッチ37aを足で踏むと、電動アクチュエータ36のモータMが正回転して、シリンダ31aに対してピストンロッド31bを収縮動作させ、これによってX脚23、23が折り畳まれ、ペット台1が押し下げられる(図4、図5参照)。このとき、足による踏圧を解除すれば、電動アクチュエータ36のモータMへの通電が遮断されて、ペット台1が所定の低さ位置で停止される。
【0042】
一方、フットスイッチ37における、X脚23、23を伸長方向へ作動させるためのスイッチ37bを足で踏むと、電動アクチュエータ36のモータMが逆回転して、シリンダ31aに対してピストンロッド31bを伸長動作させ、これによってX脚23、23が伸長され、ペット台1が押し上げられる(図2、図3参照)。このとき、足による踏圧を解除すれば、電動アクチュエータ36のモータMへの通電が遮断されて、ペット台1が所定の高さ位置で停止される。
【0043】
而して、従来の折り畳み昇降機構では不可能であったペット台の高低差の設定が可能となり、且つ、できるだけ大きく設定することができ、しかも、この高低差の間でのペット台の高さ位置の微調整が適確且つスムーズに行える。
【符号の説明】
【0044】
M モータ
a ペット
1 ペット台
1a 平板部
1b フレーム
3 ガイド部
3a コ字状枠
10 可動台
10a フレーム
11 キャスタ
12 ガイド部
12a コ字状枠
20 折り畳み昇降機構
21 パンタグラフ機構
22 軸
23 X脚
24 ピン
25 ガイドローラ
26 ピン
31 ダンパ型伸縮機構
31a シリンダ
31b ピストンロッド
32 支持アーム
33 連結角棒
35 支持板
36 電動アクチュエータ
37(37a、37b) フットスイッチ
51 体重計センサ
52 体重表示部
53 スイッチ
54 電子式計量秤(ロードセル)
55 制御機構
56 計量コントローラ
57 回転スピードコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペット台を可動台上に折り畳み昇降機構を介して架設したペット用電動ストレッチャー兼診察台であって、
前記可動台は、下面に移動用のキャスタが取り付けられており、
前記折り畳み昇降機構は、パンタグラフ機構とダンパ型伸縮機構とを主要部材としており、パンタグラフ機構は、略中央交叉部において回動自在に軸支される一対のX脚を備え、両X脚の上端は、ペット台側に回動自在に軸支され、両X脚の下端は、可動台側に回動自在に軸支され、
一方、ダンパ型伸縮機構は、パンタグラフ機構における一方のX脚に回動自在に軸支されたピストンロッドと、該ピストンロッドが挿入され、他方のX脚に配されたシリンダとを備え、
前記シリンダ側には、当該ピストンロッドを伸縮動作するモータ付きの電動アクチュエータを備えて成ることを特徴とするペット用電動ストレッチャー兼診察台。
【請求項2】
ペット台は、その下面側に体重計センサを設け、上面所定部位に体重表示部を設けて成ることを特徴とする請求項1記載のペット用電動ストレッチャー兼診察台。
【請求項3】
ペダル踏圧操作用のフットスイッチ、あるいは操作ボタンのいずれかにより、電動アクチュエータのモータをON・OFF可能にすることを特徴とする請求項1または2記載のペット用電動ストレッチャー兼診察台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−184003(P2010−184003A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29383(P2009−29383)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(591160707)株式会社東京メニックス (18)