説明

ペリオスチン測定の正確性の改善方法

【課題】試料に含まれるペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定における、測定の正確性の改善方法を提供する。
【解決手段】試料に含まれるペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定における、測定の正確性の改善方法として、抗ペリオスチンモノクローナル抗体を使用することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー疾患や他の疾患のマーカーとなりうるペリオスチン(骨芽細胞特異因子2又はOSF2とも呼ばれる)の抗原抗体反応を利用した測定の正確性(感度及び特異度)の改善方法に関するものである。
本発明は、臨床検査、臨床病理学、免疫学及び医学などの生命科学分野、並びに分析化学などの化学分野等において有用なものである。
【背景技術】
【0002】
ペリオスチン(骨芽細胞特異因子2又はOSF2)は、細胞外マトリックスタンパク質であるが、本発明者の一人である出原は、このペリオスチン遺伝子の発現レベルの測定がアレルギー性疾患の検査方法として有用であることを見出して、アレルギー疾患の検査方法の発明を完成させた(特許文献1及び非特許文献1参照。)。
また、出原は、このペリオスチン遺伝子の発現レベルの測定が特発性間質性肺炎の検査方法としても有用であることを見出した(特許文献2参照。)。
【0003】
なお、他に、OSF2(ペリオスチン)に対するポリクローナル抗体、モノクローナル抗体及びこれらの抗体を用いる診断方法等が開示され(特許文献3参照。)、Osf2/Cbfa1と命名される新規造骨細胞特異的転写因子を測定するのに抗OSF2(ペリオスチン)抗体を用いた免疫測定法が開示され(特許文献4参照。)、ヒトペリオスチンに対して特異的に結合する精製抗体及びこの抗体を用いる乳癌の骨への転移等を調べる診断アッセイ法等が開示され(特許文献5参照。)、そして、抗細胞接着活性を有するペリオスチンに対する抗体及びこの抗体を用いるペリオスチンの定量方法等が開示されている(特許文献6参照。)。
【0004】
しかしながら、このように種々の疾患の検査に有用なペリオスチンの測定においては、健常者や他の疾患の罹患者との鑑別のため、感度及び特異度等の正確性の改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第02/052006号
【特許文献2】国際公開第09/148184号
【特許文献3】特開平5−268982号公報
【特許文献4】特表2002−502250号公報
【特許文献5】特表2005−500059号公報
【特許文献6】国際公開07/077934号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】G.Takayama et.al.,J Allergy Clin Immunol,vol.118,98〜104,2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した、試料に含まれるペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定においては、その感度及び特異度等の正確性は十分なものではなかった。
このため、試料に含まれるペリオスチンの測定値を疾患の検査に利用しようとする場合、この疾患の診断を誤らせる可能性があった。
従って、試料に含まれるペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定においては、健常者や他の疾患の罹患者との鑑別のため、更なる感度及び特異度等の正確性の改善が望まれていた。
これに対して、本発明の課題は、試料に含まれるペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定における、測定の正確性の改善方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、試料に含まれるペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定において、抗ペリオスチンモノクローナル抗体を使用することを特徴とする、測定の正確性の改善方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の測定の正確性の改善方法は、試料に含まれるペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定において、抗ペリオスチンモノクローナル抗体を使用することにより、その測定の感度〔その測定における罹患者群での陽性率(真の陽性率)〕及び特異度〔その測定における非罹患者群での陰性率(真の陰性率;すなわち、1−偽陽性率)〕を向上させ、測定の正確性を改善することができるものである。
これにより、ペリオスチン以外の物質を測り込んでしまうことを防ぐことができ、かつ、ペリオスチンだけを正確に測定することが可能となったものである。
すなわち、本発明の測定の正確性の改善方法は、正確なペリオスチンの測定値を得ることができ、健常者や他の疾患の罹患者との鑑別を向上させ、診断を誤らせることを防ぐことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】抗ペリオスチン抗体としてポリクローナル抗体を使用した場合、及びモノクローナル抗体を使用した場合のそれぞれにおける、胆管細胞癌の罹患者及び対照者の各試料中のペリオスチン濃度の測定結果を示した図である。
【図2】抗ペリオスチン抗体としてポリクローナル抗体を使用した場合、及びモノクローナル抗体を使用した場合のそれぞれにおける、胆管細胞癌の罹患者及び対照者の各試料中のペリオスチン濃度の測定結果を基に作成したROC曲線を示した図である。
【図3】抗ペリオスチン抗体としてポリクローナル抗体を使用した場合、及びモノクローナル抗体を使用した場合のそれぞれにおける、肺線維症の罹患者及び健常人の各試料中のペリオスチン濃度の測定結果を示した図である。
【図4】抗ペリオスチン抗体としてポリクローナル抗体を使用した場合、及びモノクローナル抗体を使用した場合のそれぞれにおける、肺線維症の罹患者及び健常人の各試料中のペリオスチン濃度の測定結果を基に作成したROC曲線を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.抗ペリオスチンモノクローナル抗体
(1)抗体
本発明における抗ペリオスチンモノクローナル抗体は、ペリオスチンに結合することができるモノクローナル抗体であれば、いかなるものでもよい。
【0012】
本発明における抗ペリオスチンモノクローナル抗体は、ペリオスチンに結合することができるモノクローナル抗体のフラグメント(Fab、F(ab’)2又はFab’等)をも含むものである。
【0013】
本発明における抗ペリオスチンモノクローナル抗体を取得する方法は、特に限定されないものの、下記の方法等が挙げられる。
【0014】
例えば、ペリオスチンのアミノ酸配列の全部又は一部を含むペプチド又はタンパク質を調製し、取得し、これを免疫原として動物に免疫する等して、又は、ペリオスチンタンパク質の全部又は一部をコードする配列を含有するDNA又はRNAを直接動物に注入するか、同配列を含有するウイルスベクターを動物に感染させることにより、動物体内で発現させたペリオスチンタンパク質を免疫原として、モノクローナル抗体を産生する抗体産生細胞等を取得する。
そして、モノクローナル抗体がペリオスチンに(特異的に)結合するモノクローナル抗体であることを確認するか、又はそのようなモノクローナル抗体を産生する抗体産生細胞等を選択して、本発明における抗ペリオスチンモノクローナル抗体を取得する。
【0015】
(2)免疫原
本発明における抗ペリオスチンモノクローナル抗体を産生させるための免疫原について、以下説明を行う。
前記した通り、本発明における抗ペリオスチンモノクローナル抗体を産生させるための免疫原として、ペリオスチンのアミノ酸配列の全部又は一部を含むペプチド又はタンパク質等を用いることができる。
【0016】
このペリオスチンのアミノ酸配列の全部又は一部を含むペプチド又はタンパク質等を免疫原とすることにより、本発明における抗ペリオスチンモノクローナル抗体を取得することができる。
なお、この抗ペリオスチンモノクローナル抗体を産生させるための免疫原は、ペリオスチンのアミノ酸配列の全部又は一部のアミノ酸配列に1ないし数個(通常1〜8個、好ましくは1〜6個)のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、付加、又は修飾を施すことにより得られるアミノ酸配列を含むペプチド又はタンパク質等であってもよい。
【0017】
また、抗体は、3個のアミノ酸からなるアミノ酸配列を認識できるとの報告(F.Hudeczら,J.Immunol.Methods,147巻,201〜210頁,1992年発行)がある。
よって、本発明における抗ペリオスチンモノクローナル抗体の免疫原のアミノ酸配列の最小単位としては、ペリオスチンのアミノ酸配列の全部若しくは一部のアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列の全部若しくは一部のアミノ酸配列に1ないし数個(通常1〜8個、好ましくは1〜6個)のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、付加若しくは修飾を施すことにより得られるアミノ酸配列の内、連続する3つのアミノ酸残基よりなるアミノ酸配列を考えることができるので、これらの連続する3つのアミノ酸残基よりなるアミノ酸配列からなるトリペプチド、又はこれに他のアミノ酸若しくはペプチドが付加したもの等を、本発明における抗ペリオスチンモノクローナル抗体の免疫原の最小単位として考えることができる。
【0018】
なお、この抗ペリオスチンモノクローナル抗体を産生させるための免疫原としての、ペリオスチンのアミノ酸配列の全部又は一部のアミノ酸配列に1ないし数個(通常1〜8個、好ましくは1〜6個)のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、付加、又は修飾を施すことにより得られるアミノ酸配列を含むペプチド又はタンパク質等は、このペプチド又はタンパク質等を免疫原としてモノクローナル抗体を調製したときに、ペリオスチンに結合するモノクローナル抗体を得ることができるものでなければならない。
【0019】
前記の免疫原としての、ペリオスチンのアミノ酸配列の全部若しくは一部のアミノ酸配列を含むペプチド又はタンパク質等、又はペリオスチンのアミノ酸配列の全部若しくは一部のアミノ酸配列に1ないし数個(通常1〜8個、好ましくは1〜6個)のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、付加若しくは修飾を施すことにより得られるアミノ酸配列を含むペプチド又はタンパク質等は、ヒト又は他の動物の体液、細胞、組織もしくは臓器等より、公知の方法等により抽出、精製等して、取得することができる。
【0020】
なお、本発明において、ペリオスチンのアミノ酸配列の全部若しくは一部のアミノ酸配列を含むペプチド又はタンパク質を取得する方法としては特に限定はなく、如何なる方法によるものでもよく、例えば、公知の方法により取得することができる。
【0021】
例えば、ペリオスチンを取得する方法として、次の方法等を挙げることができる。
(a) まず、ペリオスチン(ヌクレオチド配列:核酸データベースGenBankのAccession Number.D13666のヌクレオチド配列;アミノ酸配列:核酸データベースGenBankのAccession Number.BAA02837のアミノ酸配列)にV5エピトープ/Hisタグを付加させたリコンビナントペリオスチンタンパク質を昆虫細胞であるS2細胞において発現させた上で精製する。
【0022】
(b) すなわち、具体的には、S2細胞の形質転換体は次のように調製する。
pMT/Bip/V5−HisAプラスミド(Invitrogen社、米国カリフォルニア州Carlsbad)にペリオスチンの上記部分をコードするcDNAを挿入して、これをpMT/Bip/V5−HisA−periostinとする。
S2細胞にpMT/Bip/V5−HisA−periostin及びハイグロマイシン耐性遺伝子を発現するプラスミドであるpCoHygro(Invitrogen社、米国カリフォルニア州Carlsbad)を公知の方法で共導入し、形質転換させる。
ハイグロマイシンにより形質転換体を選択し、安定形質転換体を得る。
そして、S2細胞の形質転換体では、V5エピトープ/Hisタグの結合したペリオスチンを発現させる。
【0023】
(c) S2リコンビナントペリオスチンタンパク質の精製は次のように行う。
ペリオスチン遺伝子安定形質転換体S2細胞の培地に硫酸銅を加えることにより、S2リコンビナントペリオスチンタンパク質の発現を誘導する。
これにより、S2リコンビナントペリオスチンタンパク質は培養上清中に発現分泌される。
この培養上清をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に透析した後、ニッケルレジン(Ni−NTA Agarose、Qiagen社、ドイツ国Hilden)と混合して、S2リコンビナントペリオスチンタンパク質をレジンに結合させる。
レジンを洗浄して夾雑物を取り除き、イミダゾール含有緩衝液にてS2リコンビナントペリオスチンタンパク質を溶出させる。
溶出されたS2リコンビナントペリオスチンタンパク質をPBS等に透析し、精製されたペリオスチンタンパク質を取得する。
【0024】
また、ペリオスチンは、例えば、以下の文献等に記載の方法等によっても取得することができる(I.Takayamaら,J.Biochem.,146巻,5号,713〜723頁,2009年発行)。
【0025】
なお、前記の免疫原は、液相法及び固相法等のペプチド合成の方法により合成することができ、更にペプチド自動合成装置を用いてもよく、日本生化学会編「生化学実験講座1 タンパク質の化学IV」,東京化学同人,1975年、泉屋ら「ペプチド合成の基礎と実験」,丸善,1985年、日本生化学会編「続生化学実験講座2 タンパク質の化学 下」,東京化学同人,1987年等に記載された方法に従い合成することができ、前記のアミノ酸配列に、欠失、置換、挿入又は付加を施した変異体を作製することも容易である。
また、非天然型アミノ酸の導入、各アミノ酸残基の化学修飾やシステイン残基を導入することにより分子内を環化させて構造を安定化させる等の修飾を施してもよい。
【0026】
更に、前記の免疫原は、対応する核酸塩基配列を持つDNA又はRNAより遺伝子工学技術を用いて調製してもよく、日本生化学会編「続生化学実験講座1
遺伝子研究法I」,東京化学同人,1986年、日本生化学会編「続生化学実験講座1
遺伝子研究法II」,東京化学同人,1986年、日本生化学会編「続生化学実験講座1
遺伝子研究法III」,東京化学同人,1987年等を参照して調製すればよい。
【0027】
ところで、免疫原が低分子物質の場合には、免疫原に担体(キャリア)を結合させたものを動物等に免疫するのが一般的ではあるが、アミノ酸数5のペプチドを免疫原としてこれに対する特異抗体を産生させたとの報告(木山ら,「日本薬学会第112回年会講演要旨集3」,122頁,1992年発行)もあるので、担体を使用することは必須ではない。
【0028】
なお、抗体を産生させる際に担体を使用する場合の担体としては、スカシガイのヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、ニワトリ血清アルブミン、ポリ−L−リシン、ポリアラニルリシン、ジパルミチルリシン、破傷風トキソイド又は多糖類等の担体として公知なものを用いることができる。
【0029】
免疫原と担体の結合法は、グルタルアルデヒド法、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド法、マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシサクシニミドエステル法、ビスジアゾ化ベンジジン法又はN−サクシミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸法等の公知の結合法を用いることができる。
また、ニトロセルロース粒子、ポリビニルピロリドン又はリポソーム等の担体に免疫原を吸着させたものを免疫原とすることもできる。
【0030】
(3)モノクローナル抗体の取得方法
本発明における抗ペリオスチンモノクローナル抗体は、以下の操作により取得することができる。
モノクローナル抗体は、ケラーらの細胞融合法(G.Koehlerら,Nature,256巻,495〜497頁,1975年発行)によるハイブリドーマ、又はエプスタン−バーウイルス等のウイルスによる腫瘍化細胞等の抗体産生細胞により得ることができる。
細胞融合法によるモノクローナル抗体の調製は、以下の操作により行うことができる。
【0031】
まず、前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物を、哺乳動物(マウス、ヌードマウス、ラット、又はラビットなど、例えば近交系マウスのBALB/c)又は鳥類(ニワトリなど)等に免疫する。
【0032】
この前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物の免疫量は、免疫動物の種類、免疫注射部位等により適宜決められるものであるが、例えば、マウスの場合には一匹当り一回につき0.1μg〜5mgの前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物を免疫注射するのが好ましい。
【0033】
なお、前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物は、アジュバントを添加混合して免疫注射することが好ましい。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、水酸化アルミニウムアジュバント又は百日咳菌アジュバント等の公知なものを用いることができる。
免疫注射は、皮下、静脈内、腹腔内又は背部等の部位に行えばよい。
【0034】
初回免疫後、1〜2週間間隔で皮下、静脈内、腹腔内又は背部等の部位に、前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物を追加免疫注射する。この追加免疫注射の回数としては2〜6回が一般的である。この場合も前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物は、アジュバントを添加混合して追加免疫注射することが好ましい。
【0035】
初回免疫の後、免疫動物の血清中の抗体価の測定をELISA法等により繰り返し行い、抗体価がプラトーに達したら、前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物を生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム水溶液)に溶解したものを静脈内又は腹腔内に注射し、最終免疫とする。この最終免疫の3〜5日後に、免疫動物の脾細胞、リンパ節細胞又は末梢リンパ球等の抗体産生能を有する細胞を取得する。
【0036】
この免疫動物より得られた抗体産生能を有する細胞と哺乳動物等(マウス、ヌードマウス、ラットなど)の骨髄腫細胞(ミエローマ細胞)とを細胞融合させるのであるが、ミエローマ細胞としてはヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシル・トランスフェラーゼ(HGPRT)又はチミジンキナーゼ(TK)等の酵素を欠損した細胞株のものが好ましく、例えば、BALB/cマウス由来のHGPRT欠損細胞株である、P3−X63−Ag8株(ATCC TIB9)、P3−X63−Ag8−U1株(癌研究リサーチソースバンク(JCRB)9085)、P3−NS1−1−Ag4−1株(JCRB 0009)、P3−X63−Ag8・653株(JCRB 0028)又はSP2/O−Ag−14株(JCRB 0029)等を用いることができる。
【0037】
細胞融合は、各種分子量のポリエチレングリコール(PEG)、リポソームもしくはセンダイウイルス(HVJ)等の融合促進剤を用いて行うか、又は電気融合法により行うことができる。
ミエローマ細胞がHGPRT欠損株又はTK欠損株のものである場合には、ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジンを含む選別用培地(HAT培地)を用いることにより、抗体産生能を有する細胞とミエローマ細胞の融合細胞(ハイブリドーマ)のみを選択的に培養し、増殖させることができる。
【0038】
このようにして得られたハイブリドーマの培養上清を、前記の免疫原、前記の免疫原と担体の結合物、又はヒト若しくは他の動物(ヒトのペリオスチンを測定する場合にはヒト由来のものが好ましい)のペリオスチン等を用いてELISA法やウエスタンブロット法等の免疫学的測定法により測定することにより、ペリオスチンに(特異的に)結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択することができる。
【0039】
このハイブリドーマ選択方法と限界希釈法等の公知のクローニングの方法を組み合わせて行うことにより、本発明における抗ペリオスチンモノクローナル抗体の産生細胞株を単離して得ることができる。
【0040】
このモノクローナル抗体産生細胞株を適当な培地で培養して、その培養上清から本発明における抗ペリオスチンモノクローナル抗体を得ることができるが、培地としては無血清培地又は低濃度血清培地等を用いてもよく、この場合は抗体の精製が容易となる点で好ましく、DMEM培地、RPMI1640培地又はASF培地103等の培地を用いることができる。
また、このモノクローナル抗体産生細胞株を、これに適合性がありプリスタン等であらかじめ刺激した哺乳動物の腹腔内に注入し、一定期間の後、腹腔にたまった腹水より本発明における抗ペリオスチンモノクローナル抗体を得ることもできる。
【0041】
このようにして得られた抗ペリオスチンモノクローナル抗体は、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどによる塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過法又はアフィニティークロマトグラフィーなどの方法、あるいはこれらの方法を組み合わせること等により、精製された抗ペリオスチンモノクローナル抗体を得ることができる。
【0042】
2.ペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定
(1)総論
本発明は、試料に含まれるペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定において、抗ペリオスチンモノクローナル抗体を使用することを特徴とする、測定の正確性の改善方法である。
【0043】
即ち、試料に含まれるペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定において、抗ペリオスチンモノクローナル抗体を使用することにより、測定の正確性を改善することができるものである。
【0044】
なお、試料に含まれるペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定において、ペリオスチンに結合する抗体として2つ以上の抗体を使用する場合、これらの測定において試料に含まれていたペリオスチンに結合させる抗体のいずれもが、抗ペリオスチンモノクローナル抗体である必要がある。
【0045】
例えば、酵素標識抗体と固相化抗体を用いるELISA法のサンドイッチ法においては、試料に含まれていたペリオスチンに結合させる酵素標識抗体及び固相化抗体のいずれもが、この抗ペリオスチンモノクローナル抗体である必要がある。
この抗ペリオスチンモノクローナル抗体は、1種類のものだけではなく、複数種類のものを同時に使用してもよい。
なお、この抗ペリオスチンモノクローナル抗体の詳細については、前記の「1.抗ペリオスチンモノクローナル抗体」の項に記載した通りである。
【0046】
なお、本発明の、試料に含まれるペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定における、測定の正確性の改善方法は、疾患の罹患の有無又はその程度(病状等)の検査のための測定において好適である。
【0047】
そして、本発明の、試料に含まれるペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定における、測定の正確性の改善方法は、癌又は肺疾患の罹患の有無又はその程度(病状等)の検査のための測定において、より好適である。
【0048】
更に、本発明の、試料に含まれるペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定における、測定の正確性の改善方法は、胆管細胞癌又は肺繊維症の罹患の有無又はその程度(病状等)の検査のための測定において、特に好適である。
【0049】
なお、ペリオスチンは、胆管細胞癌の罹患者においては高値となるものの、他の疾患、例えば、肝細胞癌、肝硬変、硬化型肝細胞癌、肉腫様肝細胞癌、血管筋脂肪腫、若しくは血管肉腫の罹患者、又は健常人においては、低値である。
このことは、本発明者らによる特許出願(特願2009−274873)の明細書等に本発明者らが記載し、また、Utispanらの文献〔Molecular Cancer,Vol.9,No.13,page1〜20,2010年〕に記載されている。
【0050】
(2)抗原抗体反応を利用した測定方法
本発明の測定の正確性の改善方法は、試料に含まれるペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定において、抗ペリオスチンモノクローナル抗体を使用するものであれば、特にその測定原理に限定されるものではなく、所期の効果を奏するものである。
【0051】
この試料に含まれるペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定としては、例えば、酵素免疫測定法(ELISA、EIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、放射免疫測定法(RIA)、発光免疫測定法(LIA)、酵素抗体法、蛍光抗体法、イムノクロマトグラフィー法、免疫比濁法、ラテックス比濁法、ラテックス凝集反応測定法、赤血球凝集反応法、粒子凝集反応法、特開平9−229936号公報及び特開平10−132819号公報などに記載された測定対象物質(被検物質)に対する特異的結合物質が固定され、これで被覆された面を有する担体、及び測定対象物質(被検物質)に対する特異的結合物質が固定された粒子を用いる測定法、又はDahlbeackらが示したELSA法(Enzyme−linked Ligandsorbent Assay)(Thromb.Haemost.,79巻,767〜772頁,1998年発行;WO98/23963)等を挙げることができる。
【0052】
そして、前記の抗原抗体反応を利用した測定においては、サンドイッチ法、競合法又は均一系法(ホモジニアス系法)等のいずれの手法においても、本発明の測定の正確性の改善方法を適用することができる。
また、本発明における抗原抗体反応を利用した測定は、用手法により行ってもよいし、又は分析装置等の装置を用いて行ってもよい。
【0053】
(3)試料
本発明における試料としては、血液、血清、血漿、尿、精液、髄液、唾液、腹水若しくは羊水などの体液;あるいは血管若しくは肝臓などの臓器、組織又は細胞などの抽出液等、ペリオスチンが含まれる可能性のある生体試料であれば対象となる。
【0054】
(4)標識抗体を用いた免疫学的測定方法
本発明における測定を、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、放射免疫測定法又は発光免疫測定法等の標識抗体を用いた免疫学的測定方法、すなわち標識抗体を用いる抗原抗体反応を利用した測定方法により実施する場合には、サンドイッチ法又は競合法等により行うことができるが、サンドイッチ法により実施する時には、試料に含まれていたペリオスチンに結合させる固相化抗体及び標識抗体のいずれの抗体もが抗ペリオスチンモノクローナル抗体である必要がある。
【0055】
この標識抗体を用いた免疫学的測定方法において用いる固相担体としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルトルエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ラテックス、リポソーム、ゼラチン、アガロース、セルロース、セファロース、ガラス、金属、セラミックス又は磁性体等の材質よりなるマイクロカプセル、ビーズ、マイクロプレート(マイクロタイタープレート)、試験管、スティック又は試験片等の形状の固相担体を用いることができる。
固相化抗体は、前記の抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体と固相担体とを物理的吸着法、化学的結合法又はこれらの併用等の公知の方法により吸着、結合させて調製することができる。
【0056】
物理的吸着法による場合は、公知の方法に従い、抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体と固相担体を緩衝液などの溶液中で混合し接触させたり、又は緩衝液などに溶解した抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体と固相担体を接触させること等により行うことができる。
また、化学的結合法により行う場合は、日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号 臨床検査のためのイムノアッセイ−技術と応用−」,臨床病理刊行会,1983年発行;日本生化学会編「新生化学実験講座1 タンパク質IV」,東京化学同人,1991年発行等に記載の公知の方法に従い、抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体と固相担体をグルタルアルデヒド、カルボジイミド、イミドエステル又はマレイミド等の二価性の架橋試薬と混合、接触させ、抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体と固相担体のそれぞれのアミノ基、カルボキシル基、チオール基、アルデヒド基又は水酸基等と反応させること等により行うことができる。
【0057】
また、更に非特異的反応や固相担体の自然凝集等を抑制するために処理を行う必要があれば、抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体を固相化させた固相担体の表面又は内壁面に、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、カゼイン、ゼラチン、卵白アルブミンもしくはその塩などのタンパク質、界面活性剤又は脱脂粉乳等を接触させ被覆させること等の公知の方法により処理して、固相担体のブロッキング処理(マスキング処理)を行ってもよい。
【0058】
標識物質としては、酵素免疫測定法の場合には、パーオキシダーゼ(POD)、アルカリホスファターゼ(ALP)、β−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸脱水素酵素又はアミラーゼ等を用いることができる。
また、蛍光免疫測定法の場合には、フルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、置換ローダミンイソチオシアネート又はジクロロトリアジンイソチオシアネート等を用いることができる。
そして、放射免疫測定法の場合には、トリチウム、ヨウ素125又はヨウ素131等を用いることができる。
また、発光免疫測定法においては、NADH−FMNH−ルシフェラーゼ系、ルミノール−過酸化水素−POD系、アクリジニウムエステル系又はジオキセタン化合物系等を用いることができる。
【0059】
抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体と酵素等の標識物質との結合法は、日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号 臨床検査のためのイムノアッセイ−技術と応用−」,臨床病理刊行会,1983年発行;日本生化学会編「新生化学実験講座1 タンパク質IV」,東京化学同人,1991年発行等に記載の公知の方法に従い、抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体と標識物質をグルタルアルデヒド、カルボジイミド、イミドエステル又はマレイミド等の二価性の架橋試薬と混合、接触させ、抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体と標識物質のそれぞれのアミノ基、カルボキシル基、チオール基、アルデヒド基又は水酸基等と反応させることにより結合を行うことができる。
【0060】
測定の操作法は公知の方法等(日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号 臨床検査のためのイムノアッセイ−技術と応用−」,臨床病理刊行会,1983年発行;石川榮治ら編「酵素免疫測定法」,第3版,医学書院,1987年発行;北川常廣ら編「蛋白質核酸酵素別冊No.31 酵素免疫測定法」,共立出版,1987年発行)により行うことができる。
【0061】
例えば、固相化抗体と試料を反応させ、同時に標識抗体を反応させるか、又は洗浄の後に標識抗体を反応させることにより、「固相担体=固相化抗体=ペリオスチン=標識抗体」の複合体を形成させる。
そして、未結合の標識抗体を洗浄分離して、「固相化抗体=ペリオスチン」を介して固相担体に結合した標識抗体の量又は未結合の標識抗体の量より試料中に含まれていたペリオスチンの量(濃度)のみを測定することができる。
【0062】
具体的には、酵素免疫測定法の場合は、抗体に標識した酵素に、その至適条件下で基質を反応させ、その酵素反応生成物の量を光学的方法等により測定する。
また、蛍光免疫測定法の場合には蛍光物質標識による蛍光強度を、放射免疫測定法の場合には放射性物質標識による放射線量を測定する。
そして、発光免疫測定法の場合は発光反応系による発光量を測定する。
【0063】
(5)凝集反応法による免疫学的測定方法
本発明における測定を、免疫比濁法、ラテックス比濁法、ラテックス凝集反応法、赤血球凝集反応法又は粒子凝集反応法等の免疫複合体凝集物の生成を、その透過光や散乱光を光学的方法により測るか、又は目視的に測る測定法により実施する場合には、すなわち、抗原抗体反応による複合体の凝集物の生成を測る測定法により実施する場合には、溶媒としてリン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリス緩衝液又はグッド緩衝液等を用いることができ、更にポリエチレングリコール等の反応促進剤や非特異的反応抑制剤を含ませてもよい。
【0064】
抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体を固相担体に感作させて用いる場合には、固相担体としては、ポリスチレン、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、ポリアクロレイン、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−グリシジル(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、ラテックス、ゼラチン、リポソーム、マイクロカプセル、赤血球、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、金属化合物、金属、セラミックス又は磁性体等の材質よりなる粒子を使用することができる。
抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体を固相担体に感作させる方法としては、物理的吸着法、化学的結合法又はこれらの併用等の公知の方法により行うことができる。
【0065】
物理的吸着法による場合は、公知の方法に従い、抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体と固相担体を緩衝液等の溶液中で混合し接触させたり、又は緩衝液等に溶解した抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体と固相担体を接触させること等により行うことができる。
また、化学的結合法により行う場合は、日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号 臨床検査のためのイムノアッセイ−技術と応用−」,臨床病理刊行会,1983年発行;日本生化学会編「新生化学実験講座1 タンパク質IV」,東京化学同人,1991年発行等に記載の公知の方法に従い、抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体と固相担体をグルタルアルデヒド、カルボジイミド、イミドエステル又はマレイミド等の二価性の架橋試薬と混合、接触させ、抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体と固相担体のそれぞれのアミノ基、カルボキシル基、チオール基、アルデヒド基又は水酸基等と反応させること等により行うことができる。
【0066】
また、更に非特異的反応や固相担体の自然凝集等を抑制するために処理を行う必要があれば、抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体を固相化させた固相担体の表面又は内壁面に、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、カゼイン、ゼラチン、卵白アルブミン若しくはその塩などのタンパク質、界面活性剤又は脱脂粉乳等を接触させ被覆させること等の公知の方法により処理して、固相担体のブロッキング処理(マスキング処理)を行ってもよい。
【0067】
なお、ラテックス比濁法を測定原理とする場合、固相担体として用いるラテックス粒子の粒径については、特に制限はないものの、ラテックス粒子が測定対象物質(ペリオスチン)を介して結合し、凝集塊を生成する程度、及びこの生成した凝集塊の測定の容易さ等の理由より、ラテックス粒子の粒径は、その平均粒径が、0.04〜1μmであることが好ましい。
【0068】
また、ラテックス比濁法を測定原理とする場合、抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体を固相化させたラテックス粒子を含ませる濃度については、試料中のペリオスチンの濃度、抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体のラテックス粒子表面上での分布密度、ラテックス粒子の粒径、試料と測定試薬の混合比率等の各種条件により最適な濃度は異なるので一概にいうことはできない。
【0069】
しかし、通常は、試料と測定試薬が混合され、ラテックス粒子に固相化された「抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体」と試料中に含まれていた「ペリオスチン」との抗原抗体反応が行われる測定反応時に、「抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体」を固相化させたラテックス粒子の濃度が、反応混合液中において0.005〜1%(w/v)となるようにするのが一般的であり、この場合、反応混合液中においてこのような濃度になるような濃度の「抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体を固相化させたラテックス粒子」を測定試薬に含ませる。
【0070】
また、ラテックス凝集反応法、赤血球凝集反応法又は粒子凝集反応法等の間接凝集反応法を測定原理とする場合、固相担体として用いる粒子の粒径については、特に制限はないものの、その平均粒子径が0.01〜100μmの範囲内にあることが好ましく、0.5〜10μmの範囲内にあることがより好ましい。そして、これらの粒子の比重は、1〜10の範囲内にあることが好ましく、1〜2の範囲内にあることがより好ましい。
【0071】
なお、ラテックス凝集反応法、赤血球凝集反応法又は粒子凝集反応法等の間接凝集反応法を測定原理とする場合の測定に使用する容器としては、例えば、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリメタクリレートなどからなる、試験管、マイクロプレート(マイクロタイタープレート)又はトレイ等を挙げることができる。これらの容器の溶液収容部分(マイクロプレートのウェル等)の底面は、U型、V型又はUV型等の底面中央から周辺にかけて傾斜を持つ形状であることが好ましい。
【0072】
測定の操作法は公知の方法等により行うことができるが、例えば、光学的方法により測定する場合には、試料と抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体、又は試料と「固相担体に感作させた抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体」を反応させ、エンドポイント法又はレート法により、透過光や散乱光を測定する。
また、目視的に測定する場合には、プレートやマイクロプレート等の前記容器中で、試料と「固相担体に感作させた抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体」を反応させ、凝集の状態を目視的に判定する。
なお、この目視的に測定する代わりにマイクロプレートリーダー等の機器を用いて測定を行ってもよい。
【0073】
(6)測定時の他の成分
本発明の測定の正確性の改善方法における、試料に含まれるペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定においては、溶媒として、各種の水系溶媒を用いることができる。
この水系溶媒としては、例えば、精製水、生理食塩水、又は、トリス緩衝液、リン酸緩衝液若しくはリン酸緩衝生理食塩水などの各種緩衝液等を挙げることができる。
この緩衝液のpHについては、適宜適当なpHを選択して用いればよく、特に制限はないものの、通常は、pH3〜12の範囲内のpHを選択して用いることが一般的である。
【0074】
また、本発明における測定においては、前記の抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体、前記の抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体を固相化した固相担体、前記の抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体を感作した固相担体、及び/又は前記の抗ペリオスチンモノクローナル抗体等の抗体と酵素などの標識物質を結合させた標識抗体等の試薬成分の他に、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、カゼイン若しくはその塩などのタンパク質;各種塩類;各種糖類;脱脂粉乳;正常ウサギ血清などの各種動物血清;アジ化ナトリウムもしくは抗生物質などの各種防腐剤;活性化物質;反応促進物質;ポリエチレングリコールなどの感度増加物質;非特異的反応抑制物質;又は、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤若しくは陰イオン性界面活性剤などの各種界面活性剤等の1種又は2種以上を適宜用いてもよい。
そして、これらを測定に用いる際の濃度は特に限定されるものではないが、0.001〜10%(W/V)が好ましく、特に0.01〜5%(W/V)が好ましい。
【0075】
なお、前記の界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、フィトスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油若しくはポリオキシエチレンラノリンなどの非イオン性界面活性剤;酢酸ベタインなどの両性界面活性剤;又は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩若しくはポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩などの陰イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例により本発明をより具体的に詳述するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0077】
〔実施例1〕(ラビット抗ペリオスチンポリクローナル抗体の調製)
以下の手順により、ラビット抗ペリオスチンポリクローナル抗体の調製を行った。
【0078】
ペリオスチン(ヌクレオチド配列:核酸データベースGenBankのAccession Number.D13666のヌクレオチド配列;アミノ酸配列:核酸データベースGenBankのAccession Number.BAA02837のアミノ酸配列)にV5エピトープ/Hisタグを付加させたリコンビナントペリオスチンタンパク質を昆虫細胞であるS2細胞において発現させた上で精製した。
【0079】
具体的には、S2細胞の形質転換体は次のように調製した。
pMT/Bip/V5−HisAプラスミド(Invitrogen社、米国カリフォルニア州Carlsbad)にペリオスチンの上記部分をコードするcDNAを挿入して、これをpMT/Bip/V5−HisA−periostinとした。
S2細胞にpMT/Bip/V5−HisA−periostin及びハイグロマイシン耐性遺伝子を発現するプラスミドであるpCoHygro(Invitrogen社、米国カリフォルニア州Carlsbad)を公知の方法で共導入し、形質転換した。
ハイグロマイシンにより形質転換体を選択し、安定形質転換体を得た。
【0080】
そして、S2細胞の形質転換体では、V5エピトープ/Hisタグの結合したペリオスチンを発現させた。
【0081】
S2リコンビナントペリオスチンタンパク質の精製は次のように行った。
ペリオスチン遺伝子安定形質転換体S2細胞の培地に硫酸銅を加えることにより、S2リコンビナントペリオスチンタンパク質の発現を誘導した。
これにより、S2リコンビナントペリオスチンタンパク質は培養上清中に発現分泌された。
【0082】
この培養上清をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に透析した後、ニッケルレジン(Ni−NTA Agarose、Qiagen社、ドイツ国Hilden)と混合して、S2リコンビナントペリオスチンタンパク質をレジンに結合させた。
レジンを洗浄して夾雑物を取り除き、イミダゾール含有緩衝液にてS2リコンビナントペリオスチンタンパク質を溶出した。
溶出されたS2リコンビナントペリオスチンタンパク質をPBSに透析し、これを動物の免疫原とした。
【0083】
次に、これらのS2リコンビナントペリオスチンタンパク質をCFA(完全フロイントアジュバント)〔Sigma−Aldrich社(米国ミズーリ州St.Louis)のFreund’s Adjuvant,Complete〕と混合してラビットに免疫し、その後血清を採取した。
【0084】
この具体的な手順は次の通りである。
ラビットとして、New Zealand Whiteラビット(雌、体重1.5〜2Kg)〔ケービーティーオリエンタル社、日本国佐賀県鳥栖市〕を用いた。
【0085】
これらのラビットは、免疫原であるS2リコンビナントペリオスチンタンパク質とCFAの混合物をラビット背部皮下数カ所に注射することにより免疫した。
【0086】
免疫の5〜7週後、免疫ラビットの耳静脈より注射針と注射器を用いて採血し、血清を得た。
【0087】
最後に、血清からIgGを次のように精製した。
すなわち、採取した血清に二倍量の50mM酢酸ナトリウム水溶液(pH4.0)を加えた後、塩酸でpHを4.0に調整した。
この血清を撹拌しながら、血清の1/15量のカプリル酸を加え、30分間撹拌した後、9,200gで10分間遠心した。
上清をPBSに透析し、精製IgGとして、ラビット抗ペリオスチンポリクローナル抗体を取得した。
【0088】
〔実施例2〕(ラット抗ペリオスチンモノクローナル抗体の調製)
以下の手順により、ラット抗ペリオスチンモノクローナル抗体の調製を行った。
【0089】
S2リコンビナントペリオスチンタンパク質(20〜50μg/ラット)を、CFA(完全フロイントアジュバント)又はTiter Max Gold(化学合成アジュバント)〔フナコシ社、日本国東京都〕と混合して、一対の相互に結合したものを免疫原とした。
【0090】
具体的な手順は次の通りである。
S2リコンビナントペリオスチンタンパク質は、次のように調製した。
まず、ペリオスチン遺伝子安定形質転換体S2細胞の培地に硫酸銅を加えることにより、S2リコンビナントペリオスチンタンパク質の発現を誘導した。
これにより、S2リコンビナントペリオスチンタンパク質は培養上清中に発現分泌された。
【0091】
この培養上清をPBSに透析した後、ニッケルレジン(Ni−NTA Agarose、Qiagen社、ドイツ国Hilden)と混合して、S2リコンビナントペリオスチンタンパク質をレジンに結合させた。
レジンを洗浄して夾雑物を取り除き、イミダゾール含有緩衝液にてS2リコンビナントペリオスチンタンパク質を溶出した。
【0092】
CFA(完全フロイントアジュバント)としてFreund’s Adjuvant、Complete(Sigma−Aldrich社、米国ミズーリ州St.Louis)を用いた。
また、化学合成アジュバントとしてTiter Max Gold(フナコシ社、日本国東京都)を用いた。
そして、S2リコンビナントペリオスチンタンパク質溶液1容に対して、CFA又はTiter Max Goldを1容の割合で混合した。
【0093】
次に、雌ラットの足蹠に免疫原として、20〜50μgのS2リコンビナントペリオスチンタンパク質溶液と、CFA又はTiter Max Goldとの混合物を皮下注射し、10日〜2週間後、再度ラットの足蹠に免疫原として、20〜50μgのS2リコンビナントペリオスチンタンパク質溶液と、CFA又はTiter Max Goldとの混合物を皮下注射した。
なお、ここで、ラットは、Wistarラット(雌、6〜8週齢)〔日本チャールズリバー社、日本国神奈川県横浜市〕を用いた。
【0094】
最終免疫より3〜4日後、免疫したラットの膝窩、鼠径、腸骨リンパ節内の細胞と、ミエローマ細胞(Sp2/O細胞)を1対1から10対1の割合で混合し、一般的な方法でポリエチレングリコール(PEG1500、Roche社、スイス国)を加えて細胞融合させ、生育したハイブリドーマコロニーを選別した。
【0095】
具体的には、細胞融合は次のように行った。
混合した前記リンパ節細胞とミエローマ細胞(Sp2/O細胞)を遠心して上清を除き、室温でポリエチレングリコール(PEG1500、Roche社、スイス国)1mLに1分間かけて懸濁した後、37℃で1分間撹拌した。
血清不含培地1mLを1分間かけて加え、その後、血清不含培地10mLを1分間かけて加えた。
細胞を数回洗浄した後、ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン含有培地に懸濁して96穴マイクロタイタープレートに分注して、37℃において5%CO存在下で培養した。
【0096】
生育したモノクローナル抗体産生細胞株(融合細胞株)の選別の方法としては、細胞融合から7〜14日後、免疫原に使用したタンパク質を固相化し、融合細胞培養上清を一次抗体としたELISA法の系にて行った。
このELISA法は具体的には、次のように行った。
1μg/mLの免疫原に使用したタンパク質を96穴マイクロタイタープレートに分注し、数時間固相化させた。
この固相化溶液を洗浄した後、融合細胞培養上清を各ウェルに加え、1時間室温にて静置した。
融合細胞培養上清を洗浄して、二次抗体としてペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ラットIgG抗体(GE Healthcare社、Little Chalfont、英国)を加え1時間室温に静置した。
この二次抗体を洗浄後、ABTSペルオキシダーゼ基質(KPL社、米国メリーランド州Gaithersburg)を加えて発色させ、405nmの吸光度を測定した。
【0097】
生育した融合細胞株の中から二つのクローンを確立し、SS17B株、SS18A株とそれぞれ命名した。
そして、これらの選別したモノクローナル抗体産生細胞株からIgGを次のように精製した。
【0098】
このモノクローナル抗体産生細胞株を、GIT培地(日本製薬社、日本国東京都)を用いてCOインキュベータ内37℃で培養した。
培養後、上清中のIgGをプロテインGカラム(GE Healthcare社、Little Chalfont、英国)に結合させた。
結合させたIgGを、50mMクエン酸水溶液(pH2.6)で溶出した。
溶出液4容量に対して、1Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液1容量を添加し、精製IgGとして、ラット抗ペリオスチンモノクローナル抗体をそれぞれのモノクロナール抗体産生細胞株より取得した。
すなわち、SS17B株、SS18A株各々のモノクローナル抗体産生細胞株から、それぞれラット抗ペリオスチンモノクローナル抗体を得ることができた。
【0099】
〔実施例3〕(本発明の効果の確認−1)
本発明の測定の正確性の改善方法の効果を確かめた。
【0100】
1.試料
試料として、次の通り、胆管細胞癌の罹患者の血清、又は対照者の血清を用いた。
(1)胆管細胞癌の罹患者(計8例)の血清
(2)対照者(計71例)の血清
対照者の内訳:
・ 肝細胞癌の罹患者(計24例)
・ 混合型肝細胞癌の罹患者(計7例)
・ 肝硬変の罹患者(計26例)
・ 硬化型肝細胞癌の罹患者(計3例)
・ 肉腫様肝細胞癌の罹患者(計2例)
・ 血管筋脂肪腫の罹患者(計1例)
・ 血管肉腫の罹患者(計1例)
・ 健常人(計7例)
【0101】
2.試料中のペリオスチン濃度の測定
(1)抗ペリオスチン抗体としてポリクローナル抗体を使用した測定
前記1の(1)及び(2)の各試料に含まれるペリオスチンの濃度を、抗ペリオスチンポリクローナル抗体を使用した蛍光免疫測定法により測定した。
【0102】
(a) まず、96穴マイクロタイタープレートの各ウェルに、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)〔137mMの塩化ナトリウム、2.68mMの塩化カリウム、1.47mMのリン酸二水素カリウム、及び8.04mMのリン酸水素二ナトリウムを含有する水溶液(pH7.4)〕により10μg/mLに希釈した前記の実施例1のラビット抗ペリオスチンポリクローナル抗体を50μL注入し、4℃で一晩静置し、このラビット抗ペリオスチンポリクローナル抗体をこのマイクロタイタープレートの各ウェルに固相化した。
【0103】
(b) 次に、このマイクロタイタープレートのウェル中の液を除いた後、ブロッキング液−A〔3%のBSAを含有するPBS〕を各ウェルに180μL注入し、室温で1時間静置した。
【0104】
(c) 次に、各ウェルを洗浄液−A〔0.05%のTween−20を含有するTBS〕で3回洗浄した。
【0105】
(d) 次に、前記1の(1)及び(2)の各試料それぞれについて、試料希釈液−A〔0.05%のTween−20を含有するトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝生理食塩水[TBS]〕で10倍に希釈した後、その50μLを前記のウェルに注入し、室温にて1時間静置し、反応を行わせた。
これにより、試料に含まれるペリオスチンを、前記のウェルに固相化したラビット抗ペリオスチンポリクローナル抗体に結合させた。
【0106】
(e) 次に、各ウェルを前記の洗浄液−Aで3回洗浄した。
【0107】
(f) 前記の実施例1のラビット抗ペリオスチンポリクローナル抗体にビオチンを結合させ標識したビオチン標識抗ペリオスチンポリクローナル抗体を、前記の試料希釈液−Aで1μg/mLとなるように希釈し、その50μLを前記のウェルに注入し、室温にて1時間静置し、反応を行わせた。
これにより、前記の固相化ラビット抗ペリオスチンポリクローナル抗体に結合したペリオスチンに、ビオチン標識抗ペリオスチンポリクローナル抗体を結合させた。
【0108】
(g) 次に、各ウェルを前記の洗浄液−Aで3回洗浄した。
【0109】
(h) 次に、1,000倍に希釈したユーロピウム(Eu)で標識されたストレプトアビジン(DELFIA、PerkinElmer社、米国マサチューセッツ州)の50μLを前記のウェルに注入し、25℃にて60分間静置し、反応を行わせた。
これにより、前記の「96穴マイクロタイタープレートのウェル」−「ラビット抗ペリオスチンポリクローナル抗体」−「ペリオスチン」−「ビオチン標識抗ペリオスチンポリクローナル抗体」のビオチンに、「ユーロピウム標識ストレプトアビジン」のストレプトアビジンを結合させた。
【0110】
(i) 次に、各ウェルを前記のユーロピウム標識ストレプトアビジン専用の洗浄液(DELFIA、PerkinElmer社、米国マサチューセッツ州)で5回洗浄した。
【0111】
(j) 次に、増強溶液(Enhancement Solution、DELFIA、PerkinElmer社、米国マサチューセッツ州)の50μLを前記のウェルに注入し、室温にて10〜15分間静置し、反応を行わせた後、時間分解蛍光光度計を用いて各ウェルについて蛍光強度の測定を行った。
【0112】
(k) なお、精製したペリオスチンタンパク質を前記の試料希釈液で希釈して、精製ペリオスチンタンパク質の希釈系列を作成し、これらの試料のそれぞれについて、前記(a)〜(j)の記載に従って測定を行い、この蛍光免疫測定法における「ペリオスチン濃度−蛍光強度」の標準曲線を作成した。
【0113】
(l) 前記(j)において測定した各ウェルの蛍光強度を、前記(k)で作成した「ペリオスチン濃度−蛍光強度」の標準曲線に当てはめ、前記1の(1)及び(2)の各試料それぞれのペリオスチン濃度を求めた。
【0114】
(2)抗ペリオスチン抗体としてモノクローナル抗体を使用した測定
前記1の(1)及び(2)の各試料に含まれるペリオスチンの濃度を、抗ペリオスチンモノクローナル抗体を使用した酵素免疫測定法(ELISA法)により測定した。
【0115】
(a) まず、96穴マイクロタイタープレートの各ウェルに、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)〔137mMの塩化ナトリウム、2.68mMの塩化カリウム、1.47mMのリン酸二水素カリウム、及び8.04mMのリン酸水素二ナトリウムを含有する水溶液(pH7.4)〕により2μg/mLに希釈した前記の実施例2のラット抗ペリオスチンモノクローナル抗体(モノクローナル抗体産生細胞株:SS18A株)を100μL注入し、25℃で18時間静置し、このラット抗ペリオスチンモノクローナル抗体(SS18A株)をこのマイクロタイタープレートの各ウェルに固相化した。
【0116】
(b) 次に、このマイクロタイタープレートのウェル中の液を除いた後、ブロッキング液−B〔0.5%のカゼイン、100mMの塩化ナトリウム、及び0.1%のアジ化ナトリウムを含有する50mMのトリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタン緩衝液[トリス緩衝液](pH8.0)〕を各ウェルに250μL注入し、4℃で18時間静置した。
【0117】
(c) 次に、各ウェルを洗浄液−B〔0.05%のTween−20を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)〕で3回洗浄した。
【0118】
(d) 次に、前記1の(1)及び(2)の各試料それぞれについて、試料希釈液−B〔0.5%のカゼイン、100mMの塩化ナトリウム、及び0.1%のアジ化ナトリウムを含有する50mMのトリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタン緩衝液[トリス緩衝液](pH8.0)〕で200倍に希釈した後、その100μLを前記のウェルに注入し、25℃にて18時間静置し、反応を行わせた。
これにより、試料に含まれるペリオスチンを、前記のウェルに固相化したラット抗ペリオスチンモノクローナル抗体(SS18A株)に結合させた。
【0119】
(e) 次に、各ウェルを前記の洗浄液−Bで5回洗浄した。
【0120】
(f) 前記の実施例2のラット抗ペリオスチンモノクローナル抗体(モノクローナル抗体産生細胞株:SS17B株)にパーオキシダーゼ(POD)を結合させ標識したPOD標識抗ペリオスチンモノクローナル抗体を、前記の試料希釈液−Bで50ng/mLとなるように希釈し、その100μLを前記のウェルに注入し、25℃にて90分間静置し、反応を行わせた。
これにより、前記の固相化ラット抗ペリオスチンモノクローナル抗体(SS18A株)に結合したペリオスチンに、POD標識抗ペリオスチンモノクローナル抗体(SS17B株)を結合させた。
【0121】
(g) 次に、各ウェルを前記の洗浄液−Bで5回洗浄した。
【0122】
(h) 次に、PODの基質液〔0.8mMの3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMBZ)、2.5mMの過酸化水素、及び30mMのリン酸水素二ナトリウムを含有する20mMのクエン酸緩衝液〕の100μLを前記のウェルに注入し、25℃にて10分間静置し、反応を行わせ、発色させた。
その後、各ウェルに0.7Nの硫酸を注入し、この反応を停止させた。
【0123】
(i) 次に、分光光度計を用いて各ウェルについて450nmにおける吸光度の測定を行った。
【0124】
(j) なお、精製したペリオスチンタンパク質を前記の試料希釈液で希釈して、精製ペリオスチンタンパク質の希釈系列を作成し、これらの試料のそれぞれについて、前記(a)〜(i)の記載に従って測定を行い、この酵素免疫測定法における「ペリオスチン濃度−吸光度」の標準曲線を作成した。
【0125】
(k) 前記(i)において測定した各ウェルの吸光度を、前記(j)で作成した「ペリオスチン濃度−吸光度」の標準曲線に当てはめ、前記1の(1)及び(2)の各試料それぞれのペリオスチン濃度を求めた。
【0126】
3.測定結果
(1)試料中のペリオスチン濃度の測定結果
前記2の(1)及び(2)のそれぞれにおける胆管細胞癌の罹患者(計8例)及び対照者(計71例)の各試料中のペリオスチン濃度の測定結果を、図1に示した。
【0127】
この図1の左側に、前記2の(1)の抗ペリオスチン抗体としてポリクローナル抗体を使用した測定における測定結果を示した。
また、この図1の右側に、前記2の(2)の抗ペリオスチン抗体としてモノクローナル抗体を使用した測定における測定結果を示した。
【0128】
そして、この図1の左側及び右側のいずれにおいても、横軸は試料が胆管細胞癌の罹患者の血清であるか、又は対照者の血清であるかの別を表し、縦軸は測定した各試料に含まれるペリオスチンの濃度(ng/mL)を表す。
【0129】
(2)測定結果を基にしたROC曲線
前記2の(1)及び(2)のそれぞれにおける胆管細胞癌の罹患者(計8例)及び対照者(計71例)の各試料中のペリオスチン濃度の測定結果を基に、ROC曲線(Receiver Operatorating Characteristic Curve)を作成した。
このROC曲線を図2に示した。
この図2において、横軸は「1−特異度」を、縦軸は「感度」を表す。
【0130】
そして、この図2において、前記2の(1)の抗ペリオスチン抗体としてポリクローナル抗体を使用した測定における測定結果のROC曲線を破線で表し、前記2の(2)の抗ペリオスチン抗体としてモノクローナル抗体を使用した測定における測定結果のROC曲線を実線で表した。
【0131】
なお、前記のポリクローナル抗体を使用した測定における測定結果のROC曲線の曲線下面積(Area Under the Curve;AUC)は、0.791であった。
また、前記のモノクローナル抗体を使用した測定における測定結果のROC曲線の曲線下面積(AUC)は、0.852であった。
【0132】
4.考察
(1)試料中のペリオスチン濃度の測定結果について
(a) 図1の左側の、ポリクローナル抗体を使用した場合の前記の測定結果より、胆管細胞癌の罹患者のみならず、対照者においても、その血清中のペリオスチン濃度は低値から高値まで広く分布していることが分かる。
【0133】
ところで、先に記載した通り、ペリオスチンは、胆管細胞癌の罹患者においては高値となるものの、他の疾患、例えば、肝細胞癌、肝硬変、硬化型肝細胞癌、肉腫様肝細胞癌、血管筋脂肪腫、若しくは血管肉腫の罹患者、又は健常人においては、低値である。
よって、この図1の左側のポリクローナル抗体を使用した場合の測定結果で、対照者において、その血清中のペリオスチン濃度が中程度値〜高値となっているのは、偽陽性によるものである。
従って、このペリオスチン濃度の測定では、胆管細胞癌の罹患者においては陽性であると明確に判別され、そして、対象者、すなわち非罹患者においては陰性であると明確に判別されることが望ましい。
【0134】
この図1の左側の、ポリクローナル抗体を使用した場合の前記の測定結果において、罹患(陽性)と非罹患(陰性)とを判別するためのカットオフ値は、特異度が高くかつ感度がより高く取れるようこの両方のバランスが良くなるようにカットオフ値を設定し、ペリオスチン濃度200ng/mLに設定した。
このとき、このポリクローナル抗体を使用した場合の測定の感度〔この測定における罹患者群での陽性率(真の陽性率)〕は62.5%であり、特異度〔この測定における非罹患者群での陰性率(真の陰性率;すなわち、1−偽陽性率)〕は74.6%であった。
【0135】
(b) 図1の右側の、モノクローナル抗体を使用した場合の前記の測定結果より、対照者の血清中のペリオスチン濃度の分布は、より低値域に纏まっていることが分かる。
この図1の右側の、モノクローナル抗体を使用した場合の前記の測定結果において、罹患(陽性)と非罹患(陰性)とを判別するためのカットオフ値は、特異度が高くかつ感度がより高く取れるようこの両方のバランスが良くなるようにカットオフ値を設定し、ペリオスチン濃度154ng/mLに設定した。
このとき、このモノクローナル抗体を使用した場合の測定の感度は75.0%であり、特異度は94.4%であった。
【0136】
(c) すなわち、このことより、ペリオスチンの測定に使用する抗ペリオスチン抗体として、ポリクローナル抗体を使用した場合に比べ、モノクローナル抗体を使用した場合は、罹患(陽性)と非罹患(陰性)とを判別するためのカットオフ値を、ペリオスチン濃度200ng/mLから154ng/mLへと23%も低下させることができたことが分かる。
【0137】
そして、抗ペリオスチン抗体としてポリクローナル抗体を使用した場合に比べ、モノクローナル抗体を使用した場合は、測定の感度を62.5%から75.0%へと高めることができたことが分かる。
【0138】
更に、同じく、モノクローナル抗体を使用することにより、測定の特異度を74.6%から94.4%へと高めることができたことが分かる。
【0139】
これらのことより、試料に含まれるペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定において、抗ペリオスチン抗体として、モノクローナル抗体を使用することにより、測定の感度及び測定の特異度をそれぞれ改善することができること、すなわち、測定の正確性を改善することができることが確かめられた。
【0140】
(2)測定結果を基にしたROC曲線について
図2より、抗ペリオスチン抗体として、ポリクローナル抗体を使用した場合の測定結果のROC曲線(破線)に比較し、モノクローナル抗体を使用した場合の測定結果のROC曲線(実線)は、感度、及び特異度のそれぞれが向上していることが分かる。
そして、抗ペリオスチン抗体としてポリクローナル抗体を使用した場合(破線)に比べ、モノクローナル抗体を使用した場合(実線)は、曲線下面積(AUC)が、0.791から0.852へと増加(向上)しており、測定の正確性が改善されていることが分かる。
【0141】
このROC曲線の結果からも、試料に含まれるペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定において、抗ペリオスチン抗体として、モノクローナル抗体を使用することにより、測定の感度及び測定の特異度をそれぞれ改善することができること、すなわち、測定の正確性を改善することができることが確かめられた。
【0142】
〔実施例4〕(本発明の効果の確認−2)
本発明の測定の正確性の改善方法の効果を確かめた。
【0143】
1.試料
試料として、次の通り、肺線維症の罹患者の血清、又は健常人の血清を用いた。
(1)肺線維症の罹患者(計37例)の血清
(2)健常人(計66例)の血清
【0144】
2.試料中のペリオスチン濃度の測定
(1)抗ペリオスチン抗体としてポリクローナル抗体を使用した測定
前記1の(1)及び(2)の各試料に含まれるペリオスチンの濃度を、抗ペリオスチンポリクローナル抗体を使用した蛍光免疫測定法により測定した。
【0145】
なお、この測定の操作は、前記の実施例3の2の(1)の(a)〜(l)の手順に従って行った。
【0146】
(2)抗ペリオスチン抗体としてモノクローナル抗体を使用した測定
前記1の(1)及び(2)の各試料に含まれるペリオスチンの濃度を、抗ペリオスチンモノクローナル抗体を使用した酵素免疫測定法(ELISA法)により測定した。
【0147】
なお、この測定の操作は、前記の実施例3の2の(2)の(a)〜(k)の手順に従って行った。
【0148】
3.測定結果
(1)試料中のペリオスチン濃度の測定結果
前記2の(1)及び(2)のそれぞれにおける肺線維症の罹患者(計37例)及び健常人(計66例)の各試料中のペリオスチン濃度の測定結果を、図3に示した。
【0149】
この図3の左側に、前記2の(1)の抗ペリオスチン抗体としてポリクローナル抗体を使用した測定における測定結果を示した。
また、この図3の右側に、前記2の(2)の抗ペリオスチン抗体としてモノクローナル抗体を使用した測定における測定結果を示した。
【0150】
そして、この図3の左側及び右側のいずれにおいても、横軸は試料が肺線維症の罹患者の血清であるか、又は健常人の血清であるかの別を表し、縦軸は測定した各試料に含まれるペリオスチンの濃度(ng/mL)を表す。
【0151】
(2)測定結果を基にしたROC曲線
前記2の(1)及び(2)のそれぞれにおける肺線維症の罹患者(計37例)及び健常人(計66例)の各試料中のペリオスチン濃度の測定結果を基に、ROC曲線を作成した。
このROC曲線を図4に示した。
この図4において、横軸は「1−特異度」を、縦軸は「感度」を表す。
【0152】
そして、この図4において、前記2の(1)の抗ペリオスチン抗体としてポリクローナル抗体を使用した測定における測定結果のROC曲線を破線で表し、前記2の(2)の抗ペリオスチン抗体としてモノクローナル抗体を使用した測定における測定結果のROC曲線を実線で表した。
【0153】
なお、前記のポリクローナル抗体を使用した測定における測定結果のROC曲線の曲線下面積(AUC)は、0.776であった。
また、前記のモノクローナル抗体を使用した測定における測定結果のROC曲線の曲線下面積(AUC)は、0.905であった。
【0154】
4.考察
(1)試料中のペリオスチン濃度の測定結果について
(a) 図3の左側の、ポリクローナル抗体を使用した場合の前記の測定結果より、肺線維症の罹患者のみならず、健常人においても、その血清中のペリオスチン濃度は低値から高値まで広く分布していることが分かる。
【0155】
この図3の左側の、ポリクローナル抗体を使用した場合の前記の測定結果において、罹患(陽性)と非罹患(陰性)とを判別するためのカットオフ値は、特異度が高くかつ感度がより高く取れるようこの両方のバランスが良くなるようにカットオフ値を設定し、ペリオスチン濃度200ng/mLに設定した。
このとき、このポリクローナル抗体を使用した場合の測定の感度は56.8%であり、特異度は83.3%であった。
【0156】
(b) 図3の右側の、モノクローナル抗体を使用した場合の前記の測定結果より、健常人の血清中のペリオスチン濃度の分布は、より低値域に纏まっていることが分かる。
この図3の右側の、モノクローナル抗体を使用した場合の前記の測定結果において、罹患(陽性)と非罹患(陰性)とを判別するためのカットオフ値は、特異度が高くかつ感度がより高く取れるようこの両方のバランスが良くなるようにカットオフ値を設定し、ペリオスチン濃度82ng/mLに設定した。
このとき、このモノクローナル抗体を使用した場合の測定の感度は62.2%であり、特異度は95.5%であった。
【0157】
(c) すなわち、このことより、ペリオスチンの測定に使用する抗ペリオスチン抗体として、ポリクローナル抗体を使用した場合に比べ、モノクローナル抗体を使用した場合は、罹患(陽性)と非罹患(陰性)とを判別するためのカットオフ値を、ペリオスチン濃度200ng/mLから82ng/mLへと59%も低下させることができたことが分かる。
【0158】
そして、抗ペリオスチン抗体としてポリクローナル抗体を使用した場合に比べ、モノクローナル抗体を使用した場合は、測定の感度を56.8%から62.2%へと高めることができたことが分かる。
【0159】
更に、同じく、モノクローナル抗体を使用することにより、測定の特異度を83.3%から95.5%へと高めることができたことが分かる。
【0160】
これらのことより、試料に含まれるペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定において、抗ペリオスチン抗体として、モノクローナル抗体を使用することにより、測定の感度及び測定の特異度をそれぞれ改善することができること、すなわち、測定の正確性を改善することができることが確かめられた。
【0161】
(2)測定結果を基にしたROC曲線について
図4より、抗ペリオスチン抗体として、ポリクローナル抗体を使用した場合の測定結果のROC曲線(破線)に比較し、モノクローナル抗体を使用した場合の測定結果のROC曲線(実線)は、感度、及び特異度のそれぞれが向上していることが分かる。
【0162】
そして、抗ペリオスチン抗体としてポリクローナル抗体を使用した場合(破線)に比べ、モノクローナル抗体を使用した場合(実線)は、曲線下面積(AUC)が、0.776から0.905へと増加(向上)しており、測定の正確性が改善されていることが分かる。
【0163】
このROC曲線の結果からも、試料に含まれるペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定において、抗ペリオスチン抗体として、モノクローナル抗体を使用することにより、測定の感度及び測定の特異度をそれぞれ改善することができること、すなわち、測定の正確性を改善することができることが確かめられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に含まれるペリオスチンの抗原抗体反応を利用した測定において、抗ペリオスチンモノクローナル抗体を使用することを特徴とする、測定の正確性の改善方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−58048(P2012−58048A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200564(P2010−200564)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000131474)株式会社シノテスト (28)
【出願人】(504209655)国立大学法人佐賀大学 (176)
【出願人】(599045903)学校法人 久留米大学 (72)