説明

ペルオキソ改質アナターゼゾルによる光触媒体の製造方法。

【課題】 ペルオキソ改質アナターゼゾルにおいて、本来の光触媒としての機能が十分維持可能で、早期硬化が可能で、一般的な塗料みたいなコーティング剤と比較しても遜色のない、ペルオキソ改質アナターゼゾルによる光触媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】 四塩化チタンなどの可溶性チタン化合物の水溶液にアンモニア水を添加して水酸化チタンを作り、その水酸化チタンを洗浄して過酸化水素水と反応させて得ることのできるペルオキソチタン酸溶液の製造工程中、水酸化チタンを洗浄する段階においての残留アンモニア濃度を200ppm以上280ppm以下に調整して完成させたペルオキソチタン酸溶液を、90℃以上沸点未満で加熱することによりペルオキソ改質アナターゼゾルとし、これを基体にコーティングした後、太陽光、もしくは人工的紫外線、或いはその両方を利用して硬化させて光触媒体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペルオキソ改質アナターゼゾルによる光触媒体の製造方法に関し、特に基体上に優れた光触媒機能を有し、かつ強固なペルオキソ改質アナターゼゾルの皮膜を形成するのに有用な、ペルオキソ改質アナターゼゾルの製造方法、皮膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒機能を有する酸化チタンは、その酸化分解能力が消臭、殺菌、カビ防止、防汚などにおいて高い機能を有し、かつ半永久的であることにより、基体へのコーティング剤としての酸化チタンゾルが数多く提供されている。
【0003】
そしてその中でも特にペルオキソ改質アナターゼゾルは、有害物質を含まず、環境に優しく、使用する側にも安全な優れた中性コーティング剤であり、その代表的な製造方法としては特許文献1のようなものが存在する。
【特許文献1】 特許第2875993号
【0004】
また、酸化チタン粒子、酸化チタン粉末、酸化チタンゾル、ペルオキソ改質アナターゼゾルとペルオキソチタン酸溶液を併用しての光触媒体の製造法として、特許文献2のようなものが存在している。
【特許文献2】 特許第3690864号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら本発明者は、特許文献2による光触媒体の製造法が、その光触媒体が初期段階においては意外にも基体に対し固化、固定しているだけで、触ると簡単に剥離し、完全硬化には数週間を要し、完全硬化を確認できないものも存在し、しかも硬化を確認できたものには、本来有していた光触媒機能よりもその機能は減退しているという不可解な現象を発見した。
【0006】
またこのことは、特許文献1による製造方法で製造した、ペルオキソチタン酸溶液、ペルオキソ改質アナターゼゾルを使用して確認してみても同結果であった。
【0007】
このペルオキソ改質アナターゼゾルは、既に光触媒機能を有している中性コーティング剤で、基体にコーティングするだけで光触媒機能を求められるという優れたコーティング剤であるにも関わらず、基体への密着性があまり良くないと言う理由から、その解決策として特許文献2が考えられている。
【0008】
ところがこれでは現状、ペルオキソ改質アナターゼゾル単体での使用よりも基体への密着性は改良されているのかも知れないが、一般的な塗料みたいなコーティング剤と比較すると、まだまだ使用条件においてさまざまな制限が生じており、何よりも本来の優れたペルオキソ改質アナターゼゾルの光触媒としての機能が十分に引き出せているかどうかは疑問である。
【0009】
そこで本発明は、ペルオキソ改質アナターゼゾル本来の光触媒としての機能が十分維持可能で、早期硬化が可能で、一般的な塗料みたいなコーティング剤と比較しても遜色のない、ペルオキソ改質アナターゼゾルによる光触媒体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、ペルオキソ改質アナターゼゾルを、基体に担持固定させる光触媒体の製造法であって、ペルオキソ改質アナターゼゾルの出発点となるペルオキソチタン酸溶液の製造方法において、四塩化チタンなどの可溶性チタン化合物の水溶液にアンモニア水を添加して水酸化チタンを作り、その水酸化チタンを洗浄して過酸化水素水と反応させて得ることのできるペルオキソチタン酸溶液の製造工程中、水酸化チタンを洗浄する段階においての残留アンモニア濃度を200ppm以上280ppm以下に調整して完成させたペルオキソチタン酸溶液を、90℃以上沸点未満で加熱することによりペルオキソ改質アナターゼゾルとし、これを基体にコーティングした後、太陽光、もしくは人工的紫外線、或いはその両方を利用して硬化させて得たことを特徴とする光触媒体の製造方法である。
【0011】
そもそもペルオキソチタン酸溶液は、その溶液中に含まれる豊富なペルオキソ基によって無定形チタンを安定分散させているチタン溶液で、光触媒機能を有するペルオキソ改質アナターゼゾルはその出発点となるペルオキソチタン酸溶液を、80℃以上の加熱処理、あるいはオートクレーブ中において加熱処理することにより完成する。
【0012】
しかし、あまりにも低温であるとペルオキソ改質アナターゼゾルを得られる時間に数十時間を要し、またオートクレーブ中においての加熱処理ではコントロールが難しいため、一般的には100℃もしくは100℃以上の、つまりは沸騰温度にて6〜9時間程度で製造されている。
【0013】
また、通常ペルオキソ改質アナターゼゾルは基体への密着性が良くないと言われているが、その出発点となるペルオキソチタン酸溶液の段階においては、意外にも強固な密着性を保有しているのは公知の事実である。
【0014】
また、一般的に良好な膜を低温で簡単に種々の材料上へコーティングするには、中性であること、不純物が少ないこと、ゾルの粒子径が小さいあるいは溶液であること、密着性に寄与する特殊な置換基があることなどが必要と言われている。
【0015】
本発明者は、まず従来のペルオキソ改質アナターゼゾルとその出発点となるペルオキソチタン酸溶液双方において、互いにこの条件は満たしつつも、基体への密着性に対しては出発点であるペルオキソチタン酸溶液の方が格段に優れていることに着目し、その違いを解明していく上で、見た目の色、pH値の若干の違いもあるが、唯一大きな相違点は2点で、それは粒子径とペルオキソ基の量にあることを確認した。
【0016】
詳しくは、ペルオキソチタン酸溶液段階での平均粒径は約2〜8nmに対し、ペルオキソ改質アナターゼゾルの平均粒子径は約9〜30nmとその差は4倍にもなっていて、ペルオキソ基の量も、ペルオキソチタン酸溶液よりもペルオキソ改質アナターゼゾルの方がはるかに減少している。
【0017】
これは、ペルオキソ改質アナターゼゾルがその出発点となるペルオキソチタン酸溶液を加熱処理することで得られるものなので、ペルオキソ基の減少は加熱処理による分解、粒子径の違いは結晶成長とペルオキソ基の分解に伴う凝集が原因であると考えられるが、いずれにしても従来のペルオキソ改質アナターゼゾルとその出発点となるペルオキソチタン酸溶液双方の違いはこの粒子径とペルオキソ基の量以外の大きな相違点は見当たらない。
【0018】
そこで本発明者はこれらから、ペルオキソチタン酸溶液の基体への強固な密着性が、その本来の粒子径と、豊富なペルオキソ基量が密着性に寄与する特殊な置換基として作用して完成されるものと判断し、結果ペルオキソ改質アナターゼゾルにおいても極力ペルオキソチタン酸溶液に近い状態が求められないものかと考えた。
【0019】
つまり、ペルオキソ改質アナターゼゾルとしての優れた光触媒機能を有しつつも、加熱処理によるペルオキソ基の分解減少が避けられ、粒子径の結晶成長が抑えられ、かつペルオキソ基の分解に伴う凝集をも抑えられる製造方法はないものかと考えた。
【0020】
そしてこの製造方法を鋭意追求していく過程において、四塩化チタンなどの可溶性チタン化合物の水溶液にアンモニア水を添加して水酸化チタンを作り、その水酸化チタンを洗浄して過酸化水素水と反応させて得ることのできるペルオキソチタン酸溶液の製造工程中、水酸化チタンを洗浄する段階においての残留アンモニア濃度が、意外にもペルオキソチタン酸溶液からペルオキソ改質アナターゼゾルに変化させるときにも影響していることに着目し、この残留アンモニア濃度が280ppm以下になると、大幅に結晶成長環境が改善されることを発見した。
【0021】
より詳しくは、従来は四塩化チタンなどの可溶性チタン化合物の水溶液にアンモニア水を添加して水酸化チタンを作り、水酸化チタンを洗浄する作業は、この後の過酸化水素水と反応させて得ることのできるペルオキソチタン酸溶液がゲル化などしないように安定させるための不純物を取り除く作業であり、通常、四塩化チタンなど由来の塩素イオンが検出されなくなるまで洗浄するか、塩素イオンよりも濃度の高いアンモニア濃度を基準として、残留アンモニア濃度を400ppm位まで落とすことでペルオキソチタン酸溶液完成品の安定を確保している。
【0022】
ところがこの残留アンモニア濃度は、ペルオキソチタン酸溶液からペルオキソ改質アナターゼゾルに変化させるときの不純物にもなっており、この残留アンモニア濃度が280ppm以下になると、微細な結晶成長が促進されやすい環境となり、如いては従来一般的なペルオキソチタン酸溶液からペルオキソ改質アナターゼゾルに変化させる加熱温度、100℃もしくは100℃以上の、つまりは沸騰温度で生じるペルオキソ基の分解、もしくはペルオキソ基の分解と加熱対流に伴う粒子径の凝集をも抑えられるようなより低温域においても、優れた光触媒機能を有するペルオキソ改質アナターゼゾルを得ることができ、結果このようにして得られるペルオキソ改質アナターゼゾルはそれ自身極力ペルオキソ基を分解することなく、かつペルオキソ基の分解に伴う凝集をも抑えられる微細な安定したアナターゼゾルで、優れた光触媒機能を有しつつも、基体への密着性も十分満足のいくものであることを確認し本発明を完成させた。
【0023】
ただしこの残留アンモニア濃度は、200ppmから更に下げると、求めるペルオキソチタン酸溶液の長期安定性においてゲル化が生じたので、200ppm以上280ppm以下、より好ましくは、250ppm前後が良い。
【0024】
また、加熱温度は90℃以上沸点未満で、好ましくは95℃以上沸点未満、更に好ましくは98℃である
【0025】
そうすることで、100℃もしくは100℃以上の、つまりは沸騰温度で得られている従来のペルオキソ改質アナターゼゾルの加熱時間と同等加熱時間内で本発明を完成させることができ、しかもこの完成品は従来のものよりも光触媒機能が高い。
【0026】
また、従来の一般的なペルオキソ改質アナターゼゾルへの最低加熱温度も80℃から可能であるといわれているが、80℃〜沸点未満の加熱温度では、加熱時間を数十時間〜十数時間要し、そもそも本発明の意図とするところではない。
【0027】
そして、本発明で得ることのできるペルオキソ改質アナターゼゾルは基体にコーティングした後、太陽光、もしくは人工的紫外線、或いはその両方を利用して硬化させることを特徴とする。
【0028】
そうすることで、おそらくは従来よりも豊富なペルオキソ基量をもつ微細な粒子径のペルオキソ改質アナターゼゾルとしての特徴からであろうが、一般的塗料と比較しても遜色のない1時間位で指触乾燥を完了し、指で触った位では剥離しない程度の優れた光触媒体を完成させることができる。
【0029】
請求項2の発明は、前記請求項1のペルオキソ改質アナターゼゾルに、同濃度の前記請求項1により得られるペルオキソチタン酸溶液、もしくは従来のペルオキソチタン酸溶液を重量比50%以下で添加しコーティング剤とし、基体にコーティングした後、太陽光、もしくは人工的紫外線、或いはその両方を利用して硬化させて得たことを特徴とする光触媒体の製造方法である。
【0030】
本発明では、前記請求項1のペルオキソ改質アナターゼゾルが1時間位で指触乾燥を完了し、指で触った位では剥離しなくなるのに対し、同時間程度で更なる完全硬化が望め、指で擦っても剥離しないほどの硬度を得ることができる優れた光触媒体が完成する。
【0031】
詳しくは、前述したようにペルオキソチタン酸溶液はもともと強固な密着性を保有しているので、ペルオキソ改質アナターゼゾルの密着性を高める添加剤としては効果的であろうというのは容易に察しがつくが、そもそもペルオキソチタン酸溶液自体は光触媒機能を有していないため、たとえば特許文献2に見られるような、人が触るような部分では強固な皮膜が必要であるためにペルオキソチタン酸溶液量を増やして解決する方法を採るとなると、結果光触媒機能を減退させていくことに繋がる。
【0032】
本発明者が調べたところ、従来のペルオキソ改質アナターゼゾルに対するペルオキソチタン酸溶液添加量は重量比最大60%位までで、それ以上になると本来の光触媒としての機能は望めず、また逆に従来のペルオキソ改質アナターゼゾルの基体への密着性を高めるためにはその重量比60%位のペルオキソチタン酸溶液添加量では解決できなかった。
【0033】
ところが本発明による請求項1のペルオキソ改質アナターゼゾルにペルオキソチタン酸溶液を添加していくと、重量比20%位から基体への強固な皮膜が形成でき、好ましくは重量比40%〜45%位で、指で擦っても剥離しないほどの硬度を得ることができる。
【0034】
ただし、これらも本発明の特徴のひとつである、基体にコーティングした後、太陽光、もしくは人工的紫外線、或いはその両方を利用して硬化させることが条件であり、このようにして得られた光触媒体は、高い光触媒機能を有したまま、基体への密着性を短時間で完了することができる。
【0035】
請求項3の発明は、前記請求項1のペルオキソ改質アナターゼゾルと、同濃度の前記請求項1により得られるペルオキソチタン酸溶液、もしくは従来のペルオキソチタン酸溶液を100℃以上の加熱により得られるペルオキソ改質アナターゼゾルとを、重量比2:1〜1:1の範囲で混合し、更に同濃度の前記請求項1により得られるペルオキソチタン酸溶液、もしくは従来のペルオキソチタン酸溶液を重量比50%以下で添加しコーティング剤とし、基体にコーティングした後、太陽光、もしくは人工的紫外線、或いはその両方を利用して硬化させて得たことを特徴とする光触媒体の製造方法である。
【0036】
本発明によると、本発明の目的とするペルオキソ改質アナターゼゾルによる光触媒体の製造方法としては最も適したものである
【0037】
詳しくは、前記請求項1および請求項2の発明をもってしても、光触媒体としての効果は絶大であるが、光触媒効果は光触媒体表面で発揮するために、なんらしかの吸着剤と併用することで更なる効果を引き出すことができる。
【0038】
そこで本発明者は、ペルオキソチタン酸溶液を100℃以上の加熱により得られるペルオキソ改質アナターゼゾルが、加熱時間を長くすることにより結晶成長を促し、結果吸着作用も併せ持つようになることを確認した。
【0039】
つまり、本発明のペルオキソ改質アナターゼゾルと、従来の100℃以上の加熱により得られるペルオキソ改質アナターゼゾルとを重量比2:1〜1:1の範囲で混合し、更に同濃度のペルオキソチタン酸溶液を重量比50%以下で添加しコーティング剤とし、基体にコーティングした後、太陽光、もしくは人工的紫外線、或いはその両方を利用して硬化させて得たことを特徴とする光触媒体は、前記請求項1および請求項2の発明同様、短時間で硬化するとともに、100℃以上の加熱により得られるペルオキソ改質アナターゼゾルの吸着作用と、本発明のペルオキソ改質アナターゼゾルの優れた光触媒機能の相乗効果で、高い効果を求めることができる。
【0040】
請求項4の発明は、前記請求項2および請求項3のコーティング剤に、さらに光触媒としての酸化チタン粒子、または酸化チタン粉末を添加し調整し、基体にコーティングした後、太陽光、もしくは人工的紫外線、或いはその両方を利用して硬化させて得たことを特徴とする光触媒体の製造方法である。
【0041】
本発明によるペルオキソ改質アナターゼゾルは、一般的な酸化チタンによる光触媒と比較しても、かなり可視光領域で反応するのも特徴のひとつであるが、完全な可視光領域での反応とは残念ながら言い難い。
【0042】
そこで最近見受けられる、可視光対応の酸化チタン粉末、もしくは特定の効果をもつ酸化チタン粉末を添加しても、請求項2および請求項3同様、短時間で硬化し、優れた効果を有する光触媒体を求めることができる。
【0043】
請求項5の発明は、基体上に光触媒によって分解されない下地層を設け、その上に前記請求項1、請求項2、請求項3もしくは請求項4による光触媒体が形成されることを特徴とする光触媒体の製造方法であり、請求項6の発明は、前記請求項5の下地層が前記請求項1により得られるペルオキソチタン酸溶液、もしくは従来のペルオキソチタン酸溶液で、基体にコーティングした後、太陽光、もしくは人工的紫外線、或いはその両方を利用して硬化させ、その上に前記請求項1、請求項2、請求項3もしくは請求項4による光触媒体が形成されることを特徴とする光触媒体の製造方法である。
【0044】
この請求項1、請求項2、請求項3もしくは請求項4による光触媒体は高い光触媒機能を有しているので、基体が無機物であれば単体で使用できるが、基体が有機物である場合に単体で使用すると、その基体そのものも分解しかねない。
【0045】
そこで基体が有機物の場合、当然のことながら光触媒によって分解されない下地層を設ければ対処でき、この条件と基体への密着性が確保できていれば、請求項1、請求項2、請求項3もしくは請求項4による光触媒体はそれぞれ強固な皮膜を形成できるので、有機物に対しての強固な皮膜と耐久性を兼ね備えることができる。
【0046】
さらには、この下地層に前記請求項1により得られるペルオキソチタン酸溶液、もしくは従来のペルオキソチタン酸溶液を使用し、一度、太陽光、もしくは人工的紫外線、或いはその両方を利用して硬化させた後、前記請求項1、請求項2、請求項3もしくは請求項4による光触媒体を形成すれば、それぞれ強固な皮膜を短時間で形成でき、特にこの方法は、静電気を帯びやすいプラスチック製品などに効果的である。
【0047】
請求項7の発明は、前記請求項1、請求項2、請求項3および請求項4の各コーティング剤に、少なくとも一種類以上の機能性添加剤、特に水溶性の抗菌剤、防カビ剤などが含有されているか、前記請求項5、請求項6の下地層一方、もしくは上層両方に、少なくとも一種類以上の機能性添加剤、特に水溶性の抗菌剤、防カビ剤などが含有され、各請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6による光触媒体が形成されることを特徴とする光触媒体の製造方法である。
【0048】
本発明によると、請求項1、請求項2、請求項3および請求項4、さらには請求項5、請求項6のそれぞれ基体に対する光触媒体の早期硬化と、強固な皮膜により、機能性添加剤、特に水溶性の抗菌剤、防カビ剤などを含有しても、保持耐久性が格段に優れる。
【0049】
詳しくは、光触媒機能は当然のことながら光がないと機能しないため、従来のペルオキソ改質アナターゼゾルでもその解決策として機能性添加剤の含有は提案されている。
【0050】
ところが、従来のペルオキソ改質アナターゼゾル、もしくは従来のペルオキソチタン酸溶液と従来のペルオキソ改質アナターゼゾルの混合ゾルでは、硬化するまでにかなりの時間を要するので、初期効果は望めるだろうが、特に水がかかる場所などでは硬化するまでの間に流出してしまい、効果の耐久性には問題がある。
【0051】
そこでそれぞれの本発明に機能性添加剤、特に水溶性の抗菌剤、防カビ剤などを含有することは、早期硬化で強固な皮膜内に含有してしまうこととなるので、長期にわたってそれらの効果が期待できる。
【0052】
請求項8の発明は、基体上に、少なくとも一種類以上の機能性添加剤、特に水溶性の抗菌剤、防カビ剤などが含有されている下地層を設け、その上に前記請求項1により得られるペルオキソチタン酸溶液、もしくは従来のペルオキソチタン酸溶液の中間層を設け、その最上層に前記請求項1、請求項2、請求項3もしくは請求項4による光触媒体が形成されることを特徴とする光触媒体の製造方法であり、請求項9の発明は、前記請求項8の下地層が、少なくとも一種類以上の機能性添加剤、特に水溶性の抗菌剤、防カビ剤などが含有されている前記請求項1により得られるペルオキソチタン酸溶液、もしくは従来のペルオキソチタン酸溶液であることを特徴とする光触媒体の製造方法である。
【0053】
これらは、前記請求項7の発明に対して更なる耐久性を確保できる方法として発明したもので、それぞれ3層構造となっている。
【0054】
詳しくは、基体上に少なくとも一種類以上の機能性添加剤、特に水溶性の抗菌剤、防カビ剤などが含有されている下地層、もしくは少なくとも一種類以上の機能性添加剤、特に水溶性の抗菌剤、防カビ剤などが含有されている前記請求項1により得られるペルオキソチタン酸溶液、もしくは従来のペルオキソチタン酸溶液の下地層を形成し、最上層に前記請求項1、請求項2、請求項3もしくは請求項4による光触媒体を形成した場合、その最上層の光触媒機能は少なからずともそれぞれの下地層の機能性添加剤をも分解していく。
【0055】
そこで本発明では、その間にシールド層としてのペルオキソチタン酸溶液の中間層を設けて3層構造としたことを特徴とするもので、各種機能性添加剤の長期効果、耐久性において抜群の効果が期待できる。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、従来のペルオキソ改質アナターゼゾル、もしくは従来のペルオキソチタン酸溶液と従来のペルオキソ改質アナターゼゾルの混合ゾルでの問題点を解決し、ペルオキソ改質アナターゼゾル本来の光触媒としての機能が十分維持可能で、早期硬化が可能で、一般的な塗料みたいなコーティング剤と比較しても遜色のない、ペルオキソ改質アナターゼゾルによる光触媒体の製造方法が提供できる。
【実施例】
【0057】
〔実施例1〕
まず、四塩化チタンにアンモニア水を添加して水酸化チタンを作り、その水酸化チタンを洗浄しながら、水酸化チタンの残留アンモニア濃度を濃度計で計測し250ppmに調整した上で、過酸化水素水を添加しながら反応させて3日間放置してペルオキソチタン酸溶液を作り、このペルオキソチタン酸溶液を電気ポットを利用して98℃で8時間保温することにより、本発明の目的とするペルオキソ改質アナターゼゾルを得た。
【0058】
次に、比較対象品として特許文献1の製造方法で製造されている、株式会社鯤コーポレーション製の製品名TO(ペルオキソ改質アナターゼゾル)、特許文献2の製造方法と同じの同じく株式会社鯤コーポレーション製の製品名TPX(ペルオキソチタン酸溶液3:ペルオキソ改質アナターゼゾル7の混合品)を用意した。
【0059】
本発明の目的とするペルオキソ改質アナターゼゾルを(A)、株式会社鯤コーポレーション製の製品名TO(ペルオキソ改質アナターゼゾル)を(B)とし、それぞれ株式会社近畿製作所製のスプレーガン、口径0.3mmで同量、タイルに塗布したものを各2枚ずつ作成し、暗所に置いたものと、屋外で太陽光にあてたものとの結果を次に示す。
【0060】
結果、(A)、(B)共に暗所に置いたものは、2〜3日では硬化の確認ができなかったが、屋外で太陽光にあてた(A)は60分位で指で触っても剥離することなく硬化しており、一方(B)に関しては120分過ぎた状態でも指で触っただけで剥離が確認できた。
【0061】
〔実施例2〕
本発明の目的とするペルオキソ改質アナターゼゾル(A)に、ペルオキソチタン酸溶液を重量比40%で添加しコーティング剤としたものを(C)、株式会社鯤コーポレーション製の製品名TPX(ペルオキソチタン酸溶液3:ペルオキソ改質アナターゼゾル7の混合品)を(D)とし、実施例1同様、それぞれ株式会社近畿製作所製のスプレーガン、口径0.3mmで同量、タイルに塗布したものを各2枚ずつ作成し、暗所に置いたものと、屋外で太陽光にあてたものとの結果を次に示す。
【0062】
結果、(C)、(D)共に暗所に置いたものは、2〜3日では硬化の確認ができなかったが、屋外で太陽光にあてた(C)は60分位で指で擦っても剥離することなく完全硬化しており、一方(D)に関しては120分過ぎた状態でも指で触っただけで剥離が確認できた。
【0063】
〔実施例3〕
白のアルミ複合板を4枚用意し、各半分面に(C)、(D)を株式会社近畿製作所製のスプレーガン、口径0.3mmで同量、塗布したものを2枚ずつ作成し、暗所に置いたものと、スクリーン印刷用UV乾燥機を通したものとの結果を次に示す。
【0064】
結果、(C)、(D)共に暗所に置いたものは、2〜3日では硬化の確認ができなかったが、スクリーン印刷用UV乾燥機を通した(C)は瞬時で硬化を完了し、出てきたものは指で擦っても剥離することなく、これを更に屋外放置後3ヶ月程で、(C)を塗布した半分面の光触媒機能による防汚機能も確認でき、一方(D)はスクリーン印刷用UV乾燥機を通して出てきても、指で触るだけで剥離が確認できた。
【0065】
〔実施例4〕
実施例2で得た、(C)、(D)にそれぞれ市販のカビ防止剤水溶液を添加して効果を確認してみる。
【0066】
このカビ防止剤には、長期効果が望めるというだけではっきりとした期間は表示されておらず、水溶液であるために水がかかる場所には適さないようである。
【0067】
いつもカビが発生して困るシャンプー容器に(C)のカビ防止剤水溶液入り、リンス容器に(D)のカビ防止剤水溶液入りを、それぞれ株式会社近畿製作所製のスプレーガン、口径0.3mmで同量塗布し、屋外の太陽光下で2時間放置して風呂場に戻し、ユニットバスのため殆ど光は望めない状態で、更に意図的に2〜3日に一回水を掛けるというかなりの過酷な条件下での効果の確認とした。
【0068】
結果、(D)の方には約3週間後位からうっすらとカビの発生を確認し、3ヶ月後には真っ黒になるくらいのカビが発生したが、一方(C)は3ヶ月後においてもカビの発生はまったく見受けられない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上詳述したように本発明によれば、本発明のペルオキソ改質アナターゼゾル、もしくはペルオキソチタン酸溶液と本発明のペルオキソ改質アナターゼゾルとの混合ゾルを、太陽光、もしくは人工的紫外線、或いはその両方を利用して硬化させることにより、高い光触媒機能は有したままで、従来のペルオキソチタン酸溶液では考えられないような強固な光触媒体皮膜を早期に形成することができ、工業製品など幅広く提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルオキソ改質アナターゼゾルを、基体に担持固定させる光触媒体の製造法であって、ペルオキソ改質アナターゼゾルの出発点となるペルオキソチタン酸溶液の製造方法において、四塩化チタンなどの可溶性チタン化合物の水溶液にアンモニア水を添加して水酸化チタンを作り、その水酸化チタンを洗浄して過酸化水素水と反応させて得ることのできるペルオキソチタン酸溶液の製造工程中、水酸化チタンを洗浄する段階においての残留アンモニア濃度を200ppm以上280ppm以下に調整して完成させたペルオキソチタン酸溶液を、90℃以上沸点未満で加熱することによりペルオキソ改質アナターゼゾルとし、これを基体にコーティングした後、太陽光、もしくは人工的紫外線、或いはその両方を利用して硬化させて得たことを特徴とする光触媒体の製造方法。
【請求項2】
前記請求項1のペルオキソ改質アナターゼゾルに、同濃度の前記請求項1により得られるペルオキソチタン酸溶液、もしくは従来のペルオキソチタン酸溶液を重量比50%以下で添加しコーティング剤とし、基体にコーティングした後、太陽光、もしくは人工的紫外線、或いはその両方を利用して硬化させて得たことを特徴とする光触媒体の製造方法。
【請求項3】
前記請求項1のペルオキソ改質アナターゼゾルと、同濃度の前記請求項1により得られるペルオキソチタン酸溶液、もしくは従来のペルオキソチタン酸溶液を100℃以上の加熱により得られるペルオキソ改質アナターゼゾルとを、重量比2:1〜1:1の範囲で混合し、更に同濃度の前記請求項1により得られるペルオキソチタン酸溶液、もしくは従来のペルオキソチタン酸溶液を重量比50%以下で添加しコーティング剤とし、基体にコーティングした後、太陽光、もしくは人工的紫外線、或いはその両方を利用して硬化させて得たことを特徴とする光触媒体の製造方法。
【請求項4】
前記請求項2および請求項3のコーティング剤に、さらに光触媒としての酸化チタン粒子、または酸化チタン粉末を添加し調整し、基体にコーティングした後、太陽光、もしくは人工的紫外線、或いはその両方を利用して硬化させて得たことを特徴とする光触媒体の製造方法。
【請求項5】
基体上に光触媒によって分解されない下地層を設け、その上に前記請求項1、請求項2、請求項3もしくは請求項4による光触媒体が形成されることを特徴とする光触媒体の製造方法。
【請求項6】
前記請求項5の下地層が前記請求項1により得られるペルオキソチタン酸溶液、もしくは従来のペルオキソチタン酸溶液で、基体にコーティングした後、太陽光、もしくは人工的紫外線、或いはその両方を利用して硬化させ、その上に前記請求項1、請求項2、請求項3もしくは請求項4による光触媒体が形成されることを特徴とする光触媒体の製造方法。
【請求項7】
前記請求項1、請求項2、請求項3および請求項4の各コーティング剤に、少なくとも一種類以上の機能性添加剤、特に水溶性の抗菌剤、防カビ剤などが含有されているか、前記請求項5、請求項6の下地層一方、もしくは上層両方に、少なくとも一種類以上の機能性添加剤、特に水溶性の抗菌剤、防カビ剤などが含有され、各請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6による光触媒体が形成されることを特徴とする光触媒体の製造方法。
【請求項8】
基体上に、少なくとも一種類以上の機能性添加剤、特に水溶性の抗菌剤、防カビ剤などが含有されている下地層を設け、その上に前記請求項1により得られるペルオキソチタン酸溶液、もしくは従来のペルオキソチタン酸溶液の中間層を設け、その最上層に前記請求項1、請求項2、請求項3もしくは請求項4による光触媒体が形成されることを特徴とする光触媒体の製造方法。
【請求項9】
前記請求項8の下地層が、少なくとも一種類以上の機能性添加剤、特に水溶性の抗菌剤、防カビ剤などが含有されている前記請求項1により得られるペルオキソチタン酸溶液、もしくは従来のペルオキソチタン酸溶液であることを特徴とする光触媒体の製造方法。

【公開番号】特開2008−188583(P2008−188583A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57808(P2007−57808)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(596174754)
【出願人】(504328174)
【Fターム(参考)】