説明

ペレット乾燥装置

【課題】 樹脂ペレットを効率よく昇温及び乾燥させることができるペレット乾燥装置を提供する。
【解決手段】 一端に樹脂ペレットが供給され、振動させられることによって樹脂ペレットを一端から他端へ移送するとともに、この移送方向と交差する方向に延びる貫通溝が移送方向に並んで複数形成されたペレット移送用のスクリーン2と、樹脂ペレットを移送方向に移送させるようにスクリーン2を振動させる振動装置10と、樹脂ペレットを昇温させるための空気を、スクリーン2の貫通溝に下から上に向けて流すための気流発生手段とを備えている。気流発生手段は、筐体である装置本体20と、装置本体20の下部に設けられ加熱された空気を装置本体20内へ送り込むための給気口1と、装置本体20の上部に設けられ装置本体20内の空気を吸い出すための排気口24とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ペレットを昇温乾燥させるペレット乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のペレット乾燥装置として、例えば、高速回転する多段羽根を有するロータを備えた回転式の遠心乾燥機が知られているが、樹脂ペレットが衝突する部材、特にロータが早期に損耗し、耐久性に劣るという問題がある。特に、樹脂ペレットがガラス繊維等を混入した繊維強化プラスチックの場合、繊維によって前述の損耗が著しくなる。
【0003】
上記問題を解消するための他の従来のペレット乾燥装置として、例えば特許文献1に記載の装置がある。この装置では、多数の貫通孔を有するパンチングプレートの一端側に、樹脂ペレットが供給され、パンチングプレートを振動させることによって樹脂ペレットはパンチングプレートの他端側へ移送されて排出される。ここで、パンチングプレートの下方から熱風を供給することによって、多数の貫通孔から吹き出す熱風によってパンチングプレート上を移送される樹脂ペレットを乾燥させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−74935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記他の従来のペレット乾燥装置では、例えば円形の貫通孔が多数設けられたパンチングプレートが用いられるが、このようなパンチングプレートを用いた構成では、樹脂ペレットが貫通孔の部分を避けて移動することにより、貫通孔から上昇する熱風に樹脂ペレットが充分さらされず、樹脂ペレットを効率よく昇温及び乾燥させることができないという問題がある。
【0006】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、樹脂ペレットを効率よく昇温及び乾燥させることができるペレット乾燥装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るペレット乾燥装置は、一端に樹脂ペレットが供給され、振動させられることによって前記樹脂ペレットを前記一端から他端へ移送するとともに、この移送する方向である移送方向と交差する方向に延びる貫通溝が前記移送方向に並んで複数形成されたペレット移送板と、前記樹脂ペレットを前記移送方向に移送させるように前記ペレット移送板を振動させる振動装置と、前記樹脂ペレットを昇温させるための空気を、前記ペレット移送板の前記貫通溝に下から上に向けて流すための気流発生手段とを備えている。
【0008】
この構成によれば、樹脂ペレットを移送するペレット移送板に移送方向と交差する方向に延びた貫通溝を設け、この貫通溝に下から上に向けて樹脂ペレットを昇温させるための空気を流すことによってペレット移送板上にエアーカーテン状の上昇気流(熱風)が形成される。このエアーカーテン状の熱風を横切って樹脂ペレットが移送されるため、樹脂ペレットを効率よく昇温及び乾燥させることができ、装置の小型化も図ることができる。
【0009】
また、前記気流発生手段は、前記ペレット移送板を内部に保持し、一端に前記ペレット移送板上に樹脂ペレットが供給されるためのペレット供給口を有するとともに他端に前記ペレット移送板の他端へ移送された樹脂ペレットを排出するためのペレット排出口とを有する筐体と、前記筐体の下部に設けられた開口部からなり、加熱された空気を前記筐体内へ送り込むための給気口と、前記筐体の上部に設けられた開口部からなり、前記筐体内の空気を吸い出すための排気口とを有している。
【0010】
このように、給気口と排気口とが設けられた筐体の内部にペレット移送板を保持し、下部の給気口から加熱された空気を送り込み、上部の排気口から空気を吸い出すように構成することにより、ペレット移送板の貫通溝に下から上に向けて流れる安定した空気の流れを形成することが容易になり、また、樹脂ペレットの供給が阻害されることもない。
【0011】
また、前記気流発生手段は、さらに、前記給気口に接続され、前記給気口を介して前記筐体内へ加熱された空気を送り込む給気手段と、前記排気口に接続され、前記排気口から前記筐体内の空気を吸い出して外部へ排出する排気手段とを有していてもよい。
【0012】
このように、筐体内へ加熱された空気を送り込む給気手段と筐体内の空気を吸い出して外部へ排出する排気手段とを有することにより、ペレット移送板の貫通溝に下から上に向けて流れる安定した空気の流れを形成することが容易になる。
【0013】
また、前記筐体の内部で、前記ペレット移送板の下方にかつ前記給気口の上方に前記ペレット移送板と対向して配設され、複数の貫通穴を有する気流分散板をさらに備えていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、給気口から筐体内へ送り込まれる加熱された空気(熱風)は気流分散板の複数の貫通穴を通ることにより分散されてペレット移送板へ到達することにより、ペレット移送板の全面に対してほぼ均等に熱風を送ることが容易になる。
【0015】
また、前記給気口と前記排気口とのうちの少なくとも一方が複数設けられ、かつ前記給気口と前記排気口とが前記移送方向にずれて配置されていることが好ましい。
【0016】
この構成により、ペレット移送板の全面に対してほぼ均等に熱風を送ることが容易になる。
【0017】
また、前記ペレット移送板の複数の前記貫通溝は、前記ペレット移送板の全長に亘って前記移送方向に所定間隔をおいて並んで形成されていることが好ましい。
【0018】
この構成により、樹脂ペレットがペレット移送板上を移送されている期間中、熱風によって樹脂ペレットを効率よく昇温させることができる。
【0019】
また、前記ペレット移送板の各々の前記貫通溝は、前記移送方向と直交する方向に延びて、前記樹脂ペレットが移送される経路の実質全幅に亘って形成されていることが好ましい。
【0020】
この構成により、ペレット移送板上を移送される全ての樹脂ペレットを、確実に熱風にさらすことができる。
【0021】
また、前記ペレット移送板は、前記移送方向に隣接する前記貫通溝と前記貫通溝との間の断面が楔形状であることが好ましい。
【0022】
この構成により、ペレット移送板の下方の風速に対して貫通溝を通過する風速を速くすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、以上に説明した構成を有し、樹脂ペレットを効率よく昇温及び乾燥させることができるペレット乾燥装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は、本発明の実施形態のペレット乾燥装置を上方から見た概略平面図であり、(b)は同ペレット乾燥装置の概略側面図であり、(c)は同ペレット乾燥装置の概略前面図である。
【図2】(a)は、本発明の実施形態のペレット乾燥装置の上部スクリーンの一例を示す平面図であり、(b)は、同上部スクリーンの断面図であり、(c)は、同ペレット乾燥装置の下部スクリーンの一例を示す平面図であり、(d)は、同ペレット乾燥装置の上部スクリーンの他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0026】
(実施形態)
図1(a)は、本発明の実施形態のペレット乾燥装置を上方から見た概略平面図であり、図1(b)は同ペレット乾燥装置の概略側面図であり、図1(c)は同ペレット乾燥装置の概略前面図である。なお、以下では、便宜上、ペレット乾燥装置の前後左右を、図1(a)に示すものとして説明する。
【0027】
本実施形態のペレット乾燥装置は、基台9の上に、4本の支脚8等を介して前後左右の4つの弾性部材6によって箱状の装置本体(筐体)20が弾性的に支持されている。弾性部材6は例えばばねである。
【0028】
装置本体20は、その後部(一端)の上部が開口されてペレット供給口21が設けられ、前部(他端)にペレット排出口22が設けられている。また、装置本体20の内部には、ペレット移送板である上部スクリーン2と気流分散板である下部スクリーン3とが、上下に所定間隔をあけて、それぞれ水平にあるいは略水平に固定されている。この上部及び下部スクリーン2、3は装置本体20の底板部20aの上部に取り付けられている。
【0029】
装置本体20の底板部20aは、漏斗状に形成され、略中央に開口部からなる給気口1が設けられている。この給気口1には、伸縮可能な可撓管11を介して給気ボックス15が接続されている。給気ボックス15は、基台9上に配設されて、その上部に開口部17が設けられ、その開口部17と装置本体20の給気口1との間に可撓管11が接続されている。また、給気ボックス15の側部には給気口16が設けられている。この給気口16は図示しない配管を介してヒータ13に接続され、ヒータ13は図示しない配管を介して給気用ファン12に接続されている。給気用ファン12で外部から取り込まれた空気はヒータ13へ送られて所定温度となるように加熱され、このヒータ13で加熱された空気(熱風)が、給気ボックス15及び可撓管11を介して装置本体20内へ送りこまれる。ここでは、給気用ファン12とヒータ13と給気ボックス15と図示しない配管とによって給気手段が構成されている。なお、給気ボックス15を設けない構成としてもよい。この場合、ヒータ13と可撓管11とが図示しない配管によって接続される。また、ヒータ13以外の加熱手段として、給気用ファン12とヒータ13との間に例えばヒートポンプが設けられてあってもよい。この場合、ヒートポンプによって空気を第1の温度T1まで昇温し、さらにヒータ13によって所定の第2の温度T2(>T1)に昇温するようにすればよい。
【0030】
また、装置本体20には、その左右の側面の内側に固定されて垂下する垂直板4,4が設けられ、各垂直板4,4の前後の2箇所に水平取付板5が設けられている。全部で4つの水平取付板5のそれぞれが、基台9に立設された支脚8に、渡し板7及び弾性部材6を介して支持されている。これにより、装置本体20が基台9上に弾性支持されている。なお、右側の2本の支脚8はその上端が渡し板7によって接続され、同様に左側の2本の支脚8もその上端が渡し板7によって接続されている。
【0031】
2つの垂直板4,4の間に跨って棒状部材等からなる振動装置取付け部14が配設され、この取付け部14に装置本体20を振動させる振動装置10が取り付けられている。振動装置10には、ここでは振動モータを用いているが、電磁式のものを用いてもよい。本実施形態では、装置本体20を振動させることにより、装置本体20に固定された上部スクリーン2が振動し、ペレット供給口21から供給された上部スクリーン2上の樹脂ペレットが前方(ペレット排出口22の方向)へ移送される。
【0032】
装置本体20の上面部分には、逆漏斗状(山形)の2つの屋根部23が設けられ、各屋根部23の上端に開口部からなる排気口24が設けられている。各排気口24は図示しない配管を介して排気用ファン25に接続され、排気用ファン25によって装置本体20内の空気が吸引されて外部へ排出される。ここでは、排気用ファン25及び図示しない配管によって排気手段が構成されている。
【0033】
給気用ファン12は吸気フィルタを介して外部の空気を吸い込んで、ヒータ13及び給気ボックス15等を介して装置本体20内へ空気を送り込むための給気用送風機である。また、排気用ファン25は装置本体20内の空気を吸い出して装置外部へ排出するための排気用送風機である。
【0034】
図2(a)は、上部スクリーン2の一例を示す平面図であり、図2(b)は、同上部スクリーン2の断面図であり、図2(c)は、上部スクリーン2と給気口1との間に配設される下部スクリーン3の一例を示す平面図である。
【0035】
図2(a)、(b)に示すように、上部スクリーン2には、複数のスリット(貫通溝)2sが上部スクリーン2の全長に亘ってペレット移送方向Spに所定間隔L2をおいて並んで設けられている。ここでは、スリット2sは、その長手方向がペレット移送方向Spと直交し、実質的に樹脂ペレットの移送経路の全幅に渡るように設けられ、隣合うスリット2s、2s間の断面が楔形状(三角形)になっている。このような上部スクリーン2としてウェッジワイヤースクリーンを用いてもよい。なお、スリット2sの幅(貫通溝の溝幅)L1は、樹脂ペレットより小さい所定の寸法であり、樹脂ペレットがスリット2sを通過できない寸法(スリット2sから落下しない寸法)である。一例を挙げれば、直径3mm、高さ3mmの円柱状の樹脂ペレットに対し、スリット2sの幅L1は0.5mmであり、スリット2sの幅L1は樹脂ペレットの直径及び高さのいずれの寸法よりも小さい。
【0036】
また、下部スクリーン3には、図2(c)に示すように、例えば金属板の全面に複数の丸い貫通穴Hb、Hsが千鳥状に開けられた多孔金属板を用いている。ここでは、給気口1から送り込まれる加熱された空気(熱風)を上部スクリーン2の全面へほぼ均等に供給するために、下部スクリーン3を、上流部3aと中流部3cと下流部3bとの3つの領域に分け、上流及び下流部3a、3bの貫通穴Hbと中流部3cの貫通穴Hsとの穴径及び配置ピッチを異ならせている。すなわち、給気口1の直上及びその近傍領域(中流部3c)の貫通穴Hsと、それ以外の領域すなわち給気口1の直上から遠方の領域(上流及び下流部3a、3b)の貫通穴Hbとの穴径及び配置ピッチを異ならせている。しかしながら、この構成に限られるものではない。また、複数の貫通穴Hb、Hsの配置形状も千鳥状に限られるものではない。
【0037】
以上のように構成されたペレット乾燥装置の動作について説明する。
【0038】
このペレット乾燥装置の稼動中は、振動装置10と給気用ファン12及び排気用ファン25とを常時駆動する。振動装置10によって装置本体20が振動することによって上部スクリーン2も振動する。すなわち、ペレット供給口21から供給された樹脂ペレットは、上部スクリーン2上に載せられ、上部スクリーン2の振動によってペレット排出口22の方向へ移送される。ここで、上部スクリーン2が固定された装置本体20は前方斜め上方位置と後方斜め下方位置との間を往復するように振動する。
【0039】
また、給気用ファン12によって取り込んだ外気をヒータ13で昇温して装置本体20内へ送り込み、排気用ファン25によって装置本体20内の空気を吸い出して外部へ排出する。ここで、給気口1から装置本体20内へ送り込まれた空気は下部スクリーン3の貫通穴Hb、Hsを通過した後、さらに上部スクリーン2のスリット2sを通過して排気口24から吸い出されて排気用ファン25によって外部へ排出される。この際、装置本体20内へ送り込まれた空気は下部スクリーン3によって分散されて上部スクリーン2へ到達するので、上部スクリーン2の全面へほぼ均等に空気(熱風)Sa(図2(b))を送ることが可能になる。
【0040】
上部スクリーン2には、多数のスリット2sがペレット移送方向Spと直交し、かつ実質的に移送経路の全幅に亘って設けられているので、移送される樹脂ペレットがスリット2s上を必ず通過し、その際に、スリット2sから上昇する空気(熱風)に必ずさらされるので、樹脂ペレットを効率よく昇温及び乾燥させることができる。
【0041】
この効果を検証するための実験を行った。この実験では、上部スクリーン2には、その幅が200mm、長さ2850mmで、スリット2sの幅L1が0.5mmで、隣り合うスリット2sとスリット2sとの間隔L2が1.5mmのものを用いた。
【0042】
また、下部スクリーン3の幅及び長さは上部スクリーン2と同様である。下部スクリーン3は、その長さ方向に3等分に分割された領域(上流部3a、中流部3c及び下流部3b)を有している。上流及び下流部3a、3bは、その貫通穴Hbの直径が2mm、スクリーンの幅方向に隣接する貫通穴HbのピッチL3が3.5mm、スクリーンの長さ方向に隣接する貫通穴Hbの列のピッチL4が3mmであり、中流部3cは、その貫通穴Hsの直径が3mm、スクリーンの幅方向に隣接する貫通穴HsのピッチL5が5mm、スクリーンの長さ方向に隣接する貫通穴Hsの列のピッチL6が4.3mmであるものを用いた。
【0043】
そして、給気用ファン12及び排気用ファン25をインバータ制御することにより風量を調整して、上部スクリーン2のスリット2sを通過する風速が1.5〜3.0m/秒となるようにした。このスリット2sを通過する風速は、樹脂ペレットが飛び散らず、かつ加熱(昇温)効果が高くなるような風速(例えば上記のような風速)とするのが好ましい。
【0044】
この実験では、直径3mm、高さ3mmの円柱状の樹脂ペレットを予め用意し、定量供給装置を用いてペレット供給口21へ供給した。ここで用いた樹脂ペレットは、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)にガラス繊維を混入した繊維強化プラスチックから生成されたものである。
【0045】
定量供給装置によるペレット供給口21への樹脂ペレット供給量が毎時200kgで、ペレット供給口21へ供給される樹脂ペレットの温度が28℃の場合、ペレット排出口22から排出される樹脂ペレットの温度は131℃になった。また、樹脂ペレットの水分率は7.4%から0.14%になった。なお、装置本体20の給気口1での熱風温度は145℃であった。また、外気温度29.8℃、湿度62.5%であった。
【0046】
以上の実験結果に示すように、本実施形態のペレット乾燥装置を用いれば、樹脂ペレットを効率よく昇温及び乾燥させることができる。
【0047】
本実施形態では、樹脂ペレットを移送する上部スクリーン2に、空気の通路として、ペレット移送方向Spと直交する方向に長いスリット2sを設けている。このスリット2sを下方から加熱された空気が通過することによって上部スクリーン2上にエアーカーテン状(面状)の上昇気流(熱風)が形成され、樹脂ペレットはエアーカーテン状の熱風を横切って移送される。したがって、上部スクリーン2上を移送される樹脂ペレットは必ず熱風にさらされるため、樹脂ペレットを効率よく昇温及び乾燥させることができる。そのため、装置本体20のペレット移送方向Spの長さを短くし、装置の小型化を図ることが可能になる。
【0048】
本実施形態のペレット乾燥装置は、例えば、樹脂材料及び添加剤が溶融及び混錬されて押出機の先端から押し出されたストランド(ひも状樹脂)を、水中で冷却固化あるいは冷却水の散布により固化した後、ストランド切断装置で切断して生成される円柱状の樹脂ペレットを乾燥させる場合に用いることができる。この場合、ストランド切断装置で生成される樹脂ペレットが、ペレット供給口21へ供給され、上部スクリーン2上に形成されるエアーカーテン状(面状)の熱風によって樹脂ペレットの付着水分を効率よく除去し、乾燥させることができる。
【0049】
また、例えば貯留している樹脂ペレットを、成形に供する前に、乾燥させる場合に、本実施形態のペレット乾燥装置を用いることにより、樹脂ペレットに吸湿されている水分を効率よく除去し、乾燥させることができる。
【0050】
また、例えば貯留している非結晶(非晶質)状態の樹脂ペレットを、成形に供する前に、結晶化させる場合に、本実施形態のペレット乾燥装置を用いることができる。この場合、樹脂ペレットはガラス転移点を超えると融着しやすくなるが、ペレット供給口21から供給された樹脂ペレットは上部スクリーン2上を振動しながら移送されるため、樹脂ペレット同士が融着することなく、熱風により昇温されて樹脂ペレットの結晶化を行うことができる。例えば、PPSの樹脂ペレットの場合、熱風の温度を例えば140〜150℃程度とすることにより結晶化を行うことができる。
【0051】
なお、本実施形態では、上部スクリーン2として、図2(b)に示すように、隣接するスリット2s間の断面が楔形状であるものを用いたが、これに限られるものではなく、例えばスリット2s間の断面が長方形あるいは正方形であるものを用いてもよい。本実施形態のように、スリット2s間の断面を楔形状とすることにより、上部スクリーン2の下方の風速に対してスリット2sを通過するときの風速が速くなるので、給気用ファン12及び排気用ファン25の風量を小さくすることができる。
【0052】
また、スリット2sは必ずしもペレット移送方向Spと直交していなくてもよく、ペレット移送方向Spと交差する方向に延びたスリット、すなわちペレット移送方向Spと交差する方向に長いスリットとしてもよい。
【0053】
また、図2(d)に示すように、スリット2sがスクリーンの幅方向(ペレット移送方向Spと直交する方向)に複数に分割された上部スクリーン2aを用いてもよい。但し、ペレット移送方向Spに並んで隣接するスリット列の分割部分d1、d2が互いに隣接せず、できるだけ離れて配置されていることが樹脂ペレットの効率的な昇温及び乾燥を行う上で好ましい。すなわち、分割部分d1、d2ができるだけ離れて配置されていることにより、樹脂ペレットが分割部分d1、d2を連続して通過することなく、スリット2sからの熱風にさらされるので好ましい。
【0054】
また、本実施形態では、下部スクリーン3を、図2(c)に示すように、貫通穴(Hb、Hs)の大きさ及びその配置ピッチが異なる3つの領域(上流部3a、下流部3b、中流部3c)を有するように構成したが、熱風を上部スクリーン2の全面へほぼ均等に供給することができれば、上記構成に限られるものではない。例えば、下部スクリーン3の全ての貫通穴を同一の径及び配置ピッチとした場合でも、さらに他の手段を用いることによって、熱風を上部スクリーン2の全面へほぼ均等に供給することができれば、全ての貫通穴を同一の径としてもよい。上記他の手段としては、例えば、給気口1からペレット移送方向Spの上流側及び下流側へ熱風を案内する板(羽根板)等の手段が考えられる。また、羽根板等の手段を用いずに、下部スクリーン2の全ての貫通穴を同一の径及び配置ピッチとしても、給気口1をペレット移送方向Spに複数配設することによって、熱風を上部スクリーン2の全面へほぼ均等に供給するように構成することもできる。また、羽根板等の他の手段を設けるとともに、下部スクリーン3の貫通穴の大きさ、配置ピッチ等を領域(例えば上流部3a、下流部3b、中流部3c)によって変化させた構成としてもよい。また、下部スクリーン3の全ての貫通穴を同一の径とし、領域(例えば上流部3a、下流部3b、中流部3c)によって異なる配置ピッチとしてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、装置本体20に、1つの給気口1と2つの排気口24とを設けているが、これに限られない。なお、例えば給気口と排気口とが同一鉛直線上にあれば、給気口から吸い込まれた空気が排気口へ到達しやすく、広がりにくいので、給気口と排気口とが同一鉛直線上になく、ペレット移送方向(前後方向)Spにずれて配置されていることが好ましい。また、本実施形態では、装置本体20の給気口の個数より排気口の個数を多くしているが、排気口の個数より給気口の個数を多くしてもよい。また、給気口の個数と排気口の個数とが1個以上の同数であってもよい。例えば、小型の装置の場合には、給気口及び排気口のいずれも1個としてもよい。
【0056】
なお、本実施形態では、上部スクリーン2が固定されている装置本体20を振動させることにより、上部スクリーン2を振動させて樹脂ペレットを移送するようにしたが、上部スクリーン2を装置本体20から分離し、上部スクリーン2のみを振動させて樹脂ペレットを移送するように構成してもよい。
【0057】
また、本実施形態において、給気用ファン12および排気用ファン24の風量、ヒータ13の加熱温度、及び振動装置10の振動周波数及び振幅等は調整可能である。また、例えば、給気ボックス15内の温度あるいは給気口1内の温度を検出する温度センサを設け、装置本体20内へ送り込む空気の温度が所望の温度となるように、ヒータ13の加熱温度等を調整するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明にかかるペレット乾燥装置は、樹脂ペレットを効率よく昇温させるための装置等として有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 給気口
2 上部スクリーン
2s スリット
3 下部スクリーン
Hb,Hs 貫通穴
24 排気口
10 振動装置
12 給気用ファン
13 ヒータ
15 給気ボックス
20 装置本体
21 ペレット供給口
22 ペレット排出口
25 排気用ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に樹脂ペレットが供給され、振動させられることによって前記樹脂ペレットを前記一端から他端へ移送するとともに、この移送する方向である移送方向と交差する方向に延びる貫通溝が前記移送方向に並んで複数形成されたペレット移送板と、
前記樹脂ペレットを前記移送方向に移送させるように前記ペレット移送板を振動させる振動装置と、
前記樹脂ペレットを昇温させるための空気を、前記ペレット移送板の前記貫通溝に下から上に向けて流すための気流発生手段と
を備えたペレット乾燥装置。
【請求項2】
前記気流発生手段は、
前記ペレット移送板を内部に保持し、一端に前記ペレット移送板上に樹脂ペレットが供給されるためのペレット供給口を有するとともに他端に前記ペレット移送板の他端へ移送された樹脂ペレットを排出するためのペレット排出口とを有する筐体と、
前記筐体の下部に設けられた開口部からなり、加熱された空気を前記筐体内へ送り込むための給気口と、
前記筐体の上部に設けられた開口部からなり、前記筐体内の空気を吸い出すための排気口とを有する、請求項1に記載のペレット乾燥装置。
【請求項3】
前記気流発生手段は、さらに、
前記給気口に接続され、前記給気口を介して前記筐体内へ加熱された空気を送り込む給気手段と、
前記排気口に接続され、前記排気口から前記筐体内の空気を吸い出して外部へ排出する排気手段とを有する、請求項2に記載のペレット乾燥装置。
【請求項4】
前記筐体の内部で、前記ペレット移送板の下方にかつ前記給気口の上方に前記ペレット移送板と対向して配設され、複数の貫通穴を有する気流分散板をさらに備えた、請求項2または3に記載のペレット乾燥装置。
【請求項5】
前記給気口と前記排気口とのうちの少なくとも一方が複数設けられ、かつ前記給気口と前記排気口とが前記移送方向にずれて配置されている、請求項2または3に記載のペレット乾燥装置。
【請求項6】
前記ペレット移送板の複数の前記貫通溝は、前記ペレット移送板の全長に亘って前記移送方向に所定間隔をおいて並んで形成されている、請求項1に記載のペレット乾燥装置。
【請求項7】
前記ペレット移送板の各々の前記貫通溝は、前記移送方向と直交する方向に延びて、前記樹脂ペレットが移送される経路の実質全幅に亘って形成されている、請求項1に記載のペレット乾燥装置。
【請求項8】
前記ペレット移送板は、前記移送方向に隣接する前記貫通溝と前記貫通溝との間の断面が楔形状である、請求項1に記載のペレット乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−206443(P2012−206443A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75005(P2011−75005)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(391046078)株式会社タナカ (3)
【Fターム(参考)】