説明

ペンシル

本発明は、芯(14)と、この芯(14)の少なくとも一部分を収容するカートリッジ(12)と、上記芯の整形手段(28,36)を有する保護キャップ(16)とを備えたペンシルに関する。本発明によれば、上記保護キャップ(16)を上記カートリッジ(12)に被せる操作に応答して、上記芯をカートリッジ(12)に対して軸線方向に変位させる手段(20,22)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯と、この芯の少なくとも一部分を収容するカートリッジと、上記芯の整形手段を備えた保護キャップとを有するペンシルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述の種類のペンシルは、例えば特許文献1によって知られている。それによると、芯を整形するための手段が、芯の先端を尖らせる形式のものとして構成されている。芯を尖らせる動作は、芯削り器を内蔵したキャップを被せた後に、二つのスリーブ部分を相対的に回転させ、これにより芯に対する回転動作を生じさせることによって行なわれる。回転作用による芯の前進動作は滑りクラッチにより制限される。
【0003】
特許文献2には、ペンシルのための、芯削り器を組み込んだ保護キャップおよび柄部を備えた鉛筆が開示されている。芯削り器を備えた保護キャップに対して柄部を回転させると、ストッパに達するまで鉛筆の前進運動が行なわれる。したがって、この前進運動は、所定の距離に制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許発明第196 16 613 C1号明細書
【特許文献2】米国特許第2,514,761号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、その取扱いが簡単な、冒頭部分で説明された種類のペンシルの開発にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、保護キャップをカートリッジに被せる操作に応答して上記芯を上記カートリッジに対して軸線方向に変位させる手段が提供される。
【0007】
したがって本発明によれば、芯を整形するのに必要な前進運動が、さらなる対策を必要とすることなく、単に保護キャップをカートリッジに被せるだけで自動的になされる。かくして、取扱いが簡単になる。
【0008】
上記芯の整形動作は、上記保護キャップを上記カートリッジに被せる操作と無関係に行なうことができる。しかしながら、本発明によれば、保護キャップがカートリッジに被せられる操作に応答して芯を整形する手段が好ましい。換言すれば、保護キャップがカートリッジに被せられるときに二通りの動作が行なわれる。一方では芯がカートリッジに対して軸線方向へ変位され、他方では芯の先端が尖らせられる。これらの二つの動作は、必ずしも同時に行なわれる必要はない。むしろ、最初に芯が軸線方向へ変位され、次に保護キャップを被せる操作の第2段階において、芯の整形が行なわれる。
【0009】
本発明によれば、上記保護キャップを被せる操作が押込みおよび/または螺着である。
【0010】
本発明によれば、上記整形動作が上記芯の切断および/または芯の先端を尖らすことを含む。
【0011】
本発明の特に好ましい実施の形態によれば、上記芯を変位させる手段は、上記芯を上記カートリッジから押し出す方向に(限定して)作用する。このことは、芯の先端が丸くなった後に、上記保護キャップが上記カートリッジに単純に被せられることにより、上記芯が上記カートリッジの前端から常に或る長さだけ突出することを保証する。
【0012】
さらに好ましい実施の形態によれば、上記整形手段と同調させることができるように、上記芯の変位を所定の距離に制限する手段を備えており、上記保護キャップを上記カートリッジに被せ(そしてこの保護キャップを再び取り外すと、上記芯の規定された作用領域が提供される。
【0013】
本発明の実施の形態によれば、上記制限手段は、上記カートリッジ上に形成されたストッパであることが好ましい。これは、特に簡単な解決手段を提供する。
【0014】
上記距離は0.5mmと1.1mmとの間であることが効果的であり、好ましくは0.6mmと1.0mmとの間、より好ましくは、0.7mmと0.9mmとの間である。
【0015】
本発明のペンシルによれば、上記カートリッジを軸線方向に変位可能に支持する柄部と、上記芯が上記カートリッジから押し出されるのは許容するが、この芯が上記カートリッジ内へ押し込まれるのは阻止する態様で、上記芯を上記柄部に結合する第1の一方向クラッチとを備えていることが好ましい。
【0016】
さらに好ましい実施の形態においては、上記芯が上記カートリッジから押し出されるのは許容するが、この芯が上記カートリッジ内へ押し込まれるのは阻止する態様で、上記カートリッジを上記芯に結合する第2の一方向クラッチを備えている。
【0017】
上記第1および/または第2の一方向クラッチが戻り止め爪機構を備えることができる。これは、特に機構的に簡単な解決手段である。
【0018】
本発明によれば、上記柄部に対して上記カートリッジを付勢する手段を備えていることが好ましい。この構成により、上記芯の前進動作の後に、上記カートリッジはその最初の位置に自動的に復帰することができる。
【0019】
本発明によれば、上記保護キャップが、上記芯を切断および/または先端を尖らすことによって整形するための少なくとも1枚の刃を備えていることがさらに好ましい。
【0020】
その場合に、本発明の好ましい特徴においては、上記刃が、上記芯の軸線方向の弾性復帰力に抗して撓むことができるものである。これにより、上記切断/芯尖らし動作における過大な軸線方向の力を防止することができる。
【0021】
しかしながら、上記刃は、弾性復帰力に抗して向きを変えおよび/または変形することも可能である。
【0022】
本発明の特に好ましい実施の形態においては、上記保護キャップは少なくとも1枚の案内テンプレートを備えている。この案内テンプレートは、上記芯を所定の切断径路に沿って切断する機能を有する。
【0023】
本発明の特に好ましい実施の形態においては、再度過大な軸線方向の力を吸収するために、上前記案内テンプレートが、上記芯の軸線方向の弾性復帰力に抗して撓むことができる。
【0024】
上記芯の整形手段は、待機位置においては上記芯に対し何等の力をも行使しないことが好ましい。より具体的に言えば、上記芯の整形後であっても、例えば長時間の貯蔵、または高い温度において、この芯に対して圧力が継続的に印加されていると、再び芯の先端が潰れたり、摘まれたりする結果となる。
【0025】
特に上述の理由により、本発明によれば、上記芯の整形手段が、待機位置において当接する軸線方向のストッパを備えていることが好ましい。すなわち、上記芯の整形手段は、待機位置において上記芯に対して何等の力をも行使しないことになる。
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明の複数の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1(a)〜(d)は、本発明の第1の実施の形態によるペンシルの種々の動作状態を示す縦断面図である。
【図2】図2(a)〜(d)は、本発明の第2の実施の形態によるペンシルの図1と同様の縦断面図である。
【図3】図3(a)〜(d)は、本発明の第3の実施の形態によるペンシルの図1および図2と同様の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に示されているペンシルは、柄部10、カートリッジ12、棒状体すなわち芯14、ねじ溝18によって柄部10に螺着可能な保護キャップ16、心棒20、第1の戻り止め爪機構22、第2の戻り止め爪機構24、第1のコイルスプリング26、芯削り器28および第2のコイルスプリング30を備えている。
【0029】
図1に示されたペンシルは下記のように動作する。すなわち、
図1(a)は先が丸くなった芯14を備えたペンシルを示す。芯を尖らすために、図1(b)に示されているように、保護キャップ16が柄部10に螺着される。ねじ溝18はこの目的に役立つ。保護キャップ16が、図1(b)に示されている動作位置からさらに柄部10内へ螺入されると、保護キャップ16は若干の螺入動作の後にカートリッジ12上のストッパ32に当接し、このストッパ32が柄部10に当接するまでカートリッジ12を柄部10に押し込む。その結果、カートリッジ12は、図示の実施の形態においては0.8mmである距離Mだけ変位される。
【0030】
戻り止め爪機構22が心棒20に食い込んでいるために、心棒20も芯14もカートリッジ12と共には変位されない。むしろ心棒20は、カートリッジ12から芯14を、具体的には距離Mだけ押し出す。
【0031】
芯削り器28は保護キャップ16とともに移動するので、すなわち芯削り器28は、一方では回転せしめられ、他方では図の左方へ移動せしめられるので、芯14が尖らされる。芯削り器28が過剰な圧力を芯14に与えるのを防止するために、芯削り器28はコイルスプリング30を用いて支持されている。したがって、芯削り器28は図の右方へ退避することができる。
【0032】
図示のように、保護キャップ16を柄部10に螺着して図1(c)に示されている位置に螺入するだけで、芯14の先端が尖らされる。
【0033】
ここで、保護キャップ30を柄部10から螺脱させると、戻り止め爪機構24を心棒20に押し付けているスプリング26が芯14およびカートリッジ12を再び柄部10の外へ押出して、図1(a)に示されている動作状態に復帰させるが、この場合は、芯14が尖らされ、かつ距離Mだけカートリッジ12から突出している点が図1(a)とは異なっている。
【0034】
図2に示されている実施の形態は、図1に示されている実施の形態とほぼ類似しているが、芯削り器28に代えて、案内テンプレート34および可撓性を有する刃36が予め備えられている。これに加えて、保護キャップ16を柄部10に螺着するためのねじ溝も設けられておらず、保護キャップ16は柄部10に押し込むことができる。
【0035】
図2に示された実施の形態は下記のように動作する。すなわち、
図2(a)には先が丸くなった芯14を備えたペンシルが再度示されている。保護キャップ16が柄部10に押し込まれると、案内テンプレート34はストッパ32に当接する。この状態は図2(b)に示されている。保護キャップ16がさらに柄部10に押し込まれると、案内テンプレート34がストッパ32を介してカートリッジ12を柄部10内に押し込む。これに反して、心棒20および芯14は、戻り止め爪機構22があるために変位されない。反対にコイルスプリング26が圧縮される。
【0036】
保護キャップ16は、ストッパ32が柄部10に当接すると、保護キャップ16は、案内テンプレート34に対して図の左方へ移動する。その結果、図2(c)に示されているように、その移動の分だけ案内テンプレート34から突出している芯14を刃36が横切るように案内テンプレート34に沿って摺動する。その結果、芯14が斜めに切断される。この状態では、圧縮されているコイルスプリング38によって案内テンプレート34が支えられている。それによって、芯14の先端が修復される。
【0037】
その後、保護キャップ16が柄部10から取り外されると、ペンシルは図2(d)に示されている状態となる。そのため、コイルスプリング26は、戻り止め爪機構24を押圧して、心棒20および芯14をカートリッジ12の外方へ距離Mだけ突出させ、芯14の先がもはや丸くないことを除いては、図2(a)に示された状態になる。
【0038】
したがって、図2の実施の形態も、保護キャップ16を柄部10に押し込むだけで、芯14の先端が適当に整形される。
【0039】
図3に示された実施の形態は下記のように動作する。すなわち、
図3(a)は先が丸くなった芯14を備えたペンシルを再度示している。保護キャップ16が柄部10に押し込まれると、保護キャップ16がストッパ32に当接する。この状態が図3(b)に示されている。保護キャップ16をさらに柄部10内に押し込むと、カートリッジ12はストッパ32を介して柄部10内に押し込まれる。これに反して、心棒20および芯14は、戻り止め爪機構22があるために変位されない。反対にコイルスプリング26が付勢される。
【0040】
保護キャップ16は、ストッパ32が柄部10に当接するまで柄部10に押し込まれることができる。この状態は図3(c)に示されている。しかしながら図3(c)における図は、ノブ40が押されている点で図3(b)に示されたものと異なっている。ノブ40を押すと、刃36が案内テンプレート34に沿って摺動することによって、刃36が芯14の先端を切断する。この場合はコイルスプリング42が圧縮され、ノブ40が解放されたときに、刃36を元の位置に復帰させる。
【0041】
芯14の先端が切断された後、保護キャップ16が柄部10から取り外されると、ペンシルは図3(d)に示されている状態となる。そのため、コイルスプリング26は、戻り止め爪機構24を押圧して、心棒20および芯14をカートリッジ12の外方へ距離Mだけ突出させ、芯14の先がもはや丸くないことを除いては、図3(a)に示された状態になる。
【0042】
上述の説明が示しているように、図3の実施の形態においては、保護キャップ16を柄部10に押し込むだけで、整形のために芯14をカートリッジ12の内部で変位させることができる。
【0043】
上述の説明、請求項および図面において開示された本発明の特徴は、個々においても、組合せにおいても、本発明を種々の実施の形態において実施するために、基本的なものとすることができる。
【符号の説明】
【0044】
10 柄部
12 カートリッジ
14 芯
16 保護キャップ
18 ねじ溝
20 心棒
22 第1の戻り止め爪機構
24 第2の戻り止め爪機構
26,30,38,42 コイルスプリング
28 芯削り器
32 ストッパ
34 案内テンプレート
36 刃
40 ノブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯(14)と、
該芯(14)の少なくとも一部分を収容するカートリッジ(12)と、
前記芯の整形手段(28,36)を備えた保護キャップ(16)と、
を有するペンシルにおいて、
前記保護キャップ(16)を前記カートリッジ(12)に被せる操作に応答して、前記芯を前記カートリッジに対して軸線方向に変位させる手段(20,22)を備えていることを特徴とするペンシル。
【請求項2】
前記芯の整形手段(28,36)は、前記保護キャップを前記カートリッジに被せる操作に応答するものであることを特徴とする請求項1記載のペンシル。
【請求項3】
前記保護キャップを被せる操作が押込みおよび/または螺着であることを特徴とする請求項1または2記載のペンシル。
【請求項4】
前記整形動作が切断および/または先端を尖らすことであることを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載のペンシル。
【請求項5】
前記芯を変位させる手段(20,22)は、前記芯(14)を前記カートリッジ(12)から押し出す方向に作用することを特徴とする請求項1から4の何れか1項記載のペンシル。
【請求項6】
前記変位を所定の距離Mに制限する手段(32)を備えていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項記載のペンシル。
【請求項7】
前記制限手段(32)が前記カートリッジ(12)上に形成されたストッパであることを特徴とする請求項6記載のペンシル。
【請求項8】
前記距離Mが0.5mmと1.1mmとの間であることを特徴とする請求項6または7記載のペンシル。
【請求項9】
前記カートリッジ(12)を軸線方向に変位可能に支持する柄部(10)と、
前記芯(14)が前記カートリッジ(12)から押し出されるのは許容するが、前記芯(14)が前記カートリッジ(12)内へ押し込まれるのは阻止する態様で、前記芯(14)を前記柄部(10)に結合する第1の一方向クラッチ(22)と、
を備えていることを特徴とする請求項1から8の何れか1項記載のペンシル。
【請求項10】
前記芯(14)が前記カートリッジ(12)から押し出されるのは許容するが、前記芯(14)が前記カートリッジ(12)内へ押し込まれるのは阻止する態様で、前記カートリッジ(12)を前記芯(14)に結合する第2の一方向クラッチ(24)を備えていることを特徴とする請求項1から9の何れか1項記載のペンシル。
【請求項11】
前記第1および/または第2の一方向クラッチ(22,24)が戻り止め爪機構を備えていることを特徴とする請求項9または10記載のペンシル。
【請求項12】
前記カートリッジ(12)を前記柄部(10)に対して付勢する手段(26)を備えていることを特徴とする請求項9から11の何れか1項記載のペンシル。
【請求項13】
前記保護キャップ(16)が、前記芯(14)を切断および/または先端を尖らすことによって整形するための少なくとも1枚の刃(36)を備えていることを特徴とする請求項1から12の何れか1項記載のペンシル。
【請求項14】
前記刃(36)は、前記芯(14)の軸線方向の弾性復帰力に抗して撓むことができるものであることを特徴とする請求項13記載のペンシル。
【請求項15】
前記刃(36)は、弾性復帰力に抗して向きを変えおよび/または変形することが可能であることを特徴とする請求項13または14記載のペンシル。
【請求項16】
前記保護キャップ(16)は少なくとも1枚の案内テンプレート(34)を備えていることを特徴とする請求項1から15の何れか1項記載のペンシル。
【請求項17】
前記案内テンプレート(34)は、前記芯(14)の軸線方向の弾性復帰力に抗して撓むことができるものであることを特徴とする請求項16記載のペンシル。
【請求項18】
前記芯の整形手段(28,36)は、待機位置においては前記芯(14)に対し力を行使しないことを特徴とする請求項1から17の何れか1項記載のペンシル。
【請求項19】
待機姿勢における前記芯の整形手段(28)に当接する軸線方向のストッパ(32)を備えていることを特徴とする請求項1から18の何れか1項記載のペンシル。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図2(d)】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図3(c)】
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【図3(d)】
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【公表番号】特表2011−502662(P2011−502662A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533476(P2010−533476)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009398
【国際公開番号】WO2009/062633
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(597139631)シュヴァン−スタビロ コスメティクス ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー (15)
【Fターム(参考)】