説明

ペースト充填装置およびこれを用いたペースト充填方法

【課題】ペースト充填装置(自公転ミキサ)により被充填容器にペーストを充填する際に、ノズルの外周面と当該ノズルに装着された被充填容器の内周面の隙間にペーストが浸入してしまうことを防止し、充填終了後、被充填容器をノズルから引き抜く際には、被充填容器の内周面をペーストで汚すことのない、ペースト充填装置およびこれを用いたペースト充填方法を提供することを目的とする。
【解決手段】自転しながら公転するペースト攪拌容器と、前記ペースト攪拌容器下部に配設され、該攪拌容器内のペーストを被充填容器に充填するためのノズルと、前記ノズルに配設され、該ノズルの外周面と該ノズルに装着された前記被充填容器の内周面との隙間を封止、開放することが可能な封止開放部材とを少なくとも備えるペースト充填装置、ならびに当該装置を用い、ペースト充填時には、前記封止開放部材により前記隙間を封止し、ペースト充填前後には、前記隙間を開放することを特徴とするペースト充填方法により上記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心力を利用してペーストを攪拌、充填するペースト充填装置およびペースト充填方法に関し、さらに詳細には、自公転ミキサによるペースト充填時、充填ノズルと被充填容器が重なる側面の隙間にペーストが漏れて付着してしまうことを防止することが可能なペースト充填装置およびペースト充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペースト充填装置(自公転ミキサ)は、図1に示すように、自転しながら公転することによりペーストの攪拌を行うペースト攪拌容器11と、当該ペースト攪拌容器11下部に配設され、攪拌容器11内のペーストを被充填容器21に充填するためのノズル12とを少なくとも備え、ペースト充填時には、攪拌容器11を自公転させることにより発生する遠心力を利用して、攪拌容器11内のペースト13をノズル12を介して被充填容器21に充填する。このとき、ペースト13は被充填容器21に挿入されたノズル12の終端位置まで充填される。
【特許文献1】特開2003−201000号公報
【特許文献2】特開2005−81341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、ノズルの外周面と当該ノズルに装着された被充填容器の内周面に僅かな隙間が存在する場合には、図3に示すように、ペースト充填時、その隙間14にペーストが浸入してしまうため、充填精度が低下するばかりでなく、ノズル外周面や被充填容器の内周面がペーストにより汚れてしまう。また、図4に示すように、上記のような隙間が全くない場合には、ペースト充填後にノズルを引き抜く際、被充填容器の内周面がペーストにより汚れてしまう。
【0004】
上記を鑑みて、本発明は、ペースト充填装置により被充填容器にペーストを充填する際に、ノズルの外周面と当該ノズルに装着された被充填容器の内周面の隙間にペーストが浸入してしまうことを防止し、充填終了後、被充填容器をノズルから引き抜く際には、被充填容器の内周面をペーストで汚すことのない、ペースト充填装置およびこれを用いたペースト充填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、鋭意検討した結果、ペースト充填装置の充填ノズルの外周面に、当該ノズルの外周面と当該ノズルに装着された被充填容器の内周面の隙間を必要に応じて自在に封止、開放することが可能な封止開放部材を配設することにより、上記課題を解決することが可能であることを見出し、本発明を為すに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(11)に記載の事項をその特徴とするものである。
【0007】
(1)自転しながら公転するペースト攪拌容器と、前記ペースト攪拌容器下部に配設され、該攪拌容器内のペーストを被充填容器に充填するためのノズルと、前記ノズルに配設され、該ノズルの外周面と該ノズルに装着された前記被充填容器の内周面との隙間を封止、開放することが可能な封止開放部材と、を少なくとも備えることを特徴とするペースト充填装置。
【0008】
(2)前記封止開放部材が、前記ノズルの終端部外周面に配設されることを特徴とする上記(1)に記載のペースト充填装置。
【0009】
(3)前記封止開放部材が、弾性体であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のペースト充填装置。
【0010】
(4)前記弾性体が、前記ノズルの外周面を覆うように配設可能なリング状の部材であることを特徴とする上記(3)に記載のペースト充填装置。
【0011】
(5)前記隙間を封止するように前記弾性体を押圧して変形させることが可能な押圧部材をさらに備えることを特徴とする上記(3)または(4)に記載のペースト充填装置。
【0012】
(6)前記押圧部材が、前記ノズルの外周面を覆うように前記弾性体の上方に配設される筒状の部材であることを特徴とする上記(5)に記載のペースト充填装置。
【0013】
(7)前記ペースト攪拌容器内のペーストが前記被充填容器に充填されるまでの間に通過する経路内に、該ペーストをろ過するためのフィルターを1つ以上備えることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載のペースト充填装置。
【0014】
(8)前記ペースト攪拌容器下部に、ペーストを複数のノズルに分配するための分配器をさらに備えることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載のペースト充填装置。
【0015】
(9)前記分配器が、その内部にフィルターを備えることを特徴とする上記(8)に記載のペースト充填装置。
【0016】
(10)上記(1)〜(9)のいずれかに記載のペースト充填装置を用いてペーストを充填する方法であって、ペースト充填時には、前記封止開放部材により前記隙間を封止し、ペースト充填前後には、前記隙間を開放することを特徴とするペースト充填方法。
【0017】
(11)自転しながら公転するペースト攪拌容器の下部に、弾性体および該弾性体の上方に配置された押圧部材がそれぞれ外周面に配設されたノズルと、被充填容器と、を装着する工程、前記押圧部材の上方に楔を前記ノズルに対して略垂直に打ち込んで該押圧部材を下方に押し下げて前記弾性体を押圧し、該弾性体を変形させることで、前記ノズルの外周面と該ノズルに装着された前記被充填容器の内周面との隙間を封止する工程、前記ペースト攪拌容器を自公転させ、それにより発生する遠心力を利用して、該攪拌容器内のペーストを、前記ノズルを介して前記被充填容器に充填する工程、前記楔を抜くことで前記弾性体に対する押圧を解除し、前記隙間を開放する工程、およびペーストが充填された前記被充填容器を前記ノズルから離脱させる工程、を有することを特徴とするペースト充填方法。
【0018】
なお、本発明において充填対象となる「ペースト」は、液状もしくは半固体状の流動物であればよく、特に限定されないが、上記本発明の充填装置や充填方法は、例えば、一般的なエポキシ樹脂等の樹脂組成物、顔料組成物などに好適に用いられ、また、フィラー含有樹脂組成物にも好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のペースト充填装置およびこれを用いたペースト充填方法によれば、被充填容器にペーストを充填する際、ノズルの外周面と当該ノズルに装着された被充填容器の内周面の隙間を封止開放部材により封止することができるため、当該隙間へのペーストの浸入を防止することができ、その結果、被充填容器の内周面をペーストで汚してしまうことを防ぐことができ、充填量のバラツキを抑えることも可能である。また、充填終了後に被充填容器をノズルから引き抜く際には、封止された上記隙間を開放し、ノズル外周面と被充填容器の内周面が擦れないようにすることができるため、被充填容器の内周面をペーストで汚してしまうことを防ぐことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明のペースト充填装置は、自転しながら公転するペースト攪拌容器と、前記ペースト攪拌容器下部に配設され、該攪拌容器内のペーストを被充填容器に充填する(導く)ためのノズルと、前記ノズルに配設され、該ノズルの外周面と該ノズルに装着された前記被充填容器の内周面との隙間を封止、開放することが可能な封止開放部材と、を少なくとも備えることをその特徴とするものである。なお、本発明における上記ペースト攪拌容器やノズルは、特許文献1や2等に例示される公知のペースト充填装置と同様のものを用いることができ、また、公知のペースト充填装置に適用可能な他の部材、例えば、ペーストを複数のノズルに分配するための分配器(図1の16)やペーストをろ過するためのフィルターなどを備えていてもよい。
【0021】
上記分配器を用いる場合には、上記ペースト攪拌容器下部にこれを配設し、さらに当該分配器の下部所定位置に複数のノズルを配設することになる。また、上記フィルターの設置位置は、分配器やノズルの内部など、ペースト攪拌容器内のペーストが被充填容器に充填されるまでの間に通過する経路内であればよく、また、その設置数は特に限定されないが、上記分配器を用いる場合には、図2に示すように、分配器16内部にフィルター20が設置されていることが好ましく、これにより、1つのフィルターで複数のノズルに分配される前のペーストをろ過することができる。
【0022】
また、本発明のペースト充填装置は、ペースト攪拌容器の自公転により発生する遠心力を利用して、当該容器内ペーストを被充填容器に移送、充填するものであるが、効率的かつ効果的なペーストの移送、充填のために、ペースト攪拌容器内に、上記遠心力によって当該容器内のペーストをノズルに向って押出すように動くピストン(例えば、図1の111)を備えていてもよい。このピストンの形状や大きさは、ペースト攪拌容器内の形状や大きさ等に応じて適宜決定すればよく、特に限定されないが、ペースト攪拌容器内のペーストを最後まで残らず押出すことが可能な形状・大きさであることが好ましい。
【0023】
本発明における上記封止開放部材は、上記ノズルに配設されるものであり、ペースト充填時には、該ノズルの外周面と該ノズルに装着された前記被充填容器の内周面との隙間を封止して、被充填容器に充填されたペーストが上記隙間に浸入するのを防ぎ、ペースト充填前後、被充填容器をノズルに装着もしくはノズルから離脱させる際には、上記隙間を開放して、ノズル外周面と被充填容器内周面とが擦れないようにすることが可能な部材である。なお、上記封止開放部材は、上記ノズルの終端部外周面(図1の121)に配設されることが好ましい。
【0024】
上記のような封止開放部材としては、適当な手段により上記隙間を塞いだり、開けたりすることが可能なものであればよく、特に限定されないが、例えば、外力等により変形するゴム等の弾性体、加熱冷却により膨張収縮する素材からなる成形部材、気体の流出入により膨張収縮するバルーン、機械的もしくは電気的に作動するフラップ状部材などを挙げることができる。コストや作業性の観点からは、上記封止開放部材がゴム等の弾性体であることが好ましく、これを外力等により変形させることで、上記隙間の封止、開放を行う。なお、封止開放部材の大きさや形状は、ノズルおよび被充填容器の大きさや形状等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、例えば、封止開放部材がゴム等の弾性体である場合には、当該弾性体は、ノズルに密着するように挿入して配設するための穴を略中心部に有し、前記ノズルの外周面を覆うように配設可能なリング状のものであることが好ましく、また、その最大径(変形前外周)は、被充填容器の内周径よりも小さいことが好ましい。
【0025】
また、上記封止開放部材としてゴム等の弾性体を用いる場合、これに外力を加えて変形させる手段は特に限定されないが、例えば、本発明のペースト充填装置に、上記隙間を封止するように当該弾性体を押圧して変形させることが可能な押圧部材を配設することが好ましい。より具体的には、例えば、筒状の押圧部材を、ノズルの外周面を覆うように弾性体の上方に配設し、該押圧部材により下方にある弾性体を押圧することで該弾性体を変形させて(押し潰して横方向に延伸させて)上記隙間を封止し、一方、上記封止された隙間を開放する場合には、この押圧を解除し、弾性体を元の形状に戻すことにより行うことが好ましい。図5には、ノズル挿入用の穴を中心部に有するリング形状の弾性体17と円筒形状の押圧部材18をノズル12に順次配設した状態の一実施形態を示す。また、この時のノズル12終端部には、弾性体が遠心力や押圧によりノズルから外れないようにするための弾性体固定部(ストッパー)122が形成されていることが望ましい。また、このような押圧部材18により弾性体17を押圧する方法としては、特に限定されないが、例えば、該押圧部材18の上方に楔をノズル12に対して略垂直に打ち込みこれを下方に押し下げることで可能である。
【0026】
本発明のペースト充填方法は、上記本発明のペースト充填装置を用い、ペースト充填時には、上記封止開放部材により上記隙間を封止し、ペースト充填前後には、上記隙間を開放することをその特徴とするものである。図6(a)〜(d)には、図5に示すような、弾性体17と押圧部材18を備えるノズル12を用い、当該弾性体17を上記押圧部材18と楔19を用いて変形させ、上記隙間を封止、開放する場合におけるペースト充填工程の一実施形態の概略図を示す。つまり、図6(a)は、弾性体17および押圧部材18を備える上記本発明のペースト充填装置のノズル12に被充填容器21を装着する工程、図6(b)は、押圧部材18の上方に楔19をノズル12に対して略垂直に打ち込んで該押圧部材18を下方に押し下げて弾性体17を押圧し、該弾性体17を変形させることで上記隙間を封止する工程、図6(c)は、ペースト攪拌容器を自公転させ、それにより発生する遠心力を利用して、該攪拌容器内のペースト13をノズル12を介して被充填容器21に充填した後に、上記楔19を抜くことで弾性体17に対する押圧を解除し、上記隙間を開放する工程、図6(d)は、ペースト13が充填された被充填容器21をノズル12から離脱させる工程をそれぞれ示している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】一般的なペースト充填装置(自公転ミキサ)の構造を示す概略図。
【図2】分配器内にフィルターを設置した状態の一実施形態を示す断面図。
【図3】ペーストがノズルと被充填容器の隙間に浸入した状態を示す断面図。
【図4】ペーストにより被充填容器の内周面が汚れている状態を示す断面図。
【図5】封止開放部材である弾性体とこれを押圧するための押圧部材を備える本発明のノズルの一実施形態を示す概略図。
【図6】本発明のペースト充填工程の一実施形態を示す断面図。
【符号の説明】
【0028】
1 ペースト充填装置(自公転ミキサ)
11 ペースト攪拌容器
111 ピストン
12 ノズル
121 ノズルの終端部外周面
122 弾性体固定部
13 ペースト
14 ペーストが浸入している隙間
15 ペーストにより汚れている箇所(被充填容器内周面)
16 分配器
17 弾性体(封止開放部材)
18 円筒状の押圧部材
19 楔
20 フィルター
21 被充填容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転しながら公転するペースト攪拌容器と、
前記ペースト攪拌容器下部に配設され、該攪拌容器内のペーストを被充填容器に充填するためのノズルと、
前記ノズルに配設され、該ノズルの外周面と該ノズルに装着された前記被充填容器の内周面との隙間を封止、開放することが可能な封止開放部材と、
を少なくとも備えることを特徴とするペースト充填装置。
【請求項2】
前記封止開放部材が、前記ノズルの終端部外周面に配設されることを特徴とする請求項1に記載のペースト充填装置。
【請求項3】
前記封止開放部材が、弾性体であることを特徴とする請求項1または2に記載のペースト充填装置。
【請求項4】
前記弾性体が、前記ノズルの外周面を覆うように配設可能なリング状の部材であることを特徴とする請求項3に記載のペースト充填装置。
【請求項5】
前記隙間を封止するように前記弾性体を押圧して変形させることが可能な押圧部材をさらに備えることを特徴とする請求項3または4に記載のペースト充填装置。
【請求項6】
前記押圧部材が、前記ノズルの外周面を覆うように前記弾性体の上方に配設される筒状の部材であることを特徴とする請求項5に記載のペースト充填装置。
【請求項7】
前記ペースト攪拌容器内のペーストが前記被充填容器に充填されるまでの間に通過する経路内に、該ペーストをろ過するためのフィルターを1つ以上備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のペースト充填装置。
【請求項8】
前記ペースト攪拌容器下部に、ペーストを複数のノズルに分配するための分配器をさらに備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のペースト充填装置。
【請求項9】
前記分配器が、その内部にフィルターを備えることを特徴とする請求項8に記載のペースト充填装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のペースト充填装置を用いてペーストを充填する方法であって、ペースト充填時には、前記封止開放部材により前記隙間を封止し、ペースト充填前後には、前記隙間を開放することを特徴とするペースト充填方法。
【請求項11】
自転しながら公転するペースト攪拌容器の下部に、弾性体および該弾性体の上方に配置された押圧部材がそれぞれ外周面に配設されたノズルと、被充填容器と、を装着する工程、
前記押圧部材の上方に楔を前記ノズルに対して略垂直に打ち込んで該押圧部材を下方に押し下げて前記弾性体を押圧し、該弾性体を変形させることで、前記ノズルの外周面と該ノズルに装着された前記被充填容器の内周面との隙間を封止する工程、
前記ペースト攪拌容器を自公転させ、それにより発生する遠心力を利用して、該攪拌容器内のペーストを、前記ノズルを介して前記被充填容器に充填する工程、
前記楔を抜くことで前記弾性体に対する押圧を解除し、前記隙間を開放する工程、および
ペーストが充填された前記被充填容器を前記ノズルから離脱させる工程、
を有することを特徴とするペースト充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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