説明

ペースト特性測定方法とそのペースト特性測定機

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特願平3−353826号(以下、これを本発明者の先願発明という)の改良に関するもので、高密度表面実装化基板を達成するための従来の概念を変えたプリント基板等の基板(以下、これらを単にプリント基板という)へ(電気回路構成用)チップ部品等の電気(電子)部品(以下、これらを単にチップ部品という)を極めて信頼性の高く表面実装化を可能とするペ−ストのぬれ特性を精度良く測定できるようにしたペ−ストの特性測定方法とその方法を用いた特性測定機に関する。
【0002】
【従来技術】本発明者が、プリント基板へのチップ部品の表面実装化基板における表面実装化技術においてソルダ−ペ−ストのJIS化委員会(はんだ研究委員会)で提案した方法としては、従来概念を変えるものとして提案された本発明者の先願発明に関する(ソルダ−)ペ−ストの粘着力を精度良く測定できるようにしたペ−ストの特性測定方法と当該ペ−ストの特性測定機があるが、かかる測定方法によれば、従来では得ることのできなかった当該ペ−ストの極めて高精度な粘着力特性を知ることができ、またその測定方法を実現した測定機によれば、極めて高精度で高品質の高密度実装化基板を実現できるものとして特にその測定方法に関して上記委員会にてJIS化採用される方向でほぼ決まった。
【0003】上記本発明の先願発明及び本発明(特にペ−ストのぬれ特性の改良に関する)において予め明確にしておくと、これら発明の場合は、プリント基板へチップ部品を表面実装化するために当該チップ部品の側から見たペ−ストの特性測定方法及びそれを実現するための一例としてのペ−スト特性測定機であり、この概念を捕らえて初めて高精度且つ信頼性の高いチップ部品の高密度表面実装基板が実現できる。
【0004】これに対して従来の場合は、ペ−ストの側から見た当該ペ−ストの測定方法に根拠を置いているので、プリント基板へチップ部品を表面実装化するためには当該ペ−ストを適正な特性のものとして測定できず、また当該ペ−ストを最適のものに実現できるようにするための特性測定機が存在せず、高精度且つ信頼性の高い電気部品の高密度表面実装基板を実現できないでいた。
【0005】超小型電気部品やチップ部品のプリント基板への高密度表面実装化技術の最重要課題は、はんだ付性にあると言っても過言でない。イモ付け、ブリッジ、はんだ不足、テンプラ、位置ずれ、マンハッタン等多くのはんだ付不良の低減化のためには、リフロ−炉の中で上記チップ部品に対してペ−ストがどのように溶けて、ぬれるのかを数値化して知ることが急務である。それにも係わらず、従来では、このようなことを考慮し精度良く且つプリント基板上においてチップ部品を実装するためのペ−ストの特性を測定するための方法及びその測定方法を実現したペ−スト特性測定機は存在しないでいた。
【0006】さて、最初に戻るとして、高密度実装化電子機器に用いるための高密度実装化回路基板を実現するためには、プリント基板にチップ部品を精度良くはんだ付けする必要がある。
【0007】ところで、高密度実装化回路基板を実現するためには、チップマウンタ等を用いてプリント基板に塗付したソルダ−ペ−ストに多数の電気部品、たとえばチップ部品を接着する。
【0008】ここに、ペ−ストの粘着力が適切な値でないときには、プリント基板にチップ部品を固定する際、あるいはチップ部品を搭載した基板のベルトコンベア移動時等に当該チップ部品がプリント基板から脱落し、高密度実装化基板を実現できなくなる惧れがある。
【0009】上記本発明の先願発明のペ−ストの特性測定方法及び特性測定機では、特に、ペ−ストの特性として、ペ−ストの粘着力を測定できるようにしたものであるが、このペ−ストの粘着力とは、ペ−スト自身の凝集力、すなわち、ペ−スト自身を集めつなげる力と、更に他の2つの物体を接続させている力のことをいう。
【0010】ここにペ−ストの粘着力については、上記本発明の先願発明において、既に説明したので、その説明は省略するとして、品質の良い高密度実装化基板を得るためには、ペ−ストの粘着力を最適な値に保つのみでは、不十分で、この場合、更にはんだ付け性を特に考慮しなければならない。すなわち、はんだ付け性の良いことが要求される。
【0011】ここで、はんだ付け性が良いとか悪いとかは、かなり漠然とした意味に用いられており、はんだ付け性には種々の因子が複雑に係わるため、未だ厳密に定義されていないのが実情である。
【0012】しかし、はんだ付け性に関する内容は次の3要素に要約される。
【0013】A)プリント基板に対するペ−ストのぬれ特性B)プリント基板とペ−ストの接合性C)接合部の信頼性
【0014】この中で、A)の要素にがはんだ付け性を表す最も大きな意味をもっており、一般に、ぬれ特性の良いものは接合性も良く、このA)の条件を満足し、また上記要素B)を満足するプリント基板を用いれば、上記C)の要素も満足できることになる。
【0015】ここに、はんだ付け性を良くするためには、はんだ付け性を定量的に表示することができる測定法が必要になる。
【0016】このはんだ付け性は、ペ−スト、フラックス、はんだ付け条件(温度、時間)等のパラメ−タに複雑に影響されるので、各々のパラメ−タについて個々に定量的な評価がなされれば、全体的なはんだ付け性を客観的に評価できるものであるが、はんだ付け条件(温度、時間)については実装基板上から見た場合のことは考慮されていないのが現実で、より精度良く実装基板上にチップ部品をプリント基板から脱落なく、精度良く実装できるようにすることは、上記先願発明以外には皆無であった。
【0017】はんだ付け性の評価法としては、これまでに種々の方法が提案され、基礎実験的なものとしては、拡がり試験、界面張力測定試験があり、応用試験的なものとしては、毛管浸透試験、浸潰試験、ぬれ時間測定試験がある。
【0018】前者の基礎実験的な拡がり試験としては、拡がり面積法、拡がり率、接触角法があり、また界面張力測定試験としては、メニスコグラフ法がある。
【0019】後者の応用試験的な毛管浸透試験としては、平行二板法、偏平折り曲げ板法、撚り線法があり、浸潰試験としては、垂直式浸潰法、回転式浸潰法があり、またぬれ時間測定試験としては、グロ−バル試験、回転式浸潰法がある。
【0020】上記した試験法の界面張力測定試験としてのメニスコグラフ法を説明すると、この方法では、溶融はんだの付着力を定量的に測定することによって接触角の時間的変化を間接的に求め、それをはんだ付け過程において定量的に表すようにしたものである。
【0021】この測定の原理は、図7に示すように溶融はんだ槽12内の溶融はんだ3’に棒状の試験片(チップ部品の金属端子あるいはその代替品が、これに該当する)11を浸潰し、溶融はんだ3’がぬれることによって当該試験片11であるチップ部品の金属端子に作用する付着張力(ぬれ応力)の時間的変化を測定し、はんだ付け性を評価するようにしたものである。尚、5は高速荷重変換器である。
【0022】すなわち試験片11に作用するぬれの応力は図8に示すように付着張力によって下方に引き下げるられる力と、溶融はんだ3’の浮力によって上方に押し上げる力との差として表わされるから、 F=Υτfcosθ・2πr−πr2ρgh (1)
F:試験片11に作用する力 f:試験片11に作用する浮力 Υτf:溶融はんだ(ペースト)3’の表面張力(ペースト−フラ ックスの界面張力)
θ:接触角 r:試験片11の半径 g:重力加速度 h:浸積深さの関係式が得られる。
【0023】ここで、浸積深さh→0とすれば、 試験片11に作用する力Fは、F=Υτf cosθ・2πγ=kcosθ(k:定数) (2)
となり、試験片11に作用する力Fは接触角θのみの関数となるので、試験片11に作用する力Fを測定することによって溶融はんだ3’のぬれの尺度である接触角θの変化を間接的に求めることができる。
【0024】試験片11を溶融はんだ3’に浸潰してから引き上げるまでの試験片11に作用する力Fの時間的変化と接触角θとの関係を示せば、図9のようになる。
【0025】かかるメニスコグラフ法の装置は、試験片11を溶融はんだ3’に浸潰する機構と、試験片11に作用する溶融はんだ3’のぬれ応力を検出する機構、例えば差動トランス等の高速荷重変換器5と、図示しない記録計(たとえば、パ−ソナルコンピュ−タ及びプリンタ−が該当する)からなる。
【0026】尚、メニスコグラフ法における溶融はんだ3’のはんだ付け性の評価は、溶融はんだ3’におけるぬれの力と時間との関係を表すメニスコグラフ曲線を解析することによって行われるが、その解析の仕方によってそれぞれの意味が異なるので、はんだ付け性の評価も異なった意味を持ってくる。
【0027】メニスコグラフ法における典型的なぬれ特性曲線を図10に示すが、その過程は3段階に分けられる。
【0028】これに関して、以下に説明すると、図10を参照して、第1段階(時間t0 〜t3 ):ぬれが始まるまでの時間(試験片11に浮力fが作用する)
第2段階(時間t3 〜t2 ):ぬれが進行する時間(ぬれの進行と共に接触角θが減少し、ぬれの力Fが増加する)。
【0029】第3段階(<時間t2 ):ぬれの力Fが最終値に到達する。
【0030】これらの段階にはそれぞれの意味があり、その解釈の仕方によって、はんだ付け性の評価も異なってくるが、いずれにしてもこのメニスコグラフ法によれば、溶融はんだ3’のぬれ応力を判定できる。
【0031】以上のように、従来からはんだ付けにおけるぬれ応力を調べるために公知になっているメニスコグラフ法によれば、溶融はんだ3’のはんだ付けにおけるぬれ特性を調べるためには有利な方法である。
【0032】しかし、この方法ははんだ槽12の溶融はんだ3’のぬれ応力を調べるものであり、はんだ槽12から採取した微量の溶融はんだ3’のぬれ応力以外のぬれ特性、即ち、溶け時間、ぬれ時間を卓上、プリント基板上等で簡易に且つ正確に調べることはできなかった。
【0033】メニスコグラフ法によれば、はんだ槽12内の溶融はんだ3’のはんだ付けにおけるぬれ応力を調べることができるが、(ソルダ−)ペ−ストの場合には、はんだ以外にフラックスなどの各種の成分を含んでいるため、メニスコグラフ法を用いたのでは、それら各種の成分が消滅してしまうのでペ−ストのぬれ特性を調べることは、理論的に困難である。
【0034】重複するが、はんだ付け性が良いということは、通常、母材合金とはんだの「ぬれ」が良いということである。ここでいう「ぬれる」という意味は、母材と溶融はんだが、単に接触しているだけではない。「ぬれる」とは、母材金属の表面と溶融はんだが酸化物などの障壁なく原子レベルで接触している状態をいう。
【0035】良いはんだ付け性を実現する為には、次の4つの管理が重要である。
【0036】■ 母材■ はんだ■ フラックス■ はんだ付け温度と時間(条件)
【0037】これらの要因は、互いに影響し合っており別個独立に論ずることはできないし、大変複雑な絡みを持つ。
【0038】たとえば、はんだ自信のはんだ付け性の評価を行いたいならば、他の3つの要因をパラメ−タとして条件付けなければならない。それにはんだ付けをするには、コテはんだ付け法、フロ−はんだ法、リフロ−はんだ法等各種の方法がある。例え全て同じ材料ではんだ付けをしようとしても、はんだ付け方法が異なれば、はんだやフラックスの供給方法や母材との接触方法が異なるため,同一のはんだ付け性を得ることは当然できない。したがって、はんだ付け性の評価方法を考えるのならば、その材料のはんだ付け法と同一の方法で評価しなければ意味をなさないといえる。
【0039】つまり(ソルダ−)ペ−ストのはんだ付け性の評価は、従来の浸漬はんだ用に開発されたはんだ付け性の測定方法、たとえば、メニスコグラフ法では不適切で、何らかの工夫を加えなければできない。
【0040】また上記した従来の方法によると、はんだ槽12内の溶融はんだ3’のぬれ応力を調べることができるとしても、その応力は垂直(上下)方向の作用応力しか検出していないため、即ち後記する本発明のように水平分力を含む作用応力を検出していないので、チップ部品を実装化するプリント基板上のペ−ストの精度良いぬれ特性を検出できずにいた。このことは従来の方法では、検出垂直方向の応力の検出のみで水平分力を含む作用応力の検出という概念がなく、本発明が課題としているようなチップ部品の実装化基板を実現するためのプリント基板面のわずかな量のペ−ストのぬれ特性を測定しようとする概念と異なることによる。
【0041】またチップ部品は、その金属端子が酸化等により経時的変化を生じるほか、種々の異なる特性を持つメ−カのチップ部品を使用してチップ部品塔載基板を構成しなければならないため、各々のチップ部品の金属端子とペ−ストのぬれ特性とが均一適性になっておらず、高精度な高密度実装化基板を構成できないでいた。
【0042】各々のチップ部品の金属端子とペ−ストのぬれ特性とが均一適性になるようにするために、均一特性条件のチップ部品を選定するなど実際の現場と合わせ込みをしなければならず、その選定並びに管理が大変であるばかりでなく、その選定や管理ミスが生じると、自動的に量産ラインによって多数の不良高密度実装化基板を生み出すため、その損害額は大変なものであった。
【0043】また高密度にチップ部品を配設したプリント基板は、リフロ−炉を通すが、リフロ−炉内は、時間経過と共に種々温度状態が変わっており、従来はこの温度変化状態を考慮せず、ペ−ストのぬれ特性が最適なものと特定してリフロ−炉内にチップ部品塔載基板を通していたために、その温度状態に適したペ−ストのぬれ特性になっておらず、最適な特性の高密度実装化基板を構成できず、多数の不良高密度実装化基板を生み出していた。
【0044】
【発明の課題】本発明は上記従来の欠点を解消するためになされたもので同一条件では必ず一定のペーストのぬれ特性を測定できるようにすることで、高精度の品質良好な高密度実装化基板を実現できるようにすることを課題になされたものである。その他の課題は、以下の説明にて明らかにする。
【0045】
【本発明の課題を達成するための手段】ソルダ−ペ−ストのはんだ付けの挙動は、大体次のようになる。
【0046】a)銅板(あるいはプリント基板の導電パタ−ン)上に一定量のペ−ストを印刷し、チップ部品の金属端子を粘着する。
【0047】b)予備加熱によって銅板と金属端子の温度を上昇させると共にフラックスの溶剤を蒸発する。
【0048】c)本加熱によってフラックスが流動性を増し、はんだ粒子が凝集を始める。
【0049】d)はんだ付け温度に近づくとフラックスは活性度を増し、銅板や金属端子を清浄にすると共にはんだ粒子が溶融を開始して凝集力を高める。
【0050】e)溶融フラックスが溶融はんだの表面を覆いはんだと銅あるいは母材との界面張力を減少させてぬれを開始する。
【0051】ここでd)とe)の項目については、同時に進行していると考えられる。
【0052】このようにソルダーペーストのはんだ付けは、ディップはんだ付け法とは内容が異なるために、前記したはんだ付け性を決定する■〜■:母材、■はんだ、■フラックス、■はんだ付け温度と時間(条件)}の4つの要因も内容の違ったものになる。
【0053】ソルダ−ペ−ストのはんだ付け性を決定する4つの要因は、イ)ペ−ストの量、ロ)母材、ハ)ソルダ−ペ−スト、ニ)温度プロファイル、である。
【0054】以上の観点に立って、ソルダ−ペ−ストのはんだ付け性を定量的に測定するために、ペ−ストとチップ部品の金属端子またはその代替品(テストピ−ス)との間に働く応力を、ペ−ストが溶ける前の加熱段階から測定し、特に溶け始めてから溶け終わり、そしてぬれ始め、終わるまでの全過程の応力を測定するようにする。
【0055】図5は、以上の考えに基づいて測定したソルダ−ペ−ストのはんだ付け性の特性を示すもので、同図において時間t1 はペ−ストが溶けるに要した時間で、時間t2 はペ−ストがぬれるに要した時間で、F2 はぬれの力である。この特性曲線は、メニスコグラフで得られる特性曲線と良く似ているが、意味するところは全く異なる。溶ける過程で発生する応力は凝集によって発生し、同図のようにぬれのF2 の方向とは逆方向である。溶け時間t1 とぬれ時間t2 は、ペ−ストのぬれ性を評価するためにも重要であるが、マンハッタン現象、はんだボ−ルの解析等にも役立てることができる。
【0056】従って、かかる本発明の課題を達成するための手段は、プリント基板等の基板面に印刷や塗付等の手段で設けたペーストにチップ部品等の電気部品の金属端子またはその代替品を定圧で上記基板に接触しないように相対的に挿入し、あるいは上記ペーストに定量だけ上記基板に接触しないように相対的に挿入し、上記ペーストから引き離すまでの過程において、ヒーター等の加熱手段を用いて上記ペーストを所定の温度に加熱し、当該ペーストの溶融から上記電気部品の金属端子またはその代替品にぬれる全過程において当該ペーストと上記電気部品の金属端子またはその代替品との間に働く応力の変化を検出するようにしたペーストの特性測定方法を提供することによって達成できる。
【0057】また別の課題を達成する手段は、上記ペ−ストの特性測定方法において、上記ペ−ストと上記チップ部品の金属端子またはその代替品との間に働く応力の変化として、当該ペ−ストと上記チップ部品の金属端子またはその代替品間に作用する垂直方向の作用応力と、水平分力を含む作用応力を同時に検出したり、上記ペ−ストの応力変化を当該ペ−ストの溶け時間、ぬれ時間、及びぬれ応力として測定したりすることによって達成できる。
【0058】更にまた別の課題を達成する手段は、ペーストを印刷や塗付等の手段で設けるためのプリント基板等の基板を配設するための基板配設用具を備え、該基板配設用具に配設されたされた基板面に印刷や塗付等の手段で設けたペーストを加熱するヒーターと温度コントローラを備え、該基板配設用具に配設された基板面のペーストの温度を直接または間接的に検出する温度検出手段を設け、上記基板面に設けたペーストにチップ部品等の電気部品の金属端子またはその代替品を定圧で上記基板に接触しないように相対的に挿入し、あるいは上記ペーストに定量だけ上記基板に接触しないように相対的に挿入する制御機構及び該ペーストから相対的に引き離しする制御機構を備え、上記電気部品の金属端子またはその代替品をペーストに相対的に挿入した状態で上記ヒーターによって当該ペーストを加熱するとき、当該ペーストが溶融から上記電気部品の金属端子またはその代替品にぬれる全過程において当該ペーストと上記電気部品の金属端子またはその代替品との間に働く応力変化を検出する手段を備えたペースト特性測定機を提供することによって達成できる。
【0059】その他の課題は、上記ペ−スト特性測定機において、ペ−ストの応力変化を検出する手段を、当該ペ−ストと上記チップ部品の金属端子またはその代替品間に作用する垂直方向の作用応力と、水平分力を含む作用応力をも同時に検出する手段としたり、上記ペ−ストの応力変化を検出する手段として、当該ペ−ストの溶け時間、ぬれ時間、及びぬれ応力として測定できるようにしたり、上記ペ−スト特性測定機は、少なくとも上記測定するためのペ−スト周辺部分を真空状態にして測定するようにしたり、あるいは上記ペ−スト特性測定機は、少なくとも上記測定するためのペ−スト周辺部分を不活性ガスを封入した状態にして測定するようにしたペ−スト特性測定機を提供することによって達成できる。
【0060】
【作用】定圧で、あるいは定量押圧機構によってテンションバー17をチップ部品6の金属端子7またはテストピース(上記試験片11に該当する)をペースト3(このペースト3は、図2等では描いていないがプリント基板8の表面部に塗付等の手段で配設される。ペースト3については図5参照)に定圧で、あるいは定量を挿入し引き離すまでの過程において、ヒーター18−1,18−2によるリフロー炉13内のペースト3の温度を加熱コントロールし、溶融から上記チップ部品6の金属端子7またはテストピースにペースト3がぬれる過程において当該ペースト3と上記金属端子7またはテストピースとの間に働く当該ペースト3の垂直方向の作用応力及び水平分力を含む作用応力の変化特性をエレクトロバランス応用検出用センサ22で検出し、基台部9内に内蔵した図示せずマイクロコンピュータによって表示部に表示し並びにプリント機構によってプリントアウトすることでペースト3の溶け時間、ぬれ時間及びぬれ応力を知ることができる。
【0061】
【発明の実施例】図1は本発明の一実施例としてのペ−スト特性測定機の一部仮想線として描いた外観斜視図で、図2は同ペ−スト特性測定機の基板配設部の説明図で、図3はペ−ストの応力検出用センサの説明図で、図4R>4は同応力検出用センサの原理説明図で、図5はペ−ストの応力発生過程の説明図で、図6はリフロ−炉温度プロファイル曲線の説明図である。以下、図1乃至図6を参照して、本発明のペ−スト特性測定方法及びペ−スト特性測定機について説明する。
【0062】図1を参照してペ−スト特性試験機1の本体2は、その内部を真空状態になるように構成するかまたは、その内部を不活性ガスを封入して構成するか、あるいは図示しないカバ−などにより、被測定ペ−スト周辺部分を真空状態または不活性ガスを封入した状態に構成してある。このために、この実施例では、本体2の側面部に不活性ガス注入孔20を形成し、不活性ガスを封入して構成する。
【0063】被測定ペースト周辺部分を真空状態になるように構成するかまたは、その内部を不活性ガスを封入して構成した理由は、チップ部品(高密度実装化基板を形成するために用いる電気部品の総称である)6の金属端子7(図2参照)の酸化防止やプリント基板(尚、このプリント基板8は、当該プリント基板8を含む基板の総称である)8(図2参照。図5においてはペースト3の下面に図示せずプリント基板8が配設されることにな)面に印刷や塗付などの適宜な手段で設けられた(説明の都合上、ペースト3は全てプリント基板8面に印刷や塗付手段で設けたものとする)ペースト3の正確な特性測定に阻害になる当該ペースト3の特性変化防止のためである。
【0064】ペ−スト特性試験機1の本体2の基台部9は、その内部が中空部となっており、測定・制御コントロ−ラ等の本ペ−スト特性測定機1及びこの測定機1を用いた測定方法に必要な部品・装置が内蔵されている。
【0065】上記基台部9の前面傾斜部4には、図示せず操作パネルが設けられ、該操作パネルにはペ−ストの特性測定のために必要な操作スイッチ及び表示部が設けられている。
【0066】この表示部には、本発明において最低限求めているデ−タ、すなわちペ−スト3(図5参照)の溶け時間、ぬれ時間、ねれ応力の特性デ−タを表示できるようになっている。
【0067】「溶け時間」について説明する。
【0068】「溶け時間」とは、チップ部品のペースト3に対する接合の様子を調べる時に、ペースト3が溶け始めてから、ぬれ始めるまでの時間をいい、図5におけるt1の範囲における時間である。この溶け時間t1は、ペースト3に含まれる各種の成分が溶け始めてガス化し、ペースト3自身が流動化して体積を縮小(表面張力により球をつくること)する過程を測定する時間である。
【0069】特に、チップ部品が、抵抗やコンデンサ等の2端子部品の場合には、この「溶け時間」t1の不一致や、後記するぬれ時間t2(図5参照)の差がマンハッタン現象の主たる原因である。
【0070】尚、この上記した定義に定めるような「溶け時間」t1 を考慮している点が、従来のペ−スト特性測定方法及びペ−スト特性測定機では全く認められない新規な概念であり、本発明を構成する重要な技術的思想でもある。この「溶け時間」t1 を考慮することで、本発明では従来に見られないプリント基板8面のわずかな量のペ−スト3のぬれ特性の高精度な特性測定が可能になる。
【0071】チップ部品6は、ペ−スト3のガス化時、ペ−スト3上で泳ぐように移動を始める。しかも、プリント基板8面で溶けたペ−スト3がチップ部品6に及ぼす応力は、この時、主にプリント基板8に対する少しの垂直方向(上方向)の応力(垂直応力という)と、水平方向の応力(水平応力という)及び該水平応力と垂直応力間における斜め方向の応力である。この水平応力及び該水平応力と垂直応力間における斜め方向の応力を水平分力を含む作用応力という。
【0072】「ぬれ時間」について説明する。
【0073】「ぬれ時間」とは、ペ−スト3がぬれ始めてから、ぬれ終わるまでの時間をいい、図5におけるt2 の範囲における時間である。
【0074】この「ぬれ時間」t2 は、プリント基板8面上で溶融したはんだの上にフラックスの液が被膜を形成してチップ部品6の金属端子7との界面張力を一気に減少させて当該金属端子7にはんだがぬれる過程である。このとき、はんだと上記チップ部品6の金属端子7とに働く応力は、図1に示すペ−ストの応力検出用のテンション17の垂直応力(図2で示す下方向の矢印X方向)が主成分である。
【0075】次に「ぬれ応力」について説明する。
【0076】「ぬれ応力」は、図5のF2 で示す力の大きさで、上記した「ぬれ時間」t2が垂直応力成分であるのに対して、この「ぬれ応力」F2 は、チップ部品6の金属端子7の下地金属やメッキ処理の方法、あるいは金属端子7の酸化の度合い等による変化、更にはフラックスの効果によっても、その大きさや、時間に対する変化特性は異なってくる。
【0077】上記本体2は、基台部9とその上部の測定部とを分けるために仕切り板10により仕切り、該仕切り板10の上に垂直方向に延び且つ本体2に対して直角方向(本体2の前面から見て水平方向)に延びた空隙(後記するテンションバ−17の通路を構成する)14を介して一対の加熱手段として用いたヒ−タ−18−1,18−2を対向配設し、リフロ−炉13を構成している。
【0078】なお、ヒ−タ−18−1,18−2は、本体2の前面から見て水平方向において、複数のヒ−タ−を用いて構成したものを用いると、瞬時に高い温度に加熱できるのでそのようなものを用いると都合良い。しかもこの場合、リフロ−炉13の温度プロファイルに合わせて各部を適宜に温度調節できるので望ましいものを得ることができる。
【0079】上記一対のヒ−タ−18−1と18−2には、それぞれ上記垂直方向に延びた空隙14に対して直角方向に欠切し本体2の前面から見て水平方向に延びて形成した凹部15−1,15−2を形成し、この2つの凹部15−1,15−2と上記空隙14とで基板配設(通路)部16を形成して、後記する基板配設テ−ブル19及びこのテ−ブル19面に設置されたチップ部品6を塔載したプリント基板8を本体2の前面から見て水平方向、すなわち矢印Y方向に往復移動させることができるようにしている。
【0080】仕切り板11の上部にはその応力検出用センサ部21aが上記リフロ−炉13方向に臨むように形成されたL字形のペ−スト3の応力検出用センサ支持・収納部材21が到立設置され、この応力検出用センサ支持・収納部材21内の後記するペ−スト3の応力を電気信号として検出するセンサとして用いたエレクトロバランス応力検出用センサ(図3参照)22から得られる出力電気信号及び該エレクトロバランス応力検出用センサ(図3参照)との電気的なやり取りは、仕切り板11を介して基台部9内の図示せず制御回路及び電源にて行われるようになっている。
【0081】上記応力検出用センサ部21aの図示せず機構によって支持されたL字形部材の先端を更にL字形に折曲形成した形状のテンションバ−17の先端部17aは、上記空隙14を通して後記する基板配設テ−ブル19面に設置されたチップ部品6の上面を、上記応力検出用センサ支持・収納部材21内に設けた図示せず定圧または定量押圧機構によって定圧で、または定量挿入量分だけ押圧挿入するようにしてチップ部品6の金属端子7をペ−スト3に定圧で、または定量押圧挿入する。
【0082】この場合、上記金属端子7がペ−スト3の下面のプリント基板8面に完全に接触しないように、上記定圧または定量押圧機構によってチップ部品6の上面を定圧で、または定量押圧挿入する。
【0083】尚、テンションバ−17の先端部17aを基板配設テ−ブル19面のプリント基板8の上面に設置されたチップ部品6の上面に定圧で、または定量挿入量分だけ押圧挿入するようにしているが、このテンションバ−17の先端部17aに導電体でできた金属端子7の代替品としてのテストピ−ス(試験片)を装着し、このテストピ−スを上記プリント基板8面のペ−スト3に定圧で、または定量挿入量分だけ押圧挿入するようにしてもよい。
【0084】尚、上記においては、図示せず定圧または定量押圧機構によって定圧で、または定量挿入量分だけテンションバ−17の先端部17aをチップ部品6の上面に押圧挿入して金属端子7を、あるいは図示せずテストピ−スをぺ−スト3に押圧挿入するようにしているが、逆に上記テンションバ−17側を上下動せずにプリント基板8を支持する図2に示す基板配設テ−ブル19をサ−ボモ−タ、たとえばステッピングモ−タ23によって上下動して、相対的上下移動させるように構成してもよい。
【0085】また、上記においては、リフロ−炉13を固定側に設けたが、これに固定するものでなく、逆にチップ部品6を塔載したプリント基板8を設置した基板配設テ−ブル19を矢印Y方向に動かさない構造とし、リフロ−炉13側を矢印Y方向に動かす構造にしても良い。
【0086】更にまた、上記応力検出用センサ支持・収納部材21は、上記において固定されたものとして説明したが、これも矢印Y方向に移動自在にすることで、上記した他の構成要素を矢印Y方向に動かさない構成要素にしても良いことは言うまでもない。
【0087】尚、上記基台部9内には、ヒ−タ−18−1,18−2を所定の適宜な温度に加熱する図示せず温度コントロ−ラが内蔵され、上記テンションバ−17を矢印X方向の垂直方向に定圧で、あるいは定量を押圧して、金属端子7またはテストピ−スをペ−スト3に定圧で、あるいは定量を挿入し引き離すまでの過程において、ヒ−タ−18−1,18−2を加熱して上記ペ−スト3を所定の温度に加熱し当該ペ−スト3が溶融から上記金属端子7またはテストピ−スにぬれる全過程において当該ペ−スト3と上記金属端子7またはテストピ−スとの間に働く応力の変化を検出できるようにするため、上記温度コントロ−ラによって上記ヒ−タ−18−1,18−2を所定の適宜な温度に加熱する。
【0088】図2を参照して、仕切り板11の下部の基台部9内には微動テ−ブル24が設けられ、この微動テ−ブル24は、図示せず機構により図1の矢印Y方向に手動または自動で動かせる構成になっている。
【0089】微動テ−ブル24は、ステッピングモ−タ23によって、微動テ−ブル24内の上下機構によって上下動連結部材25を矢印X方向に上げ下げして基板配設テ−ブル19を上下動して基板配設テ−ブル19を基板配設部16内の適宜高さ位置に保つようにしている。
【0090】微動テ−ブル24は図示せず矢印Y方向に水平移動させるための水平移動機構によって、矢印Y方向に移動できるように構成する。
【0091】尚、微動テ−ブル24を矢印Y方向に水平移動機構によって水平移動しない場合には、リフロ−炉13を図示せず水平移動機構によって矢印Y方向に移動させるとよい。
【0092】微動テ−ブル24によって矢印X方向に上下動させられる上下動連結部材25の先端上面部には、基板配設用具を構成する基板配設テ−ブル19が取り付けられており、上記水平移動機構によって当該基板配設テ−ブル19が基板配設部16内を矢印Y方向に沿って水平移動できるようにしている。
【0093】基板配設テ−ブル19の上面には、チップ部品6を上面に塔載したプリント基板8が板バネで構成したプリント基板押さえ及び温度センサ支持部材26によって押さえ保持されている。
【0094】尚、この実施例では、図の都合上、プリント基板8面には、1個のチップ部品6しか配設していないが、その数は、用いるプリント基板8の大きさや回路部品数などに応じて複数個としてよいことは言うまでもない。
【0095】基板配設テ−ブル19の上面のプリント基板8面に塔載されたチップ部品6の金属端子7の下面部には、ペ−スト3(図2では図示せず)が位置するように当該ペ−スト3をプリント基板8面に配設しておくと共に、当該ペ−スト3と上記金属端子7が対向するように上記プリント基板8面にチップ部品6を塔載する。
【0096】図1を参照して説明したようにプリント基板8に設けられたペ−スト3(図1においても図示せず)は、ヒ−タ−18−1,18−2及び基台部9内に設けた当該ヒ−タ−18−1,18−2の加熱温度を制御するための図示しない温度コントロ−ラによって加熱して溶融する必要があるが、このときのペ−スト3の温度を検出するために上記プリント基板押さえ及び温度センサ支持部材26の基板部側端部に温度検出手段としての熱電対等の温度センサ27を配置して上記プリント基板8面のペ−スト3の温度を間接的に検出するようにしている。
【0097】この場合、温度センサ27によって上記プリント基板8面のペ−スト3の温度を間接的に検出するようにしたのは、当該ペ−スト3の温度を直接検出するのは、その配置や少ない量のペ−スト3を考慮したためであるが、必ずしもこのようにしなくてもよく、極めて小さな温度センサがあり、直接、ペ−スト3に挿入して当該ペ−スト3の温度を検出するのが容易ならば、ペ−スト3の温度を直接検出してもよい。
【0098】上記テンションバ−17の先端部は、チップ部品6の上面部に当接され、矢印X方向の上下動機構を構成する定圧で、または定量押圧機構によってチップ部品6を押圧して金属端子7をペ−スト3に定圧で、または定量押圧挿入する。
【0099】図3を参照して、ペ−スト3の応力検出センサ機構について説明する。
【0100】このペ−スト3の応力検出センサ機構は、応力検出用支持・収納部材21内に設けた適宜な固定側に固定された支点軸28によって上記テンションバ−17の上端部を矢印Z方向(回転方向)に示すような方向に揺動自在に支持して、当該テンションバ−17をその方向に揺動できるように構成している。
【0101】いま、この支点軸28位置を支点(0点)と呼ぶこととする。
【0102】上記上端部が支点軸28によって矢印Z方向に揺動可能に支持された上記テンションバ−17は、L字形部材の水平方向の辺を更に垂直方向に折曲形成した階段状のものに形成され、該テンションバ−17の上部の垂直方向の辺17aの側方固定部に当該テンションバ−17の矢印Z方向の微細な揺動量変化を検出できるエレクトロバランス応力センサ22を配置し、該応力センサ22の先端部の受圧端29を上記上部の垂直方向の辺17aに接触させている。
【0103】上記テンションバ−17の下部の垂直方向の辺17bの下端部は、上記チップ部品6の上面など適宜な位置に、応力検出用センサ支持・収納部材21内などに設けた図示せずテンションバ−上下動機構を構成する定圧で、または定量押圧機構により当接させて押圧挿入するようにし、このことによりチップ部品6の金属端子7をペ−スト3に定量または定圧挿入する。
【0104】図3及び図4を参照して、上記テンションバ−17が矢印X方向の垂直下方向に定圧または定量挿入されて、当該テンションバ−17が矢印Z方向に揺動した場合、荷重点となる力点をCとすると、この力点Cは図3に示すようにチップ部品6の重心位置にあり、この力点Cの垂直下方向にはペ−スト3のぬれ応力F2が発生する。
【0105】ここで、ペ−スト3のぬれ特性を測定するに当たって、この垂直下方向のぬれ応力ベクトルによるぬれ応力F2 とこのぬれ応力F2 と垂直方向の力、すなわち図4において矢印F方向で示す応力検出用センサ(例えば、本発明のエレクトロバランス応力検出用センサ22が対応する)の水平応力のみを検出しただけでは、即ち、垂直応力となるぬれ応力F2 と矢印Fの水平応力のみによりペ−スト3のぬれ特性を正確に測定することができない。即ち、上記したように水平分力を含む作用応力を検出する必要がある。
【0106】本発明では、垂直応力及び水平分力を含む作用応力を検出できるようにするために、上記のように構成したテンションバ−17を用い、力点Cの線30上を中心に当該線30からα角度の方向にペ−スト3の溶け応力ベクトルによる溶け応力F1 を線30に対して左右対称発生させるようにしている。
【0107】このようにすると、支点(0点)[支点軸]28の垂直下方向の線31と当該支点(0点)[支点軸]28から力点Cとが作るベクトル線32間の角度θが得られる。
【0108】上記エレクトロバランス応力検出用センサ22の受圧端29がテンションバ−17の辺17aによって受ける圧力点位置をセンサ受圧点Aとすると、ペ−スト3のぬれ応力F2 によるセンサ圧力Fは、次式(3)で表すことができる。
【0109】
F=F2 sinθ・(OC/OA) (3)
但し、OC:支点(0点)[支点軸]28から力点Cまでの長さOA:支点(0点)[支点軸]28からセンサ受圧点Aまでの長さ
【0110】ペ−スト3の溶け応力ベクトルによる溶け応力F1 によって上記エレクトロバランス応力検出用センサ22の受圧端29で受けるセンサ圧力をF’とすると、このセンサ圧力F’は、次式(4)で表すことができる。
【0111】
F’=F1 ×[sin(α−θ)−sin(α+θ)]×(OC/OA)
=−2F1 cosαsinθ×(OC/OA) (4)
【0112】従って、センサ圧力Fが図4において右方向の正の応力とすると、センサ圧力F’は、図4において左方向の負の応力となる。
【0113】以上のようにして、応力検出用センサ22のセンサ圧力F,F’によってペ−スト3のぬれ応力F2 、溶け応力F1 を基台部9に内蔵する図示せずマイクロコンピュ−タによって計算し、前面部4の図示せず表示部に表示することでペ−スト3のぬれ特性を知ることができる。
【0114】図5は、ペ−スト3の応力発生過程を示すもので、符号32はペ−スト3の応力発生曲線を示す。
【0115】図5を参照して、縦軸がペ−スト3の応力値を示し、横軸がリフロ−炉13またはチップ部品6を搭載したプリント基板8を矢印Y方向に相対的に水平移動させた場合のペ−スト3の加熱時間を示すものとする。0’点は、ペ−スト3がリフロ−炉13のヒ−タ−18−1,18−2によってペ−スト3が過熱されるスタ−ト時点で、未だペ−スト3が過熱されていない時点である。
【0116】このようにした場合、図5(a)のB点で示す位置においては、同図(b)の■の位置が、ペ−スト3の過熱過程を示すもので、上記テンションバ−17の図示せず定圧で、または定量押圧機構によってチップ部品6の金属端子7またはテストピ−スが未だ溶け始めていないペ−スト3に定圧で、または定量だけ押圧された状態を示している。
【0117】上記図5(a)■のB点で示す位置からある時間を経過すると、リフロ−炉13によってペ−スト3が溶け始める変化点Dができるが、このペ−スト3の溶け始めの変化点Dからのペ−スト3の溶け時間t1 を経過したE点時点で、溶け応力F1 の最大値が得られる。このとき、当該ペ−スト3の表面張力によって図5(b)■に示すように矢印方向にペ−スト3は流動収縮するため、上記図4で示すようにベクトルF1 による溶け応力F1 が発生する。
【0118】上記E点を境として上記テンションバ−17を図示せず定圧で、または定量押圧機構によって当該テンションバ−17を垂直上方に引き離していくと、ペ−スト3の応力〜過熱時間曲線は、応力の最大近くまで至るようにペ−スト3の溶け時間G点経過まではペ−スト3の溶け時間t2 で示すようにペ−スト3の応力が変化する。
【0119】その後、図5(a)に示すようにペ−スト3の応力は、同図I点あたりまで、一定であるが、H点あたりでペ−スト3のぬれが始まると、図5(b)のチップ部品6の金属端子7あるいはテストピ−スを引っ張る。従って、ベクトルF2 によるぬれ応力F2 が発生する。
【0120】以上から明らかなように、上記相対的な過熱時間、リフロ−炉13の温度コントロ−ラによるペ−スト3の過熱温度制御と定圧で、あるいは定量押圧機構によるテンションバ−17の作動によってペ−スト3に金属端子7またはテストピ−スを定圧で、あるいは定量を挿入し引き離すまでの過程において、ヒ−タ−18−1,18−2によるリフロ−炉13によってペ−スト3の温度を加熱コントロ−ルし、当該ペ−スト3が溶融から上記金属端子7またはテストピ−スにペ−スト3がぬれる全過程において当該ペ−スト3と上記金属端子7またはテストピ−スとの間に働く当該ペ−スト3の応力の変化特性をエレクトロバランス応用検出用センサ22からの信号によって基台部9内に内蔵した図示せずマイクロコンピュ−タによって測定検出し、上記表示部に表示し並びにプリント機構によってプリントアウトすることでペ−スト3の応力を溶け時間、ぬれ時間及びぬれ応力をとして知ることができる。
【0121】このように構成した本発明のペ−ストの特性測定方法とそのペ−スト特性測定機によれば、リフロ−炉13との温度プロファイルとそのプロファイルのデ−タに合わせて上記チップ部品6を搭載したプリント基板8を上記リフロ−炉13内を通すと、縦軸に温度(°C)を取り、横軸に時間(秒)を取った場合、図6に示すようなリフロ−炉温度プロファイル曲線が得られる。
【0122】リフロ−式半田付け装置では、チップ部品を搭載したリフロ−炉を通過させるが、リフロ−炉内では、その通過の過程において上記リフロ−炉温度プロファイル曲線に示すように、その過程において温度状態が異なる。
【0123】従って、上記リフロ−炉温度プロファイル曲線を現場で使用する者が、本測定において、本件出願人によって市販されているリフロ−チェッカによりそのデ−タと本発明のペ−ストの特性測定方法とそのペ−スト特性測定機による測定デ−タを一致させて使用すれば、ペ−スト3の特性を最適なものに再現測定できる。
【0124】尚、このリフローチェッカは、リフロ−式半田付け装置において、チップ部品を配設したプリント基板をリフロ−炉を通過させた場合に、当該プリント基板にチップ部品が最適な温度状態で正確に半田付けできるかどうかを検出してデ−タとして取り出せるようにしたものである。
【0125】
【効果】上記で示した特殊構造の応力検出用センサを用いて定圧で、あるいは定量押圧機構によってテンションバ−の作動によってペ−ストに金属端子またはテストピ−スを定圧で、あるいは定量を挿入し引き離すようにしているので、その挿入から引き離しまでの全過程において、ヒ−タ−によるリフロ−炉内のペ−ストの温度を加熱コントロ−ルし、当該ペ−ストに溶融から上記金属端子またはテストピ−スにペ−ストがぬれる全過程において当該ペ−ストと上記金属端子またはテストピ−スとの間に働く当該ペ−ストの垂直方向の作用応力及び水平分力を含む作用応力の変化特性を検出してペ−ストの応力を溶け時間、ぬれ時間及びぬれ応力として知ることができ、プリンント基板上の微量のペ−ストであっても正確なぬれ特性を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例としてのペ−スト特性測定機の一部仮想線として描いた外観斜視図である。
【図2】同ペ−スト特性測定機の基板配設部の説明図である。
【図3】ペ−ストの応力検出用センサの説明図である。
【図4】同応力検出用センサの原理説明図である。
【図5】ペーストの応力発生過程の説明図である。
【図6】リフロー炉温度プロファイル曲線の説明図である。
【図7】溶融はんだ槽内の溶融はんだに棒状の試験片(チップ部品の端子ピンが、これに該当する)を浸潰し、溶融はんだがぬれることによって当該試験片であるチップ部品の端子ピンに作用する付着張力の時間的変化を正確に測定し、はんだ付け性を評価する為の基本的装置の説明図である。
【図8】試験片に作用するぬれの力、即ちに付着張力によって試験片が下方に引き下げるられる力と、溶融はんだの浮力によって情報に押し上げる力との差を説明するための説明図である。
【図9】試験片に作用するぬれの力の時間的変化と接触角の関係を示す説明図である。
【図10】メニスコグラフ法における典型的なぬれ特性曲線の過程図示す。
【符号の説明】
1 ペ−スト特性測定機
2 本体
3 ペ−スト
3’ 溶融はんだ
4 前面傾斜部
5 高速荷重変換器
6 チップ部品
7 金属端子
8 プリント基板
9 基台部
10 仕切り板
11 試験片
12 溶融はんだ槽
13 リフロ−炉
14 空隙・スイッチ部
15−1,15−2 凹部
16 基板配設(通路)部
17 テンションバ−
17a,17b 辺
18−1,18−2 ヒ−タ−
19 基板配設テ−ブル
20 不活性ガス注入孔
20a 応力検出用センサ部
21 応力検出用センサ支持・収納部材
22 エレクトロバランス応力検出用センサ
23 ステッピングモ−タ
24 微動テ−ブル
25 上下動連結部材
26 プリント基板押さえ及び温度センサ支持部材
27 L字形部材
28 支点軸(支点、0点)
29 受圧端
30,31,32 線

【特許請求の範囲】
【請求項1】 プリント基板等の基板面に印刷や塗付等の手段で設けたペーストにチップ部品等の電気部品の金属端子またはその代替品を定圧で上記基板に接触しないように相対的に挿入し、あるいは上記ペーストに定量だけ上記基板に接触しないように相対的に挿入し、上記ペーストから引き離すまでの過程において、ヒーター等の加熱手段を用いて上記ペーストを所定の温度に加熱し当該ペーストの溶融から上記電気部品の金属端子またはその代替品にぬれる全過程において当該ペーストと上記電気部品の金属端子またはその代替品との間に働く応力の変化を検出するようにしたことを特徴とするペーストの特性測定方法。
【請求項2】 上記ペ−ストと上記電気部品の金属端子またはその代替品との間に働く応力の変化は、当該ペ−ストと上記電気部品の金属端子またはその代替品間に作用する垂直方向の作用応力と、水平分力を含む作用応力を同時に検出するようにしたものであることを特徴とする請求項1に記載のペ−ストの特性測定方法。
【請求項3】 上記ペ−ストの応力変化を当該ペ−ストの溶け時間、ぬれ時間、及びぬれ応力として測定するようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のペ−ストの特性測定方法。
【請求項4】 下記構成要素■乃至■を備えて構成したことを特徴とするペースト特性測定機。
■ ペーストを印刷や塗付等の手段で設けるためのプリント基板等の基板を配設するための基板配設用具を備えていること。
■ 該基板配設用具に配設された基板面に印刷や塗付等の手段で設けたペーストを加熱するヒーターと温度コントローラを備えていること。
■ 該基板配設用具に配設された基板面のペーストの温度を直接または間接的に検出する温度検出手段を設けていること。
■ 上記基板面に設けたペーストにチップ部品等の電気部品の金属端子またはその代替品を定圧で上記基板に接触しないように相対的に挿入し、あるいは上記ペーストに定量だけ上記基板に接触しないように相対的に挿入する制御機構及び該ペーストから相対的に引き離しする制御機構を備えていること。
■ 上記電気部品の金属端子またはその代替品をペーストに相対的に挿入した状態で上記ヒーターによって当該ペーストを加熱するとき、当該ペーストが溶融から上記電気部品の金属端子またはその代替品にぬれる全過程において当該ペーストと上記電気部品の金属端子またはその代替品との間に働く応力変化を検出する手段を備えていること。
【請求項5】 上記ペ−ストの応力変化を検出する手段は、当該ペ−ストと上記電気部品の金属端子またはその代替品間に作用する垂直方向の作用応力と、水平分力を含む作用応力をも同時に検出する手段であることを特徴とする請求項4に記載のペ−スト特性測定機。
【請求項6】 上記ペ−ストの応力変化を検出する手段は、当該ペ−ストの溶け時間、ぬれ時間、及びぬれ応力として測定できるようにしたものであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のペ−スト特性測定機。
【請求項7】 上記ペ−スト特性測定機は、少なくとも上記の測定をするためのペ−スト周辺部分を真空状態にして測定するようにしたことを特徴とする請求項4乃至請求項6いずれかに記載のペ−スト特性測定機。
【請求項8】 上記ペ−スト特性測定機は、少なくとも上記の測定をするためのペ−スト周辺部分を不活性ガスを封入した状態にして測定するようにしたことを特徴とする請求項4乃至請求項6いずれかに記載のペ−スト特性測定機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【特許番号】第2630712号
【登録日】平成9年(1997)4月25日
【発行日】平成9年(1997)7月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−201953
【出願日】平成4年(1992)7月6日
【公開番号】特開平6−207900
【公開日】平成6年(1994)7月26日
【出願人】(000137476)株式会社マルコム (15)
【参考文献】
【文献】特開 平4−123864(JP,A)