説明

ペースト状調味料

【課題】柔らかくて舌触りなどの食感がよく、合成樹脂フィルム製の袋に充填しても袋が傷つき難く、袋のジッパーなどの密閉性が損なわれ難いペースト状調味料とすることである。
【解決手段】畜肉類、食用卵、魚介類、野菜、果物、海藻類などの食品素材を食用油脂と共に加熱して低水分化されかつ加熱調理香が付加された食品素材を固液分離し、分取した固形の食品素材を水性調味液に含浸して水分量が2倍以上に膨潤させ、次いで粉砕および混練し粒子径300μm以下のペースト状調味料とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、料理用調味料に関するものであり、詳しくは加熱調理香を有する半固形状の食品素材からなるペースト状調味料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油脂を必須成分とする調味料の1つとしてシーズニングオイルがあり、これは風味成分を含んだ油脂であり、食品素材に含まれる風味成分を抽出した油脂と食品素材とを加熱抽出後に分離して得られるものである。すなわち、加熱した油脂中に、肉類、魚介類、野菜類などの食品素材を浸漬し、スパイス(香辛料)や調味料を必要に応じて添加して加熱調理し、前記の食品素材に由来する風味や香りを油脂に移行させたものがシーズニングオイルである。
【0003】
一方、シーズニングオイルを加熱抽出した後に抽出残渣として残る食品素材は、これを有効に利用せずに廃棄処分する場合が多い。
【0004】
また、シーズニングオイルに抽出残渣の食品素材を添加した調味料も知られており、本願の出願人が先に出願した発明として、野菜や肉などの食品素材に畜肉の油脂を加えて加熱処理し、抽出油から分離した残渣を粉砕して得た粉砕残渣ペースト状物を前記抽出油と混合したペースト状オイル調味料が公知である(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−8620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した従来のペースト状調味料では、シーズニングオイルの製造時に副生した食品素材をそのまま油脂と共に磨り潰して製造しているので、脂質が約70%を占めるものであって油性の香り成分は強く残るが、水溶性成分である旨みは充分に感じられにくいという問題点がある。
【0007】
また、食品素材は、強くローストされているものであるから、水分量は少なくて硬くなり、ペースト状に調整しても舌触りがザラザラとして食感が良くない。さらにこれを包装用の合成樹脂フィルム製の袋に充填すると、袋に硬い食品素材の粒子が当たってピンホールが形成されやすくなっており、食品素材が漏れる場合がある。さらには硬い食品素材の粒子がジッパーなどのシール部分に侵入すると、容器の密閉性が損なわれる。
【0008】
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して、従来のペースト状調味料の欠点を改良し、水溶性成分である旨みは充分に感じられ、ペーストの粒子が柔らかくて舌触りなどの食感がよく、そのような柔らかい粒子によって合成樹脂フィルム製の袋に充填しても袋が傷つき難く、また収容した袋のジッパーなどの開閉シール部分に侵入しても容器の密閉性が損なわれ難いペースト状調味料であり、またそのようなペースト状調味料を安定した品質で効率よく製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、この発明においては、食用油脂と共に加熱して低水分化されかつ加熱調理香が付加された食品素材に水性調味液を含ませて膨潤させ、これを粉砕および混練したものからなるペースト状調味料としたのである。
【0010】
このように構成されたこの発明のペースト状調味料は、食品素材に加熱調理香が保持されており、かつ低水分化されているが、食品素材に水性調味液を含ませて膨潤させることにより、水性調味液の呈味と食品素材由来の水溶性旨み成分を有するものになる。
【0011】
また、水分を含ませて膨潤させた際に食品素材は柔らかくなっており、これを粉状に粉砕し、かつ混練することにより、舌触りのよい滑らかなペーストになる。
【0012】
このような有利な点の多いペースト状調味料を確実に効率よく製造するためには、食品素材を食用油脂と共に加熱して低水分化されかつ加熱調理香が付加された食品素材を固液分離し、分取した固形の食品素材に水性調味液を吸収させて膨潤させ、次いで粉砕および混練するペースト状調味料の製造方法を採用できる。
【0013】
また、舌触りがよくて滑らかなペーストを製造するためには、膨潤状態が、低水分状態に比べて水分量が2倍以上となる膨潤状態を採用することが好ましく、さらに好ましくは、粉砕および混練する条件として、粒子径300μm以下に磨り潰す条件を採用してペースト状調味料を製造する。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、食用油脂と共に加熱された食品素材に水性調味液を含ませて膨潤させてから、粉砕および混練したペースト状調味料としたので、水性調味液の呈味と食品素材由来の水溶性旨み成分を有し、かつ柔らかくて舌触りなどの食感がよく、また合成樹脂フィルム製の袋に充填しても袋が傷つき難く漏れ難く、またジッパーなどのシール部分に侵入しても容器の密閉性が損なわれないペースト状調味料となる利点がある。
【0015】
また、ペースト状調味料の製造方法として、食品素材を食用油脂と共に加熱して固液分離した後、粉砕および混練する前に、分取した固形の食品素材に対して水性調味液を吸収させて膨潤させるだけでよいので、前記した有利な効果のある高品質のペースト状調味料を効率よく製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本願の各請求項に係る発明に用いる食品素材は、食品またはその素材であればよく、たとえば食用の畜肉類(牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉など)、食用卵(鶏卵など)、魚介類(魚、エビ、イカなど)、野菜(タマネギ、トマト、ニンニク、ネギなど)、果物、海藻類などであり、その他にも可食性素材であれば、何ら限定なく採用できる。
【0017】
本願の各請求項に係る発明に用いる食用油脂は、取り扱い易さの点から常温で液状の食用油が好ましいが、その他の理由では特に融点等を限定して採用するものではなく、シーズニングオイルとして通常使用可能な食用油を用いることが好ましい。
【0018】
因みに、食用油は、精製の度合いに応じてサラダ油、精製油(白絞油)、特製油に区別されるが、いずれでも採用可能であり、好ましくは食用油脂として遊離酸が少なく、良好な香味、美麗な色沢を有するものを採用する。
【0019】
また、具体的な食用油脂としては、オリーブ油、大豆油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、ナタネ油、落花生油、ツバキ油などの植物油脂が代表例として挙げられる。また、動物性油脂として、牛脂(パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸の各グリセリドを主要成分とする。)、羊脂、乳脂なども例示できる。
【0020】
前記した食品素材を上記した食用油脂と共に加熱する際、または加熱調理香が付加された食品素材に水性調味液を含ませて膨潤させやすくするには、食品素材の大きさを適当に小さくすることが好ましく、例えば5mm角から50mm角程度の粒またはブロックに裁断して加熱調理する。
【0021】
食品素材を食用油脂と共に加熱するには、電気やガスなどの燃焼熱で高温に加熱可能な金属製容器内に食品素材および食用油脂を入れ、混合しながら加熱調理臭が発生するように加熱する。その加熱により、食品素材は、好ましくは水分含有率を5%以下となるまで加熱され、充分に水分を蒸発させる。
【0022】
次に、粉砕された加熱調理臭のある食品素材と食用油脂の混合物を、沈殿、遠心分離、または濾布や金網などのメッシュでろ過し、すなわち、周知の固液分離操作をして加熱調理香を有する固形状の食品素材のみを分取する。このものは、いわゆるシーズニングオイルの残渣であってもよい。
【0023】
次いで、分取した残渣の固形状の食品素材に水性調味液を吸収させ、膨潤させる。
この発明に使用する水性調味液は、固形の食品素材に吸収可能であって、これを膨潤させえるものであればよく、特に固形の食品素材を柔らかくする調味液であれば特にその調味液の種類を限定したものではない。
【0024】
水性調味液としては、塩水、液糖、蔗糖水、醤油、アミノ酸液その他の化学調味料水溶液、調味用酒(日本酒、洋酒など)、みりん、その他周知の調味液(HAP、HVP液、酵母エキス液等)などが挙げられ、例えば水分を50〜99%程度含有する調味用水溶液とし、食品としての保存性を高めるために、塩分、糖分、pHなどを調整する。
【0025】
水性調味液は、食品素材1に対して1〜10倍容積量を混合し、充分に膨潤させる。また、このような膨潤状態は、それ以前の低水分状態に比べて水分量が大きくなり、かつ食品素材が滑らかなペースト状に磨り潰せる程度に軟化できればよく、例えば水分量が加熱して低水分化された時に比べて例えば1.5から4倍程度、好ましくは2倍以上、例えば2〜4倍の水分を含む膨潤状態であることが好ましい。
【0026】
次に、このような水性調味液で膨潤した食品素材を粉砕および混練するには、目的に応じて粉砕すればよいが、例えばマスコロイダーや、コミトロールなどの食品用の粉砕機を用いて粉砕し、かつ混練する。粉砕と混練を同時に行なう方法としては、磨砕機を用いて磨り潰すことが好ましい。
【0027】
粉粒体状とする食品素材の大きさは、合成樹脂フィルム製の袋に充填した場合の袋の傷つき性を確実に防止するには、最大粒径1mm以下であることが好ましく、より好ましくは粒子径300μm以下である。また柔らかくして舌触りなどの食感がよくするためには、例えば20メッシュ以下の粒径(正方形の網目0.833mmを通過する粒径)とすることが好ましく、より好ましくは40メッシュ以下である。
【0028】
このように調製されたペースト状調味料は、水分を含んで膨潤した柔らかな食品素材をペースト状にしたものであるから、極めて滑らかな舌触りのものであり、包装用の合成樹脂フィルム製の袋に充填した際に、ピンポールが形成されることなく、食品素材が漏れる恐れがない。また食品素材の粒子がジッパーなどのシール部分に侵入しても柔らかいので、シール噛みの現象はなく、容器の密閉性が保たれる。
【実施例1】
【0029】
皮を剥いたガーリック(大蒜)1kgをフレーク状に薄く切り、パーム油と米油の混合物1.5kgをステンレス鋼製容器に入れ、プロパンガスの燃焼熱で加熱しながら、混合し、加熱調理臭が発生するように50分間加熱してから網上で油分を切り、水分4.5%のフレークを得た。
【0030】
次いで、この加熱調理臭のあるフレーク状ガーリックを塩分27%水溶液に対して、水飴、清酒を適量添加した調味液に1時間浸し、体積1.5倍程度に膨潤させた後、コロイドミル式の粉砕機でガーリックを摩擦・せん断・分散作用によって粉砕した。次に、粉砕されたガーリックを混練し、適量のローストガーリックオイル、ガーリックエキスを添加して2kgのペースト状調味料を製造した。
【0031】
得られたペースト状調味料の組成は以下に示す通りであった(以下の組成中の%は重量%である。)。
調理ガーリック(フレーク) 21%
食塩 10%
水 26%
水飴 25%
清酒 9%
ローストガーリックオイル 3%
ガーリックエキス 4%
酒精 2%
合計100%
【0032】
得られたペースト状調味料、およびこれをコンソメスープに0.5重量%添加したものを成人男女各5名からなる合計10名のパネラーに試食させたところ、調味料自体は滑らかな食感で舌触りがよく、またコンソメスープには旨みが加わっており、大変美味であるとの評価がほぼ全員から得られた。
【実施例2】
【0033】
皮を剥いたオニオン(玉ねぎ)1kgを微塵切りとし、パーム油と米油の混合物1.5kgをステンレス鋼製容器に入れ、プロパンガスの燃焼熱で加熱しながら、混合し、加熱調理臭が発生するように50分間加熱してから網上で油分を切り、水分5%のフレークを得た。
【0034】
次いで、この加熱調理臭のあるフレーク状オニオンを塩分30%水溶液に対して、ワイン、ソルビットを適量添加した調味液に1時間浸し、体積1.5倍程度に膨潤させた後、コロイドミル式の粉砕機で摩擦・せん断・分散作用によって粉砕した。次に、粉砕されたオニオンを混練し、アルコールとオニオンエキスを添加して2kgのペースト状調味料を製造した。
【0035】
得られたペースト状調味料の組成は以下に示す通りであった。
調理オニオン(フレーク) 12%
食塩 10%
水 22%
ソルビット 37%
ワイン 3%
オニオンエキス 13%
酒精 3%
合計100%
【0036】
得られたペースト状調味料およびこれをコンソメスープに0.5重量%添加したものを成人男女各5名からなる合計10名のパネラーに試食させたところ、調味料自体は滑らかな食感で舌触りがよく、またコンソメスープには旨みが加わっており、大変美味であるとの評価がほぼ全員から得られた。
【実施例3】
【0037】
皮を剥いたエシャロット1kgを微塵切りとし、パーム油と米油の混合物1.5kgをステンレス鋼製容器に入れ、プロパンガスの燃焼熱で加熱しながら、混合し、加熱調理臭が発生するように50分間加熱してから網上で油分を切り、水分5%のフレークを得た。
【0038】
次いで、この加熱調理臭のあるフレーク状エシャロットを塩分35%水溶液に対して、ワイン、水飴、砂糖を適量添加した調味液に1時間浸し、体積2倍程度に膨潤させた後、コロイドミル式の粉砕機で摩擦・せん断・分散作用によって粉砕した。次に、粉砕されたエシャロットを混練し、アルコールを添加して2kgのペースト状調味料を製造した。
【0039】
得られたペースト状調味料の組成は以下に示す通りであった。
調理エシャロット(フレーク) 14%
食塩 7%
水 14%
水飴 45%
ワイン 14%
砂糖 3%
酒精 3%
合計100%
【0040】
得られたペースト状調味料およびこれをコンソメスープに0.5重量%添加したものを成人男女各5名からなる合計10名のパネラーに試食させたところ、調味料自体は滑らかな食感で舌触りがよく、またコンソメスープには旨みが加わっており、大変美味であるとの評価がほぼ全員から得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用油脂と共に加熱して低水分化されかつ加熱調理香が付加された食品素材を水性調味液に含浸して膨潤させ、これを粉砕および混練したものからなるペースト状調味料。
【請求項2】
食品素材を食用油脂と共に加熱して低水分化されかつ加熱調理香が付加された食品素材を固液分離し、分取した固形の食品素材を水性調味液に含浸して膨潤させ、次いで粉砕および混練することからなるペースト状調味料の製造方法。
【請求項3】
膨潤状態が、低水分状態に比べて水分量が2倍以上となる膨潤状態である請求項2に記載のペースト状調味料の製造方法。
【請求項4】
粉砕および混練することが、粒子径300μm以下に磨り潰すことである請求項2または3に記載のペースト状調味料の製造方法。

【公開番号】特開2006−34264(P2006−34264A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223540(P2004−223540)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(593015540)ファインフーズ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】