説明

ペースト製造方法およびペースト製造装置

【課題】十分な分散性を有するペーストを提供するとともに、ぺースト製品中への異物の混入を低減し、かつ分散機部材の破損を低減させることが可能なペーストの製造方法およびペースト製造装置を提供する。
【解決手段】円筒容器中に、該円筒容器と同軸上に回転可能なローターと、ローター外周部に配した自公転可能なローラーを配したころ式分散機を用いて、ローターを駆動させ、ローラーが円筒容器の内壁に接しながら自公転することにより、ローラーと円筒容器内壁間に注入された被処理ペーストを混練する分散処理を含むペースト製造方法であって、分散処理中の該分散機内のペーストの圧力を20kPa以上の圧力に保持することを特徴とするペースト製造方法、およびペースト製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト製造方法およびペースト製造装置に関し、特にディスプレイ用ペーストの製造に好適なペースト製造方法およびペースト製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、回路材料やディスプレイにおいては小型化・高精細化が進んでおり、これに対応することができるペースト分散技術が求められている。特に、プラズマディスプレイにおいては、隔壁形成時にはガラス粉末などの無機粒子を、電極形成時には銀などの導電性粉末を含むペーストを用い、これらを高精度でパターン加工されて隔壁や電極が形成される。
【0003】
高精度のパターン加工を実施するためには、用いられるペースト成分中に含まれる無機粒子や導電性粉末がその要求される粒子径や表面特性などを維持しつつ、かつ十分に分散されていることが必要となる。
【0004】
これらのペーストの分散を行う方法として、アトライタ、ペイントシェーカ、サンドミル、ボールミル、ビーズミル、などの媒体型分散機が提案されている。
【0005】
しかしながら、媒体としてボールやビーズ等を充填したボールミルやビーズミルは、媒体との衝突あるいは衝撃力を付与して無機粒子などを含む被分散処理ペーストを分散させるもので、高分散性が得られる反面、媒体の衝突や衝撃による粉砕力が大きすぎて被分散粒子の粒子径の低下や比表面積の増大などの表面特性および化学的変化を招き、所定の特性を有するペーストを得ることが困難であった。
【0006】
このような問題を解決する手段としてころ式分散機が提案されている(例えば、特許文献1)。ころ式分散機は、ころとベッセルの摺り合わせにより無機粒子などを含む被分散処理物を分散させるもので、被分散処理物中の粒子の状態の変化が他の分散装置と比較すると少なく、表面処理粒子や軟質粒子を分散する際、その粒子形状を変化させたくない場合に好ましく用いることができる。
【0007】
しかしながら、この分散機を用いて硬い粒子を分散させようとすると、上記目的は達成できるももの、この分散機を構成する部材を、分散させようとする粒子より硬いかあるいは同等の硬度をもつ部材から構成する必要がある。分散させようとする粒子がセラミック粉末のような場合、分散機を構成する部材としてセラミック部材が使用される。
【0008】
セラミック部材で構成されたころ式分散機は、その分散作用中に割れや欠けのなどの破損がしばしば発生する。このことにより、ペースト製品中に分散機構成部材などの異物が混入して品質を低下させる問題や、また分散機が破損することで修理などのために稼動率が低下しひいては生産性が低下したりする問題があった。
【特許文献1】特開平11−197479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたもので、表面処理粒子や軟質粒子を分散する際、分散処理物中の粒子の粒子径や表面状態を変化させることなく、かつ十分な分散性を有するペーストを提供するとともに、ぺースト製品中への異物の混入を低減し、かつ分散機部材の破損を低減させることが可能なペーストの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るペースト製造方法は、円筒容器中に、該円筒容器と同軸上に回転可能なローターと、ローター外周部に配した自公転可能なローラーを配したころ式分散機を用いて、ローターを駆動させ、ローラーが円筒容器の内壁に接しながら自公転することにより、ローラーと円筒容器内壁間に注入された被処理ペーストを混練する分散処理を含むペースト製造方法であって、分散処理中の前記分散機内のペーストの圧力を20kPa以上の圧力に保持することを特徴とする方法からなる。
【0011】
上記ペースト製造方法に用いる分散機は、ローターが円筒容器内で回転すると、その遠心力でローターの各溝内に装入されているローラーが円筒容器の内壁面に当接して自転しながら円筒容器内を公転する。円筒容器とローターの隙間内のペーストは、このローラーにより円筒容器の内壁面に押しつけられ、圧縮、剪断作用を受け分散が促進される。さらに、ローターの回転による遠心力により、上記溝の内壁とローラーの外周面との間に隙間が形成され、この隙間にもペーストが入り込み、該溝で回転するローラーにより、ここでも強力な圧縮、剪断作用を受け分散が促進されることになる。
【0012】
ここで、円筒容器内でペーストが圧縮、剪断作用をくり返し受ける際、ペーストが発泡し、微小な泡が発生する。円筒容器内は略密閉された構造であるので、発生した泡はペーストと共に円筒容器内に一定時間滞留した後、ペーストと共に流出する。この微小な泡は、円筒容器内で滞留中に集積して一定の大きさの泡となり円筒容器内でペーストを排除した空隙を形成する。この空隙部にはペーストが充満しないため、円筒容器、空隙部のローター、ローラーがペーストで潤滑されることなく直接接触しながら回転、摺動を行うことになり、円筒容器、ローター、ローラーは直接擦れあうため、局部的な発熱や摩滅を生じ、円筒容器、ローター、ローラーは熱膨張や熱衝撃により破損し易くなる。
【0013】
このとき、円筒容器内のペースト圧力が20kPa以上であるとペーストの発泡を抑制でき、集積して大きな泡が生成することを抑制できる。円筒容器内に滞留する泡を減らすことができるため、ローター、ローラーがペーストで潤滑されることなく直接接触しながら回転、摺動を行う機会が減り、円筒容器、ローター、ローラー等の分散機部材の摩耗、破損を低減することができ、摩耗粉などの異物の混入の少ない高品質のペーストを得ることができる。
【0014】
上記円筒容器内ペースト圧力は、好ましくは、20〜1000kPaであることが望ましい。分散機内ペースト圧力が20kPa未満であると、上述したように分散部内でペーストが圧縮、せん断作用を受けた際、泡の発生を抑制する効果が十分でなく好ましくない。また、分散機内ペースト圧力の上限は、泡の発生の観点からは特に制限されるものではないが、分散装置の耐圧や、ポンプの性能など実用面を考慮すると、1000kPa以下であることが好ましい。
【0015】
本発明のペースト製造方法によりペーストの分散処理を行うことにより、良好な分散状態でかつ摩耗粉等の異物の混入も少ないペーストを製造できる。前述したように、プラズマディスプレイにおいては高精細化が進んでおり、これに対応することができる高精度なペースト分散技術が求められている。本発明による異物の混入の少ないペーストの製造方法は、プラズマディスプレイ部材形成用ペースト(電極形成用ペースト、誘電体層形成用ペースト、隔壁形成用ペースト、蛍光体形成用ペーストなど)に適している。
【0016】
また、本発明は、
(A)ペースト注入手段と、
(B)該ペースト注入手段に連接して設置された、円筒容器中に該円筒容器と同軸上に回転可能なローターと、ローター外周部に配した自公転可能なローラーを配したころ式分散機からなる分散部と、
(C)該分散部に連接して設置された流量制御手段と、
を具備することを特徴とするペースト製造装置を提供する。
【0017】
(A)ペースト注入手段と、(B)円筒容器を配したころ式分散機と、(C)流量制御手段を順次具備したことにより、(A)、(B)2つの手段により円筒容器内ペースト圧力を適当な圧力に制御することができ、このことにより、分散部内でのローター・ローラーの運動により発生する圧縮・せん断作用により生じる泡の発生を抑制し、結果円筒容器、ローラー、ローターの摩滅を低減でき、超寿命なペースト製造装置を提供できる。
【0018】
円筒容器内ペースト圧力を20kPa以上に保持しようとする際、ペースト注入手段だけであると、ペースト圧力の上昇とともにペースト流量も増加してしまい、ペーストの円筒容器内滞留時間が減少し、十分な分散がなされない。また、流量制御手段だけであると、円筒容器内ペースト圧力を20kPa以上に保持しようとする際、ペースト圧力の上昇と共にペースト流量が減じてしまい、所定の生産能力を発揮できない。本ペースト製造装置においては、ペースト注入手段および流量制御手段を兼備することが必要である。
【0019】
ペースト注入手段としては、通常のポンプを用いる手段やペーストタンクを加圧して圧送する方法を適宜用いることができる。ペースト注入手段としてのポンプの例としては、単段渦巻ポンプ、多段渦巻ポンプ、単段タービンポンプ、ボアーホールポンプなどの遠心ポンプ、軸流ポンプ、斜流ポンプなどのプロペラポンプ、単段渦流ポンプ、多段渦流ポンプなどの粘性ポンプ、横ピストンポンプ、堅ピストンポンプ、横型ブランヂャーポンプ、堅型ブランヂャーポンプ、ダイヤフラムポンプ、チューブポンプ、ウイングポンプなどの往復動ポンプ、エクスターナルギアーポンプ、インターナルギアーポンプ、偏心ネジポンプ、ベーンポンプ、ローラーポンプな どの回転ポンプが挙げられる。さらには定量ポンプであることが好ましい。定量ポンプを用いることで、円筒容器内ペーストの圧力変動を小さく保つことができ、泡の発生を抑制できる。定量性の良いポンプの具体例としては、偏心ネジポンプ、ダイヤフラムポンプ、ローラーポンプなどが好ましい。
【0020】
また、これらのポンプの接液部は、アルミナ、ジルコニア、アルミナ/ジルコニア混合物、炭化珪素、サイアロンなどのセラミックス材で作製されていることが、耐摩耗性を向上できるため好ましい。
【0021】
また、本発明のペースト製造装置においては、前記ころ式分散機の円筒容器、ローター、ローラーなどの分散機構成部材がセラミック材料からなることが好ましい。円筒容器、ローター、ローラーが分散機構成部材がセラミック材料からなることで、プラスチック材料、金属材料などと比較して摩滅粉を格段に減らすことができ、この摩滅粉がペースト中に異物をして混入するのを防止できる。またペーストが絶縁性ペーストの場合は、金属粉の混入は致命的であり、これらのにセラミック材料の例としては、アルミナ、ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ、炭化珪素などを用いることができる。
【0022】
また、本発明のペースト製造装置においては、前記流量制御手段が細孔を多数有する濾過部材からなることが好ましい。円筒容器に連接して濾過部材を配したことで、分散機内で発生する、分散機を構成する部材(円筒容器、ローラー、ローターなど)の摩滅粉がペースト中に異物として混入するのを防止できる。また、円筒容器内ペースト加圧の程度をその濾過部材の目開き、空隙率などにより調節することができる。
【0023】
細孔を多数有する部材の例としては、金属粉焼結体、金属繊維不織布、ポリマー繊維不織布、ガラス繊維紙、セルロース繊維紙、ポリマー平膜に細孔を配したものなどを用いることができる。これらは、板状、筒状、プリーツ状に折り畳み筒状に加工したものなどを用いることができる。さらに好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン等の不織布をプリーツ状に折り畳み筒状にしたもの等が挙げられる。また、細孔を有する部材の孔径が、ペーストが流入する側からペーストが流出する側にいく程、小孔径になるように構成された傾斜型孔形状を有するものも好ましく用いることができる。
【0024】
細孔を多数有する部材の目開きは、5μm〜1000μmの範囲であることが好ましい。細孔の目開きがこの範囲より小さいと流量制御部での圧損が大きくなり分散装置に過大な圧力を生じる好ましくない。また、細孔の目開きがこの範囲より大きいと、必要とする濾過精度が得られない。さらには、細孔を多数有する部材の保留粒子径としては10μm〜100μmであることが好ましい。
【0025】
また、本発明のペースト製造装置においては、分散部内の圧力を検出する手段と、分散部に連接された複数の濾過器、および該複数の濾過器を切り換える手段を具備し、分散部内の圧力が上限圧力を越えたとき、順次濾過器を切り換えて分散器内圧力を上限値以内に保持する機構を有することも好ましい態様である。これにより、分散機内の圧力が上限圧力を超えたとき、分散機を停止することなく濾過器を切り替えることができ、生産稼働率を向上できる。また、分散機内ペースト圧力を一定の範囲内に制御でき、ペースト品質も保持できる。
【0026】
圧力の検出手段としては、ブルドン管圧力計、隔膜式圧力計、電子式圧力計などを用いることができる。濾過器切り換え手段としては、流路にボールバルブなどを配して、圧力計からの信号によりバルブを作動させる方式などを用いることができる。
【発明の効果】
【0027】
このように本発明によれば、ころ式分散機を用いて、分散部内ペースト圧力を20kPa以上に保持することより、分散部内での泡の発生を抑制でき、円筒容器、ローター、ロータが泡のため直接接触することで発生する部材の摩滅を低減でき、異物混入の少ないペーストを製造することができる。また、分散部に連接して流量制御手段を有することで、 円筒容器、ローター、ロータの摩滅を低減でき、長寿命のころ式分散機を提供できる。また、併せてペースト中の粗大物を除去できるため高品質のペーストを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明について、望ましい実施の形態とともに、図面も参照しつつ詳細に説明する。なお、以下にプラズマディスプレイ(PDP)部材形成用ペーストを例にとって本発明を説明するが、本発明は、これに限定されず、塗料、インキ、製造においても好ましく適用されるものである。
【0029】
図1は、本発明の一実施態様におけるころ式分散機を示しており、図2は、図1の一つのローラー部を示している。図において、1は円筒容器を示しており、該円筒容器1中に、該円筒容器1と同軸上に(回転軸3に対して同軸上に)回転可能なローター2と、ローター2の外周部に配した自公転可能なローラー5を配したころ式分散機として構成されている。各ローラー5は、ローター2の外周面上に形成された溝4中に配されており、円筒容器1とローター2の外周面との間には、各ローラー5が自公転するに十分な隙間7が形成されている。ローラー5と溝4との間には、ローラー5を溝4内に保持しつつローラー5の自転を許容するわずかな隙間6が形成されている。また、本実施態様では、円筒容器1はジャケット11で覆われており、ジャケット11と円筒容器1の外周面との間には、所定の温度にコントロールされた冷媒または温媒を導入する冷温媒導入路a(12)が形成されており、回転軸3内には、冷温媒導入路b(13)が形成されている。
【0030】
本発明に係るペースト製造方法およびペースト製造装置に用いる上記のようなころ式分散機においては、ローター2が円筒容器1内で回転すると、その遠心力でローター2の各溝4内に装入されているローラー5が円筒容器1の内壁面に当接して自転しながら円筒容器1内を公転する。円筒容器1とローター2の隙間7内のペーストは、このローラー5により円筒容器1の内壁面に押しつけられ、圧縮、剪断作用を受け分散が促進される。さらに、ローター2の回転による遠心力により、溝4の内壁とローラー5の外周面との間に隙間6が形成され、この隙間6にもペーストが入り込み、溝4で回転するローラー5により、ここでも強力な圧縮、剪断作用を受け分散が促進される。
【0031】
上記のようなころ式分散機により、本発明における分散部が構成される。本発明に係るペースト製造装置は、上記のようなころ式分散機を本発明における分散部として用い、例えば図3や図4に示すように構成される。
【0032】
図3に示すペースト製造装置100においては、予め粗分散されたペーストを収容した粗分散ペーストタンク21からの粗分散ペーストが、ペースト注入手段としての送液ポンプ22を介してころ式分散機からなる分散部23に供給され、分散されたペーストが、流量制御手段としての、細孔を多数有する濾過部24を通して、分散処理済みペーストタンク25内へと送られる。
【0033】
図4に示すペースト製造装置200においては、予め粗分散されたペーストを収容した粗分散ペーストタンク31からの粗分散ペーストが、ペースト注入手段としての送液ポンプ32を介してころ式分散機からなる分散部33に供給され、分散されたペーストが、流量制御手段としての、細孔を多数有する濾過部に送られる。濾過部は、本実施例では、複数の濾過部(濾過部a(35)、濾過部b(36))からなり、切替弁a(34)、切替弁b(37)により、順次切り換えられるようになっている。濾過部a(35)または濾過部b(36)を通過したペーストは、分散処理済みペーストタンク38内へと送られる。
【0034】
PDP用途のペーストを構成する成分は、無機粉末と有機成分とに大別することができる。無機粉末としては、ガラス粉末、蛍光体粉末、金属粉末、顔料などが挙げられる。また、耐火物フィラーを添加することも好ましい。ガラス粉末は、PDP用途の内、隔壁形成用途に好適に用いられる。
【0035】
ガラス粉末としては、主として低融点ガラスからなるものが好ましい。低融点ガラスのガラス転移温度としては430〜500℃が好ましく、ガラス軟化点としては470〜620℃が好ましい。ガラス転移温度とガラス軟化点がこの範囲にあると、焼成時に基板の歪みが小さく、また、緻密な隔壁層が得られる。また、ガラスは、50〜400℃の熱膨張係数が50×10-7〜100×10-7-1であることが好ましい。また、ガラス中に酸化珪素を3〜60重量%、酸化硼素を5〜50重量%の範囲で配合することによって、電気絶縁性、強度、熱膨張係数、絶縁層の緻密性などの隔壁として要求される電気、機械および熱的特性を向上することができる。
【0036】
また、ガラス粉末の粒子のサイズとしては、所望の隔壁の線幅や高さを考慮して選べばよいが、体積基準分布の中心径としては1〜6μm、最大粒子サイズとしては30μm以下、比表面積としては1.5〜4cm2/gが好ましい。
【0037】
蛍光体粉末は、PDP用途の内、蛍光体層形成用途に好適に用いられる。蛍光体粉末としては例えば、赤色では、Y23:Eu、YVO4:Eu、(Y,Gd)BO3:Eu、Y23S:Eu、γ−Zn3(PO42:Mn、(ZnCd)S:Ag+In23などが挙げられる。緑色では、Zn2GeO2:M、BaAl1219:Mn、Zn2SiO4:Mn、LaPO4:Tb、ZnS:(Cu,Al)、ZnS:(Au,Cu,Al)、(ZnCd)S:(Cu,Al)、Zn2SiO4:(Mn,As)、Y3Al512:Ce、CeMgAl1119:Tb、Gd22S:Tb、Y3Al512:Tb、ZnO:Znなどが挙げられる。青色では、Sr5(PO43Cl:Eu、BaMgAl1423:Eu、BaMgAl1627:Eu、BaMg2Al1424:Eu、ZnS:Ag+赤色顔料、Y2SiO3:Ceなどが挙げられる。
【0038】
また、蛍光体粉末のサイズとしては、面積平均径Dsとしては1.0〜2.5μmが好ましく、1.2〜2.3μmがより好ましく、体積基準分布の中心径Dvとしては1.8〜4.5μmが好ましく、2.0〜4.2μmがより好ましく、Ds/Dvとしては1.2〜2.5が好ましく、1.3〜2.3がより好ましい。Ds、DvおよびDs/Dvがこれらの範囲内にあることで、ペーストの濾過性が向上する。
【0039】
金属粉末は、PDP用途の内、電極形成用途に好適に用いられる。金属粉末としては、Ag、Au、Pd、Ni、Cu、AlおよびPtの群から選ばれる少なくとも1種を含むものが使用できる。これらは、それぞれを単独で用いてもよいし、合金として用いてもよいし、粉末を混合して用いてもよい。
【0040】
金属粉末のサイズとしては、体積基準分布の中心径としては0.7〜6μmが好ましく、より好ましくは1.3〜4μmである。体積基準分布の中心径がこの範囲内にあることで、緻密な微細パターンの形成が可能となる。
【0041】
耐火物フィラーは、焼成時の形状を安定させるために好ましく添加される。耐火物フィラーとしては、500〜650℃程度の焼成温度で軟化しないものが広く使用でき、高融点ガラスやアルミナ、マグネシア、カルシア、コーディエライト、シリカ、ムライト、ジルコン、ジルコニア等のセラミックス粉末が例示できる。
【0042】
顔料は、PDPの背面板における隔壁の光反射特性を調整する上で、好ましく採用される。例えば、Co−Cr−Fe系、Co−Mn−Fe系、Co−Fe−Mn−Al系、Co−Ni−Cr−Fe系、Co−Ni−Mn−Cr−Fe系、Co−Ni−Al−Cr−Fe系、Co−Mn−AL−Cr−Fe−Si系等の黒色顔料を用いると、外交反射を低減し、表示画像のコントラストを上げることができる。また、例えば、チタニアなどの白色顔料を用いると、蛍光体の発光を有効にパネル前面に導くことができ、より鮮やかな色彩を表示することができる。
【0043】
無機粉末のペーストに対する含有量としては、35〜95重量%が好ましく、40〜90重量%がより好ましい。この範囲内とすることで、焼成時の収縮や、形状変化を抑えることができる。
【0044】
有機成分としては、バインダー樹脂、有機溶剤、可塑剤、酸化防止剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤などを挙げることができる。バインダー樹脂としては、焼成時に酸化、および/または分解および/または気化し、炭化物が無機物中に残存しないものが好ましく、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等のセルロース系樹脂、または、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート等の重合体もしくはこれらの共重合体からなるアクリル樹脂、ポリ−α−メチルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリブテン等が好ましく用いられる。バインダー樹脂のペーストに対する含有量としては、5〜65重量%が好ましく、10〜60重量%がより好ましい。
【0045】
有機溶剤は、ペーストの粘度の調整のために使用される。有機溶剤としては例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、テルピネオール、ベンジルアルコール、1−ブトキシ−2−プロパン、1,2−ジアセトキシプロパン、1−メトキシ−2−プロパノール、2−アセトキシ−1−エトキシプロパン、(1,2−メトキシプロポキシ)−2−プロパノール、(1,2−エトキシプロポキシ)−2−プロパノール、2−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、2−フェノキシエタノール、2−(ベンジルオキシ)エタノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラフルフリルアルコール、2,2’−ジヒドロキシジエチルエーテル、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−フェノキシエチルアセテート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、シクロヘキサンノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、1−メチルペンチルアセテート、2−エチルブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトンなどが挙げられる。
【0046】
また、有機溶剤は、その揮発性と使用するバインダー樹脂の溶解性を主に考慮して選定することができる。有機溶剤は、用いるバインダー樹脂に対して良溶媒であることが好ましい。バインダー樹脂に対する溶解性が高いと有機溶剤を採用することにより、ペーストの粘度の調整が容易となり、良好な塗布特性を得ることができる。
【0047】
有機溶剤のペーストに対する含有率としては、35〜65重量%が好ましく、より好ましくは40〜60重量%である。35重量%以上とすることにより、脱泡処理を容易に行うことができる。また65重量%以下とすることによって、安定な分散状態を得ることができ、また乾燥に要するエネルギーと時間を節約できる。
【0048】
また、ペーストを感光性ペーストとして用いる場合には、有機成分として、感光性ポリマー、感光性オリゴマー、感光性モノマーといった感光性成分や光重合開始剤、増感剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤などの添加物成分を挙げることができる。
【0049】
感光性モノマーとしては、活性な炭素−炭素不飽和二重結合を有する官能基を有する化合物を好ましく採用することができる。官能基としては例えば、ビニル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基を有する単官能および多官能化合物が応用できる。化合物としては例えば、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。
【0050】
感光性ポリマーおよび/または感光性オリゴマーは、感光性ペーストのバインダー樹脂として兼用することもできる。感光性ポリマーおよび感光性オリゴマーは、上記のような感光性モノマーの重合または共重合により得られる。
【0051】
上記のような感光性モノマーと共重合する他の共重合成分として例えば、不飽和カルボン酸などの不飽和酸は、感光後のアルカリ水溶液による現像性を向上することができるので好ましい。不飽和カルボン酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸およびこれらの酸無水物などが挙げられる。
【0052】
光重合開始剤の感光性ペーストに対する添加量としては、0.005〜5重量%が感光特性上好ましい。
【実施例】
【0053】
[測定・評価方法]
(1)ペースト粘度
B型回転粘度計を用いて、25℃にて測定した。
【0054】
(2)分散性
使用装置:グラインドゲージ(エリクセン製、0〜15μmおよび0〜50μm)。
測定方法:つぶの分布密度を観察し、密集したつぶが現れた箇所の目盛りを読みとった。ただし、密集したつぶの境界線が目盛りと目盛りの中間に現れたとき、または2本の溝の数値が異なるときは、数値の大きい方の目盛りを読みとり、3回の測定値の中央値をペーストの分散度とした。
判定基準:数値が大きいことは、分散性が悪いことを示す。
【0055】
(3)円筒容器、ローター、ローラーの表面状態観察
100時間使用後の円筒容器、ローター、ローラーの表面状態を目視およびマイクロスコープ(倍率:80倍)により、表面クラックの派生状態を観察し、下記の基準により評価した。
A:マイクロスコープで確認可能なクラックがない。
B:マイクロスコープで確認可能だが、目視では確認不可能なクラックがある。
C:目視で確認可能なクラックがある。
【0056】
(4)ペースト圧力
円筒容器と濾過部の連接部に設置した隔膜式圧力計の指示値をペースト圧力とした。
【0057】
実施例1〜4、比較例1〜2
[粗分散ペーストの調製]
酸化鉛、酸化ホウ素、酸化亜鉛、酸化シリコン、および酸化バリウムを主成分とするガラスを粉砕して得た平均粒径2μmのガラス粉末52重量%、メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(重量組成比60/40、重量平均分子量32000)12重量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート12重量%、ベンゾフェノン1.94重量%、1,6−ヘキサンジオール−ビス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.05重量%、有機染料(ベーシックブルー7)0.01重量%、有機溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)22重量%を、感光性ペーストの構成成分とした。
【0058】
この組成のペーストを各実施例、比較例で300kgずつ計量を行い、プラネタリーミキサー(井上製作所製)にて60rpmで60分間攪拌し、粗分散ペーストとした。
【0059】
〔混練処理〕
引き続き、粗分散ペーストをネジ式ポンプを介して、円筒容器中に、該円筒容器と同軸上に回転可能なローターと、ローターの外周部に配した溝部内に自公転可能なローラーを配したコロ式分散機からなる分散部および、分散部に連接した細孔を多数有する部材を配した流量制御部にペーストを供給し、ローターの回転数を400rpm、供給速度を2.5kg/hrになるように定量ポンプを設定し、分散処理を行い分散したペーストを得た。なお、冷温媒導入路には15℃の冷却水を循環させた。
【0060】
ころ式分散部の諸仕様および細孔部材からなる濾過部の諸仕様を表1に示した。また、実施例1〜4、比較例1、2にて得た分散時のペースト圧力、分散処理後のペーストの粘度、分散性を測定した結果を表1に示した。
【0061】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明におけるころ式分散機の一例を示す概略横断面図である。
【図2】図1のII部の拡大断面図である。
【図3】本発明の一例に係るペースト製造装置の概略構成図である。
【図4】本発明の別の例に係るペースト製造装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0063】
1 円筒容器
2 ローター
3 回転軸
4 溝
5 ローラー
6 わずかな隙間
7 隙間
11 ジャケット
12 冷温媒導入路a
13 冷温媒導入路b
21 粗分散ペーストタンク
22 送液ポンプ
23 分散部
24 濾過部
25 分散処理済みペーストタンク
31 粗分散ペーストタンク
32 送液ポンプ
33 分散部
34 切替弁a
35 濾過部a
36 濾過部b
37 切替弁b
38 分散処理済みペーストタンク
100、200 ペースト製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒容器中に、該円筒容器と同軸上に回転可能なローターと、ローター外周部に配した自公転可能なローラーを配したころ式分散機を用いて、ローターを駆動させ、ローラーが円筒容器の内壁に接しながら自公転することにより、ローラーと円筒容器内壁間に注入された被処理ペーストを混練する分散処理を含むペースト製造方法であって、分散処理中の前記分散機内のペーストの圧力を20kPa以上の圧力に保持することを特徴とするペースト製造方法。
【請求項2】
(A)ペースト注入手段と、
(B)該ペースト注入手段に連接して設置された、円筒容器中に該円筒容器と同軸上に回転可能なローターと、ローター外周部に配した自公転可能なローラーを配したころ式分散機からなる分散部と、
(C)該分散部に連接して設置された流量制御手段と、
を具備することを特徴とするペースト製造装置。
【請求項3】
前記流量制御手段が細孔を多数有する濾過部からなることを特徴とする、請求項2に記載のペースト製造装置。
【請求項4】
分散部内の圧力を検出する手段と、分散部に連接された複数の濾過器、および該複数の濾過器を切り換える手段を具備し、分散部内の圧力が上限圧力を越えたとき、順次濾過器を切り換えて分散器内圧力を上限値以内に保持する機構を有する、請求項2または3に記載のペースト製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−334533(P2006−334533A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163751(P2005−163751)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】