説明

ペーパーハニカム接着用二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物

【課題】接着強さのみならず破壊状態の観点からも総合的に接着信頼性の高い、ペーパーハニカムと板材との接着に好適な二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤を提供する。
【解決手段】ひまし油系ポリオールを含む主剤(A)と、ポリイソシアネート化合物を含む硬化剤(B)とからなり、主剤(A)及び/又は硬化剤(B)中に脱水剤(E)を含有する二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物であって、主剤(A)及び/又は硬化剤(B)中に樹脂製微小中空体(D)が配合されることを特徴とする、ペーパーハニカムと板材との接着に用いられる二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二液混合型ウレタン樹脂系接着剤組成物であって、特に、ペーパーハニカムと板材との接着性に優れた二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築用、車載用、船舶用等の分野におけるパネルには、樹脂発泡体、ハニカム材などの芯材を、鋼板、合板などの表面材(板材)で挟み込んだ構造を有するパネル(以下、このようなパネルを「サンドイッチパネル」と表記することがある)が多く用いられている。
【0003】
近年は、これらサンドイッチパネルの製造工程における芯材と板材との接着加工には二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤等が多く用いられている。その接着加工の工程では、接着剤を被着材(芯材又は板材)に塗布してからこれらを重ね合わせ、その後、常温で4〜24時間圧締する、又はホットプレスを用いて比較的短時間加熱加圧する。
このような接着工程において、例えば鋼板とペーパーハニカムからなるサンドイッチパネルを製造する場合に、接着強さが設計されたものよりも低くなることがある。これは、空気中又はペーパーハニカム中の水分が、硬化剤中のイソシアネート基に作用して二酸化炭素が発生(発泡)し、これによって最終的な接着剤硬化皮膜の強度が低下するためである。
【0004】
この問題を解決するために、多官能ポリエーテルポリオールと、ひまし油または変成ひまし油ポリオールを含有する主剤と、イソシアネート化合物からなる硬化剤とが配合され、硬化剤のイソシアネート基と主剤の水酸基との当量比が、NCO/OH=0.7〜2であるウレタン樹脂系接着剤組成物を用い、触媒として1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7およびその塩を使用することが提案されている。(特許文献1)。この技術は、多官能ポリエステルポリオールを配合することで架橋密度を向上させて硬化皮膜を硬くすることによって、接着強さを向上させることを意図しているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−282922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、芯材としてハニカムを使用する場合、ハニカムと板材との接着部位は線と面との接着となり、一般にフィレットと呼ばれる接着構造となる。
上記特許文献1の配合では皮膜が硬くなるために、接着強さの数値自体は高くなる。しかしながら、逆に硬化皮膜が硬くなるが故に、負荷された応力がフィレット部の接着界面に直接伝播して集中する結果、フィレットからペーパーハニカムが抜けるような破壊状態となってしまう。このような破壊状態では、仮に高い接着強さの数値が得られたとしても、接着信頼性の観点からは問題がある。すなわち、ハニカムと板材のような線状部材と面状部材との接着においては、通常の面状部材と面状部材との接着とは異なる考え方をしなければならない。
【0007】
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、接着強さのみならず破壊状態の観点からも総合的に接着信頼性の高い、ペーパーハニカムと板材との接着に好適な二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような問題を解決するために、本発明者らは、従来とは発想を転換し、硬化皮膜に適度な弾性を与え、応力をフィレット全体に分散させればよいと考えた。しかし、硬化皮膜自体を弾性体とすると破壊状態の観点からは好ましいが、接着強さの値は低くなってしまう傾向にあった。
そこで、さらに鋭意検討の結果、樹脂製の微小中空体を接着剤の硬化皮膜中に存在させることで、比較的硬い硬化皮膜でありながらも応力をフィレット全体に効率的に分散でき、ペーパーハニカムの材料破壊率を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、以下の第1〜第5の発明から構成される。
【0009】
第1の発明は、ひまし油系ポリオールを含む主剤(A)と、ポリイソシアネート化合物を含む硬化剤(B)とからなり、主剤(A)及び/又は硬化剤(B)中に脱水剤(C)を含有する二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物であって、主剤(A)及び/又は硬化剤(B)中に樹脂製微小中空体(D)が配合されることを特徴とする、ペーパーハニカムと板材との接着に用いられる二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物に関するものである。
二液混合型ウレタン樹脂系接着剤組成物に、脱水剤を含有することで、硬化時の発泡を抑制し皮膜凝集力を向上させることができる一方で、接着剤中に樹脂製微小中空体を存在させることで、応力をフィレット全体に効率的に分散でき、接着強さのみならず破壊状態の観点からも総合的に接着信頼性の高い、ペーパーハニカムと板材の接着用の二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤を得ることができる。
【0010】
第2の発明は、主剤(A)と硬化剤(B)の総和100質量部に対して、上記樹脂製微小中空体(D)が0.1〜1.5質量部含まれることを特徴とする、第1の発明に係る二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物に関するものである。
【0011】
第3の発明は、硬化剤(B)に含まれるポリイソシアネート化合物が、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(b1)及び/又はポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマー(b2)である、第1又は第2の発明に係る二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物に関するものである。
ポリイソシアネート化合物がこれらのものであると、良好な硬化皮膜を形成することができるという観点から好ましい。
【0012】
第4の発明は、さらに、主剤(A)及び/又は硬化剤(B)中に、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(e1)、その塩(e2)、及びアルキル錫化合物(e3)からなる群から選ばれる1種以上からなる触媒(E)を含有する、第1〜第3の発明に係る二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物に関するものである。なお、以下では、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7を「DBU」と表記することがある。
触媒としてこれらの化合物を含有すると、可使時間と硬化速度の両立、さらには低温時における硬化速度の促進という観点から好ましい。
【0013】
第5の発明は、主剤(A)と硬化剤(B)とを混合した直後の、23℃におけるB型回転粘度計(20回転/分)での粘度が3,000〜20,000mPa・sであり、B型回転粘度計の20回転/分に対する2回転/分の粘度比(TI値)が2.0〜5.5である、第1〜第4の発明に係る二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物に関するものである。
主剤と硬化剤の混合時の粘度及び粘度比が上記の範囲内であると、塗布作業性に優れるとともに、ペーパーハニカムに塗布したときにダレがないという観点から好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物は、ペーパーハニカムと板材の接着に好適に用いることができ、接着強さのみならず破壊状態の観点からも総合的に信頼性が高いというという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施するための最良の形態を、詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0016】
[二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤について]
二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤は、ポリオール化合物を主成分とする主剤と、ポリイソシアネート化合物を主成分とする硬化剤とからなる。使用時にこれら二液を混合することで、ポリオール化合物が有する水酸基とポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基とが反応することでウレタン結合を形成して硬化し、被着材を接着する。
【0017】
本発明の二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物は、主剤(A)にはひまし油系ポリオールが、硬化剤(B)にはポリイソシアネート化合物が含まれており、さらに上記主剤(A)及び/又は硬化剤(B)中に脱水剤(C)を含有している。そして、主剤(A)及び/又は硬化剤(B)中に樹脂製微小中空体(D)が配合されており、ペーパーハニカムと板材との接着に用いられるものである。
【0018】
[主剤(A)について]
本発明の主剤(A)には、上述のとおりひまし油系ポリオールが少なくとも含まれる。
本発明で用いる主剤(A)に含まれるひまし油系ポリオールとは、ひまし油、ひまし油とポリオールとのエステル交換反応生成物、ひまし油脂肪酸とポリオールとのエステル化反応物、及びこれらにアルキレンオキサイドを付加してなるポリオールなどであり、ひまし油及び/又はひまし油脂肪酸を原料として得られる末端水酸基を有するポリオールである。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ここで、「ひまし油」とは、リシノール酸のトリグリセライドを主成分とする脂肪油である。
ひまし油系ポリオールを用いる理由は、可使時間を長くしうると共に、疎水性のため水分の影響を受けにくく、結果として発泡し難い性質を有しているからである。
ひまし油系ポリオールの市販品としては、商品名「TLM」(豊国製油社製)、商品名「URIC H−30」(伊藤製油社製)等が挙げられる。
【0019】
また、主剤(A)中には、上述したひまし油系ポリオールが少なくとも含まれるが、これ以外にも、その他のポリオール化合物、充填剤、着色剤、可塑剤、安定剤などが含有されていてもよい。その他のポリオール化合物としては、ポリエーテル骨格、ポリエステル骨格、ポリオレフィン骨格、ポリビニル骨格、ポリアクリル骨格、ポリブタジエン骨格、ポリイソプレン骨格等の従来公知の主鎖構造を一種又は二種以上有するポリオール化合物が例示される。使用目的や求める性能に応じて、適宜ポリオール化合物を単独あるいは複数混合して用いればよい。
【0020】
[硬化剤(B)について]
本発明の硬化剤(B)には、上述のとおりポリイソシアネート化合物が含まれる。
ポリイソシアネート化合物としては、ポリウレタンの原料として用いられるものであれば、どのようなもので使用しうる。具体的には、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−又は2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(クルードMDI)などの芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ポリイソシアネート;3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)などの脂環式ポリイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)などのアリール脂肪族ポリイソシアネート;およびこれらのカルボジイミド変性またはイソシアヌレート変性ポリイソシアネートなどが挙げられる。また、これらは単独または2種以上を組合せて用いることもできる。
また、イソシアネート化合物として、下記のポリオール化合物に上記ポリイソシアネート化合物を反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(以下、単にウレタンプレポリマーと表記することがある)であってもよい。ここで用いられるポリオール化合物としては、水酸基末端ポリエステル、多価ポリアルキレンエーテル、水酸基末端ポリウレタン重合体、アクリル共重合体に水酸基を導入したアクリルポリオール、水酸基末端ポリブタジエン、多価ポリチオエーテル、ポリアセタール、脂肪族ポリオール及びこれらの混合物等の従来公知の分子内に複数個の水酸基を有する化合物又はポリマーが挙げられる。ウレタンプレポリマーは、従来公知の方法により合成することができる。
これらポリイソシアネート化合物のなかでも、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(b1)及び/又はポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマー(b2)を用いると、良好な硬化皮膜を形成することができるという観点から好ましい。
【0021】
[脱水剤(C)について]
本発明の二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物には、さらに、主剤(A)及び/又は硬化剤(B)中に、脱水剤(C)が含まれる。脱水剤(C)が含まれることによって、保管時の貯蔵安定性に優れるとともに、硬化時の発泡を抑制し皮膜凝集力を向上させることができる。
本発明の脱水剤(C)としては、脱水作用を有し、かつ、使用時の硬化性を損なわないものであれば特に制限されないが、例えば、水に対して反応性を有する脱水剤(例えば、シラン化合物や生石灰等)、水を結晶水として取り込む脱水剤、水を物理的に吸着する脱水剤等を使用することができる。これらのなかでも、発泡防止性、接着性、皮膜凝集力の向上等の観点から、ゼオライトやモレキュラシーブ等の粉体が好ましい。また、ゼオライトやモレキュラシーブを用いる場合には、特に細孔径が3Å〜5Åのものが望ましい。
脱水剤(C)は、主剤(A)と硬化剤(B)の総和100質量部に対して0.5〜30質量部(好ましくは1〜15質量部)含まれることが好ましい。脱水剤(C)の配合量が0.5質量部を下回ると硬化時の発泡が抑制されにくく、30質量部を上回ると粘度が高くなりすぎて作業性が低下する傾向にある。
脱水剤(C)の市販品としては、商品名「ゼオケム A−3」「ゼオケムA−4」「ゼオケムA−5」(東ソー社製)、商品名「ゼオスターシリーズ」(日本化学工業社製)等がある。
【0022】
[樹脂製微小中空体(D)について]
本発明の樹脂製微小中空体(D)は、外殻が樹脂である球状充填剤で内部が中空のものである。この外殻の樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリスチレン、サランなどの樹脂があげられるがこれらのみに限定されるものではない。また、外殻は、積層して複数層を形成させたものや、その外殻表面を各種の表面処理剤で処理したもの等を使用することもできる。なかでも、樹脂製の微小中空体の外殻表面を炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の無機微粉末で表面被覆したものであると、ひまし油系ポリオール等の液状成分と馴染みやすく、実質的な中空体破壊を伴わずに均一混合が可能であり、硬化物の皮膜にも適度の弾性を付与することから好ましい。樹脂製微小中空体(D)の平均粒子径は10〜150μm(好ましくは30〜100μm)、真比重が0.05〜0.50g/cm(好ましくは0.05〜0.25g/cm)である。
樹脂製微小中空体(D)は、主剤(A)と硬化剤(B)の総和100質量部に対して0.1〜1.5質量部(好ましくは0.2〜1.5質量部、特に好ましくは0.2〜1.2質量部)含まれる。配合量が0.1質量部を下回ると応力分散の効果が低下してフィレットからペーパーハニカムが抜けるような破壊状態となりやすくなり、1.5質量部を上回ると樹脂との馴染みが低下して、均一に分散されない傾向にある。なお、樹脂製微小中空体(D)は、主剤(A)のみに配合されていても、硬化剤(B)のみに配合されていても、主剤(A)及び硬化剤(B)の双方に配合されていてもよい。
樹脂製微小中空体(D)の市販品としては、商品名「マツモトマイクロスフェアー」(松本油脂社製)、商品名「EMCシリーズ」(三共精粉社製)等がある。
【0023】
[触媒(E)について]
本発明の二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物には、さらに、主剤(A)及び/又は硬化剤(B)中に、DBU(e1)、その塩(e2)、及びアルキル錫化合物(e3)からなる群から選ばれる1種以上からなる触媒(E)が含まれると、可使時間と硬化速度の両立、さらには低温時における硬化速度の促進という観点から好ましい。
DBUの塩(e2)としては、フェノール塩、オクチル酸塩、蟻酸塩等がある。このような市販品としては、例えば、商品名「U−CAT SA−1」(サンアプロ社製)等がある。
また、アルキル錫化合物(e3)としては、例えば、ジブチルスズアセテート、ジブチルスズビス(アセチルアセトナート)、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート等がある。このような市販品としては、例えば、商品名「ネオスタンU−130」(日東化成社製)等がある。
【0024】
触媒(E)は、主剤(A)と硬化剤(B)の総和100質量部(この総和には脱水剤(C)や樹脂製微小中空体(D)も含まれる)に対して、(e1)及び/又は(e2)の場合は0.05〜1質量部、(e3)の場合は0.0005〜0.01質量部含まれることが好ましい。触媒(E)の配合量が上記範囲を外れて下回ると低温時に硬化不足となりやすく、上記範囲を外れて上回ると可使時間が短くなりやすい。触媒(E)は、単独あるいは複数を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
[その他の成分]
本発明の二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物には、上記成分の他に、さらに従来公知の任意成分を、従来公知の量で配合してもよい。例えば、重質炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、珪砂、シリカ等の充填剤、酸化チタン、カーボンブラック、その他の染料又は顔料等の着色剤、シランカップリング剤、顔料分散剤、消泡剤、アセチルアセトン等の遅延剤等が挙げられる。
【0026】
本発明の二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物は、主剤(A)と硬化剤(B)とを混合した直後の、23℃におけるB型回転粘度計(20回転/分)での粘度が3,000〜20,000mPa・s(好ましくは3,000〜15,000mPa・s、特に好ましくは3,000〜12,000mPa・s)であり、B型回転粘度計の20回転/分に対する2回転/分の粘度比(TI値)が2.0〜5.5(好ましくは2.5〜5.5、特に好ましくは3.0〜5.0)である。この範囲内であると、塗布作業性に優れるとともに、ペーパーハニカムに塗布したときにダレがないため好ましい。
【0027】
主剤(A)と硬化剤(B)との混合割合は、主剤(A)中の水酸基(OH)と硬化剤(B)中のイソシアネート基(NCO)の当量比(モル比)が、NCO/OH=0.8〜2.0程度(好ましくはNCO/OH=1.0〜1.8)であるのが好ましい。この範囲外であると、皮膜物性の低下や発泡の原因となる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明は、樹脂製の微小中空体を接着剤の硬化皮膜中に存在させることで、硬化皮膜に適度な弾性を与え、応力をフィレット全体に効率的に分散でき、ペーパーハニカムと板材とを接着した際に、良好な接着強さと、ペーパーハニカムの材料破壊率を向上させることができるとの知見に基づくものとして解釈されるべきである。
【0029】
〔実施例1〕
ひまし油系ポリオール(伊藤製油社製「URIC H−30」)100質量部、炭酸カルシウム(日東粉化社製「NS#2300」)100質量部、脱水剤(東ソー社製「ゼオケム A−5」)10質量部、炭酸カルシウムで被覆された樹脂製微小中空体i(三共精粉社製「EMC 40AS」平均粒径35〜55μm、真比重0.13)0.5質量部、DBUのフェノール塩(サンアプロ社製「U−CAT SA−1」)1.0質量部を、2Lのプラネタリーミキサーに投入し、減圧下で30分間撹拌混合して、主剤を得た。
ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(住化バイエルウレタン社製「スミジュール44V20」)をそのまま、硬化剤とした。
上記で調製した主剤と硬化剤とを、NCO/OH比=1.25となるように混合し、後述の方法で、二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物の評価を行った。
【0030】
〔実施例2〕
実施例1の樹脂製微小中空体iの0.5質量部を2.5質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物の評価を行った。
【0031】
〔実施例3〕
実施例1の樹脂製微小中空体iに代えて、樹脂製微小中空体ii(三共精粉社製「EMC 40B」平均粒径35〜55μm、真比重0.13)を用いた以外は、実施例1と同様にして、二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物の評価を行った。
【0032】
〔実施例4〕
実施例1の樹脂製微小中空体iに代えて、樹脂製微小中空体iii(三共精粉社製「EMC 80B」平均粒径60〜90μm、真比重0.13)を用いた以外は、実施例1と同様にして、二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物の評価を行った。
【0033】
〔実施例5〕
実施例1のひまし油系ポリオール100質量部を、ひまし油系ポリオール(伊藤製油社製「URIC H−30」)70質量部、多官能ポリエーテルポリオール(旭硝子ウレタン社製「エクセノール430」分子量300)30質量部に変え、さらに、主剤と硬化剤とを、NCO/OH比=1.1となるように混合した以外は、実施例1と同様にして、二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物の評価を行った。
【0034】
〔実施例6〕
実施例1のDBUのフェノール塩(サンアプロ社製「U−CAT SA−1」)1.0質量部を0.4質量部に変え、さらにアルキル錫化合物(日東化成社製「ネオスタンU−130」)を0.004質量部加えた以外は、実施例1と同様にして、二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物の評価を行った。
【0035】
〔比較例1〕
実施例1における樹脂製微小中空体を全く配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物の評価を行った。
【0036】
〔比較例2〕
実施例5における樹脂製微小中空体を全く配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物の評価を行った。
【0037】
〔比較例3〕
実施例1における樹脂製微小中空体に代えて、ガラスバルーン(富士シリシア社製「フジバルーン S−35」平均粒径35μm)0.5質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物の評価を行った。
【0038】
〔比較例4〕
実施例1における樹脂製微小中空体に代えて、シラスバルーン(丸中日土社製「マールライト 715D」平均粒径30〜40μm)0.5質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物の評価を行った。
【0039】
〔比較例5〕
実施例1における樹脂製微小中空体に代えて、ポリエチレン繊維(三井化学社製「FDSS−5」平均繊維長100μm以下)0.5質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物の評価を行った。
【0040】
〔試験方法と評価基準〕
・T字はく離接着強さの測定
−試験片の準備
塗装鋼板:100×75mmの板材を、長手方向の端部から15mmで90°に折り
曲げたもの
ペーパーハニカム:100×85mm
−貼り合わせ
23℃に調温した主剤と硬化剤とを混合したウレタン樹脂系接着剤組成物を、上記塗
装鋼板に塗布(塗布量:約250g/m)し、これにペーパーハニカムを貼り合わ
せた。貼り合わせ後、圧締(プレス圧:5kPa×16時間)を行い、解圧後23℃
で7日間養生した。
−接着強さの測定
上記で得られた試料を、引張速度200mm/分でT字はく離接着強さを測定した。
また、その際の破壊状態を以下の基準で評価した。
○ : ペーパーハニカムの材料破壊
× : ペーパーハニカム以外の破壊(ペーパーハニカムがフィレットから抜ける、
又は、ハニカムの表層破壊、又は、接着剤層の凝集破壊)
【0041】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、接着強さのみならず破壊状態の観点からも総合的に接着信頼性の高い、ペーパーハニカムと板材との接着に好適な二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤が得られる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひまし油系ポリオールを含む主剤(A)と、ポリイソシアネート化合物を含む硬化剤(B)とからなり、主剤(A)及び/又は硬化剤(B)中に脱水剤(C)を含有する二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物であって、
主剤(A)及び/又は硬化剤(B)中に樹脂製微小中空体(D)が配合されることを特徴とする、ペーパーハニカムと板材との接着に用いられる二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物。
【請求項2】
主剤(A)と硬化剤(B)の総和100質量部に対して、上記樹脂製微小中空体(D)が0.1〜1.5質量部含まれることを特徴とする、請求項1に記載の二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物。
【請求項3】
硬化剤(B)に含まれるポリイソシアネート化合物が、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(b1)及び/又はポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマー(b2)である、請求項1又は2に記載の二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物。
【請求項4】
さらに、主剤(A)及び/又は硬化剤(B)中に、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(e1)、その塩(e2)、及びアルキル錫化合物(e3)からなる群から選ばれる1種以上からなる触媒(E)を含有する、請求項1〜3に記載の二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物。
【請求項5】
主剤(A)と硬化剤(B)とを混合した直後の、23℃におけるB型回転粘度計(20回転/分)での粘度が3,000〜20,000mPa・sであり、B型回転粘度計の20回転/分に対する2回転/分の粘度比(TI値)が2.0〜5.5である、請求項1〜4に記載の二液混合硬化型ウレタン樹脂系接着剤組成物。


【公開番号】特開2011−231215(P2011−231215A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102642(P2010−102642)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】