説明

ホイールのランフラット装置及びその押力維持機構

【課題】車両のホイールのランフラット用中子がクリープした場合でも中子への押力を確
実に維持できるようにする。
【解決手段】ホイールWにランフラット用の中子10を設け、これにバンド20を巻き付
ける。中子10には、押力維持機構13を収容しておく。押力維持機構13は、ホイール
Wの径方向に積層された複数の皿ばね41,41…からなる付勢手段40を含んでいる。
この付勢手段40が、中子10を半径内側方向へ付勢している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤがパンクしてもそのまま走れる(「ランフラット」という)ようにするためのランフラット装置に関し、特に中子をホイールに押し付ける力を維持する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ランフラット用の中子をバンドでホイールに巻き付けることが記載されている。バンドの周方向の一箇所にはクランプ機構が設けられている。クランプを締めると、バンドの周長が短縮される。これにより、中子を締め付けてホイールに固定でき、中子の走行時の浮き上がりを防止できる。
例えば、中子は樹脂で出来ており、バンドは金属で出来ている。したがって、締め付けにより、中子とバンドのうち、主に中子が弾性変形し、その弾性復元力によりバンドから中子に押力が働く。一方、樹脂は、荷重を長時間かけ続けると永久変形を来たして元の形状に戻らなくなる傾向がある。これをクリープ現象という。樹脂製の中子においてこのようなクリープ現象が起きると、バンドの張力が減少し、バンドからの中子押力の減少、ひいては緩みに至る。
そこで、バンドには、クランプ機構だけでなく、張力維持機構が設けられている。張力維持機構は、バンドの周方向に延びるコイルばねを含んでいる。このコイルばねによってバンドを周長が短くなる方向に付勢している。これによって、中子がクリープを来たしても、バンドの張力を維持でき、中子の締め付け状態を維持することができる。
【特許文献1】特開2005−041419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の特許文献1の張力維持機構は、コイルばねがホイールの周方向に延びるように配置されるため、場所をとり、小型化が容易でない。また、張力維持機構をバンドに直列的に連結してあるので、バンドに加わるのと同じ荷重が張力維持機構にも作用する。したがって、張力維持機構の各構成要素(例えばバンドとの連結部等)の強度を少なくともバンドと同程度にする必要がある。さらには、バンドをコイルばねで直接引っ張るものであるため、コイルばねのストロークやばね力の設定の自由度が小さい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、
ホイールに装着されるランフラット用の中子と、
前記中子に巻き付けられるバンドと、
付勢方向をホイールの径方向へ向けて前記中子とバンドの間に設けられ、前記中子をホイールに押し付ける押力維持機構と、
を備えたランフラット装置を特徴とする。
この特徴構成によれば、押力維持機構の小さな付勢ストロークで中子に大きな押力を与えることができ、付勢ストロークや付勢力の設定の自由度を大きくすることができる。
【0005】
前記押力維持機構は、1の皿ばね、またはホイールの径方向に積層された複数の皿ばねを含んでいてもよい。これにより、押力維持機構のコンパクト化、付勢力や付勢ストロークの調節自在化を図ることができる。
【0006】
前記押力維持機構は、板ばねを含んでいてもよい。これにより、押力維持機構のコンパクト化、構造の簡易化、軽量化、低廉化を図ることができる。
【0007】
前記押力維持機構が、ホイールの周方向に複数設けられていることが好ましい。これにより、個々の押力維持機構の付勢ストローク及び付勢力がより小さくて済む。
【0008】
前記中子が、ホイールの周方向に複数の中子ピースに分割されており、前記中子ピースに前記押力維持機構が1又は複数配置されていることが好ましい。これによって、アンバランス化の防止が一層容易になる。
【0009】
前記中子に収容凹部が形成され、前記収容凹部に前記押力維持機構が嵌め込まれ、前記押力維持機構に前記バンドが被せられていることが好ましい。これによって、ランフラット装置をコンパクトにすることができる。
【0010】
また、本発明は、ホイールのランフラット用中子と該中子に巻き付けられるバンドとの間に設けられ、前記中子をホイールに押し付ける押力維持機構であって、付勢方向をホイールの径方向へ向けた付勢手段を含むことを特徴とする。
この特徴構成によれば、押力維持機構の小さな付勢ストロークで中子に大きな押力を与えることができ、付勢ストロークや付勢力の設定の自由度を大きくすることができる。
【0011】
前記付勢手段が、前記バンドと前記中子との間に前記ホイールの径方向に圧縮されて配置されることが好ましい。これによって、中子にホイールの径方向内側への付勢力を確実に付与することができる。また、押力維持機構を確実にコンパクトにすることができる。
【0012】
前記付勢手段が、1の皿ばね、またはホイールの径方向に積層された複数の皿ばねで構成されていることが好ましい。これにより、押力維持機構を一層確実にコンパクト化することができる。さらには、皿ばねの枚数を増減したり、複数の皿ばねを直列に積層したり、並列に積層したり、或いは直列と並列を組み合わせたりすることにより、付勢ストロークや付勢力を自在に設定することができ、中子への押力を確実に維持することができる。
【0013】
前記押力維持機構が、前記皿ばねを貫通してホイールの径方向に延びるシャフトと、前記シャフトのバンド側の端部に設けられ、前記バンドの内周面に当接される当接部と、前記皿ばねと中子の間に配置される座金とを含むことが好ましい。これにより、皿ばねをシャフトでガイドできる。また、皿ばねの付勢力を、座金を介して中子に付与することができる。
【0014】
前記シャフトの前記当接部とは反対側の端部には、前記皿ばねの抜け止め部が設けられていることが好ましい。これによって、シャフトと皿ばねをユニット化でき、保管、持ち運び、中子への組み付け作業等を簡易化することができる。
【0015】
前記付勢手段が、板ばねで構成されていてもよい。
これにより、付勢手段ひいては押力維持機構のコンパクト化、構造の簡易化、軽量化、低廉化を図ることができる。
【0016】
前記板ばねは、側面視で波形状になっていてもよい。これにより、付勢手段ひいては押力維持機構のコンパクト化、構造の簡易化、軽量化、低廉化を図ることができ、さらに、波形状とした板ばねの波の数を増減させることにより、板ばねのばね定数を増減させることができる。
【0017】
前記板ばねは、側面視で略円弧形状になっていてもよい。板ばねを略円弧形状とすることにより、押力維持機構のコンパクト化、構造の簡易化、軽量化、低廉化を図ることができ、また板ばねのストロークを大きくすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、押力維持機構の付勢ストロークや付勢力の設定の自由度を大きくすることができ、中子への押力を確実に維持でき、中子の固定状態を確実に維持することができる。また、押力維持機構のコンパクト化及び所要強度の緩和を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の第1実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、車両のホイールWの外周には、ランフラット装置1が設けられている。ランフラット装置1は、中子10と、中子固定機構12とを備えている。
図2に示すように、中子10は、複数(ここでは6つ)の中子ピース11,11…に分割されている。これら中子ピース11,11…が、ホイールWの周方向に並べられ、全体として環状の中子10が構成されている。
【0020】
各中子ピース11は、樹脂にて構成されている。中子ピース11は、ブロック状をなし、側面視でホイールWの周方向に沿うように円弧状に延びている。図3に示すように、中子ピース11の左右幅方向の中央部には、バンド収容溝11aが形成されている。図2に示すように、バンド収容溝11aは、中子ピース11の長手方向(図3の紙面直交方向)の全長にわたって延びている。
【0021】
各中子ピース11のバンド収容溝11aの長手方向の中央部には、押力維持機構収容凹部11bが形成されている。図5に示すように、押力維持機構収容凹部11bは、後記する押力維持機構13の当接部32、皿ばね41、及び座金51の形状に合わせるように平面視円形をなしている。図3及び図4に示すように、押力維持機構収容凹部11bの底面は、付勢用座部11dを構成している。付勢用座部11dの中央部には、シャフト収容孔11cが形成されている。シャフト収容孔11cの内径は、押力維持機構収容凹部11bより小径になっている。シャフト収容孔11cは、底部の開口された貫通孔になっている。
【0022】
図2に示すように、中子固定機構12は、バンド20と、複数(ここでは6つ)の押力維持機構13とを備えている。バンド20は、バンド本体21と、クランプ機構22とを有している。バンド本体21は、高抗張力鋼にて構成され、1本の平帯状になっている。このバンド本体21の両端部が、クランプ機構22によって連結されている。これによって、バンド20が全体として環状になっている。この環状のバンド20が、中子10に巻き付けられている。図3及び図4に示すように、バンド20は、各中子ピース11のバンド収容溝11aに収容されている。
【0023】
クランプ機構22は、一対のクランプ部材23,23と、連結部材24とを有している。クランプ部材23は、大略C字状をなし、バンド本体21の両端部に溶接により一体に連なっている。一対のクランプ部材23,23の先端部どうしが、連結部材24によって一定の距離だけ離れて回転可能に連結されている。クランプ機構22は、図2に示すように一対のクランプ部材23,23どうしが噛み合わされたクランプ状態と、噛み合いが解除された図示しない解除状態とを取ることが出来るようになっている。クランプ状態ではバンド20全体の周長が相対的に短くなり、解除状態では、バンド20全体の周長が相対的に長くなるようになっている。(クランプ機構22の詳細構造は、上掲特許文献1の図17を参照。)
クランプ機構22がクランプされてバンド20の周長が短縮されると、バンド20が各中子ピース11のバンド収容溝11aの底部に押し付けられる。これにより、各中子ピース11およびバンド20が弾性変形される。この中子ピース11およびバンド20の弾性復元力(反力)によりバンド20には張力が働く。この張力によって、中子10がホイールWに安定的に設置されている。
【0024】
図2に示すように、複数(ここでは6つ)の押力維持機構13は、ホイールWの周方向に均等ないしは規則的に配置されている。図6に示すように、各押力維持機構13は、シャフト30と、付勢手段40とを備えている。シャフト30は、例えば鋼材にて構成され、シャフト本体31と、このシャフト本体31の先端部(バンド20側の端部)に設けられた頭部32(当接部)とを一体に有している。シャフト本体31は、円柱形状をなし、ホイールWの法線方向に延びている。
シャフト頭部32は、シャフト本体31より大径の円板形状をなしている。頭部32の上面(バンド20との当接面)には、滑りを良くするための滑面処理(例えばボンデ処理)が施されている。
【0025】
押力維持機構13の付勢手段は、複数の皿ばね41,41…を積層した皿ばね列40によって構成されている。皿ばね41は、鋼材にて構成され、傾斜の緩やかな円錐形状をなし、中央部には円孔41aが形成されている。皿ばね41の底部の外直径は、シャフト頭部32の直径より若干小さい。皿ばね41の円孔41aの内直径は、シャフト本体31の直径より若干大きい。
図7に示すように、円孔41aにシャフト本体31が貫通されている。シャフト本体31によって複数の皿ばね41,41…が連ねられている。これら皿ばね41,41…の隣り合うものどうしは、例えば互いに逆向きになっている。この皿ばね41,41…の組み合わせを「直列」という。直列の皿ばね列40は、1枚の皿ばね41の枚数倍の伸縮ストロークを有する。ばね力(付勢力)は、1枚の場合とほぼ同じである。
【0026】
図6及び図7に示すように、シャフト本体31の皿ばね列40より下側(基端側)には、座金51が設けられている。この座金51とシャフト頭部32との間に皿ばね列40が挟まれている。
【0027】
シャフト本体31の基端部(当接部32とは反対側)の外周には、抜け止め部材33が設けられている。抜け止め部材33は、熱収縮性の樹脂からなるチューブで構成されている。シャフト本体31に皿ばね41,41…及び座金51を外挿し、更にその下側にチューブを外挿した後、チューブを加熱して収縮させてある。この抜け止め部材33によって、座金51及び皿ばね41,41…がシャフト30から抜け落ちるのが防止され、押力維持機構13を中子ピース11に組み込む時に押力維持機構13が容易に分解されないようになっている。
【0028】
図3及び図4に示すように、押力維持機構13は、シャフト30がホイールWの半径方向に向き、皿ばね列40の軸線(付勢方向)がホイールWの半径方向に向くようにして、中子ピース11の押力維持機構収容凹部11bに収容されている。さらに座金51が、凹部11bの付勢用座部11dに載置されるとともに、シャフト30の基端部は、中子ピース11のシャフト収容孔11cにホイール径方向に変位可能に挿入されている。
【0029】
シャフト30の頭部32がバンド20の内周面と当接するように、押力維持機構13の上にバンド20が被せられ、皿ばね列40を含む押力維持機構13が、バンド20と中子10との間に挟まれている。バンド20の締め付けにより、シャフト30が基端方向(ホイールWの半径内側方向)へ押圧され、皿ばね41,41…が圧縮されている。
【0030】
上記構成のランフラット装置1は、次のようにしてホイールWに設置される。
図11に示すように、予め、シャフト30に皿ばね41,41…及び座金51を外挿し、更にその下に例えば熱収縮性チューブからなる抜け止め部材33を外挿し、その後、この抜け止め部材33を加熱して収縮させ、シャフト本体31に密着させて、押力維持機構13を組み立てる。これにより、座金51及び皿ばね41,41…がシャフト30から抜け落ちるのを防止することができ、押力維持機構13の保管、持ち運びを容易化することができる。
この押力維持機構13を中子ピース11に対応する数だけ用意し、各中子ピース11の押力維持機構収容凹部11bに収容する。座金51及び皿ばね41,41…の抜け落ちが防止されているので、押力維持機構13の中子10への組み込み作業を容易に行なうことができる。
【0031】
上記押力維持機構13を組み込み済みの中子10及びバンド20をホイールWのリムの外周に配置する。そして、クランプ機構22を締め、バンド20の周長を短縮させる。これにより、バンド20が中子ピース11を締め付け、バンド20および中子ピース11が弾性変形される。このバンド20および中子ピース11の弾性復元力によりバンド20に張力が働き、その結果、バンド20から中子ピース11への押力が働く。
これにより、中子10をホイールWにしっかりと固定することができる。そして、走行時の遠心力で中子10がホイールWから浮き上がるのも確実に防止することができる。ランフラット走行時にも中子10の固定状態を維持することができる。
【0032】
更に、バンド20が、押力維持機構13のシャフト頭部32を押圧する。これにより、皿ばね列40が圧縮され、そのバネ力(付勢力)が中子10に対し法線方向(ホイールWの半径内側方向)に働く。
ここで、中子10が経年変化によりクリープを来たし、その弾性復元力が低下したとする。そうすると、それだけバンド20の張力が低下し、緩みが生じようとする。すると、図8の実線に示すように、圧縮されていた皿ばね列40が、上記張力低下に対応する量δだけ伸び、シャフト頭部32を押し上げ、バンド20を法線方向に押し拡げる。これによって、バンド20が長さL(図8の二点鎖線(クリープ前)と実線(クリープ後)の弧長の差)だけ伸びる。この結果、バンド20の張力をクリープ前と同程度に維持することができ、バンド20からの押力を、押力維持機構13を通して中子10に伝えることにより、中子10の固定状態を維持することができる。
【0033】
皿ばね列40の伸び方向がバンド20の法線方向(径方向)を向いているため、個々の中子ピース11に組み込まれた押力維持機構13の個々の皿ばね列40の伸び量δは、個々の中子ピース11のクリープ量の約1倍に対応できればよい。特許文献1のように、コイルばねをホイールの周方向に向けてバンドに直接連結した張力維持機構の場合、コイルばねは、中子の半径方向のクリープ分の約6倍(2π)の長さ変化に対応する必要がある。
したがって、本発明の押力維持機構13によれば、皿ばね41の小さな伸びによって、中子10のクリープを十分に補うことができる。また、同様の理由により、バンド20の長さ精度をシビアに設定する必要がない。
【0034】
皿ばね列40は、並べ方や枚数を自在に組み合わせることができ、ストローク及びばね力の設定の自由度が大きい。
すなわち、図7に示すように、ストロークを大きくとりたい場合は、隣り合う皿ばね41,41どうしの向きを反転させ、皿ばね列40を直列にする。また、後記変形例において詳述するように、ばね力を大きくとりたい場合は、皿ばね41の向きを揃え、皿ばね列40を並列にする(図9(a))。更には、直列組みと並列組みを組み合わせることにしてもよい(図9(b))。このようにして、皿ばね列40の設定ストロークと設定ばね力を自在に変更することができる。
【0035】
加えて、皿ばね列40は、枚数が増えても十分に軽量でコンパクトである。しかも、ホイールWの法線方向に向けられるので、配置面積を十分に小さくすることができ、一層のコンパクト化を図ることができる。
押力維持機構13の構成要素は、市販品を使用可能な皿ばね41の他、シャフト30と座金51と抜け止め部材33程度であるので、極めて安価に製造することができる。
【0036】
押力維持機構13は、バンド20を法線方向に付勢する一方、バンド20とは分離されており、バンド20に一体に連結されていない。したがって、例えばランフラット走行による衝撃荷重が中子10やバンド20に加わったとしても、その衝撃荷重が押力維持機構13にまで直接的に入力されることはない。しかも、シャフト30の頭部32が滑面処理されているので、バンド20とシャフト頭部32との間の摩擦を小さくすることができる。したがって、シャフト30への荷重を一層確実に緩和することができる。よって、シャフト30等の押力維持機構13の構成要素に対しバンド20と同様の強度が要求されることはない。故に、シャフト30の材質としてアルミや樹脂等の、鋼材と比べ軟質な材料も使用可能である。
【0037】
さらに、複数の押力維持機構13がホイールWの周方向に均等ないしは規則的に配置されているため、中子10への付勢力の分布やホイールWの重心がアンバランスになるのを防止することができ、走行時の回転状態を安定化させることができる。
【0038】
シャフト頭部32が、滑面処理されているので、バンド20にランフラット走行による衝撃荷重が加わった場合、バンド20とシャフト頭部32を相対的に滑らすことができ、上記衝撃荷重が押力維持機構13に直接的に伝達されるのを防止することができる。これによって、押力維持機構13の所要強度を一層確実に小さく設定することができる。
また、頭部32のバンド20との当接面は、バンド20と馴染みを良くするため、バンド20が巻きつけられる半径と同じ程度または、それ以下の曲率半径の部分球面または部分円筒面にすると良い。
【0039】
次に、上記実施形態の変形例を図9〜図12を使用して説明する。上記の実施形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
図9は、皿ばね列40の変形例を示したものである。上記第1実施形態では、皿ばね41,41…の隣り合うものどうしが互いに逆向きになり直列に組み合わされていたが(図7)、図9(a)では、複数の皿ばね41,41…が互いに向きを揃えて積層されている。このような皿ばね41,41…の組み合わせを「並列」という。並列の皿ばね列40は、1枚の皿ばね41の枚数倍のばね力を有する。ストロークは、1枚の場合と略同じである。
【0040】
皿ばね列40は、直列と並列を組み合わせた構成にしてもよい。
例えば、図9(b)では、皿ばね41が2枚ずつ同方向に直列に重ねられ、これら2枚の皿ばね41,41ごとに互いに逆向きに並列に重ねられている。
【0041】
図9(c)では、先端(シャフト頭部32に最も近い側)の皿ばね41の頂部がシャフト頭部32の側を向くようにして、各皿ばね41,41…が直列に組み合わされている。シャフト頭部32の直径は、皿ばね41の外直径より小さく、円孔41aの内直径より大きい。これにより、シャフト頭部32と皿ばね41との当たりを十分に確保できるとともに、シャフト頭部32を小径化でき、ひいては押力維持機構13を軽量化することができる。
【0042】
図9(d)では、同図(a)と同様の並列組みにおいて、シャフト頭部32の直径が、皿ばね41の外直径より小さく、円孔41aの内直径より大きくなっている。皿ばね41の頂部は、シャフト頭部32の側に向けられている。したがって、図9(c)と同様に、シャフト頭部32と皿ばね41との当たりを十分に確保しながら押力維持機構13を軽量化することができる。
なお、図9(a)と同様の並列組みにおいて、皿ばね41の頂部ではなく底部がシャフト頭部32の側を向くようにしてもよい。勿論、その場合、シャフト頭部32の直径は、皿ばね41の外直径より大きくする。
【0043】
図10は、皿ばね41及び座金51がシャフト30から抜けないようにするための抜け止め部の変形例を示したものである。
図10(a)では、シャフト本体31の基端部(頭部32とは反対側の端部)に、上記実施形態の抜け止め部材33に代えて、テーパ状の抜け止め部34が一体に形成されている。テーパ状抜け止め部34の上端部は、そこより上側のシャフト本体31より若干大径になっている。皿ばね41は、テーパ状抜け止め部34の上端部を引っ掛かることなく通過することができる。一方、座金51は、テーパ状抜け止め部34の上端部で引っ掛かる。この座金51を更に圧入することにより、テーパ状抜け止め部34より上側に位置させることができる。座金51だけでなく、皿ばね41もテーパ状抜け止め部34に引っ掛かって圧入されるようにしてもよい。
【0044】
図10(b)では、シャフト30の基端部(頭部32とは反対側の端部)に、かしめによる抜け止め部35が形成されている。当初ストレートなシャフト本体31に皿ばね41,41…及び座金51を外挿した後、シャフト30の下端部をかしめて拡径させる。これにより、抜け止め部35を形成できる。
【0045】
かしめによる抜け止め手段は、任意に設計変更できる。例えば、図10(c)では、シャフト本体31の周側部に、かしめによる抜け止め部36が形成されている。抜け止め部36は、突起状をなし、シャフト本体31の周方向に複数設けられている。当初ストレートなシャフト本体31に皿ばね41,41…及び座金51を外挿した後、シャフト30の下端部の2箇所以上をつまむようにしてかしめて局部的に突起状に突出させる。これにより、抜け止め部36を形成できる。
【0046】
図10(d)では、シャフト30の下端部に、樹脂製の抜け止め部材33に代えて金属製のリング状の抜け止め部材37が設けられている。シャフト本体31の基端部(頭部32とは反対側の端部)は、頭部32側の部分より小径になっており、段差31cが形成されている。抜け止め部材37を外したシャフト本体31に皿ばね41,41…及び座金51を外挿した後、抜け止め部材37を段差31cに当たるまで嵌め込む。段差31cがストッパになることにより、抜け止め部材37が嵌め込み時の勢いで座金51に当たって座金51を損傷するのを防止することができる。
なお、シャフト本体31に段差31cが形成されていなくてもよく、金属製の抜け止め部材37をシャフト本体31の基端部に圧入することにしてもよい。
【0047】
図11に示す変形例では、皿ばね列40の基端側(シャフト頭部32とは反対側)だけでなく、シャフト頭部32の側にも座金52が設けられている。座金52は、シャフト頭部32と最も頭部32側の皿ばね列41との間に挟まれている。皿ばね列40のばね力は、座金52を介してシャフト頭部32に伝わるようになっている。
この変形例によれば、最も頭部32側の皿ばね41の中心円孔41aの縁によってシャフト頭部32の皿ばね側の面が損傷するのを防止することができる。したがって、シャフト30の材料として比較的軟質のものを用いることも可能である。
【0048】
図12に示す変形例では、シャフト本体31の長さが皿ばね列40の列長より短くなっている。シャフト本体31の端部は、皿ばね列40の中途部に位置しており、そこより座金51側の皿ばね41は、シャフト本体31に外挿されていない。一方、押力維持機構収容凹部11bの内径が、皿ばね41の外径に極めて近くなっており、押力維持機構収容凹部11bの内周面と皿ばね41の外端縁との間のクリアランスが極めて小さくなっている。これによって、押力維持機構収容凹部11bの内周面だけで皿ばね41がずれないように規制されている。
この変形例によれば、シャフト本体31が短くなっている分だけ、押力維持機構13を軽量化することができる。なお、シャフト本体31は、中子ピース11のクリープの想定量より大きくしておくのが好ましい。
【0049】
図13は、本発明の第2実施形態を示したものである。この実施形態では、押力維持機構の付勢手段として、皿ばね41に代えて、板ばね60が用いられている。図14に示すように、板ばね60は、平面視で長方形状をなすとともに(図14(a))、側面視で波形状をなしている(同図(b))。図13に示すように、この板ばね60が、中子ピース11の押力維持機構収容凹部11bに収容されている。押力維持機構収容凹部11bは、平面視で板ばね60の大きさに合わせた長方形状をなし、板ばね60を安定的に収容できるようになっている。板ばね60は、中子ピース11ごとにホイールWの周方向に均等または規則的に配置されている。
【0050】
また、板ばね60は、押力維持機構収容凹部11bの底面とバンド20との間で挟持されるように設けられており、バンド20によって、板ばね60が波の高さ方向に圧縮されるようになっている。これにより、板ばね60のバネ力(付勢力)が中子10に対しホイールWの法線方向(半径内側方向)に働くことができ、中子10がクリープ変形を来たした場合でもホイールWへの固定状態を確実に維持することができる。
したがって、押力維持機構として板ばね60を用いることにより、押力維持機構の軽量化、低廉化を図ることができる。さらに、板バネ60の波の数を増すと板バネ60のバネ定数が大きくなり、逆に板バネ60の波の数を減らすと板バネ60のバネ定数が小さくすることができるので、同一素材を使用してバネの特性を調整することが可能である。また、板バネ60の両端部には、中子ピース11またはバンド本体21の損傷を防ぐために、小さな丸み60eが設けてあるが、この小さな丸み60eは設けなくても良い。
【0051】
図15〜図17は、本発明の第3実施形態を示したものである。この実施形態では、クランプ部材23が、バンド本体21の端部に溶接に代えてリベット25にて連結されている。したがって、高抗張力鋼製のバンド本体21が溶接の熱によって強度低下を来たすのを回避できるため、バンド本体21の薄肉化を図ることができる。また、バンド本体21とクランプ部材23の連結位置精度を容易に確保することもできる。
【0052】
なお、図16(a)及び図17は、解除状態のクランプ機構22を示し、図16(b)は、クランプ状態のクランプ機構22を示したものである。
図16(a)に示すように、一方(同図において左側)のクランプ部材23Aと連結部材24の一端側とが、回転軸26Aの周りに回転可能に連結され、他方(同図において右側)のクランプ部材23Bと連結部材24の他端側とが、他の回転軸26Bの周りに回転可能に連結されている。連結部材24における、一方の回転軸26Aを挿通する軸孔24aは、長孔になっている。この軸孔24aの長軸Lは、図16(b)に示すように、クランプ状態ではホイールWの径方向(図16(b)において上下)に対し周方向に傾いた角度になるようになっている。したがって、軸孔24aの長軸Lは、クランプ状態でバンド20の周方向に沿う方向成分を有している。
【0053】
クランプ状態でバンド20に張力が働き、回転軸26Aが、軸孔24aの長軸Lに沿ってバンド20の一端側(図16(b)において左)へスライド変位し、クランプ部材23Aの先端に形成された係止部27Aの内側面が、それよりバンド20の一端側に位置する他方のクランプ部材23Bの先端に形成された係止部27Bの内側面に密着され
る。これによって、力が、一方のクランプ部材23から他方のクランプ部材23に直接(連結部材24及び回転軸26A,26Bを介することなく)伝達される。したがって、クランプ機構22においては、一対のクランプ部材23,23だけでバンド20に作用する張力を受け持つようにでき、連結部材24及び回転軸26A,26Bには張力が作用しないようにすることができる。よって、連結部材24及び回転軸26A,26Bの所要強度は、クランプ部材23A,23Bの回転に耐える程度あれば十分であり、クランプ部材23と同等の強度が求められることはない。この結果、連結部材24の厚さを薄くしたり回転軸26A,26Bの太さを細くしたりすることができ、ひいては、クランプ機構22の重量低減や小型化を図ることができる。
【0054】
図15に示すように、第3実施形態のバンド20には、バランスウェイト70が設けられている。バランスウェイト70は、バンド20の周方向にクランプ機構22とは180度反対側に配置されている。図18に示すように、バランスウェイト70は、バランスウェイト本体71と、取り付け片72とを有し、全体の重量がクランプ機構22と略同じになっている。
【0055】
図18(a)に示すように、バランスウェイト本体71は、金属製のブロックにて構成されている。図15に示すように、バランスウェイト本体71は、バンド本体21の内周側に配置され、両面テープなどの接着剤(図示省略)でバンド本体21に内周面に接着されている。
【0056】
図18(b)に示すように、取り付け片72は、鋼帯をバランスウェイト本体71に巻き付けるように折曲加工したものである。取り付け片72の上辺部は、バランスウェイト本体71の上面の凹部71cに収容されている。取り付け片72の両端部には一対の爪部72c,72cが設けられている。これら爪部72c,72cが、バンド本体21の外周面(図18(b)において下)にそれぞれ引っ掛けられている。
【0057】
バンド20にバランスウェイト70を設けることによって、ホイールWの重量バランスがクランプ機構50の側に偏るのを防止することができる。
バランスウェイト70はバンド21の内周側に配置されているため、走行時に遠心力が作用するとバンド21に押し付けられる。したがって、バランスウェイト70とバンド21との連結強度を遠心力に抗し得る大ききにする必要はなく、バランスウェイト70のバンド21への取り付け構造を簡易化することができる。
【0058】
第2実施形態および第3実施形態においても種々の変形例を採用することができる。
図19は、押力維持機構としての板ばねの変形例を示したものである。図19(a)に示すように、この板ばね61は、平面視で長方形状をなすとともに、同図(b)に示すように、側面視で大略円弧形状になっている。板ばね61の両端部には、一対の脚部61b,61bが設けられ、これら脚部61b,61bの間に円弧状の本体部61aが架け渡されている。
【0059】
また、板ばね61は、長手方向をホイールWの周方向へ向け、短手方向をホイールWの幅方向へ向けて、中子ピース11の押力維持機構収容凹部11bに収容されるようになっている。そして、脚部61bが、中子ピース11に突き当てられ、円弧状本体部61aの中央部が、バンド20に押し当てられるようになっている。板ばね61は、これらバンド20と中子ピース11の間に挟まれて円弧の径方向に圧縮され、中子ピース11への押力を発現するようになっている。
【0060】
なお、脚部61bをバンド20に突き当て、円弧状本体部61aの中央部を中子ピース11に押し当てることにしてもよい。
中子ピース11の押力維持機構収容凹部11bは、板ばね61を収容できる大きさになっている。
【0061】
図20は、押力維持機構としての板ばねの他の変形例を示したものである。図20(a)及び(b)に示すように、この板ばね62は、側面視で楕円形の筒状をなしている。
板ばね62は、長径方向をホイールWの周方向へ向け、短径方向をホイールWの径方向へ向け、筒軸方向をホイールWの幅方向へ向けて、中子ピース11の押力維持機構収容凹部11bに収容されるようになっている。この板ばね62の短径方向の一側部がバンド20に押し当てられ、他側部が中子ピース11に押し当てられる。板ばね62は、これらバンド20と中子ピース11の間に挟まれることにより、短径方向に圧縮され、中子ピース11への押力を発現するようになっている。
中子ピース11の押力維持機構収容凹部11bは、板ばね62を収容できる大きさになっている。
【0062】
図21〜図24は、クランプ機構22の変形例を示したものである。図21に示すように、この変形例では、クランプ状態のクランプ機構22に、拘束具80が取り付けられている。図22に示すように、拘束具80は、ばね鋼板を大略コ字状に折曲加工したものであり、一方向に延びる基部81と、この基部81の両端部に連なる一対の板ばね状の挟持ばね部82,82とを有している。
【0063】
図21及び図23に示すように、拘束具80の基部81は、クランプ機構22の側方(ホイール幅方向の一側)において、2つのクランプ部材23A,23Bに跨るように配置されている。
【0064】
図22及び図23に示すように、一対の挟持ばね部82,82は、基部81に対し略直角(やや鋭角)をなし、互いに略平行に延びている。これら挟持ばね部82,82が、一対のクランプ部材23A,23Bを両側から弾性的に挟み付けている。
【0065】
各挟持ばね部82の先端部は、他方の挟持ばね部82へ向けて突出するように山形に折曲され、突出部82aを形成している。
一方、各クランプ部材23の背面の略中央部には、被挟持凹部23eが形成されている。この被挟持凹部23eに挟持ばね部82の突出部82aが嵌め込まれている。
【0066】
一対の挟持ばね部82,82の突出部82a,82aより更に先端側は、それぞれ先端に向かうにしたがって互いに離間する方向へ傾く斜面部82bになっている。
【0067】
拘束具80は、ホイールに中子10及びバンド20を設置し、クランプ部材23どうしを噛み合わせてバンド20を締め付けた後で、クランプ機構22に取り付けられる。図24に示すように、拘束具80の取り付け作業は、例えば専用工具Tを用いて行なう。この専用工具Tで拘束具80の基部81を把持し、タイヤ(図示せず)とホイールW(図1参照)の間に差し入れる。そして、図24の二点鎖線に示すように、一対の挟持ばね部82,82の先端の斜面部82b,82bを、それぞれ対応するクランプ部材23の角に突き当てる。そこから専用工具Tひいては拘束具80を更に押すと、同図の実線に示すように、各斜面部82bがクランプ部材23の角に沿って案内され、一対の挟持ばね部82,82が互いに離れる方向に拡開される。そして、各突出部82aがクランプ部材23の背面に乗り上げる。更に拘束具80を押していくと、やがて図23に示すように、突出部82aが被挟持凹部23eに嵌まり込む。これによって、拘束具80を所定位置に容易にセットできる。その後、専用工具Tを基部81から離してタイヤとホイールWの間から外部へ出す。
【0068】
この変形例によれば、拘束具80の一対の挟持ばね部82,82が、そのばね力によって一対のクランプ部材23,23を互いの方向に付勢している。これによって、クランプ部材23,23を噛み合った状態に拘束でき、互いに解除方向へ変位するのを阻止することができる。したがって、走行時の振動などでクランプが外れるのを確実に防止でき、ランフラット装置1の信頼性を一層高めることができる。
また、突出部82aを被挟持凹部23eに嵌め込むことにより、拘束具80を所定位置に安定的に取り付けることができ、拘束具80がクランプ機構22から外れるのを確実に防止することができる。さらには、挟持ばね部82のばね力をクランプ部材23に確実に作用させることができる。これによって、ランフラット装置1の信頼性をより一層高めることができる。
拘束具80は、一対の板ばねからなる挟持ばね部82,82でクランプ機構22を挟むものであるので、クランプ機構22への取り付け、取り外しが容易である。
【0069】
図25は、バランスウェイト70の変形例を示したものである。
図25(b)に示すように、このバランスウェイト70は、取り付け片72の中央部がインサート成形によってバランスウェイト本体71の内部に埋設されている。同図(a)及び(b)に示すように、取り付け片72の両側部が、バランスウェイト本体71の両側面から突出され、先端の爪部72cがバンドに引っ掛けられている。
【0070】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の改変をなすことができる。
・例えば、1つの中子ピース11に、押力維持機構13が1つに限られず、複数設けられていてもよい。その場合、複数の押力維持機構13が、バンド収容溝11aの長手方向の中央部を中心にしてその両側に振り分けられるように配置されるのが好ましく、バンド収容溝11aの長手方向の中央部を中心にしてその両側に対称的に配置されるのがより好ましい。
・押力維持機構13が全ての中子ピース11に設けられているのに限られず、間欠的にたとえば1つ置きの中子ピース11ごとに設けられていてもよい。
【0071】
・上記実施形態及び各変形例の構成を組み合わせてもよい。例えば、図10〜図12では皿ばね列40が直列になっているが、図9(a)のように並列にしたり、図9(b)のように直列と並列の組み合わせにしたりしてもよく、或いは図9(c)及び(d)のように頭部32を小径にしてもよい。
・皿ばね列40の皿ばね41の枚数は、奇数でも偶数でも良い。
・1つの押力維持機構13に付勢手段40として皿ばね41が1つだけ設けられていてもよい。
【0072】
・付勢手段40は、中子10を半径内側方向に付勢可能なもの(バンド20を除く)であればよく、皿ばね41に限定されず、圧縮コイルばねや板ばね等の他のばねや、ゴムやウレタン等の弾性材料で構成されていてもよい。圧縮コイルばねの場合、軸線をホイールの半径方向に向ける。
・押力維持機構13が、皿ばねとコイルばね、皿ばねと板ばね等の複数種類の付勢手段を含んでいてもよい。
・付勢手段40が、バンド20に直接押し当てられるようになっていてもよい。(付勢手段40が、バンド20への当接部32を兼ねていてもよい。)
・付勢手段40のガイドとしてのシャフト本体31と、バンド20への当接部としてのシャフト頭部32とが、別体になっていてもよい。
・当接部32の上面に滑面処理として潤滑剤を塗布することにしてもよい。
・シャフト収容孔11cは、底部が塞がっていてもよい。
【0073】
図16、図17、図21のクランプ機構22において、連結部材24の軸孔24aを長孔にするのに代えて、クランプ部材22Aにおける回転軸26Aを挿通する軸孔を長孔にしてもよい。
【0074】
各実施形態の構成を互いに組み合わせることにしてもよい。
例えば、第1実施形態のように押力維持機構として皿ばね41を用いる場合においても、第2実施形態のように、バンド20にクランプ機構22と径方向に対峙するバランスウェイト70を設けてもよく、バンド本体21とクランプ部材23をリベット接合してもよく、軸孔24aを長孔にしてもよく、さらにはクランプ機構22に拘束具80を取り付けてもよい。
【0075】
・押力維持機構13の組み立て手順及びランフラット装置1のホイールWへの設置手順は、上記実施形態の記載順に限られず、適宜順序を入れ替えてもよい。
本発明の適用範囲は、樹脂製の中子10に限定されず、例えば金属製の中子10にも適用可能である。本発明は、クリープ現象が起きない、ないしは殆ど起きない中子10に対しても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1実施形態に係るランフラット装置を装着した車両のホイールを示し、図2のI−I線に沿う正面断面図である。
【図2】上記車両ホイールの側面断面図である。
【図3】図1のランフラット装置を拡大して示す正面断面図である。
【図4】上記ランフラット装置を、図3のIV−IV線に沿って示す側面断面図である。
【図5】上記ランフラット装置を、図3のV−V線に沿って矢視した平面図である。
【図6】上記ランフラット装置の押力維持機構の分解斜視図である。
【図7】上記押力維持機構を、皿ばね列を直列にして示す正面図である。
【図8】上記ホイールの中子がクリープした場合の押力維持状態を示す側面断面図である。
【図9(a)】上記押力維持機構の皿ばね列を並列に組んだ変形例を示す正面図である。
【図9(b)】上記押力維持機構の皿ばね列を直列と並列の複合組みにした変形例を示す正面図である。
【図9(c)】上記押力維持機構の直列の皿ばね列及びシャフト頭部の変形例を示す正面図である。
【図9(d)】上記押力維持機構の並列の皿ばね列及びシャフト頭部の変形例を示す正面図である。
【図10(a)】上記押力維持機構の抜け止め部の変形例を示す正面図である。
【図10(b)】上記押力維持機構の抜け止め部の変形例を示す正面図である。
【図10(c)】上記押力維持機構の抜け止め部の変形例を示す正面図である。
【図10(d)】上記押力維持機構の抜け止め部の変形例を示す正面図である。
【図11】上記押力維持機構の変形例を示す正面図である。
【図12】上記ランフラット装置の変形例を示す側面断面図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係るランフラット装置を装着した車両のホイールの側面断面図である。
【図14】第2実施形態の押力維持機構としての板ばねを示し、(a)は、その平面図であり、(b)は、その側面図である。
【図15】本発明の第3実施形態に係るランフラット装置を装着した車両のホイールの側面断面図である。
【図16(a)】第3実施形態のクランプ機構を、噛み合いが解除されたクランプ解除状態で示す一部断面側面図である。
【図16(b)】第3実施形態のクランプ機構を互いに噛み合ったクランプ状態で示す一部断面側面図である。
【図17】上記クランプ機構を、図16(a)のXVII−XVII線に沿って示す平面断面図である。
【図18(a)】第3実施形態のバランスウェイトの側面図である。
【図18(b)】図18(a)のXVIIIb−XVIIIb線に沿う、上記バランスウェイトの正面断面図である。
【図19】第2実施形態および第3実施形態の押力維持機構としての板ばねの変形例を示し、(a)は、その平面図であり、(b)は、その側面図である。
【図20】第2実施形態および第3実施形態の押力維持機構としての板ばねの他の変形例を示し、(a)は、その平面図であり、(b)は、その側面図である。
【図21】第1〜第3実施形態におけるクランプ機構に拘束具を設けた変形例を、互いに噛み合ったクランプ状態で示す側面図である。
【図22】上記拘束具の斜視図である。
【図23】図21のXXIII−XXIII線に沿う、クランプ機構の断面図である。
【図24】上記拘束具をクランプ機構に装着する様子を示す断面図である。
【図25(a)】バランスウェイトの変形例を示す側面図である。
【図25(b)】図25(a)のXXVb−XXVb線に沿う、上記バランスウェイトの正面断面図である。
【符号の説明】
【0077】
W ホイール
1 ランフラット装置
10 中子
11 中子ピース
11a バンド収容溝
11b 押力維持機構収容凹部
11c シャフト収容孔
11d 付勢用座部
12 中子固定機構
13 押力維持機構
20 バンド
21 バンド本体
22 クランプ機構
23 クランプ部材
23A 一方のクランプ部材
23B 他方のクランプ部材
23e 被挟持凹部
24 連結部材
24a 軸孔(長孔)
25 リベット
26A 一方の回転軸
26B 他方の回転軸
27A 一方のクランプ部材の係止部
27B 他方のクランプ部材の係止部
30 シャフト
31 シャフト本体
31c 段差
32 頭部(当接部)
33 抜け止め部材(抜け止め部)
34 抜け止め部
35 抜け止め部
36 抜け止め部
37 抜け止め部材(抜け止め部)
40 皿ばね列(付勢手段)
41 皿ばね
41a 円孔
51 座金
52 座金
δ 皿ばね列の伸び
60 波形状の板ばね
61 円弧形状の板ばね
61a 円弧状本体部
61b 脚部
62 楕円筒状の板ばね
70 バランスウェイト
71 バランスウェイト本体
71c 取り付け片収容凹部
72 取り付け片
72c 爪部
80 拘束具
81 基部
82 挟持ばね部
82a 突出部
82b 斜面部
L 長孔の長軸
T 専用工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールに装着されるランフラット用の中子と、
前記中子に巻き付けられるバンドと、
付勢方向をホイールの径方向へ向けて前記中子とバンドの間に設けられ、前記中子をホイールに押し付ける押力維持機構と、
を備えたことを特徴とするランフラット装置。
【請求項2】
前記押力維持機構が、1の皿ばね、またはホイールの径方向に積層された複数の皿ばねを含むことを特徴とする請求項1に記載のランフラット装置。
【請求項3】
前記押力維持機構が、板ばねを含むことを特徴とする請求項1に記載のランフラット装置。
【請求項4】
前記押力維持機構が、前記ホイールの周方向に複数設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のランフラット装置。
【請求項5】
前記中子が、ホイールの周方向に複数の中子ピースに分割されており、
前記中子ピースに前記押力維持機構が1又は複数配置されていることを特徴とする請求項4に記載のランフラット装置。
【請求項6】
前記中子に収容凹部が形成され、前記収容凹部に前記押力維持機構が嵌め込まれ、前記押力維持機構に前記バンドが被せられていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のランフラット装置。
【請求項7】
ホイールのランフラット用中子と該中子に巻き付けられるバンドとの間に設けられ、前記中子をホイールに押し付ける押力維持機構であって、
付勢方向をホイールの径方向へ向けた付勢手段を含むことを特徴とするランフラット装置に組み込まれる押力維持機構。
【請求項8】
前記付勢手段が、前記バンドと前記中子との間に前記ホイールの径方向に圧縮されて配置されること特徴とする請求項7に記載のランフラット装置に組み込まれる押力維持機構。
【請求項9】
前記付勢手段が、1の皿ばね、またはホイールの径方向に積層された複数の皿ばねで構成されていることを特徴とする請求項8に記載のランフラット装置に組み込まれる押力維持機構。
【請求項10】
前記皿ばねを貫通してホイールの径方向に延びるシャフトと、前記シャフトのバンド側の端部に設けられ、前記バンドの内周面に当接される当接部と、前記皿ばねと中子の間に配置される座金とを含むことを特徴とする請求項9に記載のランフラット装置に組み込まれる押力維持機構。
【請求項11】
前記シャフトの前記当接部とは反対側の端部には、前記皿ばねの抜け止め部が設けられていることを特徴とする請求項10に記載のランフラット装置に組み込まれる押力維持機構。
【請求項12】
前記付勢手段が、板ばねで構成されていることを特徴とする請求項8に記載のランフラット装置に組み込まれる押力維持機構。
【請求項13】
前記板ばねが、側面視で波形状になっていることを特徴とする請求項12に記載のランフラット装置に組み込まれる押力維持機構。
【請求項14】
前記板ばねが、側面視で略円弧形状になっていることを特徴とする請求項12に記載のランフラット装置に組み込まれる押力維持機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図9(c)】
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【図9(d)】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【図10(c)】
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【図10(d)】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16(a)】
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【図16(b)】
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【図17】
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【図18(a)】
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【図18(b)】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25(a)】
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【図25(b)】
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【公開番号】特開2008−260508(P2008−260508A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275037(P2007−275037)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)