説明

ホウ素化合物の不純物を減じたトリクロロシラン製造方法

【課題】トリクロロシラン(TCS)からホウ素化合物を除去するとともに、再利用可能な化合物をTCSに変換して、ジクロロシラン(DCS)およびその他の化合物を効果的に再利用する。
【解決手段】本発明は、ホウ素化合物の量を減じたTCS製造方法に関し、(A)TCS含有反応ガスを生成するために、流動床反応器1において冶金級シリコン11と塩化水素ガス19とを反応させ、(B)第1蒸気留分16と第1蒸留残渣15とを分離するために、第1蒸留塔3頂部の蒸留温度をTCSの沸点とテトラクロロシランの沸点との間に設定することにより、反応ガスの第1蒸留を実施し、第1蒸気留分を第2蒸留塔4へ供給し、(C)TCS17と、ホウ素化合物を含有する第2蒸気留分18とを分離するために、第2蒸留塔頂部の蒸留温度をDCSの沸点とTCSの沸点との間に設定することにより、第2蒸留を実施し、(D)第2蒸気留分を流動床反応器に再供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウ素化合物の不純物を低減したトリクロロシラン製造方法に関し、低沸点ホウ素化合物を高沸点ホウ素化合物へと変換し、冶金級シリコンと塩化水素ガスとの反応の過程においてジクロロシランを再利用することにより、トリクロロシランを含有する反応ガスを生成する。その後、反応ガスは少なくとも2回の蒸留処理によって蒸留される。
【背景技術】
【0002】
高純度多結晶シリコンの生成において原料として用いられるトリクロロシラン(SiHCl3、略称「TCS」、沸点:31.8℃)は、ホウ素不純物を含有する98%純度の冶金級シリコン顆粒(略称「Me-Si」、φ約1mm以下)と塩化水素ガス(略称「HCl」)とを反応させることにより生成される。反応においてはその他の反応物も生成されるため、TCSとHClの反応に続いて、蒸留処理を行う。
【0003】
蒸留処理により、トリクロロシランが精製される。しかしながら、反応において生成されたホウ素化合物は、ジボラン(B26)(沸点:−92.5℃)、三塩化ホウ素(BCl3)(沸点:12.4℃)、テトラボラン(B410)(沸点:18℃)等のように低沸点を有し、多くのホウ素化合物の沸点がTCSの沸点に近いか、あるいはTCSの沸点より低いために、工業用の蒸留処理ではトリクロロシランとホウ素化合物とを分離するのが極めて困難である。ホウ素は、冶金級シリコン顆粒中に不可避の不純物として含有される。TCSとHClとの反応においては、いくつかの異なるホウ素化合物が生成される。
【0004】
例えば特許文献1(特開2005−67979号公報)に開示されるように、ホウ素化合物を除去するトリクロロシラン製造方法がいくつか提案されている。当該出願においては、未精製クロロシランにエーテル基が添加されて蒸留される方法を提案している。しかしながら、精製に先立つエーテル基の回収が必要となる。さらに、特許文献2(米国特許4,713,230)においては、ホウ素化合物により汚染された気相トリクロロシランをシリカ床に通過させる、トリクロロシランの精製方法を提案している。しかし、シリカの清浄を維持するためには、シリカの固定床が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−67979号公報
【特許文献2】米国特許4,713,230号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の1つは、トリクロロシランからホウ素化合物を除去する、トリクロロシラン製造方法を提供することである。
【0007】
本発明の他の1つの目的は、再利用可能な化合物をトリクロロシランに変換することにより、ジクロロシランおよびその他の化合物を効果的に再利用することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ホウ素化合物の量を減じたトリクロロシラン製造方法に関し、当該方法は、(A)トリクロロシラン含有反応ガスを生成するために、流動床反応器において冶金級シリコンと塩化水素ガスとを反応させ、(B)第1蒸気留分(第一蒸気フラクション)と第1蒸留残渣とを分離するために、蒸留塔頂部の蒸留温度をおよそトリクロロシランの沸点とおよそテトラクロロシランの沸点との間に設定し、第1蒸気留分を第2蒸留塔へ供給することにより、反応ガスの第1蒸留を実施し、(C)トリクロロシランと、ホウ素化合物を含有する第2蒸気留分とを分離するために、蒸留塔頂部の蒸留温度をおよそジクロロシランの沸点とおよそトリクロロシランの沸点との間に設定することにより、第2蒸留を実施し、(D)第2蒸気留分を流動床反応器に再供給する。
【0009】
冶金級シリコンと塩化水素の反応に際して、トリクロロシランを含有した反応ガスは、流動床反応器において、以下のように蒸留処理から純度98重量%以上の冶金級シリコン顆粒と、塩化水素ガス、低沸点のホウ素化合物、トリクロロシラン、およびジクロロシラン(略称「DCS」、沸点:8.4℃)の再循環流とを反応させることによって生成される。塩化水素ガスを流動床反応器中に均一に分散させることは、冶金級シリコン顆粒と塩化水素ガスとの間の反応を活性化するのに有効である。流動床反応器は、約280℃(536°F)から約320℃(608°F)の間の反応温度に設定される。流動床反応器中に生成された反応ガスは、凝縮のために冷却器へと送られる。凝縮された液体は、第1蒸留塔および第2蒸留塔へと送られる。
【0010】
次に、第1蒸留処理において、第1蒸留塔の頂部の蒸留温度をおよそトリクロロシランの沸点とおよそテトラクロロシランの沸点との間に設定する。より具体的には、第1蒸留塔の塔頂部の温度を、80kPa(ゲージ圧力)にて約45℃(113°F)から約55℃(131°F)の間に設定する。高沸点のホウ素化合物、テトラクロロシラン(SiCl4、略称「STC」、沸点:57.6℃)、ポリマー、および「ボトム」としての少量のTCSは、蒸留処理において分離される。当該処理からの蒸気蒸留物は、低沸点物のホウ素化合物、TCS、および少量のDCSを含む。蒸気留出物は、第1蒸気留分として第2蒸留処理に送られる。
【0011】
その後第2蒸留処理において、蒸留塔頂部の蒸留温度は、およそジクロロシランの沸点とおよそトリクロロシランの沸点との間に設定される。第2蒸留塔頂部の温度は、123kPa(ゲージ圧力)で約50℃(122°F)から約60℃(140°F)の間に設定されるのが好ましい。蒸留により、第1蒸気留分から純トリクロロシランが分離される。低沸点のホウ素化合物、DCS、および少量のTCSが、第2蒸気蒸留物として分離される。
【0012】
さらに第2蒸気蒸留物は、気化器による気化の後、流動床反応器へと戻される。この処理により、低沸点のホウ素化合物は高沸点のホウ素化合物へと転換する。例えば、テトラボラン(10)(B410)は、ジボラン(B26)とデカボラン(B1014)とに転換する。ジボラン(B26)は、デカボラン(B1014)に転換する。テトラボランは18℃(64°F)の低沸点であり、ジボランは−92.5℃(−134.5°F)の低沸点である。しかしながらデカボランは213℃(415°F)の高沸点である。デカボランは安定な材料であるため、転換反応はほぼ非可逆的である。
【0013】
本発明はこの新しい発見に基づく。換言すれば、低沸点のホウ素化合物は、高沸点のホウ素化合物へと転換可能であり、トリクロロシラン生成処理から除去が可能である。本発明者は、還流状態からの(蒸気留分)低沸点ホウ素化合物を分離し、蒸留塔から流動床反応器(塩化反応炉)へと戻して再循環させることにより、低沸点ホウ素化合物を高沸点ホウ素化合物へと転換するに至った。高沸点ホウ素化合物は、蒸留塔の蒸留残渣において除去が可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の観点では、流動床反応器においてトリクロロシラン含有反応ガスを生成させ、第1蒸留塔において頂部の蒸留温度を特定の温度に設定することで、第1蒸気留分と第1蒸留残渣とに分離し、第2蒸留塔において、その頂部の蒸留温度を特定の温度に設定することで、トリクロロシランと第2蒸気留分とに分離する。このように、トリクロロシラン含有反応ガスに含まれる各化合物の沸点と蒸留温度との関係に着目し、従来の蒸留処理では分離が困難であったトリクロロシラン含有反応ガス中のトリクロロシランとホウ素化合物とを分離するので、ホウ素化合物の不純物を減じたトリクロロシランを得ることができる。
【0015】
また、第2蒸気留分を流動床反応器に再供給することで、第2蒸気留分に含まれる再利用可能な化合物をトリクロロシランに変換することができ、ジクロロシランおよびその他の化合物を効果的に再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を説明するための処理フロー図である。
【図2】本発明の他の実施形態を説明するための処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
<第1の実施の形態>
本発明では、精製されたトリクロロシランを生成する。特に本発明は、トリクロロシランを汚染するホウ素不純物を低減する方法を提供する。図1は、第1実施形態の処理フロー図である。本発明は、図に示すように互いに接続された流動床反応器1、冷却器2、第1蒸留塔3、第2蒸留塔4、および気化器5を備える。
【0019】
流動床反応器1は、以下の反応式に基づき、約98%の純度の冶金級シリコン顆粒(Me-Si)11と塩化水素ガス(HCl)19とを反応させるものである。
【0020】
Si + 3HCl → SiHCl3 + H2 (1)
Me-SiとHClとの反応の結果、流動床反応器1において反応ガスが生成される。当該反応ガスは、TCS、STC、DCS、およびホウ素化合物を含む。流動床反応器中における塩素化後の反応物の収率は通常、およそ以下のとおりである。TCSが88重量%、STCが11.5重量%、DCSが0.5重量%、そしてホウ素が3,000から6,000ppbwtである。より具体的には、TCSが80重量%超で含有される。本実施形態においては、流動床タイプの反応器が使用される。冶金級シリコン顆粒11は連続的に流動床反応器1へと送られる。塩化水素ガス19は、その底部から流動床反応器1へと送られ、冶金級シリコン顆粒11層中を通過しながら、冶金級シリコン顆粒11と反応させられる。流動床反応器1の床温度は、約280℃から約320℃の間に設定される。この温度範囲は、効果的にTCSを生成するように選択される。特に320℃(608°F)を超える温度は、ある割合のTCSを生成するのに好ましくない。反応ガス12は、凝縮物14の生成のために冷却器2へと送られる。未反応の塩化水素ガスおよび水素ガスは、放出ガス13として本処理から排出される。
【0021】
冷却器2で冷却された凝集物14は、第1蒸留塔3の中央へと送られる。この第1蒸留塔3の目的のうちの少なくとも1つとして、TCSの沸点より高い高沸点化合物の除去がある。第1蒸留塔3は、第1蒸留残渣15として、主にSTCおよび高沸点ホウ素化合物等を除去する。しかしながら、実際にはTCSが第1蒸留残渣15に含有されていても構わない。第1蒸留残渣15の組成は、TCSが30重量%、ホウ素が322,000ppbwt、そして残余STCおよび不可避的な不純物である。高沸点ホウ素化合物は、ペンタボラン(9)(B59)、ペンタボラン(11)(B511)、ジボランテトラクロリド(B2Cl4)、ヘキサボラン(B610)、デカボラン(B1014)等を含有する。
【0022】
第1蒸留塔3は、1つ以上の個別の第1蒸留残渣15を加熱し、第1蒸留残渣15の一部を第1蒸留塔3の底部へと還流するリボイラー(図示せず)と、1つ以上の個別の第1蒸気留分16を冷却し、蒸気留分16を第1蒸留塔3の頂部へと還流する凝縮器(図示せず)とを備える。
【0023】
第1蒸留塔3の頂部温度は、およそトリクロロシランの沸点とおよそテトラクロロシランの沸点との間に設定され、蒸留圧力、スループット、および蒸気留分の容量により制御される。本実施形態では、第1蒸留塔3の頂部における蒸留圧力は、約70kPag(10psig)から120kPag(17psig)の間に設定される。第1蒸留塔の頂部温度がおよそTCSの沸点より低いと、第1蒸留残渣15に含有されるTCSが増加するために好ましくない。一方、およそSTCの沸点より高いと、高沸点ホウ素化合物およびSTCが第1蒸気留分16に含有されるために好ましくない。頂部温度は、80kPa(ゲージ圧力)にて約45℃(113°F)から約55℃(131°F)の間に設定されるのがより好ましい。第1蒸留塔3からの第1蒸気留分16は、TCS、DCS、および低沸点ホウ素化合物を含み、第2蒸留塔4の中央へと送られる。第1蒸留塔3の底部の望ましい温度は、80kPa(ゲージ圧力)にて約65℃(149°F)から約85℃(185°F)の間である。頂部温度は、第1蒸気留分16の還流比によって制御される。
【0024】
第2蒸留塔4の目的のうちの少なくとも1つとして、第2蒸気留分18として低沸点ホウ素化合物の除去がある。低沸点ホウ素化合物は、ジボラン(B26)、ボロントリクロリド(BCl3)、テトラボラン(B410)を含有する。産業的には、第2蒸気留分18中に少量のTCSおよびDCSが含有されていても構わない。一方、精製されたトリクロロシランが第2蒸留残渣17の1つとして分離される。精製されたトリクロロシランは、多くの産業分野で原料として使用される。特に多結晶シリコン製造分野で、精製されたTCSを原料として使用する。TCSの分離に際して、第2蒸留塔4の頂部温度は、およそDCSの沸点からおよそTCSの沸点の間に設定される。第2蒸留塔4の頂部温度は、蒸留塔の圧力、スループット、および還流比によって制御される。第2蒸留塔頂部の蒸留圧力は、約100kPag(15psig)から200kPag(30psig)の間に設定される。この温度がおよそDCSの沸点より低いと、低沸点ホウ素化合物が第2蒸留残渣17に含有されるために好ましくない。逆にこの温度がおよそTCSの沸点より高いと、フラッディング(flooding)問題の兆候である可能性があり、好ましくない。
【0025】
第2蒸留塔4は、1つ以上の個別の第2蒸留残渣17を加熱し、第2蒸留残渣17の一部を蒸留塔4の底部へと還流するリボイラー(図示せず)と、1つ以上の個別の第2蒸気留分18を冷却し、蒸気留分18を第1蒸留塔3に加えて蒸留塔4の頂部へと還流する凝縮器(図示せず)とを備える。
【0026】
第2蒸留塔4からの第2蒸気留分18は、第1蒸留塔3および第2蒸留塔4によって凝縮された低沸点ホウ素化合物を含有する。第2蒸気留分18の組成は、ホウ素が2,000ppbwtと、DCSが20〜40重量%と、残余TCSおよび不可避的な不純物とを含む。第2蒸気留分18は、ホウ素を100ppbwt超にて含有するのがより好ましい。第2蒸気留分18は、低沸点ホウ素化合物のみならず、TCSおよびDCSを含有し、気化器5に送られる。TCSおよびDCSは、この処理で効率的に再利用される。DCSは、流動床反応器1に繰り返し戻されることにより、流動床反応器1でTCSに転換される。第2蒸気留分18は、気化器5で気化され、流動床反応器1に戻される。本実施形態では第1蒸留塔3および第2蒸留塔4を示したが、直列的に1つ以上の追加の蒸留塔が加えられても構わない。
【0027】
第2蒸留塔4から流動床反応器1へと繰り返し低沸点ホウ素化合物を戻すことにより、低沸点ホウ素化合物は高沸点ホウ素化合物へと変換する。低沸点ホウ素化合物、ジボラン(B26)、テトラボラン(10)(B410)等は、最終的にデカボラン(B1014)へと変換する。例えば、ジボラン(B26)は、以下の反応式に従って反応させられる。
【0028】
5B26 → B1014 + 8H2 (2)
この反応においてKc(化学平衡定数)は3.6×1012であり、このKcが大きいために、デカボランは決してジボランに戻ることがない。高沸点ホウ素化合物は、放出ガスとして冷却器2で除去されるか、第1蒸留残渣15として第1蒸留塔3で分離される。
【0029】
<第2の実施の形態>
図2は第2実施形態を示している。第1実施形態と第2実施形態との違いは、中間蒸留塔20にある。他の要素は同じであり、同一の参照符号を使用する。低沸点ホウ素化合物の凝集に際して、第1蒸留塔3と第2蒸留塔4との間に少なくとも1つ以上中間蒸留塔20を設けるのがより好ましい。この中間蒸留塔20の目的のうちの少なくとも1つとして、トリクロロシランより高い沸点を有する高沸点化合物の除去がある。中間蒸留塔20は、1つ以上の個別の蒸留残渣22として、主にSTC、高沸点ホウ素化合物等を除去するが、実際にはTCSがいくらか蒸留残渣22中に含有されていても構わない。
【0030】
中間蒸留塔20は、頂部温度を除いて、第1蒸留塔3とほぼ同じ条件下で操作される。中間蒸留塔20の頂部温度は、第1蒸留塔3の頂部温度とテトラクロロシランの沸点との間に設定されるのが好ましい。中間蒸留塔20の1つ以上の個別の蒸気留分21は、第2蒸留塔4の中央に送られる。本実施形態では中間蒸留塔20を1つ示したが、1つに限られない。第1蒸留塔3と第2蒸留塔4との間に、2つ以上の中間蒸留塔が設けられても構わない。
【実施例】
【0031】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0032】
<実施例1>
表1は、第2蒸留残渣中で汚染されたホウ素の含有量を示しており、第2蒸気留分が流動床反応器に戻されているが、反応開始から10時間経過後は流動床反応器に戻されていない。これは第1実施形態に基づく。
【0033】
冶金級シリコン顆粒の純度、第1塔の頂部温度および底部温度、および第2塔の頂部温度および底部温度の条件は、以下のとおりである。また、第1蒸留塔のゲージ圧力におけるDCS、TCS及びSTCの各沸点、第2蒸留塔のゲージ圧力におけるDCS、TCS及びSTCの各沸点は、以下の通りである。
【0034】
冶金級シリコンの純度 98.57重量%
第1蒸留塔の頂部温度 49.4℃(121°F)
第1蒸留塔の底部温度 77.2℃(171°F)
第2蒸留塔の頂部温度 55.5℃(132°F)
第2蒸留塔の底部温度 66.7℃(152°F)
第1蒸留塔のゲージ圧力 79.3kPa(11.5psig)
第2蒸留塔のゲージ圧力 123.4kPa(17.9psig)
第1蒸留塔のゲージ圧力におけるDCS沸点 24.8℃
第1蒸留塔のゲージ圧力におけるTCS沸点 49.3℃
第1蒸留塔のゲージ圧力におけるSTC沸点 76.7℃
第2蒸留塔のゲージ圧力におけるDCS沸点 31.3℃
第2蒸留塔のゲージ圧力におけるTCS沸点 56.7℃
第2蒸留塔のゲージ圧力におけるSTC沸点 84.7℃
【0035】
【表1】

本実施形態では、第2蒸留残渣中のホウ素含有量はメチレンブルー吸収測定法により測定される。トリフェニルクロロメタンが捕集媒体として用いられる。1,2−ジクロロエタンが抽出剤として用いられる。
【0036】
実施形態および実施例は、発明を制限する目的ではなく、説明するために述べられている。添付の請求の範囲に定義されるように、関連の保護範囲から逸脱することなく、当業者によって変更および/または修正が加えられてよい旨が理解されなければならない。
【符号の説明】
【0037】
1 流動床反応器
2 冷却器
3 第1蒸留塔
4 第2蒸留塔
5 気化器
11 冶金級シリコン顆粒
12 反応ガス
13 放出ガス
14 凝縮物
15 第1蒸留残渣
16 第1蒸気留分
17 第2蒸留残渣(トリクロロシラン)
18 第2蒸気留分
19 塩化水素ガス(HCl)
20 中間蒸留塔
21 中間蒸気留分
22 中間蒸留残渣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素化合物の量を減じたトリクロロシラン製造方法であって、
トリクロロシラン含有反応ガスを生成するために、流動床反応器において冶金級シリコンと塩化水素ガスとを反応させ、
第1蒸気留分と第1蒸留残渣とを分離するために、第1蒸留塔頂部の蒸留温度をおよそトリクロロシランの沸点とおよそテトラクロロシランの沸点との間に設定することによる前記反応ガスの第1蒸留を実施し、
前記第1蒸気留分を第2蒸留塔へ供給し、
トリクロロシランと、ホウ素化合物を含有する第2蒸気留分とを分離するために、前記第2蒸留塔頂部の蒸留温度をおよそジクロロシランの沸点とおよそトリクロロシランの沸点との間に設定することにより、第2蒸留を実施し、
前記第2蒸気留分を前記流動床反応器に再供給することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第2蒸気留分は、前記流動床反応器に入れられる前に気化器へと供給されることを特徴とする請求項1に記載のホウ素化合物の量を減じたトリクロロシラン製造方法。
【請求項3】
前記流動床反応器の床温度は、約280℃から約320℃の間に設定されることを特徴とする請求項1に記載のホウ素化合物の量を減じたトリクロロシラン製造方法。
【請求項4】
前記流動床反応器からの凝集物は、前記第1蒸留塔の中央に供給される前に、冷却器にて冷却されることを特徴とする請求項1に記載のホウ素化合物の量を減じたトリクロロシラン製造方法。
【請求項5】
前記第1蒸留塔頂部の蒸留圧力は、約70kPag(10psig)から120kPag(17psig)の間に設定されることを特徴とする請求項1に記載のホウ素化合物の量を減じたトリクロロシラン製造方法。
【請求項6】
前記第1蒸留塔の頂部温度は、80kPaにて約45℃から約55℃の間に設定されることを特徴とする請求項1に記載のホウ素化合物の量を減じたトリクロロシラン製造方法。
【請求項7】
前記第1蒸留塔の底部温度は、80kPaにて約65℃から約85℃の間に設定されることを特徴とする請求項1に記載のホウ素化合物の量を減じたトリクロロシラン製造方法。
【請求項8】
前記第1蒸留塔の頂部温度は、第1蒸気留分の還流比によって制御されることを特徴とする請求項1に記載のホウ素化合物の量を減じたトリクロロシラン製造方法。
【請求項9】
前記第1蒸留塔からの第1蒸留残渣の組成は、トリクロロシランが30重量%、ホウ素が322,000ppbwtであり、テトラクロロシランと不可避的な不純物の残余が含まれることを特徴とする請求項1に記載のホウ素化合物の量を減じたトリクロロシラン製造方法。
【請求項10】
前記第2蒸留塔頂部の蒸留圧力は、約100kPag(15psig)から200kPag(30psig)の間に設定されることを特徴とする請求項1に記載のホウ素化合物の量を減じたトリクロロシラン製造方法。
【請求項11】
前記第2蒸留塔の頂部温度は、蒸留塔圧力、スループット、および還流比によって制御されることを特徴とする請求項1に記載のホウ素化合物の量を減じたトリクロロシラン製造方法。
【請求項12】
前記第2蒸留塔からの第2蒸留残渣の組成は、ホウ素が2,000ppbwt、ジクロロシランが20から40重量%であり、トリクロロシランと不可避的な不純物の残余が含まれることを特徴とする請求項1に記載のホウ素化合物の量を減じたトリクロロシラン製造方法。
【請求項13】
前記第2蒸気留分は、100ppbwt超のホウ素を含むことを特徴とする請求項1に記載のホウ素化合物の量を減じたトリクロロシラン製造方法。
【請求項14】
前記第1蒸気留分と前記第2蒸気留分は、低沸点のホウ素化合物と、トリクロロシランと、少量のジクロロシランとを含むことを特徴とする請求項1に記載のホウ素化合物の量を減じたトリクロロシラン製造方法。
【請求項15】
ホウ素化合物の量を減じたトリクロロシラン製造方法であって、
トリクロロシラン含有反応ガスを生成するために、床温度が約280℃から約320℃の間に設定された流動床反応器において冶金級シリコンと塩化水素ガスとを反応させ、
第1蒸気留分と第1蒸留残渣とを分離するために、第1蒸留塔頂部の蒸留温度をおよそトリクロロシランの沸点とおよそテトラクロロシランの沸点との間に設定し、前記第1蒸留塔頂部の蒸留圧力を約70kPag(10psig)から120kPag(17psig)の間に設定することにより、前記反応ガスの第1蒸留を実施し、
前記第1蒸気留分を第2蒸留塔へ供給し、
トリクロロシランと、ホウ素化合物を含有する第2蒸気留分とを分離するために、前記第2蒸留塔頂部の蒸留温度をおよそジクロロシランの沸点とおよそトリクロロシランの沸点との間に設定し、前記第2蒸留塔頂部の蒸留圧力を約100kPag(15psig)から200kPag(30psig)の間に設定することにより、第2蒸留を実施し、
前記第2蒸気留分を前記流動床反応器に再供給することを特徴とする方法。
【請求項16】
ホウ素化合物の量を減じたトリクロロシラン製造方法であって、
トリクロロシラン含有反応ガスを生成するために、流動床反応器において冶金級シリコンと塩化水素ガスとを反応させ、
第1蒸気留分と第1蒸留残渣とを分離するために、第1蒸留塔頂部の蒸留温度をおよそトリクロロシランの沸点とおよそテトラクロロシランの沸点との間に設定することにより、前記反応ガスの第1蒸留を実施し、
前記第1蒸気留分を中間蒸留塔へ供給し、
中間蒸気留分と蒸留残渣とを分離するために、前記中間蒸留塔頂部の蒸留温度をおよそ第1蒸留塔の頂部温度とテトラクロロシランの沸点との間に設定することにより、中間蒸留を実施し、
前記中間蒸気留分を第2蒸留塔へ供給し、
トリクロロシランと、ホウ素化合物を含有する第2蒸気留分とを分離するために、前記第2蒸留塔頂部の蒸留温度をおよそジクロロシランの沸点とおよそトリクロロシランの沸点との間に設定することにより、第2蒸留を実施し、
前記第2蒸気留分を前記流動床反応器に再供給することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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