説明

ホウ素含有水の処理方法

【課題】より効率的にホウ素を除去することができるホウ素含有水の処理方法の提供。
【解決手段】本発明のホウ素含有水の処理方法は、ホウ素含有水に、アルミニウム化合物、硫酸含有物質及びカルシウム化合物を添加し、モータを用いて攪拌して、ホウ素含有沈澱物を生成させる攪拌工程と、前記生成されたホウ素含有沈澱物を除去する除去工程とを含むホウ素含有水の処理方法であって、前記攪拌工程において、前記モータの負荷電力P(kW)と被攪拌液の容積V(m)とが、P/V≧0.175kW/mの関係を満たすことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウ素含有水の処理方法に関し、特に、アルミニウム化合物、硫酸含有物質及びカルシウム化合物を添加し、アルカリ性に調整して固液分離するホウ素含有水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホウ素(B)は、例えば、ガラス製品、医薬品、化粧品、半導体、めっき製品の製造に使われ、その製造排水中に含まれ、また、石炭火力発電所の排煙脱硫排水やごみ焼却場洗煙排水、ニッケルめっき工場排水などにも含まれている。ホウ素は、ヒトが大量に摂取した場合、中枢及び末梢神経系統や消化器官への障害、腎臓障害、精巣の委縮などが起こることが知られている。そのため、ホウ素(B)は、排水基準値が10ppmと定められ、ホウ素排水の処理が重要視されている。
【0003】
排水中のホウ素を除去する方法として、例えば、イオン交換樹脂やキレート樹脂にホウ素を吸着させて除去する方法や、アルミニウム化合物及びカルシウム化合物を使用して不溶性の析出物を生成させて、ホウ素を除去する凝集沈澱法(例えば、特許文献1)などが一般的である。
【0004】
【特許文献1】特開2007−38171号公報
【0005】
しかし、イオン交換樹脂やキレート樹脂に吸着させてホウ素を除去する方法は、大量の樹脂を必要とし、再生処理を行う必要があり、再生処理のコストが高くなるため、高濃度のホウ素排水処理には不向きであった。また、再生処理によって生成されたホウ素濃縮液の処理が必要となるなどの問題点があった。
【0006】
また、アルミニウム化合物及びカルシウム化合物を使用してホウ素を除去する方法は、硫酸バンド、消石灰を使用する場合以外では、ホウ素の吸着能力が不十分であり、硫酸バンド、消石灰を使用した場合においても、排水中のホウ素化合物を排水基準値以下まで除去するためには多量の薬剤添加が必要であること、沈降分離が困難となることなどの問題点があった。また、凝集沈澱法は、入手しやすい薬剤を用いるので、安定して操業が可能であるものの、より多量のホウ素含有排水を処理するためには、設備の増強が強いられるため、建設費など投資金額が増大していた。
【0007】
また、高濃度のホウ素を処理する方法には、ホウ素以外の物質を吸着し、濃縮して回収する方法があるが、濃縮の際に多量のエネルギーを必要とし、初期投資、ランニングコストの点で問題があった。
【0008】
このような現状から、ホウ素処理、特に高濃度ホウ素含有水の処理において、より効率的な処理方法の開発が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、より効率的にホウ素を除去することができるホウ素含有水の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決する手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> ホウ素含有水に、アルミニウム化合物、硫酸含有物質及びカルシウム化合物を添加し、モータを用いて攪拌して、ホウ素含有沈澱物を生成させる攪拌工程と、前記生成されたホウ素含有沈澱物を除去する除去工程とを含むホウ素含有水の処理方法であって、前記攪拌工程において、前記モータの負荷電力P(kW)と被攪拌液の容積V(m)とが、P/V≧0.175kW/mの関係を満たすことを特徴とするホウ素含有水の処理方法である。
<2> 攪拌工程において、被攪拌液が乱流により攪拌される前記<1>に記載のホウ素含有水の処理方法である。
<3> 被攪拌液を貯留する容器が、内側に邪魔板を備える前記<1>から<2>のいずれかに記載のホウ素含有水の処理方法である。
<4> 攪拌工程において攪拌されたホウ素含有水が、pHが8以上である前記<1>から<3>のいずれかに記載のホウ素含有水の処理方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法によれば、前記従来における諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、より効率的にホウ素を除去することができるホウ素含有水の処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(ホウ素含有水の処理方法)
本発明のホウ素含有水の処理方法は、攪拌工程と、除去工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0013】
−攪拌工程−
前記攪拌工程は、ホウ素含有水に、アルミニウム化合物、硫酸含有物質及びカルシウム化合物を添加し、モータを用いて攪拌して、ホウ素含有沈澱物を生成させる工程である。
【0014】
前記ホウ素含有水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス製品、医薬品、化粧品、半導体、めっき製品の製造工場排水、石炭火力発電所の排煙脱硫排水、ごみ焼却場洗煙排水、ニッケルめっき工場排水、その他の工場や研究施設の排水、一般家庭からの排水などが挙げられる。
【0015】
前記アルミニウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0016】
前記硫酸含有物質としては、溶解して硫酸イオンを生じる物質であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫酸バンド、硫酸、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。
【0017】
前記アルミニウム化合物及び前記硫酸含有物質としては、硫酸バンドが、ホウ素含有水の処理に必要な、アルミニウム及び硫酸を有している点で、好ましい。
【0018】
前記カルシウム化合物としては、アルミニウムや硫酸イオンと反応して不溶性析出物を生成する化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸化カルシウム(消石灰)、酸化カルシウム(生石灰)、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。中でも、消石灰が、アルミニウムや硫酸イオンと反応して不溶性析出物を生成しやすい点で、好ましい。
【0019】
一回の処理における、前記アルミニウム化合物及び前記カルシウム化合物の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アルミニウム濃度として100mg/L〜1,000mg/L、カルシウム濃度として500mg/L〜10,000mg/Lが好ましい。ホウ素含有水のホウ素濃度、他のイオン濃度にもよるが、アルミニウム濃度として1,000mg/L、カルシウム濃度として10,000mg/Lを超えると、ホウ素含有沈澱物の沈降分離が困難となることがある。
また、アルミニウム化合物とカルシウム化合物の添加比率は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アルミニウム1質量部に対してカルシウムが2〜10質量部が好ましく、アルミニウム1質量部に対してカルシウムが3〜6質量部がより好ましい。
【0020】
一回の処理における、前記硫酸含有物質の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、硫酸濃度としてアルミニウムに対して1モル以上が好ましい。
【0021】
前記アルミニウム化合物、前記硫酸含有物質及び前記カルシウム化合物をホウ素含有水へ添加する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ホウ素含有水中にアルミニウム化合物、硫酸含有物質、カルシウム化合物の順に添加する方法、アルミニウム化合物、硫酸含有物質及びカルシウム化合物を同時に添加する方法、アルミニウム化合物、硫酸含有物質及びカルシウム化合物のうち複数種をあらかじめ混合して調整した薬剤をホウ素含有水中に添加する方法などが挙げられる。
【0022】
前記モータとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電動モータなどが挙げられる。
【0023】
前記攪拌は、P/V値が0.175kW/m以上である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.2kW/m以上8kW/m以下が好ましい。
ここで、P/V値とは、攪拌時のモータ負荷(消費)電力P(kW)を被攪拌液の容積V(m)で除算したものである。
【0024】
また、前記攪拌は、より効率的にホウ素含有水を処理することができる点で乱流による攪拌が好ましい。前記乱流による攪拌としては、完全邪魔板条件においてP/V値が0.175kW/m以上であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0025】
前記乱流による攪拌に用いる翼は、攪拌動力を上げることでせん断性や攪拌効率を向上できれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、攪拌の効率を上げる方法としては、例えば、ラインミキサ−を用いる、もしくは併用するなどが挙げられる。
【0026】
被攪拌液を貯留する容器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、攪拌の効率を上げるために、容器の内側に邪魔板を有することが好ましい。
【0027】
前記邪魔板の設置方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、邪魔板を容器の高さ方向の側壁に沿い内側に設置する方法、邪魔板が複数の板から連接するように設置する方法、邪魔板を断続的に設置する方法、邪魔板を攪拌機の回転軸を中心に対象となるように設置する方法などである。
前記邪魔板の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、板状が好ましい。
前記邪魔板の枚数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2枚以上が好ましい。なお、前記邪魔板の枚数が偶数であると、攪拌効率が良い点で、好ましい。
なお、前記邪魔板は、拡散板、バッフル板とも言われるものである。
【0028】
前記攪拌の時間としては、特に制限はなく、ホウ素含有沈澱物の生成状況により決定することができ、例えば、ホウ素含有沈澱物が生成し、容器の底部から抜き出せる程度、ろ過機に供せる程度などにより決定することができる。
【0029】
−除去工程−
前記除去工程は、前記生成されたホウ素含有沈澱物を除去する工程である。
【0030】
前記除去の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、被攪拌液を貯留する容器の底部から、ホウ素含有沈澱物を抜き出す方法、ホウ素含有沈澱物を含む被攪拌液をろ過機に供する方法などが挙げられる。
【0031】
−その他の工程−
前記その他の工程としては、本発明の効果を害しない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、pH調整工程などが挙げられる。
【0032】
−−pH調整工程−−
前記pH調整工程は、前記ホウ素含有沈澱物を生成するために、pH調整剤を用いて、前記攪拌工程において攪拌されたホウ素含有水のpHを調整する工程である。この工程は、前記攪拌工程とともに行うこともできる。
【0033】
前記ホウ素含有沈澱物を生成するためのpHとしては、8以上であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、pH10〜12が好ましい。pH10〜12の範囲外では、ホウ素を含有した不溶性析出物の沈降性やホウ素の除去性が悪化する可能性がある。
【0034】
前記pH調整剤としては、前記攪拌工程において攪拌されたホウ素含有水のpHを8以上の範囲に調整することができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア、硝酸、硫酸、塩酸などが挙げられる。
【0035】
前記pH調整剤をホウ素含有水へ添加する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ホウ素含有水中にアルミニウム化合物、硫酸含有物質、カルシウム化合物、pH調整剤の順に添加する方法、アルミニウム化合物、硫酸含有物質、カルシウム化合物及びpH調整剤を同時に添加する方法、アルミニウム化合物、硫酸含有物質、カルシウム化合物及びpH調整剤のうち複数種をあらかじめ混合して調整した薬剤をホウ素含有水中に添加する方法などが挙げられる。
【0036】
−多段処理−
前記多段処理は、上述したホウ素含有水の処理を複数段行うことである。また、特定の工程を複数段行うものであってもよい。
【0037】
前記多段処理の段数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ホウ素濃度1,000mg/Lの排水では、3〜4段とするなどが挙げられる。
【0038】
前記多段処理を行う場合、前段で生じたホウ素含有沈澱物(汚泥)の一部を次の段で処理するホウ素含有水に加えて、処理を行うこともできる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
ホウ酸をイオン交換水に溶解させ、ホウ素濃度100mg/Lに調整し、模擬排水とした。アルミニウム化合物及び硫酸含有物質として、工業用硫酸バンドを用いた。カルシウム化合物として、消石灰にイオン交換水を加えて20重量%とし、スラリー状の消石灰を調整した。
前記模擬排水1,000mLに、工業用硫酸バンドをアルミニウム濃度が模擬排水1,000mLに対して500mg/Lとなるように添加し、前記調整した消石灰をカルシウム濃度が模擬排水1,000mLに対して2,500mg/Lとなるように添加し、P/V値が7.36kW/m(翼段数2段 翼回転数700rpm、翼先端速度0.837m/sec)とし、タービン翼を用いて4枚邪魔板条件下で乱流による攪拌を20分間行った。
その後、高分子凝集剤A−95(MTアクアポリマー株式会社製、弱アニオン系ポリマー)を1mg/Lとなるように添加し、緩やかに攪拌して、ホウ素含有沈澱物を凝集沈澱させた。
このとき得られた上澄水を0.45μmメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置(日本ジャーレル・アッシュ株式会社製、ICAP−575II)によりホウ素濃度を測定した。
【0041】
(比較例1)
P/V値を0.17kW/m(翼段数2段 翼回転数200rpm、翼先端速度0.42m/sec)とし、タービン翼を用いて層流による攪拌としたこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0042】
(比較例2)
P/V値を0.17kW/m(翼段数2段 翼回転数200rpm、翼先端速度0.42m/sec)とし、タービン翼を用いて4枚邪魔板条件下で乱流による攪拌としたこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0043】
実施例1、比較例1及び比較例2の結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に示したように、P/V値を大きくすることで、ホウ素除去率が向上した。
【0046】
(実施例2−1)
実施例1と同様にして、模擬排水、消石灰を調整した。
前記模擬排水1,000mLに、工業用硫酸バンドをアルミニウム濃度が模擬排水1,000mLに対して500mg/Lとなるように添加し、前記調整した消石灰をカルシウム濃度が模擬排水1,000mLに対して1,480mg/Lとなるように添加し、20分間、攪拌混合した。
攪拌混合の条件は、完全邪魔板条件の乱流による攪拌とし、P/V値が1.373kW/m(タービン翼2段、回転数400rpm)とした。
その後、高分子凝集剤A−95(MTアクアポリマー株式会社製、弱アニオン系ポリマー)を1mg/Lとなるように添加し、緩やかに攪拌して、不溶性析出物を凝集沈澱させた。このとき得られた上澄水を0.45μmメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置(日本ジャーレル・アッシュ株式会社製、ICAP−575II)によりホウ素濃度を測定した。
【0047】
(実施例2−2)
攪拌混合の条件を、完全邪魔板条件の乱流による攪拌とし、P/V値が0.1751kW/m(タービン翼1段、回転数800rpm)で攪拌混合したこと以外は、実施例2−1と同様に行った。
【0048】
(比較例3)
攪拌混合の条件を、完全邪魔板条件の乱流による攪拌とし、P/V値が0.0219kW/m(タービン翼1段、回転数400rpm)で攪拌混合したこと以外は、実施例2−1と同様に行った。
【0049】
(比較例4)
攪拌混合の条件を、完全邪魔板条件の乱流による攪拌とし、P/V値が0.0739kW/m(タービン翼1段、回転数600rpm)で攪拌混合したこと以外は、実施例2−1と同様に行った。
【0050】
実施例2−1、実施例2−2、比較例3及び比較例4の結果を表2に示し、P/V値に伴う処理水ホウ素濃度の推移を図1に示す。表2、図1に示すようにP/V値の上昇によりホウ素除去性能が向上することがわかった。
【0051】
【表2】

【0052】
(実施例3)
実施例1と同様にして、模擬排水、消石灰を調整した。
ホウ素含有沈澱物の返送なしでは、模擬排水1,000mLに、工業用硫酸バンドをアルミニウム濃度が模擬排水1,000mLに対して500mg/Lとなるように添加し、消石灰をカルシウム濃度が模擬排水1,000mLに対して2,000mg/Lとなるように添加し、pHが11.5〜12.0になるように水酸化ナトリウム溶液を添加した。
前記攪拌混合は、P/V値が1.37kW/m(翼段数2段 翼回転数400rpm、翼先端速度0.837m/sec、槽内邪魔板4枚あり)となるようにタービン翼を用いて乱流による攪拌を行った。
その後、高分子凝集剤A−95を1mg/Lとなるように添加し、緩やかに攪拌して、不溶性析出物を凝集沈澱させ、このとき得られた上澄水を0.45μmメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置(日本ジャーレル・アッシュ株式会社製、ICAP−575II)によりホウ素濃度を測定した。攪拌終了から30分後、模擬排水全体(沈降した汚泥を含む)の20%を返送汚泥として、次の試験(ホウ素含有沈澱物の返送1回目)に用いた。なお、汚泥は、模擬排水の容積に対して20%(200mL)を返送分とし、残りは使用しないこととした。
ホウ素含有沈澱物の返送1回目〜4回目では、模擬排水800mLに、返送された汚泥を200mL加え、工業用硫酸バンドをアルミニウム濃度が模擬排水800mg/Lに対して500mg/Lとなるように添加し、消石灰をカルシウム濃度が模擬排水800mLに対して2,000mg/Lとなるように添加し、pHが11.5〜12.0になるように水酸化ナトリウム溶液を添加した。
前記攪拌混合は、P/V値が1.37kW/m(翼段数2段 翼回転数400rpm、翼先端速度0.837m/sec、槽内邪魔板4枚あり)となるようにタービン翼を用いて乱流による攪拌を行った。
その後、ホウ素含有沈澱物の返送なしの場合と同様の処理を行い、処理水のホウ素濃度を測定し、模擬排水全体(沈降した汚泥を含む)の20%を返送汚泥として、次の試験(返送2回目)に用いた。これを繰り返すことで返送4回目の処理水を得た。その結果を表3に示す。
【0053】
(実施例4)
ホウ素含有沈澱物の返送なし及びホウ素含有沈澱物の返送1回目〜4回目での攪拌混合をP/V値が7.36kW/m(翼段数2段 翼回転数700rpm、翼先端速度0.837m/sec、槽内邪魔板4枚あり)となるようにタービン翼を用いて乱流による攪拌を行ったこと以外は、実施例3と同様に行った。
【0054】
(比較例5)
ホウ素含有沈澱物の返送なし及びホウ素含有沈澱物の返送1回目〜4回目での攪拌混合をP/V値が0.022kW/m(翼段数1段 翼回転数400rpm、翼先端速度0.837m/sec)となるようにタービン翼を用いて層流による攪拌としたこと以外は、実施例3と同様に行った。
【0055】
【表3】

【0056】
表3に示されるように、P/V値を大きくすることで、汚泥を返送する場合においてもホウ素の除去率が顕著に向上することがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、P/V値に伴う処理水ホウ素濃度の推移を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素含有水に、アルミニウム化合物、硫酸含有物質及びカルシウム化合物を添加し、モータを用いて攪拌して、ホウ素含有沈澱物を生成させる攪拌工程と、前記生成されたホウ素含有沈澱物を除去する除去工程とを含むホウ素含有水の処理方法であって、前記攪拌工程において、前記モータの負荷電力P(kW)と被攪拌液の容積V(m)とが、P/V≧0.175kW/mの関係を満たすことを特徴とするホウ素含有水の処理方法。
【請求項2】
攪拌工程において、被攪拌液が乱流により攪拌される請求項1に記載のホウ素含有水の処理方法。
【請求項3】
被攪拌液を貯留する容器が、内側に邪魔板を備える請求項1から2のいずれかに記載のホウ素含有水の処理方法。
【請求項4】
攪拌工程において攪拌されたホウ素含有水が、pHが8以上である請求項1から3のいずれかに記載のホウ素含有水の処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−233641(P2009−233641A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86798(P2008−86798)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(506347517)DOWAエコシステム株式会社 (83)
【Fターム(参考)】