説明

ホスファチジルオリゴグリセリン

【課題】リポソームの寿命を延ばし、同時に正確に示し得る組成を有する化合物を提供する。
【解決手段】一般式(A)で示され、式中、R1、R2、R3、n、x、mが明細書に記載のものである化合物により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定の親水基を有するホスファチジル化合物並びに長い寿命を有するリポソームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリポソームは、血清中で5時間までの滞留時間を示す。しかしながら、殊にリポソームを医薬作用物質の担体として使用する場合には、血液循環中でのリポソームの可能な限り長い滞留時間が望ましい。
【0003】
そのため、より長い寿命を有するいわゆる「ステアルト(Stealth)−リポソーム」が開発された。この「ステアルト−リポソーム」は延長されたポリエチレングリコール基を有するホスファチジル化合物をベースに構成されている。ポリエチレングリコール基は、目的である長い寿命に関して、分子量2000〜3000の場合に最も有効であることが判明している。このポリエチレングリコール基を有する「ステアルト−リポソーム」もしくはホスファチジル化合物の主な欠点は、ポリエチレングリコール基が様々な鎖長を有するので、正確に定義される化合物ではないことである。
【0004】
更に、マルヤマ et al.(Int. J. Pharmac. 111 (1994), 103-107)により、リポソーム循環を延長するためにジパルミトイルホスファチジルポリグリセリンを使用することが提案された。しかし、工業用ポリグリセリンから出発したので、この場合にも均一な製品が得られなかった。様々な鎖長のポリグリセリン及びモノグリセリンからなり、かつその平均分子量で同定されている工業用ポリグリセリンが、ホスホリパーゼDを用いてホスファチジル化された。しかし、こうして得られた製品では、血液中でのリポソームの寿命の僅かな延長が観察されたのみであった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Int. J. Pharmac. 111 (1994), 103-107
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の課題は、リポソームの寿命を延ばし、同時に正確に示し得る組成を有する化合物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は本発明により、一般式(A):
【化1】

[式中、R1及びR2は相互に無関係に水素、場合により分枝しているか、又は/かつ置換されていてよい飽和又は不飽和アルキル基又はアシル基であり、
3は水素又はアルキル基であり、
n=0又は1であり、
xは、1〜4の整数であり、かつ
mは、n=0の場合には2〜10の整数、n=1の場合には1〜10の整数であり、更に、xが1よりも大きい場合には1であり、
その際、n=0の場合には化合物はmの値に関して90%を上回る均一性を有する]の化合物により解決される。
【0008】
本発明のベースである、式(A)のホスファチジル化合物の親水基の漸進的形成は、化合物の正確に定義される組成を得ることを可能にする。
【0009】
式(A)の本発明の化合物には、不定の組成及び鎖長の様々な分子の混合物は該当せず、所定に、所望の構造を得ることが出来る。このことは、例えば、所望の製品がトリグリセリン誘導体である場合、即ち式(A)中でx=1及びm=3の場合に、モノグリセリン誘導体、ジグリセリン誘導体、テトラグリセリン誘導体及び高級オリゴグリセリン誘導体の含分が僅かであることを意味する。実質的に他の鎖長のグリセリン誘導体を含まない特定の鎖長のグリセリン誘導体を得るのが有利である。殊に、モノグリセリン誘導体の含分は僅かで、かつ所望のオリゴグリセリン誘導体に対して、5%未満、有利に1%未満、かつ特に有利に0.1%未満である。
【0010】
本発明では、式(A)の化合物は、一定の構造の均一な化合物である。化合物はmの値に関して95%を上回る、特に有利に99%を上回る均一性を有するのが有利である。しかし、mの値に関して99.9%を上回る均一性を有する化合物を提供することも可能である。
【0011】
この化合物には、2〜5個のグリセリン単位、有利に2〜4個のグリセリン単位を有するオリゴグリセリン誘導体が有利である。その場合、1.3−結合された線状オリゴグリセリン基であるのが有利である。
【0012】
基R1及びR2は本発明では、相互に無関係に、水素、飽和又は不飽和C1〜C24−アルキル基又はC1〜C24−アシル基、有利に水素又は飽和又は不飽和C8〜C24−アルキル基又はC8〜C24−アシル基であるのが有利であり、その際、基R1及びR2の少なくとも1つがアシル基であるのが有利である。
【0013】
基R3は水素又は炭素原子1〜4個を有するアルキル基であるのが有利である。
【0014】
式(A)の化合物は、ホスフォ−rac−(1又は3)−オリゴグリセリン結合を有するラセミ化合物として、又は立体特異性異性体として存在してよい。立体異性体は、ホスフォ−sn−1−オリゴグリセリン結合又はホスフォ−sn−3−オリゴグリセリン結合を有してよい。立体特異性結合の形成は、文献中に記載された方法と同様に実施することが出来る(ドイツ特許(DE)第3130867A1号明細書;H. Eibl et al., Chem. phys. Lipids, 28 (1981), 1-5, 41 (1986), 53-63 及び 47(1988, 47-53))。
【0015】
本発明のもう1つの目的は、リン脂質及び/又はアルキルリン脂質、場合によりコレステリン及び一般式(A):
【化2】

[式中、R1及びR2は相互に無関係に水素、場合により分枝しているか、又は/かつ置換されていてよい飽和又は不飽和アルキル基又はアシル基であり、
3は水素又はアルキル基であり、
n=0又は1であり、
xは、1〜4の整数であり、かつ
mは、n=0の場合には2〜10の整数、n=1の場合には1〜10の整数であり、更に、xが1よりも大きい場合には1であり、
その際、n=0の場合には化合物(A)はmの値に関して90%を上回る均一性を有する]の化合物又はその塩1〜50モル%を含有し、コレステリン、リン脂質、アルキルリン脂質及び式(A)の化合物は全部で100モル%であるリポソームである。
【0016】
本発明のリポソームは、血清中で18〜20時間までの半減期を有する。その場合意外にも、血液中でのリポソーム濃度の直線的な低下が認められた。
【0017】
本発明では、mの値に関して95%を上回る、特に有利に99%を上回る均一性を有する化合物(A)を使用するのが有利である。しかし、mの値に関して99.9%を上回る均一性を有する実質的に純粋な形の化合物(A)を使用することも可能である。
【0018】
式中、x=1であり、かつmが2〜5の整数、特に有利に2〜4の整数である式(A)の化合物をリポソームが含有するのが有利である。
【0019】
リポソーム中に含有される式(A)の化合物の基R1及びR2は相互に無関係に、水素、飽和又は不飽和C1〜C24−アルキル基又はC1〜C24−アシル基、有利に水素又は飽和又は不飽和C8〜C24−アルキル基又はC8〜C24−アシル基であってよい。置換基には、製造の際に干渉しない基がこれに該当する。R3は、水素又はC1〜C4−アルキル基であるのが有利である。
【0020】
式(A)の化合物はリポソーム中でラセミ混合物として、即ちホスフォ−rac−(1又は3)−オリゴグリセリン結合を伴って存在してよい。これは、ホスフォ−sn−1−オリゴグリセリン結合又はホスフォ−sn−3−オリゴグリセリン結合を有する立体特異性形で存在するのが有利である。
【0021】
式(A)の基R1及びR2の少なくともいずれか1つがアシル基であるのが有利である。
【0022】
n=0の式(A)の化合物が存在するリポソームは、負の過剰電荷を有するのが有利である。しかし、式中n=1である式(A)の化合物からリポソームを製造することもできる。この場合、リポソームは、正の過剰電荷を有さないか、又は1つ有するのが有利である。
【0023】
リポソームは、式(A)の化合物の他に、リン脂質及び/又はアルキルリン脂質並びにコレステリンを含有するのが有利である。式(A)の化合物を5〜15モル%使用するのが有利である。リポソームが過剰電荷を有さない場合には、コレステリン0〜70モル%、式(A)の化合物1〜50モル%及びリン脂質及び/又はアルキルリン脂質からなる組成が有利である。負の過剰電荷の場合には、リポソームの有利な組成は、コレステリン0〜70モル%、式(A)の化合物1〜15モル%並びにリン脂質及び/又はアルキルリン脂質からなる。負の過剰電荷を有する式(A)の化合物のより高い割合は、血液循環中でのリポソームの不安定さをもたらすであろう。リポソームが、コレステリン35〜43モル%、有利に38〜42モル%、式(A)の化合物5〜15モル%及びリン脂質及び/又はアルキルリン脂質を含むのが有利である。
【0024】
リン脂質及び/又はアルキルリン脂質は例えば、一定の構造のジアシルホスホグリセリンであってよい。通常、この脂質の成分を、一定の構造の化合物として使用することができる。
【0025】
x>1の場合には、基:−CH2(−CHOH)−CH2−OHは、x=2では4個のヒドロキシル基、x=3では5個のヒドロキシル基、かつ=4では6個のヒドロキシル基を有する糖アルコールに由来するのが有利である。このような基の例は、x=4ではマンニット誘導体、x=3ではリキシト誘導体、かつx=2ではトレイト誘導体である。
【0026】
本発明のリポソームは、血液循環中で明らかに長い半減期を有する。その半減期は、最低10時間、特に有利に12時間以上であるのが有利である。本発明のリポソームは18〜20時間の半減期を有する。意外にもその場合、血液中での脂質濃度の完全に直線の低下曲線が確認された。本発明では、6時間後に、血液中に与えられたリポソーム量の50%以上、かつ特に有利には60%以上が存在するのが有利である。
【0027】
本発明のリポソームの特に意外な特性として、その脾臓中での有利な蓄積が判明している。組成及びリポソームの大きさに依存して、脾臓中の蓄積ファクターは既に、肝臓に比較してほぼ25倍に達する。その場合、肝臓に比較しての脾臓中での蓄積は、式A中のmの値が増すにつれて、かつリポソームの大きさが大きくなるにつれて上昇する。例えば、脾臓中での蓄積度は、SUVs(小型一枚膜リポソーム;直径約60nm)からLUVs(大型一枚膜リポソーム)へと移行すると、何倍も上昇する。脾臓中での有利な蓄積は、R1及びR2中の炭素原子の数が増えるにつれて上昇する。
【0028】
更に、本発明のリポソームは、特定の腫瘍組織中にも蓄積することが判明した。例えば、このような蓄積が、メチルニトロソウレアに起因する乳ガン(MNU−癌)で起こることが判明した。
【0029】
更に、本発明のリポソームは付加的に1種以上の医薬作用物質を含有してよい。
【0030】
作用物質としては通常、リポソームを用いて主に血漿中にもたらされうる全ての作用物質を使用することができる。有利な作用物質群は、一方で細胞増殖抑制剤、殊にアントラシクリン(Anthracyclin)−抗生物質、例えばドキソルビシン、エピルビシン(Epirubicin)又はダウノマイシンであり、その際、ドキソルビシンが特に有利である。他の有利な細胞増殖抑制剤は、イダルビシン(Idarubicin)、ヘキサデシルホスホコリン、1−オクタデシル−2−メチル−rac−グリセロ−3−ホスホコリン、5−フルオルウラシル、シス−白金錯体、例えばカルボ白金及びノヴァントロン(Novantron)並びにマイトマイシンである。
【0031】
他の有利な作用物質群は、免疫修飾物質、例えばサイトカインであり、その際、これらの内で再び、インターフェロン及び殊にα−インターフェロン、抗真菌性作用物質(例えば、アンホテリシンB)及び原虫症(マラリア、トリパノソーマ及びリーシュマニア−感染)に対する作用物質が特に有利である。同様に、作用物質としてのタクソールも有利である。
【0032】
もう1つの有利な作用物質群は、ドイツ特許(DE)第4132345A1号明細書中に記載されているような溶解性作用物質である。従ってこの特許出願の内容は参照して取り入れられる。ミルテフォシン(Miltefosin)、エデルフォシン(Edelfsin)、イルモフォシン(Ilmofosin)並びにSRI62−834が有利である。
【0033】
従って、本発明のもう1つの目的は抗腫瘍剤を製造するための本発明のリポソームの使用であり、その際、作用物質は、ドキソルビシンであるのが特に有利である。
【0034】
本発明のもう1つの目的は、細胞増殖に影響を及ぼすための薬剤を製造するために本発明のリポソームを使用することであり、その際、作用物質はサイトカイン、特に有利にα−インターフェロンである。
【0035】
本発明のもう1つの目的は、前記のリポソーム及びリポソーム中に含まれる1種以上の医薬作用物質を、場合により製薬的に慣用の希釈剤、助剤、担体及び填料と共に含有する医薬組成物である。
【0036】
本発明のリポソームを、このために慣用の装置を用いて自体公知の方法で製造する。典型的には、式(A)の化合物1〜50モル%を含むリポソームの様々な成分を含有する溶液を、脂質懸濁液にすることができ、次いでこれを、ノズル又はブレーカープレートによる高い圧力下に圧し、その際、ブレーカープレートの開口の大きさにより、得られるリポソームの大きさを調節することができる。脂質懸濁液をリポソームに変える適当な方法は、当業者には公知である。一般式(A)の化合物5〜15モル%を、コレステリン35〜43モル%及びリン脂質及び/又はアルキルリン脂質42〜60モル%と共に脂質懸濁液にし、次いで自体公知の方法の好適な処理でリポソームにするのが有利である。
【0037】
このような公知の方法は、本発明のリポソーム及び1種以上の製薬作用物質を含有する製薬調合物の製造のためにも使用することができる。水不溶性作用物質を含ませるためにはその場合、作用物質を脂質成分と一緒に溶かし、一方で水溶性作用物質を含ませるためには、脂質膜に、水溶性作用物質を含有する水溶液を添加する。
【0038】
式(A)の本発明の化合物は、n=1では、一定のオリゴグリセリンを、アミノ基を介してホスファチジルエタノールアミンと結合することにより製造することができる。その場合、中性の化合物、即ち過剰電荷を伴わない化合物が得られる。結合のために使用される一定のオリゴグリセリンには、式(B)の化合部がこれに該当する。
【0039】
式中、n=0の一般式(A)の化合物を製造するために、一定のオリゴグリセリンをホスファチジルグリセリンと結合させる。更に、n=0を伴う一般式(A)の化合物を、一定のオリゴグリセリン又はC4〜C6−糖アルコールをホスホリル化剤の使用下に式:CH2−OR1−CHOR2−CHOHのアルコールと結合させることにより製造することができる。ホスホリル化剤として、POCl3を使用するのが有利である。
【0040】
ジアシルグリセリンからのリン脂質の製造は文献中に記載されており(ドイツ特許(DE)第3239817A1号明細書;P. Woolley et al., Chem. Phys. Lipids 47 (1988), 55-62; H. Eibl et al., Chem. Phys. Lipids 47 (1988), 63-68)、かつ相応して適用することができる。
【0041】
前記の方法により、ホスホ−rac−(1又は3)−オリゴグリセリン結合を有するラセミ化合物を形成することができる。この方法により、ホスホ−sn−1−オリゴグリセリン結合又はホスホ−sn−3−オリゴグリセリン結合を有する立体異性体化合物を生じさせるのが有利である。式(A)の化合物を製造するために、一定の鎖長の線状オリゴグリセリンを使用するのが有利である。
【0042】
本発明のもう1つの目的は、式(B):
【化3】

[式中、Yは1〜9の整数であり、かつXはベンジル基、アルキル基又はテトラヒドロプロパニル基である]の保護されたオリゴグリセリンである。Yは1〜3の整数であるのが有利である。本発明により、1.3−結合されたオリゴグリセリンを実際に純粋な形で得ることができる。実際に、他の鎖長のオリゴグリセリンによる不純物を含有しない特定の鎖長のオリゴグリセリンを製造することができる。これに加えて、本発明で使用されるオリゴグリセリンは、実際にモノマーグリセリンによる不純物を有さない。従って、これは、一定の構造を有する均一な化合物である。
【0043】
オリゴグリセリン中では、Xは、他の好適な保護基であってもよい。更に、アセトンの代わりに、他の保護基、殊に他のケトンが存在してもよい。
【0044】
更に、本発明には、式(C):
【化4】

[式中、Yは0〜8の整数、有利に1〜3の整数であり、かつ基X又はZの一方は飽和又は不飽和アルキル基であり、かつ他方は水素である]のアルキルオリゴグリセリンが含まれる。アルキルオリゴグリセリンの場合にも、一定の構造の均一な化合物が該当する。
【0045】
オリゴグリセリン、保護されたオリゴグリセリン及びアルキルオリゴグリセリンの製造は特に重要である。それというのも、これらの出発物質を用いて、溶解を仲介するための、かつ膜透過を改善するための一連の重要かつ新規の助剤を得ることができるためである。血液中でのリポソーム寿命を伸ばすために特に重要なことは、極性範囲の付加的なヒドロキシル基を有する式(A)のホスファチジルオリゴグリセリン誘導体を製造することである。
【0046】
脾臓中での本発明のリポソームの有利な蓄積の故に、これらのリポソームは通常、脾臓中への物質の選択的導入に好適である。この場合、薬剤、造影剤等にこれは該当する。殊に、これは、接種物質の品質の改善のためにも重要である。それというのも、脾臓は、免疫系の範囲で抗体を形成するために特に重要であるためである。同様に、判明している、腫瘍組織中への本発明のリポソームの蓄積も、作用物質、造影剤等のこのような腫瘍組織への特異的な導入のために重要である。
【0047】
本発明を、添付の図面と併せて次の例で詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、全臓器当たりの脾臓及び肝臓中の本発明のリポソームの分布を示すグラフ図である。
【図2】図2は、臓器1g当たりの脾臓及び肝臓中の本発明のリポソームの分布を示すグラフ図である。
【図3】図3は、様々な本発明のリポソームに関する、時間に依存する血液濃度曲線推移を示すグラフ図である。
【実施例】
【0049】
例1
動物実験で、コレステリン40モル%、ホスファチジルグリセリン10モル%及びジパルミトイルレシチン50%からなるリポソームを使用した。その場合、血清中での半減期は、典型的な崩壊曲線を伴う4時間である、即ち、始め非常に迅速に低下し、後にはゆっくり低下する。
【0050】
ホスファチジルグリセリンを本発明のホスファチジルグリセリンG2と代えた同じ組成のリポソームを製造した。完全に直線的低下曲線を有する18〜20時間の血清中半減期が得られた。線状低下曲線は、製造されたリポソームの大きさと無関係に認められた。50nmリポソーム及び150nmリポソームで、血清中でのリポソーム濃度の同じ線状低下が認められた。更に、様々な出発濃度で、血液中のリポソーム濃度の線状低下が確認された。
【0051】
例2
6時間後の血液循環中のリポソームのパーセンテージ割合
本発明のリポソームを、45:45:10のモル比のジパルミトイル−sn−G−3−PC/コレステリン/ジパルミトイル−sn−G−3−PGから製造した。6時間後にも血液中に認められた、初めに添加されたリポソーム量のパーセンテージ割合を、第1表中に記載している。比較のために、マルヤマ et alにより同一の条件でシステム;ジステアリル−sn−G−3−PC/コレステリン/ジパルミトイル−sn−G−3−PGYi45:45:10に関して得られた値を記載している。従来技術に比べて、発見されたリポソーム量の明らかな上昇が示されている。
【0052】
第1表
Y 比較例 Y 本発明の例
0 18% 0 21%
2 19% 2 80%
3 − 3 82%
4 20% 4 56%
例3
モル比4:1:5の1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセログリセリン(PG)及びコレステリンからなるリポソームにトリチウムマーキングされたイヌリンをドーピングした。このリポソームをラット1kg当たり脂質100μモルの配量でラットに投与し、かつ72時間後にこのリポソームの臓器の脾臓及び肝臓での分布を、放射能による計測により測定した。肝臓の臓器重量は9〜10gの間で変動し、脾臓の臓器重量は0.6〜0.7gの間で変動した。添付の図面の図1は、約15倍の肝臓重量で、SUVsを使用すると、グリセリン単位(式A中x=1;m=1〜4)の付加的数を伴う分布は、脾臓に有利に著しく増加することを示している。
【0053】
図2中には、臓器1g辺りの臓器の脾臓及び肝臓中へのリポソームの吸収が記載されている。それによると、脾臓は、n=4の場合に、肝臓の約9倍のリポソーム濃度を有し、m=1では、蓄積ファクターは4である。図1及び2は更に、リポソームの大きさの影響を最後の段落で示している。190nmの直径を有するLUVsに関してはこのことから、脾臓中での蓄積のさらなる増加が判明する。例えば、既にn=2で、蓄積ファクターは24である。実際に、これらのリポソームを用いると、臓器の肝臓にはもはや達しない。
【0054】
例4
式(A)の化合物の製造
例4a:式Iの中心中間生成物
オリゴグリセリンのジグリセリン(G2)、トリグリセリン(G3)及びテトラグリセリン(G4)は、容易に入手可能な式I:1.2−イソプロピリデン−rac−グリセロ−3.1−rac−グリセロ−3−アリルエーテルの中心中間生成物から製造することができる(シェーマA参照)。
【0055】
【化5】

【0056】
式I中に記載の中間生成物は、大量に市販のアリルグリシジルエーテルから、同様に化学物質市場で入手可能な1.2−イソプロピリデン−rac−グリセリンを用いてNaOH触媒開環により得ることができる:
アルコールでのエポキシド開放(一般例)
式Iの中心中間生成物の製造:
1.2−イソプロピリデン−rac−G1−3.1−0.0−3−O−アリル−rac−G2
【化6】

【0057】
1.2−イソプロピリデン−rac−グリセリン(MG132.16;16モル、2115g)に触媒量のNaOH(MG40.00;0.6モル、24g)を添加し、撹拌及び80℃への加熱下に溶液にする。80℃で、アリル−グリシジル−エーテル(MG114.14;6モル、685g)を2時間かけて滴下し、かつこのバッチを80℃で更に2時間撹拌する。この時点で、エポキシドは完全に(Rf0.8、エーテル中)、G3−構成成分の形成下に(Rf0.60、エーテル中)反応する。過剰のイソプロピリデン−rac−グリセリンはエーテル中で0.65のRf−値を有し、かつ75℃/10ミリバールで反応混合物から除去される。残留物にジイソプロピルエーテル1lを添加し、2回、それぞれ1lのNaCl(H2O中1%溶液)を用いて抽出する。有機相を回転濃縮(einrotieren)させ、かつ蒸留する(Kpi10−1ミリバール、125℃)。
【0058】
純粋な生成物の1.2−イソプロピリデン−rac−G1−3.1−0.0−3−O−アリル−rac−G2(MG246.30)は1025g(約70%)である。
【0059】
1.2−イソプロピリデン−rac−グリセリンの代わりに、他の1級アルコール並びにアリルアルコール及びベンジルアルコールを記載の条件で反応させることができる。同様に、同じ方法で他のエポキシドを使用することもできる。
【0060】
式Iの中間生成物は、1.2−イソプロピリデン−rac−グリセロ−3−グリシジルエーテルからも、アリルアルコールを用いてのNaOH触媒による開環により得ることができる。この場合、先ず1.2−イソプロピリデン−rac−グリセロ−3−グリシジルエーテルをアリルグリセリンから製造する。
【0061】
例4b:
1級又は2級ヒドロキシル基のアルキル化(一般例)
中心中間生成物の製造:
1.2−イソプロピリデン−rac−G1−3.1−0.0−2−O−ベンジル−3−O−アリル−rac−G2
【化7】

【0062】
中心中間生成物、1.2−イソプロピリデン−rac−G1−3.1− rac−G2−O−アリルエーテル(MG246.30;0.5モル、123g)をテトラヒドロフラン500ml中に溶かし、ベンジルクロリド(0.6モル、76g)を添加し、かつ還流下に沸騰させる。テトラヒドロフラン500ml中に溶けたK−t−ブチレート(0.7モル、79g)を徐々に滴下する。反応を、還流下での30分の沸騰の後に中断させる(DC−対照、エチルエーテル中でのRf−値:エダクト、Rf=0.1;生成物、Rf=0.4)。反応混合物に、ジイソプロピルエーテル1l及び1%NaCl溶液1lを添加し、振盪し、かつ上部の相を回転蒸発させる。生成物を直接更に使用するか、又はシリカゲルを付してのクロマトグラフィーにより純粋な形で、約90%の収率で取得することができる。
【0063】
実験式 C19285(MG336.42)
算出値:C 67.83;H 8.39;
O 23.79
実測値:C 67.78;H 8.34;
O −
ベンジルクロリドの代わりに、ベンジルブロミド、アリルクロリド又はアリルブロミド並びに1級アルコールのハロゲン化物又はメシレートを使用することもできる。殊に、1級又は2級ヒドロキシル基とアルキルメシレートとの反応に由来する生成物は、高い収率(>90%)で所望の目的化合物をもたらす。
【0064】
例4c:
合成シークエンス:O−アリルエーテル→O−プロペニルエーテル→アルコール(一般例)
【化8】

【0065】
転位
1.2−イソプロピリデン−rac−G1−3.1−0.0−2−O−ベンジル−3−O−アリル−rac−G2(0.5モル、168g)をDMF500ml中に溶かし、かつK−t−ブチレート(0.7モル、79g)を添加する。撹拌下に110〜115℃(反応混合物中の温度)に加熱し、この温度で15分反応を放置し、かつ反応混合物を20℃に冷却する。ジイソプロピルエーテル500ml及び1%NaCl500mlを添加した後に、上部のジイソプロピルエーテル相を除去し、溶剤を真空中で除去する(DC−対照、ヘキサン/ジイソプロピルエーテル(1:1)中でのRf−値:エダクト、Rf=0.2;生成物、Rf=0.4)。
【0066】
プロペニル−保護基の脱離
前記の反応からの残留物約168gを、メタノール500ml中に溶かし、かつ還流下に1M HCl50mlの添加の後に沸騰させる。60分後に、反応が終了する(ヘキサン/ジイソプロピルエーテル(1:1)中でのDC−対照:エダクト、Rf=0.4;生成物、Rf=0)。rac−G1−3.1−rac−G2−2−0−ベンジル−エーテルの収率は>90%である。プロペニル離脱の酸性条件下に、イソプロピリデン保護基も除去される。必要な場合には、イソプロピリデン保護基を再び、1.2−位に導入することができる。
【0067】
イソプロピリデン保護基の導入
前記の反応の残留物(約0.5モル)をTHF300ml中に溶かし、連続して2,2−ジメトキシプロパン(0.5モル、52g)及びTHF10ml中のH2SO40.2gを添加し、かつ25℃で2時間撹拌する。反応混合物を飽和Na2CO3−溶液で中和し、沈殿物を吸引濾過し、かつ濾液を真空中でキシレンと共に回転蒸発させて、水を除去する。生成物をクロマトグラフィーによりシリカゲル60(MercK、粒度0.2〜0.5mm)を用いて精製する(ジエチルエーテル中でのRf−値:エダクト、Rf=0.0;生成物、Rf=0.4)。ホスファチジル−ジグリセリン(G2−基礎体)の製造に重要な中間生成物121gが得られる。
【0068】
2−基礎骨格:2−O−ベンジル−rac−G1−1.3−0.0−1.2−イソプロピリデン−rac−G2(収率82%)。
【0069】
実験式:C16245(MG296.36)
算出値: C 64.85; H 8.16;
O 26.99
実測値: C 64.82; H 8.14;
O −
相応して、より高いオリゴグリセリン割合を有するホスファチジルオリゴグリセリンを製造するために重要な中間生成物を製造することができる。中心中間生成物に冠するいくつかの分析データを次にまとめてある:
3−基礎骨格: 2−O−ベンジル−rac−G1−1.3−0.0−2−O−ベンジル−rac−G2−1.3−0.0−1.2−イソプロピリデン−rac−G3
実験式:C2367(MG460.56)
算出値: C 67.81; H 7.88;
O 24.32
実測値: C 67.75; H 7.85;
O −
4−基礎骨格
2−O−ベンジル−rac−G1−[1.3−0.0−2−O−ベンジル−G]2−1.3−0.0−1.2−イソ−プロピリデン−rac−G4
実験式:C36489(MG624.77)
算出値: C 69.21; H 7.74;
O 23.05
実測値: C 69.17; H 7.69;
O −
6−基礎骨格
2−O−ベンジル−rac−G1[1.3−0.0−2−O−ベンジル−rac−G]4−1.3−0.0−1.2−イソプロピリデン−rac−G6
実験式:C567213(MG953.172)
算出値: C 70.57; H 7.61;
O 21.82
実測値: C 70.56; H 7.54;
O −
8−基礎骨格
2−O−ベンジル−rac−G1−[1.3−0.0−2−O−ベンジル−rac−G]6−1.3−0.0−1.2−イソプロピリデン−rac−G8
実験式:C769617(MG1281.58)
算出値: C 71.23; H 7.55;
O 21.22
実測値: C 71.15; H 7.53;
O −
例4d:
テトラヒドロピラニル−保護基(ベンジルの代わりに)を有する物質
(不飽和脂肪酸を含有するホスファチジル−オリゴグリセリンの製造)
この変法の実施のために、1.2−イソプロピリデン−rac−グリセロ−3−O−アリルエーテルを、H. Eibl 及び P.Woolley, Chem. Phys. Lipids 41 (1986) 53-63により製造し、かつエポキシド化する。
【0070】
エポキシド化(一般例)
1.2−イソプロピリデン−rac−グリセロ−3−O−アリルエーテル(MG172.22;1モル、172g)をCH2Cl21l中に溶かす。3−クロロペルオキシ安息香酸(1.1モル)を少量ずつ添加し、かつ25〜30℃で6時間撹拌する。エダクト(ジエチルエーテル/ペンタン1:1中Rf0.5)は、完全に反応して所望の生成物(前記のシステム中Rf0.2)になる。沈殿物を吸引濾過し、濾液にNa2CO3100gを添加し、かつ20℃で更に3時間撹拌する。沈殿物を吸引濾過し、かつ溶剤を真空中で除去する。エポキシド(MG188.22)の収量は170g(90%)である。そして、エポキシドを、アルコール(例4a)を用いてのエポキシド開環で記載されているように、ベンジルアルコールを用いて1−O−ベンジル−rac−G1−3.1−0.0−2.3−イソプロピリデン−rac−G2に変え、かつ遊離のOH−基を3.4−ジヒドロ−2H−ピランを用いてテトラヒドロピラン誘導体に変える。
【0071】
テトラヒドロピラン−保護基の導入(一般例)
1−O−ベンジル−rac−G1−3.1−0.0−2.3−イソプロピリデン−rac−G2(MG296.36;1モル、296g)をTHF1l中に溶かし、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン1.4モルを添加し、かつトルエンスルホン酸0.1モルを添加する。1時間後に反応を中断させる(エダクト、Rf0.65;生成物、Rf0.90、ジエチルエーテル中)。0.2モルNa2CO31l溶液及びジイソプロピルエーテル1lを添加し、かつ分液漏斗中で十分に振る。上部の層を回転蒸発させ、かつ生成物を、Pd/C−触媒(活性炭上5%Pd)の存在下でH2を用いての水素化分解により遊離ヒドロキシル基を有するG2−成分に変える。
【0072】
G2−基礎骨格:2−O−テトラヒドロピラニル−rac−G1−1.3−0.0−1.2−イソプロピリデン−rac−G2(エポキシドに対して収率80%)
実験式:C14276(MG291.36)
算出値: C 57.71; H 9.34;
O 32.95
実測値: C 57.59; H 9.29;
O −
相応して、他の基礎骨格を有する化合物をTHP−保護された構造に変えることができる。例えば、例4aの3−O−アリルエーテルをエポキシドに変え、かつアリルアルコールで開環する。ここでも、エポキシド化され、かつベンジルアルコールで開環されて、下記の生成物になった3−O−アリルエーテルが生じ、これを3つのTHP−保護基の導入及び触媒による水素化分解により、G4−基礎骨格を有する中間生成物に変えることができる。
【0073】
【化9】

【0074】
4−基礎骨格
2−O−THP−rac−G1−[1.3−0.0−2−O−THP−rac−G]2−1.3−0.0−1.2−イソプロピリデン−rac−G4
実験式:C30452(MG607.75)
算出値: C 59.29; H 9.12;
O 31.59
実測値: C 59.24; H 9.08;
O −
例4e:
式Iの中間生成物の更なる処理
2−基礎骨格(ラセミ体)
式Iから、G2−基礎体を製造するための中心中間生成物が得られる(シェーマB参照)。このために、式I中の2級OH−官能基をアルキル化又はベンジル化するか、又はテトラヒドロピラニルで保護する。
【0075】
【化10】

【0076】
シェーマB:G2−基礎体を製造するための中心中間生成物:
X=飽和又は不飽和アルキル、ベンジル又はTHP
アルキル−G2−化合物
1) 2−O−アルキル−rac−G1−1.3−0.0−rac−G2
X=アルキルである式IIの中間化合物から保護基を除く。次の化合物が製造された:
2−O−エチル−G2: C8185
(194.23)
2−O−ヘキシル−G2: C12265
(250.33)
2−O−ウンデセニル−G2: C17345
(318.45)
2−O−ドデシル−G2: C18385
(334.49)
2−O−オクタデシル−G2: C24505
(418.65)
2−O−エルシル−G2: C28565
(472.75)
2) 1−O−アルキル−rac−G1−3.1−0.0−rac−G2
X=ベンジルである式IIの中間生成物中で、アリルを1−位から除き、かつ相応するアルキル鎖を1−位に導入する。保護基を除いた後に、次の化合物が得られた:
1−O−メチル−G2: C7165
(180.20)
1−O−プロピル−G2: C9205
(208.25)
1−O−ノニル−G2: C15325
(292.41)
1−O−ウンデシル−G2: C17365
(320.47)
1−O−ドデシル−G2: C18385
(334.49)
1−O−オクタデシル−G2: C24505
(418.65)
不飽和1−O−アルキルジグリセリドは、アルコールを用いての1.2−イソプロピリデン−グリセロ−グリシジルエーテル(シェーマD、式IV)のエポキシ開環を介して直接得ることもできる、例えば、
1−O−ウンデセニル−G2:C17345
(318.45)
しかしこの方法は、短鎖アルコールにのみ好適である。それというのも、長鎖アルコール、例えばオレイルアルコールの収率は僅かであるためである。従って1−オレイル−G2を製造するためには、2−O−THP−グリセロ−1.3−O.0−(1.2−イソプロピリデン)−グリセリンを介するのが有利である(シェーマD、式V)
1−O−オレイル−G2:C24485
(416.64)
ジシルセリン(Dicylcerine)を極性範囲に有するリン脂質を合成するための中間生成物
この合成のための有利な保護基を有する化合物は、G1に2−O−ベンジルエーテル又は2−O−テトラヒドロピラニルエーテル基を有する:
1) 2−O−ベンジル−rac−G1−1.3−0.0−(1.2−イソプロピリデン)−rac−G2
16245 (296.36)
式IIIの化合物が、アリルのプロペニルへの塩基性転位、2級OH−基のベンジル化及び引き続くプロペニル保護基の酸性脱離により得られる。
【0077】
【化11】

【0078】
シェーマC:飽和脂肪酸基を用いてのホスファチジル−ジ−グリセリンのための出発生成物
2) 2−O−テトラヒドロピラニル−rac−G1−1.3−0.0−(1.2−イソプロピリデン)−rac−G2: C14−G276 (291.36)
式Vの化合物をアリルグリセリンから製造する。イソプロピリデンの付加の後に、エポキシド化すると、中間生成物IVが得られる。ベンジルアルコールを用いてのエポキシドの開環後に、THP−保護基を導入し、かつベンジル基を除く。
【0079】
【化12】

【0080】
シェーマD:不飽和脂肪酸基を有するホスファチジル−ジ−グリセリンのための出発生成物
3−基礎体(ラセミ体)
式IIの中心中間生成物から、アリル基の導入下にトリグリセリドを生じさせることができる。エポキシド化の後に、そのエポキシドから、薬剤的に重要な様々な中間生成物又は最終生成物を製造することができる。
【0081】
【化13】

シェーマE:G3−基礎体を製造するための出発生成物
式VIの中心中間生成物から、トリグリセリンを製造することができる;中間生成物は、G4−基礎体の製造のためにも使用される。式VI中でXは、水素、飽和アルキル基、ベンジル基又はTHP−基である。
【0082】
アルキル−G3−化合物
1) 1−O−アルキル−rac−G1−1.3−0.0−rac−G2−1.3−0.0−rac−G3
式VI(X=H)のエポキシドをアルコールを用いて直接、開環し、かつイソプロピリデン−保護基の離脱の後に、次の化合物を生じさせる:
1−O−エチル−G3:C11247
(268.30)
1−O−ヘキシル−G3:C15327
(324.41)
1−O−ノニル−G3:C18387
(366.491)
1−O−ウンデセニル−G3:C20407
(392.53)
1−O−ドデシル−G3:C21447
(408.57)
長鎖アルコールに関しては、直接開環での収率は悪い。従って、 G3のオレイル−及びエルシルの化合物を、ベンジルを用いてのVIの開環(X=THP)、THPを用いての生じた2級ヒドロキシル基の保護、触媒による脱ベンジル化、1−位でのアルキル化及び保護基の除去により製造した。
【0083】
1−O−オレイル−G3: C27547
(490.72)
1−O−エルシル−G3: C31627
(456.82)
2)2−O−アルキル−rac−G1−1.3−0.0−rac−G2−1.3−0.0−rac−G3
式VIのエポキシド(X=ベンジル又はTHP)をアリルアルコールを用いて開環し、かつ2−位でアルキル化する。保護基を慣用の方法で除去する。不飽和2−O−アルキル化合物を製造する場合には、アルキル化の前にアリル−保護基の転位を行う必要がある。更に、この場合には、G2に、THP保護基のみを使用することができ、ベンジルは使用することができない。次の化合物を製造した:
2−O−メチル−G3: C10227
(111.99)
2−O−プロピル−G3: C12267
(282.33)
2−O−ノニル−G3: C18387
(366.49)
2−O−ウンデセニル−G3: C20407
(392.53)
2−O−ドデシル−G3: C21447
(408.57)
2−O−ヘキサデシル−G3: C25527
(464.68)
2−O−オレイル−G3: C27547
(490.72)
2−O−エルシル−G3: C31627
(546.82)
トリグリセリドを極性範囲に有するリン脂質を合成するための中間生成物
3−基を極性範囲に有するリン脂質を形成するために有利な保護基はベンジル基及びテトラヒドロピラニル基(THP)である。ベンジル基は簡単に、かつ穏やかな条件下に除去することができるが、勿論、飽和脂肪酸のみを使用可能であるという制限を伴う。THP−基は特に重要であり、それというのも、それが、イソプロピル保護基と結びついて、1つの工程で除くことができるためである。
【0084】
1) 2−O−ベンジル−rac−G1−1.3−0.0−(2−O−ベンジル)−rac−G2−1.3−0.0−(1.2−イソプロピリデン)−rac−G3
26367 (460.56)
この化合物は、中心中間生成物VI(X=ベンジル)から、アリルアルコールでの開環、2−位のベンジル化及びアリル保護基の離脱により得られる。これは、テキスト中で、式VIIとして記されている。
【0085】
2) 2−O−THP−rac−G1−1.3−0.0−(2−O−THP)−rac−G2−1.3−0.0−(1.2−イソプロピリデン)−rac−G3
22419 (449.56)
不飽和G3−リン脂質の製造のために、VI中では、基X=THPを使用する。ベンジルアルコールを用いてエポキシドVIを開環し、遊離になる2級ヒドロキシル基をTHPを用いて保護し、かつH2/Ptを用いて触媒によりベンジル基を除去する。こうして製造された化合物をテキスト中では式VIIIとして記載している。
【0086】
附記
これまでの記載では、我々は、X=飽和アルキルの式VIでは、簡単に次の構造の化合物を製造することができるという事実を利用していない:1−O−アルキル−rac−G1−3.1−0.0−(2−O−アルキル)−rac−G2−3.1−rac−G3。この新規の構造の仲介体は、CH3OH又はウンデセニルアルコールを用いてのエポキシドVI(X=ヘキサデシル)の開環及びイソプロピリデン保護基の離脱により製造されていた。
【0087】
1−O−メチル−rac−G1−3.1−0.0−(2.0−ヘキサデシル)−rac−G2−3.1−rac−G3: C26547 (478.71)
1−O−ウンデセニル−rac−G1−3.1−0.0−(2−O−ヘキサデシル)−rac−G2−3.1−0.0−rac−G3: C36727(616.958)
4−基礎体(ラセミ体)
式IXの中心中間生成物から、G4−基礎体を製造することができる。
【0088】
【化14】

シェーマF:G4−基礎体を製造するための出発生成物
式IXの中心中間生成物から、テトラグリセリンを製造することができる。これらは、ペンタグリセリンの製造のためにも使用することができる。
【0089】
中間化合物から、2個以上のアルキル基を有するオリゴグリセリンを製造することもできる。このための好適な出発化合物は、式中のXが飽和アルキル基である式IXの分子である。
【0090】
アルキル−G4−化合物
1) 1−O−アルキル−rac−G1−1.3−0.0−rac−G2−1.3−0.0−rac−G3−1.3−0.0−rac−G4
X=Hの式IXのエポキシドをアルコールを用いて直接、開環する。これは、イソプロピリデン−保護基の離脱の後に次の物質をもたらす:
1−O−エチル−G4: C14309
(342.38)
1−O−ヘキシル−G4: C18389
(398.49)
1−O−ウンデシル−G4: C19409
(412.52)
1−O−ウンデセニル−G4: C19389
(410.50)
1−O−ドデシル−G4: C20429
(426.54)
これらの方法は、短鎖アルコールのためにのみ好適であり、それというのも、長鎖アルコールでは収率が著しく低下するためである。
【0091】
従って、飽和している長鎖アルコールのために、G2及びG3の場合と同様に、X=ベンジルの中心中間生成物を介する合成法を選択する必要がある。アリルアルコールで開環し、遊離になった2−OH−基をベンジル化し、1−位のアリル基を除去し、かつ1−位をアルキル化する。保護基を除去した後に次のものが得られる:
1−O−ヘキサデシル−G4: C24509
(482.99)
1−O−オクタデシル−G4: C26549
(510.70)
1−O−ベヘニル−G4: C30629
(566.81)
2. 2−O−アルキル−rac−G1−1.3−0.0−rac−G2−1.3−0.0−rac−G3−1.2−0.0−rac−G4
式IXの中心中間化合物をアリルアルコールを用いて開環し、かつ遊離になった2−位をアルキル化する。保護基の除去の後に、次のものが得られる:
2−O−プロピル−G4: C5329
(356.41)
2−O−ヘキシル−G4: C18389
(398.49)
2−O−ノニル−G4: C21449
(440.57)
2−O−ウンデニル−G4: C19389
(410.50)
2−O−ドデシル−G4: C20429
(426.54)
2−O−ヘキサデシル−G4: C24409
(483.99)
2−O−オクタデシル−G4: C26549
(510.70)
2−O−オレイル−G4: C26529
(508.69)
2−O−エルシル−G4: C30609
(564.80)
極性範囲にテトラグリセリンを有するリン脂質を合成するための中間生成物
この合成のために有利な保護基を有する化合物は、G2−及びG3−化合物の合成法と同様に、ベンジル−及びテトラヒドロピラニルエーテルである。
【0092】
1) 2−O−ベンジル−rac−G1−1.3−0.0−(2−O−ベンジル)−rac−G2−1.3−0.0−(2−O−ベンジル)−rac−G3−1.3−0.0−(1.2−イソプロピリデン)−rac−G4
36489 (624.77)
4−基を極性範囲に有するリン脂質を合成するために重要な中間化合物を、X=ベンジルの式IXから、アリルアルコールでのエポキシドの開環、引き続く遊離になった2−OH−基のベンジル化及びアリルの除去により製造する。
【0093】
2. 2−O−THP−rac−G1−1.3−0.0−(2−O−THP)−rac−G2−1.3−0.0−(2−0−THP)−rac−G3−1.3−0.0−(1.2−イソプロピリデン)−rac−G4
30452 (607.75)
極性範囲にG4−基礎体を有する不飽和リン脂質を製造するために好適なこの化合物を製造するために、G3−化合物の製造の際と同様に行う。X=THPのエポキシドVIIをベンジルアルコールを用いて開環し、遊離になった2−OH−基をTHPで保護し、かつH2を用いて(Pd/C−触媒)ベンジルを除去する。その化合物はテキスト中では式XIと称される。
【0094】
極性範囲にオリゴグリセリンを含有し、かつフォスフェートとのsn−1−結合を可能にするリン脂質を合成するための中間生成物(天然立体配置)
リン脂質の極性範囲中に設置するために好適な化合物の従来の製造では(G2では式III及びV、G3では式VII及びVIII、G4では式X及びXI)、天然ホスファチジルグリセリン中では、即ち、1.2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホ−sn−1−グリセリン中では、ホスフェートと非アシル化グリセリンとの結合はsn−1−結合であることに注意が払われていなかった。リポソーム成分は、薬剤の担体として可能な限り天然立体配置で使用されるので、極性オリゴグリセリンのsn−1−立体配置も許容する合成法が開発された(シェーマG)。
【0095】
sn−1−G1−G2−結合
立体異性結合は、文献に記載された方法と同様に実施することができる(DE3130867A1;H.Eibl, Chem. Phys. Lipids 28(1981)1-5; H.Eibl et al., Chem. Phys. Lipids 41 (1986) 53-63; H.Eibl et al., Chem. Phys. Lipids 47(1988) 47-53)。
【0096】
この結合のための出発生成物は、エポキシド化の後に、加水分解によるエポキシド化の後にジオールに変えられる2−O−ベンジル−3−O−アリル−sn−グリセリンである。H/2.2−ジメトキシプロパンとの反応により、2−O−Be−sn−G1−3.1−0.0−(1.2−イソプロピリデン)−rac−G2、式XIIの分子が生じ、これは、リン脂質中のホスフェート基とのsn−1−結合を可能にし、かつ式IIIのラセミ体に相応する。
【0097】
sn−1−G1−G2−G3−結合
この結合のための出発生成物はここでも、2−O−ベンジル−3−O−アリル−sn−グリセリンである。THPでsn−1−位を保護した後にエポキシド化し、かつ1.2−イソプロピリデン−グリセリンを用いてエポキシド環を開環する。G2の遊離になったOH−官能基をベンジル化し、THP−保護基を除去して、リン脂質中のホスフェート基とのsn−1−結合を可能にする式XIIIの分子を得る。分子XIIIは式VIIのラセミ体に相応する。
【0098】
sn−1−G1−G2−G3−G4−結合
出発生成物はここでも、sn−1−結合を保障する2−O−ベンジル−3−0−アリル−sn−グリセリンである。THP−保護基の導入の後に、エポキシド化し、かつエポキシドをアリルアルコールを用いて開環する。中間生成物のエポキシド化の後に、イソプロピリデングリセリンを用いて開環し、遊離のOH−基の両方をベンジル化し、かつTHPを除去する。ホスフェートへのsn−1−結合を可能にし、かつ式Xのラセミ体に相応するXIVが得られる。
【0099】
所望の場合には、相応して、ホスフェートとのsn−3−G1−G2−、sn−3−G1−G2−G3−又はsn−3−G1−G2−G3−G4−結合を有する化合物も製造することができる。この場合には、同じ反応順序で、2−O−ベンジル−2−O−アリル−sn−グリセリンの代わりに、エナンチオマーの2−O−ベンジル−1−O−アリル−sn−グリセリンを使用すべきである。
【0100】
【化15】

【0101】
シェーマG: sn−1−G−結合(x=2〜4)を可能にするホスホリピドのための構成成分。出発生成物は2−O−ベンジル−3−O−アリル−sn−グリセリンである。
【0102】
例4f:
糖アルコールを含有する中間生成物(一般例)
この場合重要な中間生成物は殊に、価格的に有利に入手することができるか、又はそれから簡単な反応により得ることができるような糖アルコールである(これに関しては添付の表を参照)。殊に、中間C−原子でのホスホリル化の際に光学的な活性を有さず、かつ1.2;4.5−ジイソプロピリデン−キシリットとして容易に入手することができるイノシット、キシリットの開放形としてのD−マンニット並びにメソ−エリトリットが重要である。この場合保護基としては大抵、イソプロピリデン、ベンジル又はアリルと組み合わせたトリチルを使用する。この場合、テトラヒドロピラニル−保護基も重要である。例えばこの場合、いくつかの可能性が記される。
【0103】
1.2;4.5−ジイソプロピリデン−キシリット(イソプロピリデン−保護基を導入するための一般例)
キシリット(1.0モル、152g)を2−プロパノール500ml中に懸濁させ、かつジメトキシプロパン(3.0モル、312g)を添加する。2−プロパノール100ml中のH2SO46gを添加し、かつ50℃に加熱する。30分後に全て溶解する。反応混合物が約8のpH値を示すまで濃アンモニアを添加する。回転蒸発器を用いて真空中で溶剤を除去した後に、残留物をヘキサン中に入れ、かつ−20℃に冷却する。美しい白色の結晶が沈殿し、これを吸引濾過し、かつホスホリル化に使用する。
【0104】
実験式:C11195(MG231.27)
算出値:C 57.13;H 8.28;
O 34.59
測定値:C 57.01;H 8.27;
O −
糖アルコールの構造式:
【化16】

【0105】
1.2;3.4−ジイソプロピリデン−5−ベンジル−D−マンニット(ベンジル保護基と共にトリチル保護基を使用するための一般例)
キシリット−誘導体の製造に関してと同様に得られた1.2;3.4;5.6−トリイソプロピリデン−D−マンニット(MG302.36)から出発して、保護基の予めの離脱により約30%の収率で1.2,3.4−ジイソプロピリデン−D−マンニットを得る。トリイソプロピリデン−D−マンニット(1.0モル−302g)をCH3OH600ml中に溶かし、Amberlyst15(5g)及びH2O70gを添加する。50℃に加熱し、かつこの温度で溶液を40分間攪拌し(エダクト、RF0.9;1.2;3.4−誘導体、Rf0.7;3,4−誘導体、Rf0.1、CHCl3/CH3OH1:1中)、20℃に冷却し、かつ2−プロパノール25ml中の25%アンモニア7.5mlに濾過する(pH〜8)。4℃に冷却すると出発生成物が沈殿し、回収することができる(約120g、〜40%)。濾液を回転蒸発させ、かつクロマトグラフィーによりシリカゲル60(Merck、Darmstadt)で精製する。1.2:3.4−ジイソプロピリデン−D−マンニット84g(〜32%)が得られ、これをヘキサンから結晶で得ることができる。
【0106】
実験式:C12226(MG262.30)
算出値:C 54.95;H 8.45;
O 36.60
測定値:C 54.89;H 8.34;
O −
1.2;3.4−ジイソプロピリデン−D−マンニットとトリチルクロリド及びベンジルクロリドとの反応(トリチル化及び引き続くアルキル化のための一般例)
1.2;3.4−ジイソプロピリデン−D−マンニット(0.2モル、52g)をトルエン300ml中に溶かし、トリエチルアミン(0.30モル、30g)を添加し、かつ還流下に沸騰させる。トルエン200ml中のトリチルクロリド(MG278.78;モル、64g)を滴加し、かつ更に60分還流下に沸騰させる(エダクト、Rf0.7;生成物、Rf0.90、CHCl3/CH3OH10:1中)。次いで反応を完了させる。20℃に冷却し、沈殿したトリエチルアミンヒドロクロリドを濾別し、かつ濾液を回転蒸発させる。前記の残留物をTHF400ml中に入れ、ベンジルクロリド(0.3モル、38g)を添加し、かつ還流下に沸騰させる。THF200ml中に溶けたK−t−ブチレート(0.25モル、28g)を滴加し、かつ1時間後に反応混合物を後処理する(エダクト、Rf0.90;生成物、Rf1.00、CHCl3/CH3OH10:1中)。ジイソプロピルエーテル300mlを添加した後に、反応混合物をH2O600mlで抽出し、上部の相を除去し、かつ溶剤を真空下に除去する。前記の残留物を直接、更に使用する。
【0107】
3.4−イソプロピリデン−保護基の取得下でのトリチル保護基の離脱(一般例)
先行する反応の油状残留物(〜0.2モル)をアセトン/CH3OH(1:1)600ml中に溶かし、かつH2SO43mlを添加する。40℃で40分間攪拌し、トリチル−及び1.2−イソプロピリデン保護基の完全な離脱を観察する(エダクト、Rf0.95;生成物、Rf0.15、エーテル中)。反応混合物をアンモニアを用いてpH〜8にし、濾過し、回転蒸発させる。残留物をシリカゲル中でクロマトグラフィー処理し、かつヘキサンから結晶化させる。
【0108】
2−O−ベンジル−3,4−イソプロピリデン−D−マンニット
【化17】

【0109】
実験式:C16246(MG312.36)
算出値:C 61.52;H 7.74;
O 30.73
測定値:C 61.44;H 7.72;
O −
例4Cで記載したように、イソプロピリデン−保護基を5.6−位に再度導入することができる。ホスファチジル−D−マンニット−化合物を合成するための中心中間生成物である、2−O−ベンジル−3.4;5.6−ジイソプロピリデン−D−マンニットが生じる。
【0110】
実験式:C19286(MG352.42)
算出値:C 64.75;H 8.01;
O 27.24
測定値:C 64.68;H 7.94;
O −
隣位ジオールの過ヨウ素酸塩離脱と、ホウ水素化ナトリウムを用いての生じるアルデヒドの還元とを組み合わせることにより得られる糖アルコールからの構成成分(一般例)
1.2:3.4−ジイソプロピリデン−D−マンニット(0.2モル、26g)をH.Eibl, Chem. Phys. Lipids 28(1981)1〜5により、CH3OH200ml中に溶かし、かつ水500ml中のメタ過ヨウ素酸ナトリウム0.2モルの溶液に添加する。温度が30℃を越さないようにする。15分後に反応を終了させる。反応混合物のpH−値を、水中のKOH5Mを用いてpH=8に高める。沈殿した塩を濾別し、かつ生じるアルデヒドをホウ水素化ナトリウム(0.25モル)で還元する。>90%の収率で1.2:3.4−ジイソプロピリデン−D−リキシットが得られ、これをクロロホルム600mlで抽出する。クロロホルム相を回転濃縮させ、かつ生成物をヘキサンから結晶化させる。
【0111】
実験式:C11195(MG231.27)
算出値:C 57.13;H 8.28;
O 34.59
測定値:C 57.07;H 8.21;
O −
これらの様々な可能性の使用、モノイソプロピリデン離脱、隣位ジオールのアルデヒドへの過ヨウ素酸塩離脱及びホウ水素化ナトリウム還元をバリエーションのトリチル/アルキルと組み合わせることにより、様々な保護された糖アルコールを得ることができ、これを、アシル化又はホスホリル化により、重要なアルキル−、アシル−又はホスファチジル化合物に変えることができる。
【0112】
前記のオリゴグリセリン及び糖アルコールからの単純なエステル誘導体及びエーテル誘導体の製造(一般的記載)
保護基の引き続く離脱を含むエステル化又はエーテル化の可能性は、様々な文献に記載されていた。次に挙げる論文には、更にホスホリル化の様々な方法が記載されている。これらの方法はこの場合、同様に使用することができる。
【0113】

【0114】

【0115】
例4g:
極性範囲に糖アルコールを含有するリン脂質を合成するための中間生成物
前記のように、オリゴグリセリンを介してのリン脂質の極性範囲への導入は、この物質がリポソーム成分として使用される場合に血液循環に強い影響を与える。しかし、同じ結果で、オリゴグリセリンの代わりに糖アルコール、例えばD−マンニット、D−リキシット及びD−トライトのリン酸エステルも使用することができる。これらの化合物は好適な保護基を用いて(シェーマH参照)、オリゴグリセリンのために記載された方法でリン脂質に導入することができる。記載の誘導体では、リン脂質との結合は再び、リン酸と糖アルコールのsn−1−結合をもたらす。
【0116】
D−マンニット−誘導体
1,2,6,5−ジイソプロピリデン−D−マンニットから、3.4−位でのベンジル化及びイソプロピリデン−保護基の離脱により3.4−0.0−ジベンジル−D−マンニットを製造することができる。イソプロピリデン−保護基の1.2−位への導入、トリチル化及び遊離OH−基のベンジル化の後に、トリチル基の離脱により、リン脂質の極性範囲に導入しうる化合物XVが得られる。
【0117】
D−リキシット−誘導体
1.2−イソプロピリデン−3.4−0.0−ジベンジル−D−マンニット(上記参照)を過ヨウ素酸で分裂させ、かつNaBH4を用いてアルコールXVIに還元する。この化合物は、リン脂質の極性範囲に導入することができる。
【0118】
【化18】

【0119】
シェーマHリン脂質の極性範囲に導入するための、少なくとも4個のヒドロキシル基を有するポリアルコール
D−トライト−誘導体
化合物XVIをベンジル化により1.2−イソプロピリデン−3.4.5−0.0.0−トリベンジル−D−リキシットに変える。イソプロピリデン−保護基の離脱、過ヨウ素酸分解及びアルコールへの還元の後に、XVIIが得られる。これを、前記の方法で、リン脂質の極性範囲に導入することができる。
【0120】
オリゴグリセリンを極性範囲に含むリン脂質
我々は先行の文献中で、どのように簡単な方法で、リン脂質を、飽和及び不飽和脂肪酸鎖、2つの同じ又は2つの異なる脂肪酸鎖を有するジアシルグリセリンから製造することができるかを記載している(ドイツ特許(DE)第3239817号明細書Ar;P.Woolley et al. Chem. Phys.Lipids 47(1988)55〜62;H. Eibl et al., Chem. Phys. Lipids47(1988)63〜68)。相応して、アシル/アルキル−又はアルキル/アシルグリセリンも出発生成物として使用することができる。これに対して、ジアルキルグリセリンを含有するリン脂質は、代謝的に極めて安定で、かつ実際に吸収され得ない。
【0121】
前記の化合物は原則的に2つの異なる方法で製造することができる。これは、2種のアルコール、R1−OH及びR2−OHから、リン酸ジエステルを製造することができるという事実に由来する。
【0122】
1−OHのアルコールは、2個の脂肪酸鎖及び1個の遊離ヒドロキシル基を有するグリセリン基礎骨格を含むアルコールである。しかしこれは、モノアクリルリン脂質の製造のために1個の脂肪酸鎖及び1個の付加的保護基、多くはベンジルのみを含むこともできるが、R1−OHは、1個又は2個のcis−二重結合を有する単純なアルキル基を有するアルコールであってもよい。
【0123】
2−OHのアルコールは、テキスト中でG2、G3及びG4と記されていたアルコールである。これらは、構造式III及びV(G2)、VII及びVIII(G3)及びX〜XIV(G4)で挙げられている。相応して、糖アルコール誘導体XV〜XVIIも使用することができる。
【0124】
2種のアルコールR1−OH及びR2−OHがリン酸ジエステルの製造のために良好な収率でどのように使用することができるかが、シェーマG中に記されている。
【0125】
【化19】

【0126】
例えば、R1=1,2−ジパルミトイル−sn−Gの場合、かつR2=式XIの場合には、保護基の除去の後に、次の構造が生じる:
【化20】

【0127】
シェーマG:式:R1O−PO3−R2;Naのリン酸ジエステル
ホスホリル化剤として、ホスホルオキシクロリドを使用する。ホスフェートを介して結合されるべき両方のアルコールR1−OH及びR2−OHから、先ず相応する二塩化リン酸を製造し、これを、それぞれ別のアルコールと反応させて、一塩化リン酸にする。弱塩基性加水分解はリン酸ジエステルをもたらし、これを、保護基の離脱の後に、例えばXVIIIに、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2−G3−G4;Na−塩に変える。
【0128】
次に記載の例は、脂肪酸鎖の他の組み合わせにより、又は他の合成又は天然由来の脂肪酸の導入により、任意に広げることができる。製造されたホスファチジル−オリゴグリセリンは必要に応じて、かつオリゴグリセリン領域中で所望の特性に調節することにより、更にアルキル鎖又は脂肪酸基を含有してよい。
【0129】
オリゴグリセリンをベースとするここで提案された方法は、リポソームの特性を変化させ、かつ影響を及ぼすために多様な方法で用い、かつ変成することができる。ヘキシデシルホスホコリン、エルシルホスホコリンと同様に、これらの物質は場合により、重要な生物学的に活性な分子でもあり、これは、信号形質導入に、及び従って細胞機能経路に影響を及ぼす。
【0130】
ホスホ−G1−G2−化合物の例
1. 1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2
Na−塩: C4180NaO12
(819.04)
2. 1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2
Na−塩: C3772NaO12
(762.93)
3. 1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2
Na−塩: C4588NaO12
(875.14)
4. 1−パルミトイル−2−ラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2
Na−塩: C3772NaO12
(762.93)
5. 1−ステアロイル−2−ラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2
Na−塩: C3976NaO12
(790.98)
6. 1,2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2
Na−塩: C4584NaO12
(871.11)
7. 1,2−ジエルシル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2
Na−塩: C53100NaO12
(983.32)
8. 1−ステアロイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2
Na−塩: C4586NaO12
(873.13)
9. 1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2
Na−塩: C4382NaO12
(845.07)
10. 1−ステアロイル−2−ミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2
Na−塩: C4180NaO12
(819.04)
11. 1−ステアロイル−2−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2
Na−塩: C4384NaO12
(847.09)
12. 1−ミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2
Na−塩: C2346NaO11
(552.57)
13. 1−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2
Na−塩: C2550NaO11
(580.62)
14. 1−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2
Na−塩: C2754NaO11
(608.68)
15. エルシル−ホスホ−G1−G2
Na−塩: C2856NaO8
(574.71)
16. オクタデシル−ホスホ−G1−G2
Na−塩: C2450NaO8
(520.62)
17. ヘキサデシル−ホスホ−G1−G2
Na−塩: C2246NaO8
(492.56)
18. テトラデシル−ホスホ−G1−G2
Na−塩: C2042NaO8
(464.51)
19. オレイル−ホスホ−G1−G2
Na−塩: C2448NaO8
(518.60)
20. 1−O−オクタデシル−2−O−メチル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2
Na−塩: C2858NaO10
(608.72)
ホスホ−G1−G2−G3−化合物の例
1. 1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2−G3;
Na−塩: C4486NaO14
(893.12)
2. 1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2−G3
Na−塩: C4894NaO14
(949.22)
3. 1−パルミトイル−2−ラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2−G3
Na−塩: C4078NaO14
(837.01)
4. 1−ステアロイル−2−ラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2−G3
Na−塩: C4282NaO14
(865.06)
5. 1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2−G3
Na−塩: C4890NaO14
(945.19)
6. 1,2−ジエルシル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2−G3
Na−塩: C56106NaO14
(1057.40)
7. 1−ステアロイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2−G3
Na−塩: C4892NaO14
(947.21)
8. 1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2−G3
Na−塩: C4688NaO14
(919.148)
9. 1−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2−G3
Na−塩: C3060NaO13
(682.76)
10. エルシル−ホスホ−G1−G2−G3
Na−塩: C3162NaO10
(648.79)
11. オクタデシル−ホスホ−G1−G2−G3
Na−塩: C2756NaO10
(594.69)
12. ヘキサデシル−ホスホ−G1−G2−G3
Na−塩: C2552NaO10
(566.64)
13. 3−オクタデシル−2−O−メチル−sn−グリセロ−1−ホスホ−G1−G2−G3
Na−塩: C3164NaO12
(682.80)
ホスホ−G1−G2−G3−G4−化合物の例
1. 1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2−G3−G4
Na−塩: C4792NaO16
(967.20)
2. 1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2−G3−G4
Na−塩: C51100NaO16
(1023.30)
3. 1−ステアロイル−2−ラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2−G3−G4
Na−塩: C4588NaO16
(939.14)
4. 1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2−G3−G4
Na−塩: C5196NaO16
(1019.27)
5. 1,2−ジエルシル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2−G3−G4
Na−塩: C59112NaO16
(1131.48)
6. 1−ステアロイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−G1−G2−G3−G4
Na−塩: C5198NaO16
(1021.29)
7. エルシル−ホスホ−G1−G2−G3−G4
Na−塩: C3468NaO12
(722.87)
ホスホ−sn−G1−結合の例
sn−1−G1−G2
1. 1,2−ジピルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−sn−1−G1−G2
Na−塩: C4180NaO12
(819.04)
2. 1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−sn−1−G1−G2
Na−塩: C4588NaO12
(875.14)
3. 1−ステアロイル−2−ラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−sn−1−G1−G2
Na−塩: C3976NaO12
(790.98)
4. 1−ステアロイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−sn−1−G1−G2
Na−塩: C4586NaO12
(873.13)
sn−1−G1−G2−G3
1. ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−sn−1−G1−G2−G3
Na−塩: C4486NaO14
(893.12)
2. 1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−sn−1−G1−G2−G3
Na−塩: C4894NaO14
(949.22)
sn−1−G1−G2−G3−G4
1. 1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−sn−1−G1−G2−G3−G4
Na−塩: C4792NaO16
(967.20)
2. 1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−sn−1−G1−G2−G3−G4
Na−塩: C51100NaO16
(1023.30)
糖アルコールとの結合例
ホスホ−D−マンニット−化合物
1. 1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−D−マンニット;
Na−塩:C4180NaO13
(835.03)
2. 1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−D−マンニット;
Na−塩:C4588NaO13
(891.13)
3. 1−パルミトイル−2−ラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−D−マンニット;
Na−塩:C3772NaO13
(788.92)
4. 1−ステアロイル−2−ラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−D−マンニット;
Na−塩:C3976NaO13
(806.97)
5. 1−ステアロイル−2−ミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−D−マンニット;
Na−塩:C4180NaO13
(835.03)
6. 1−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−D−マンニット;
Na−塩:C2754NaO12
(624.67)
7. オクタデシル−ホスホ−D−マンニット;
Na−塩:C2450NaO9
(536.61)
8. 1−O−オクタデシル−2−O−メチル−sn−グリセロ−3−ホスホ−D−マンニット;
Na−塩:C2858NaO11
(624.71)
ホスホ−D−リキシット−化合物
1. 1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−D−リキシット;
Na−塩:C4078NaO12
(805.00)
2. 1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−D−リキシット;
Na−塩:C4486NaO12
(861.10)
3. 1−パルミトイル−2−ラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−D−リキシット;
Na−塩:C3670NaO12
(758.89)
4. 1−ステアロイル−2−ラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−D−リキシット;
Na−塩:C3874NaO12
(776.94)
5. 1−ステアロイル−2−ミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−D−リキシット;
Na−塩:C4078NaO12
(805.00)
ホスホ−D−トライト−化合物
1. 1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−D−トライト;
Na−塩:C3976NaO11
(774.97)
2. 1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−D−トライト;
Na−塩:C4384NaO11
(831.07)
3. 1−ステアロイル−2−ラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−D−トライト;
Na−塩:C3772NaO11
(746.91)
4. 1−ステアロイル−2−ミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−D−トライト;
Na−塩:C3976NaO11
(774.97)
例4h:
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−グリセログリセリン、Na−塩の製造例でのホスホリル化工程(一般的処方)
1l三頚フラスコ中に、THF15ml中のPOCl3(0.1モル、15.3g)を予め装入する。激しい攪拌及び冷却下に、THF100ml中の1,2−ジパルミトイル−sn−グリセリン(0.1モル、57g)及び別にトリエチルアミン(0.11モル、11g)を、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセリンよりもトリエチルアミンが常にやや過剰であるように滴加して、生じる塩化水素を吸収させる。反応混合物中の温度がその際、16℃を上回らないようにする。滴加の後に、16℃で30分放置し、かつDC−クロマトグラフィーにより反応の完了を調べる(1,2−ジパルミトイル−sn−グリセリン、RF0.8;1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−リン酸ジクロリドをメタノリシスにより、相応するリン酸ジメチルエステルに変える、Rf0.4、エーテル中)。
【0131】
第2のホスホリル化工程を、保護されたオリゴグリセリンで実施する。ここでは、2−O−ベンジル−rac−G1−1.3−0.0−1.2−イソプロピリデン−rac−G2を用いての反応を記載する。1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−リン酸ジクロリドを有する反応混合物に前記のアルコール(0.105モル、31g)及びTHF100ml中のトリエチルアミン(0.13、13g)を、反応混合物中の温度が40℃を越さないように滴加する。40℃で3時間の後に、反応を中断させる(リン酸ジメチルエステルとしての出発生成物、Rf0.4;メチルエステルとしての生成物、Rf0.7、エーテル中)。沈殿したトリエチルアミンヒドロクロリドを濾別し、かつ反応混合物、主に1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−2−O−ベンジル−rac−グリセロ−1.3−0.0−1.2−イソプロピリデン−rac−グリセリン−モノクロリド並びに完全には反応していない1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−リン酸ジクロリドを、H2O260ml中に溶けたNa2CO326gで加水分解する。4時間後にジイソプロピルエーテル400mlを添加し、かつ生成物を含有する上部の相を、結晶が最初に生じるまで回転蒸発させる。アセトン500mlを添加し、かつ20℃で生じた結晶を吸引濾過する。濾液は保護されたホスファチジルグリセログリセリン、Na−塩(Rf0.6、CHCl3/CH3OH/氷酢酸/H2O 600:60:20:5)を含有する。溶剤を除去した後に、粗製生成物48gが得られ、これを酢酸140ml及びH2O60ml中で、60〜70℃に30分間加熱する(イソプロピリデン保護基の離脱)。CHCl3500ml、CH3OH600ml及びH2O400mlを添加し、かつよく振蕩する。下のCHCl3相を再度、CH3OH600ml及びH2O500mlで洗い、その際、Na2CO3を水性相のpH値が6になるまで添加する。下のクロロホルム相を回転濃縮させ、かつ残留物をTHF400ml中に入れる。ベンジル保護基の除去のために、溶液にPd/C6gを添加し、かつH2−雰囲気下に脱ベンジル化する。反応は約4時間後に終了する。触媒を濾別し、溶剤を除去し、かつ残留物(〜30g)をCHCl3100ml中に入れる。アセトン900mlを添加し、かつ生じる結晶を吸引濾過する。白色の粉末である1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−グリセロ−グリセリン、Na−塩、収量:26g(〜32g)が得られる。
【0132】
実験式:C4180NaO12P(MG819.04)
算出値:C 60.13;H 9.85;
Na 2.81;O 23.44;
P 3.78
実測値:C 60.01;H 9.79;
Na −;O −;P 3.69
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−グリセロ−グリセロ−グリセリン、Na−塩
実験式:C4486NaO14P(MG893.12)
算出値:C 59.17;H 9.71;
Na 2.57;O 25.08;
P 3.47
実測値:C 59.11;H 9.62;
Na −;O −;P 3.45
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−グリセロ−グリセロ−グリセリン、Na−塩
実験式:C4792NaO16P(MG967.20)
算出値:C 58.37;H 9.59;
Na 2.38;O 26.47;
P 3.20
実測値:C 58.29;H 9.53;
Na −;O −;P 3.19
脂肪族鎖を有するホスファチジル−オリゴグリセリン、いわゆるリソホスファチジル−オリゴ−グリセリンの製造のために、グリセリンのsn−2−位にベンジルエーテル基、例えば1−パルミトイル−2−O−ベンジル−sn−グリセリン、1−ステアロイル−2−O−ベンジル−sn−グリセリン、1−O−ヘキサデシル−2−O−ベンジル−sn−グリセリン、1−O−オクタデシル−2−O−ベンジル−sn−グリセリン等を有する化合物から出発することができる。この化合物の製造を我々は、刊行物;H.Eibl und P.Woolley, Chem. Phys. Lipids 41(1986)53〜63及びChem. Phys. Lipids 47(1988)55〜62に記載している。これらの化合物を1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−グリセログリセリン、Na−塩の製造のために記載された方法でホスホリル化し、かつ保護されたオリゴグリセリンと反応させる。保護基の離脱を同様に行う。最後の工程で、Pd/C(活性炭上5%)を用いての触媒による水素化分解、更にアシル基又はアルキル基を有する(例参照)グリセリンでと同様に、オリゴグリセリン領域中のベンジル基の離脱を行う。
【0133】
これに対してアルキルホスホ−オリゴグリセリンの製造は単純である。それというのも、この場合には、相応するアルコールを所定のホスホリル化シェーマに従って反応させるためである。不飽和仲介体の製造のためにもちろん、ベンジル保護基の代わりにテトラヒドロピラニル保護基を使用すべきである。
【0134】
これらの物質群の不飽和仲介体の合成のために、原則的に別の戦略を記載する。この場合、1,2−ジベンジル−sn−グリセリンのホスホリル化を記載の方法で(ドイツ特許出願(DE)第3239817号明細書も参照)行い、次いで、テトラヒドロピラニル−保護されたオリゴグリセリンとの反応を続ける。加水分解の代わりにメタノリシスを実施し、その際、リン酸トリエステルが得られる。例えば、2−O−テトラヒドロピラニル−rac−G1−1.3−0.0−1.2−イソプロピリデン−rac−G2では:
【化21】

【0135】
この中心中間体を、Pd/C(活性炭上5%)を用いて水素化分解させる。次のものが得られる:
【化22】

【0136】
さて、任意の不飽和及び飽和脂肪酸をグリセリン分子のsn−1及びsn−2の位置に導入することができる。その後、我々の先行の特許出願に記載したように、LiBrを用いてメチル基を離脱させ、かつその後、イソプロピリデン及びテトラヒドロピラニル保護基の加水分解を70%酢酸中で、60〜70℃で行う。ジオレオイル化合物の結晶化は困難であり、従ってクロマトグラフィーにより精製する必要があるが、ジエルシル化合物は良好に結晶の形で得られる。
【0137】
混合鎖ホスファチジル−オリゴグリセリンを製造するためにも、リン酸トリエステル−戦略は推奨することができる。この場合、リソホスファチジル−オリゴグリセリンの合成の場合と同様に、1−アシル−2−O−ベンジル−sn−グリセリン又は1−O−アルキル−2−O−ベンジル−sn−グリセリンを出発生成物として使用し、同様に反応させて1,2−ジベンジル−sn−グリセリンにする。この場合、触媒による脱ベンジル化の後に中間生成物として、G2−化合物では次のものが得られる:
【化23】

【0138】
こうして、空いているsn−2−位に不飽和脂肪酸を導入して、この分子から前記のようにその保護基を除くことができる。脂肪酸コンビネーション、1−パルミトイル−2−オレオイル−又は1−ステアロイル−2−オレオイルを有する分子がよく結晶化することは都合が良い。
【0139】
例5:他の特性
グリセリン分子の数が多くになるにつれて、遊離ヒドロキシル基の数は多くなり、従って、極性も高くなる。水中に5%の割合で、PP−G−PG4は唯一のPP−G−PGとして、澄明な等方性溶液を生じさせる。脂質PP−G−PG1、PP−G−PG2及びPP−G−PG3は、40℃を上回る加熱で水中に溶け、かつ超構造を形成する。この温度を下回ると、種々の顕著なヒステリシスと共に異方性(偏光での複屈折)により判別することができないラメラ構造が生じる。PP−G−PG1−溶液は迅速に混濁し、かつ過剰の脂質は、室温で放置すると沈殿する。PP−G−PG2及びPP−G−PG3のラメラ相は低い温度(4℃まで)でも安定なままである。等方性相の異方性相への移行は、室温で、PP−G−PG2では数分であると判明しているが、PP−G−PG3では、これは数時間を要する。極性の差違は、シリカゲルでの薄層クロマトグラムでの異なる保留ファクター(Rf−値)にも表れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(A):
【化1】

[式中、R1及びR2は相互に無関係に水素、場合により分枝しているか、又は/かつ置換されていてよい飽和又は不飽和アルキル基又はアシル基であり、
3は水素又はアルキル基であり、
n=0又は1であり、
xは、1〜4の整数であり、かつ
mは、n=0の場合には2〜10の整数、n=1の場合には1〜10の整数であり、並びにxが1よりも大きい場合には1であり、
その際、n=0の場合には化合物はmの値に関して90%を上回る均一性を有し、R1=R2=パルミトイル、n=0及びx=1の化合物は除く]の化合物。
【請求項2】
n=0の場合、化合物がmの値に関して95%を上回る均一性を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
n=0の場合、化合物がmの値に関して99%を上回る均一性を有する、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
x=1であり、かつmが2〜5の整数である、請求項1から3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
x=1であり、かつmが2〜4の整数である、請求項1から4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
式(A)中のR1及びR2が、相互に無関係に水素、飽和又は不飽和C1〜C24−アルキル基又はC1〜C24−アシル基である、請求項1から5のいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
ホスホ−rac−(1又は3)−オリゴグリセリン結合が存在する、請求項1から6のいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
ホスホ−sn−1−オリゴグリセリン結合が存在する、請求項1から6のいずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
ホスホ−sn−3−オリゴグリセリン結合が存在する、請求項1から6のいずれか1項記載の化合物。
【請求項10】
基R1及びR2の少なくとも一方がアシル基である、請求項1から9のいずれか1項記載の化合物。
【請求項11】
リン脂質及び/又はアルキルリン脂質、場合によりコレステリン及び一般式(A):
【化2】

[式中、R1及びR2は相互に無関係に水素、場合により分枝しているか、又は/かつ置換されていてよい飽和又は不飽和アルキル基又はアシル基であり、
3は水素又はアルキル基であり、
n=0又は1であり、
xは、1〜4の整数であり、かつ
mは、n=0の場合には2〜10の整数、n=1の場合には1〜10の整数であり、並びにxが1よりも大きい場合には1であり、
その際、n=0の場合には化合物(A)はmの値に関して90%を上回る均一性を有するが、但し、R1=R2=パルミトイル、n=0及びx=1の化合物は除く]の化合物又はその塩1〜50モル%を含有し、その際コレステリン、リン脂質、アルキルリン脂質及び式(A)の化合物は全部で100モル%であるリポソーム。
【請求項12】
n=0の場合、化合物(A)が、mの値に関して95%を上回る均一性を有する、請求項11に記載のリポソーム。
【請求項13】
n=0の場合、化合物(A)が、mの値に関して99%を上回る均一性を有する、請求項11又は12に記載のリポソーム。
【請求項14】
式(A)の化合物5〜15モル%を含有し、その際、コレステリン、リン脂質、アルキルリン脂質及び式(A)の化合物が全部で100モル%である、請求項11から13のいずれか1項記載のリポソーム。
【請求項15】
式(A)中でx=1であり、かつmが2〜5の整数である、請求項11から14のいずれか1項記載のリポソーム。
【請求項16】
式(A)中でx=1であり、かつmが2〜4の整数である、請求項11から15のいずれか1項記載のリポソーム。
【請求項17】
式(A)中のR1及びR2が相互に無関係に水素、飽和又は不飽和C1〜C24−アルキル基又はC1〜C24−アシル基である、請求項11から16のいずれか1項記載のリポソーム。
【請求項18】
式(A)の化合物が、ホスホ−rac−(1又は3)−オリゴグリセリン結合を有する、請求項11から17のいずれか1項記載のリポソーム。
【請求項19】
式(A)の化合物が、ホスホ−sn−1−オリゴグリセリン結合を有する、請求項11から17のいずれか1項記載のリポソーム。
【請求項20】
式(A)の化合物が、ホスホ−sn−3−オリゴグリセリン結合を有する、請求項11から17のいずれか1項記載のリポソーム。
【請求項21】
式(A)中の基R1及びR2の少なくとも一方がアシル基である、請求項11から20のいずれか1項記載のリポソーム。
【請求項22】
式(A)中でn=0である、請求項11から21のいずれか1項記載のリポソーム。
【請求項23】
負の過剰電荷を有する、請求項11から22のいずれか1項記載のリポソーム。
【請求項24】
式(A)中でn=1である、請求項11から21のいずれか1項記載のリポソーム。
【請求項25】
過剰電荷を有さない、請求項24に記載のリポソーム。
【請求項26】
正の過剰電荷を有する、請求項24に記載のリポソーム。
【請求項27】
コレステリン0〜70モル%、式中n=1である一般式(A)の化合物1〜50モル%及びリン脂質及び/又はアルキルリン脂質を含有し、これらの成分が全部で100モル%である、請求項11から26のいずれか1項記載のリポソーム。
【請求項28】
コレステリン0〜70モル%、式中n=0である一般式(A)の化合物1〜15モル%及びリン脂質及び/又はアルキルリン脂質を含有し、その際、これらの成分が全部で100モル%である、請求項11から26のいずれか1項記載のリポソーム。
【請求項29】
コレステリン25〜43モル%、一般式(A)の化合物5〜15モル%及びリン脂質及び/又はアルキルリン脂質を含有する、請求項11から28のいずれか1項記載のリポソーム。
【請求項30】
コレステリン38〜42モル%を含有する、請求項11から29のいずれか1項記載のリポソーム。
【請求項31】
基:−CH2(CHOH)−CH2−OHが、x=2で4つのヒドロキシル基、x=3で5つのヒドロキシル基及びx=4で6つのヒドロキシル基を有する糖アルコールに由来する、請求項11から30のいずれか1項記載のリポソーム。
【請求項32】
血液中に添加されたリポソーム量の50%以上が、6時間後にも存在する、請求項11から31のいずれか1項記載のリポソーム。
【請求項33】
血液中に添加されたリポソーム量の60%以上が、6時間後にも存在する、請求項11から32のいずれか1項記載のリポソーム。
【請求項34】
血液中での半減期が最低10時間である、請求項11から33のいずれか1項記載のリポソーム。
【請求項35】
付加的に、1種以上の薬剤作用物質を含有する、請求項11から34のいずれか1項記載のリポソーム。
【請求項36】
請求項11から35のいずれか1項記載のリポソーム及びリポソーム中に含まれる1種以上の薬剤作用物質を、場合により薬剤で慣用の希釈剤、助剤、担体及び填料と一緒に含有する、薬剤組成物。
【請求項37】
請求項11から35のいずれか1項記載のリポソームの製法において、一般式(A)の化合物1〜50モル%を、式(A)の化合物と合わせて100モル%となる量のリポソームの他の成分と一緒に、脂質懸濁液に変え、次いで、該脂質懸濁液を自体公知の方法での好適な処理により、リポソームに変えることを特徴とする、請求項11から35のいずれか1項記載のリポソームの製法。
【請求項38】
一般式(A)の化合物5〜15モル%を、コレステリン35〜43モル%及びリン脂質及び/又はアルキルリン脂質42〜60モル%と共に脂質懸濁液に変え、次いで、脂質懸濁液を自体公知の方法での好適な処理でリポソームに変える、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
請求項37又は38に記載の方法で処理し、かつ水不溶性作用物質の封入のためには、作用物質を脂質成分と一緒に溶かし、かつ水溶性作用物質の封入のためには脂質膜に、水溶性作用物質を含有する水溶液を添加する、請求項36に記載の薬剤調合物の製法。
【請求項40】
一定のオリゴグリセリンをアミノ基を介してホスファチジルエタノールアミンに結合させる、nが1である請求項1から10のいずれか1項記載の化合物の製法。
【請求項41】
一定のオリゴグリセリンをホスファチジルグリセリンと結合させる、nが0である請求項1から10のいずれか1項記載の化合物の製法。
【請求項42】
一般式:
【化3】

[式中、R1及びR2は相互に無関係に水素、場合により分枝しているか、又は/かつ置換されていてよい飽和又は不飽和アルキル基又はアシル基であり、R3は水素又はアルキル基であり、
n=0又は1であり、
x=1〜4の整数であり、かつ
mは、n=0の場合には2〜10の整数であるか、又はn=1の場合には1〜10の整数であり、並びにxが1より大きい場合には1であり、
その際、n=0の場合に、化合物はmの値に関して90%を上回る均一性を有する]の化合物の製法において、一定のオリゴグリセリン又はC4〜C6−糖アルコールを、ホスホリル化剤の使用下に、式:CH2OR1−CHOR2−CHOHのアルコールに付加させることを特徴とする、上記式の化合物の製法。
【請求項43】
ホスホリル化剤としてPOCl3を使用する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
ホスホ−rac−(1又は3)−オリゴグリセリン結合を生じさせる、請求項40から43のいずれか1項記載の方法。
【請求項45】
立体異性結合を生じさせる、請求項40から43のいずれか1項記載の方法。
【請求項46】
ホスホ−sn−1−オリゴグリセリン結合を生じさせる、請求項40から43及び45のいずれか1項記載の方法。
【請求項47】
ホスホ−sn−3−オリゴグリセリン結合を生じさせる、請求項40から43及び45のいずれか1項記載の方法。
【請求項48】
一定の鎖長の線状オリゴグリセリンを使用する、請求項40から47のいずれか1項記載の方法。
【請求項49】
式(B):
【化4】

[式中、Yは1〜9の整数であり、かつXはベンジル基、アルキル基又はテトラヒドロプロパニル基であるが、但し、Y=1の場合、X=メチルを除く]の保護されたオリゴグリセリン。
【請求項50】
Yが1〜3の整数である、請求項49に記載の保護されたオリゴグリセリン。
【請求項51】
一定の構造の均一な化合物である、請求項49又は50に記載の保護されたオリゴグリセリン。
【請求項52】
式(A)の化合物を製造するための請求項49から51のいずれか1項記載の保護されたオリゴグリセリンの使用。
【請求項53】
式(C):
【化5】

[式中、Yは0〜8の整数であり、かつ基X又はZの一方は、飽和又は不飽和アルキル基であり、他方の基は、水素であるが、但し、X=メチルの場合のY=0又は基X又はZの一方がC1633であることを除く]のアルキルオリゴグリセリン。
【請求項54】
Yは1〜3の整数である、請求項53に記載のアルキルオリゴグリセリン。
【請求項55】
一定の構造の均一な化合物である、請求項53又は54に記載のアルキルオリゴグリセリン。
【請求項56】
リン脂質及び/又はアルキルリン脂質、場合によりグリセリン及び請求項42から48のいずれか1項により得られる化合物1〜50モル%を含有する、リポソーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−298817(P2009−298817A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223478(P2009−223478)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【分割の表示】特願平9−529011の分割
【原出願日】平成9年2月17日(1997.2.17)
【出願人】(390040420)マックス−プランク−ゲゼルシャフト・ツア・フェルデルング・デア・ヴィッセンシャフテン・エー・ファオ (54)
【氏名又は名称原語表記】Max−Planck−Gesellschaft zur Foerderung der Wissenschaften e.V.
【住所又は居所原語表記】Berlin, Germany
【Fターム(参考)】