説明

ホットメルトの塗布方法

【課題】搬送中の被塗布材に一定量のホットメルトを安定して塗布することのできるホットメルトの塗布方法を提供すること。
【解決手段】塗布ガン3、貯蔵部2のホットメルトを供給ポンプで塗布ガンに圧送する供給部4、供給ポンプで圧送したホットメルトの全部又は一部を貯蔵タンク内に回収する回収部5、ホットメルトの流路に取り付けられた粘度計を備えたホットメルト塗布装置1を用いてホットメルトHを被塗布材6に塗布するホットメルトの塗布方法であって、塗布開始前及び塗布停止中に、ホットメルトを、供給部4、回収部5及び貯蔵部2によって形成される循環路を循環させておき、塗布開始後には、ホットメルトの一部の循環を継続させると共に、塗布ガン3に供給するホットメルトの量をホットメルトの粘度に応じて制御しながらホットメルトHの塗布を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルトの塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン、使い捨ておむつ等のサニタリー製品の製造においては、ホットメルト型の接着剤を一方向に移動するシート材に対して連続的又は間欠的に塗布することが広く行われている。
また、一方向に移動するシート材に連続してホットメルトを一定量塗布するために、ホットメルトを、ホットメルトタンクから塗布ガンに送るギアポンプ等の容積式の供給ポンプの回転数を、該シート材の移動速度に合わせて制御することも行われている。
【0003】
また、粘性材料の塗布に関する技術として、特許文献1には、粘性液体の温度と圧力を計測し、ポンプ供給量を制御して、圧力変動や温度による粘度の変動が生じても同じ塗布量を供給できるようにする技術が開示され、特許文献2には、粘性材料の粘度に合わせて供給量を変えることで、粘度が変わっても同じ塗布量を供給できるようにする技術が開示されている。
また、特許文献3には、塗布液を循環させて圧力を一定にし、また、塗布終了時にダイ出口を即座に閉鎖することで、塗布液を、塗布開始時から終了時まで均一に塗布するようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−15763号公報
【特許文献2】特開2002−59068号公報
【特許文献3】特開平10−28915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、製造ラインのトラブルや点検等のためにシート材の移動を停止する場合、通常、塗布ガンへのホットメルトの供給も停止させる。
しかし、供給ポンプの回転数をシート材の移動速度に合わせて制御する場合、シート材の移動を停止すると、塗布ガンにホットメルトを送るホットメルト供給管路内の圧力が低下するため、塗布再開時にホットメルトがスムーズにでてこないことがある。その場合、供給ポンプの最低回転数を設定しておき、塗布再開後の初期段階においては、シートの移動速度に応じた量よりも多い量のホットメルトを供給し、ホットメルトを押し出すことも考えられる。しかし、ホットメルトが一時的に製品における設計量より多い量塗布され、ホットメルトがシート材の塗布面側から反対側の面に貫通する、いわゆる裏抜けと呼ばれる現象が生じる恐れがある。裏抜けは設備の汚染等の不都合を生じる。
【0006】
特許文献1,2の技術は、粘性材料を被塗布材に塗布している間における塗布量の変動を抑制する技術であり、塗布再開時に生じる塗布量のばらつきを充分に抑制することはできない。また、特許文献3の技術は、塗布液を循環させてはいるが、その循環等により塗布液の粘度に変動が生じるような場合には、塗布量のばらつきを充分に抑制することができない。
【0007】
本発明は、搬送中の被塗布材に一定量のホットメルトを安定して塗布することのできるホットメルトの塗布方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、塗布ガン、貯蔵部のホットメルトを供給ポンプで塗布ガンに圧送する供給部、供給ポンプで圧送したホットメルトの全部又は一部を貯蔵部に回収する回収部、ホットメルトの流路に取り付けられた粘度計を備えたホットメルト塗布装置を用いてホットメルトを被塗布材に塗布するホットメルトの塗布方法であって、塗布開始前及び塗布停止中に、ホットメルトを、供給部、回収部及び貯蔵部によって形成される循環路を循環させておき、塗布開始後には、ホットメルトの一部の循環を継続させると共に、塗布ガンに供給するホットメルトの量をホットメルトの粘度に応じて制御しながらホットメルトの塗布を行う、ホットメルトの塗布方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のホットメルトの塗布方法によれば、塗布開始時にホットメルトを安定して塗布することができ、搬送中の被塗布材に一定量のホットメルトを安定して塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施に用い得るホットメルト塗布装置の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、ホットメルトの供給量の基本的制御方法を示すグラフである。
【図3】図3は、被塗布材の移動速度に応じたサーボモータの回転数の設定方法を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。以下に述べる実施形態は、一方向に移動する帯状のシート材に、ホットメルト型の接着剤(以下、ホットメルトという)を、その流れ方向に連続して塗布する場合の例である。
本実施形態で用いられるホットメルト塗布装置1は、図1に示すように、ホットメルトの貯蔵部2、ホットメルトの塗布ガン3、貯蔵部2内のホットメルトを塗布ガン3に供給する供給部4、及び塗布ガン3に送ったホットメルトの一部を貯蔵部2に戻す回収部5を具備している。
【0012】
ホットメルトの貯蔵部2は、貯蔵タンク21を備えている。貯蔵タンク21は、内部にホットメルトを収容可能であれば良く、攪拌機能を有するものでも有しないものであっても良い。
塗布ガン3は、ホットメルトの吐出口32及び導入口33を備えた本体部31と、圧縮エア34の流路を開閉して、弁体35を移動させることにより、塗布ガン3を、吐出口32からホットメルトHが放出される状態又は吐出口32からホットメルトHが放出されない状態に切り換える電磁弁36を備えている。
【0013】
供給部4は、一端が貯蔵タンク21に接続され他端が塗布ガン3に接続された供給管路41、及び供給管路41の貯蔵タンク21寄りに配置された供給ポンプ42を備えている。供給ポンプ42は、ギアポンプであり、第1サーボモータM1により駆動される。
回収部5は、一端が供給管路41に接続され他端が貯蔵タンク21に接続された回収管路51、及び回収管路51の途中に配置された回収ポンプ52を備えている。回収ポンプ52は、ギアポンプであり、第2サーボモータM2により駆動される。
【0014】
供給管路41、回収管路51、貯蔵タンク21は、ホットメルトが循環するループ状の循環路を形成する。貯蔵タンク21を含む循環部及び塗布ガン3の本体部31は、何れも温水循環装置やヒータなどの加温装置が取り付けられており、所定温度に保たれている。所定温度は、ホットメルトの融点より高い温度であることが好ましい。
【0015】
供給管路41、回収管路51及び貯蔵タンク21によって形成される環状の循環路(以下、単にホットメルトの循環路ともいう)には粘度計7が取り付けられている。本実施形態においては、図1に示すように、供給管路41に粘度計7が取り付けられている。
粘度計7としては、例えば振動式、回転式のものが使用できる。
上述したように供給ポンプ42は、ギアポンプであり、粘度の変動に関わらず一回転あたりに一定量のホットメルトを送る。ギヤポンプ一回転あたりに送られるホットメルトの量は、ポンプの容量[cc/rev]に等しく、1分間あたりのホットメルト量はポンプの容量にサーボモータの回転数[rpm]を乗じて得られる。そのため、供給ポンプ42により供給されるホットメルトの供給量を変えるためには、第1サーボモータM1の回転数を制御すればよい。
しかし、ホットメルトの循環を繰り返すにつれ、徐々に熱によるホットメルトの劣化が進み、ホットメルトの粘度が変動する。ホットメルトの粘度が変動すると流路内の抵抗が変動し、同じサーボモータの回転数でも塗布ガンから出てくるホットメルト量が変わる。そのため、粘度計7は、供給ポンプ42と塗布ガン3との間に設置することが好ましい。特に、粘度の変動は循環を繰り返すにつれ徐々に進行するため、供給ポンプ42から塗布ガン3間の粘度変動は僅かであり無視できること、及び貯蔵タンクに新しいホットメルトを投入した場合にホットメルトの粘度が標準値に近づくことを考慮すると、定量塗布のためには粘度に対する供給量制御の応答性を高めるため、供給ポンプ42の出口にできるだけ近い場所で粘度を供給することが好ましい。
【0016】
ホットメルトの循環路には圧力計8が取り付けられている。本実施形態においては、図1に示すように、供給管路41に圧力計8が取り付けられている。
圧力計8としては、例えば隔膜式のものが使用できる。
供給ポンプ42の回転数を制御してホットメルトの圧力が変わるのは供給ポンプ42と塗布ガン3との間であるから、圧力計8も供給ポンプ42と塗布ガン3との間に設置することが好ましい。特に、定量塗布のためには塗布寸前の圧力が一定であることが好ましいので、塗布ガンの直前でホットメルトの圧力を計測することが好ましい。
【0017】
粘度計7で計測された供給管路41内のホットメルトの粘度、及び圧力計8で計測された供給管路41内のホットメルトの圧力は、それぞれ電気信号に変換されて演算部9へと送られる。被塗布材6の移動速度は、被塗布材6の移動速度(搬送速度)との関係で回転速度が決まるローラ92及び該ローラ92に取り付けられたロータリーエンコーダ91により、演算部9に入力される。演算部9は、被塗布材6の移動速度、ホットメルトの粘度及び/又は圧力の値に基づき、第1及び/又は第2サーボモータM1,M2の動作を制御するための演算を行い、演算結果を電気信号に変換して第1及び/又は第2サーボモータM1,M2へ送る。
【0018】
塗布装置1を用いて移動する被塗布材6にホットメルトHを塗布するには、供給ポンプ42によりホットメルトを塗布ガン3に向けて圧送しながら、被塗布材6の移動開始と同時に、電磁弁36の弁体35を上昇させて塗布ガン3の吐出口32を開状態とする。被塗布材の移動中においては、一定量が連続して塗工されるように、被塗布材の移動速度に応じてホットメルトの供給量を変える(詳細は後述する)。ホットメルトの塗工中には、供給ポンプ42で圧送するホットメルトの一部の回収部5を介して貯蔵部2に戻して循環させる。被塗布材の移動を停止するとき又は被塗布材を移動させながらホットメルトの塗工を停止するには、電磁弁36の弁体35を下降させて塗布ガン3の吐出口32を閉状態とする。
このような被塗布材の移動及びホットメルトの塗布に先立ち、ホットメルトを、前記ホットメルトの循環路内を循環させる。また、その循環の際には、ホットメルトの圧力を測定し、その圧力に応じて供給ポンプ及び/又は回収ポンプの回転数を制御し、ホットメルトの圧力を一定に維持する(詳細は後述する)。
【0019】
塗布装置1を用いて被塗布材にホットメルトを塗布する場合の好ましいホットメルト供給量(供給ポンプの送り量)の制御方法について説明する。
<ホットメルト供給量の基本的制御方法>
図2は、ホットメルトの供給量の基本的な制御方法を示すグラフであり、ホットメルトの塗布対象である被塗布材(帯状のシート材等)を、停止状態(停止)から所定の速度まで加速し(加速)、その速度を所定時間維持(定速)した後、減速して再び停止状態(停止)とする間の、被塗布材の移動速度に応じたホットメルト供給量の基本的な変動のさせ方を示している。なお、図2中、加速、定速及び減速時には、塗布ガン3の吐出口32を開状態とし、停止時には、吐出口32を閉状態としておく。
【0020】
図2に示す基本的制御方法では、被塗布材の移動速度(以下、加工速度ともいう)に応じてホットメルトの供給量(供給ポンプの送り量)を変えている。即ち、被塗布材の停止時には、圧の維持に必要な量(回収分の供給量)のみを供給しているが、加速時、定速時、減速時には、速度に応じたホットメルト供給量に、前記回収分の供給量を加えた量を供給している。なお、図2に示す例では、回収分の供給量は、停止時、加速時、定速時及び減速時の区別なく一定としているが、後述するように、回収分の供給量を変動させることもできる。
【0021】
供給ポンプ42を駆動する第1サーボモータM1の回転数の設定方法について、図3を参照して説明する。
<事前準備>
(1)初回塗布時に流路内にホットメルトが十分充填している状態でホットメルトの圧力を計測し、演算部に記憶させる。
(2)被塗布材停止時の供給ポンプのサーボモータM1の回転数(b)を設定する(回収分の供給量に必要な回転数)。
(3)被塗布材の定速搬送〔基準速度(B)〕時の供給ポンプのサーボモータM1の回転数(A)を設定する(回収分は考慮しない)。
(4)図3に示すように、前記回転数(b)及び前記回転数(A)並びにそれぞれに対応する被塗布材の移動速度〔基準速度(B)〕から求められる、傾きがA/Bの直線状の速度及び回転数の基準線に当てはめることで、移動速度に応じた回転数を求める。移動速度(x)に応じた回転数(y)は、式y=(A/B)x+bにより求められる。
【0022】
このようにして、被塗布材の移動速度に応じた第1サーボモータM1の回転数を決定することで、被塗布材の移動速度に応じた量のホットメルトを供給ポンプ42から送り出すことができる。なお、図3には、被塗布材の移動速度が、一分間当たりにサニタリー製品何個分の長さが移動するか(個/min)で示されている。
【0023】
前述した回転数(b)の設定は、回転数の制御の精度向上の観点から、サーボモータの定格回転数の10〜20%程度に設定することが好ましい。即ち、サーボモータの回転数の設定は、回転数を高速にしすぎるとギヤポンプでホットメルトが混ぜられるため劣化が進むほか、設備への負荷が大きくなり部品寿命が短くなるため好ましくない。また、サーボモータ内蔵の自身の回転位置を検出するロータリエンコーダがパルスを発生する間隔等との関係で、回転数は低速にしすぎると制御が不安定になり、一定量のホットメルトを供給しにくくなる場合がある。したがって、減速機を噛ませる等により、サーボモータが高速回転してもギヤポンプが高速回転しないようにしつつ、定格回転数の10〜20%程度にサーボモータM1の回転数を設定することがこのましい。
【0024】
本実施形態の制御方法においては、上述したホットメルト供給量の基本的制御方法により決定されるホットメルト供給量(供給ポンプによる送り量,第1サーボモータM1の回転数)に対して、圧力の変化又は粘度の変化に応じた以下の補正を加える。
【0025】
〔塗布開始前および塗布停止中(被塗布材の停止中)の圧力の変化に応じた補正〕
塗布開始前および塗布停止中に、前述した循環路を通してホットメルトを循環させることにより、ホットメルトの塗布の開始あるいは再開時における、ホットメルトの定量塗布の安定性が向上するが、ホットメルトの循環により、供給ポンプ42及び回収ポンプ52を一定速度で回転させていたとしても、ホットメルトの圧力や粘度が変化することがある。
塗布開始前および塗布停止中に、循環路中のホットメルトの圧力やそれによる密度,流量の変動を考慮した補正を行うことで、塗布開始後の被塗布材に対するホットメルトの定量塗布が一層安定化する。
【0026】
塗布開始前および塗布停止中におけるホットメルトの圧の変化に応じた補正は、例えば、以下のように行う。
ホットメルト循環中にホットメルトの圧力が低下した場合には、サーボモータM1の回転数に、回転数を増加させる補正(以下、「+補正」)を加える。逆にホットメルトの圧力が上昇した場合には、サーボモータM1の回転数に、回転数を減少させる補正(以下、「−補正」)を加える。通常、液体は非圧縮性物体と考え、圧力の変化による密度の変化は無視できるが、ホットメルトのように気泡を多く含み、かつ高い圧力(例えば、0.5MPa〜5MPa等)をかけて押し出す場合は、圧力が上がるにつれて気泡の体積が小さくなることによりホットメルトの密度が上がることを考慮する必要がある。粘性流体の体積流量は、下記式1,2から求められるが、圧力が下がると密度が下がり、下記式2より、流量が減り、反対に、圧力が上がると密度が上がり、流量が増えることが判る。そのため、圧力が低下した場合には、サーボモータM1の回転数に+補正を加え、圧力が上昇した場合には、サーボモータM1の回転数に−補正を加える。
【0027】
【数1】

【0028】
具体的な補正のかけ方は、予め補正基準値を設定しておき、循環中に計測した圧(以下、「循環圧」という)と、前述した<事前準備>の(1)で計測した圧(以後、「事前圧」という)の差に応じて補正値を変更した後、回転数に補正を加える。なお、補正基準値は予め設定しておいた値のまま変えない。
サーボモータの補正後の回転数は、例えば、次式3により求めることができる。式3中、下線部はサーボモータ回転数設定に応じた補正量である。
【0029】
【数2】

【0030】
〔塗布開始後(被塗布材の移動中)の粘度の変化に応じた補正〕
塗布開始後においては、ホットメルトの粘度やそれによる流量の変動を考慮した補正を行うことで、被塗布材に対するホットメルトの定量塗布が一層安定化する。
【0031】
塗布開始後におけるホットメルトの粘度の変化に応じた補正は、例えば、以下のように行う。
ホットメルト循環中及びホットメルトの塗布中にホットメルトの粘度が上昇した場合には、サーボモータM1の回転数に+補正を加え、逆にホットメルトの粘度が減少した場合には、サーボモータM1の回転数に−補正を加える。上述した式2から、粘度が上がると流量が減り、反対に、粘度が下がると流量が増えることが判る。そのため、粘度が上昇した場合には、サーボモータM1の回転数に+補正を加え、粘度が減少した場合には、サーボモータM1の回転数に−補正を加える。
【0032】
具体的な補正のかけ方は、停止中の補正と同様であり、予め補正基準値を設定しておき、循環中に計測した粘度(以下、「計測粘度」という)と、事前に入力しておいた、使用するホットメルトの使用温度での粘度(以後、「事前設定粘度」という)の比に応じて補正基準値を変更した後、回転数に補正を加える。
サーボモータの補正後の回転数は、例えば、次式4により求めることができる。式4中、下線部はサーボモータ回転数設定に応じた補正量である。また、サーボモータの回転数指令は、前述した式y=(A/B)x+bによって与えられる値である。
【0033】
【数4】

【0034】
回収ポンプ52によるホットメルトの回収量の好ましい制御方法について説明する。
塗布装置1を用いて被塗布材にホットメルトを塗布する場合の好ましい供給ポンプの制御方法について説明する。
〔ホットメルトの回収量の基本的制御方法〕
回収ポンプ52の制御は、被塗布材(帯状のシート材等)が停止状態又は移動状態の何れにあるか、またその移動速度に拘わらずに一定速度で回転させることを基本的な制御方法とする。
【0035】
本実施態様のホットメルトの塗布方法によれば、上述した制御を行いつつ、ホットメルトを塗工することで、搬送中の被塗布材に一定量のホットメルトを安定して塗布することができる。特に塗布開始時におけるホットメルトの塗布量がばらつきを防止でき、単位長さ当たりのホットメルト量が増減したり、ホットメルトの裏抜けが生じたりすることを防止することができる。これにより、搬送中の被塗布材に一定量のホットメルトを安定して塗布することができ、塗布開始から塗布終了まで一定量のホットメルトを塗布することもできる。そのため、例えば、高速生産される吸収性物品の製造においても、一個一個の吸収性物品に対するホットメルトの塗布量にばらつきが生じることを防止することができる。
【0036】
被塗布材にホットメルトを間欠的に塗布する場合の塗布を中断している間は、本発明における塗布開始前に該当しない。ただし、塗布の中断時間が30分以上に達するなど、循環を続けることでホットメルトが著しく劣化する場合は本発明における塗布開始前に該当することとする。
【0037】
被塗布材としては、ホットメルトを塗布可能な任意の素材からなる材が用いられる。被塗布基材は、シート状物であることが好ましく、該シート状物としては、不織布、樹脂フィルム、紙、織物、これらの一以上の積層体、これらの一以上の積層体の層間に非シート状物を連続又は間欠的に介在させた積層体等が挙げられる。生理用ナプキン、使い捨ておむつ、失禁パッド等の吸収性物品の製造ラインにおいて、吸収性物品の構成材にホットメルトを塗布する場合の塗布対象としては、吸収性物品の表面材、裏面材、剥離紙、ギャザー形成用シート、個装シート等の各種構成材の帯状原反等が挙げられる。
【0038】
ホットメルトとしては、例えば、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロックポリマー)、SIBS(スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー)、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックポリマー)、SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックポリマー)等のスチレン系エラストマー;エチレン・酢酸ビニル系コポリマー;ポリエステル系、アクリル系、ポリオレフィン系等のエラストマー類;ポリイソブチレン、ブチルゴム、ポリイソプレン、天然ゴム等のゴム類等が好ましく用いられる。
【0039】
本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、前記実施形態においては、供給ポンプ及び回収ポンプとして、それぞれギアポンプを用いたが、ギアポンプ以外の回転及び容積式ポンプ、例えば、ネジポンプ、偏心ポンプを用いることもできる。また、ギアポンプとしては、内接式及び外接式の何れを用いても良いが、外接式が好ましい。
また、上述した実施形態において、塗布開始前および塗布停止中(被塗布材の停止中)の圧力の変化に応じた補正は行わなくても良い。また、塗布開始前および塗布停止中(被塗布材の停止中)におけるホットメルトの圧力の調整は、回収ポンプの回転数を制御しておこなっても良く、回収ポンプ及び供給ポンプの両回転数を制御して行っても良い。また、塗布開始後(被塗布材の移動中)における塗布ガンに供給するホットメルトの量の制御は、回収ポンプによる回収量を制御して行っても良い。
【符号の説明】
【0040】
1 ホットメルト塗布装置
2 貯蔵タンク
3 塗布ガン
4 供給部
41 供給管路
42 供給ポンプ
M1 第1サーボモータ
5 回収部
51 供給管路
52 回収ポンプ
M2 第2サーボモータ
6 被塗布材
H ホットメルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布ガン、貯蔵部のホットメルトを供給ポンプで塗布ガンに圧送する供給部、供給ポンプで圧送したホットメルトの全部又は一部を貯蔵部に回収する回収部、ホットメルトの流路に取り付けられた粘度計を備えたホットメルト塗布装置を用いてホットメルトを被塗布材に塗布するホットメルトの塗布方法であって、
塗布開始前及び塗布停止中に、ホットメルトを、供給部、回収部及び貯蔵部によって形成される循環路を循環させておき、塗布開始後には、ホットメルトの一部の循環を継続させると共に、塗布ガンに供給するホットメルトの量をホットメルトの粘度に応じて制御しながらホットメルトの塗布を行う、ホットメルトの塗布方法。
【請求項2】
塗布開始前及び塗布停止中の前記ホットメルトの循環は、該ホットメルトの圧力が一定となるよう調整されている、請求項1記載のホットメルトの塗布方法。
【請求項3】
前記ホットメルト塗布装置は、ホットメルトの流路に取り付けられた圧力計を備えており、前記ホットメルトの循環は、該ホットメルトの圧力を、供給ポンプの回転数を制御することで所望の値となるように調整する、請求項2記載のホットメルトの塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−131162(P2011−131162A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293102(P2009−293102)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】